JP3657581B2 - ケーブル接続部用クロージャのシール部材 - Google Patents

ケーブル接続部用クロージャのシール部材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ケーブル接続部用クロージャに着脱自在に設けられるシール部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来におけるケーブル接続部用クロージャのシール部材としては、例えば特表平3−503715号公報や特開平11−262161号公報に記載されているものが知られている。
【0003】
特表平3−503715号公報に記載のケーブルシール装置は、ゲルで形成され、ケーブルを保持するための2個の開口を有するエンドシールを備え、このエンドシールには、2個の開口間の位置からゲルの移動を阻止するためのリッジが設けられている。
【0004】
特開平11−262161号公報に記載の端面シール部材は、開閉式の端面シールベースと、この端面シールベースに嵌着され、加硫ゴム組成物で形成されたケーブルスペーサとを備え、ケーブルスペーサの突き合わせ接合面には、ケーブルを挿通する切れ目のあるシールリブが略波形状に対向形成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ケーブル接続部用クロージャの設置条件は、必ずしも水平ではなく、最大で20度に傾けた状態で設置されることがある。しかし、特開平11−262161号公報に記載のものでは、端面シールベースを閉じてケーブルを挟持した状態において、シールリブが引っ張られて、ケーブルの両側に略三角の隙間が生じることがある。クロージャを傾斜させて設置すると、その隙間から雨水等がクロージャ内に入り込み、ケーブル接続部が浸水することがある。また、特表平3−503715号公報に記載のものでは、エンドシールの材質がゲルであり、ゲルがケーブルの長手方向に対して垂直な方向の動きに追従しない。そのため、特にクロージャの設置後に配線ルートを変更する場合、ケーブルを撤去することがあるが、その場合にはエンドシールの形状が復元せず、ケーブル接続部への浸水が顕著にあらわれる。
【0006】
本発明の目的は、ケーブル接続部用クロージャを傾斜させて設置した際のケーブル接続部への浸水を防止することができるケーブル接続部用クロージャのシール部材を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ケーブル接続部を収容するクロージャに着脱自在に設けられるシール部材において、ヒンジ部を介して連結された開閉可能な1対のシールベースと、各シールベースに設けられ、1対のシールベースを閉じた状態でクロージャ内に導入されるケーブルをシールするゴム製の1対のシール部とを備え、1対のシール部の各突き合わせ面には、ケーブルを挿通させるための切欠部を形成するようにヒンジ部側からシールベースの先端側に断続的に延びる1対の第1シールリブと、各第1シールリブに隣接した位置においてヒンジ部側からシールベースの先端側に連続的に延び、各第1シールリブの切欠部にケーブルを通さない状態で、1対のシールベースを閉じたときに、シール部を塞ぐための1対の第2シールリブとが突設されていることを特徴とするものである。
【0008】
以上のような本発明において、シール部材によりケーブルを挟持する場合は、1対のシールベースを開いた状態で、例えば1対のシール部のいずれか一方の突き合わせ面における対向する切欠部にケーブルを通す。その状態で1対のシールベースを閉じて、1対のシール部の各突き合わせ面同士を突き合せると、第1シールリブが変形してケーブルの外周にまきつき、ケーブルがシールされる。
【0009】
このようにケーブルを挿通させるための切欠部を形成するように第1シールリブを構成することにより、シール部の突き合わせ面における対向する切欠部にケーブルを通したときに、第1シールリブが引っ張られる量が少なくて済むため、ケーブルの両側に略三角の隙間が生じにくくなる。また、第1シールリブの材質として、ゲルではなくゴムを用いることにより、シール部の突き合わせ面における対向する切欠部からケーブルを抜いたときに、第1シールリブが確実に復元するようになる。このため、先に使用したケーブルよりもケーブル径の小さなケーブルを使用する場合でも、ケーブルと第1シールリブとの間に隙間が形成することもない。以上により、シール部材によりケーブルを挟持したときのシール性が向上する。また、1対の第1シールリブに加えて、1対の第2シールリブを設けることにより、シール部材によりケーブルを挟持したときのシール性が更に良くなる。従って、シール部材を備えたケーブル接続部用クロージャを傾斜させて設置した際に、雨水等によってケーブル接続部が浸水することが防止される。
