JP3656931B2 - 自動二、三輪車用フロントカバー構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動二輪車や三輪車の前部に配設されるフロントカバーの構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、自動二輪車としてのスクーターには、フレームの前端部に設けられたヘッドパイプの前側にエンジン冷却用のラジエターが配設され、このラジエターの前方に一枚の樹脂製フロントカバーが配設されたものがある。
【0003】
このフロントカバーには、風導入口が形成されると共に、この風導入口に複数のルーバーが一体成形されている。
【0004】
かかる車両にあっては、車両走行時等に、その風導入口から内部に走行風を導入し、この風によりラジエター内の冷却水を冷却するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のものにあっては、一枚のフロントカバーに風導入口を形成すると、剛性が低下するため、風導入口をそれ程大きく、また自由な形状に出来ず、ラジエータの冷却性に限界があるばかりかデザイン上の制約が大きい。また、剛性を確保するため、フロントカバーの裏面にリブを形成すると、表面にヒケが発生する。さらに、風導入口にルーバーを一体形成することによっても、型抜き等の関係から、デザイン上の制約が大きくなると共に、これらルーバーの両端部が接続される風導入口の周縁部にもヒケが発生する。
【0006】
そこで、この発明は、剛性を確保すると共に、デザイン上の自由度を向上させ、且つ、外観品質も確保できる自動二,三輪車用フロントカバー構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、ヘッドパイプの前側にラジエターが配設され、該ラジエターの前方にフロントカバーが配設され、該フロントカバーは、略同じ幅を有する前側カバーと後側カバーとが前後に配置されて二重構造に構成され、前記前側カバーには、一部に走行風を導入する風導入開口が、又、前記後側カバーには、全体における一部に相当する前記風導入開口に対向する部分にルーバーが形成され、前記前側カバーの前記風導入開口以外の部分と、前記後側カバーの前記ルーバー以外の部分における分散個所にて相互に連結され、且つ、前記ルーバーは、前記前側カバーの対向する部位の後方に離間している自動二、三輪車用フロントカバー構造としたことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0008】
図1乃至図24には、この発明の実施の形態を示す。この発明の実施の形態は、この発明をスクーターに適用したものであり、ここでは、発明箇所を含むスクーター全体について説明する。
【0009】
まず構成について説明すると、図5及び図6には骨格となるフレーム1を示し、
このフレーム1の前端部には筒状のヘッドパイプ2が設けられ、このヘッドパイプ2から後方に向けて中央パイプ3が接続されると共に、一対の右側パイプ4及び左側パイプ5が配設されている。この右側,左側パイプ4,5に車幅方向に沿うクロスパイプ6,7が架設されると共に、その右側,左側パイプ4,5にエンジンマウントブラケット4a,5aが固定されている。
【0010】
そして、このフレーム1のヘッドパイプ2には、図10に示すように、ハンドル9のステアリングシャフト9aが挿通されて回転自在に支持されている。
【0011】
このハンドル9には、図8及び図9等に示すように、両端部にスイッチケース10及びブレーキ用のマスターシリンダ11が取り付けられると共に、ハンドルを覆うハンドルカバー12が取り付けられている。
【0012】
詳しくは、スイッチケース10は、前側半体10aと後側半体10bとに分割され、これら前側半体10aと後側半体10bとが合わされてハンドル9を挟持して取り付けられるようになっている。この前側半体10aには、ハンドル9の上側半分を覆うようにスイッチ側取付片10cが一体成形される一方、マスターシリンダ11には、図9に示すように、ハンドル9の下側半分を覆うようにシリンダ側取付片11aが一体成形され、このシリンダ側取付片11aとスイッチ側取付片10cとが、ハンドル9を挟持した状態で、一対のネジ13により固定されている。また、そのスイッチ側取付片10cには、図8に示すように、切欠き部10dが形成され、ハンドル9の上部に固定されたL字形の位置決め片9bに係止されて、スイッチケース10等が位置決めされるようになっている。
【0013】
