JP3656797B2 - デジタル放送受信機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はデジタル放送受信機に関し、特に、欧州で実用化されているDAB(Digital Audio Broadcasting:以下、DABと称する)を受信するDAB受信機に関する。
【0002】
【従来の技術】
デジタル音声を含む所定フォーマットのデータ信号を有する放送波を送信しこれを受信するシステムとして、例えば欧州規格(Eureka 147)に準拠したDABシステムがあり、既に実用化されている。
図1は、かかるDABシステムにおけるOFDM信号の伝送フレームの構成を、伝送モードIIの場合を例に示したものである。DAB局から送信されるOFDM信号は、同期チャネル、FIC(Fast Information Channel:高速情報チャネル)、MSC(Main Service Channel:メインサービスチャネル)のブロックに大きく分けられる。DAB伝送フレームの先頭の同期チャネルブロックは、伝送信号(RF信号)の非存在に相当する粗同期用のヌル信号部と、OFDM復調における差分QPSK復調のための基準位相を担う基準位相シンボルとからなる。
【0003】
FICブロックは3つに分けられ、高速情報ブロック1〜3を含み、MSCブロックは72に分けられ、データフィールド1〜72を含んでいる。
図2は、DABシステムにおける4つの伝送モード(モードI〜IV)に関するパラメータを示している。規定されているキャリアの間隔は伝送モードによって異なっている。ところが、受信機を構成する場合、同調部にループ特性が固定された位相同期ループ(以下、PLLと称する)を用いた従来の受信機においては、各キャリアの周波数間隔の異なる全ての伝送モードに対して十分なC/N(搬送波対雑音)比を得ることは困難であった。図3は、このことを模式的に説明する図であり、受信機のPLLを構成するVCOのC/N比を示している。すなわち、固定されたループ特性のPLLでは、例えば、所定中心周波数に対し4kHz離れた周波数ではC/N比は良好であるが、1kHz離れた周波数では十分ではない、すなわち、伝送モードII(キャリア間隔4kHz)に対しては良好なC/N比が得られるが、他の伝送モード、例えば伝送モードI(キャリア間隔1kHz)ではC/N比が悪化するということが生じうる。
【0004】
また、DABシステムでは、放送用に複数の周波数帯域が設定されており、各周波数帯域毎に主として伝送される伝送モードが異なるという問題がある。
ここで、DABシステムにおける受信バンドについて説明すると、現在、DABシステムでは、複数の受信バンドが設定されている。例えば、Lバンドは、1.5GHz帯域を使用するものであり、伝送モードとしては、モードIIが使用されることが多い。また、バンド3は、200MHz帯域を使用するものであり、SFN(single frequency network)に用いられるモードIが伝送モードとして使用されることが多い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、伝送モード(キャリア間隔)に拘わらず十分なC/N比で受信することが可能なデジタル放送受信機を提供することにある。
また、本発明の目的は、受信バンドによって受信の可能性の高い伝送モードが異なることを利用して、受信可能性の高い伝送モードが良好に受信できる環境を早期に確立することが可能なデジタル放送受信機を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、伝送モード毎にキャリアの周波数間隔が異なる周波数多重信号を受信可能なデジタル放送受信機であって、位相同期ループ(PLL)を含んで設定受信周波数に同調する同調手段と、同調手段によって得られる受信信号の伝送モードを判別する伝送モード判別手段と、判別した伝送モードに基づいてPLLのループ特性を変更する制御をなす制御手段と、を有することを特徴としている。
【0007】
