JP3657435B2 - 経皮吸収用組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レボドパを含有する経皮吸収製剤に関する。より詳細には、レボドパを有効成分とする経皮吸収用ヒドロゲル製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ある種の活性成分を含む組成物を医薬として使用する場合、体内への移行がゆっくりと行われ、活性成分の血中レベルが長時間にわたって一定に維持されることから、経皮投与が好ましいことが一般的に知られている。
一般的に、薬剤の投与経路としては、経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、及び直腸内等が代表的なものとして知られているが、薬剤中の活性成分の性質によっては投与経路に適する剤形とすることができない場合がある。例えば、消化管に存在する酵素によって分解されてしまうタンパク質などを活性成分とする薬剤の場合には、経口剤とすることが困難な場合が多い。また、水溶性の活性成分を含む薬剤の場合には、皮膚経路からの吸収効率が低いため、経皮吸収剤とすることが難しい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、患者の肉体的、精神的条件によっては、ある活性成分を含む薬剤を患者に投与しやすい剤系にする必要が生じることがある。例えば、患者が老齢で嚥下困難を合併するために薬剤の経口投与ができない場合や、または、患者が基礎疾患に加えて痴呆症を合併している場合には、注射ができなかったり、または点滴静注用の針を腕から引き抜いてしまう場合などである。こうした場合には、治療効果を上げるために、他の経路から薬剤を投与することを検討しなければならない。
【0004】
こうした患者の多い疾病としては、パーキンソン症候群を挙げることができる。パーキンソン症候群は、脳幹神経節の疾患で、運動失調、硬直、振戦を特徴とする疾病であり、その治療薬としては、ベンツトロピン、ベンツヘキソールなどのコリン作用性ムスカリン拮抗薬、ブロモクリプチン、アマンタジン、レボドパなどのドーパミン作用薬、デプレニルなどの MAOB阻害薬などが使用されるが、最も汎用されているのはレボドパ(以下、L-dopaという)である。
【0005】
L-dopaはドーパミンの前駆体で血液−脳関門を通過して脳に達することができ、そこでドーパミンに変換される。経口剤として開発されたL-dopaは、そのままでは大部分が消化管粘膜で脱炭酸されてドーパミンになり、ドーパミン受容体の広汎な刺激によって、悪心、嘔吐、血圧下降、運動異常(dyskinesia)などの有害反応や、副作用などが生じる(Shoulson,I., Glaubiger,G.A. and Chase,T.N.(1975) On-off response. Clinical and biochemical correlations during oral and intravenous levodopa administration in parkinsonian patients. Neurology 25:1144-1148)。こうした有害反応を抑制するために、L-dopaは脱炭酸阻害薬であるカルビドパまたはベンセラジドと併用する必要があるなど、種々の制約がある。
また、これまで、L-dopaは皮膚からの吸収が悪く、経皮吸収剤とはできないといわれてきた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記のような有害反応を減少させるためには、体内においてL-dopaを標的部位に速やかに移行させ、かつ、一定の濃度を持続することができる剤形を開発することが好ましい。
かかる課題を開発すべく、本発明の発明者らは、鋭意研究を進めた結果、L-dopaを有効成分とする経皮吸収用組成物の開発に成功し、本発明発明を完成させたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、組成物の総重量に対して、0.5〜25重量%の酸性または中性の水溶性高分子基剤、1〜10重量%のL-dopaを有効成分とする主剤、15〜60重量%のテルペンとアルコールとからなる皮膚吸収増強剤、及び他の補助剤を全体を100重量%とするに必要な量を含有してなり、界面活性剤を含まない経皮吸収用組成物である。
ここで上記水溶性基剤は、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、及びマクロゴールからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物と、炭素数2〜5の多価アルコールとからなることが好ましく、炭素数2〜5の多価アルコールがプロピレングリコールであることがさらに好ましい。
【0008】
さらに、上記皮膚吸収増強剤は、モノテルペン、ジテルペン、セスキテルペンからなる群から選ばれるテルペン類と、炭素数2または3のアルコールとからなることが好ましく、組成物の総重量に対して、約14〜59重量%のエタノール、および約1〜5重量%のd-リモネンまたはl-メントールからなることがさらに好ましい。
上記補助剤は、炭素数4〜8のジアルキルエタノールアミンおよび炭素数2〜8のアジピン酸ジアルキル、および水からなることが好ましく、ジイソプロピルエタノールアミン、アジピン酸ジイソプロピル、及び水からなるものであることがさらに好ましい。
【0009】
すなわち、本発明は、組成物の総重量に対して、0.5〜25重量%の酸性または中性の水溶性高分子基剤、1〜10重量%のL-dopaを有効成分とする主剤、15〜60重量%のテルペンとアルコールとからなる皮膚吸収増強剤、及び他の補助剤を全体を100重量%とするに必要な量を含有してなり、界面活性剤を含まないパーキンソン病治療用経皮吸収用組成物である。
