JP3658869B2 - パルプモールド体の成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パルプモールド材料並びにパルプモールド体の成形方法に関する。特に、本発明は、パルプを主成分とするパルプモールド材料並びにこのパルプモールド材料を用いたパルプモールド体の成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、テレビジョン、ビデオテープレコーダ、カセットテープレコーダ等の電気機器の梱包材料、食品トレー、魚箱等には、発泡スチロール成形体が使用されている。発泡スチロールは優れた緩衝材であるため特に電気機器等の梱包材料に適している。
【0003】
しかし、梱包材料等としての発泡スチロール成形体は、使用後の廃棄処分において種々の問題を生じる。発泡スチロールを焼却処分の場合は、燃焼時に高熱を発生するため、焼却炉を損傷してしまう。発泡スチロールを直接土壌中に埋込処分する場合は、土壌中では発泡スチロールが分解、土化されずそのまま残存している。そのため、その廃棄処分方法が地球規模での環境保護、省資源化の機運が高まる中で、その大量使用が問題になっている。
【0004】
近年、このような環境上の問題、資源の有効利用の面から発泡スチロールの代替として、無公害、省資源化が可能な梱包材料等の成形材料の開発が要請されている。その一つとして、新聞紙等の故紙を主原料とするパルプモールド材料への転換が進んでいる。
【0005】
このパルプモールド材料による成形品としては、新聞紙等の故紙から得られるパルプモールドスラリーを多孔質或いは網を張った金型に吸着させ、数段階の脱水、プレス、乾燥過程を経て成形されるものが知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のパルプモールド材料による成形品は、肉厚が1〜5mmと薄いため重量物を保持する強度が充分でない。パルプモールド材自体の緩衝性が小さいため、重量が数Kg以上のテレビジョン、ビデオテープレコーダ、オーディオ機器等の電気機器の緩衝材としては緩衝特性が満足されていなかった。
【0007】
このため、現状では、卵ケース、工作機器、育苗ポット、重量1Kg以下のカセットレコーダー等の梱包材料に主に使用されているにとどまっている。
【0008】
パルプモールド材料による成形体の緩衝特性の向上を図る手段として、主成分のパルプに少量のバインダー及び中空粒子を添加してパルプモールド材料を得ることが提案されている、例えば特開平6−10300号公報参照。
【0009】
しかし、このパルプモールド材料により成形される緩衝材は、発泡スチロール成形材と同等の緩衝特性、成形状を有する。その反面、故紙パルプを原材料とする固形分10%のパルプスラリーを用いて成形を行うため、成形用型に充填後、脱水、乾燥させて離型するまでに数時間かかり、生産性に問題があった。
【0010】
そのため、発泡スチロール成形体の生産性と同等の生産性を有し、緩衝性に優れたパルプモールド材料の開発が望まれている。
【0011】
本発明はかかる課題を解決するパルプモールド体の成形方法並びにパルプモールド材料を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明によるパルプモールド体の成形方法は、パルプを主原料とし澱粉系バインダーと熱膨張中空粒子を含有するパルプモールド材料に、澱粉系バインダーを糊化するための水分とを混練し、混練したパルプモールド材料を成形型に充填して加圧し、加圧されたパルプモールド材料を澱粉バインダーが糊化する温度以上に水蒸気によって加熱して上記澱粉バインダーを糊化させることによって成形を行うようにしたもので、ここでパルプモールド材料中に占める水分量が20〜60重量%であることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明に係るパルプモールド材料並びにパルプモールド体の成形方法について詳細に説明する。尚、以下に述べる実施の形態例では、パルプモールド体としての緩衝材を成形する成形方法を例にとって説明する。
【0016】
新聞故紙を、解繊機(HFC−23;オリエント(株)製)で10分間粉砕処理し、口径2.5mmのフィルター通してパルプ解繊物を得た。このパルプ解繊物の形状は、主に2mm角程度の小紙片と綿状に解繊されたものが混合されたもので形成されている。この場合、綿状に解繊されたものが小紙片よりも多くなった状態で、全て綿状に解繊された状態となるまえに粉砕を停止する。綿状に解繊されたものと小紙片とが混合したものを用いることによって水分が綿状に解繊されたものだけのときよりも水分を含みやすくなる。このパルプ解繊物に水分50重量%、発泡済み熱膨張性中空粒子(f−80D;松本油脂製薬(株)製)を3重量%、変性澱粉(EAT−4;アセチル化度3%〜4%、糊化温度57℃〜63℃;ホーネン(株)製)を10重量%加え、5分間プラネタリーミキサーで混練し、パルプモールド材料を得た。このパルプモールド材料は主原料となる新聞故紙には風乾状態で約9%の水分を含んでいるため全体の水分量は36%強になっている。図1は、このように製造されるパルプモールド材料1の模式図である。図1中指示符号2はパルプ解繊物、指示符号3は変性澱粉、指示符号4は熱膨張性中空粒子を示している。
【0017】
