JP3657571B2 - 磁気抵抗効果素子、磁気ヘッド及び磁気再生装置 - Google Patents

磁気抵抗効果素子、磁気ヘッド及び磁気再生装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気抵抗効果素子及びその製造方法、磁気ヘッド並びに磁気再生装置に関し、より詳細には、磁気抵抗効果膜の膜面に対して垂直方向にセンス電流を流す構造の磁気抵抗効果素子及びその製造方法、これを用いた磁気ヘッド並びに磁気再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、磁気記録媒体に記録された情報の読み出しは、コイルを有する再生用の磁気ヘッドを記録媒体に対して相対的に移動させ、そのときに発生する電磁誘導効果によりコイルに誘起される電圧を検出する方法によって行われてきた。その後、磁気抵抗効果素子(MagnetoResistance effect device:以下、「MR素子」とも称する)が開発され、磁場センサとして用いられる他、ハードディスクドライブ等の磁気記録再生装置に搭載される磁気ヘッド(MRヘッド)として用いられつつある。
【0003】
近年、磁気記録媒体の小型化・大容量化が進められ、情報読み出し時の再生用磁気ヘッドと磁気記録媒体との相対速度が小さくなってきている。このため、小さい相対速度であっても、大きな出力が取り出せる高感度のMRヘッドが必要とされつつある。
【0004】
このような要求に対して、鉄(Fe)/クロム(Cr)や鉄(Fe)/銅(Cu)のように、強磁性金属膜と非磁性金属膜とをある条件で交互に積層して、近接する強磁性金属膜間を反強磁性結合させた多層膜、いわゆる「人工格子膜」が巨大な磁気抵抗効果を示すことが報告されている(Phys. Rev. Lett. 61 2474 (1988), Phys. Rev. Lett. 64 2304 (1990)等参照)。しかし、人工格子膜は、磁化が飽和するために必要とされる磁場が高いため、MRヘッド用の磁気検出部としては適さない。
【0005】
これに対して、強磁性層/非磁性層/強磁性層というサンドイッチ構造の多層膜で、強磁性層が反強磁性結合しない場合でも、大きな磁気抵抗効果を実現した例が報告されている。すなわち、非磁性層を挟んだ2層の強磁性層の一方に交換バイアス磁場を印加して磁化を固定(「磁化固着層」あるいは「ピン層」などと称される)しておき、他方の強磁性層を外部磁場(信号磁場等)により磁化反転させる(「磁化自由層」あるいは「フリー層」などと称される)。このようにして、非磁性層を挟んで配置された2つの強磁性層の磁化方向の相対的な角度を変化させることによって、大きな磁気抵抗効果が得られる。このようなタイプの多層膜は、「スピンバルブ(spin-valve)」と呼ばれている(Phys. Rev., B45, 806 (1992), J. Appl. Phys., 69, 4774 (1981)等参照)。
【0006】
スピンバルブは、低い磁場強度で磁化を飽和させることができるため、MRヘッドに適しており、既に実用化されているが、その磁気抵抗変化率は、現状では最大でも約20%までであり、更に高い磁気抵抗変化率を示すMR素子が必要となってきた。
【0007】
ところで、これまでのMR素子は、センス電流を素子膜面内に対して平行な方向に通電して利用されている(Current−in−plane:CIP)。これに対して、センス電流を素子膜面に対して垂直方向に通電する(Current-perpendicular-to-plane:CPP)と、CIPの10倍程度の磁気抵抗変化率が得られるとの報告があり(J. Phys. Condens. Matter., 11, 5717 (1999)等)、磁気抵抗変化率100%も不可能ではない。
【発明が解決しようとする課題】
しかし、スピンバルブ構造は、スピン依存する層の総膜厚が非常に薄く、界面の数も少ないことから、垂直通電した場合の抵抗自体が小さく、出力絶対値も小さくなってしまうという問題があった。すなわち、従来、CIPに用いている積層構造のスピンバルブに垂直通電すると、ピン層およびフリー層の厚さが5nm相当の場合、1μmあたりの出力絶対値AΔR(通電面積×抵抗変化量)は、約0.5mΩμmと小さい。このため、CPP型の磁気抵抗効果素子においては、スピンバルブ膜の膜材料や膜構成を工夫して、抵抗変化量を大きくすることが重要となる。
【0008】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、その目的は、スピンバルブ構造のピン層、フリー層およびスペーサ層の材料物性を根本的に見直すことにより、大きな抵抗変化量を可能とした垂直通電型の磁気抵抗効果素子、およびこのような磁気抵抗効果素子を用いた磁気ヘッド、磁気再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の関連技術にかかる磁気抵抗効果素子は、
磁化方向が実質的に一方向に固着された磁化固着層と、磁化方向が外部磁界に対応して変化する磁化自由層と、前記磁化固着層と前記磁化自由層との間に設けられた非磁性中間層と、を有する磁気抵抗効果膜と、
前記磁気抵抗効果膜の膜面に対して略垂直な方向にセンス電流を通電するために前記磁気抵抗効果膜に電気的に接続された一対の電極と、
を備え、
前記磁化固着層と前記磁化自由層の少なくともいずれかは、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、砒素(As)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)よりなる群から選択された少なくともいずれかを含むM1と、鉄(Fe)と、コバルト(Co)と、ニッケル(Ni)と、により組成式:
(FeCoNi100−dM1 (但し、0≦a<100原子%、0≦b<100原子%、0≦c<100原子%、a+b+c=100、0.5原子%≦d<50原子%)
で表される合金からなり、
前記非磁性中間層は、クロム(Cr)またはルテニウム(Ru)の少なくともいずれかを含有し、前記磁化固着層及び前記磁化自由層のうちの前記合金からなるものと接していることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の関連技術にかかる第2の磁気抵抗効果素子は、
磁化方向が実質的に一方向に固着された磁化固着層と、磁化方向が外部磁界に対応して変化する磁化自由層と、前記磁化固着層と前記磁化自由層との間に設けられた非磁性中間層と、を有する磁気抵抗効果膜と、
前記磁気抵抗効果膜の膜面に対して略垂直な方向にセンス電流を通電するために前記磁気抵抗効果膜に電気的に接続された一対の電極と、
を備え、
前記磁化固着層と前記磁化自由層のうち少なくともいずれかは、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、砒素(As)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素M1と、鉄(Fe)とコバルト(Co)とニッケル(Ni)と、により組成式:
(FeCoNi100−dM1 (但し、0≦a<100原子%、0≦b<100原子%、0≦c<100原子%、a+b+c=100、0.5原子%≦d<50原子%)
で表される合金からなり、
前記非磁性中間層は、クロム(Cr)またはルテニウム(Ru)の少なくといずれかを含有した層と、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)及びアルミニウム(Al)よりなる群から選択された少なくもいずれかを主成分とする層と、の積層体からなり、前記磁化固着層及び前記磁化自由層のうちの前記合金からなるものと接していることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第1の磁気抵抗効果素子は、