【0010】
本発明はまた、組成物の総重量に対して、約1重量%のカルボキシビニルポリマー、約10重量%のプロピレングリコール、約5重量%のL-dopa、約1重量%のジイソプロピルエタノールアミン、約2重量%のアジピン酸ジイソプロピル、約2重量%のl-メントール、約20〜約40重量%エタノール、および約39〜59重量%の水を含んでなる、パーキンソン病治療用経皮吸収製剤である。
【0011】
本発明はさらにまた、組成物の総重量に対して、約10重量%のヒドロキシプロピルセルロース、約5重量%のL-dopa、約2重量%のl-メントール、約20〜約40重量%エタノール、および約43 〜 63重量%の水を含んでなる、パーキンソン病治療用経皮吸収製剤である。
本発明は、組成物の総重量に対して、約10重量%のヒドロキシプロピルセルロース、約1.25重量%のベンセラジド、約5重量%のL-dopa、約2重量%のl-メントール、約20〜約40重量%のエタノール、及び約41.75 〜 61.75重量%の水を含んでなる、パーキンソン病治療用経皮吸収製剤である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明においては、経皮吸収用組成物は、組成物の総重量に対して、0.5〜25重量%の水溶性基剤、1〜10重量%のL-dopa、15〜60重量%の皮膚吸収増強剤、及び他の補助剤を全体を100重量%とするに必要な量を含有する。ここで、基剤とは、軟膏剤の基礎となる賦形剤をいい、単に形をとるだけでなく、軟膏の吸収性や保存性その他の製剤の性質を決定付けるものをいう。
【0013】
水溶性基剤とは、水溶性高分子基剤と炭素数2〜5の多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上のアルコールからなるものをいう。
水溶性高分子基剤とは、上記の基剤に含まれる油脂性基剤、乳剤性基剤、水溶性基剤のうちの一種で、日本薬局方に規定する軟膏剤の基剤のうち、基剤そのものがきわめて水に溶けやすいものをいう。具体的には、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、及びマクロゴール等が挙げられ、これらの基剤からなる群から選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。これらの基剤は単独で使用してもよく、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0014】
カルボキシビニルポリマーは、カルボキシル基を持った水溶性のビニルポリマーであり、アクリル酸を主として、これに少量のショ糖などを配した共重合体である。Goodrich Chemical Co.(Cleaveland, Ohio, USA)によって開発され、濃化、分散、及び乳化剤として、934、940、及び941の3つのグレードのものが市販されている。分子量は、934、940が2,000,000〜3,000,000、941が1,000,000〜1,500,000である。
【0015】
高純度、均一な品質が化粧品や医薬品の製造に良好な再現性を与えること、流動性を失わずに高度の増粘(濃化)を示すこと、10〜70℃の温度範囲では温度の変化によって粘度がほとんど変わらないこと、エタノール、グリセリンに対して親和性が良いこと、バクテリアなどによる生物学的分解を受けにくいこと、さらに、適当な中和剤が用いられた場合に、広いpH範囲でゲル安定性を示すこと、及び多くの化粧品及び医薬品類に用いられる原材料との親和性が高いことなどの特性を有する。
【0016】
マクロゴールは、酸化エチレンと水との重合体で、HOCH2(CH2OCH2)n CH2OH で表されるポリエチレングリコールの総称である。ポリエチレングリコール400、1500、4000、6000、20000が日本薬局方に収載されている。これらは、いずれも水、エタノール、有機溶剤に溶けやすく、400は軟膏、坐剤、錠剤の基剤、乳化剤として、1500も医薬品、化粧品の基剤として、4000は固形化化粧品の可塑剤または医薬品の軟膏基剤としてそれぞれ応用されている。マクロゴール4000と400とを半量ずつ加えて製造したものはマクロゴール軟膏と呼ばれ、水溶性軟膏基剤として用いられている。
【0017】
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)は、以下のようにして得られる。まず、木材パルプまたはリンターパルプからアルカリセルロースを得て、酸化プロピレンを作用させて粗製HPCを得る。これを弱酸により中和した後、熱湯でゲル化精製し、乾燥、粉砕して得る。HPCは構造中に親水基と親油基をもち、非イオン性であるため、塩類や酸、アルカリにも安定である。水、メタノール、エタノール又はイソプロパノールを加えると、粘性の液となる。適度の界面活性があり、プロピレングリコールなどとの相溶性に優れる。このため、ローション、クリームなどに用いられる。
【0018】
また、上記のカルボキシビニルポリマー、マクロゴール、HPC以外に、ハイビスワコー(和光純薬工業製)等を使用することもできる。ハイビスワコーは酸性が強いため、基剤として使用する際には、カルボキシビニルポリマーを使用する場合と同様に、中和剤を使用することが必要である。
炭素数2〜5の多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの2価のアルコール、グリセリン等の3価のアルコール等を例示することができる。これらの多価アルコールは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよいが、プロピレングリコールを使用することが好ましい。