中空粒子は、後述する成形装置によって成形されたパルプモールド体としての緩衝材中でクッションの機能を果たす。即ち、緩衝材が外部から押圧された際に中空粒子が変形して緩衝効果を上げる。中空粒子としては外殻のポリマーが内殻の炭化水素を覆っており、加熱により外殻のポリマーが軟化すると共に内殻の炭化水素がガス化し、体積が数十倍に膨張する粒子(熱膨張性マイクロカプセル)を加熱して中空粒子としたものを使用することができる。このような中空粒子としては、その外殻が弾力性に優れていて応力を良好に吸収し、熱変形温度が130℃以上あり耐熱性が良好なものを使用することが望ましい。より具体的には、例えば、イソブタン、ペンタン、石油エーテル、ヘキサン等の沸点50〜100℃の有機溶媒を、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等からなる熱可塑性樹脂で包み込んだ熱膨張性マイクロカプセル(粒度分布10〜30μm)を、100〜150℃に短時間加熱して直径を4〜5倍、体積を50〜100倍に膨張させ、弾性変形するようにした中空粒子(真比重0.015〜0.025、粒度分布40〜200μm、平均粒径100μm以下、耐圧性300Kg/cm2 以上)を使用することができる。このような熱膨張性マイクロカプセルを本発明のパルプモールド材料からなる成形体の製造に使用するにあたり、パルプと混合する前に予め膨張させて中空粒子としてもよく、パルプと混合後に膨張させて中空粒子としてもよい。
【0018】
以下に述べる各実施の形態例及び各実験例では、予め膨張させた状態の中空粒子をパルプ解繊物に混入している。但し、コストの面から見た場合にはパルプ解繊物に中空粒子を変性澱粉及び水分とともに混練した後に膨張させたほうが有利となる。この混練した後に膨張する場合には、十分に中空粒子が膨張できることが確保されなければならない。この中空粒子の配合量は、使用するパルプの種類等に応じて適宜定めることができる。例えば、中空粒子の混入の割合を多くするとコストアップにつながるため、後述するバインダーとして機能する変性澱粉との関係で中空粒子を混入の割合が決定される。中空粒子の混入の割合いを少なくして、その分だけ変性澱粉の添加量を多くすることによってパルプ解繊物及び中空粒子の結合力を大きくすることによってコストダウンを図ることができる。
【0019】
バインダーとして用いられる澱粉はその分子中の水酸基の一部が変性されている。この変性澱粉としては次式
【化1】
のように澱粉分子中の水酸基の一部がアセチル基や、エステル基に置換されたもので、糊化温度が低く約55℃〜65℃のものを使用することが好ましい。この変性澱粉を添加する量を多くするとパルプモールド体としての緩衝材が固くなるので緩衝効果が下がり、添加する量が少ないと緩衝材自身の強度が低下する。よって変性澱粉の添加料は、上限は緩衝効果をどの位にするのか及びコストの点から決定され、下限は緩衝材自身の強度をどの位にするのかによって決定される。
【0020】
故紙としては新聞故紙に限ることなく、ダンボール故紙等を使用でき、これらの故紙を短冊状にシュレッドしたもの或いは綿状になるまでミリングしてパルプ解繊物を製作して使用できるものである。
【0021】
次に、このようにして得られるパルプモールド材料により緩衝材を成形する成形型、圧縮装置及び加熱成形装置の第1の実施の形態例を図2〜図6を参照して説明する。
【0022】
図2〜図4に示すように成形型11は、アルミニウム合金により形成され、主成形部となる上面が所定の凹凸形状に形成された下型12と押圧部となる板状の上型13とこの下型12と上型13が嵌挿される上下面が開放された匣状の枠体14とから構成されている。この下型12、上型13及び枠体14にはそれぞれ全体的に多数の通気孔12a,13a及び14aが例えば孔径10mm、ピッチ略15mmで穿設されている。上型13の上面両側部に枠体14に対する案内兼用固定片15が立設されている。この案内兼用固定片15には上下方向に案内長孔15aが形成されている。この案内長孔15aにハンドル付き締付けねじ部材16を挿通することによって上型13が枠体14に締付固定される。枠体14の上周縁部にはフランジ14bが形成されている。このフランジ14bには対向して把手17が取付けられている。
【0023】
また、図3に示すように、圧縮装置21は、機枠台22の上半部22aにエアシリンダ23が設置され、下半部22bに成形型収容部24が設けられている。エアシリンダ23のシリンダロッド23aの下端にはこのシリンダロッド23aの下方への加圧摺動により成形型11の枠体14内に嵌挿される押圧盤25が取付けられている。成形型収容部24には成形型保持部材26が備えられている。
【0024】
図5〜図6に示すように、加熱成形装置である水蒸気加熱成形装置31は、本体32が成形型収容室33とこの収容室33を上下に挟んで連続して配される上側の排気室34と下側の整圧室35とから構成されて機枠台36によって保持されている。収容室33は図6に示すように前面壁部33aを開閉することができる。排気室33は頭截角錐状に形成されて図6に示すように収容室33に対して後端縁側を支点として跳上げ開放可能に連結されている。
【0025】
収容室33には、下側の整圧室35と連通して成形型11の嵌挿保持用の空胴部37が設置されている。この空胴部37の上面側の成形型取付面部37aには成形型11の枠体14が嵌挿される開口部38が形成されている。この開口部38を囲繞する部面には成形型11の枠体14をフランジ14bにおいて締付けるトグルクランプ39が取付けられている。
【0026】
整圧室35は逆頭截角錐状に形成されて内部に水滴防止ネット40が架張されている。
【0027】
このように構成される水蒸気加熱成形装置31の本体32には、各配管が設置されている。
【0028】
排気室34の上面部34aには排気口41が設けられている。整圧室35の底面部35aには第1、第2のバルブ付き給気口42,43とバルブ付き排水口44が並設されている。排気室34側の排気口41には排気用配管45が連結されている。整圧室35側の第1のバルブ付き給気口42には加圧水蒸気給気用の第1の配管46が、第2のバルブ付き給気口43には常温加圧エア給気用の第2の配管47が各々連結されている。バルブ付き排水口44には排水用のドレン管44aが連結されている。
【0029】