また、前記ハンドルカバー12は、カバー前部12aとカバー後部12bとに二分割され、カバー前部12aの上面中央部は後方に延在し、これに固定されるスピードメータ等の計器14が臨む開口12cが形成されている。そして、カバー後部12bは、両端部が前記スイッチ側取付片10cにネジ16により取り付けられると共に、下部側両側部がステアリングシャフト9aに固着された不図示のブラケットにネジ15によりカバー前部12bと共締め固定されている。また、カバー前部12aは、開口12cの近傍において、図8に示すように、前記計器14と共にカバー後部12bにネジ17により固定され、このカバー前部12aには、図8及び図9に示すように、フラッシャーランプ18の配設用の凹部12dが形成され、この凹部12dにフラッシャーランプ18のリフレクタ19がネジ20により固定され、このリフレクタ19にバルブ21が着脱自在に配設され、凹部12dの開口を閉成するようにレンズ22が配設されている。また、図9に示すように、この凹部12dには係止孔12eが形成され、この係止孔12eに、カバー後部12bの前下方へ延在する下面12fの下縁に形成されたフック部12gが挿入係止されている。
【0014】
このような構成によれば、スイッチケース10は、ハンドル9の位置決め片9bを基準に固定され、マスターシリンダ11とハンドルカバー12とは、そのスイッチケース10のスイッチ側取付片10cを基準に取り付けられるため、ハンドルカバー12と、スイッチケース10,マスターシリンダ11との合わせ精度が向上する。また、スイッチケース10のスイッチ側取付片10cにマスターシリンダ11やハンドルカバー12を取り付けるようにしているため、マスターシリンダ11取付用のブラケットやハンドルカバー12取付用のブラケットを別途用意する必要がないことから、部品点数の削減及び取付工数の削減が図られる。
【0015】
更に、フラッシャーランプ18が配設されるカバー前部12aの凹部12dに、カバー後部12bの下面12fのフック部12gを係止するようにしているため、短く剛性のある下面12fと剛性のある凹部12dとで、カバー前部12aとカバー後部12bとを連結することにより、両者の合わせの向上が図られると共に、固定ネジを削減できるため、外観品質が向上することとなる。
【0016】
一方、図10及び図11に示すように、そのハンドル9のステアリングシャフト9bを回転自在に支持するヘッドパイプ2の前側には、ラジエター26が配設され、このラジエター26の前方には、このラジエータ26を覆うように樹脂製のフロントカバー27が、又、ヘッドパイプ2の後方には、このパイプ2等を覆うように樹脂製のレッグシールド28が配設されて、両カバー27,28が周縁部で取り付けられることにより、内部に空間が形成されている。
【0017】
そのラジエター26は、図12に示すように、下部側に2つの下側ブラケット26aが、又、上部側に1つの上側ブラケット26bが形成され、その2つの下側ブラケット26aがヘッドパイプ2から延長された下側ステー29にネジ止めされ、上側ブラケット26bがヘッドパイプ2から延長された上側ステー30にネジ止めされている。
【0018】
このラジエター26の上側にリザーバタンク32が配設されている。すなわち、このリザーバタンク32は、前記上側ステー30にボルト33により取り付けられると共に、ラジエター26の上端車体左側(正面視右側)に設けられた取付片26cに固定されることにより配設されている。このラジエター26を通過する風は、正面から入って側方に導かれるようになっているため、各ブラケット26a,26b及び取付片26cをラジエター26の上下に配設することにより、それらブラケット26a,26b等が邪魔になるようなことがない。また、ラジエター26は、図12に示すように、左右のタンク部121、122の間にコア部を有し、左側タンク部121からコア部にかけての冷却水通過は二点斜線部124で上下に分断されている。尚、図12中の矢印は、冷却水の流れを示す。
【0019】
また、図11に示すように、このラジエター26の後側で、ヘッドパイプ2の前側には、中間カバー34が配設され、この中間カバー34とレッグシールド28との間に、前記スイッチケース10やマスターシリンダー11等に接続された多数のリード線及びホース類35等が挿通されている。この中間カバー34により、ラジエター26を冷却した後の熱風からリード線およびホース類35等を保護できると共に、ラジエター26からの風を側方に案内することができる。尚、風の流れを図11矢印にて示す。
【0020】