【0019】
プロピレングリコールは、無色透明なシロップ状の液体で、医薬品に多く用いられる有機薬品、水溶性ビタミン類、色素、香料などをよく溶かし、湿潤性があり、殺菌性もある。また、医薬品などに配合するとねばっこさを残さずに皮膚を柔らげ、付着性や展延性をよくするため、軟膏の基剤として好適に使用できることによる。
基剤の量を組成物の総重量に対して、0.5〜25重量%としたのは、0.5重量%未満では、適当な稠度の全質均等な半固形状の軟膏とならず、25重量%を超えると軟膏が硬くなることによる。
【0020】
上記の基剤の中でも、カルボキシビニルポリマーを使用すると、一定の幅の分子量の化合物が選択できるため、軟膏基剤となる組成物の特性が一定になるという利点がある。また、カルボキシビニルポリマーを使用する場合には、多量に使用すると軟膏が酸性となり、皮膚刺激性が出てくるため、約0.5〜約2重量%とすることが好ましく、約1重量%とすることがさらに好ましい。
【0021】
HPCなどの中性の水溶性高分子を使用する場合には、中和剤は不要であり、5〜15重量%の量で使用することが好ましい。5重量%未満ではヒドロゲルの硬度が低くなって柔らかくなりすぎ、15重量%を超えるとヒドロゲルが硬すぎて塗布しにくくなるからである。約10重量%で使用することがもっとも好ましい。
同様の理由から、ハイビスワコーについても、5〜15重量%で使用することが好ましい。
【0022】
プロピレングリコールは、約5〜15重量%で使用すると、適度なのびのある組成物を調製することができる。すなわち、5重量%未満では組成物がパサパサした感じになり、また、15重量%を超えると組成物がべとべとするためである。もっとも好ましくは、約10重量%で使用する。
皮膚吸収増強剤とは、皮膚からの主剤の吸収を高めるものをいう。本発明においては、皮膚吸収増強剤は、モノテルペン、ジテルペンおよびセスキテルペンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のテルペンと、エタノールとからなるものであることが好ましい。
【0023】
ここで使用するエタノールは、組成物の総重量に対して14〜59%であることが好ましい。エタノール濃度が14%未満では主剤の吸収が不十分であり、55%を超えると皮膚へのダメージが出現するからである。エタノールの量を20%〜40%とすると、L-dopaの吸収効率が高い。
モノテルペンは炭素数10のテルペン化合物の集合をいい、具体的には、ミルセン、リモネン、カンフェンなどの炭化水素類、シトロネロール、ゲラニオール、メントールなどのアルコール類、シトラール、ペリルアルデヒドなどのアルデヒド類、メントン、ヨノンなどのケトン類、およびシネオール、ピノールなどが含まれる。
【0024】
セスキテルペンは炭素数15のテルペン化合物の集合をいい、ビサボレン、ジンギベレンなどの炭化水素類、ファルネソール、オイデスモール、セドロールなどのアルコール類、シベロンなどのケトン類、その他ヒノキ酸などが含まれる。
ジテルペンは炭素数20のテルペン化合物の集合をいい、カンホレン、ミレンなどの炭化水素類、フィトール、ヒノキチオールなどのアルコール類、その他アビエチン酸、ピマル酸、マノイルオキシドなどが含まれる。
【0025】
これらのテルペンからなる群から選ばれるものとしては、d-リモネンまたはl-メントールが好ましい。l-メントールを使用すると吸収増強効果が高く、また、パップ剤にも多く使用されており、清涼感があるため患者が使用するに際しても受け入れやすいという利点がある。d-リモネンおよびl-メントールの含有量は、組成物の総重量に対して、約1重量%〜約5重量%とすることが好ましい。1重量%未満では、吸収増強効果および清涼感ともに不十分であり、5重量%を超えると皮膚に対して刺激性が出てくることによる。約1〜3重量%とするとL-dopaの吸収率が高まる。
【0026】
使用するエタノール濃度とテルペン濃度との組合わせは、以下のようにして決定する。すなわち、ある濃度のエタノールとl-メントールとの組合せを用いた場合に、分配パラメーターであるK’値の上昇が見られ、エタノール濃度をさらに高めてもそれ以上のK’値の上昇が観察されない場合には、K’値の上昇が見られた組み合わせを、L-dopaのドナー溶液から皮膚への分配率の面から選択する。
【0027】
例えば、20%エタノールと1〜5%のl-メントールとの混合液と、50%以上のエタノールと1〜5%のl-メントールとの混合液とを比較したときに、K'値は50%以上のエタノールと1〜5%のl-メントールとの組み合わせでは上昇しないとする。この場合には、約40%以下のエタノールと2%のl-メントールとの組み合わせが好ましいということになる。
【0028】
本発明においては、20%エタノールと2%のl-メントールとの組合せからなる皮膚吸収増強剤を使用すると、L-dopaの吸収率がもっとも高くなる。
本発明において補助剤は、上述した水溶性基剤の中和剤からなる。したがって、水溶性基剤が中性の場合には、補助剤のうち、中和作用を有する成分は必要とされない。上述のカルボキシビニルポリマーを使用した場合には、補助剤は、炭素数4〜8のジアルキルエタノールアミンおよび炭素数2〜8のアジピン酸ジアルキルからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物、及び水を含むことが好ましい。
【0029】
炭素数4〜8のジアルキルエタノールアミンとしては、ジエチルエタノールアミン、ジプロピルエタノールアミン、ジイソプロピルアタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ジイソブチルエタノールアミンなどを例示することができる。また、炭素数2〜8のアジピン酸アルキルとしては、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジブチルなどを例示することができる。