【0010】
また、シール部の突き合わせ面における対向する切欠部にケーブルを通さない状態で、1対のシールベースを閉じたときには、第2シールリブによってシール部が塞がれることになる。従って、ケーブルを撤去した状態で使用する場合であっても、クロージャの傾斜設置状態におけるケーブル接続部への浸水が防止される。
【0011】
また、好ましくは、シール部の両側壁面には、シール部の内側にへこむように形成されたテーパ部が設けられ、第1シールリブは、テーパ部に沿ってハの字状に延びる部分を有し、第2シールリブは、シール部における第1シールリブの内側に設けられている。このようにシール部の側壁面にテーパ部を設けることにより、シール部材によりケーブルを挟持した時に第1シールリブがケーブルの外周にまきつき易くなり、シール性がより向上する。
【0012】
また、好ましくは、1対のシールベースは、シート状のヒンジ部を介して一体成形され、1対のシールベースの先端には、1対のシールベースを閉じた時に当該シールベースを係止するための係止具が設けられている。これにより、シール部材の製作時に、1対のシールベースを組み付ける必要がなくなる。
【0013】
この場合、好ましくは、1対のシールベースのいずれか一方の先端には、係止用爪部と、係止用爪部の外側に位置する突起嵌入部とが設けられ、1対のシールベースの他方の先端には、係止用爪部と係合する係止受け部と、突起嵌入部に嵌合する拘束用突起部とが設けられ、係止用爪部と突起嵌入部と係止受け部と拘束用突起部とで係止具を構成する。これにより、ヒンジ部を薄いシートで形成した場合であっても、1対のシールベースを閉じたときに、シールベースがケーブル挿通方向にずれることを防止できる。
【0014】
また、好ましくは、シール部は、連結部材を介してシールベースに取り付けられている。これにより、シールベースとシール部とを一体成形する場合に比べて、シール部材の製作が容易に行える。また、シール部とシールベースとのいずれか一方に凹部を設けると共に他方に凸部を設け、凹凸嵌合だけでシール部とシールベースとを組み付ける場合に比べて、強度的に有利となり、シール部がシールベースから外れることを確実に防止できる。
【0015】
この場合、好ましくは、連結部材は、軸部の一端側に第1係止部が設けられていると共に軸部の他端側に第2係止部が設けられたピンであり、シール部は、軸部を貫通させると共に第1係止部と係合する少なくとも1つの第1ピン係止受け部を有し、シールベースは、軸部を貫通させると共に第2係止部と係合する少なくとも1つの第2ピン係止受け部を有している。このような構成では、例えばピンの軸部をシール部の第1ピン係止受け部に対して貫通させ、更にシールベースの第2ピン係止受け部に対して貫通させることで、シール部及びシールベースはピンの第1係止部及び第2係止部に係止された状態となるため、シール部をシールベースに確実に固定することができる。また、ピンの軸部がシール部及びシールベースを貫通する構造であるため、シール部とシールベースとがピンによって連結された状態にあることを目視によって容易に確認できる。
【0016】
また、連結部材は、棒状のピンであり、シール部は、1対の第2シールリブの対向方向に延び、ピンが挿入される少なくとも1つの貫通孔を有し、シールベースは、シール部と組み付けられた状態で貫通孔と対向するように設けられ、貫通孔に挿入されたピンの両端部分と嵌合する少なくとも1対のピン受け用凹部を有する構成であってもよい。このような構成では、シール部の貫通孔に棒状のピンを貫通させるように差し込み、その状態で、ピンの両端部をシールベースのピン受け用凹部に嵌め込むことにより、シール部をシールベースに確実に固定することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るケーブル接続部用クロージャのシール部材の好適な実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
まず、本発明に係るシール部材の第1の実施形態を図1〜図8により説明する。図1は、本実施形態のシール部材を備えたケーブル接続部用クロージャを示す図である。
【0019】