磁化方向が実質的に一方向に固着された第1の強磁性体膜を含む磁化固着層と、磁化方向が外部磁界に対応して変化する第2の強磁性体膜を含む磁化自由層と、前記磁化固着層と前記磁化自由層との間に設けられた非磁性中間層と、を有する磁気抵抗効果膜と、
前記磁気抵抗効果膜の膜面に対して略垂直な方向にセンス電流を通電するために前記磁気抵抗効果膜に電気的に接続された一対の電極と、
を備え、
前記非磁性中間層は、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素M2と、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素M3と、の合金からなることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【0011】
ここで、中間層に、ピン層やフリー層に用いる磁性元素を添加することにより、中間層のバンド構造をピン層やフリー層のバンド構造に近づけて、余計な電子散乱を抑制することができる。すなわち、中間層の状態密度を磁性層の状態密度に近づけることにより、アップスピン電子の余計な散乱を抑制することができる。
【0012】
ここで、前記合金を組成式
M2100−eM3
により表した時の組成eは、0<e≦30原子%の範囲内にあるものとすることができる。
【0013】
また、本発明の第2の磁気抵抗効果素子は、
磁化方向が実質的に一方向に固着された第1の強磁性体膜を含む磁化固着層と、磁化方向が外部磁界に対応して変化する第2の強磁性体膜を含む磁化自由層と、前記磁化固着層と前記磁化自由層との間に設けられた非磁性中間層と、を有する磁気抵抗効果膜と、
前記磁気抵抗効果膜の膜面に対して略垂直な方向にセンス電流を通電するために前記磁気抵抗効果膜に電気的に接続された一対の電極と、
を備え、
前記非磁性中間層は、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)よりなる群から選択された少なくともいずれかからなる第1の層の中に、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)よりなる群から選択された少なくともいずれかからなる導電体の層が挿入され、
前記導電体の層の層厚は、0.03ナノメータ以上0.5ナノメータ以下であることを特徴とする。
【0014】
ここでも、中間層に、ピン層やフリー層に用いる磁性元素からなる層を挿入することにより、中間層のバンド構造をピン層やフリー層のバンド構造に近づけて、余計な電子散乱を抑制することができる。
【0015】
すなわち、中間層の状態密度を磁性層の状態密度に近づけることにより、アップスピン電子の余計な散乱を抑制することができる。
【0016】
また、前記第1及び第2の強磁性体膜のうち少なくともいずれかは、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、砒素(As)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素M1と、鉄(Fe)とコバルト(Co)とニッケル(Ni)と、により組成式:
(FeCoNi100−dM1 (但し、0≦a<100原子%、0≦b<100原子%、0≦c<100原子%、a+b+c=100、0.5原子%≦d<50原子%)
で表される合金からなるものとすることができる。
【0017】
一方、本発明の磁気ヘッドは、上記のいずれかの磁気抵抗効果素子を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の磁気再生装置は、この磁気ヘッドを備え、磁気記録媒体に磁気的に記録された情報の読み取りを可能としたことを特徴とする。
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の磁気抵抗効果素子の要部断面構造を表す模式図である。
【0020】
すなわち、本発明の磁気抵抗効果素子は、ピン層(磁化固着層)Pと、フリー層(磁化自由層)Fと、これらの間に設けられたスペーサ層(非磁性中間層)とを有する。ここで、ピン層Pは、その磁化が実質的に一方向に固着された強磁性体膜を含む層である。また、フリー層Fは、その磁化が外部磁界に応じて変化しうる強磁性体膜を含む層である。また、スペーサ層Sは、ピン層Pとフリー層Fとの間の磁気的な結合を遮断する層である。
【0021】
本発明においては、ピン層Pあるいはフリー層Fの少なくともいずれかにおいて、スピン依存バルク散乱パラメータβが負となる材料を用い、且つ、スペーサ層Sにおいて、スピン依存界面散乱パラメータγが負となる材料を用いる。
【0022】
すなわち、磁気抵抗効果素子の磁気抵抗変化量を決定しているのは、強磁性体膜内でのスピン依存バルク散乱パラメータβと、強磁性層と非磁性層の界面でのスピン依存界面散乱パラメータγである。本願明細書において、「スピン依存バルク散乱パラメータβ」とは、強磁性体内を流れるアップスピン電子とダウンスピン電子の抵抗の比を表したものであり、アップスピン電子によるバルク中での電気抵抗ρ↑[μΩ・cm]とダウンスピン電子による電気抵抗ρ↓[μΩ・cm]とを用いて、次式により表される。
ρ↓/ρ↑=(1+β)/(1−β)
この式をβについて表すと次式の如くである。
β=(ρ↓−ρ↑)/(ρ↓+ρ↑)
一方、本願明細書において、「スピン依存界面散乱パラメータγ」とは、ピン層Pとスペーサ層Sとの界面、あるいはフリー層Fとスペーサ層Sとの界面におけるアップスピン電子とアップスピン電子の単位面積あたりの抵抗AR↑[mΩ・μm]とダウンスピン電子の単位面積あたりの抵抗AR↓[mΩ・μm]とを用いて次式により表される。
AR↓/AR↑=(1+γ)/(1−γ)
この式をγについて表すと次式の如くである。
γ=(AR↓−AR↑)/(AR↓+AR↑)
これらの式から分かるように、βやγの絶対値が大きいほど、磁気抵抗効果素子の磁気抵抗変化量は大きくなる。
【0023】
ところで、従来のスピンバルブ構造の場合、強磁性体材料として通常用いられている単体の鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)等においては、スピン依存バルク散乱パラメータβは正である。
【0024】
これに対して、例えば、鉄(Fe)にクロム(Cr)などを添加していくと、βが減少して遂には負となるという現象がある。すなわち、ダウンスピン電子による抵抗の方が、アップスピン電子による抵抗よりも小さくなる。この現象については、例えば、J. Durand and F. Gautier : J. Phys. Chem. Solids., 31, 2773 (1970)、 J. W. F. Dorleijn and A. R. Miedema : J. Phys. F : Met. Phys., 5, 487 (1975)、 A. Fert and I. A. Campbell : J. Phys. F : Met. Phys., 6, 849 (1976)、I. Mertig : Rep. Prog. Phys. 62, 237 (1999) などの文献において、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)に、特定の元素を添加することによってアップスピン電子の抵抗を上げることができると報告されている。
このように、アップスピン電子の抵抗よりもダウンスピン電子の抵抗が小さい状態においては、いわゆる「負の磁気抵抗効果(negative magnetoresistance effect)」が生ずる。そして、この場合においても、バルク散乱パラメータβの絶対値が大きければ、大きな磁気抵抗変化率が得られる。
【0025】