【0030】
本発明の補助剤は、ジイソプロピルエタノールアミン、アジピン酸イソプロピル、及び水を含むことが好ましい。
これらの化合物は、ジイソプロピルエタノールアミンを約0.5〜2重量%、アジピン酸ジイソプロピルを約1〜4重量%で使用することが、カルボキシビニルポリマーの酸性を中和すること、および使用感が良く肌になめらかであることから好ましい。さらに好ましくは、ジイソプロピルエタノールアミンを約1重量%、アジピン酸ジイソプロピルを約2重量%で使用する。
【0031】
L-dopaの含有量は、組成物の総重量に対して、1〜10重量%とすることが好ましい。1重量%未満では、本発明の組成物を薬剤として使用する場合に投与回数が多くなって投薬の管理が難しくなり、また、10重量%を超えると吸収しきれないL-dopaがむだになることによる。約5重量%とすると、投与回数を1日1回とすることができ、さらにL-dopaもむだなく吸収される。
【0032】
また、L-dopaはドーパミンの前駆物質であり、ドーパミンデカルボキシラーゼによってドーパミンへと変換される。主剤に、この変換を阻害するベンセラジドまたはカルビドパを含めても良く、これらを含めることによりL-dopaの投与量を減少させ、副作用を減少させることができる。
【0033】
本発明の組成物は、その総重量に対して、0.5〜15重量%の水溶性高分子基剤、1〜10重量%のL-dopaを有効成分とする主剤、15〜60重量%の皮膚吸収増強剤、及び他の補助剤を全体を100重量%とするに必要な量を含有してなる。ここで、水溶性基剤、皮膚吸収増強剤、主剤、及び補助剤は上述のとおりである。
【0034】
本発明の組成物は、以下のようにして調製する。
カルボキシビニルポリマーを約30mLの蒸留水と混和し、一昼夜放置する。水分を吸収してゲル状となったら、プロピレングリコール、ジイソプロピルエタノールアミン、アジピン酸ジイソプロピルを混和する。吸収促進剤のアルコール溶液、例えば、l-メントールのアルコール溶液を加えて混和した後、L-dopaを加えて再度混和し、水を加えて表示量になるようにした。
【0035】
(製剤例)
L-dopaを含有する軟膏、およびドーパミンまたはベンセラジドを含有する製剤を以下の処方に従って調製した。
これらの製剤の処方に当たっては、L-dopa(Sigma製)、ドーパミン(和光純薬工業製)、ベンセラジド(ホフマン・ラ・ロシュ製)、HPC-H(ヒドロキシプロピルセルロース、和光純薬工業製)、ハイビスワコー105(和光純薬工業製)、カルボキシビニルポリマー(934、B.F.Goodrich Chemical Co., Cleaveland, Ohio, USA)、プロピレングリコール(Sigma製)、ジイソプロピルエタノールアミン(和光純薬工業製)、アジピン酸ジイソプロピル(和光純薬工業製)、d-リモネン、およびl-メントール(和光純薬工業製)、エタノール(和光純薬工業製)、並びに蒸留水(大塚製薬製)を、それぞれ使用した。
【0036】
(1)Rp−1(本発明例1)
カルボキシビニルポリマーとプロピレングリコールとを基剤とし、活性成分としてL-dopa、皮膚吸収増強剤として40%エタノールとd-リモネン、補助剤としてジイソプロピルエタノールアミン、アジピン酸ジイソプロピル、及び水を含有する製剤を以下の表1に示す処方に従って調製した。
【0037】
【表1】
【0038】
(2)Rp−2(本発明例2)
カルボキシビニルポリマーとプロピレングリコールとを基剤とし、活性成分としてのL-dopaと、皮膚吸収増強剤として40%エタノールとl-メントールとを含有する製剤を以下の表2に示す処方に従って調製した。
【0039】
【表2】
【0040】
(2)Rp−3(本発明例3)
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-H)を基剤とし、活性成分としてのL-dopaと、皮膚吸収増強剤として20%エタノールとl-メントールとを含有する製剤を以下の表3に示す処方に従って調製した。
【0041】
【表3】
【0042】
(4)Rp−4(本発明例4)
HPC-Hを基剤とし、活性成分としてのL-dopaと、抗パーキンソン病用配合薬であるベンセラジド、皮膚吸収増強剤として20%エタノールとl-メントールとを含有する製剤を以下の表4に示す処方に従って調製した。
【0043】
【表4】
【0044】
(5)Rp−5(比較例1)
HPC-Hを基剤とし、活性成分としてのドーパミンと、皮膚吸収増強剤として20%エタノールとl-メントールとを含有する製剤を以下の表5に示す処方に従って調製した。
【0045】
【表5】
【0046】
(6)Rp−6(比較例2)
HPC−Hを基剤とし、活性成分として抗パーキンソン病用配合薬であるベンセラジド、皮膚吸収増強剤として20%エタノールとl-メントールとを含有する製剤を以下の表6に示す処方に従って調製した。
【0047】
【表6】
【0048】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)動物および試薬
(1)動物
体重200±10gの雄性ウィスター系ラット(ホクドー(株)、北海道虻田郡虻田町)を、試験前に通常のケージで飼育し、標準の固形試料(CE-2、日本クレア(株)、東京)と水とを自由に摂取させた。
(2)試薬
L-dopa(L-3-4-ジヒドロキシフェニルアラニン)をシグマ社より購入し(St. Louis, MO, U.S.A.)、他の試薬は最も上の等級の市販品を購入して使用した。
【0049】
(実施例2)in vitroにおける皮膚透過性の検討
