JP3654022B2 - 荷電粒子線装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料に荷電粒子線を照射して試料の検査,分析,加工,露光,観察などを行う荷電粒子線装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子線やイオン線などの荷電粒子線を試料に照射して試料の検査,分析,加工,露光,像観察などを行うために、荷電粒子線装置が利用される。荷電粒子線には、半導体製造工程においてフォトマスクやウェーハへのパターン形成に使用される電子線露光装置,ウェーハ上に形成されたパターン等の外観検査等に使用される走査型電子顕微鏡,試料の微細加工を行う荷電粒子線加工装置などがある。これらの荷電粒子線装置には、荷電粒子源または荷電粒子線による投影像等を縮小または拡大する電子レンズが備えられている。以下に荷電粒子線装置のうち電子線を用いた走査型電子顕微鏡を例に、電子線の電子レンズで受ける収差とその軸合わせ方法について従来例を説明する。
【0003】
電子線の軌道は電子レンズによる収束作用を受けるとき、その電子レンズ固有の収差の影響を受ける。その結果、形成される像にぼけ等を発生する。収差の影響の大きさは、電子線のレンズへ入射するときの、レンズ固有の電子光学系軸と垂直な面内での入射位置と電子光学系軸となす入射角度により大きく変化する。電子線の軌道は、レンズに対してその電流中心を含む電子光学系軸と同軸で入射するときに収差より受ける影響を最も小さくすることができる。
【0004】
電流中心とは、電子線軌道のレンズ電子光学系軸上のその1点を通過するときにレンズ励磁量の変化に対して軌道の変化を生じない調整点を指す。
【0005】
電子線をレンズの電子光学系軸上にある電流中心の1点を通るように入射位置を調整することは、その評価方法も確立されており、比較的容易に行うことが可能となっていた。しかし、レンズへ入射するときの入射角度は、その評価方法もなく、レンズの電子光学系軸と同軸に合わせることは困難となっていた。
【0006】
レンズには、斜めに入射する電子線でも収差をある程度小さくするような入射位置が存在する。従来技術では、電子線がレンズの電子光学系の軸に対して斜めに入射しているとき、この原理を用いて、その位置に入射位置を合わせることで像のぼけを小さく抑えていた。しかし、この方法では、収差の種類により完全に除去することが困難なものがあり、分解能の向上にも限界がある。
【0007】
種々の収差のうち、球面収差はレンズと物点および像点位置,絞り等が決まれば固有のもので、軸ずれを起因として生じるものではない。また、非点収差および像面湾曲収差は非点補正コイルによって施正することが可能である。歪曲収差は像のぼけの原因とはならない。
【0008】
一方、コマ収差または倍率色収差は、電子線のレンズへの入射角度が任意の値を持つとき、その入射位置を選ぶことで消すことができる。ただし、これらの条件はレンズの電子光学系軸上にある電流中心の1点に電子線を通過するよう軸調整された条件とは必ずしも一致しない。また、各々の条件は全く独立しており、これらを同時に満足することは非常に困難である。従って、電子光学系鏡筒の製作または組み立て等の影響により、電子線のレンズへ入射する角度がレンズの電子光学系軸と平行でないとき、レンズへの入射位置を実際に調整しながら、総合的な収差を小さくする位置、すなわち像質の最も良い位置を探す調整を行っていた。このとき、コマ収差および倍率色収差は、1)一方は0となっていても他方は0でない。2)両者ともに0でないが、両者のトータルの収差は最小となる。のいずれかの状態となっていた。従って、電子線の入射角度をレンズ電子光学系軸と平行とすることができれば、これらの収差を0とすることができる。
【0009】
一方、以前より上記の軸調整および非点補正を自動で行いたいという操作者の要求はあった。これらに対して、従来技術では二次電子像を画像処理することで行っていた。その方法とは、例えばレンズに対する軸ずれ調整は以下のように行う。すなわち、電子線を特定の調整専用試料に当てて走査し、そのとき形成される二次電子像を画像メモリ等に一旦記憶する。記憶した画像中で、特定のパターンの画像内位置を画像処理により求める。このときのレンズの励磁量と、求めた特定パターンの位置を結び付ける。次にレンズの励磁量をある決まったステップ量のみ変化させ、同様の操作を行うことで、先に位置を求めたパターンの位置をあらたに求める。先に求めた位置との距離差および変化した方向を求め、このときレンズの励磁量の変化した差を関連付けることで、最適なアライメントコイル励磁量を計算し、その値に設定し、調整される。さらに軸ずれの残っているときには、先の変化させた差より小幅な変化量をアライメントコイルに与えて、同様の操作を繰り返す。以上を軸ずれのなくなるまで繰り返し行う。
【0010】
しかし、上記のようにレンズへの入射角度の評価方法がないので、電子線のレンズへの斜め入射に対しては調整できない。また、二次電子像は信号の対ノイズ比を表わすS/N比の値が低く、画像処理による評価に適した画像を得るために画像の重畳を行わなければならない。そのため、1枚の画像を得るために数秒を要し、各コイルに対して複数の調整値を評価し、さらに複数回のステップに渡り調整を行うと、その評価ステップ数倍および調整ステップ数倍の時間を必要とする。
【0011】
一方、近年の半導体製造ライン中で、チップ評価用に用いられる走査型電子顕微鏡には高い装置稼動率が求められる。特に、装置の調整作業を行う時間は装置の全く稼動しない時間となり、装置稼動率を大きく低下させる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、電子光学系鏡筒の製作または組み立て時の誤差により走査型電子顕微鏡のレンズへ入射する電子の入射する角度は場合により異なり、組み立ておよび調整終了後の像質が装置によって大きな違いが生じることがあった。これらは、像質に最も影響を与える対物レンズへ電子の入射する角度の装置間により異なるため、また対物レンズを製作する際の加工誤差および材質の偏りによる電流中心を含む電子光学系軸の位置のばらつき等が存在するために、調整を行った後に残る収差の量に違いのあることに原因がある。これらの装置間の違いを調整によって同等の像質にすることが望まれる。