排気用配管45は排風機48に連結されている。第1の配管46は切換バルブ49を介して加圧水蒸気発生用のボイラー50に連結され、この第1の配管46の中間にはドレンバルブ51を介してドレン管52が連結されている。第2の配管47はコンプレッサー53に連結され、ドレン管44aは排水溝側へ導出されている。
【0030】
以上のように構成される成形型11、圧縮装置21及び水蒸気加熱成形装置31を用いて前述したパルプモールド材料により緩衝材を成形する工程を説明する。
【0031】
先ず、成形型11の枠体14の下端部に下型12を嵌合し、この下型12の上面側から枠体14の内周面にかけて不織布等の通気通水性のシート18を敷設する。この状態で前述したパルプモールド材料1を所定量投入して下型12の凹凸形状の上面側全面に行き渡るように押込み充填する。
【0032】
このパルプモールド材料1の充填後、この材料1の上面に前述したシート18を敷設して、枠体14の上口部から上型13を嵌挿してシート18を介してパルプモールド材料1上に載置する。この状態で上型13の上面両側の案内兼用固定片15の案内長孔15aにハンドル付き締付けねじ部材16を挿通して枠体14側に上型13が摺動できる程度に締付けておく。
【0033】
尚、この成形型11にパルプモールド材料1を充填する場合、内周面、即ち、下型12の上面側、枠体14の内周面及び上型13の内面側に不織布等の通気通水性のシート18を敷設しているが、下型12、上型13及び枠体14に穿設される通気孔12a,13a及び14aの孔径を小径に形成し、また、各型12,13及び枠体14の内面側に滑性層を形成しておくことによりシート18を省くことができる。通気孔12a,13a,14は、後述するようにエアシリンダにより圧力が加えたときに、パルプモールド材料1中に含まれている空気が逃げるためのものである。
【0034】
このようにしてパルプモールド材料1が充填された成形型11を圧縮装置21の成形型収容部24に収容し、保持部材26により下部両側から挟圧保持して圧縮装置21の所定位置にセットする。
【0035】
この状態で、エアシリンダ23を作動させてシリンダロッド23aの下方へ移動させる。このシリンダロッド23の下方向の移動によって押圧盤25が加圧され、その結果押圧盤25が成形型11の枠体14内に嵌挿され、上型13の上面側に圧接させられる。さらにエアシリンダ23を作動させて押圧盤25により上型13を押圧し、成形型11内のパルプモールド材料1を所定の圧力で圧縮する。これにより例えばパルプモールド材料1は乾燥後の密度が0.125g/cm3 (=125kg/m3 )程度となるように調整され、下型12の凹凸形状に沿う形状に成形される。
【0036】
この状態でハンドル付き締付けねじ部材16を締付けて上型13を案内兼用固定片15を介して枠体14に対して固定する。
【0037】
この後、エアシリンダ23のシリンダロッド23aを戻し動作によって上昇させ、成形型11を圧縮装置21の成形型収容部24から取出して水蒸気加熱成形装置31に移動させる。更に、成形型11内のパルプモールド材料1の成形体を結合乾燥させて所定形状の緩衝材を成形する。
【0038】
先ず、圧縮装置21から取出した成形型11を水蒸気加熱成形装置31の成形型収容室33に収容する。この収容は収容室33の前面壁部33aを開放すると共に上蓋となる排気室34を跳上げ開放し、収容室33内の空胴部37の成形型取付面37aを露呈させる。この開口部38に成形型11を嵌挿して枠体14のフランジ14bを成形型取付面37a上に係合載置してトグルクランプ39により締付けて固定する。この成形型11の水蒸気加熱成形装置31内への嵌挿固定後、成形型収容室33を、前面壁部33aを閉じると共に排気室34を閉じて密閉する。
【0039】
この状態で整圧室35側の第1の配管46の切換バルブ49を開き、ボイラー50を駆動して加圧水蒸気を発生させる。この加圧水蒸気は、ほぼ1気圧〜1.5気圧で、熱に換算したときに100℃〜110℃に設定されて、第1の配管46を通して第1のバルブ付き給気口42から整圧室35に送気させる。加圧水蒸気はこの整圧室35において水滴防止ネット40により水滴が除去されると共に圧力が均等化されて成形型収容室33の空胴部37内に供給される。水蒸気の圧力が高すぎると、パルプモールド材1の中空粒子が変形してしまったり、割れてしまったりする。逆に圧力が低いと変性澱粉が十分に糊化しなくなる。
【0040】
この際、整圧室35内に結露した水滴はバルブ付き排水口44からドレン管44aを通して排水し、また、第1の配管46内に結露した水滴はドレンバルブ51を開いてドレン管52を通して排水する。
【0041】
このようにして、整圧室35及び第1の配管46内の結露がなくなった状態で排水口44のバルブ及びドレンバルブ51を閉じることによって水蒸気は成形型収容室33の空胴部37から成形型11内のパルプモールド材料1の成形体に供給される。空胴部37に供給される水蒸気は成形型11内に、下型12及び枠体14の通気孔12a及び14aを通して進入し、パルプモールド材料1の成形体を加熱しながら通過し、上型13の通気孔13aから成形型収容室33の上方の排気室34に達する。水蒸気がパルプモールド材料1を通過する際にパルプモールド材料1に熱と水分を供給する。その結果、変性澱粉が糊化する。その後、水蒸気はこの排気室34の上面部34aの排気口41から排気用配管45を通して排風機48により強制的に排気させる。
【0042】
このようにして、成形型11の下部から供給され、パルプモールド材料1の成形体を通過した水蒸気は排風機48により負圧、例えば0.5気圧程度で強制的に排気され成形体の加熱が行われる。
【0043】
