JP3653581B2 - 変圧器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄心とその周囲に互いに同心上に配置された低圧巻線,高圧巻線とをタンクに内に配置した変圧器に係り、特に鉄製のタンクを用いるのに好適な変圧器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、送電系統の大容量化にニーズに対応して、送電系統全体の見直しが求められている。特に、大都市においては電力需要が年々増加していることから、その電力需要に対しては、大都市内部の各所に変電所を設け、各変電所により分散供給する方向へと系統の変更が開始されつつある。
【0003】
このように大都市内部に変電所を新たに設ける場合、土地利用効率の観点から、これまで山間地に設置してきた変電所のような広大な敷地を与えることができたが、例えばビル,公園等の地下の狭い場所に設置することが求められる。従って、今後需要の急増する都市型変電所は、地下変電所となり、そのため、装置的には次に述べるような要求が課せられる。
【0004】
まず、第一点目は小型化である。その理由は、地下変電所としてはすでに過密化した都市の一区画に収まるよう、また設置手順を考慮した大きさでなくてはならない。
【0005】
第二点目は不燃化である。その理由は、絶縁破壊などによる変圧器の出火の可能性は、従来に比べ、人口密集地では重大な事故を招く。
【0006】
しかし、これら二つの要件は変圧器の設計に伴って相反するものとなる。即ち、まず、装置小型化の要求は必然的に構造物の近接をもたらす。その結果、これまで互いに離れて設置していた巻線と、鉄心の締め金具及びタンク等の導電性磁性体構造物とが近接するようになると、巻線間隙から漏洩する磁束によって渦電流が発生しやすくなる。これにより、構造物の発熱が増大する。
【0007】
一方、不燃化の要求では、これまで油による絶縁・冷却から、不燃性ガスによる絶縁・冷却に切り替えることが要求されるが、不燃性ガスにすると、熱容量の違いから冷却能力が低下する。
【0008】
このように、二つの要件は、発熱の増大と冷却能力の低下とを同時にもたらすと云う不都合を抱える。従って、地下変電所用の変圧器にあっては、そのような不都合を解決すべき新しい概念が要請される。
【0009】
一般に、電力用変圧器の多くは、巻線の内部に鉄心を設けた内鉄型で、巻線として、低圧巻線,高圧巻線が一つの鉄心の周囲に同心上に配置されたものを採用している。
【0010】
また、地上に設置される油絶縁・冷却タイプの変圧器にあっては、三相の同心巻線が三相三脚もしは三相五脚の鉄心に設置され、これを一つの長型タンクに収めるものが主流である。その際、三相をひとつのタンクに収める場合、各相が発生する渦電流は夫々120度ずつ位相が異なるために全体としては相殺することができ、そのため、各巻線に近接する局部を除いて大域的な電流経路は発生しない。
【0011】
しかし、地下に設置しようとするガス絶縁・冷却タイプの変圧器にあっては、10気圧程度の高圧ガスを封入するため、単相ごとに円筒形の高圧タンクに収める必要がある。但し、この場合、単相を一つのタンクに収めると、発生する渦電流を相殺する成分がないので、巻線に近接する局部だけでなく、タンクにその周囲に亘るという大域的な経路の渦電流が発生することとなる。また、超大容量タンクの変圧器の場合にも、複数の巻線を単相で駆動し、これを一つのタンクに収めるため、同様の問題が起こる。
【0012】
ガス絶縁・冷却タイプの変圧器及び超大容量タイプの変圧器は最近の開発のものであり、渦電流に対しては今日のところ充分な知見が得られず、また大域的な経路の渦電流の発生も認識されていなかった。本発明者等はコンピュータシミュレーションにより変圧器及びタンク系について三次元的に渦電流を解析したところ、大域的な経路にわたり渦電流が発生してしまうと云う知見を得た。
【0013】