また、前記フロントカバー27は、図7及び図10に示すように、前側カバー37と後側カバー38とによる二重構造で構成され、この後側カバー38と前側カバー37とが略同じ幅に形成されている。
【0021】
そして、この前側カバー37には、図7等に示すように、ラジエター26に走行風を導入する風導入開口37aが形成され、後側カバー38には、その風導入開口37aに対向するルーバー38aが形成されている。この前側カバー37には、図13および図2に示すように、後方に突出する複数のボス37bが突設され、これらボス37bに後側カバー38がネジ39により固定されるようになっている。このようにすれば、正面から取付点(ネジ39)が見えないため外観品質が確保される。尚、図中符号100は、ヘッドライトで、これは、フロントカバー27に取り付けられている。
【0022】
そして、このように組み付けられたフロントカバー27が、周縁部においてレッグシールド28に数カ所で取り付けられている。この取付状態において、両カバー27,28により、左右2カ所に排風口40が形成され、この排風口40からラジエター26を通過して熱変換された熱風が車外に抜けるようになっている。
【0023】
更に、後側カバー38には、前側カバー37の上縁付近に対応してルーバーが形成され、これによる排出口101を介して停車時等に、ラジエター26の熱を排出する。
【0024】
また、フロントカバー27の後側カバー38には、図1及び図14に示すように、この排風口40の内側位置において取付片38bが形成され、この取付片38bがフロントロアカバー42にネジ39止めされ、その排風口40を介して取付け・取外しができるようになっている。
【0025】
このようにフロントカバー27を、相互に連結されると共に略同じ幅を有する前側カバー37と後側カバー38とからなる二重構造とすることにより、風導入開口37aを大きくしてラジエター26の冷却性を向上させることができると共に、剛性を確保することができ、デザイン上の自由度が向上し、且つ、外観品質を確保できる。すなわち、二重構造とし、両カバー37,38の相互補強により、剛性を確保できると共に、補強用のリブを形成する必要がないため、前側カバー37の表面にヒケが発生するようなこともなく、外観品質を向上できる。また、前側カバー37に風導入開口37aを、後側カバー38にルーバー38aを形成することにより、両カバー37,38の形状の自由度が向上すると共に、ルーバー38aによるヒケの影響が車両表面に露出することがないので、外観品質を確保できる。ちなみに、一枚のもので、風導入開口37aを大きくすると、剛性が弱くなり、剛性を確保するために、肉厚を厚くすれば、重量が重くなり、又、補強用のリブを裏面に形成すると、表面にヒケが生じて外観品質が低下する。
【0026】
さらに、図1中部位Xは図15及び図16に示すようになっている。すなわち、この部位Xは、樹脂製のフロントロアカバー42,レッグシールド28及びアンダーカバー44とが合わされて構成されている。
【0027】
すなわち、このフロントロアカバー42には、図16に示すように、下部側に折返し部42aが形成され、この折返し部42aにアンダーカバー44が係止されるようになっている。この折返し部42aが形成されていない場合には、フロントロアカバー42とアンダーカバー44の合わせ位置が図16中Pとなり、正面からこの合わせ部が見えてしまい外観品質が低下する。そこで、折返し部42aを形成すれば、合わせ部が奥側となるため、外観品質が確保される。
【0028】
しかし、折返し部42aを形成すると、このフロントロアカバー42の型抜き方向が、図16中矢印方向となることから、フロントロアカバー42の上端縁部42bに車両中央寄りに折曲するフランジ部を形成することができない。
【0029】
そこで、レッグシールド28の側縁部28aに複数のルーバー28bを形成し、この側縁部28aと、フロントロアカバー42の上端縁部42bとを接続している。
【0030】
このようにすれば、正面から見た外観品質を確保できると共に、レッグシールド28のルーバー28bの間からラジエター26を通過した熱気の一部を排気することができると共に、フロントロアカバー42に形成した孔119から進入し、中間カバー34の下部に一体成形された案内片34aに案内された空気も、そのルーバー28bの間から排気できる(図16参照)。
【0031】