そして、本発明のまずひとつ目の特徴は、ピン層Pあるいはフリー層Fの強磁性体として、このようにβが負となる強磁性体を用いることにある。その材料としては、具体的には、鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)のいずれか、あるいはこれらいずれかを含有する強磁性体合金であって、添加元素として、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、砒素(As)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)の少なくともいずれかを添加した強磁性体を挙げることができる。
【0026】
しかし、このようにβが負となる強磁性体層に対して、スピン依存界面散乱パラメータγが正となるような界面を組み合わせると、互いのAΔRへの効果を相殺してしまうことになる。以下、図2を参照しつつ、この理由を説明する。
【0027】
図2は、βとγの組み合わせが電子に与える効果を説明する概念図である。
【0028】
まず、同図(a)に表した具体例においては、バルク散乱パラメータβと界面散乱パラメータγとがいずれも正の場合を表す。この時に、アップスピン電子(e↑)は、ピン層P、フリー層Fにおいて抵抗ρが小さく、且つ、これらとスペーサ層Sとの界面においても、散乱が小さい。つまり、アップスピン電子は、バルク(強磁性体)内での抵抗が低く、且つ、界面においても散乱されにくい。その結果として、磁気抵抗変化量ΔRが大きくなり、出力絶対値AΔRも大きい。
【0029】
一方、この場合のダウンスピン電子(e↓)は、バルク抵抗も界面における散乱も大きい。つまり、スピンバルブ構造を通り抜けることが容易でない。
【0030】
これに対して、図2(b)に表した具体例の場合、バルク散乱パラメータβが負であり、界面散乱パラメータγは正である。このケースの場合、バルク(強磁性体)内での抵抗ρについて見ると、アップスピン電子(e↑)の抵抗ρの方がダウンスピン電子(e↓)の抵抗ρよりも高くなる。従って、ダウンスピン電子を利用したほうが高い磁気抵抗変化率が得られるはずである。しかし、界面散乱パラメータγが正であるため、ダウンスピン電子は、界面において散乱される確率が高い。電子が散乱されるとスピン情報を喪失するため、ダウンスピン電子としての伝導に損失が生ずる。
【0031】
つまり、図2(b)に表したように、バルク散乱パラメータβが負であっても、界面散乱パラメータγが正であっては、ダウンスピン電子は界面で散乱されてしまうため、磁気抵抗変化率に対する寄与が相殺されてしまう。
【0032】
これに対して、本発明によれば、図2(c)に表したように、バルク散乱パラメータβと界面散乱パラメータγとが、いずれも負となるようにスピンバルブ構造を形成する。
【0033】
このようにすれば、バルク(強磁性体)内を低い抵抗で伝導したダウンスピン電子が、界面においても散乱によるスピン情報の損失が少ない状態で、磁気抵抗変化に寄与する。その結果として、ダウンスピン電子を用いた「負の磁気抵抗効果」において、高い磁気抵抗変化率が得られる。
【0034】
本発明においては、界面散乱パラメータγを負とするため、スペーサ層(非磁性中中間)Sの材料として、クロム(Cr)及びルテニウム(Ru)のいずれか、またはこれらの合金を用いることができる。
【0035】
または、スペーサ層Sは、クロム(Cr)及びルテニウム(Ru)のいずれかまたはこれらの合金からなる層と、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)及びアルミニウム(Al)のいずれかあるいはこれらを含有する合金からなる層との積層体としても良い。
【0036】
または、スペーサ層Sの材料としては、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)の少なくともいずれかと、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)の少なくともいずれかと、の合金を用いることができる。
【0037】
または、スペーサ層Sとして、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)の少なくともいずれかからなる層中に、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)の少なくともいずれかを主成分とした厚さ0.03ナノメータ乃至0.5ナノメータの薄膜層が挿入された構造とすることができる。
【0038】
以上説明したように、本発明において、負のβを有する磁性体材料と、負のγが得られるスペーサ層とを組み合わせすることにより、負の磁気抵抗効果を利用しつつ大きな磁気抵抗変化率が可能となり、垂直通電型のスピンバルブ素子として実用化することの意義は大きい。
【0039】
以下、実施例を参照しつつ、本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明する。
【0040】
まず、後に詳述する本発明の第1乃至第10実施例において、具体的に試作した磁気抵抗効果素子の全体構成について説明する。すなわち、これらの実施例においては、以下に説明する2種の素子を実際に作製して、その特性を評価した。
【0041】
図3は、第1の磁気抵抗効果素子の要部断面構造を表す模式図である。
【0042】
すなわち、下部電極12の上に、磁気抵抗効果膜14を形成し、その両端には、フリー層の磁区制御のためにバイアス磁界を印加するハード膜16、16を設け、さらに、磁気抵抗効果膜14の上には、パッシベーション膜18のコンタクトを介して上部電極20を接続した。
【0043】
この素子の作製プロセスは、以下のとおりである。
【0044】
まず、シリコン(Si)基板(図示せず)の上に、約500nm(ナノメータ)のAlOxを成膜し、その上にレジストを塗布し、PEP(Photo Engraving Process)により下部電極12となる部分のレジストを除去する。
【0045】
次に、RIE(Reactive Ion Etching)により、レジストのない部分のAlOxを除去し、膜厚5nmのタンタル(Ta)/膜厚400nmの銅(Cu)/膜厚20nmのタンタル(Ta)という積層膜を成膜して下部電極12を成膜する。
【0046】
次に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)を行って平滑化することにより、下部電極12をAlOxから露出させる。下部電極12の上に、約3μm×3μm〜5μm×5μmのサイズの磁気抵抗効果膜14を形成する。そして、磁気抵抗効果膜14の側面に、約30nmのコバルト白金(CoPt)からなるハード膜16を形成する。
【0047】
その後、全面にパシベーション膜として膜厚が約200nmのSiOxを成膜する。レジストを塗布した後、磁気抵抗効果膜14の中央部のコンタクトホール形成領域からレジストを除去する。そして、RIEとミリングにより、約0.3μmφ〜3μmφのコンタクトホールを形成する。レジストを除去した後、膜厚5nmのタンタル(Ta)/膜厚400nmの銅(Cu)/膜厚5nmのタンタル(Ta)からなる上部電極20と約200nmの金(Au)電極パッド(図示せず)を形成する。
【0048】
以上のプロセスにより、第1の磁気抵抗効果素子を製作した。
【0049】
図4は、本発明の実施例の第2の磁気抵抗効果素子の要部断面構造を表す模式図である。同図については、図3と同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0050】
第2の磁気抵抗効果素子の製造プロセスの要部は、以下に説明する通りである。
【0051】