従来、第一の従来技術としては、特開平1−89409号公報に示されるように、磁束が侵入する部位に銅板などの低抵抗部材を設けて該部材上に渦電流を発生させ、鉄製の高抵抗部材に磁束が侵入するのを抑制することにより、渦電流による損失を低減するものがある。また、第二の従来技術としては、特開昭63−117412号公報,同62−73703号公報,同62−37919号公報に示されるように、磁束が侵入する部位に渦電流が発生しにくい積層鋼板を設けて、磁束がタンクに侵入しないようにしたものがある。
【0014】
また、第三の従来技術としては、特開平2−18912号公報に示されるように、タンク自身をアルミ等の良導体で形成し、渦電流が発生しても損失を少なくするものがある。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記に示す従来技術ものを地下変電所の変圧器に利用した場合、以下に述べる問題がある。
即ち、第一,第二の従来技術では、磁束が直接侵入する部位の渦電流を局所的に抑制するのには効果があるものの、上述の如き、大域的な経路にわたり発生する渦電流に対しては効果を期待することができない。
【0016】
また、第三の従来技術では、タンクをアルミで製作しているので、タンクそのものが鉄製に比較して柔らかくなり、そのため、内蔵する巻線及び鉄心の重量のみならずタンク自身の自重等により、タンクが運搬時に変形してしまう問題がある。この問題を解消しようとして強度を上げるため、タンク肉厚を増加させることが容易に考えられるが、そのようにした場合、鉄より高価なアルミを大量に使用することになるので、コスト増を招く問題がある。
【0017】
さらに、タンクをアルミのような非磁性体で形成すると、巻線間から発生した漏洩磁束がタンク外部にまで漏れてしまい、別の磁性体構造物に新たな渦電流損失を発生させる。そのため、地下変電所のように複数のタンクが近接配置されるようなところには適さない問題がある。
【0018】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、単相ごとにタンクに収めるガス絶縁・冷却タイプのものであっても、また大容量タイプのものであっても、タンクの周囲に亘る大域的な経路にわたり発生する渦電流を確実に低減することができる変圧器を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明では、鉄心と、該鉄心の周囲に互いに同心上に配置された低圧巻線,高圧巻線とを鉄製のタンクに収容した変圧器において、タンクの周壁と前記両巻線の外周との間に、鉄製のタンクより低抵抗導体で形成され、かつ前記両巻線間の巻線間隙からの漏洩磁束と反対方向の磁界を発生させるシールド電流を、周囲に亘って発生し得るシールド手段を設置したことに特徴を有するものである。
【0020】
本発明では、低圧巻線と高圧巻線間の巻線間隙から漏洩磁束が発生すると、シールド手段が鉄製のタンクより低抵抗導体からなる非磁性材で形成されていることから、その漏洩磁束によってシールド手段に起電力が作用し、そのため、シールド手段にその周りに沿うように渦電流が発生する。
【0021】
この場合、シールド手段のシールド電流は、低圧巻線及び高圧巻線間の巻線間隙から発生する漏洩磁束と反対方向に磁界を発生させるので、タンクの周壁の内側に渦電流が発生するのを確実に抑制させることができる。即ち、シールド手段自体に渦電流を発生させ、タンクにその周囲に亘るという大域的な渦電流の発生を極力低減する。
【0022】
その結果、第一,第二の従来技術に比較し、シールド手段により、タンクの周囲のように大域的な経路にわたり発生する渦電流に対して極めて有効となり、タンクの発熱を可及的に抑えることができ、従って、低圧巻線,高圧巻線の巻線と鉄製のタンクとを近接させることができるので、変圧器の小型化を実現できる。しかも、タンクが鉄製の磁性材であるので、アルミ製のタンクを用いる第三の従来技術に比較し、タンクが鉄製の安価なものであるばかりでなく、タンクの強度を維持でき、また運搬時にタンクが変形するのも防止することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図1乃至図23により説明する。図1及び図2は本発明による変圧器の第一の実施例を示している。