この水蒸気の供給と強制排気を所要時間(数十秒間)継続し、強制排気を併用しながら、第1のバルブ付き給気口42を閉じて第2のバルブ付き給気口43を開き、第2の配管47からコンプレッサー53により発生される所定の気圧のバインダーとしての変性澱粉の糊化する温度以下の気体例えば1.4気圧程度の乾燥した常温風を整圧室35に送風し、この送風を数十秒継続する。
【0044】
この送風・強制排気の終了後、成形型11を水蒸気加熱成形装置31から、前述の如く成形型収容室33を開放することにより取出し、この直後に成形型11からパルプモールド材料1の成形体を離型する。
【0045】
このようにして、成形型11内のパルプモールド材料は、水蒸気加熱成形装置31の本体32内において水蒸気加熱され、この間にバインダーとして添加されている変性澱粉は糊化する。この水蒸気加熱後、水蒸気加熱成形装置31から取出された成形型11内に離型まで保持されている間に、水蒸気により加えられた熱により変性澱粉の糊化が進行すると共に糊化した澱粉の水分が蒸発することで澱粉の結合力は成形体を成形型11から離型するに充分となる。
【0046】
この第1の実施の形態例に係る水蒸気を用いて加熱成形する方法では、パルプモールド材料1を通過する際に、パルプモールド材料1に熱及び水分が供給されるためパルプモールド材料1の水分量は20〜60重量%であればよい。この水分量の下限の20重量%は、小紙片を綿状に解繊されたもの混合物と中空粒子並びに変性澱粉の混練を容易に可能とするために必要な量である。但し、変性澱粉を糊化するのに必要な水分量には若干不足しているが、この不足分は水蒸気によって補われる。水分量の上限の60重量%は、成形体の乾燥時間と離型性によって決定される。
【0047】
次に、この水蒸気加熱工程によりパルプモールド材料を緩衝材に成形する具体的実験例を説明する。
【0048】
〔成形実験例1〕
前述の配合により用意されたパルプモールド材料を成形型に所定量充填して加圧することにより、密度が0.125g/cm3 (=125kg/m3 )となるようにする。この成形型を加熱成形装置に取付けて成形型の下部から、100℃〜110℃(1気圧〜1.4気圧)の水蒸気を通し1分30秒間加熱し、成形型を成形装置より取り外し約1分間成形体を常温雰囲気中で保持した後、成形体を成形型より取り出した。この約2分30秒間の間に、成形体はバインダーとして添加した変性澱粉の糊化により成形型から離型するに充分な結合力を発現していることが確認できた。離型後の成形体は送風乾燥機で60℃で4時間の二次乾燥を行なうことにより、緩衝材として実用可能な乾燥状態となった。水蒸気加熱の時間は成形体の肉厚、金型構造に依存し、澱粉に水分を供給することと、澱粉に糊化温度以上の熱を加えることにより糊化が開始するので、成形体全体に水蒸気が充満してから約20秒間以上の水蒸気加熱が必要となる。本実験例で、水蒸気加熱の時間は1分20秒間以下では全体が充分に糊化するに至らず、乾燥後の製品強度が不足した。又、2分間以上10分間程度の水蒸気加熱で製品強度の変化は殆ど見られない。
【0049】
〔成形実験例2〕
前述したパルプモールド材料を充填し密度調整を終えた成形型を水蒸気加熱成形装置に取付け、成形型の下部から100℃〜110℃(1気圧〜1.4気圧)の水蒸気を供給するとともに、成形型上部から成形体を通過した水蒸気を0.5気圧程度の負圧で強制的に吸引・排気し加熱した。この場合、水蒸気を成形装置に供給してから約20秒間で水蒸気は成形型内の成形体を通過し、成形装置上部の排気口に取付けた排風機から排出させた。更にこの後、水蒸気の供給と強制排気を20秒間継続し、強制排気も併用しながら、水蒸気の供給から1.4気圧程度の乾燥した冷風に切り換え30秒間送風した。これにより、送風・強制排気を終了し、成形装置から成形型を取り外した直後に成形型から成形体を離型することができた。離型後の成形体中の澱粉の結合力は実験例1と同様に離型するに充分であり、水分量は実施例1より減少していることから、強制排気を併用することにより、水蒸気加熱時間(1分30秒間→40秒間)は約1/2になることが分かった。加熱後、水蒸気から乾燥冷風に切り換え強制排気を併用することで、成形体の水分蒸発を促進するので、離型までの時間の短縮が計れた(1分間→30秒間)。同時に、乾燥冷風の供給は成形体の冷却も行うので、離型後の成形体のハンドリングも容易となる。従って、実験例1、本実験例2ともに発泡スチロール(成形サイクル:約3分間)と同等以下の成形サイクルタイム(約1分10秒間〜約2分30秒間)で緩衝用パルプモールドの成形が可能であることが確認された。
【0050】
〔緩衝特性の評価〕
実験例1により成形された成形体を動的圧縮試験より、応力−歪み線図を作成し、緩衝性を評価した。本パルプモールド材料の成形体の50%歪みでの圧縮力は、発泡倍率40倍の発泡スチロールと同等の値が得られた。後述する比較例で成形したサンプル(ウェット方式)も同等の圧縮応力が得られている。これより、発泡スチロールと同等の緩衝特性(緩衝係数:Cf=圧力応力/変形エネルギー)の成形体が作成出来ることが確認された。この結果を図7において実験例1(ドライ方式;熱膨張性中空粒子3%)と比較例(ウェット方式;熱膨張性中空粒子5%)、ドライ方式でバインダーとしてコーンスターチ10%を使用したサンプル(熱膨張性中空粒子3%)、及び発泡スチロール(40倍発泡)の動的圧縮変形特性を比較している。
【0051】
〔熱膨張性中空粒子添加量の影響〕
実験例1の方法で熱膨張性中空粒子を、パルプ材料に対し1.4重量%、2.8重量%、5重量%、10重量%と変化させ、静的圧縮試験で応力−歪み線図を作成し、緩衝特性の比較をした。1.4重量%の添加量では、充分な添加効果が見られなかった。5重量%では、2.8重量%と同等の特性であり、熱膨張性中空粒子を増やした効果が見られない。更に、10重量%にすると、材料強度が大幅に低下し、成形型からの離型が困難となる。従って、熱膨張性中空粒子の添加量は2〜5重量%程度が適切な量と言える。図8、図9、図10に静的圧縮変形特性を示す。