【0013】
また、近年の半導体製造ライン中で用いられる検査装置等では、操作者が必ずしも操作に熟練していない。こうした装置の一種である走査型電子顕微鏡には、ますます装置の自動化を求められている。また、走査型電子顕微鏡では、その電子源は常に安定して一定ではなく、使用するにつれて系時変化により位置が変化する。従って、その位置変化をみながら一定の時間間隔を置いて電子光学系鏡筒の軸合わせを含む調整作業を行うことは、長期間に渡り最良の像質で観察を行うために必要不可欠な作業となっている。しかし、一方で半導体製造ライン中で用いられる走査型電子顕微鏡は調整作業等の不稼動時間をも含めたトータルな装置稼動率を高めることが求められている。
【0014】
本発明は、上記の従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、電子光学系の軸調整および非点調整を迅速に安定して自動的に行う。また、レンズへの斜め入射によって生じていた種々の収差を除去することで装置間の違いなく最良の像を得ることを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明では、上記目的を達成するために、荷電粒子源と、当該荷電粒子源から放出された荷電粒子線を収束する電子レンズと、前記荷電粒子線を偏向する偏向器と、前記荷電粒子線の照射個所に配置されると共に、前記偏向器によって変化する前記荷電粒子線の照射位置を検出する二次元検出器と、当該二次元検出器で得られる前記荷電粒子線の照射位置、及び前記走査偏向器による前記荷電粒子線の偏向範囲の推移に基づいて前記荷電粒子線と前記電子レンズの光軸との差異を検出する検出手段を備えたことを特徴とする荷電粒子線装置を提供する。
【0016】
このような構成によれば、走査偏向器による偏向によって形成される偏向軌道を検出することが可能となり、さらに電子レンズの収束条件を違えた際の偏向位置の違いによって、電子線と電子レンズの相対角度を算出する手段を備えているので、電子レンズの光軸と電子線の光軸の不一致に基づく軸ずれを検出することが可能になる。
【0017】
本発明の軸ずれの検出原理を、図3を用いてより具体的に説明する。図3は本発明の軸ずれの検出原理を示す図である。なお、この図では荷電粒子線装置の1つである走査形電子顕微鏡を例にとって説明する。
【0018】
本発明の電子レンズに相当する対物レンズ8と一致した軌道を持つ電子線83(一点鎖線で図示)は走査偏向器7によって、本発明の二次元検出器に相当する電子線照射位置検出面41表面上に走査線85(破線で表示)に沿って走査偏向される。
【0019】
この際、対物レンズ8の電子線光学軸80からずれた軌道を持つ電子線84 (実線で表示)は走査偏向器7によって、電子線照射位置検出面41表面上に太実線矢印で図示された走査線86に沿って走査偏向される。
【0020】
この場合、走査線86は、対物レンズ電子光学軸と一致した軌道を持つときの電子線の描く走査85からずれた位置に異なる大きさで描かれる。
【0021】
対物レンズ8の物点を含み電子光学系軸に垂直な面で電子光学軸80とずれた入射位置を持つ軌道を持つ電子線により描かれる走査線86の同85との位置のずれを、例えば走査偏向量を0としたときの電子線の軌道の電子線照射位置検出面41表面との交点のずれ量(DX0,DY0)にて表すことができる。
【0022】
また、対物レンズ電子光学軸80と角度ずれを生じている軌道を持つ電子線により描かれる走査線86では、例えば走査偏向量を0としたときの電子線の軌道の電子線照射位置検出面41表面との交点を挟んで同じ走査振幅偏向信号を加えたときの実際の電子線の偏向量DPとDMは異なる。
【0023】
これらのずれ量DX0,DY0,DPとDMの検出値を用いることで、電子線の持つ対物レンズ電子光学軸80とのずれを知ることができる。
【0024】
なお、二次元検出器では、照射された電子線により信号を誘起し、その表面上での照射位置を検出し、レンズ軸ずれ等の影響を含んだ電子線の軌道の試料面上での結像位置を求め、結像位置よりレンズ軸ずれ量(電子線と電子レンズの光軸の相対位置ずれ)を算出する。
【0025】
レンズへ電子線の入射したときの角度は、レンズを通過する軌道の異なる電子線のレンズから受ける収束力の違いにより検出する。
【0026】
これは、電子線の軌道と電子光学系軸とが平行でないとき、レンズ手前で電子線をもとの軌道に左右均等に走査すると走査幅の中心(走査前の軌道)を挟んで結像位置にアンバランスを生じるのを利用する。
【0027】
本発明によれば、一次電子線の照射位置の変化によってレンズ軸ずれ量を検出するので、結像のぼけ等の影響を受けにくい。一方、上記従来技術では、二次電子像を一旦は画像メモリ等に取り込んで、画像処理によりレンズ軸ずれ量を検出するので、結像のぼけを原因とする二次電子像のぼけは検出精度に大きく影響する。
【0028】
本発明では、一次電子線の照射位置を結像スポットの重心位置より求める如き検出原理からなるので、結像スポットの左右または上下均等なぼけの影響は受けない。
【0029】
従って、上記従来技術ではレンズ軸調整を行う前にある程度の前調整を行っておく必要があったが、本発明ではその必要がないので、ある程度軸ずれの大きいときであっても、容易に軸調整可能であり、また自動軸調整を行うことも容易になる。
【0030】
更に本発明では、上記目的を達成するために、荷電粒子源と、当該荷電粒子源から放出された荷電粒子線を収束するための電子レンズと、前記荷電粒子線を走査する走査偏向器と、前記荷電粒子線の照射位置に配置されると共に、前記走査偏向器による走査に対し、間欠的に前記荷電粒子線を遮蔽する遮蔽部を有し、当該遮蔽部を通過した前記荷電粒子線の照射量を検出する二次元検出器と、前記走査偏向器の走査に連動して前記荷電粒子線に対する非点補正量を変更する機能を有する非点補正装置を備えたことを特徴とする荷電粒子線装置を提供する。
【0031】
以上の構成によれば、得られた電子線量に基づいて最適な非点補正量を特定することが可能になる。本発明の遮蔽部を備えた二次元検出器は、荷電粒子線の走査による荷電粒子線の二次元検出器への照射を間欠的に遮断する。即ち荷電粒子線の走査に連動して変化する荷電粒子線量を間欠的に検出することができる。