図1において、ケーブル接続部用クロージャ1は、両側から導入された通信用光ケーブル2の光ファイバ心線3同士または光ファイバ心線3と光ドロップワイヤ(図示せず)とを接続した箇所を収納するためのケーブル接続部4を収容し保護するものである。クロージャ1は、開閉可能な1対のハウジング5を有し、このハウジング5の両端部にはシール収納部6が設けられている。このシール収納部6には、クロージャ1内に導入されるケーブル2及び支持線7をシールするためのシール部材10が着脱自在に収納されている。このシール部材10を図2及び図3に示す。
【0020】
これらの図において、シール部材10は、ヒンジ部11を介して一体成形された開閉可能な1対のシールベース12と、各シールベース12に設けられたシール部13とを有している。
【0021】
シールベース12及びヒンジ部11は、例えばポリプロピレン等の樹脂で形成されている。各シールベース12の外面には外周つば部12aが設けられ、各外周つば部12aの外縁同士が、厚さ1mm程度の薄いシート状のヒンジ部11によって一体的に結合されている。このような構成により、1対のシールベース12を180度以上に開くことが可能となる。また、1対のシールベース12を一体成形することにより、シール部材10の製作時に、人手によってシールベース12を連結する必要がなくなる。また、シールベース12の内面部には、シールベース12の基端側(ヒンジ部11側端部)から先端側に向かって1つの小湾曲部14a及び3つの大湾曲部14bが形成されている。
【0022】
このようなシールベース12の内面部にシール部13が着脱自在に取り付けられている。シール部13は、例えば硬度7、伸び800%、引張強度20kg/cm2のEPDMゴム組成物(エチレンプロピレンジエン三元共重合体)等で形成されている。
【0023】
シール部13は、図2〜図4に示すように、1つの支持線挿通部15aと3つのケーブル挿通部15bとを有している。そして、シール部13は、支持線挿通部15aがシールベース12の小湾曲部14aに嵌合し、各ケーブル挿通部15bがシールベース12の各大湾曲部14bに嵌合するように構成されている。
【0024】
ケーブル挿通部15bの両側壁面には、シール部13の内側にへこむように形成されたテーパ部16が設けられている。シール部13に設けられた3つのケーブル挿通部15bのうち、シールベース12の先端側に位置する2つのケーブル挿通部15bのテーパ部16には、ケーブル2から分岐した光ファイバと接続された1〜2心構造の光ドロップワイヤ(図示せず)を通すための複数のファイバ挿通穴17が形成されている。
【0025】
シール部13の上面(突き合わせ面)13aにおける各ケーブル挿通部15bの位置には、テーパ部16に沿ってハの字状に延びるシールリブ18がそれぞれ対向して突設されている。つまり、シールリブ18は、シールベース12の基端側から先端側に向かって(ケーブル挿通部15bの配列方向に)上面13aの外側の縁に沿って断続的に延びるように形成されている。そして、このようなハの字型のシールリブ18によって、各ケーブル挿通部15bの中央部には、ケーブル2を挿通させるためのケーブル挿通用切欠部19が形成されている。
【0026】
ここでは、ケーブル2として、例えばケーブル径が8〜28mmのものを使用する。また、ケーブル挿通用切欠部19の幅寸法Dは、例えば7mmとなっている。これにより、ケーブル挿通用切欠部19にケーブル2を入れたときに、ケーブル2とシールリブ18との間に隙間が生じることは無い。
【0027】
シール部13の上面13aにおけるシールリブ18の内側には、上面13aの内側の縁に沿って連続的に延びるシールリブ20がケーブル挿通部15bの両側に対向して突設されている。また、シール部13の上面13aにおける個々のケーブルに対応したシールリブ18の間には、複数本のシールリブ21が突設されている。さらに、シール部13の上面13aにおける支持線挿通部15aの位置には、シールリブ22が対向して突設されている。
【0028】
これらのシールリブ18,20〜22は、例えば、高さが4mm、根元部の厚さが1mmの断面が略矩形状であって、頂部に向けて先細となるように構成されている。
【0029】
このようなシールリブ18,20〜22をシール部13に設けることにより、図5に示すように、1対のシールベース12を閉じて1対のシール部13同士を突き合わせた状態において、支持線挿通部15aに挿通された支持線7とケーブル挿通部15bに挿通されたケーブル2とがシールされることになる。
【0030】