(1)in vitroにおける皮膚透過性試験
L-dopaの透過性を、以下に示すようにOharaら(Ohara, N. et al., Combined effect of d-limonene and temperature on the skin permiation of ketoprofen. Int. J. Pharma. 105, 31-38(1994))の方法に準じて調べた。あらかじめ電気バリカンで毛を刈った腹部皮膚の全厚をラットから切り出し、切り出した皮膚を等価膜として使用した。ウォータージャケット付きの2チャンバー拡散セル(有効拡散面積0.785cm2;各半セル体積3.0mL)を使用した。水、20%(v/v)エタノール及び2%(w/v)l-メントールを含む溶液、並びに40%エタノール及び2%l-メントールを含む溶液の3種類にL-dopaを過剰量で懸濁液した。
【0050】
懸濁したL-dopaを3つの溶液それぞれに懸濁してドナーチャンバーに入れ、レシーバーチャンバーをリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)で満たした。これらのチャンバーは両方とも40℃に温め、マグネティックスターラーで攪拌した。L-dopa懸濁液をドナーチャンバーに注入した後、0分(懸濁前)、30分、60分、120分、及び180分に、レシーバーチャンバーから0.5 mLの溶液を吸引した。その後、等容量のリン酸緩衝生理食塩水をレシーバーチャンバーに補充した。
【0051】
(2)結果
ラットの腹部皮膚を埋め込む2チャンバー拡散セルを用いたin vitroにおける検討において、皮膚を介してレシーバーチャンバー液中へ浸透するL-dopaの蓄積量を定量した(図1参照)。図1中、点と棒とは、5回の実験における平均値±SD(標準偏差)を表す。
L-dopaの水懸濁液により、L-dopaは、時間の経過につれてラットの皮膚を介してレシーバーチャンバー液中に経皮的に浸透することが明らかになった。20重量%エタノールと2% l-メントール溶液中でのL-dopaの懸濁より、L-dopaの経皮的浸透が促進され、エタノールを40%に増加することによってさらに促進された。
【0052】
エタノールとl-メントールとの組み合わせがどのように透過を促進するかを見るために、皮膚を介するL-dopaの透過のプロファイルを分析した(図1及び表1参照)。L-dopaのD'の上昇が、40%エタノールと2%l-メントールとを含む溶液中で観察された。K'値は水と比較すると、20%エタノールと2%l-メントールとを含む溶液中で多少上昇したが、エタノールの割合を多くしても(40%)それ以上のK'値の上昇は観察されなかった。L-dopaの透過度(J)(ng/cm2/min)は水中で146、20%エタノールと2%l-メントールとを含む溶液中で436、40%エタノールと2%l-メントールとを含む溶液中で1375であった。
【0053】
(実施例3)in vivoでのL-dopaの代謝経路および代謝物の同定の検討
(1)測定対象とするL-dopaの代謝産物の決定
L-dopaはDOPAカルボキシラーゼによってドーパミンに代謝され、ついでドーパミンβ−ヒドロキシラーゼによってノルエピネフリンへ代謝され、さらにフェニルエタノールアミンN-メチルトランスフェラーゼによってエピネフリンへと代謝されることが知られている(Kato,T., et al., Biochem. Pharmacol. 27, 829-831(1978); Rahman M.K., et al., Biochem. Pharmacol. 30, 645-649(1981))。このため、L-dopa、ドーパミン、ノルエピネフリン、およびエピネフリンの血中濃度を測定することとした。
【0054】
(2)L-dopaの代謝産物濃度の検討
(2−1)静脈内投与における代謝産物の濃度の検討
ラットをエーテルで麻酔し、左頚静脈にポリエチレン製チューブ(PE-50)カテーテルを入れた。この経路を介して、生理食塩水を0.1mL/kg体重/分で持続静注し、ウレタン(500mg/kg体重)とα-クロラロース((R)-1,2-O-(2,2,2-トリクロロエチリデン)-α-D-グルコフラノース)(70mg/kg体重)とを、深麻酔と不動化のために与えた(Terui,J. et al.,Proteinuric potentials of angiotensin II, and [des-Asp1]-angiotensin II, and [des-Asp1, des-Arg2]-angiotensin II in rats. Biol. Pharm. Bull. 17, 1516-1518(1984)) 。必要な場合には、生理食塩水に2.5mg/mLの濃度で溶解したL-dopaを、この経路を介して2.5mg/ kg体重の用量で注入した。
【0055】
次に、自由呼吸のために動物の気管に挿管した。採血の30分前に、生理食塩水に溶解した0.2MのEGTAで満たしたポリエリレンチューブ(PE-50)を、左大腿動脈に挿入した(Sudo et al., Higher dopamine level on lymph from the cervical lumph trunk than in plasma following intravenous bolus injection of L-dopa in rats. Biol. Pharm. Bull. 18, 610-614(1995)) 。 L-dopaを静脈内に単回ボーラス投与後0分、5分、15分、25分、37.5分、52.5分で採血し、0.2MのEGTAと0.2Mの還元グルタチオンとを含む40μLの溶液を含む冷却したチューブ中に入れた(Eriksson B.-M. and Persson,B.-A., Determination of catecholamines in rat heart tissue and plasma samples by liquid chromatography with electrochemical detection. J. Chromatogr. 228, 143-154(1982))。集める血液の量を2mL以下に制限して、血液の損失によって誘導されるアミンの濃度の生理学的変化を避けた。血液はラット当たり1回サンプリングした。