図1に示す実施例の変圧器は、鉄心1の周囲に低圧巻線2と高圧巻線3とが同心上に配置されて内鉄型を形成し、これら鉄心1,低圧巻線2,高圧巻線3により変圧器本体が構成されている。
【0024】
鉄心1は鋼板を所望枚数積層しており、詳細に図示していないものの、通常では縦方向に三つの脚を有する三脚形状をなしている。そして、低圧巻線2,高圧巻線3は、鉄心1の三脚のうち、中央部の脚に対し同心上に配置されて1相三脚構造をなしている。またタンク4は鉄等の磁性材で形成されており、前記変圧器本体を収容した内部に10気圧程度の高圧ガスが封入されてガス絶縁・冷却構造をなしている。
【0025】
このような構成の変圧器は、電圧を印加した場合、図2に示すように、低圧巻線2と高圧巻線3間の巻線間隙5から磁束6が漏洩し、その漏洩した磁束(漏洩磁束)6の一部が、磁性材であるタンク4の周壁41に吸引され、その周壁41内を貫通して再び低圧巻線2と高圧巻線3間の巻線間隙5に戻る閉ループを形成する。このとき、タンク4の周壁41において、その周壁41の内部領域では、等量の磁束が矢印の如く往復するだけであり、周壁41が囲む正味の鎖交磁束は存在しない。
しかし、タンク4の周壁41において、その周壁41の内側では巻線間隙5を通過する磁束6が正味の鎖交磁束として存在するため、これを打ち消す方向に矢印の如く渦電流7′が発生し、この渦電流7′はタンク周壁41の周囲に亘る大域的な渦電流となることから、渦電流損をもたらすことになる。
【0026】
そこで、実施例では、図1に示すように、タンク4内において、タンク4と高圧巻線3との間にシールド手段8が配置されている。該シールド手段8は、本例ではタンク4の周壁41と高圧巻線3の外周との間に配置され、しかもそれら41,3に対応して筒状に形成されている。またシールド手段8の材質としては、銅,アルミ等の低抵抗導体からなり、本例では安価な銅板を用いている。
【0027】
このシールド手段8は、図3に示すように、タンク4の周壁41に固定された取付け治具9に取付けられている。具体的に述べると、取付け治具9は、タンク4の周壁41と接する座91と、その座91の内側に突設され、かつ溝93を形成した保持部92とを有し、ステンレスなどのような非磁性材で構成されている。そして、タンク周壁41に対し取付け治具9の座91をボルト10により固定し、取付け治具9の保持部92に絶縁スペーサ11を介しシールド手段8を保持することにより、該シールド手段8をタンク周壁41と高圧巻線3の外周との間に設置している。この場合、絶縁スペーサ11としては電気的絶縁機能を果たすため、セラミック或いは絶縁性のゴム等で構成される。ボルト10は通常の鉄製のものでもよいが、取付け治具9と同材質のものでもよい。
【0028】
上記の如く、タンク4内にシールド手段8を設置した変圧器を用いた場合、低圧巻線2と高圧巻線3間の巻線間隙5から漏洩磁束6が発生すると、シールド手段8が鉄製のタンク4より低抵抗導体からなる非磁性材で形成されていることから、その漏洩磁束6によってシールド手段8に起電力が作用し、そのため、図1に示す如くシールド手段8にその内周に沿うようにシールド電流7が発生する。
【0029】
この場合、シールド手段8のシールド電流7は、低圧巻線2及び高圧巻線3間の巻線間隙5から発生する漏洩磁束6と反対方向に磁界を発生させるので、タンク4の周壁41の内側に図2に示す如く渦電流7′が発生するのを確実に抑制させることができる。即ち、シールド手段8自体にシールド電流7を発生させ、タンク4にその周囲に亘るという大域的な渦電流7′の発生を極力低減する。
【0030】
その結果、第一,第二の従来技術に比較し、シールド手段8により、タンク4の周囲のように大域的な経路にわたり発生する渦電流に対し極めて有効となり、タンク4の発熱を可及的に抑えることができ、従って、低圧巻線2,高圧巻線3の巻線と鉄製のタンクとを近接させることができるので、変圧器の小型化を実現できる。しかも、発熱が少なく、かつ小型化できるので、不燃ガスでも充分使用に耐えることができ、不燃化を実現し得る。
【0031】
