JP3657693B2 - 半導体ウエーハのエッチング方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、半導体ウエーハのエッチング方法に関する。特にアルカリ水溶液を用いたアルカリエッチング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体ウエーハの化学エッチングは、半導体ウエーハを加温した酸又はアルカリ液に浸漬してウエーハ表面をエッチングするものである。化学エッチングとしては、フッ酸、硝酸、酢酸の混合液を用いた混酸エッチングと、KOHまたはNaOH等のアルカリ水溶液を用いたアルカリエッチングが代表的である。
【0003】
混酸液を用いたエッチングの形態は通常は拡散律速形であり、反応進行中、新鮮液がウエーハ全面に定期的且つ均一に供給されるか否かで各部の反応速度に差が生じ、これによって処理対象のウエーハ(以下「ワーク」と言う。)の形状精度が決定される。このため、新鮮液がウエーハ全面に定期的且つ均一に供給されるようにするため、エッチング時にはワークを回転したり混酸液を撹拌する等の方法が採られている。
【0004】
一方、KOH又はNaOH等を用いたアルカリエッチングの形態は反応律速であるため、混酸液のようにワークの回転や混酸液の撹拌等の複雑な運動形態をとらずに、容易に均一なワーク形状が得られ、さらに液寿命も長い。また、アルカリ水溶液の濃度や温度により、加工後のワークの表面粗さ、反応速度が大きく変化するという特徴がある。
【0005】
アルカリエッチングにおいては、エッチング工程中は加温したアルカリ水溶液から絶えず水分が蒸発し、アルカリ濃度が変化する。アルカリ濃度が一定でないと、エッチング加工後のワークの表面粗さ、輝度が変化し、平坦なワークを得ることができなくなる。従って、エッチング中のアルカリ濃度を管理して、必要に応じて水分を補給する必要がある。また、同一のアルカリ水溶液を繰り返し使用する場合においてもアルカリ濃度の管理が不可欠である。
【0006】
従来、アルカリ水溶液のアルカリ濃度は、計測が容易な比重計の計測値を濃度換算した結果を用いて管理されていた。例えば特開平2−137228では、エッチング中のアルカリ水溶液の比重を計測し、この計測結果に基づいて水分を補給する方法が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような従来の方法では、エッチング中のアルカリ水溶液の比重の計測結果を水分補給にフィードバックさせる方法なので、比重の計測時に対して水分の補給タイミングがずれてしまい、より精度の高い濃度管理を行うことが困難であった。
【0008】
また、エッチングが進むにつれてワークが反応除去されてアルカリ水溶液中に溶け込み、比重が変化する。例えば、ワークがシリコンウエーハの場合はSiがアルカリ水溶液中に徐々に溶け込み、その分だけアルカリ水溶液の比重が高くなる。少量のワークをエッチングする場合は、反応除去されたワークの影響を無視できるが、同一液で多量にエッチング加工を行うと、反応除去されたワークの溶解量の影響は大きく、比重計測に基づいてアルカリ濃度を正確に算出することができなくなる。従って、このような従来の方法でアルカリ水溶液のアルカリ濃度を一定に管理することは困難であった。
【0009】
本発明は、かかる問題点を解決しようとするもので、その目的は、アルカリエッチング中におけるアルカリ濃度を精度よく管理することができ、アルカリ水溶液を繰り返し使用する場合においても、エッチング加工後の半導体ウエーハの表面粗さ、輝度を変化させることなく、平坦な半導体ウエーハを得ることが可能なエッチング方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の発明は、複数枚の半導体ウエーハをアルカリ水溶液に浸漬してエッチングする方法において、エッチングに用いるアルカリ水溶液をエッチング工程におけるエッチング温度に加温してエッチング槽に充填し、該アルカリ水溶液の容量変化を計測することによってアルカリ水溶液から蒸発する水分量の経時変化を測定する蒸発水分量測定工程と、前記エッチング槽にエッチング温度に加温されて充填されたアルカリ水溶液に複数枚の半導体ウエーハを浸漬し、前記蒸発水分量測定工程で測定された蒸発水分量の経時変化に対応する水を前記アルカリ水溶液に経時的に補給して前記アルカリ水溶液のアルカリ濃度がほぼ一定に保たれた状態で前記半導体ウエーハのエッチングを行うエッチング工程とをこの順序で実施することを特徴とする半導体ウエーハのエッチング方法を提供する。