すなわち、図1に表した第1の磁気抵抗効果素子の場合と同様に、シリコン(Si)基板の上にAlOxを成膜し、AlOxの一部を除去し、下部電極12を成膜した後、CMPを行って平滑化することにより、下部電極12をAlOxから露出させる。そして、下部電極12の上に磁気抵抗効果膜14を形成し、幅約2μmから5μmのストライプ状に加工する。その後に、全面にパシベーション膜18として、約200nmのSiOxを成膜する。レジストを塗布した後、磁気抵抗効果膜14の上において、磁気抵抗効果膜14の長手方向に直交して約1.5μmから5μmの範囲のレジストを除去し、素子サイズを規定する。レジストを除去した後、磁気抵抗効果膜14の全体にセンス電流が一様に流れるように、磁気抵抗効果膜14の直上に約100nmの金(Au)膜を成膜する。その後、図1の素子と同じく上部電極20とパッドを形成する。
【0052】
これらの素子について、4端子法を用いて電気抵抗特性を測定した結果、出力については2つの素子で差違のないことを確認した。
【0053】
(第1の実施例)
まず、本発明の第1の実施例について説明する。
【0054】
図5は、本実施例及び各比較例の磁気抵抗効果素子の積層構造を表す概念図である。その基本膜構成は、以下の通りである。
下部電極12/下地層BF(5nmTa)/下地層BF(5nmNiFeCr)/反強磁性層AF(15nmPtMn)/磁化固着層P(4nm)/非磁性中間層S(3nm)/磁化自由層F(4nm)/スピンフィルタ層SF(1nm)/保護層CA(10nmTa)/上部電極20
ここで、各層のカッコ内に膜厚と材料を適宜表した。すなわち、本実施例および比較例においては、磁化固着層Pと磁化自由層Fの膜厚をそれぞれ4nmとし、また非磁性中間層Sの膜厚を3nm、スピンフィルタ層SFの膜厚を1nmにそろえた。
【0055】
図6は、本実施例及び比較例の各サンプルにおける、これら各層の材料と、得られた単位面積あたりの磁気抵抗変化量AΔR[mΩμm]を表す一覧表である。なお、AΔRは、磁化固着層Pと磁化自由層Fの磁化が反平行のときの抵抗ARAPと、平行のときの抵抗ARの差、ARAP−ARである。
【0056】
図6から、バルク散乱パラメータβが正の鉄(Fe)に、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)等を添加してβを負にした場合には、非磁性中間層Sやスピンフィルタ層SFを銅(Cu)(試料1−3、5、7、9、及び11)とした場合よりも、クロム(Cr)に変えて界面散乱パラメータγも負にした方(試料1−4、6、8、10及び12)が、より大きな出力絶対値|AΔR|を得ることができることが判る。
【0057】
なお、非磁性中間層Sとスピンフィルタ層SFをルテニウム(Ru)にした場合も、クロム(Cr)と同様に、銅(Cu)よりも大きな|AΔR|を得ることができた。またここで、Sc、Ti、V、Cr、Mnの添加量を5at%(原子パーセント)としたが、0.5at%〜50at%での範囲で、Crと組み合わせることの効果が確認できた。但し、その添加量の範囲は、望ましくは、0.5at%〜30at%であった。
【0058】
また、磁化固着層P及び磁化自由層Fに対する添加元素を、砒素(As)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)のいずれかとした場合も、非磁性中間層Sとスピンフィルタ層SFを、銅(Cu)からクロム(Cr)やルテニウム(Ru)にした場合に大きな|AΔR|を得ることができた。
【0059】
(第2の実施例)
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
【0060】
本実施例においても、図5に表した積層構造を有する磁気抵抗効果膜を作成した。その基本的な積層構造は、以下の通りである。
下部電極12/下地層BF(5nmTa)/下地層BF(5nmNiFeCr)/反強磁性層AF(15nmPtMn)/磁化固着層P(4nm)/非磁性中間層S(3nm)/磁化自由層F(4nm)/スピンフィルタ層SF(1nm)/保護層CA(10nmTa)/上部電極20
ここでも、各層のカッコ内に膜厚と材料を適宜表した。すなわち、本実施例においては、磁化固着層Pと磁化自由層Fの膜厚をそれぞれ4nmに、また非磁性中間層Sを3nm、スピンフィルタ層SFを1nmにそろえた。
【0061】
図7は、本実施例及び比較例の各サンプルにおける、これら各層の材料と、得られた単位面積あたりの磁気抵抗変化量AΔR[mΩμm]を表す一覧表である。
【0062】
図7から、バルク散乱パラメータβが正のコバルト(Co)にクロム(Cr)、ニオブ(Nb)、ルテニウム(Ru)等を添加してβを負にした場合には、非磁性中間層Sやスピンフィルタ層SFを銅(Cu)(試料2−4、7及び10)からクロム(Cr)、ルテニウム(Ru)に変えて界面散乱パラメータγも負にした(試料2−5、6、8、9、11及び12)方が、より大きな出力絶対値|AΔR|を得ることができることがと判る。
【0063】
なお、磁化固着層P及び磁化自由層Fに対する添加元素を、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)あいるはイリジウム(Ir)とした場合にも、非磁性中間層とスピンフィルタ層をクロム(Cr)またはルテニウム(Ru)にした方が銅(Cu)にした場合よりも|AΔR|が大きかった。
【0064】
また、ここでは、磁化固着層P及び磁化自由層Fに対する、上記元素の添加量を5at%としたが、0.5at%〜50at%での範囲で、Crと組み合わせることの効果が確認できた。但し、望ましくは0.5at%〜30at%で効果が大きい。
【0065】
(第3の実施例)
次に、本発明の第3の実施例について説明する。
【0066】
本実施例においても、図5に表した積層構造を有する磁気抵抗効果膜を作成した。その基本的な積層構造は、以下の通りである。
下部電極12/下地層BF(5nmTa)/下地層BF(5nmNiFeCr)/反強磁性層AF(15nmPtMn)/磁化固着層P(4nm)/非磁性中間層S(3nm)/磁化自由層F(4nm)/スピンフィルタ層SF(1nm)/保護層CA(10nmTa)/上部電極20
ここでも、各層のカッコ内に膜厚と材料を適宜表した。すなわち、本実施例においては、磁化固着層Pと磁化自由層Fの膜厚をそれぞれ4nmに、また非磁性中間層Sを3nm、スピンフィルタ層SFを1nmにそろえた。
【0067】
図8は、本実施例及び比較例の各サンプルにおける、これら各層の材料と、得られた単位面積あたりの磁気抵抗変化量AΔR[mΩμm]を表す一覧表である。
【0068】
図8から、バルク散乱パラメータβが正のニッケル(Ni)にバナジウム(V)、クロム(Cr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)等を添加してβを負にした場合には、非磁性中間層Sやスピンフィルタ層SFを銅(Cu)(試料3−3、5、7、9及び11)からクロム(Cr)に変えて界面散乱パラメータγも負にした(試料2−4、6、8、10及び12)方が、より大きな出力絶対値|AΔR|を得ることができることがと判る。
【0069】
なお、磁化固着層P及び磁化自由層Fに対する添加元素を、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、砒素(As)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)あるいは白金(Pt)とした場合にも、非磁性中間層とスピンフィルタ層をクロム(Cr)またはルテニウム(Ru)にした方が銅(Cu)にした場合よりも|AΔR|が大きかった。
【0070】
また、ここでは、磁化固着層P及び磁化自由層Fに対する、上記元素の添加量を5at%としたが、0.5at%〜50at%での範囲で、Crと組み合わせることの効果が確認できた。但し、望ましくは0.5at%〜30at%で効果が大きい。
【0071】
(第4の実施例)
第1の実施例から第3の実施例までは、磁化固着層P及び磁化自由層Fの材料として、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)を母体として元素を添加した。これに対して、第4の実施例においては、鉄・コバルト・ニッケル(Fe−Co−Ni)系合金に元素を添加した場合と、さらに磁化固着層Pと磁化自由層Fの材料が異なる場合について、調べた。