このレッグシールド28の後方には、図1,図7及び図17に示すように、足を乗せるフットレストボード47が配設されている。このフットレストボード47には、車幅方向中央部に上方に突出するトンネル部47aが車両前後方向に沿って形成されると共に、このトンネル部47aには、図7及び図17に示すように、バッテリー48が収納される収納凹部47bが形成され、ここに収納されたバッテリー48の上側には、中蓋49が配設されるようになっている。そして、この収納凹部47bを開閉するリッド50が、前端部50aを中心に上下方向に回動自在に設けられている。また、このリッド50の後側には、メンテリッド51が着脱自在に配設され、このメンテリッド51には、図7に示すように、前記収納凹部47bの後壁47cに形成された開口部47dに嵌合されて、この開口部47dを閉成する嵌合部50bが形成されている。なお、リッド50はメンテリッド51の前部をも覆っている。
【0032】
かかる構造にあっては、リッド50を前端部50aを中心に開成することにより、バッテリー18の交換等ができると共に、メンテリッド51の前部に形成された切欠きから図示省略のオイルタンクの注入口が露出され、オイルの注入ができるようになっている。
【0033】
また、メンテリッド51とフットレストボード47との合わせラインが斜め前方へ傾斜しているので、シート59やフットレストボード47等を取り外すことなくメンテリッド51のみを容易に取り外すことができ、メンテリッド51を外すことにより、エンジン53周りの修理が簡単にでき、特に、フットレストボード47の開口部47dが開放されることにより、この開口部47dを介してキャブレターのセッティング等が極めてし易くなる。
【0034】
さらに、そのフットレストボード47周りには、車両の盗難防止を目的とする盗難防止バー54が配設されている。すなわち、この盗難防止バー54は、図5及び図6に示すように、一端部54aが、フレーム1の右側パイプ4に溶接により固定され、他端部54bが、その右側パイプ4に固定されたエンジン53懸架用のエンジンマウントブラケット4aの外側面に固定されている。これにより、図3及び図4に示すように、その盗難防止バー54は、フットレストボード47の側部後端47eの後方で、且つ、側縁47fより内方の空間に配設され、足載せスペースを後方へ延長するようにその側部後端47eに連なっている。そして、この盗難防止バー54は、マフラー56の上方に位置している。
【0035】
このようにすれば、盗難防止バー54は、車体の側方に出っ張らないため、邪魔にならず、車体の取り回し性能が良好となると共に、車体の小型化が可能となる。
【0036】
また、フットレストボード47の側部の途中に、盗難防止バー54用の切欠きを形成する必要がないため、構造が簡単であると共に、外観品質も向上する。
【0037】
さらに、この盗難防止バー54を足載せスペースの一部として利用できるため、足載せスペースの大型化が図られ、反対に、従来と同じ広さの足載せスペースで良い場合には、フットレストボード47の小型化による型コスト及び重量の低減を図ることができる。
【0038】
さらにまた、盗難防止バー54が固定されるフレーム1の右側パイプ4は、図6に示すように、車両の後方において左右に広がっており、この広がった部分に盗難防止バー54が固定されているため、この盗難防止バー54は側方への突出量を、それ程長くする必要が無いことから、この盗難防止バー54の剛性を確保できると共に、重量も低減できる。
【0039】
さらに、盗難防止バー54の他端部54bは剛性の高いエンジンマウントブラケット4aに固定されており、この盗難防止バー54の長さは更に短くなって剛性を確保でき、且つ、重量も低減できる。
【0040】
しかも、フットレストボード47は後ろ上がりに傾斜しているため、この後端側に配設された盗難防止バー54は比較的高い位置に設定されていることから、施錠作業が良好となる。また、このフットレストボード47の側部後端47aの後側は、従来は利用されていなかった部分であるが、盗難防止バー54によりその部分が有効活用されることとなる。さらに、この盗難防止バー54は、マフラー56の上に配設されているため、マフラー56への足の接触を防止できる。
【0041】
なお、ここでは盗難防止バー54は車体の一方の側に設けられているが、左右両側に設けても良い。
【0042】
一方、図18,図19及び図20中符号58は収納ボックスで、この収納ボックス58は、フレーム1の右側パイプ4と左側パイプ5との間に挿入され、後部側に形成された段差部58aが、それら両パイプ4,5に図6に示すように設けられた支持ブラケット4b,5b上に載置されてネジ60により固定されている。また、この収納ボックス58の底壁58bの前部側がフレーム1の支持部材61に載置されてネジ62により固定されている。