また、本発明によれば、複数の周波数帯域が放送用に割り当てられており、主として使用される伝送モードが前記周波数帯域毎に異なり、且つ、伝送モードがキャリアの周波数間隔で規定されるデジタル放送を受信可能なデジタル放送受信機であって、位相同期ループ(PLL)を含み、設定受信周波数に同調可能な同調手段と、設定受信周波数が含まれる周波数帯域を判別し、判別した周波数帯域で主として使用される伝送モードに基づいてPLLのループ特性を設定する制御手段と、を有することを特徴としている。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図4は、本発明によるDAB受信機の構成を概略的に示している。そして、図4では、本発明によるPLLのループ特性を変更する構成以外の部分は従来例と変わらないので該構成を中心に説明する。
【0009】
図4におけるDAB受信機は、同調部10、SAWフィルタ12、A/D変換器14、FFT(高速フーリエ変換)部16、AFC(自動周波数制御)部17、コントローラ18を含むシステム制御部19及びヌル検出器20から構成される。
同調部10には、位相比較器(PD)21、チャージポンプ22、LPF(ローパスフィルタ)23、VCO(電圧制御発振器)24、デバイダ25、VCXO(電圧制御型水晶発振器)27が構成される。VCXO27は、位相比較の基準周波数を生成する。コントローラ18からの選局信号によりデバイダの分周比を制御することで、結果として、基準信号の整数倍の周波数がVCO24より出力され、ミキサ29に供給される。受信信号とこのVCO出力信号とにより周波数変換が行われ、中間周波数(IF)信号が生成される。
【0010】
SAWフィルタ12は、ミキサ29の出力からIF信号を所定の選択度をもって抽出する。抽出されたIF信号はベースバンド信号に再度変換され、後段のA/D変換器14に出力される。
A/D変換器14では、ベースバンド信号がデジタル信号に変換され、デジタル値に変換された信号は、OFDM信号を復調するためのFFT16に入力される。
【0011】
FFT16では、入力信号に対して所定のFFTウインドを設けてFFT処理を施す。かかる処理によりマルチキャリアの各位相情報を得ることができる。FFT処理の結果は、後段の図示しないビタビ復号器に出力されると共に、システム制御部19にも出力される。又、AFC(周波数制御)部17は、FFT部16の結果に基づいてAFC信号を生成し、PLL15のリファレンス周波数を決定するVCXO27の発振周波数を制御する。さらに、ヌル検出器20は、A/D変換されたサンプリングデータに基づき、受信信号中にヌル部(無信号部)があるか否かを検出する。
【0012】
LPF23は、図5に示すように、入力抵抗として可変抵抗器である入力抵抗器(R1)31を有し、増幅器33にキャパシタ(C)35及び帰還抵抗器(R2)36からなるフィードバック回路を設けたアクティブLPFを構成している。入力抵抗器(R1)31は、コントローラ18からのループ特性変更信号に基づいて、図示しない手段によってその抵抗値を変更することができるように構成されている。尚、この例では入力抵抗器(R1)31を可変抵抗器としたが、入力抵抗器(R1)又は帰還抵抗器(R2)36の少なくとも一方が可変抵抗器であり、ループ特性変更信号に基づいてその抵抗値を変更することができるように構成されていればよい。
【0013】
本発明において、PLLのループ特性の変更によりC/N特性を変更する原理について以下に説明する。PLLのループ特性が図3に示したC/N特性を呈する場合において、例えば、入力抵抗器31の抵抗値を減じてチャージポンプ電流を増加させることによって、図6に示すC/N特性に変更することができる。すなわち、伝送モードI(サブキャリアの周波数間隔:1kHz)に対して、より大きなC/Nが得られるように調整することができるのである。
【0014】
従って、この場合、各伝送モードに対する入力抵抗器31の抵抗値の関係は、R1(モードI)<R1(モードIV)<R1(モードII)<R1(モードIII)となる。
また、入力抵抗器31の抵抗値を減ずる代わりに、帰還抵抗器R236の抵抗値を増加させても同様な調整が可能であり、各伝送モードに対する抵抗値の関係は入力抵抗器31の場合と逆となる。
【0015】
次に、図7に示すフローチャートを参照しつつ、コントローラ18が実行するループ特性変更の処理手順を説明する。尚、上述においては、コントローラ18をハードウエアの構成として説明したが、実際にはマイクロコンピュータのソフトウエアとして実現することもできる。