【0072】
本実施例においても、図3と同様の積層構造の磁気抵抗効果素子を製作した。
【0073】
その基本膜構成は、以下の通りである。
下部電極12/下地層BF(5nmTa)/下地層BF(5nmNiFeCr)/反強磁性層AF(15nmPtMn)/磁化固着層P(4nm)/非磁性中間層S(3nm)/磁化自由層F(4nm)/スピンフィルタ層SF(1nm)/保護層CA(10nmTa)/上部電極20
図9は、本実施例及び比較例としての各サンプルにおける、これら各層の材料と、得られた単位面積あたりの磁気抵抗変化量AΔR[mΩμm]を表す一覧表である。
【0074】
図9から、磁化固着層Pと磁化自由層Fの材料が異なる場合でも、非磁性中間層Sをルテニウム(Ru)やクロム(Cr)とすることの効果が見られる。
【0075】
(第5の実施例)
次に、本発明の第5の実施例として、前述した第4実施例の試料4−2、4−6、4−8において、非磁性中間層Sとスピンフィルタ層SFの材料を変えた磁気抵抗効果素子を製作した。
【0076】
図10は、本実施例の各サンプルにおける、これら各層の材料と、得られた単位面積あたりの磁気抵抗変化量AΔR[mΩμm]を表す一覧表である。
【0077】
図10から、非磁性中間層Sとスピンフィルタ層SFの材料を同一のものにそろえなくても、磁気抵抗変化を上げるという効果が得られることが分かる。また、磁化自由層Fの材料との界面でγの絶対値が特に大きくなるような材料とすると効果的である。
【0078】
このように、非磁性中間層Sとスピンフィルタ層SFの材料を異なるものとした構成は、他の実施例にも適用することができる。
【0079】
(第6の実施例)
次に、本発明の第6の実施例として、前述した第4実施例の試料4−7から4−9において、その非磁性中間層Sを図11に表したような積層体とした。
【0080】
すなわち、その基本的な積層構造は、以下の如くである。
下部電極12/下地層BF(5nmTa)/下地層BF(5nmNiFeCr)/反強磁性層AF(15nmPtMn)/磁化固着層P(4nmCo90Fe10)/非磁性中間層S(3nm)/磁化自由層F(4nmNi66Fe18Co16)/スピンフィルタ層SF(1nm)/保護層CA(10nmTa)/上部電極20
図12は、本実施例の各サンプルにおける、これら各層の材料と、得られた単位面積あたりの磁気抵抗変化量AΔR[mΩμm]を表す一覧表である。
【0081】
磁化固着層Pと磁化自由層Fとの磁気結合を遮断するために、非磁性中間層Sを厚くすると、スピン拡散長が長い方のスピン有する電子も散乱されてしまう恐れがある。そこで、試料6−1のように、スピン拡散長の非常に長い銅(Cu)などの層を非磁性中間層Sの中間に設けることで、その散乱を抑制した。なお、試料6−2のように中間の銅(Cu)を少々厚くしても、AΔRは変わらなかった。
【0082】
また、非磁性中間層Sに挿入する層の材料として、銅(Cu)の代わりに、金(Au)、銀(Ag)またはアルミニウム(Al)を用いた場合も同様の効果が得られた。
【0083】
また、磁化固着層Pと磁化自由層Fの材料が異なる場合には、それぞれの材料に対して、界面散乱パラメータγの絶対値が大きくなるように、非磁性中間層Sの構成を決定すべきである。すなわち、試料6−4は、磁化固着層Pの側にルテニウム(Ru)、磁化自由層Fの側にクロム(Cr)を設けるることにより、両方ともルテニウム(Ru)あるいはクロム(Cr)にそろえた試料6−1および6−3によりも大きな|AΔR|を得ることができた。
【0084】
なお、非磁性中間層Sを積層体にする構造は、他の実施例にも同様に適用して同様の効果を得ることができる。
【0085】
(第7の実施例)
次に、本発明の第7の実施例として、磁化固着層Pをいわゆる「シンセティック構造」とした磁気抵抗効果素子について説明する。
【0086】
図13は、本実施例の磁気抵抗効果素子の積層構造を表す模式図である。同図についても、図1乃至図12に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0087】
本実施例の素子は、磁化固着層として、第1の磁化固着層P1と、反平行結合層ACと第2の磁化固着層P2とが積層した、「シンセティック構造」を有する。シンセティック構造においては、一般に、2層の磁化固着層P1、P2の磁化の反平行結合に結合磁場の大きなルテニウム(Ru)層を用いる。このことから、スピン依存散乱パラメータ(β、γ)が負の場合、磁化固着層Pの内部にもスピン依存散乱する界面を設けたことと等価となり、図5などに例示した単層の磁化固着層Pを有する構造と比べて、磁気抵抗変化量の絶対値をさらに増加させることが可能となる。
【0088】
本実施例においては、図5と図13に表した磁気抵抗効果素子をそれぞれ作成し、磁気抵抗変化量を比較した。
【0089】
基本的な積層構造は、それぞれ以下の通りである。
図5の構造:
下部電極12/下地層BF(5nmTa)/下地層BF(5nmNiFeCr)/反強磁性層AF(15nmPtMn)/磁化固着層P(4nm)/非磁性中間層S(3nm)/磁化自由層F(4nm)/スピンフィルタ層SF(1nm)/保護層CA(10nmTa)/上部電極20
図13の構造:
下部電極12/下地層BF(5nmTa)/下地層BF(5nmNiFeCr)/反強磁性層AF(15nmPtMn)/磁化固着層P1(4nm)/反平行結合層AC(1nmRu)/磁化固着層P2(4nm)/非磁性中間層S(3nm)/磁化自由層F(4nm)/スピンフィルタ層SF(1nm)/保護層CA(10nmTa)/上部電極20
すなわち、磁化固着層P1、P2と磁化自由層Fの膜厚をそれぞれ4nmに、また非磁性中間層Sを3nm、スピンフィルタ層SFを1nmにそろえた。
【0090】
図14は、本実施例及び比較例の各サンプルにおける、これら各層の材料と、得られた単位面積あたりの磁気抵抗変化量AΔR[mΩμm]を表す一覧表である。なお、磁化固着層P1の材料は、常にCo90Fe10とした。
【0091】
どの材料を用いた場合でも、、図5の膜構造から図13の膜構造にすることで、AΔRが小さくなる傾向が見られた。磁化固着層P2と磁化自由層Fでのスピン依存バルク散乱パラメータβ、界面でのスピン依存パラメータγがともに負である試料7−7と7−8とを比べると、図5の構造から図13の構造にすることで、|AΔR|が大きくなることがわかる。
【0092】
このような、シンセティック構造にすることによる磁気抵抗変化量の増減は、他の各実施例においても同様に適用して同様の効果が得られる。
【0093】
(第8の実施例)
以上述べた効果は、図15に例示したように磁化固着層Pが上置き型(トップ型)でも同様に得られる。
【0094】
図15は、本実施例の磁気抵抗効果素子の積層構造を表す模式図である。同図についても、図1乃至図12に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0095】
この構造の場合、磁化自由層Fの下に位置する隣接下地層ABを適宜選択することで、大きな磁気抵抗変化量を得ることができる。その基本的な積層構造を以下の通りとし、隣接下地層ABの材料を変化させて、素子のAΔRを測定した。
下部電極12/下地層BF(5nmTa)/下地層BF(5nmNiFeCr)/隣接下地層AB(2nm)/磁化自由層F(4nm)/非磁性中間層S(3nm)/磁化固着層P(4nm)/反強磁性層AF(15nmPtMn)/保護層CA(10nmTa)/上部電極20
図16は、本実施例及び比較例の各サンプルにおける、これら各層の材料と、得られた単位面積あたりの磁気抵抗変化量AΔR[mΩμm]を表す一覧表である。
【0096】
図16を見ると、第5実施例に関して前述した試料5−1乃至9の結果と同様の結果が得られていることが分かる。つまり、いわゆるトップ型の素子構造の場合であっても、本発明を同様に適用して同様の効果が得られることが確認できた。