【0043】
かかる収納ボックス58は、底壁58bが後方が下がるように傾斜し、この底壁58bの後部58c側がエンジン53上面と後輪64とで形成される空間に進入するように設定されている。これにより、図18に示すように、ヘルメット65を正立置きで収納した場合に、顎部65aが底壁58bの後部58c側に収納されるように設定され、更に、後壁58dの上側3/4程度が、ヘルメット65に沿って前傾されている。
【0044】
そして、かかる収納ボックス58に、シート59の前端部59aが図示省略のヒンジを介して回動自在に配設され、このシート59の後端部59bと収納ボックス58との間に図示省略のロック装置が設けられている。
【0045】
この収納ボックス58の上端部には、図21に示すように、水平方向に沿うフランジ部58eが形成され、このフランジ部58eの上側にサイドカバー67及び後部サイドカバー110の折曲された上端縁部67aが載置固定されている。また、その収納ボックス58の上端部には、そのサイドカバー67の上端縁部67aより上方に突出する堰部58fが形成されている。そして、この上端縁部67aに、シート59に取り付けられたシール部材68が当接してシールされるようになっている。
【0046】
このように、収納ボックス58の底壁58bが後方が下がるように傾斜し、この底壁58bの後部58c側がエンジン56上面と後輪64とで形成される空間に進入するように形成されているため、従来、利用されていなかったその空間を有効利用することができると共に、低重心化を図ることができる。しかも、その底壁58bの傾斜により、ヘルメット65以外の荷物は常に後ろ寄りに収納されることから、荷物のガタ付きや移動が少ない。
【0047】
また、収納ボックス58の底壁58bの後部58c側が深く形成されているため、荷物はこの後部58c側に収納されると共に、この収納ボックス58を開閉するシート59のヒンジが前端部59aに設けられていることから、シート59をそれ程大きく開けなくても荷物の出し入れができる。
【0048】
さらに、収納ボックス58の後壁58dは、ヘルメット65形状に適合して前傾されているため、鉛直方向に沿って後壁が形成されているものと比較すると、収納ボックス58の収納スペースに無駄なスペースがなく、反対に、後述の燃料タンク70等の他の部品の配設スペースを拡大することができ、且つ、シート59や車体の小型化を図ることができる。しかも、この樹脂製の収納ボックス58は、後壁58dが前傾されていることに対応して、車体フレーム1への取り付けのネジ孔も後壁58dの傾斜方向に沿って斜め上前方に指向している。これにより、スライド型等を必要とせずに型抜きができると共に、ネジ止め作業において後壁58dが邪魔にならず、取付け作業が良好である。
【0049】
さらにまた、その収納ボックス58の上端部には、図21に示すように、前記サイドカバー67の上端縁部67a(シール面)より内側で上方に突出する堰部58fが形成されているため、この堰部58fにより、収納ボックス58内への水の浸入を更に確実に防止できる。
【0050】
そして、この収納ボックス58の後ろ側には、図18に示すように、合成樹脂製の燃料タンク70が配設されている。詳しくは、この燃料タンク70は、図23に示すように、燃料を貯留するタンク本体71と、燃料を注入する筒部72a及び、その筒部72aの周囲を取り囲むように設けられて注入時等にこぼれた燃料を受ける受け皿部72bが一体形成されたフィラーカバー72とからなり、このフィラーカバー72がタンク本体71の開口部71aに嵌合されて熱融着されることにより一体化されている。そして、図18に示すように、このフィラーカバー72の注油口72cにフィラーキャップ73が着脱自在に取り付けられるようになっている。
【0051】
かかる燃料タンク70は、図18に示すように、タンク本体71の前面上部に形成された突出片71bが収納ボックス58にネジ74止めされると共に、前側下部が右側,左側パイプ4,5を横切るクロスパイプ6に支持され、後部下部がダンパー75を介してフレーム1の支持部材76に支持されている。また、この燃料タンク70の上側には、タンデムシート78が配設され、このタンデムシート78も収納ボックス58に取り付けられている。このタンデムシート78の開口78aから、燃料タンク70のフィラーキャップ73等が上方に臨んでいる。
【0052】
