JP3658572B2 - 長尺部材用荷吊り治具 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の長尺部材を安全で且つ効率よく吊り上げることのできると共に、荷卸しできる長尺部材用荷吊り治具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年建築工事に際し、柱、梁、床等のコンクリート構造部材をプレキヤスト化し工期短縮と省人化などの施工の合理化を図る工法が多くなって来ているが、特に床部材など部材数が多く高層階に荷揚げする場合、所定場所への吊り上げ配置と次の部材の荷取りまでの時間を多く要し、せっかくの合理化工法のメリットが損なわれている。一般に工事現場に設置する揚重機は最も重量の大きい柱、梁の吊り上げに十分対応できる吊り上げ能力を有する揚重機を設置するが、床部材等比較的軽量の部材を揚重する場合、図4に示すように部材1を一個ずつワイヤ2で吊って、揚重機のフック3で吊り上げていた。これは、揚重機の荷揚げ能力に対して極めて小さなものであり、作業上のロスを生じている。これは一度に複数の部材を安全に揚重し、さらに安全に据え付け工事が可能で有効な吊り治具が存在しないためである。
【0003】
これを解決するため、従来は図5、6に示すように、複数の部材1a、1b、1cをそれぞれ長さの異なるワイヤ一4、5、6を掛けそれぞれのワイヤーをクレーンのフック7に掛けて吊り上げ、最下段の部材1aから順次、現場に据え付ける方法がとられていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の図4に示す方法では、一度に1部材(製品)を揚重装置によって吊り上げ所定の位置に据え付け(セッティング)するので、数量の多い部材(製品)を所定の位置に据え付ける作業に多くの時間と手間を要し、高層建築物におけるプレキヤスト組立工法による組立工事の施工は部材の吊り上げに多大な時間的ロスを生じていた。
【0005】
また、これを解決するべく図5、6に示す様に、複数の部材を同時に吊り上げて所定の位置にセッティングする場合、複数の部材を吊り上げた状態ではワイヤ4、5、6と吊り部材1a、1b、1cが互いに干渉している為に、吊り荷の重心が安定せず、吊り荷を一つずつ荷取りする度に吊り荷の重心が移動し、安全上大きな問題があった。更に、この不安定な状態で吊り荷のセッティングを行おうとすると、最下位の部材1aから順次セッティングする事になるため、吊り荷1b、1cの下で作業しなければならず、安全上の間題があった。
また、吊り上げる部材を水平面に直角方向に高さを変えて吊り上げる方法もあるが、部材を据え付ける都度、90度部材の廻転をしなければならず足場の悪い高所での安全作業に問題があった。
このように、部材のセッティングに多くの時間を要することは、工期短縮を目的としたプレキヤスト組立工法の施工効率が著しく阻害されることになる。このため効率的な吊り上げ治具の工夫と作業上の安全確保が課題となっている。
【0006】
本発明は、前記実情に鑑み提案されたもので、複数の長尺部材を安全で且つ効率よく吊り上げることができ、かつ施工できる長尺部材の施工方法および長尺部材用荷吊り治具を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、長尺部材を複数個同時に揚重し順次一個づつ荷卸しする長尺部材用荷吊り治具であって、複数の吊り索部材で略水平に吊り上げられる荷吊り治具と、前記荷吊り治具の重心から同心円上に配置された複数の吊り金具と該吊り金具に取付けられた複数対の吊り索とを備え、該各対となったの吊り索により吊り上げられた長尺部材の重心は、前記荷吊り治具の重心と一致することを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明において、前記荷吊り治具における吊り索部材の取付け位置と、前記吊り金具の取付け位置とが一致することを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項3に記載の発明において、前記複数対の吊り索は、それぞれ対毎に長さが異なることを特徴するものである。
【0011】