【0032】
このように間欠的に得られた荷電粒子線量の時間に対する信号波形を比較することで、最適な非点補正量を得ることが可能になる。
【0033】
より具体的な手段としては、遮蔽部を備えた二次元検出器上に荷電粒子線を走査させた場合の時間に対する荷電粒子線量の微分信号を検出する。この検出結果は、照射された荷電粒子線の非点量,合焦の度合い、及び他の収差の影響を受ける。そこで、非点補正量を変化させた状態で、その検出結果が最大となる非点補正量を求めることで、最適な非点補正量を得ることが可能になる。
【0034】
これら軸ずれ、或いは非点補正量の検出は、荷電粒子線をX、或いはY等、或る特定の方向に独立に走査し、その結果得られる一次元信号をそれぞれ独立に処理する。このときの信号処理は、一次元(一辺)当りN個の画素を持っていたとすると、その2倍の2×N個の画素分に対する計算を行うことで良い。これは従来の二次元画素でN×N個の画素に対して計算を行っていたのと比較して、大幅に信号処理の負担を減らすことが可能になる。またこれは処理の高速化にも寄与する。
【0035】
なお、二次元検出器上での荷電粒子線の照射位置は回転成分を含む二次元平面上に展開するので、これを回転座標系の半径方向での一次元座標に変換する。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を、走査電子顕微鏡を例にとって説明する。
【0037】
図1は、本発明による荷電粒子線装置の1つである走査型電子顕微鏡の概略構成図である。電子源1より放出された一次電子ビーム(荷電粒子線)はアノード2と電子源1(荷電粒子源)の間の電位差により任意の加速エネルギーVacまで加速される。Vacは一次加速電源27によって与える。一次電子ビームを収束レンズ3により収束し、試料ステージ10上の試料9の表面に対物レンズ8によって焦点を結ばせる。
【0038】
各々のレンズ(電子レンズ)は収束レンズ電源28および対物レンズ電源32によって励磁される。一次電子と試料9の材質の相互作用により発生する二次電子を二次電子検出器21によって検出し、増幅器22によって信号増幅した後、観察用表示器23上に輝点として表示する。この輝点の明るさは一次電子ビームが照射された試料9表面からの二次電子量に関係する。
【0039】
ここで、制御器26で発生する偏向同期信号fによって同期された偏向信号発生器25は、鋸歯状または任意の波形状の偏向信号電圧を発生する。偏向器駆動回路24は、この偏向信号電圧に従って一次電子ビームを偏向し、試料9の表面を走査する。偏向器駆動回路24は、この偏向信号fによって偏向器7と同期された観察用表示器23上では、一次電子ビームによって走査された試料9表面の二次電子像が表示される。一方、電子ビームの電気的軸調整時には電子光学系軸上付近にあらかじめ視野位置設定器(X方向は16、Y方向は17)に設定しておいた視野位置(Xps,Yps)に軸調整用検出器11位置(Xax,Yax)が来るよう、電子ビームの非点調整時には電子光学系軸上付近を示す視野位置(Xps,Yps)に非点調整検出器12位置(Xst,Yst)が来るようにステージコントローラ13によって試料ステージ10を移動させる。
【0040】
自動軸調整を実行時には、軸調整用検出器11によって検出された軸ずれ量を軸調整用検出器コントローラ33に信号処理し、その結果を走査型電子顕微鏡全体の制御器26へ伝える。ここで、制御器26はあらかじめ軸ずれ合せ目標値設定器14と軸角度ずれ目標値設定器15に設定されている軸ずれ目標値ΔWmin,軸角度ずれ目標値θmin に対して各々相対する軸ずれ量以下にするように第一アライメントコイル5と第二アライメントコイル6を制御する。このとき、第一アライメントコイル5は第一アライメントコイル電源30によって、第二アライメントコイル6は第二アライメントコイル電源31によって励磁される。
【0041】
自動スティグマ調整実行時には、非点調整検出器12によって検出された非点量を非点調整検出器コントローラ34に信号処理し、その結果を走定型電子顕微鏡全体の制御器26へ伝える。ここで、制御器26は非点量を0とするようにスティグマコイル4を制御する。このとき、スティグマコイル4はスティグマコイル電源29によって励磁される。
【0042】
図2は本発明実施例装置における軸ずれ検出の原理を示す図である。第一アライメントコイル5および第二アライメントコイル6による偏向を受けた電子ビームは偏向器7により、電子線照射位置検出器(二次元検出器)表面上を走査する。このとき、電子ビームは対物レンズ8によって電子線照射位置検出面41表面上に合焦している。
【0043】
電子線照射位置検出面41表面での電子線照射位置は、対物レンズ8の近軸領域内であれば理想的には走査偏向信号IDFに比例した位置となる。これをWi=(Xi,Yi)とする。しかし、対物レンズ8を通過する実際の電子線はレンズ固有の収差による影響を受けてWpi=(Xpi,Ypi)にずれる。WiとWpiの差は、対物レンズに入射する電子線の入射位置と入射角度の影響を大きく受ける。
【0044】
例えば、図2のように電子線をX方向へWiまで連続的に走査偏向すると、実際の電子線照射位置は2点鎖線82のような曲線を描いてWpiへ達する。このとき、走査偏向される前の電子線の軌道に対物レンズ8に対して軸ずれを生じて入射したり、対物レンズ8光軸に対してずれた角度にて入射していると、連続的な実際の電子線照射位置を示す2点鎖線82の曲線は影響を受けて形を変える。
【0045】
そこで、本発明実施例装置では、偏向器へ与えられる走査偏向信号IDFの波形に0を境に上下対称な最大走査幅を持つ波形を与える。その時の実際の電子線照射位置Wiと理想的な電子線照射位置Wpiの差より、電子線の対物レンズ8に対する軸ずれおよび光軸に対する軸角度ずれを検出する。
【0046】
電子線照射位置検出面41上での電子ビームの照射位置は、電子線の照射付近に誘起された電気信号を4隅に配置された電極42a〜42dで検出し、これを軸調整用検出器コントローラ33にて座標(x,y)に変換する。式1に、電子線照射位置検出面41の大きさをLDX×LDYとしたときの電極信号から座標位置を求める変換式を記す。
【0047】