【0052】
〔澱粉の種類による影響〕
実験例1の方法で、澱粉の種類による緩衝性の違いを澱粉量添加量を10重量%として評価した。コーンスターチ、タピオカ澱粉は、100℃の水蒸気加熱3分間では、充分に糊化せず結合力が不十分で材料強化、成形品の表面性ともに劣る。一方、変性澱粉では、100℃の水蒸気加熱3分間で充分に糊化し、材料強度、表面性とも良好で、コーンスターチ、タピオカ澱粉に比較して緩衝特性(緩衝係数Cf)が15〜20%程度良かった。(図7にコーンスターチとアセチル化変性澱粉を使用した動的圧縮変形特性の比較、他を示す。)変性澱粉は澱粉分子中の水酸基の一部がアセチル基や、エステル基に置換されたもので、コーンスターチに比べ糊化温度が15〜25℃低く約55〜65℃であり、糊化に要する時間も短縮されるため、発泡スチロール代替の緩衝材用パルプモールドのバインダーとして、より適していることが確認された。
【0053】
〔比較例:スラリー状パルプ系材料を用いたパルプモールド〕
製紙工程で用いられる叩解したパルプを用いて、乾燥状態のパルプに対して発泡済み熱膨張性中空粒子(F−80D;松本油脂製薬(株))5重量%とロジン系表面処理剤をパルプに対し2重量%添加し、プラネタリーミキサーで混合し、固形分10%(水分90%)のパルプスラリーを作成した。このスラリーをラジオ付カセットレコーダ(CFD−33;ソニー(株))用クッションのアルミ製金型に所定量充填し、約30%の水分をプレス脱水後、100℃の送風乾燥機内で、金型に入れた状態で乾燥させた。金型から離型できる材料強度(含水率<15%程度)になるまでに乾燥するのに要した時間は約5時間であった。更に、真空ポンプを併用しても乾燥時間は約2時間必要であった。
【0054】
以上のように本発明によるパルプモールド材料は新聞故紙等の、故紙パルプを主成分とし、バインダーとしての変性澱粉及び熱膨張性中空粒子を含有し、変性澱粉は比較的低い温度で糊化するので、加熱成形時の加熱温度が低くなり、離型時間を短縮できると共に熱膨張性中空粒子による弾性も損なわれず、発泡スチロールと同等の成形サイクル時間及び緩衝特性を実現でき、故紙の有効利用、省資源という観点からも、発泡スチロールに代替できる環境に優しい緩衝包装材を提供できて産業への応用価値は極めて大である。
【0055】
次に、前述したようにして得られたパルプモールド材料を用いてパルプモールド体、即ち緩衝体を成形する成形装置の本発明の第2の実施の形態例について図11以下を用いて説明する。尚、以下に述べる第2の実施の形態例は、熱風により加熱成形するための装置に関するものである。
【0056】
第2の実施の形態例に用いられる成形型及び圧縮装置は第1の実施の形態例で用いられた成形型及び圧縮装置と同じものが用いられるのでここでの説明は省略し、熱風加熱成形装置についてのみ説明する。
【0057】
この第2の実施の形態例に係る熱風加熱装置で加熱成形する場合では上述した第1の実施の形態例の水蒸気を用いる水蒸気加熱成形装置によって成形されるパルプモールド材料より水分の多いパルプモールド材料が用いられる。この第2の実施の形態例で用いられるパルプモールド材料は、例えば解繊物に対して水分を80重量%となっている。尚、第2の実施の形態例では、30〜80重量%の水分量を有するものが用いられる。この下限の30重量%は、小紙片及び綿状に解繊されたものとの混合物と、中空粒子及び変性澱粉が容易に混ぜ合わせることが出来、且つ変性澱粉が熱風によって加熱されて糊化するのに足りるだけの水分量である。上限の80重量%は乾燥時間と離型性によって決定される。この第2の実施の形態例の場合、水分量の上限、下限とも熱風によって加熱した際に失われる水分の量が当然加味されている。
【0058】
図11及び図12に示すように、熱風加熱成形装置131は、本体132が成形型収容室133とこの収容室133を上下に挟んで連続して配される上側の排気室134と下側の整圧室135とから構成されている。本体132は機枠台136に保持されている。本体132の収容室133の前面壁部133aは開閉することができる。排気室134は頭截角錐状に形成されて収容室133に対して後端縁側を支点として跳上げ開放可能に連結されている。
【0059】
収容室133には、下側の整圧室135と連通して成形型11の嵌挿保持用の空胴部137が設置されている。この空胴部137の上面側の成形型取付面部137aには成形型11の枠体14が嵌挿される開口部138が形成されている。この開口部138を囲繞する部面には成形型11の枠体14をフランジ14bにおいて締付けるトグルクランプ139が取付けられている。
【0060】
整圧室135は逆頭截角錐状に形成されて内部に水滴防止ネット140が架張されている。
【0061】
このように構成される熱風加熱成形装置131の本体132に各配管が設置されている。
【0062】
即ち、排気室134の上面部134aには排気口141が設けられている。整圧室135の底面部135aには第1、第2のバルブ付き給気口142,143とバルブ付き排水口144が並設されている。排気室134側の排気口141には排気用配管145が連結されている。整圧室135側の第1のバルブ付き給気口142には熱風給気用の第1の配管146が、第2のバルブ付き給気口143には常温加圧エア給気用の第2の配管147が連結されており、バルブ付き排水口144には排水用のドレン管144aが連結されている。
【0063】
排気用配管145は排風機148に連結されている。第1の配管146は切換バルブ149を介して熱風送風装置150に連結されている。第2の配管147はコンプレッサー151に連結され、ドレン管144aは排水溝側へ導出されている。
【0064】
以上のように構成される成形型11、圧縮装置21及び熱風加熱成形装置131を用いて前述したパルプモールド材料により緩衝材を成形する工程を説明する。