かかるフローチャートは、例えば、受信バンド(受信周波数帯域)の変更を伴うDAB局の選局や同一バンド内の異なるDAB局の選局といった選局処理の際に実行されるものである。
【0016】
コントローラ18は、PLLループ特性の初期値を決定する為に、まず、現在の受信バンドがLバンドであるか否かを判定する(ステップS1)。
前述したように、現在、DABシステムでは、複数の受信バンドが設定されている。例えば、Lバンドは、1.5GHz帯域を使用するものであり、伝送モードとしては、モードIIが使用されることが多い。また、バンド3は、200MHz帯域を使用するものであり、SFN(single frequency network)に用いられるモードIが伝送モードとして使用されることが多い。
【0017】
このように、受信バンドによって受信の可能性の高いモードが異なるので、PLLループ特性の初期値の設定は、受信バンドごとに異なるといえる。以下に示す本発明では、ステップS1で受信バンドを判定し、適切なPLLループの初期特性を予測、設定するように構成することで、早期に良好なPLL特性を確立する可能性を高めている。
【0018】
具体的には、受信バンドがLバンドの時には、ステップS2に移行して、PLLのループ特性の初期値を、受信する可能性の高いモードII用に設定する。
他方、それ以外の受信バンドが設定されている時には、ステップS3に移行して、PLLのループ特性の初期値を、受信する可能性が高いモードI用に設定する。この設定を受け、LPF23中の抵抗R1の値が対応する値に設定される。
【0019】
初期特性を設定した後に、コントローラ18は、ヌル検出器20の検出結果より、受信信号中にヌル部(無信号部)が有るか否か判定する。(ステップS4)。ステップS4にてヌル部が検出できない場合は、現在設定されている周波数でのDAB局の受信は不可能と判断し、今回の処理を終了する。他方、ステップS4にてヌル部が検出された場合は、ついで、受信モードの判定を行う。
【0020】
この判定は、例えば、ヌル部が発生する周期を判定し、ついでヌル部の長さを判定することでなされる。なお、ヌル部の長さを判定する理由は、モードII、IIIがヌル部の発生周期が同じで周期の判定だけでは区別がつかないことによる。ステップS5にて受信信号の伝送モードが判定されると、コントローラ18は、ステップS6に移行して、受信信号の伝送モードに適したPLLのループ特性になるように、LPF23の設定を適宜更新する。例えば、受信バンドがLバンドで受信信号の伝送モードがモードIVの場合は、ステップS2で設定されている特性がモードIIであるので、ステップS6でモードIV用の設定に更新する。また、受信バンドがバンド3で受信信号の伝送モードがモードIの場合や、受信バンドがLバンドで受信信号の伝送モードがモードIIの場合は、既にステップS3でかかるモード用の設定が初期値としてなされているので、ステップS6では、本ステップで特性変更の必要はないと判断し、設定の変更は行わない。
【0021】
他方、ステップS5で伝送モードが確定できない場合は、今回の処理を終了する。
次に、ステップS6の具体的な処理の一例を図8に示す。本フローチャートでは、まず、ステップS5にて検出された受信信号の伝送モードがモードIであるか否かがステップS10にて判定される。モードIと判定される場合は、ステップS11に移行して、モードI用の設定となるようにLPF23中の抵抗R1の値を設定する。
【0022】
ステップS10にて、受信信号の伝送モードがモードIでないと判定されるときには、ステップS12にて、今度は、受信信号の伝送モードがモードIVであるか否かが判定される。モードIVと判定される場合は、ステップS13に移行して、モードIV用の設定となるようにLPF23中の抵抗R1の値を設定する。即ち、抵抗値R1をモードIの設定より更に大きくするのである。
【0023】
ステップS12にて、受信信号の伝送モードがモードIVでないと判定されるときには、ステップS14にて、今度は、受信信号の伝送モードがモードIIであるか否かが判定される。モードIIと判定される場合は、ステップS15に移行して、モードII用の設定となるようにLPF23中の抵抗R1の値を設定する。即ち、抵抗値R1をモードIVの設定より更に大きくするのである。