1対のシールベース12のいずれか一方の先端部の外周つば部12aには、係止ベース23が固定され、この係止ベース23には係止用爪部24が設けられている。また、係止ベース23における係止用爪部24の外側(先端側)には、突起嵌入部25を形成する1対の突部26が設けられている。また、1対のシールベース12の他方の先端部の外周つば部12aには、係止用爪部24と係合する係止受け部27が設けられ、この係止受け部27には、係止用爪部24が挿入される穴部27aが形成されている。また、係止受け部27の先端には、突起嵌入部25に嵌合する拘束用突起28が設けられている。以上の係止ベース23、係止用爪部24、突起嵌入部25、1対の突部26、係止受け部27、拘束用突起28は、1対のシールベース12を閉じたときの係止具を構成する。
【0031】
ここで、図5に示すように1対のシールベース12を閉じると、係止用爪部24が係止受け部27に引っ掛かると共に、突起嵌入部25に拘束用突起28が嵌まり込み、1対のシールベース12が係止状態となる。このとき、係止用爪部24及び係止受け部27に加えて、突起嵌入部25及び拘束用突起28を設けたので、ヒンジ部11の構造が薄いシート状であっても、シールベース12が上下方向(ケーブル挿通部15bの配列方向)及び左右方向(ケーブル挿通方向)にずれることが抑えられ、シールベース12の確実な係止が可能となる。
【0032】
次に、シールベース12とシール部13との組付構造について説明する。シールベース12とシール部13との組み付けは、図6に示すように連結ピン61を用いて行う。連結ピン61は軸部64を有し、軸部64の基端にはかさ状の第1係止部65が設けられ、軸部64の先端には略錐体状の第2係止部66が設けられている。この第2係止部66の底面積は、軸部64の断面積よりもわずかに大きくなっている。
【0033】
シール部13の底部には凸部70が設けられ、この凸部70には、連結ピン61の軸部64をシール部13の上下方向(シールリブの高さ方向)に貫通させる複数(例えば3つ)の貫通孔67が形成されている。なお、貫通孔67の径は、連結ピン61の軸部64の径とほぼ等しくなっている。シール部13における各貫通孔67の上部には、連結ピン61の第1係止部65と係合する円形凹部71が設けられている。
【0034】
シールベース12には、シール部13の凸部70と嵌合する凹部73が設けられている。また、シールベース12における凹部73の下側(外側)には、シール部13の貫通孔67から連続して連結ピン61の軸部64を貫通させる複数の貫通孔72が設けられている。この貫通孔72の径は、貫通孔67の径と同じである。なお、連結ピン61の軸部64の長さは貫通孔67,72の長さの合計とほぼ等しくなっている。シールベース12における各貫通孔72の下側(外側)には、連結ピン61の第2係止部66と係合する円形凹部74が設けられている。
【0035】
円形凹部74の底面部には、図7に示すように、貫通孔72を中心にして放射状(例えば十文字状)に延びる切込み75が形成されている。この切込み75によって、先端に第2係止部66が設けられた連結ピン61の軸部64を貫通孔72に貫通させやすくなる。
【0036】
このようなシールベース12とシール部13とを組み付けるときは、図8に示すように、シール部13の凸部70をシールベース12の凹部73に嵌合させる。その状態で、連結ピン61をシール部材10の内側(シール部13側)から貫通孔67,72に差し込んで貫通させる。すると、連結ピン61の第1係止部65が円形凹部71の底面に当接すると共に、連結ピン61の第2係止部66が円形凹部74の底面に引っ掛かって係止状態となる。
【0037】
このように連結ピン61を用いてシールベース12とシール部13とを組み付ける構造としたので、シールベース12の凹部73とシール部13の凸部70とを単に凹凸嵌合させる場合に比べて、シールベース12とシール部13とを安定性良く確実に固定することができる。また、シールベース12の貫通孔72及び円形凹部74がシール部材10の外側から見えるので、連結ピン61によってシールベース12とシール部13とが連結されたかどうかを目視で確実に確認することができる。さらに、シールベース12とシール部13との取付時には、連結ピン61を貫通孔67,72に差し込むだけでよいので、組立工数が少なくて済む。
【0038】
なお、ここでは複数本の連結ピン61を用いてシールベース12とシール部13とを組み付けるものとしたが、可能であれば、1本の連結ピン61によりシールベース12とベース部13とを組み付けてもよい。
【0039】