このように収納ボックス58に燃料タンク70及びタンデムシート78を取り付けるようにすると、サイドカバー67及び後部サイドカバー110も収納ボックス58に取り付けられていることから、これらの位置関係が所定の位置関係になるため、サイドカバー67,後部サイドカバー110,燃料タンク70及びタンデムシート78等の合わせ精度が向上することとなる。
【0053】
また、燃料タンク70に受け皿部72bを一体的に設けることにより、溢れた燃料を受けるものを別途用意する必要がない。
【0054】
さらに、フレーム1のエンジンマウントブラケット4a,5aは、リンク機構を介してエンジン53が配設されている。このエンジン53は、クランクケースから略水平に前方へ延びるシリンダを有し、クランクケースの一側に後方へ延びて後端部に後輪64を支持するトランスミッション79が一体化され、クランクケースの上部が車体フレーム1に上下揺動自在に懸架される。なお、図中符号80はショックアブソーバである。
【0055】
詳しくは、図24に示すように、トランスミッション79側から駆動軸82が車幅方向に沿って突設され、この駆動軸82がベース部材83の貫通孔83aに挿通されてスプライン結合され、この駆動軸82にナット84が螺合されることにより、このベース部材83が駆動軸82に固定されている。
【0056】
このベース部材83には、トランスミッション79側の側面に、ディスクブレーキ装置85のディスクプレート86がボルト87により取り付けられる一方、トランスミッション79に、そのディスクブレーキ装置85のキャリパ88が固定されている。そして、このキャリパ88には、一対のパッド89が着脱自在に挿入され、図示省略のピンを引き抜くことにより、このパッド89が外れるようになっている。
【0057】
さらに、そのベース部材83のディスクプレート86と反対側には、計3本のスタッドボルト90が突設され、これらのボルト90が、後輪64のホイール部64aの各挿通孔64bに挿通され、ナット91が螺合されることにより、後輪64がベース部材83に固定されている。
【0058】
さらにまた、後輪64の右側(トランスミッション79と反対側)には、マフラー56が配設されているが、このマフラー56は、後輪64取付用のナット91が露出するように、図1,図3及び図18に示すように、後ろ上がりに配設され、それらナット91の上側を通っている。
【0059】
また、リヤフェンダー93は、後輪64の上側に位置する前側部94と、この前側部94の後端部から斜め下方に傾斜する後側部95とに2分割され、後側部95が前側部94から取り外しできるようになっている。
【0060】
かかる構成によれば、キャリパ88,ディスクプレート86及びマフラー56を外すことなく後輪64を着脱できる。すなわち、後輪64を外す場合には、マフラー56が上方に配設されているため、このマフラー56が邪魔になることがなく、ナット91を外すことができる。その後、後輪64を図24中矢印方向に移動させてスタッドボルト90から外し、後輪64のタイヤ部64cを、マフラー56とベース部材83のスタッドボルト90等との間を通して、後輪64を車体から外す。この場合には、この後輪64は後方に引き抜くため、リヤフェンダー93の後側部95が邪魔になるが、このリヤフェンダー93は2分割され、この後側部95だけ外すことができるので、後輪64を着脱するときには、この後側部95だけ外すことにより、後輪64を着脱するときの邪魔になることがない。
【0061】
このようなものにあっては、後輪64をベース部材83に取り付けるようにしており、このベース部材83を駆動軸82に取り付けるようにしているため、後輪64を図24中矢印方向に移動させるのに、少なくともスタッドボルト90の突出量L2だけ移動させれば良い。これに対して、ベース部材83と後輪64とが一体に成形されているものでは、駆動軸82とベース部材83との結合ストロークL1は、ある程度の大きさのトルクの伝達を必要とすることから、多少長めに設定する必要がある。しかし、この発明のように、ベース部材83と後輪64とを分割することにより、ベース部材83と駆動軸82との結合ストロークL1は長く必要としても、ベース部材83と後輪64との結合ストロークL3は、駆動軸82の周囲に位置する複数のスタッドボルト90でなされるため、伝達トルクが分散されることから、結合ストロークL1より短くできる。そして、後輪64を外す場合には、ベース部材83を駆動軸82から外す必要がなく、後輪64をベース部材83から外せば良い。
【0062】
してみれば、後輪64の移動量L2を短くできることから、側方にマフラー56が配設されていても、スタッドボルト90から後輪64のホイール部64aを外すことができ、且つ、マフラー56を上側に配設することにより、厚みあるタイヤ部64cを、このマフラー56とベース部材83のスタッドボルト90との間から引き抜くことができる。