【0024】
ステップS14にて、受信信号の伝送モードがモードIIでないと判定されるときには、受信信号はモードIIIであると判定されるので、ステップS16にて、モードIII用の設定となるようにLPF23中の抵抗R1の値を設定する。即ち、抵抗値R1をモードIIの設定より更に大きくするのである。
上記したように、本発明によれば、受信信号の伝送モードを判別し、判別した伝送モードに基づいてPLLのループ特性を変更することによって、伝送モードに拘わらず十分なC/Nで受信することが可能なデジタル放送受信機を実現できる。
【0025】
上記実施例においては、DABを受信するDAB受信機について説明したが、同様の方式を用いる他の周波数多重方式による送信波を受信するデジタル放送受信機に対しても本発明は適用可能である。
【0026】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、伝送モードに拘わらず十分なC/N比で信号を受信することが可能なデジタル放送受信機を実現できる。
また、本発明によれば受信可能性の高い伝送モードが良好に受信できる環境を早期に確立することが可能なデジタル放送受信機を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 DABシステムにおけるOFDM信号の伝送フレームの構成を示す図である。
【図2】 DABシステムにおける伝送モードに関するパラメータを示す図である。
【図3】 PLLを構成するVCOのC/N特性を説明する模式図である。
【図4】 本発明によるDAB受信機の構成を概略的に示すブロック図である。
【図5】 本発明による、ローパスフィルタの構成を概略的に示す図である。
【図6】 図3のC/N特性に対し、PLLのループ特性を変更した場合のVCOのC/N特性を説明する模式図である。
【図7】 本発明による、コントローラ18が実行するループ特性変更ルーチンの手順を示すフローチャートである。
【図8】 本発明による、コントローラ18が実行するループ特性変更ルーチンのステップS6の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 同調部
12 SAWフィルタ
14 A/D変換器
16 FFT
17 AFC
18 コントローラ
19 システム制御部
20 ヌル検出器
22 チャージポンプ
23 LPF
24 VCO
25 デバイダ
27 VCXO
31 入力抵抗器
36 帰還抵抗器
Claims (5)
- 伝送モード毎にサブキャリアの周波数間隔が異なる周波数多重信号を受信可能なデジタル放送受信機であって、
位相同期ループ(PLL)を含んで設定受信周波数に同調する同調手段と、
前記同調手段によって得られる受信信号の伝送モードを判別する伝送モード判別手段と、
該判別した伝送モードのサブキャリア周波数間隔に基づいて前記PLLのループ特性を設定する制御手段と、を有することを特徴とするデジタル放送受信機。 - 前記PLLは、可変抵抗器を含むアクティブフィルタを含み、前記可変抵抗器の抵抗値に応じて前記ループ特性が変化することを特徴とする請求項1記載のデジタル放送受信機。
- 前記周波数多重信号はOFDM信号であることを特徴とする請求項1又は2記載のデジタル放送受信機。
- 複数の周波数帯域が放送用に割り当てられており、主として使用される伝送モードが前記周波数帯域毎に異なり、且つ、前記伝送モードがサブキャリアの周波数間隔で規定されるデジタル放送を受信可能なデジタル放送受信機であって、
位相同期ループ(PLL)を含み、設定受信周波数に同調可能な同調手段と、
前記設定受信周波数が含まれる周波数帯域を判別し、前記判別した周波数帯域で主として使用される伝送モードのサブキャリア周波数間隔に基づいて前記PLLのループ特性を設定する制御手段と、を有することを特徴とするデジタル放送受信機。 - 前記デジタル放送受信機は、前記同調手段によって得られる受信信号の伝送モードを判別する伝送モード判別手段を更に含み、前記判別した伝送モードに基づいて、必要に応じて、前記設定したPLLのループ特性を変更することを特徴とする請求項4記載のデジタル放送受信機。
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