以上のように構成したシール部材10により支持線7及びケーブル2を挟持する場合は、1対のシールベース12を開いた状態で、例えば、一方のシール部13の支持線挿通部15aに支持線7を置くと共に、当該シール部13の各ケーブル挿通部15bにおける対向するケーブル挿通用切欠部19にケーブル2を通す。その状態で、1対のシールベース12を閉じて1対のシール部13の上面13a同士を突き合せ、シールベース12を係止状態とする。すると、シールリブ22が支持線7の外周にまきつき、支持線7がシールされると共に、シールリブ18,20がケーブル2の外周にまきつき、ケーブル2がシールされる。また、ケーブル2にまきつけられないシールリブ22,21,18,20は倒れてシール部13の閉じる状態を妨げない。
【0040】
このとき、ケーブル挿通部15bにおけるシールリブが連続的に形成されている場合には、特に太いケーブルを使用したときに、ケーブルによってシールリブが引っ張られ、ケーブルの両側に略三角の隙間が生じることがある。これに対し本実施形態では、ケーブル挿通用切欠部19が形成されるようにシールリブ18を構成したので、ケーブル挿通用切欠部19にケーブル2を入れた時にシールリブ18の倒れる量は少なく、ケーブル挿通用切欠部がないと仮定したときにシールリブ18が引っ張られることで生じうるケーブル2の両側に形成されるような略三角の隙間は、本実施形態ではほとんど生じない。また、シールリブ18の材質としてEPDMゴム組成物を用いたので、ケーブル2をケーブル挿通用切欠部19から抜いた時のシールリブ18の復元効果は大きい。このため、先に使用したケーブル2よりもケーブル径の小さなケーブル2をケーブル挿通用切欠部19に入れた場合でも、ケーブル2とシールリブ18との間に隙間が形成されることもない。従って、ケーブル2の挟持時におけるシール性が大幅に向上する。
【0041】
なお、支持線7については、ケーブル2に比べて極めて細いワイヤを使用するので、シールリブ22が引っ張られることで支持線7の両側に生じる略三角の隙間は極めて小さく、無視できる程度である。従って、支持線7の挟持時におけるシール性を損なうこともほとんど無い。
【0042】
従って、両端部にシール部材10を備えたケーブル接続部用クロージャ1を最大20度で傾斜させて設置した場合であっても、雨水等が支持線7及びケーブル2を伝ってクロージャ1内のケーブル接続部4に入り込むことを防止することができる。
【0043】
また、クロージャ1の設置後においては、配線ルートの変更によって、シール部材10に挟持された3本のケーブル2のいずれかを撤去することがある。このとき、シール部13の上面13aには、ケーブル挿通部15bの配列方向に連続的に延びるシールリブ20が設けられているので、いずれかのケーブル挿通部15bにケーブル2を挿通させない状態で、1対のシールベース12を閉じても、そのケーブル挿通部15bはシールリブ20によって塞がれることになる。従って、ケーブル2の撤去後であっても、クロージャ1を傾斜設置した状態において雨水等によりケーブル接続部4が浸水することが回避される。この点でも防水性が強化される。
【0044】
なお、本実施形態では、シール部13の上面13aにおいて、連続的に延びるシールリブ20を、断続的に延びるシールリブ18の内側に形成したが、可能であれば、シールリブ20をシールリブ18の外側に形成した構成としてもよい。
【0045】
次に、以上のように構成したシール部材についての評価を行ったので、それについて述べる。
【0046】
(A)防滴信頼性試験
▲1▼試験方法
ケーブルを導入して組み立てた状態でのクロージャをJIS−C−0920(保護等級3級:防雨形)と同等の試験方法で試験したときに、クロージャ内部に浸水がないことを確認した。ここで、JIS−C−0920(保護等級3級:防雨形)とは、機器を正規の取付状態にして、その上方300〜500mmの高さから、鉛直から両側60度までの全範囲にわたって、じょろ口を用いて散水する試験である。このとき、散水量は、毎分10±0.5L(リットル)、水圧は50〜150kPa(0.51〜1.53kgf/cm2)、試験時間は、機器の外郭表面積(取付部の面積は除く)1m2あたり1分間で最低5分間以上である。
【0047】
以上において、ケーブルとしては、ケーブル径が8〜28mmといった複数種類のものを使用した。また、クロージャの設置傾斜角度は20°とした。さらに、散水量は10L/分、散水距離は300〜500mm、散水角度は鉛直から両側60度の範囲、散水時間は片側端面当たり2分30秒(1試料当たり5分)とした。
【0048】