【0011】
本願の請求項2記載の発明は、請求項1記載の方法において、前記エッチング工程中での水の補給は、一定流量の水を連続的に補給することを特徴とする半導体ウエーハのエッチング方法を提供する。
【0012】
本願の請求項3記載の発明は、請求項1記載の方法において、前記エッチング工程中での水の補給は、―定量の水を一定時間間隔で補給することを特徴とする半導体ウエーハのエッチング方法を提供する。
【0013】
本願の請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか記載の方法において、前記アルカリ水溶液のアルカリはKOH又はNaOHであることを特徴とする半導体ウエーハのエッチング方法を提供する。
【0014】
本願の請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか記載の方法において、前記複数枚の半導体ウエーハをそれぞれの面と面とが向い合うように一定間隔で治具に配置し、前記治具が前記半導体ウエーハの円周方向に沿って回転するかまたは前記半導体ウエーハが円周方向に沿って回転するようにして前記エッチング工程またはそれに付随する水洗工程を行うことを特徴とする半導体ウエーハのエッチング方法を提供する。
【0015】
本発明においては、実際のエッチング工程に先立ち、エッチングに用いるアルカリ水溶液と同等のアルカリ水溶液について該アルカリ水溶液から蒸発する水分量の経時変化を予め測定しておくことにより、実際のエッチング工程において蒸発により失われる水分量を前記測定結果に基づいて補給することができる。この場合、蒸発によって経時的に失われる水分量を蒸発速度と同じ速度で補給することができるので、従来のように補給タイミングがずれることがない。また、Si等の溶け込みによる影響に左右されず、蒸発した水分を量的に精度良く補給することができる。
【0016】
また、本発明によれば、同一のアルカリ水溶液を用いて繰り返しエッチングを行う場合も、上記した水分蒸発以外の例えば治具及びワークに付着した溶液のアルカリ槽外への持ち出し等の反応以外に起因するアルカリ濃度変化を予め測定して把握しておくことにより、例え同一液で多量にエッチング加工を行ったとしても、反応除去されたワークの溶解量の影響等を区別し把握することができ、正確な濃度管理が可能となる。
【0017】
なお、一般に、アルカリエッチングでは、アルカリ水溶液の温度を均一にするために液を撹拌し、治具に立てられた複数枚のワークをそのまま浸漬し反応させているが、治具に接触するワーク外周部はワークの反応時に発生した水素の泡が付着して反応速度が低下するため、エッチング加工後のワークの厚さムラが悪化してしまう。そこで、複数枚の半導体ウエーハをそれぞれの面と面とが向い合うように一定間隔で治具に配置し、前記治具が前記半導体ウエーハの円周方向に沿って回転するかまたは前記半導体ウエーハがが円周方向に沿って回転するようにして前記エッチング工程またはそれに付随する水洗工程を行うようにすることにより、ワークに対し液が移動しているため、ワークに接する水素泡の付着が無く、反応ムラの低減が可能となる。
【0018】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例とともに説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
(比較例1)
図1は、加温したアルカリ水溶液にシリコンウエーハを浸漬してエッチングした時のアルカリ水溶液の容量、比重及びSi溶解量の経時変化を示す。アルカリ水溶液は水分の蒸発とともに容量(容量1)が減少する。また、エッチングが進むにつれてSi溶解量が増加する。さらに、エッチングが進むにつれてアルカリ水溶液の比重(比重1)も増加する。これは、水分の蒸発及びSiの溶解に伴うものである。したがって、エッチング中のアルカリ水溶液の比重を計測してアルカリ濃度を管理しようとしても、Siの溶解による影響を受けて正確なアルカリ濃度を把握することは困難である。
【0020】
(実施例1)
図2は、加温したアルカリ水溶液をそのまま放置した。この場合のアルカリ水溶液の容量及び比重の経時変化を示す。アルカリ水溶液は図1の場合と同様に、水分の蒸発とともに容量(容量2)が減少するが、この変化割合は図1の場合と同じである。一方、比重(比重2)は時間の経過とともに増加するが、図1の場合の比重1と比較すると増加の割合が小さい。これは、この比重の増加が水分の蒸発のみによるためであり、Siの溶解による影響が除去されている。次に、同等のアルカリ水溶液を加温し、シリコンウエーハを連続的に複数枚エッチングを行い、水分量の減少量のみを図2のデータに基づいて連続的に加え、アルカリ濃度を一定に保った。なお、蒸発水分の経時変化は、アルカリ水溶液の容量変化を計測することにより求めることができる。