【0065】
先ず、成形型11の枠体14の下端部に下型12を嵌合し、この下型12の上面側から枠体14の内周面にかけて不織布等の通気通水性のシート18を敷設する。この状態で前述したパルプモールド材料1を所定量投入して下型12の凹凸形状の上面側全面に行き渡るように押込み充填する。
【0066】
このパルプモールド材料1の充填後、この材料1の上面に前述したシート18を敷設して、枠体14の上口部から上型13を嵌挿してシート18を介してパルプモールド材料1上に載置する。この状態で上型13の上面両側の案内兼用固定片15の案内長孔15aにハンドル付き締付けねじ部材16を挿通して枠体14側に上型13が摺動できる程度に締付けておく。
【0067】
なお、第1の実施の形態例と同様にこの成形型11にパルプモールド材料1を充填する場合、内周面、即ち、下型12の上面側、枠体14の内周面及び上型13の内面側に不織布等の通気通水性のシート18を敷設しているが、下型12、上型13及び枠体14に穿設される通気孔12a,13a及び14aの孔径を小径に形成し、また、各型12,13及び枠体14の内面側に滑性層を形成しておくことによりシート18を省くことができる。
【0068】
このようにパルプモールド材料1を充填した成形型11を圧縮装置21の成形型収容部24に収容して保持部材26により下部両側から挟圧保持して所定位置にセットする。
【0069】
この状態で、エアシリンダ23を作動させてシリンダロッド23aの下方へ移動させる。シリンダロッド23aの下方向への移動により押圧盤25が押圧され、押圧盤25が成形型11の枠体14内に嵌挿して上型13の上面側に圧接させられる。さらにエアシリンダ23を作動させて押圧盤25により上型13が押圧され、成形型11内のパルプモールド材料1が所定の圧力で圧縮される。これにより例えばパルプモールド材料1は乾燥後で密度が0.125g/cm3 程度となるように調整され、下型12の凹凸形状に沿う形状に成形される。パルプモールド材料1に圧力を加えることによってパルプモールド材料中の空気を抜くとともに、パルプモールド材料の結合力を向上させる。
【0070】
この状態でハンドル付き締付けねじ部材16を締付けて上型13を案内兼用固定片15を介して枠体14に対して固定する。
【0071】
この後、エアシリンダ23のシリンダロッド23aを戻し動作により上昇させて、成形型11を圧縮装置21の成形型収容部24から取出して熱風加熱成形装置131に移動させる。成形型11内のパルプモールド材料1の成形体を熱風加熱成形装置131により結合乾燥させて所定形状の緩衝材を成形する。
【0072】
先ず、圧縮装置21から取出した成形型11を熱風加熱成形装置131の成形型収容室133に収容する。この収容動作は収容室133の前面壁部133aを開放すると共に上蓋となる排気室134を跳上げ開放し、収容室133内の空胴部137の成形型取付面137aを露呈させる。この状態で、この開口部138に成形型11を嵌挿して枠体14のフランジ14bを成形型取付面137a上に係合載置してトグルクランプ139により締付けて固定する。この成形型11の嵌挿固定後、成形型収容室133を、前面壁部133aを閉じると共に排気室134を閉じて密閉する。
【0073】
この状態で整圧室135側の第1の配管146の切換バルブ149を開き、熱風送風装置150を駆動して熱風を発生させる。この場合、整圧室135側の排水口144のバルブを閉じておく。ほぼ1気圧〜1.5気圧熱に換算したときに100℃〜110℃に設定された熱風が、第1の配管146を通して第1のバルブ付き給気口142から整圧室135に送気されて圧力が均等化され成形型収容室133の空胴部137内に供給される。この熱風は、空胴部137から成形型11内に、下型12及び枠体14の通気孔12a及び14aを通して進入し、パルプモールド材料1の成形体を加熱しながら通過し、上型13の通気孔13aから排気室134に達する。熱風は上面部134aの排気口141より水蒸気を含んだ熱風となって排出される。この熱風の排出は排気用配管145に連結される排風機148により強制的に行われる。
【0074】
このようにして、成形型11の下部から供給され、パルプモールド材料の成形体を通過した熱風は排風機148により負圧、例えば0.5気圧程度で強制的に排気されて成形体の加熱が行われる。この熱風の供給と強制排気を所要時間(数十秒間)継続し、強制排気を併用しながら、第1のバルブ付き給気口142を閉じて第2のバルブ付き給気口143を開き、第2の配管147からコンプレッサー151により発生される所定の気圧で変性澱粉の糊化温度以下の温度以下の気体、、例えば1.4気圧程度の乾燥した常温風を整圧室135に送風し、この送風を数十秒継続する。
【0075】
この送風・強制排気の終了後、成形型11を熱風成形装置131から取出してパルプモールド材料1の成形体を離型する。
【0076】
このようにして成形型11内のパルプモールド材料1の成形体を熱風加熱することにより、バインダーとして添加されている変性澱粉は糊化し、糊化した変性澱粉の水分が蒸発することで変性澱粉の結合力は成形体を成形型11から離型するに充分となる。
【0077】
次に、この熱風加熱工程によりパルプモールド材料をパルプモールド体としての緩衝材に成形する具体的実験例を説明する。
【0078】
〔成形実施例3〕