また、請求項4に記載の発明において、前記吊り索は、吊り上げる各長尺部材と干渉しない位置に配置されたことを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項5に記載の発明において、前記長尺部材は、荷吊り治具に対する取付け角度が所定角度ずつ変化していることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項6に記載の発明において、前記荷吊り治具は、吊り上げる長尺部材の個数と同数の主梁を同一平面に配置して構成し、前記主梁のそれぞれに長尺部材吊り上げ用の吊り索を直接取付けたことを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、一実施の形態を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は、本発明に係る長尺部材用荷吊り治具の使用状態を示す正面図、図2は、本発明の長尺部材用荷吊り治具の使用状態を示す平面図である。本発明の長尺部材用荷吊り治具10は、長尺部材11を複数個同時に揚重し順次一個づつ荷卸しするものであって、複数の吊り索部材12で略水平に吊り上げられる荷吊り治具13と、荷吊り治具13の重心G0から同心円上に配置された複数の吊り金具15とこの吊り金具15に取付けられた複数対の吊り索14とを備え、該各対となったの吊り索14により吊り上げられた長尺部材11の重心G1〜G4は、前記荷吊り治具13の重心と一致している。
【0015】
荷吊り治具13は、本実施の形態において荷吊り治具13における吊り索部材12の取付け位置と、吊り金具15の取付け位置とが一致するように、荷吊り治具13の下面から上面まで貫通した吊り金具15としてもよい。この様に構成した場合、吊り金具15の上端に吊り索部材12を連結し、吊り金具15の下端に吊り索14を取付ける。吊り索部材12は、同一長さのワイヤ、チェーンスリング等が使用され、上端がシャックル16に連結されている。
【0016】
荷吊り治具13は、吊り上げる長尺部材11の個数と同数の主梁17を同一平面に配置して構成されている。主梁17は、所定の角度αで本実施の形態では、4本配設されている。また、中央に取付け板18が配置されると共に、周囲に枠体19が取付けられている。そして、この主梁17のそれぞれに長尺部材吊り上げ用の吊り金具15が重心G0から等距離の位置に直接取付けられている。更に、本実施の形態では吊り金具15に2本の吊り索14が取付けられている。ここで、重心G0を中心として等距離に取付けられた左右の吊り索14a、14aは、それぞれ長さが等しく構成されている。同様に吊り索14b、14bの長さが等しく、吊り索14c、14cおよび吊り索14d、14dもそれぞれ等しい。また、吊り索14a>吊り索14b>吊り索14c>吊り索14dの順に長さが異なっている。
【0017】
次に、以上のように構成された本発明に係る長尺部材用荷吊り治具10を使用した長尺部材の施工方法について説明する。先ず、図1に示すように長尺部材11を吊り索14によりそれぞれ吊り上げる。この際、吊り索14の長さがそれぞれ異なるので、長尺部材i、ii、iii、ivは、垂直位置が異なっている。また、長尺部材iの重心G1と長尺部材iiの重心G2と長尺部材iiiの重心G3と長尺部材ivの重心G4は、荷吊り治具13の重心G0と同一鉛直線上に在る。更に、図2に示すように長尺部材i、ii、iii、ivは、重心G0を中心として角度αずつ旋回した位置に吊り上げられているので、吊り索14と長尺部材11が干渉することなく、長尺部材を順次取り外しても全体の重心が変動することがない。
【0018】
以上のようにして吊り上げた長尺部材11、例えば床部材を建築物の高層階に揚重し、図2に示すように作業者が長尺部材iから施工して行く。この際、同時に揚重している他の長尺部材ii、iii、ivが作業者の頭上に来ることがないので安全に作業を進めることができる。また、施工の為に取り外す長尺部材iの重心G1は、荷吊り治具13の重心G0と一致しているので、吊り荷の重心が移動することなく安全に作業ができる。したがって、足場の悪い高所での作業にも安全である。
【0019】
図3は、長尺部材iiを施工する場合を示すものである。吊り荷全体をαだけ矢印方向に旋回させ、長尺部材iiを取り外して、長尺部材iの隣に並べる。この際も、作業者は吊り荷の下に位置することなく安全である。また、長尺部材iiを取り外しても、吊り荷全体の重心が移動することなく安全に作業ができる。順次このような作業を繰り返して作業ができる。
なお、本実施の形態では、4本の長尺部材を吊り上げる場合について説明したが、それ以上の本数であっても同様に適用することができる。
【0020】
【発明の効果】
この発明は前記した構成からなるので、以下に説明するような効果を奏することができる。
【0021】
本発明では、長尺部材を複数個同時に吊り上げ、順次荷卸ししつつ施工することができ、荷吊り治具の重心と、吊り上げる個々の長尺部材の重心とを一致させて吊り上げると共に、各長尺部材の前記荷吊り治具に対する取付け距離を変化させ、各長尺部材は、相互に干渉しないように吊り上げ、前記長尺部材の最下に位置するものから順次とり外して施工することができる