▲2▼試験結果
ケーブル径に関係なく、クロージャの両端面のいずれにおいても、クロージャ内部への浸水が無かった。
【0049】
(B)長期信頼性試験
▲1▼試験方法
恒温恒湿槽内にクロージャを配置し、以下の条件でヒートサイクル試験を行った後、上記(A)の防滴信頼性試験を行った。
温度:−30〜+70℃
周期:6サイクル/24H、
回数:200サイクル
【0050】
▲2▼試験結果
ケーブル径に関係なく、クロージャの両端面のいずれにおいても、クロージャ内部への浸水が無かった。
【0051】
(C)ケーブル撤去後の防滴信頼性試験
▲1▼試験方法
上記(B)の長期信頼性試験を実施したクロージャからケーブルを撤去し、上記(A)の防滴信頼性試験を行った。
【0052】
▲2▼試験結果
ケーブル径に関係なく、クロージャの両端面のいずれにおいても、クロージャ内部への浸水が無かった。
【0053】
次に、本発明に係るシール部材の第2の実施形態を図9〜図11により説明する。図中、第1の実施形態と同一または同等の部材等には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
図9において、本実施形態のシール部材10Aは、シールベース12Aとシール部13Aとを有し、シールベース12A及びシール部13Aは、これらの組付構造のみが第1の実施形態におけるシールベース12及びシール部13と異なっている。シールベース12Aとシール部13Aとの組み付けは、棒状の連結ピン51を用いて行う。この連結ピン51の両端には突部52がそれぞれ設けられている。
【0055】
シール部13Aは、1対のシールリブ20の対向方向に延び、接合ピン51がそれぞれ挿入される複数(例えば3つ)の貫通孔54を有している。この貫通孔54は、連結ピン51が挿入された時に、連結ピン51の突部52が露出するような長さを有している。
【0056】
シールベース12Aには、貫通孔54に挿入された連結ピン51の突部52と嵌合する複数対(ここでは3対)のピン受け用凹部55が設けられている。また、シールベース12Aにおける各ピン受け用凹部55の上部には、ピン受け用凹部55の開口線部から上方に向けて広がるように形成されたテーパ状のガイド部56が設けられている。
【0057】
このようなシール部13Aとシールベース12Aとを組み付ける場合は、まず、連結ピン51をシール部13Aの貫通孔54に挿入する(図10参照)。その状態で、シール部13Aをシールベース12Aに対して進入させて、シール部13Aの凸部70をシールベース12Aの凹部73に嵌合させる。このとき、連結ピン51の突部52が、シールベース12Aのガイド部56に沿ってシールベース12Aの下側(外側)に移動して、ピン受け用凹部55に嵌まり込む(図11参照)。このようにシールベース12Aとシール部13Aとが、連結ピン51を介して確実に固定される。
【0058】
次に、本発明に係るシール部材の第3の実施形態を図12〜図15により説明する。図中、第1の実施形態と同一または同等の部材等には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
図12及び図13において、本実施形態のシール部材30は、薄いシート状のヒンジ部31を介して一体成形された開閉可能な1対のシールベース32と、各シールベース32に設けられ、ヒンジ部33を介して一体成形された1対のシール部34とを有している。シールベース32及びヒンジ部31は、ポリプロピレン等で形成されている。シール部34及びヒンジ部33は、上述したEPDMゴム組成物等で形成されている。各シール部34は、各シールベース32の内面および両側面を覆うように、各シールベース32に着脱自在に取り付けられている。なお、1対のシール部は、一体成形されたものに限らず、第1の実施形態のように別々の部品として構成してもよい。また、シールベース32とシール部34との組付構造は、第1の実施形態のような構造でもよいし、第2の実施形態のような構造でもよい。
【0060】
シール部34は、図12〜図14に示すように、1つの支持線挿通部35aと2つのケーブル挿通部35bとを有している。ケーブル挿通部35bの両側壁面には、シール部34の内側にへこむように形成されたテーパ部36が設けられている。各シール部34においてヒンジ部33側に位置するケーブル挿通部35bのテーパ部36には、ケーブル2(図15参照)から分岐された光ファイバ3と接続された1〜2心構造の光ドロップワイヤ(図示せず)を通すための複数のファイバ挿通穴37が形成されている。