前述の配合により用意されたパルプモールド材料を成形型に所定量充填して加圧することにより、密度が0.125g/cm3 (=125kg/m3 )となるようにする。この成形型を熱風加熱成形装置に取付けて成形型の下部から、100℃〜110℃(1気圧〜1.4気圧)の熱風を供給する。この熱風加熱成形装置への供給から約1分間で熱風は成形型内の成形体を通過し、成形装置上部の排気口より水蒸気を含んだ熱風となって排出されるようになる。更に、熱風を30秒間供給した後、成形装置下部の供給弁を締め、成形装置より成形型を取り出す。この熱風加熱の間(1分30秒間)に、バインダーとして添加した変性澱粉は糊化する。熱風加熱の後、離型まで成形体が型内に保持されている1分間程度の間に熱風により加えられた熱により、澱粉の糊化が進行するとともに糊化した澱粉の水分が蒸発することで、澱粉の結合力は成形体を成形型から離型するに充分な結合力を発現することが確認できた。強制排気を併用することにより乾燥までの時間短縮を計れることは言うまでもない。この実験例3では、熱風加熱の時間は成形体を熱風が通過し始めてから20秒間未満では全体が充分に糊化するに至らず、乾燥後の製品強度が不足した。なお、熱風加熱の時間は成形体の肉厚、成形型構造に依存し、澱粉に水分を供給することと、澱粉に糊化温度以上の熱を加えることにより糊化が開始する。このため実験例3の成形体では成形体全体に熱風が充満してから強制排気を併用しない場合は20秒間以上の加熱と約30秒間程度以上の型内保持が必要となる。更に、この離型後の成形体は送風乾燥で二次乾燥(60℃4時間)を行うことにより、緩衝材として実用可能な乾燥状態となった。
【0079】
〔成形実験例4〕
前述したパルプモールド材料を充填し密度調整を終えた成形型を加熱成形装置に取付け、成形型の下部から100℃〜110℃の熱風を供給するとともに、成形型上部から成形体を通過した熱風を0.5気圧程度の負圧で強制的に吸引・排気し加熱した。この場合、熱風を成形装置に供給してから約20秒間で熱風は成形型内の成形体を通過し、成形装置上部の排気口に取付けた排風機から水蒸気を含んだ熱風となって排出された。更にこの後、熱風の供給と強制排気を20秒間継続し、強制排気も併用しながら、熱風の供給から1.4気圧程度の乾燥した冷風に切り換え30秒間送風した。これにより、送風・強制排気を終了し、成形装置から成形型を取り外した直後に成形型から成形体を離型することができた。離型後の成形体中の澱粉の結合力は実験例3と同様に離型するに充分であり、水分量は実験例3より減少している。このことから強制排気を併用することにより、成形体全体に熱風が行き渡るのに要する時間(約1分間→約20秒間)、実質的な熱風加熱時間(30秒間→20秒間)ともに約1/2になることが分かった。加熱後、熱風から乾燥冷風に切り換え強制排気を併用することで、成形体の水分蒸発を促進するので、離型までの時間の短縮が計れた(1分間→30秒間)。同時に、乾燥冷風の供給は成形体の冷却も行うので、離型のち成形体のハンドリングも容易となる。従って、実験例3、実験例4ともに発泡スチロール(成形サイクル:約3分間)と同等以下の成形サイクルタイム(約1分10秒間〜約2分30秒間)で緩衝用パルプモールドの成形が可能であることが確認された。
【0080】
〔緩衝特性の評価〕
上述した実験例3及び4の製造方法で成形された緩衝特性試用ブロックで動的圧縮試験を行い、応力−歪み線図を作成し、緩衝性を評価した。実験例3及び実験例4の製造方法での緩衝特性は差がなく成形体の50%歪みでの圧縮力は、発泡倍率40倍の発泡スチロールと同等の値が得られた。これより、発泡スチロールと同等の緩衝特性(緩衝係数:Cf=圧縮応力/変形エネルギー)の成形体が作成出来ることが確認された。この結果を図13において実験例3及び実験例4(ドライ方式;熱膨張性中空粒子3%)と発泡スチロール(40倍発泡)の動的圧縮変形特性を比較している。
【0081】
以上のように説明した各実験例によれば、解繊パルプと熱膨張性中空粒子、及びバインダーとして変性澱粉を用い、材料系が分離しない程度の少量の水分(水分量30重量%〜80重量%で、好ましくは30重量%〜50重量%の範囲)で均一に混合した材料を成形型に充填後、変性澱粉の糊化温度以上の熱風を成形型の一部より送り、成形型に充填した材料を通過させ加熱することにより澱粉が糊化し、更に加えられた熱風の熱量により糊化した澱粉の水分が蒸発することにより充分な結合力を持つ成形体を得ることができる。又、熱風での加熱と同時に熱風を送り込む面と略反対面から強制的に吸引・排気を行うことにより型内の成形体全体が糊化温度以上に温度上昇する時間が短縮され、加熱から離型までの時間を短縮することが可能となる。又、加熱による糊化が完了した後、熱風の供給を遮断し、糊化温度以下の乾燥した冷風(空気又は、窒素など)に切り換えて成形体を冷却することにより、加熱から離型までの時間を短縮することが可能となる。この場合も、乾燥した冷風の供給側の略反対面から強制的に吸引・排気を行うことにより、成形体の水分蒸気を促進し、澱粉の固化が促進され成形体の結合力が上がるので、加熱後、離型までの時間短縮が更に計れることとなる。このようにして加熱後、離型された成形体を(乾燥機で水分量15%以下程度まで)二次乾燥させることで、発泡スチロールに代替可能な性能と生産性のパルプモールド緩衝材を提供することが出来る。
【0082】
以上のように本発明の第2の実施の形態例によれば新聞故紙等の故紙パルプを主原料とし、澱粉系バインダー及び熱膨張性中空粒子を含有するパルプモールド材料を用い、熱風加熱によりパルプモールド体を成形するので、短時間で離型できて優れた緩衝特性を有する緩衝用パルプモールド体を得ることが可能となり、現行発泡スチロールと同等の成形サイクル時間及び緩衝特性を実現でき、故紙の有効利用、省資源という観点からも、発泡スチロールに代替できる環境に優しい緩衝包装材を提供できて産業への応用価値は極めて大である。
【0083】
尚、上述した各実施の形態例では、パルプモールド材料を構成する主成分としてのパルプとしてパルプ解繊物を用いている。このパルプ解繊物は前述したように数mmの大きさの小紙片と綿状に解繊されたものの混合物である。小紙片と綿状に解繊されたものとの割合いは、粉砕機によってどれだけの時間粉砕を行なわせるかにかかっているが、長時間粉砕を行なうとコストがかかるだけでなく、殆ど綿状の解繊されたもの、もしくは綿状に解繊されたものだけになると水分がしみ込みにくくなってしまう。よって、小紙片と綿状に解繊されたものをどの程度の割合いにするのかは、コストと水分のしみ込みやすさの観点から適宜決定すればよい。