【0063】
また、パッド89をキャリパ88から交換するときには、図示省略のピンを引き抜いた後、図24中二点鎖線に示すようにして引き抜くことができる。
【0064】
なお、上記実施の形態では、この発明を二輪車のスクーターに適用したが、これに限らず、三輪車等にも適用できることは勿論である。
【0065】
【発明の効果】
以上説明してきたように、この発明によれば、フロントカバーを、相互に連結されると共に略同じ幅を有する前側カバーと後側カバーとからなる二重構造とすることにより、風導入開口を大きくしてラジエターの冷却性を向上させることができると共に、剛性を確保することができ、デザイン上の自由度が向上し、且つ、外観品質を確保できる。すなわち、二重構造とし、両カバーの相互補強により、剛性を確保できると共に、補強用のリブを形成する必要がないため、前側カバーの表面にヒケが発生するようなこともなく、外観品質を向上できる。また、前側カバーに風導入開口を、後側カバーにルーバーを形成することにより、両カバーの形状の自由度が向上すると共に、ルーバーによるヒケの影響が車両表面に露出することがないので、外観品質を確保できる、という実用上有益な効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係るスクーターの側面図である。
【図2】同実施の形態に係るスクーターの正面図である。
【図3】同実施の形態に係るスクーターの背面図である。
【図4】同実施の形態に係るスクーターの平面図である。
【図5】同実施の形態に係るフレームの側面図である。
【図6】同実施の形態に係るフレームの平面図である。
【図7】同実施の形態に係る車体カバー等の分解斜視図である。
【図8】同実施の形態に係るハンドル部分の平面図である。
【図9】同実施の形態に係る図8のA−A線に沿う断面図である。
【図10】同実施の形態に係る車体前部の車両前後方向に沿う断面図である。
【図11】同実施の形態に係る車体前部の水平方向に沿う断面図である。
【図12】同実施の形態に係るラジエターとリザーバタンクとを示す正面図である。
【図13】同実施の形態に係るフロントカバーを示す断面図である。
【図14】同実施の形態に係る図1のB−B線に沿う断面図である。
【図15】同実施の形態に係る図1のX部分の拡大斜視図である。
【図16】同実施の形態に係る図1のCーC線に沿う断面図である。
【図17】同実施の形態に係る図7のDーD線に沿う断面図である。
【図18】同実施の形態に係る収納ボックスや燃料タンクを示す図である。
【図19】同実施の形態に係る収納ボックスの平面図である。
【図20】同実施の形態に係る収納ボックスの側面図である。
【図21】同実施の形態に係る図1のE−E線に沿う断面図である。
【図22】同実施の形態に係る収納ボックスやシート等を示す車幅方向に沿う断面図である。
【図23】同実施の形態に係る燃料タンクの断面図である。
【図24】同実施の形態に係る後輪等の断面図である。
【符号の説明】
2 ヘッドパイプ
26 ラジエター
27 フロントカバー
37 前側カバー
37a 風導入開口
38 後側カバー
38a ルーバー
Claims (1)
- ヘッドパイプの前側にラジエターが配設され、該ラジエターの前方にフロントカバーが配設され、該フロントカバーは、略同じ幅を有する前側カバーと後側カバーとが前後に配置されて二重構造に構成され、前記前側カバーには、一部に走行風を導入する風導入開口が、又、前記後側カバーには、全体における一部に相当する前記風導入開口に対向する部分にルーバーが形成され、前記前側カバーの前記風導入開口以外の部分と、前記後側カバーの前記ルーバー以外の部分における分散個所にて相互に連結され、且つ、前記ルーバーは、前記前側カバーの対向する部位の後方に離間していることを特徴とする自動二、三輪車用フロントカバー構造。
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-
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- 1996-12-04 JP JP33890996A patent/JP3656931B2/ja not_active Expired - Lifetime
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