【数1】
【0048】
このようにして求められた座標(x,y)を示す信号ASX,ASYは本体全体の制御器26に入力される。これら一連の操作によって電子線照射位置W= (X,Y)を求めることができる。
【0049】
このようにして求めた電子ビーム照射位置は、そのときの偏向器7で与える走査量と対物レンズ8での軸ずれ量の影響を含んでいる。また、電子ビーム軌道は対物レンズで縮小作用を受けるので、その励磁量を例えばEからE−ΔEへ変化(E+ΔEでも同様)させると、同じ偏向走査量に対して対物レンズ励磁量変更前後での位置差を生じる。そこで、所定の偏向走査量に対してのその位置差より電子線の対物レンズ8に対する軸ずれ量および角度ずれを求める。
【0050】
図4に対物レンズ励磁量を変えた前後での、同じ走査信号を与えたときの電子ビーム照射位置の変化を示す。ただし、ここではx軸方向走査を取り上げてあるが、y軸方向でも同様である。
【0051】
なお、偏向コイルの作る磁界の座標xdif,ydifは、通常、軸調整用検出器上の座標xdet,ydetと一定の角度だけずれている。この値をrdif とする。その様子を図5に示す。rdif はあらかじめ実験またはシミュレーション等によって求めておき、走査位置および方向を求めるときに数2による変換を行うと良い。
【0052】
【数2】
xdif=xdet×cos(rdif)+ydet×sin(rdif)
ydif=ydet×cos(rdif)+xdet×sin(rdif)
また、ここでは走査信号として三角関数(sinまたはcos)の半波形の組み合わせを与えている。
【0053】
まず対物レンズ励磁量としてEを与えたとき、走査中心位置が座標wisとなっていたとする。励磁量をE−ΔEへ減らすと、対物レンズ物点位置での電子光学系軸に垂直な面内での位置ずれ量とその方向によって、走査中心位置は座標wis+Δwへ移動する。このとき、例えば第二アライメントコイルにて位置ずれを補正しようとすると、その動作補正量TTAL2は次の数3で表わされる。
【0054】
【数3】
【0055】
ただし、η2 :第二アライメントコイルの電子ビーム像点の移動に対する動作感度で単位[rad/LSB],LA2 :対物レンズ物点と第二アライメントコイル動作点の距離。
【0056】
また、kgおよびkhは数4のように定義される。つまり、対物レンズを通過する電子の軌道w(z)は、物点位置での軌道の位置w0と傾きw0′をパラメータとして、次式で表わされる。ただし、電子光学系軸をZ軸に、それと垂直方向にw軸を取っている。
【0057】
【数4】
w(z)=w0×g(z)+w0′×h(z)
g(z)およびh(z)は対物レンズを通過する電子ビームの軌道を表わす近軸軌道方程式の解(基本軌道)である。g(z)またはh(z)は、物点位置Zoと像点位置Ziでの値は数5のようになる。
【0058】
【数5】
g(zo)=1,g′(zo)=0,h(zo)=0,h′(zo)=1
g(zi)=M,h(zi)=0
さらに、対物レンズの励磁量をΔEだけ変化させたときの、像点位置Ziでの基本軌道をgisまたはhisは数6で表わされる。
【0059】
【数6】
【0060】
この式においてkgまたはkhを数7のように定義する。
【0061】
【数7】
【0062】
上記のように、kgまたはkhは対物レンズの電子ビーム軌道に与える影響を表わす係数の一種で、ワーキングディスタンスWDが決まると一意に決まる。
【0063】
ここで、η2 またはkg,khは予め計算またはシミュレーションまたは実験等によって求めて置くと良い。特にkg,khは、対物レンズ励磁量Eに対してg(zi)=giとh(zi)=hi は図6のように求まるので、電子光学系の設計で決まっている像点位置Zinに対して一義的に求まる対物レンズ励磁量Enでのgiとhiの傾きより求める。
【0064】
上記のように求めた動作補正量TTAL2 だけ第二アライメントコイルの励磁設定値を変更する。その結果、電子ビームは対物レンズ8の電流中心を通るようになり、この1点を通過する軸に対象に試料上を走査されるようになる。
【0065】
また第一アライメントコイルで行うときも同様である。一方、やはり対物レンズ物点位置での電子光学系軸からの傾き量を求めることもできる。これは、電子ビームが傾いているとき、走査振幅の走査中心を挟んで上下でWAUおよびWADと異なることより求める。実際には、走査中心位置での誤差混入を防ぐために、対物レンズ励磁量をEからE−ΔEへ変えたときの振幅量の変化を読み取って、傾き量を求める。詳細は更に後述する。
【0066】
図7に本発明における軸調整方法の概念図を示す。対物レンズ物点51を発した電子ビームは、その位置ですでに軸ずれ量w0と傾きθ0を持っている。座標として、対物レンズ物点51の一面と電子光学系軸の交点を原点Oとし、電子光学系軸をz軸、それと直角方向をw軸とする。ただし、これは回転座標系となっている。例えばw=(xz,yz)で表わされるとすると、wはその初期座標(x,y)に対して回転角をrとし、図8のように表わされる。ただし、回転角rは数8で表わされる。
【0067】
【数8】
【0068】
ただし、V(z):電子光学系軸(z軸)上での電子源からの電位分布、B(z):電子光学系軸(z軸)上での電子源からの磁界分布。
【0069】
従って、rは一次加速電圧Vacを変更することで変化する。ゆえに像点位置での回転角riは、Vacに対する変化をあらかじめ実験またはシミュレーション等によって求めておき図9のようなテーブルとしておくのが良い。
【0070】
電子ビームは図7中の直線l1:w=v0×z+w0で表わされる。ここで、先に述べたように第二アライメントコイルを用いて対物レンズの電流中心点52を電子ビームの通るように調整する。その結果、電子ビームは第二アライメントコイル6の偏向動作点で折れ曲がり、図中の直線l2となる。
【0071】
図10に本発明における対物レンズへ入射する電子ビームの物点位置での入射角度を求めるグラフを示す。図4に示したように、対物レンズの電子光学系軸に対して電子ビームが傾いているとき、走査の走査中心を挟んで上下の振幅WAU およびWAD は異なる。これを、対物レンズ励磁量をEからE−ΔEへ変えたときの振幅量の変化量差として検出し、傾き量を求める。
【0072】