【0022】
このような構成としたことによって、本発明の長尺部材用荷吊り治具は複数の長尺部材を安全で且つ効率よく吊り上げることができると共に、高層建築物におけるプレキャスト組立工事を効率良く施工できる。また、長尺部材のセッティング時および荷卸し作業時に荷下作業となることがない。
【0023】
また、請求項1に記載の発明において、長尺部材を複数個同時に揚重し順次一個づつ荷卸しする長尺部材用荷吊り治具であって、複数の吊り索部材で略水平に吊り上げられる荷吊り治具と、前記荷吊り治具の重心から同心円上に配置された複数の吊り金具と該吊り金具に取付けられた複数対の吊り索とを備え、該各対となったの吊り索により吊り上げられた長尺部材の重心は、前記荷吊り治具の重心と一致するので、複数個吊り上げられた長尺部材を下から取り外しても全体のバランスが崩れることがなく、高所における荷卸し作業を安全に行うことができる。
【0024】
また、請求項2に記載の発明において、前記荷吊り治具における吊り索部材の取付け位置と、前記吊り金具の取付け位置とが一致するので、荷吊り治具に曲げ応力が生じることなく、荷吊り治具の構造を軽量化することができる。
【0025】
また、請求項3に記載の発明において、前記複数対の吊り索は、それぞれ対毎に長さが異なるため、複数の長尺部材を下から順番に荷卸しすることができ、作業の能率化、および安全化を図ることができる。
【0026】
また、請求項4に記載の発明において、前記吊り索は、吊り上げる各長尺部材と干渉しない位置に配置されたので、長尺部材を取り外す際に他の長尺部材に影響を与えることなく荷卸し作業を行うことができる。
【0027】
また、請求項5に記載の発明において、前記長尺部材は、荷吊り治具に対する取付け角度が所定角度ずつ変化しているので、荷積み作業および荷卸し作業をする際に同時に吊り上ている長尺部材の荷下になることなく、安全に作業することができる。また、より多くの長尺部材を互いに干渉することなく吊り下げることができる。
【0028】
また、請求項6に記載の発明において、前記荷吊り治具は、吊り上げる長尺部材の個数と同数の主梁を同一平面に配置して構成し、前記主梁のそれぞれに長尺部材吊り上げ用の吊り索を直接取付けたので、荷吊り治具の構造を簡易で強固なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る長尺部材用荷吊り治具の使用状態を示す正面図である。
【図2】図2は、同長尺部材用荷吊り治具の使用状態を示す平面図である。
【図3】図3は、同長尺部材用荷吊り治具の使用状態を示す平面図である。
【図4】図4は、従来の長尺部材用荷吊り方法を説明する説明図である。
【図5】図5は、従来の複数の長尺部材を吊り上げた場合を示す正面図である。
【図6】図6は、図5の側面図である。
【符号の説明】
G 重心
10 長尺部材用荷吊り治具
11 長尺部材
12 吊り索部材
13 荷吊り治具
14 吊り索
15 吊り金具
16 シャックル
17 主梁
18 取付け板
19 枠体

Claims (6)

  1. 長尺部材を複数個同時に揚重し順次一個づつ荷卸しする長尺部材用荷吊り治具であって、
    複数の吊り索部材で略水平に吊り上げられる荷吊り治具と、
    前記荷吊り治具の重心から同心円上に配置された複数の吊り金具と
    該吊り金具に取付けられた複数対の吊り索とを備え、
    該各対となったの吊り索により吊り上げられた長尺部材の重心は、前記荷吊り治具の重心と一致することを特徴とする長尺部材用荷吊り治具。
  2. 前記荷吊り治具における吊り索部材の取付け位置と、前記吊り金具の取付け位置とが一致することを特徴とする請求項に記載の長尺部材用荷吊り治具。
  3. 前記複数対の吊り索は、それぞれ対毎に長さが異なることを特徴とする請求項1または2に記載の長尺部材用荷吊り治具。
  4. 前記吊り索は、吊り上げる各長尺部材と干渉しない位置に配置されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載の長尺部材用荷吊り治具。
  5. 前記長尺部材は、荷吊り治具に対する取付け角度が所定角度ずつ変化していることを特徴とする請求項1〜4の何れか1に記載の長尺部材用荷吊り治具。
  6. 前記荷吊り治具は、吊り上げる長尺部材の個数と同数の主梁を同一平面に配置して構成し、
    前記主梁のそれぞれに長尺部材吊り上げ用の吊り金具を直接取付けたことを特徴とする請求項1〜の何れか1に記載の長尺部材用荷吊り治具。
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