【0056】
(2−2)結果
血漿中のL-dopa及びアミンを、L-dopaの静脈投与(2.5mg/kg体重)後に定量した(図2及び3参照)。図2及び3中、点と棒とは、5回の実験における平均値±S.E.M.を表す。
図3において得られたデータ統計処理をしたところ、b)では、0分と比較して、P<0.01であった。
【0057】
L-dopa、ドーパミン、及びノルエピネフリンは、L-dopaの静注後5分で、最高濃度に達した(L-dopaで664.0±59.7、ドーパミンで21.3±3.5、ノルエピネフリンで2.0±0.1(単位はいずれもng/mL))。その後、それらは、時間の経過につれて対照のレベルまで低下した。ノルエピネフリンは、実験期間中、有意な傾向を示さなかった。
【0058】
(3)L-dopaの変換経路の検討
L-dopaの静脈内投与を用いたin vivoの検討から、ドーパミンとノルエピネフリンとは注射5分後で速やかに現れることが示された。このドーパミンとノルエピネフリンとの速やかな出現から、注射されたL-dopaがL-アミノ酸デカルボキシラーゼによってドーパミンに変換され、さらに、器官中よりも血漿中のドーパミンβ−ヒドロキシラーゼによってドーパミンがノルエピネフリンへと変換されるということが示唆された(Kato et al., 1978(前出); Rahman et al., 1981(前出))。
【0059】
(実施例4)in vivoにおける皮膚吸収の検討
(1)in vivoにおける皮膚吸収試験
(1−1)皮膚吸収促進剤中にl-メントールを含む組成物
活性成分としてL-dopaを含むヒドロゲル(本発明例1)、および活性成分としてノルエピネフリン、エピネフリンおよびドーパミンを含むヒドロゲル(比較例1〜3)を、以下の表7に示す組成で調製した。
【0060】
【表7】
【0061】
(1−2)皮膚吸収促進剤中にd-リモネンを含む組成物
活性成分としてL-dopaを含むヒドロゲル(本発明例2)、および活性成分としてノルエピネフリン、エピネフリンおよびドーパミンを含むヒドロゲル(比較例4〜6)を、以下の表8に示す組成で調製した。
【0062】
【表8】
【0063】
ガラスセル(内径1.13cm;ヒドロゲルの付着面積1cm2;高さ1cm)を接着剤(シアノアクリレートタイプ;アロンα、サンキョウ(株))で腹部の皮膚に貼った。ついで、ガラスチューブを生理食塩水(対照)又はヒドロゲルで満たし、パラフィルムで覆った。
直前(0分)、及びガラスチューブをヒドロゲルで満たした後、30分、60分、180分で、上記の静脈投与の検討で記載した場合と同様の方式で、血液を採取した。血液はラット1匹当たり、1回サンプリングした。
【0064】
(2)結果
このL-dopa含有ヒドロゲルをin vivoでラットの皮膚に貼着したときに、L-dopaがin vitroでの検討の場合と同程度に血漿中で検出された。皮膚透過速度はin vitroで1375 ng/cm2/min 、in vivoで1236±62ng/cm2/minであった。
L-dopaおよびアミンの血漿中レベルを、L-dopa含有ヒドロゲルを皮膚に貼着(貼布)させた後に定量した。L-dopaおよびノルエピネフリンのレベルは180分まで上昇した(図4及び6参照)。ドーパミンは、30分でプラトーレベルに達し、30分〜180分までこのレベルが維持された(図5参照)。データは、5匹のラットにおける平均値±S.E.M.で示した。
【0065】
データを統計処理したところ、b)では、各時点で対照の値と比較して、P<0.01であった。
図7には、in vivoでのL-dopa含有ヒドロゲルの皮膚への貼着の間の血漿中のエピネフリンレベルを示す。対照群とL-dopa含有ヒドロゲル投与群との間では、各時点におけるエピネフリンの濃度は顕著な変化を示さず、有意差も見られなかった。データは5匹のラットにおける平均値±S.E.M.で示した(図7参照)。
【0066】
(3)有害作用の検討
ドーパミンおよびノルエピネフリンの血漿中レベルが上昇すると、消化、循環、精神医学的、その他の効果が生じることが知られている(Quinn,N.P. Anti-parkinsonian drugs today. Drugs 28, 236-262(1984); Ellenhorn M. J. and Barceloux,D.G. Medical toxucology: Diagnosis and Treatment of Human Poisoning, Elsevior New York, Amsterdum, London, pp. 16(1988)) 。 L-dopa含有ヒドロゲルのin vivo経皮投与では、ドーパミンおよびL-dopa双方の血漿レベルが持続的に上昇した。
【0067】
(実施例5)L-dopa及びアミンの定量
(1)L-dopa及びアミンの定量
in vivoの静脈内投与の検討において、1群5匹のラットを、L-dopaの単回ボーラス投与後、5分、15分、25分、37.5分、52.5分の5つの時点で行った(1時点当たり1匹のラットを使用した)。in vivoにおける皮膚吸収では、L-dopaヒドロゲルを皮膚へ貼着した後、0分、30分、60分、及び180分の4時点について、1群4匹で行った。いずれの検討も5群で行った。