【0021】
(比較例2)
図3及び図4は、従来のエッチング方法の一例を示す。アルカリ槽1内にアルカリ水溶液2を収容し、図3に示すような形状の従来より用いられる治具3にウエーハ4をセットしてアルカリ水溶液2に浸漬してエッチングを行った。この場合、ウエーハ4の治具3に接する部分aは、反応時に発生した水素の泡5の付着によりエッチング速度は遅くなり、ウエーハ形状は悪化する。
【0022】
(実施例2)
図5及び図6は、本発明の一実施例の方法を示す。本方法で用いる治具6は、ウエーハ4を3本の支持棒7で支持し、さらに自転軸8が治具6の円周部に接して自転することにより、治具6が円周方向に回転するようになっている。このような治具6を用いてエッチングを行うと、反応時に発生した水素の泡5は治具6の回転により撹拌され、ウエーハ4に付着するのを防止できるため、ウエーハ形状が悪化しない。
【0023】
【発明の効果】
以上説明した通り本発明によれば、アルカリエッチング中におけるアルカリ濃度を精度よく管理することができ、アルカリ水溶液を繰り返し使用する場合においても、エッチング加工後の半導体ウエーハの表面粗さ、輝度を変化させることなく、平坦な半導体ウエーハを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】加温したアルカリ水溶液にシリコンウエーハを浸漬してエッチングした時のアルカリ水溶液の容量、比重及びSi溶解量の経時変化を示す図である。
【図2】加温したアルカリ水溶液をそのまま放置した場合のアルカリ水溶液の容量及び比重の経時変化を示す。
【図3】従来のエッチング方法においてウエーハを治具にセットした様子を示す説明図である。
【図4】従来のエッチング方法におけるアルカリ槽内の様子を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施例のエッチング方法においてウエーハを治具にセットした様子を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施例のエッチング方法におけるアルカリ槽内の様子を示す説明図である。
【符号の説明】
1 アルカリ槽
2 アルカリ水溶液
3,6 治具
4 ウエーハ
7 支持棒
8 自転軸
Claims (5)
- 複数枚の半導体ウエーハをアルカリ水溶液に浸漬してエッチングする方法において、
エッチングに用いるアルカリ水溶液をエッチング工程におけるエッチング温度に加温してエッチング槽に充填し、該アルカリ水溶液の容量変化を計測することによってアルカリ水溶液から蒸発する水分量の経時変化を測定する蒸発水分量測定工程と、
前記エッチング槽にエッチング温度に加温されて充填されたアルカリ水溶液に複数枚の半導体ウエーハを浸漬し、前記蒸発水分量測定工程で測定された蒸発水分量の経時変化に対応する水を前記アルカリ水溶液に経時的に補給して前記アルカリ水溶液のアルカリ濃度がほぼ一定に保たれた状態で前記半導体ウエーハのエッチングを行うエッチング工程と
をこの順序で実施することを特徴とする半導体ウエーハのエッチング方法。 - 前記エッチング工程中での水の補給は、一定流量の水を連続的に補給することを特徴とする請求項1記載の半導体ウエーハのエッチング方法。
- 前記エッチング工程中での水の補給は、―定量の水を一定時間間隔で補給することを特徴とする請求項1記載の半導体ウエーハのエッチング方法。
- 前記アルカリ水溶液のアルカリはKOH又はNaOHであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか記載の半導体ウエーハのエッチング方法。
- 前記複数枚の半導体ウエーハをそれぞれの面と面とが向い合うように一定間隔で治具に配置し、前記治具が前記半導体ウエーハの円周方向に沿って回転するかまたは前記半導体ウエーハが円周方向に沿って回転するようにして前記エッチング工程またはそれに付随する水洗工程を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか記載の半導体ウエーハのエッチング方法。
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