【0097】
(第9の実施例)
次に、本発明の第9の実施例として、非磁性中間層Sを合金化した磁気抵抗効果素子を製作した。
【0098】
本実施例においては、以下のような基本的な膜構造を有する磁気抵抗効果膜を作成した。
下部電極12/下地層BF(5nmTa)/下地層BF(5nmNiFeCr)/反強磁性層AF(15nmPtMn)/磁化固着層P(4nm(Co90Fe10) 95Cr)/非磁性中間層S(3nm)/磁化自由層F(4nm(Ni66Fe18Co16) 9010)/スピンフィルタ層SF(1nm)/保護層CA(10nmTa)/上部電極20
図17は、本実施例及び比較例の各サンプルにおける、これら各層の材料と、得られた単位面積あたりの磁気抵抗変化量AΔR[mΩμm]を表す一覧表である。
【0099】
図17から分かるように、純粋な銅(Cu)よりもコバルト(Co)を微量に添加した材料を非磁性中間層Sやスピンフィルタ層SFに用いると、磁気抵抗変化量が増加する。
【0100】
この傾向は、非磁性中間層Sやスピンフィルタ層SFの材料として、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)の少なくともいずれかと、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)の少なくともいずれかと、の合金を用いた場合にも同様に得ることができる。
【0101】
この場合、添加元素の濃度としては、30at%以上となるとスピンが拡散されてしまうので、30at%以下とすることが望ましく、更には5at%以下が望ましい。
【0102】
(第10の実施例)
次に、本発明の第10の実施例として、非磁性中間層Sを積層構造とした磁気抵抗効果素子を製作した。
【0103】
本実施例においては、以下のような基本的な膜構造を有する磁気抵抗効果膜を作成した。
下部電極12/下地層BF(5nmTa)/下地層BF(5nmNiFeCr)/反強磁性層AF(15nmPtMn)/磁化固着層P(4nm(Co90Fe10) 95Cr)/非磁性中間層S(3nm)/磁化自由層F(4nm(Ni66Fe18Co16) 9010)/スピンフィルタ層SF(1nm)/保護層CA(10nmTa)/上部電極20
図18は、本実施例及び比較例の各サンプルにおける、これら各層の材料と、得られた単位面積あたりの磁気抵抗変化量AΔR[mΩμm]を表す一覧表である。
【0104】
図18に表したように、銅(Cu)単層よりも極薄いコバルト(Co)層を挿入した積層構造を非磁性中間層Sやスピンフィルタ層SFに用いると、磁気抵抗変化量が増加することがわかった。
【0105】
この効果は、非磁性中間層Sやスピンフィルタ層SFが、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)の少なくともいずれかからなる層中に、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)の少なくともいずれかを主成分とした薄膜層が挿入された構造とした場合にも、同様に得られた。
【0106】
挿入する薄膜層の膜厚は、スピンが拡散されないように0.5nm以下が望ましいが、更に0.1nm以下が望ましい。また、挿入の効果を発現させるために、0.03nmは必要である。
【0107】
(第11の実施例)
次に、本発明の第11の実施例として、CPP型の磁気抵抗効果素子の具体例を挙げて説明する。
【0108】
図19及び図20は、本発明の実施の形態にかかる磁気抵抗効果素子の要部構成を模式的に表す概念図である。すなわち、これらの図は、磁気抵抗効果素子を磁気ヘッドに組み込んだ状態を表し、図19は、磁気記録媒体(図示せず)に対向する媒体対向面Pに対して略平行な方向に磁気抵抗効果素子を切断した断面図である。また、図20は、この磁気抵抗効果素子を媒体対向面Pに対して垂直な方向に切断した断面図である。
【0109】
図19及び図20に例示した磁気抵抗効果素子は、ハード・アバッテッド(hard abutted)構造を有している素子であり、磁気抵抗効果膜14の上下には、下部電極12と上部電極20とがそれぞれ設けられ、また、図19において、磁気抵抗効果膜14の両側の側面には、バイアス磁界印加膜16と絶縁膜18とが積層して設けられている。さらに、図20に例示したように、磁気抵抗効果膜4の媒体対向面には、保護層30が設けられている。
【0110】
磁気抵抗効果膜4は、図1乃至図18に関して前述したように、本発明の実施の形態にかかる構造を有する。すなわち、散乱パラメータβ及びγがいずれも負となるような材料系を組み合わせることにより、負の磁気抵抗効果を大きく得ることができる積層構造を有する。
【0111】
磁気抵抗効果膜4に対するセンス電流は、その上下に配置された電極12、20によって矢印Aで示したように、膜面に対して略垂直方向に通電される。また、左右に設けられた一対のバイアス磁界印加膜16、16により、磁気抵抗効果膜14にはバイアス磁界が印加される。このバイアス磁界により、磁気抵抗効果膜14のフリー層の磁気異方性を制御して単磁区化することによりその磁区構造が安定化し、磁壁の移動に伴うバルクハウゼンノイズ(Barkhausen noise)を抑制することができる。
【0112】
本発明によれば、磁気抵抗効果膜14として、負の磁気抵抗効果が大きく発現する構造を採用することにより、MR変化率が向上する。その結果として、磁気抵抗効果素子の感度を顕著に改善することが可能となり、例えば、磁気ヘッドに応用した場合に、高感度の磁気再生が可能となる。
【0113】
(第12の実施例)
次に、本発明の第12の実施例として、本発明の磁気抵抗効果素子を搭載した磁気再生装置について説明する。すなわち、図1乃至図20に関して説明した本発明の磁気抵抗効果素子あるいは磁気ヘッドは、例えば、記録再生一体型の磁気ヘッドアセンブリに組み込まれ、磁気記録再生装置に搭載することができる。
【0114】
図21は、このような磁気記録再生装置の概略構成を例示する要部斜視図である。すなわち、本発明の磁気記録再生装置150は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。同図において、記録用媒体ディスク200は、スピンドル152に装着され、図示しない駆動装置制御部からの制御信号に応答する図示しないモータにより矢印Aの方向に回転する。本発明の磁気記録再生装置150は、複数の媒体ディスク200を備えたものとしてもよい。
【0115】
媒体ディスク200に格納する情報の記録再生を行うヘッドスライダ153は、薄膜状のサスペンション154の先端に取り付けられている。ここで、ヘッドスライダ153は、例えば、前述したいずれかの実施の形態にかかる磁気抵抗効果素子あるいは磁気ヘッドをその先端付近に搭載している。
【0116】
媒体ディスク200が回転すると、ヘッドスライダ153の媒体対向面(ABS)は媒体ディスク200の表面から所定の浮上量をもって保持される。あるいはスライダが媒体ディスク200と接触するいわゆる「接触走行型」であってもよい。
【0117】
サスペンション154は、図示しない駆動コイルを保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム155の一端に接続されている。アクチュエータアーム155の他端には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ156が設けられている。ボイスコイルモータ156は、アクチュエータアーム155のボビン部に巻き上げられた図示しない駆動コイルと、このコイルを挟み込むように対向して配置された永久磁石および対向ヨークからなる磁気回路とから構成される。
【0118】
アクチュエータアーム155は、スピンドル157の上下2箇所に設けられた図示しないボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータ156により回転摺動が自在にできるようになっている。