【0061】
シール部34の上面(突き合わせ面)34aの外側の縁には、ケーブル挿通部35bの配列方向に断続的に延びる1対のシールリブ38がそれぞれ対向して突設されている。このシールリブ38は、各ケーブル挿通部35bの位置において、テーパ部36に沿ってハの字状に延びるように形成されている。このようなシールリブ38によって、各ケーブル挿通部35bの中央部には、ケーブル2(図15参照)を挿通させるためのケーブル挿通用切欠部39が形成されている。
【0062】
シール部34の上面34aにおけるシールリブ38の内側には、ケーブル挿通部35bの配列方向に断続的に延びる1対のシールリブ40が対向して突設されている。ここで、図15に示すように2本のケーブル2を撤去しない状態で使用するものでは、シールリブ40の延在部位における2つのケーブル挿通用切欠部39に対応する位置にそれぞれ切欠部41が形成されているが、第1の実施形態のようにケーブル2を撤去する場合のシールリブ40については、ケーブル挿通部35bにおいて切欠部41を設けず連続であってもよい。
【0063】
以上のような本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、シール部材30を備えたケーブル接続部用クロージャを設置した場合に、クロージャ内のケーブル接続部が浸水することを防止することができる。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、1対のシールベースがヒンジ部を介して一体成形されているが、これらのシールベースを別々の部品で構成してもよい。
【0065】
また、シール部におけるケーブル挿通部の側壁面には、テーパ部が設けられているが、そのようなテーパ部は必ずしも設けなくてもよい。
【0066】
さらに、上記実施形態のシール部材は、2本または3本のケーブルを挟持するものであるが、本発明のシール部材は、1本だけのケーブルを挟持するものや4本以上のケーブルを挟持するものにも適用できる。
【0067】
【発明の効果】
本発明によれば、1対のシール部の各突き合わせ面に、ケーブルを挿通させるための切欠部を形成するようにヒンジ部側からシールベースの先端側に断続的に延びる1対の第1シールリブと、各第1シールリブに隣接した位置においてヒンジ部側からシールベースの先端側に連続的に延び、各第1シールリブの切欠部にケーブルを通さない状態で、1対のシールベースを閉じたときに、シール部を塞ぐための1対の第2シールリブとを設けたので、シール部材のシール性が向上する。これにより、ケーブル接続部用クロージャを傾斜させて設置した際のケーブル接続部への浸水を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態によるシール部材を備えたケーブル接続部用クロージャが開いている状態を示す図である。
【図2】図1に示すシール部材が開いている状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示すシール部材の分解側面図である。
【図4】図2に示すシール部の平面図である。
【図5】図1に示すシール部材が閉じている状態を示す斜視図である。
【図6】図1に示すシールベースとシール部との組付構造を示す分解断面図である。
【図7】図6に示すシールベースが開いている状態を示す平面図である。
【図8】図6に示すシールベースとシール部とが連結ピンを介して組み付けられた状態を示す断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態によるシール部材において、シールベースとシール部との組付構造を示す分解断面図である。
【図10】図9に示すシールベースとシール部とを連結ピンを介して組み付ける工程を示す分解断面図である。
【図11】図9に示すシールベースとシール部とが連結ピンを介して組み付けられた状態を示す断面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態によるシール部材が開いている状態を示す斜視図である。
【図13】図12に示すシール部材の分解側面図である。
【図14】図12に示すシール部の平面図である。