対物レンズ励磁量が例えばEであったとき振幅がWAU1とWAD1であったとする。次に励磁量をE−ΔEとしたとき振幅はWAU2とWAD2となったとする。すると、振幅の変化量差はΔWAU =WAU2−WAU1とΔWAD =WAD2−WAD1となる。これら振幅差ΔWAは対物レンズに対する電子ビームの入射角度α0の関数として求められる。
【0073】
ここで、α0は図7に示すように第二アライメントコイルの動作点から対物レンズ電流中心52を通る直線l2と電子光学系軸のなす角度である。ΔWAの
α0による関数は、あらかじめ軌道計算またはシミュレーションまたは実験等によって図14のように求めて置く。また、実際には図15に示すようなテーブル上の離散値として持っておき、その間は例えば直線近似のような方法で求めるのが簡便で良い。
【0074】
ここで、走査の走査中心軸を挟んで上下の振幅WAU およびWAD の異なる理由を図11を用いて説明する。ここには、前記のように走査幅中心軸の電流中心を通るように調整された後に、偏向器7によって電子線照射位置検出面41上を走査している状態を示している。このとき走査幅中心軸の対物レンズ電子光学系軸に対して角度α0だけ傾いて入射しているとすると、電子線照射位置検出面
41上では照射位置のずれとして数9を与えられる。
【0075】
【数9】
ただし、w02は前記第二アライメントコイルによる軸調整を行った後の対物レンズ物点位置でのあらたな軸ずれ量、v02:同じく軸調整後の物点位置でのあらたな軸傾き。
【0076】
また、走査幅waiは数10で表わされる。
【0077】
【数10】
wai=M×wa0
ただし
wa0=(zD−zO)×(θL−θU)
従って、収差の含まない照射位置wpiは数11で表わされる。
【0078】
【数11】
wpi=Wi0+wa0
ここで、収差の含まない照射位置wpiに対して種々の収差を生じ、それらを全て含んだ照射位置wiを電子線照射位置検出面41上で検出する。その様子を図12に示す。なお、歪曲収差を含んだ照射位置wiは数12で求まる。
【0079】
【数12】
【0080】
ただし、wpi=xpi+i×ypiと置くとき、数13となる。
【0081】
【数13】
【0082】
CD は歪曲収差係数を表わし、その値は偏向支点位置ZD に依存する。そのようすを図13に示す。通常の像観察のときには、CD の非常に小さいZD1のような位置に偏向支点を置く。
【0083】
しかし、ここでは、対物レンズへの入射角度α0を上記の歪曲収差量によって検出するので、収差係数の大きな例えばZD2のような位置に設定すると良い。
【0084】
ここで入射角度α0を求める。ΔWAU とΔWAD はすでに求めてあるので、図14のグラフを破線の矢印の方向に従い各々のときの入射角度をα0Uとα0Dと求められる。ここで走査振幅の走査中心での入射角度α0はこれらの平均として求められる。これを数14に示す。
【0085】
【数14】
α0=(α0U+α0D)/2
以上のように求められたα0と電流中心に電子ビームを合わせるために第二アライメントコイルに与えた動作補正量TTAL2 とによって、直線l1の式を求めることができる。破線l2は、電流中心を通りz軸に対して角度α0と持つ直線であるので、第二アライメントコイル動作点で、l1とl2の交点の座標は(w=(LO−LA2)×α0,z=LA2 )となる。
【0086】
また直線l1の電子光学系軸のなす角度θ0はα0と第二アライメントコイル動作補正量η2 ×TTAL2から数15によって求められる。
【0087】
【数15】
θ0=η2×TTAL2−α0
従って直線l2は点(w=(LO−LA2)×α0,z=LA2)を通る傾きθ0=η2×TTAL2−α0の直線として求められるので、その式は数16となる。
【0088】
【数16】
x=θ0×z+x0
ただし、
θ0=η2×TTAL2−α0
x0={(LO−LA2)×α0−LA2×θ0}
このようにして求められた直線liからアライメントコイルに与える動作補正量を決める。例えば、第一および第二アライメントコイルでの動作補正角度を各々T1,T2とすると、これらは数17によって求めることができる。
【0089】
【数17】
【0090】
従って、第一および第二アライメントコイルでの動作補正量TAL1とTAL2は次の数18によって求められる。
【0091】
【数18】
TAL1=T1/η1
TAL2=T2/η2
ただし、η1 :第一アライメントコイルのコイル位置での偏向角度に対する動作感度で単位[rad/LSB],η2:第二アライメントコイルのコイル位置での偏向角度に対する動作感度で単位[rad/LSB]。
【0092】
以上のようにして求めた動作補正量TAL1とTAL2を各々第一または第二アライメントコイルに設定することで、電子ビームは対物レンズの電流中心に対して軸ずれ無く、またその入射角度は対物レンズの電子光学系軸と平行に調整することが可能となる。
【0093】
また、上記の実施例では走査信号として三角関数(sinまたはcos)の半波形を与えているが、例えば、これは図16のような方形波でも同様な効果を得ることができる。
【0094】
なお、上記の実施例では、第一アライメントコイルおよび第二アライメントコイルの位置を対物レンズ物点位置と対物レンズの間に置いているが、この位置は物点位置に対して電子源側にあっても同じ効果を期待することができる。
【0095】
以上一連の軸調整を自動で行うときのステップを図23から図26に示す。
【0096】
[S001]
偏向器7によって荷電粒子線の走査偏向開始。
【0097】
[S002]
軸調整用検出器11(Xax,Yax)をあらかじめ登録された視野位置(Xps,
Yps)へステージ10で移動。
【0098】
(Xax,Yax)=(Xps,Yps)
[S003]
第二アライメントコイル補正量TTAL2 を数3に基づいて求める。
【0099】
[S004]
第二アライメントコイル補正量TTAL2 を設定。
【0100】
[S005]
ΔW≦許容値ΔWmin判断。
【0101】
[S006]
数17および数18に基づいて第一および第二アライメントコイル補正量
TAL1,TAL2を求める。
【0102】
[S007]
第一および第二アライメントコイル補正量TAL1,TAL2を設定。