また、タンク4が鉄製の磁性材であるので、アルミ製のタンクを用いる第三の従来技術に比較し、タンク4が鉄製の安価なものであるばかりでなく、タンクの強度を維持でき、また運搬時にタンクが変形するのも防止することができる。
【0032】
さらにシールド手段8として、銅板により筒状に形成しているので、シールド手段8を簡単かつ容易に製作することができる。このシールド手段8の大きさ(高さ)としては、タンク4の内壁の高さに沿うものでなく、漏洩磁束6によって形成される閉ループの範囲内に入り込める程度の高さであればよい。
【0033】
なお、シールド手段8として銅を用いた場合、タンク4の材料である鉄に比較し、1/50程度の電気抵抗であるため、渦電流は50対1の割合でほとんどシールド手段8を流れることになり、そのため、鉄製のタンク4に流れようとする渦電流を抑制することができる。このようなシールド手段8を用いた場合のシールド電流の強さは、導体の抵抗率よりもむしろインダクタンスに支配され、ほぼ鎖交磁束を相殺する分だけ流れることとなる。図2に示す従来技術の如く、シールド手段を設けず、タンク4が鉄製となる場合、そのタンク4に流れる渦電流は、シールド手段を設けた場合に比較し、シールド手段に流れるシールド電流の1/3程度と考えられる。渦電流損は抵抗率の一乗,渦電流の二乗に比例する。タンクよりもシールド手段に渦電流を流す方が、渦電流損をほぼ1/10程度に小さくできることになる。
【0034】
また、シールド手段8をタンク周壁41と高圧巻線3との間に設置するとき、上述の如く、タンク周壁41に固定された非磁性材の取付け治具9にシールド手段8を保持するので、シールド手段8を的確に機能させることができる。なお、取付け治具9は、本例ではタンク周壁41の全周に亘り接するように固定される例を示したが、その周壁41に対し複数箇所で固定される形状に形成してもよいのは勿論である。
【0035】
図4乃至図6は本発明による変圧器の種々の実施例を示している。
図4に示す実施例は、タンク4の周壁41と高圧巻線3の外周との間に設けたシールド手段8として、適宜の高さを有する筒状の銅板81を複数(図示では三個)用意し、それら筒状の銅板81を高さ方向に沿って配設したものである。これら複数の筒状の銅板81の設置に際しては、基本的に図1に示す第一の実施例と同様の構造であるので、ここではその説明を省略する。
【0036】
図5及び図6に示す実施例は、シールド手段8として、銅線を環状に巻線することによって形成された環状のシールドコイル82を複数本用意し、これら複数本のシールドコイル82を、タンク4内の高さ方向に沿って適宜の間隔を隔てて配設したものである。
【0037】
また、環状のシールドコイル82は、タンク周壁41に固定された取付け治具9に設置されている。この取付け治具9は、図6に示すように、タンク周壁41と接する座91と、碍子12を保持し得る溝を設けた保持部92とを有し、座91をボルト10により固定すると共に、保持部92に保持した碍子12に対し、前記環状のシールドコイル82を締め具13によって取付けている。従って、シールドコイル82の設置も図1に示す実施例と基本的には同様である。
【0038】
これら図4乃至図6に示す実施例によれば、筒状の銅板81,シールドコイル82を高さ方向に沿って複数配設したので、高圧巻線3の全体を一枚の銅板で覆うようにした第一の実施例に比較し、材料の使用量を低減することができるので、より低コストで済み、また複数にすることにより、設置時の作業性が良好となる効果もある。特に、図4に示す実施例によれば、筒状に形成された一枚のシールド手段8を用いる第一の実施例に比較し、小型に形成された複数の銅板81を用いるので、製作が容易となる。
【0039】
図7は本発明による変圧器の第四の実施例を示している。
図7に示す実施例は、6個の巻線を1相で駆動する超大容量変圧器に適用したものであり、低圧巻線2と高圧巻線3とからなる三個の巻線を有する鉄心1を一つのタンク4に収容している。そのため、3個の巻線を有する鉄心1の上・下部が鉄心締め金具100により固定されている。
【0040】