【0068】
in vivoにおける静脈投与の検討では、0時点における血漿濃度(C0)、排泄速度定数(ke )、半減期(T1/2)、分布容積(Vd )、総ボディクリアランス(CL)、血漿濃度−時間曲線下面積(AUC )を、最少二乗法を用いた1コンパートメントオープンモデルによって概算した。ついで、in vivoにおける皮膚吸収におけるL-dopaのみかけの皮膚浸透速度(Rp ) を、上記のパラメーター Vdおよび keにより、皮膚を介する浸透定数の仮定の上に立つ単純モデルに基づく下記の式
【0069】
Ct= Rp (1-e-ke.t )/ ke ・ Vd
【0070】
式中、tは薬物貼布付後の時間を示し、 Ct は時間tにおけるL-dopaの血漿濃度である。
in vitroでの皮膚透過データにFickの拡散式を適用し、拡散及び分配におけるパラメーターの概算によってその促進の度合いを検討した。血漿中におけるL-dopaのプロファイルは、以下の拡散モデル(Okamoto H. et al., Structure-activity relationship of 1-alkyl- or 1-alkenylazacyclo-alkanone derivatives as percutaneous penetration enhancers. J. Pharm. Sci. 774, 418-424(1988)) によって分析した。
【0071】
Qt =AK'C0[D't-1/6-2/π2Σ(-1)n /n2exp(-D'n2 π2t)]
D' =D/L2
K’ =KL
【0072】
上記式中、Dは拡散定数であり、Lは膜の有効拡散長、Kは膜とドナー相との間の浸透剤の分配係数、 Qt は時間tにおけるレシーバー液中の浸透剤の蓄積量、Aは適用面積、C0はドナー相中におけるL-dopaの溶解性を示す。
上記の式より得られたL-dopaの拡散係数(D')と分配パラメーター(K')に対するドナー溶液の影響を表9に示す。
【0073】
【表9】
【0074】
定常状態においては、L-dopaの浸透速度(J)は以下のように求められる。
J=AC0KD/L=AC0K'D'
データは平均±S.E.M.で表し、スチューデントの片側t-検定で統計的に分析した。0.05以下のP値を有意であるとした。
【0075】
(2)結果
上述した式より、ファーマコキネティック分析を行った。表10に、in vivoでのL-dopaの静脈内投与におけるデータに関するキネティックパラメータを示す。
【0076】
【表10】
【0077】
表10中、C0は0時点における血漿濃度、 keは排泄速度定数、T1/2は半減期、 Vdは分布容積、 CLは総ボディクリアランス、AUCは血漿濃度曲線下の面積を表し、値はすべて、5回の実験の値の平均±S.E.M.で表す。
in vivoでの皮膚吸収実験でのL-dopaの懸濁液におけるL-dopaのみかけの皮膚透過速度(Rp ) を Vd と ke というパラメーターに基づいて求めると、5回の実験で1236±62ng/cm2/minであった。さらに、皮膚を透過するL-dopaの量を Rp 値より求めると、180分間で1.112±0.056mg/kg体重であった。
【0078】
(実施例6)製剤の処方による薬物の体内への移行の検討
(1)使用した製剤および動物
製剤は、製剤例1および2に示した処方で調製したRp-1およびRp-2を使用した。
動物は、ウィスター系ラット(ホクドー(株)、北海道虻田郡虻田町)、体重200±10gの雄性を使用した。ラットは試験前に通常のケージで飼育し、標準の固形試料(CE-2、日本クレア(株)、東京)と水とを自由に摂取させ、馴化した。1群6匹とし、各測定時点でn=2で測定した。
【0079】
(2)体内への移行
上記製剤を用いてL-dopaをラットの皮膚から吸収させ、血中のL-dopa、ドーパミン、ノルエピネフリンおよびエピネフリンの濃度を測定した。実施例3のin vitroにおけるL-dopa、ノルエピネフリン、ドーパミンの皮膚透過性の経時的変化の検討結果および実施例4のin vivoにおけるヒドロゲル軟膏による経皮投与後の血漿中の代謝産物の濃度の検討結果から、測定時間を0〜180分とした。
【0080】
【表11】
【0081】
【表12】
【0082】
表11および表12に示す結果から、本発明のL-dopaの経皮吸収剤を用いると、L-dopaおよびドーパミンの血漿中の濃度はいずれも経時的に上昇するが、L-dopa濃度の上昇率に比べてドーパミン濃度の上昇率が非常に低いことが明らかになった。また、ノルエピネフリンおよびエピネフリンの上昇率も同様にL-dopaの上昇率に比べて非常に低かった。
これらのことから、L-dopaは経皮吸収剤から皮膚へ速やかに移行しているが、ノルエピネフリンを経てエピネフリンへとゆっくりと代謝されていることが明らかになった。
【0083】
また、静脈内投与したL-dopaと経皮投与したL-dopaの血漿レベル、および代謝産物の出現のプロファイルから、投与経路によって、器官中または血漿中のL-アミノ酸デカルボキシラーゼとドーパミンβ−ヒドロキシラーゼのどちらがより強く関与するかに相違のあることが示された(L-dopaからこれらの代謝物への代謝に関与する芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼとドーパミンβ−ヒドロキシラーゼとは、いくつかの器官に分布することが見出されている(Kato et al., Biochem. Pharmacol. 27, 829-831(1978); Sprek et al., J. Neurochem. 35, 972-976(1980); Rahman et al., Biochem. Pharmacol. 30, 645-649(1981))を参照のこと)。