【0119】
図22は、アクチュエータアーム155から先の磁気ヘッドアセンブリをディスク側から眺めた拡大斜視図である。すなわち、磁気ヘッドアッセンブリ160は、例えば駆動コイルを保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム155を有し、アクチュエータアーム155の一端にはサスペンション154が接続されている。
サスペンション154の先端には、図1乃至図20に関して前述したいずれかの磁気抵抗効果素子あるいは磁気ヘッドを具備するヘッドスライダ153が取り付けられている。サスペンション154は信号の書き込みおよび読み取り用のリード線164を有し、このリード線164とヘッドスライダ153に組み込まれた磁気ヘッドの各電極とが電気的に接続されている。図中165は磁気ヘッドアッセンブリ160の電極パッドである。
【0120】
本発明によれば、図1乃至図20に関して前述したような本発明の磁気抵抗効果素子あるいは磁気ヘッドを具備することにより、従来よりも高い記録密度で媒体ディスク200に磁気的に記録された情報を確実に読みとることが可能となる。
【0121】
(第13の実施例)
次に、本発明の第13の実施例として、本発明の磁気抵抗効果素子を搭載した磁気メモリについて説明する。すなわち、図1乃至図20に関して説明した本発明の磁気抵抗効果素子を用いて、例えば、メモリセルがマトリクス状に配置されたランダムアクセス磁気メモリ(magnetic random access memory)などの磁気メモリを実現できる。
【0122】
図23は、本実施例の磁気メモリのマトリクス構成を例示する概念図である。
【0123】
すなわち、同図は、メモリセルをアレイ状に配置した場合の実施形態の回路構成を示す。アレイ中の1ビットを選択するために、列デコーダ350、行デコーダ351が備えられており、ビット線334とワード線332によりスイッチングトランジスタ330がオンになり一意に選択され、センスアンプ352で検出することにより磁気抵抗効果素子321を構成する磁気記録層に記録されたビット情報を読み出すことができる。
【0124】
ビット情報を書き込むときは、特定の書込みワード線323とビット線322に書き込み電流を流して発生する磁場により行われる。
【0125】
図24は、本実施例の磁気メモリのマトリクス構成のもうひとつの具体例を表す概念図である。すなわち、本具体例の場合、マトリクス状に配線されたビット線322とワード線334とが、それぞれデコーダ360、361により選択されて、アレイ中の特定のメモリセルが選択される。それぞれのメモリセルは、磁気抵抗効果素子321とダイオードDとが直列に接続された構造を有する。ここで、ダイオードDは、選択された磁気抵抗効果素子321以外のメモリセルにおいてセンス電流が迂回することを防止する役割を有する。
【0126】
書き込みは、特定のビット線322と書き込みワード線323とにそれぞれに書き込み電流を流して発生する磁場により行われる。
【0127】
図25は、本発明の実施の形態にかかる磁気メモリの要部断面構造を表す概念図である。また、図26は、図25のA−A’線断面図である。
【0128】
すなわち、これらの図に表した構造は、図23に例示した磁気メモリに含まれるひとつのメモリセルに対応する。つまり、ランダムアクセスメモリとして動作する磁気メモリの1ビット部分のメモリセルである。このメモリセルは、記憶素子部分311とアドレス選択用トランジスタ部分312とを有する。
【0129】
記憶素子部分311は、磁気抵抗効果素子321と、これに接続された一対の配線322、324とを有する。磁気抵抗効果素子321は、図1〜図20に関して前述したような本発明の磁気抵抗効果素子であり、GMR効果やTMR効果などを有し、且つ負の磁気抵抗効果が大きく発現する素子である。
【0130】
GMR効果を有する場合は、ビット情報読み出しの際には磁気抵抗効果素子321にセンス電流を流してその抵抗変化を検出すればよい。
【0131】
また、特に、磁性層/非磁性トンネル層/磁性層/非磁性トンネル層/磁性層という構造をもつ強磁性2重トンネル接合などを含むものであると、トンネル磁気抵抗(TMR)効果による抵抗変化により磁気抵抗効果が得られる。
【0132】
これらの構造において、いずれかの磁性層は、磁化固着層として作用し、他のいずれかの磁性層が磁気記録層として作用するものとすることができる。
【0133】
一方、選択用トランジスタ部分312には、ビア326及び埋め込み配線328を介して接続されたトランジスタ330が設けられている。このトランジスタ330は、ゲート332に印加される電圧に応じてスイッチング動作をし、磁気抵抗効果素子321と配線334との電流経路の開閉を制御する。゜
また、磁気抵抗効果素子321の下方には、書き込み配線323が、配線322と略直交する方向に設けられている。これら書き込み配線322、323は、例えばアルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステン(W)、タンタル(Ta)あるいはこれらいずれかを含む合金により形成することができる。
【0134】
このような構成のメモリセルにおいて、ビット情報を磁気抵抗効果素子321に書き込むときは、配線322、323に書き込みパルス電流を流し、それら電流により誘起される合成磁場を印加することにより磁気抵抗効果素子の記録層の磁化を適宜反転させる。
【0135】
また、ビット情報を読み出すときは、配線322と、磁気記録層を含む磁気抵抗効果素子321と、下部電極324とを通してセンス電流を流し、磁気抵抗効果素子321の抵抗値または抵抗値の変化を測定することにより行われる。
【0136】
本具体例の磁気メモリは、図1〜図20に関して前述したような磁気抵抗効果素子を用いることにより、大きな負の磁気抵抗効果が得られるため、セルサイズを微細化しても、記録層の磁区を確実に制御して確実な書き込みが確保され、且つ、読み出しも確実に行うことができる。
【0137】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、磁気抵抗効果膜の具体的な構造や、その他、電極、バイアス印加膜、絶縁膜などの形状や材質に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる。
【0138】
例えば、磁気抵抗効果素子を再生用磁気ヘッドに適用する際に、素子の上下に磁気シールドを付与することにより、磁気ヘッドの検出分解能を規定することができる。
【0139】
また、本発明は、長手磁気記録方式のみならず垂直磁気記録方式の磁気ヘッドあるいは磁気再生装置についても同様に適用して同様の効果を得ることができる。
【0140】
さらに、本発明の磁気再生装置は、特定の記録媒体を定常的に備えたいわゆる固定式のものでも良く、一方、記録媒体が差し替え可能ないわゆる「リムーバブル」方式のものでも良い。
【0141】
その他、本発明の実施の形態として上述した磁気ヘッド及び磁気記憶再生装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施しうるすべての磁気抵抗効果素子、磁気ヘッド、磁気記憶再生装置及び磁気メモリも同様に本発明の範囲に属する。
【0142】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明よれば、負のスピン依存バルク散乱パラメータβを有する磁性体材料と、負のスピン依存界面散乱パラメータγが得られるスペーサ層とを組み合わせすることにより、負の磁気抵抗効果を利用しつつ大きな磁気抵抗変化率を得ることができる。
【0143】
その結果として、高感度の磁気検出を安定して得られ、高い記録密度でも高出力で高いS/Nを有する磁気ヘッド、およびそれを搭載した磁気再生装置や、高集積な磁気メモリなどを提供することが可能となり産業上のメリットは多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気抵抗効果素子の要部断面構造を表す模式図である。