この超大容量変圧器においては、3個の巻線を一つのタンクに収容する超大容量のものであることから、タンクの大きさが鉄道輸送等の関係により寸法上の上限が規定され、またタンクと低圧巻線2,高圧巻線3からなる巻線とが近接することから、タンクに流れる渦電流が大きい。また、一つのタンク内の各巻線は1相で駆動するため、ガス冷却・絶縁変圧器と同様の問題が発生する。3個の巻線においては低圧巻線2,高圧巻線3間の巻線間隙5から磁束が漏洩し、その漏洩磁束の位置が図1の実施例にて述べたようにタンク4の内壁41を通って再び巻線間隙5に戻る。この場合、3個の巻線間隙から漏洩する磁束は同相であるため、発生する渦電流は相殺することなく、互いに強め合ってタンク内壁上を巻線方向に一周する大域的な流れとなる。
【0041】
そこで、実施例では図1の実施例の場合と同様、タンク4内においてタンク1と高圧巻線3との間にシールド手段8を設け、該シールド手段8により、巻線間隙5間に発生する漏洩磁束と反対方向の磁束を発生させるシールド電流を流すことにより、渦電流損を抑えたものであり、基本的には図1の実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【0042】
またこの実施例の場合、シールド手段8として一枚の銅板で構成しているが、図4乃至図6に示す実施例の場合と同様、複数の銅板81,複数のシールドコイル82と同様に構成しても良いのは勿論である。
【0043】
図8乃至図21は長距離大容量送電用の変圧器に適用した種々の実施例を示している。
前述までの実施例では、地下変電所に設けるのに好適な変圧器について述べた。ところで、今日、発電所の建設においては遠隔地化する一方であり、長距離の大容量化送電が余儀なくされている。このような長距離大容量送電のために1000kVという超高圧を用いたUHV送電が計画され、現在このための機器が開発されている。このUHV用変圧器では大容量化に対応するため、図7に示した如くu,v,wの各相を単相あたり6対の巻線で駆動し、3対ずつタンクに収納する形式が採用されている。また、UHV送電と共に、500kVという高圧送電で我が国の主要幹線を担う系統変更が計画され、現在、このための機器も開発中である。500kV用変圧器においても大容量化に対応するため、図10に示す如くu,v,wの各相を2対の巻線で駆動し、単相毎にタンクに収納する形式が採用されている。
【0044】
ところが、上記UHV用変圧器のように2対または3対の巻線がタンク内にある場合、互いに隣り合う巻線対は励磁方向が逆であるため、それら巻線対が隣接する部分では、巻線対に図12に太線71にて示す如く巻線間に相間渡り磁束が水平方向に発生する。この相間渡り磁束71によって発生する起電力はこれと直角になるため、渦電流は上下に方向を変えて流れるのである。そして、タンク4の上部または下部に回った渦電流は、さらに反対側の側面で再び巻線方向に周回し、出発点に戻って大域的な一周経路を形成することとなる。
【0045】
以下、低圧巻線2及び高圧巻線3からなる巻線を以降の説明では、巻線対と呼び、ここでは2対の巻線対23a,23bを用い、単相2巻線の変圧器の一般的な例を図11及び図12を用いて詳細に説明する。
まず、図10及び図11に示す一般的な単相2巻線の変圧器は、通常では図示の如きサイドヨーク1aを有する4脚鉄心1、或いは図示しないが2脚を有する鉄心の各脚に同心上に配置されている。また、これら鉄心1と巻線対23a,23bと鉄心締め金具100と図示しない絶縁・冷却油とが方形のタンク4に収容されている。
【0046】
そして、各巻線対23a,23bの巻線間隙5からの漏れ磁束6の一部は、図11に示すように、磁性体であるタンク4の周壁41に吸引され、該周壁内を貫通して再び巻線間隙5に戻り、このとき、タンク4の周壁41において、外壁面41aによって囲まれる内部領域では、等量の磁束が往復するのみで、外壁面41aが囲む正味の鎖交磁束は存在しないものの、内壁面41bによって囲まれる内部領域では巻線間隙5を通過する磁束が正味の鎖交磁束として存在するため、これを打ち消す方向に渦電流70が発生し、この渦電流70が図12に示す如く、各巻線対23a,23bの隣接部分から離れた部位でタンク4の側面を水平方向に流れる渦電流となる。この点は図2にて前述した場合と同様である。