【0103】
[S008]
θ0≦許容値θmin判断。
【0104】
[S009]
偏向器7による荷電粒子線の走査偏向終了。
【0105】
また2つのサブルーチンを持っており、以下に示す。
【0106】
サブルーチン1
[SS001]
対物レンズ8に励磁量Eを設定。
【0107】
[SS002]
電子線照射位置検出面41上での電子線照射位置推移を1サイクル(S1)以上収得。
【0108】
[SS003]
照射位置Wiを数1に基づいて求める。
【0109】
[SS004]
対物レンズ8に励磁量E−ΔEを設定。
【0110】
[SS005]
照射位置Wisを数1に基づいて求める(Wis1)。
【0111】
[SS006]
電子線照射位置検出面41上での電子線照射位置推移を1サイクル(S1)以上収得。
【0112】
[SS007]
照射位置Wisを数1に基づいて求める(Wis2)。
【0113】
[SS008]
偏向偏差ΔWを検出。
【0114】
ΔW=Wis2−Wis1
サブルーチン2
[SS009]
対物レンズ8に励磁量Eを設定。
【0115】
[SS010]
電子線照射位置検出面41上での電子線照射位置推移を1サイクル(S1)以上収得。
【0116】
[SS011]
走査振幅WAU,WAD検出(WAU1,WAD1)。
【0117】
[SS012]
対物レンズ8に励磁量E−ΔEを設定。
【0118】
[SS013]
走査振幅WAU,WAD検出(WAU2,WAD2)。
【0119】
[SS014]
ΔWAU=WAU2−WAU1
ΔWAD=WAD2−WAD1
を求める。
【0120】
[SS015]
図15に基づいてα0U,α0Dを求める。
【0121】
[SS016]
数14に基づいてα0を求める。
【0122】
[SS017]
数15に基づいてθ0を求める。
【0123】
[SS018]
数16に基づいてX0を求める。
【0124】
図17に本発明での非点補正の概略図を示す。スティグマコイル4(非点補正装置)による何らかの非点補正を受けた電子ビーム64を偏向器7により、電子線遮蔽パターン61(遮蔽部)、および電子線照射量検出器62(二次元検出器)の表面上に走査する。このとき、電子ビーム64は対物レンズ8によって電子線遮蔽パターン61または電子線照射量検出器62表面上に合焦している。
【0125】
電子ビームの描く走査波形は、偏向器へ与えられる走査偏向信号IDFの波形に従っている。走査信号IDFには、0を境に上下に最大振幅の絶対値の同じ鋸歯状波形を与える。
【0126】
ここで、電子線照射量検出器62上での電子ビームのスポット形状は、通過した電子光学系による影響を受けて楕円等の形状になる非点収差を含んでいる。この非点収差は電子線照射量検出器62表面上に写される電子線遮蔽パターン61のパターン像の主にシャープネスに影響を与える。
【0127】
そこで、この非点収差をスティグマコイルによって何らかの補正を行ったときの電子線照射量検出器62からの信号の走査位置移動に従って変化する割合、すなわち信号微分値を求め、その信号微分値の最大値を取るときのスティグマコイル励磁量を知ることで最適なスティグマコイル補正量を求めることが可能となる。
【0128】
すなわち、電子ビーム64は、電子線遮蔽パターン61および電子線照射量検出器62の電子線検出面上に合焦されたまま、偏向器7によりx方向に繰り返し走査を行う。このときスティグマコイル4での補正動作量を連続的またはステップ的に変化させる。変化する非点収差の影響を受けた電子線照射量検出器62の信号を増幅器63にて増幅し、信号SSとして得る。微分回路65より信号SSの微分値dSS/dtを制御器26は取り込んで、記憶装置66に対応するスティグマコイル励磁量とともに記憶する。このとき、微分値を結像面での照射位置に対する微分値dSS/dw=(dSS/dt)/wi′に変換する。ただし、
wi′は電子線照射量検出器62の電子線検出面上での電子ビームの走査速度を表し、近似的に一定値となる。
【0129】
これら非点補正関連の信号の様子を図18に示す。走査信号IDFに従い電子ビームは、電子線遮蔽パターン61および電子線照射量検出器62表面上を走査される。このとき、xスティグマコイル動作量をここではステップ状に変化させることで、電子ビームの非点収差量を電子ビーム走査位置の変化とともに変化させる。このステップ時間tsは、電子線遮蔽パターン61のパターンの1ピッチPを電子ビームの走査速度wi′で通過する時間2 1/2×P/wi′より十分に大きい値となるように設定する。像信号SSxは、電子線遮蔽パターン61のパターンに合わせて最小値と最大値の間を往復する。
【0130】
この最小値と最大値の変化するときの変化量の割合を微分信号dSSx/dtとして得る。微分信号dSSx/dtの最大となるときの、スティグマコイル動作量が最適スティグマコイル動作量ISTx(dSSx/dt=max)となるので、これを一旦記憶し、以降の観察の際にスティグマコイル動作量をこの値とする。
【0131】
ここで、微分信号dSSx/dtは、x方向に走査したときの微分信号dSSX/dtとy方向に走査したときの微分信号dSSY/dtより数19によって求める。
【0132】
【数19】
【0133】
以上の動作をxスティグマコイルについて行ったときの各信号の記憶結果をテーブルとしたものを図19に示す。同様の操作をyスティグマコイルについて行った。テーブルを図27に示す。
【0134】
これらの一連の動作によって電子ビームは迅速に最適な非点収差の補正を自動的に行った状態で、像観察を行うことが可能となる。
【0135】
また、上記の実施例では、電子線遮蔽パターン61のパターン形状は四角であったが、これは図20のような円形でも同様の効果を得ることは可能である。
【0136】
以上一連の非点調整を自動で行うときのステップを図28から図31に示す。[S010]
軸調整用検出器12(Xst,Yst)をあらかじめ登録された視野位置(Xps,
Yps)へステージ10で移動。
【0137】
(Xst,Yst)=(Xps,Yps)
[S011]
スティグマコイルX補正量ISTxを初期値に設定。
【0138】
[S012]
偏向器7によって荷電粒子線のX方向走査偏向開始。
【0139】
[S013]
スティグマコイルX補正量ISTxを一段階上げる。