【0084】
【発明の効果】
以上のように本発明によるパルプモールド材料は、パルプを主成分とし、バインダーとしての澱粉及び熱膨張性中空粒子を含有するので、適度の弾性を保有し、優れた緩衝特性を実現でき、また、パルプとして故紙パルプを用いることができて、故紙の有効利用、省資源という観点からも、発泡スチロールに代替できる環境に優しい緩衝包装材を提供できて産業への応用価値は極めて大である。
【0085】
また、本発明によればパルプを主原料とし、澱粉系バインダー及び熱膨張性中空粒子を含有するパルプモールド材料を用い、加熱してパルプモールド体を成形するので、短時間で離型できて優れた緩衝特性を有する緩衝用パルプモールド体を得ることが可能となり、現行発泡スチロールと同等の成形サイクル時間及び緩衝特性を実現でき、また、パルプとして故紙パルプを用いることができて故紙の有効利用、省資源という観点からも、発泡スチロールに代替できる環境に優しい緩衝包装材を提供できて産業への応用価値は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るパルプモールド材料のSEM写真の模式図である。
【図2】本発明に係るパルプモールド材料を用いて成形体を成形する成形型の一例を示す分解斜視図である。
【図3】図2に示した成形型に充填されるパルプモールド材料を圧縮する圧縮装置の一例を示す斜視図である。
【図4】図3に示した圧縮装置の要部構成を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態例に係る加熱装置の構成を示す系統図である。
【図6】図5に示した加熱装置の本体部の構成を示す斜視図である。
【図7】パルプモールド材料の動的圧縮試験の結果としての圧縮変形率と圧縮応力との関係を示すグラフである。
【図8】パルプモールド材料の静的圧縮試験の結果としての圧縮変形率と圧縮応力との関係を示すグラフである。
【図9】パルプモールド材料の静的圧縮試験の結果としての圧縮変形率と圧縮応力との関係を示すグラフである。
【図10】パルプモールド材料の静的圧縮試験の結果としての圧縮変形率と圧縮応力との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の第2の実施の形態例に係る加熱装置の構成を示す系統図である。
【図12】図11に示した加熱装置の本体部の構成を示す斜視図である。
【図13】パルプモールド材料の動的圧縮試験の結果としての圧縮変形率と圧縮応力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 パルプモールド材料、2 パルプ、4 中空粒子、3 変性澱粉、11 成形型、21 圧縮装置、31 水蒸気加熱成形装置、131 熱風加熱成形装置
Claims (12)
- パルプを主原料とし澱粉系バインダーと熱膨張中空粒子を含有するパルプモールド材料に、上記澱粉系バインダーを糊化するための水分とを混練し、
上記混練したパルプモールド材料を成形型に充填して加圧し、
上記加圧されたパルプモールド材料を上記澱粉バインダーが糊化する温度以上に水蒸気によって加熱して上記澱粉バインダーを糊化させることによって成形を行い、
上記パルプモールド材料中に占める水分量が20〜60重量%であることを特徴とするパルプモールド体の成形方法。 - 上記パルプは、故紙を数mm以下に切断された紙片と上記紙片を更に粉砕した綿状解繊物からなり、上記綿状の解繊物の割合が上記紙片よりも多い混合物であることを特徴とする請求項1に記載のパルプモールド体の成形方法。
- 上記加圧されたパルプモールド材料は、圧力が1〜1.5気圧の水蒸気によって20秒以上加熱されることを特徴とする請求項1に記載のパルプモールド体の成形方法。
- 上記パルプモールド材料を通過した水蒸気は、吸引され、且つ強制排気されることを特徴とする請求項1に記載のパルプモールド体の成形方法。
- 上記加圧されたパルプモールド材料には、上記水蒸気によって加熱された後に、上記澱粉系バインダーが糊化する温度以下の気体が供給されることを特徴とする請求項1に記載のパルプモールド体の成形方法。
- 上記熱膨張中空粒子は、外殻のポリマーが内殻の炭化水素を覆い、加熱により上記外殻のポリマーが軟化するとともに、上記内殻の炭化水素がガス化して膨張する粒子であることを特徴とする請求項1に記載のパルプモールド体の成形方法。
- 上記加圧されたパルプモールド材料を上記澱粉バインダーが糊化する温度以上に熱風によって加熱することを特徴とする請求項1に記載のパルプモールド体の成形方法。
- 上記加圧されたパルプモールド材料は、圧力が1〜1.5気圧の熱風によって20秒以上加熱されることを特徴とする請求項7に記載のパルプモールド体の成形方法。
- 上記パルプモールド材料を通過した熱風は、吸引され、且つ強制排気されることを特徴とする請求項7に記載のパルプモールド体の成形方法。
- 上記加圧されたパルプモールド材料には、上記熱風によって加熱された後に、上記澱粉系バインダーが糊化する温度以下の気体が供給されることを特徴とする請求項7に記載のパルプモールド体の成形方法。
- 上記熱膨張中空粒子は、外殻のポリマーが内殻の炭化水素を覆い、加熱により上記外殻のポリマーが軟化するとともに、上記内殻の炭化水素がガス化して膨張する粒子であることを特徴とする請求項7に記載のパルプモールド体の成形方法。
- 上記熱膨張中空粒子の添加量は2〜5重量%であることを特徴とする請求項6又は11に記載のパルプモールド体の成形方法。
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