【図2】βとγの組み合わせが電子に与える効果を説明する概念図である。
【図3】本発明の実施例の第1の磁気抵抗効果素子の要部断面構造を表す模式図である。
【図4】本発明の実施例の第2の磁気抵抗効果素子の要部断面構造を表す模式図である。
【図5】本発明の第1実施例及び各比較例の磁気抵抗効果素子の積層構造を表す概念図である。
【図6】本発明の第1実施例及び比較例の各サンプルにおける、これら各層の材料と、得られた単位面積あたりの磁気抵抗変化量AΔR[mΩμm]を表す一覧表である。
【図7】本発明の第2実施例及び比較例の各サンプルにおける、これら各層の材料と、得られた単位面積あたりの磁気抵抗変化量AΔR[mΩμm]を表す一覧表である。
【図8】本発明の第3実施例及び比較例の各サンプルにおける、これら各層の材料と、得られた単位面積あたりの磁気抵抗変化量AΔR[mΩμm]を表す一覧表である。
【図9】本発明の第4実施例及び比較例としての各サンプルにおける、これら各層の材料と、得られた単位面積あたりの磁気抵抗変化量AΔR[mΩμm]を表す一覧表である。
【図10】本発明の第5実施例の各サンプルにおける、これら各層の材料と、得られた単位面積あたりの磁気抵抗変化量AΔR[mΩμm]を表す一覧表である。
【図11】本発明の第6の実施例として製作した積層体を表す模式図である。
【図12】本発明の第6実施例の各サンプルにおける、これら各層の材料と、得られた単位面積あたりの磁気抵抗変化量AΔR[mΩμm]を表す一覧表である。
【図13】本発明の第7実施例の磁気抵抗効果素子の積層構造を表す模式図である。
【図14】本発明の第7実施例及び比較例の各サンプルにおける、これら各層の材料と、得られた単位面積あたりの磁気抵抗変化量AΔR[mΩμm]を表す一覧表である。
【図15】本発明の第8実施例の磁気抵抗効果素子の積層構造を表す模式図である。
【図16】本発明の第8実施例及び比較例の各サンプルにおける、これら各層の材料と、得られた単位面積あたりの磁気抵抗変化量AΔR[mΩμm]を表す一覧表である。
【図17】本発明の第9実施例及び比較例の各サンプルにおける、これら各層の材料と、得られた単位面積あたりの磁気抵抗変化量AΔR[mΩμm]を表す一覧表である。
【図18】本発明の第10実施例及び比較例の各サンプルにおける、これら各層の材料と、得られた単位面積あたりの磁気抵抗変化量AΔR[mΩμm]を表す一覧表である。
【図19】本発明の実施の形態にかかる磁気抵抗効果素子の要部構成を模式的に表す概念図である。
【図20】本発明の実施の形態にかかる磁気抵抗効果素子の要部構成を模式的に表す概念図である。
【図21】本発明の磁気記録再生装置の概略構成を例示する要部斜視図である。
【図22】アクチュエータアーム155から先の磁気ヘッドアセンブリをディスク側から眺めた拡大斜視図である。
【図23】本発明の磁気メモリのマトリクス構成を例示する概念図である。
【図24】本発明の磁気メモリのマトリクス構成のもうひとつの具体例を表す概念図である。
【図25】本発明の実施の形態にかかる磁気メモリの要部断面構造を表す概念図である。
【図26】図24のA−A’線断面図である。
【符号の説明】
12 下部電極
14 磁気抵抗効果膜
16 ハード膜
18 パッシベーション膜
20 上部電極
150 磁気記録再生装置
152 スピンドル
153 ヘッドスライダ
154 サスペンション
155 アクチュエータアーム
156 ボイスコイルモータ
157 スピンドル
160 磁気ヘッドアッセンブリ
164 リード線
165 図中
200 媒体ディスク
200 記録用媒体ディスク
200nm 約
311 記憶素子部分
312 アドレス選択用トランジスタ部分
312 選択用トランジスタ部分
321 磁気抵抗効果素子
322 ビット線
322 配線
323 ワード線
323 配線
324 下部電極
326 ビア
328 配線
330 スイッチングトランジスタ
330 トランジスタ
332 ゲート
332 ワード線
334 ビット線
334 ワード線
334 配線
350 列デコーダ
351 行デコーダ
352 センスアンプ
360 デコーダ
AB 隣接下地層
AC 反平行結合層
AF 反強磁性層
BF 下地層
CA 保護層
D ダイオード
F フリー層(磁化自由層)
P ピン層(磁化固着層)
S スペーサ層(非磁性中間層)
SF スピンフィルタ層

Claims (6)

  1. 磁化方向が実質的に一方向に固着された第1の強磁性体膜を含む磁化固着層と、磁化方向が外部磁界に対応して変化する第2の強磁性体膜を含む磁化自由層と、前記磁化固着層と前記磁化自由層との間に設けられた非磁性中間層と、を有する磁気抵抗効果膜と、
    前記磁気抵抗効果膜の膜面に対して略垂直な方向にセンス電流を通電するために前記磁気抵抗効果膜に電気的に接続された一対の電極と、
    を備え、
    前記非磁性中間層は、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素M2と、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素M3と、の合金からなることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  2. 前記合金を組成式
    M2100−eM3
    により表した時の組成eは、0<e≦30原子%の範囲内にあることを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗効果素子。
  3. 磁化方向が実質的に一方向に固着された第1の強磁性体膜を含む磁化固着層と、磁化方向が外部磁界に対応して変化する第2の強磁性体膜を含む磁化自由層と、前記磁化固着層と前記磁化自由層との間に設けられた非磁性中間層と、を有する磁気抵抗効果膜と、
    前記磁気抵抗効果膜の膜面に対して略垂直な方向にセンス電流を通電するために前記磁気抵抗効果膜に電気的に接続された一対の電極と、
    を備え、
    前記非磁性中間層は、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)よりなる群から選択された少なくともいずれかからなる第1の層の中に、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)よりなる群から選択された少なくともいずれかからなる導電体の層が挿入され、
    前記導電体の層の層厚は、0.03ナノメータ以上0.5ナノメータ以下であることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  4. 前記第1及び第2の強磁性体膜のうち少なくともいずれかは、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、砒素(As)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素M1と、鉄(Fe)とコバルト(Co)とニッケル(Ni)と、により組成式:
    (FeCoNi100−dM1 (但し、0≦a<100原子%、0≦b<100原子%、0≦c<100原子%、a+b+c=100、0.5原子%≦d<50原子%)
    で表される合金からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載の磁気抵抗効果素子を備えたことを特徴とする磁気ヘッド。
  6. 請求項5記載の磁気ヘッドを備え、磁気記録媒体に磁気的に記録された情報の読み取りを可能としたことを特徴とする磁気再生装置。
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