【0140】
[S014]
dSSX/dtの取り込み。
【0141】
[S015]
(ISTx,dSSX/dt)の記録。
【0142】
[S016]
スティグマコイルX変化終了か否かを判断。
【0143】
[S017]
偏向器7によって荷電粒子線のX方向走査偏向終了。
【0144】
[S018]
スティグマコイルX補正量ISTxを初期値に設定。
【0145】
[S019]
偏向器7によって荷電粒子線のY方向走査偏向開始。
【0146】
[S020]
スティグマコイルX補正量ISTxを一段階上げる。
【0147】
[S021]
dSSY/dtの取り込み。
【0148】
[S022]
(ISTx,dSSY/dt)の記録。
【0149】
[S023]
スティグマコイルX変化終了か?判断。
【0150】
[S024]
偏向器7によって荷電粒子線のY方向走査偏向終了。
【0151】
[S025]
テーブルTBL_ISTx作成(図19)。
【0152】
[S026]
dSSY/dtの最大となるときのISTxをTBL_ISTxに基づいて求める(ISTx_max)。
【0153】
[S027]
スティグマコイルX補正量ISTx_maxを設定。
【0154】
[S028]
スティグマコイルY補正量ISTyを初期値に設定。
【0155】
[S029]
偏向器7によって荷電粒子線のX方向走査偏向開始。
【0156】
[S030]
スティグマコイルY補正量ISTyを一段階上げる。
【0157】
[S031]
dSSX/dtの取り込み。
【0158】
[S032]
(ISTy,dSSX/dt)の記録。
【0159】
[S033]
スティグマコイルY変化終了か否かを判断。
【0160】
[S034]
偏向器7によって荷電粒子線のX方向走査偏向終了。
【0161】
[S035]
スティグマコイルY補正量ISTyを初期値に設定。
【0162】
[S036]
偏向器7によって荷電粒子線のY方向走査偏向開始。
【0163】
[S037]
スティグマコイルY補正量ISTyを一段階上げる。
【0164】
[S038]
dSSY/dtの取り込み。
【0165】
[S039]
(ISTy,dSSY/dt)の記録。
【0166】
[S040]
スティグマコイルY変化終了。
【0167】
[S041]
偏向器7によって荷電粒子線のY方向走査偏向終了。
【0168】
[S042]
テーブルTBL_ISTy作成(図20)。
【0169】
[S043]
dSSY/dtの最大となるときのISTyをTBL_ISTyに基づいて求める(ISTy_max)。
【0170】
[S044]
スティグマコイルYの補正量ISTyをTBL−ISTyに基づいて求める。以上の実施例で用いて来た軸調整用検出器11,非点調整用検出器12について述べる。
【0171】
軸調整用検出器11の一種を図21に示す。図中の矢印進行方向から来た一次電子e- はMCP(マイクロチャンネルプレート)71に入力すると大きな増幅作用を受け、さらにMCP71と重なり位置するPSD72で検出される。そのときPSD72では、MCP71に一次電子の入力した位置に対応した位置信号を出力する。MCP71は必要とされる増幅作用の大きさに応じて複数枚を重ねるのが良い。MCP71の重ねる枚数を増やせば増幅作用はより大きくなる。
【0172】
また、これらMCPとPSDは下パッケージ74と上パッケージ75によって挟む等の方法により固定される。MCPおよびPSDの入出力および電源の供給は出入力ピン73を通して行われる。
【0173】
一方、PSD72とは、シリコンフォトダイオードをプレート状に成形し、その端に電極を設けてある。光等の荷電粒子がプレート上に入力すると、その照射位置に比例した信号を各端に設けた電極から発生させる。その構造の一種の概略図を図22に示す。破線で示されたプレート上には仮想的にポジショニング抵抗Rpと補正用周辺抵抗Rbを配置されている。
【0174】
プレート上に入力した荷電粒子はその発生信号をポジショニング抵抗上の入力位置の分割比によって、例えばX方向では電極X1とX2に出力する。
【0175】
一方、非点調整用検出器12にはMCP等を用いるのがサイズ的な問題等により有利である。
【0176】
ここでは、走査型電子顕微鏡を例にとって説明したが、本発明は走査型電子顕微鏡に限らず、荷電粒子線加工装置,電子線露光装置等の荷電粒子線露光装置,走査型イオン顕微鏡など、他のタイプの荷電粒子線装置に対しても同様に適用することができる。
【0177】
【発明の効果】
本発明によると、最適な軸調整状態および非点補正状態に迅速に自動的に合わせることが可能とる。また併せて、装置の調整時間をも含めた装置稼動率の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による走査型電子顕微鏡の概略構成図。
【図2】本発明実施例装置による軸調整の概略図。
【図3】本発明による軸調整の原理を示す図。
【図4】対物レンズ励磁量の変化と電子ビーム照射位置の変化を示す図。
【図5】走査座標系と検出器座標系の関係を示す図。
【図6】対物レンズの基本軌道gおよびhの像点位置での値とレンズ励磁量の関係を示す図。
【図7】本発明における軸調整方法の概念図。
【図8】電子光学系軸の回転座標系を示す図。
【図9】一次加速電圧と電子光学系回転座標系の回転量の関係を示す図。
【図10】対物レンズへ入射する電子ビームの物点位置での入射角度を求めるグラフ。
【図11】対物レンズへの斜め入射時の電子ビーム照射位置を求める図。
【図12】収差を含む電子ビーム照射位置を求める図。
【図13】偏向支点位置と歪曲収差係数の関係を示す図。
【図14】信号振幅差ΔWAと対物レンズへ電子ビーム入射角度α0の関係を示すグラフ。
【図15】信号振幅差ΔWAと対物レンズへ電子ビーム入射角度α0の関係を示すテーブル。
【図16】本発明での走査信号の一種。
【図17】本発明による非点補正装置の概略図。
【図18】非点補正に関連する信号の変化を示す図。
【図19】スティグマコイル動作量と微分信号の関係を示すテーブル。
【図20】本発明での電子線遮蔽物パターンの一種。
【図21】本発明での軸調整用検出器の一種。
【図22】本発明での位置検出器の一種。
【図23】本発明での自動軸調整のシーケンスの一例を示す図。