【図15】図12に示すシール部材が閉じている状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…ケーブル接続部用クロージャ、2…ケーブル、4…ケーブル接続部、10…シール部材、11…ヒンジ部、12…シールベース、12A…シールベース、13A…シール部、13…シール部、13a…上面(突き合わせ面)、16…テーパ部、18…シールリブ(第1シールリブ)、19…ケーブル挿通用切欠部、20…シールリブ(第2シールリブ)、24…係止用爪部(係止具)、25…突起嵌入部(係止具)、27…係止受け部(係止具)、28…拘束用突起(係止具)、30…シール部材、31…ヒンジ部、32…シールベース、34…シール部、34a…上面(突き合わせ面)、36…テーパ部、38…シールリブ(第1シールリブ)、39…ケーブル挿通用切欠部、40…シールリブ(第2シールリブ)、51…連結ピン(連結部材)、54…貫通孔、55…ピン受け用凹部、61…連結ピン(連結部材)、64…軸部、65…第1係止部、66…第2係止部、67…貫通孔(第1ピン係止受け部)、71…円形凹部(第1ピン係止受け部)、72…貫通孔(第2ピン係止受け部)、74…円形凹部(第2ピン係止受け部)。

Claims (7)

  1. ケーブル接続部を収容するクロージャに着脱自在に設けられるシール部材において、
    ヒンジ部を介して連結された開閉可能な1対のシールベースと、
    前記各シールベースに設けられ、前記1対のシールベースを閉じた状態で前記クロージャ内に導入されるケーブルをシールするゴム製の1対のシール部とを備え、
    前記1対のシール部の各突き合わせ面には、前記ケーブルを挿通させるための切欠部を形成するように前記ヒンジ部側から前記シールベースの先端側に断続的に延びる1対の第1シールリブと、前記各第1シールリブに隣接した位置において前記ヒンジ部側から前記シールベースの先端側に連続的に延び、前記各第1シールリブの前記切欠部に前記ケーブルを通さない状態で、前記1対のシールベースを閉じたときに、前記シール部を塞ぐための1対の第2シールリブとが突設されていることを特徴とするケーブル接続部用クロージャのシール部材。
  2. 前記シール部の両側壁面には、前記シール部の内側にへこむように形成されたテーパ部が設けられ、
    前記第1シールリブは、前記テーパ部に沿ってハの字状に延びる部分を有し、
    前記第2シールリブは、前記シール部における前記第1シールリブの内側に設けられていることを特徴とする請求項記載のケーブル接続部用クロージャのシール部材。
  3. 前記1対のシールベースは、シート状の前記ヒンジ部を介して一体成形され、
    前記1対のシールベースの先端には、前記1対のシールベースを閉じた時に当該シールベースを係止するための係止具が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のケーブル接続部用クロージャのシール部材。
  4. 前記1対のシールベースのいずれか一方の先端には、係止用爪部と、前記係止用爪部の外側に位置する突起嵌入部とが設けられ、
    前記1対のシールベースの他方の先端には、前記係止用爪部と係合する係止受け部と、前記突起嵌入部に嵌合する拘束用突起部とが設けられ、
    前記係止用爪部と前記突起嵌入部と前記係止受け部と前記拘束用突起部とで前記係止具を構成したことを特徴とする請求項3記載のケーブル接続部用クロージャのシール部材。
  5. 前記シール部は、連結部材を介して前記シールベースに取り付けられていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項記載のケーブル接続部用クロージャのシール部材。
  6. 前記連結部材は、軸部の一端側に第1係止部が設けられていると共に前記軸部の他端側に第2係止部が設けられたピンであり、
    前記シール部は、前記軸部を貫通させると共に前記第1係止部と係合する少なくとも1つの第1ピン係止受け部を有し、
    前記シールベースは、前記軸部を貫通させると共に前記第2係止部と係合する少なくとも1つの第2ピン係止受け部を有していることを特徴とする請求項5記載のケーブル接続用クロージャのシール部材。
  7. 前記連結部材は、棒状のピンであり、
    前記シール部は、前記1対の第2シールリブの対向方向に延び、前記ピンが挿入される少なくとも1つの貫通孔を有し、
    前記シールベースは、前記シール部と組み付けられた状態で前記貫通孔と対向するように設けられ、前記貫通孔に挿入された前記ピンの両端部分と嵌合する少なくとも1対のピン受け用凹部を有していることを特徴とする請求項5記載のケーブル接続部用クロージャのシール部材。
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