【0084】
すなわち、L-dopaを静脈内投与すると、ドーパミンとノルエピネフリンとは投与5分後には出現することから、静脈内投与したL-dopaは、器官中よりも血漿中のL-アミノ酸デカルボキシラーゼによってドーパミンに変換され、さらにドーパミンβ−ヒドロキシラーゼによってドーパミンがノルエピネフリンへと変換されることが示された。
他方、in vivoでのL-dopa含有ヒドロゲルを経皮投与すると、ノルエピネフリンの血漿中レベルは180分まで次第に上昇するが、ドーパミンレベルは30分〜180分までプラトーレベルに達していた。そのため、L-dopaとドーパミンとは器官中の酵素反応にとって十分に長い時間、体内に残留し、器官中並びに血漿中の酵素がL-dopaの脱炭酸とドーパミンのβ−ヒドロキシル化に関与しているものと考えられた。
【0085】
以上から、本発明のパーキンソン病治療剤を用いると、L-dopaは速やかに皮膚を介して血漿中へ移行するが、移行したL-dopa濃度に比べてドーパミンの濃度が低く、持続時間が長いことが示された。
以上のように、本発明のパーキンソン病治療剤は、パーキンソン病の治療における新たな方向性を提供するものである。
【0086】
【発明の効果】
本発明の経皮吸収組成物によれば、L-dopaを経皮吸収させることが可能となる。また、本発明により、持続時間の長いパーキンソン病治療剤を提供することができる。本発明のパーキンソン病治療剤は、常に一定量のL-dopaを提供するため、L-dopaの血中濃度の変動による副作用が出現しないという利点がある。
また、本発明の治療剤は皮膚を介して投与できるため、痴呆と嚥下困難をきたしているパーキンソン病の患者にも無理なく投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】2チャンバー拡散セルを用いるin vitroの検討におけるラットの腹部皮膚を介するL-dopaの蓄積量を示す図である。
【図2】 in vivoでのL-dopaの静脈単回ボーラス投与後のL-dopaの血漿レベルを示すグラフである。
【図3】 in vivoでのL-dopaの静脈単回ボーラス投与後のドーパミン、ノルエピネフリン、及びエピネフリンの血漿レベルを示すグラフである。
【図4】 in vivoでのL-dopaヒドロゲルの皮膚への貼着の間のL-dopaの血漿レベルを示すグラフである。
【図5】 in vivoでのL-dopaヒドロゲルの皮膚への貼布の間のドーパミンの血漿レベルを示すグラフである。
【図6】 in vivoでのL-dopaヒドロゲルの皮膚への貼布の間のノルエピネフリンの血漿レベルを示すグラフである。
【図7】 in vivoでのL-dopaヒドロゲルの皮膚への貼布の間のエピネフリンの血漿レベルを示すグラフである。
Claims (8)
- 組成物の総重量に対して、0.5〜25重量%の酸性または中性の水溶性基剤、1〜10重量%のレボドパ、15〜60重量%のテルペンとアルコールとからなる皮膚吸収増強剤、及び他の補助剤を全体を100重量%とするに必要な量を含有してなり、界面活性剤を含まない経皮吸収用組成物。
- 前記水溶性基剤が、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、及びマクロゴールからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物と、炭素数2〜5の多価アルコールから選ばれる少なくとも1種以上の化合物とからなることを特徴とする請求項1に記載の経皮吸収用組成物。
- 前記皮膚吸収増強剤が、モノテルペン、ジテルペンおよびセスキテルペンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のテルペンと、エタノールとからなることを特徴とする請求項1または2に記載の経皮吸収用組成物。
- 前記補助剤が、炭素数4〜8のジアルキルエタノールアミンおよび炭素数2〜8のアジピン酸ジアルキル、及び水からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の経皮吸収用組成物。
- 組成物の総重量に対して、0.5〜25重量%の酸性または中性の水溶性基剤、1〜10重量%のレボドパ、15〜60重量%の皮膚吸収増強剤、および他の補助剤を全体を100重量%とするに必要な量を含有してなり、界面活性剤を含まないパーキンソン病治療用経皮吸収製剤。
- 製剤の総重量に対して、0.5〜2重量%のカルボキシビニルポリマー、5〜15重量%のプロピレングリコール、1〜10重量%のレボドパ、0.5〜2重量%のジイソプロピルエタノールアミン、1〜4重量%のアジピン酸ジイソプロピル、及び1〜3重量%のl-メントールまたはd-リモネン、約20〜40重量%のエタノール、および44〜51重量%の水を含んでなる、パーキンソン病治療用経皮吸収製剤。
- 製剤の総重量に対して、5〜15重量%のヒドロキシプロピルセルロース、1〜10重量%のレボドパ、0.5〜2重量%のジイソプロピルエタノールアミン、1〜4重量%のアジピン酸ジイソプロピル、及び1〜3重量%のl-メントールまたはd-リモネン、約20〜40重量%のエタノール、および46〜51.5重量%の水を含んでなる、パーキンソン病治療用経皮吸収製剤。
- 製剤の総重量に対して、5〜15重量%のヒドロキシプロピルセルロース、1〜10重量%のレボドパ及び1.25%のベンセラジド、1〜3重量%のl-メントールまたはd-リモネン、約20〜40重量%のエタノール、および50.75〜51.75重量%の水を含んでなる、パーキンソン病治療用経皮吸収製剤。
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