【図24】本発明での自動軸調整のシーケンスの一例を示す図。
【図25】本発明での自動軸調整のシーケンスの一例を示す図。
【図26】本発明での自動軸調整のシーケンスの一例を示す図。
【図27】Yスティグマコイル動作量と微分信号の関係を示すテーブル。
【図28】本発明での自動非点調整のシーケンスの一例を示す図。
【図29】本発明での自動非点調整のシーケンスの一例を示す図。
【図30】本発明での自動非点調整のシーケンスの一例を示す図。
【図31】本発明での自動非点調整のシーケンスの一例を示す図。
【符号の説明】
1…電子源、2…アノード、3…収束レンズ、4…スティグマコイル、5…第一アライメントコイル、6…第二アライメントコイル、7…偏向器、8…対物レンズ、9…試料(ウェーハ)、10…試料ステージ、11…軸調整用検出器、
12…非点調整用検出器、13…ステージコントローラ、14…軸ずれ合せ目標値設定器、15…軸角度ずれ目標値設定器、16…視野位置X設定器、17…視野位置Y設定器、21…二次電子検出器、22…増幅器、23…観察用表示器、24…偏向器駆動回路、25…偏向信号発生器、26…制御器、27…一次加速電源、28…収束レンズ電源、29…スティグマコイル電源、30…第一アライメントコイル電源、31…第二アライメントコイル電源、32…対物レンズ電源、33…軸調整用検出器コントローラ、34…非点調整用検出器コントローラ、41…電子線照射位置検出面、42…電極、43…X軸差動器、44…Y軸差動器、51…対物レンズ物点、52…対物レンズ電流中心、61…電子線遮蔽パターン、62…電子線照射量検出器、63…増幅器、64…電子ビーム、65…微分回路、66…記憶装置、71…MCP、72…PSD、73…出入力ピン、
74…下パッケージ、75…上パッケージ。
Claims (13)
- 荷電粒子源と、当該荷電粒子源から放出された荷電粒子線を収束する電子レンズと、前記荷電粒子線を偏向する偏向器と、前記荷電粒子線の照射個所に配置されると共に、前記偏向器によって変化する前記荷電粒子線の照射位置を検出する二次元検出器と、当該二次元検出器で得られる前記荷電粒子線の照射位置、及び前記偏向器によって前記二次元検出器上で前記荷電粒子線を走査したときに得られる前記荷電粒子線の偏向軌道の変化に基づいて、前記荷電粒子線と前記電子レンズの光軸との差異を検出する検出手段を備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。
- 請求項1において、
前記検出手段は、前記偏向器の非動作状態の前記荷電粒子線の照射位置情報、及び前記偏向器による前記荷電粒子線の偏向の対称性に基づいて、前記荷電粒子線と前記電子レンズ光軸との差異を検出することを特徴とする荷電粒子線装置。 - 請求項1において、
前記検出手段は、前記偏向器の非動作状態における前記荷電粒子線照射位置と、前記偏向器によって前記荷電粒子線を一次元走査した場合の前記荷電粒子線の走査方向への位置ずれに基づいて、前記荷電粒子線と前記電子レンズの光軸との差異を検出することを特徴とする荷電粒子線装置。 - 請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記電子レンズは、少なくとも2以上の収束条件を有し、前記検出手段は前記電子レンズにおいて異なる収束条件を設定したときの前記偏向器による前記荷電粒子線の偏向軌道の変化に基づいて前記荷電粒子線と前記電子レンズの光軸の差異を検出することを特徴とする荷電粒子線装置。 - 請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記偏向器による荷電粒子線の偏向は少なくとも2方向について行われ、前記検出手段は、前記2方向に対する偏向に対してそれぞれ前記荷電粒子線と前記電子レンズの光軸との差異を検出することを特徴とする荷電粒子線装置。 - 請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記検出手段によって検出される前記荷電粒子線と前記電子レンズの光軸との差異を補正するためのアライメント手段を備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。 - 請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記検出手段によって検出される前記荷電粒子線と前記電子レンズの光軸との差異を補正するための前記アライメント手段を2段以上の偏向器によって構成することを特徴とする荷電粒子線装置。 - 請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記検出手段によって検出される前記荷電粒子線と前記電子レンズの光軸との差異を前記アライメント手段によって自動的に補正することを特徴とする荷電粒子線装置。 - 請求項1乃至8のいずれかにおいて、
前記二次元検出器は、前記偏向器による走査に対し、間欠的に前記荷電粒子線を遮蔽する遮蔽部を有し、当該遮蔽部を通過した前記荷電粒子線の照射量を検出するように構成され、前記偏向器の走査に連動して前記荷電粒子線に対する非点補正量を変更する機能を有する非点補正装置を備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。 - 請求項9において、前記遮蔽部は前記走査偏向器の少なくとも2方向への走査に対し、前記荷電粒子線を間欠的に遮断するように形成されていることを特徴とする荷電粒子線装置。
- 請求項9において、前記非点補正装置は、前記二次元検出器に間欠的に導入される荷電粒子線量をそれぞれ微分して、当該微分値が最大となったときの前記非点補正量を非点補正値として採用することを特徴とする荷電粒子線装置。
- 請求項9乃至11のいずれかにおいて、前記走査偏向器による走査は少なくとも2方向について行われることを特徴とする荷電粒子線装置。
- 請求項9乃至12のいずれかにおいて、前記非点補正装置による非点補正動作を自動的に行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
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