【0047】
しかしこの場合、各巻線対23a,23bが隣接する部分では、各巻線対の極性が互いに反転しているため、各巻線対同士を結ぶような相間渡り磁束71が図12に示すように発生し、しかも該相間渡り磁束71が水平方向に発生するため、これによって誘導される大域的循環渦電流70が各巻線対23a,23bの隣接部分では、垂直方向となってしまう。このため、単相2対の変圧器では、渦電流70が各巻線対23a,23bの周囲においては水平方向となり、また各巻線対1a,1b間の隣接部分においては垂直方向となる結果、図示に細い実線にて示したとおりの大域的循環渦電流70となってしまう。従って、この大域的循環渦電流70は、図12に示す如く、タンク4において各巻線対23a,23bの周囲では水平方向に発生するが、両巻線対の隣接する部分では水平方向から垂直方向にへ向きを変え、タンク4の天井部及び底部を通って反対側の面に周り、再び水平方向に向きが戻る経路となる。
【0048】
実施例では、前記大域的循環渦電流70を抑制するため、図8に示すように、各巻線対23a,23bとタンク4の周壁41との間に、一周シールド手段15が配置されたものである。即ち、この一周シールド手段15は図8に示すように、タンク周壁41と各巻線対23a,23b及び鉄心1のサイドヨーク1aとの間において、これら巻線対23a,23bの隣接する部分を除き、両巻線対及びサイドヨーク1aの周囲を水平方向に沿って覆うように配置された水平シールド部15aと、各巻線対23a,23bの隣接する部分の周囲,及びそれに対応する鉄心1の上下部分,並びに鉄心締め金具100を覆う隣接部分縦シールド部15bとを有して形成されている。この場合、隣接部分縦シールド部15bは、図8において、巻線対23a,23bの隣接部分の正面側及び背面側を上下方向に沿って覆うと共に、鉄心1及び鉄心締め金具100の上下部を覆うように水平方向に沿って覆う形状をなしている。
【0049】
なお、この一周シールド手段15としては、前述した実施例と同様に銅,アルミ等の低抵抗導体からなり、本例では安価な銅線からなる環状のシールドコイル或いは銅板によって形成したのを複数用いている。
【0050】
上記の如く構成した変圧器においては、図9に示すように、巻線対23a,23bの夫々の巻線間隙5から漏れ磁束6a,6bが発生すると共に、各巻線対23a,23b間で相間渡り磁束71が発生するので、大域的循環渦電流70が発生しようとする。しかし、この場合、タンク周壁41と、各巻線対23a・23b,鉄心1,鉄心締め金具100との間に一周シールド手段15が配置され、漏れ磁束6a,6bに対し一周シールド手段15の水平シールド部15aが鎖交すると共に、相間渡り磁束71に対し一周シールド手段15の隣接部分縦シールド部15bが鎖交しているので、水平シールド部15a上に太線矢印に示す如き互いに逆向きとなるシールド電流16a,16bが発生する。即ち、シールド電流16a,16bは、漏れ磁束6a,6b及び相間渡り磁束71の向きに応じ一周シールド手段15の水平シールド部15aに互いに逆方向となり、漏れ磁束6a,6bを打ち消す方向の磁界を発生する結果、タンク4において2対の巻線対23a,23bによって大域的循環渦電流70が発生するのを極力低減することができ、従って、図7に示す実施例に比較し、いっそう的確な漏れ抑制効果を果たすことができる。換言すれば、本来タンク4に発生すべき渦電流を、抵抗の小さい一周シールド手段15が肩代わりすることとなる。
【0051】
また、前記一周シールド手段15は、図12に示す大域的循環渦電流70を低減するのみならず、漏れ磁束6a,6bがタンク4に侵入する部位で発生する、局所的循環渦電流72をも低減することができる。その理由は、一周シールド手段15は局所的循環渦電流72の発生要因である、漏れ磁束6a,6b自体を低減するからである。なお、この局所的循環渦電流72は、図11において、漏れ磁束6がタンク周壁41に入り込むことによって局所的に水平方向に発生する渦電流である。
【0052】
さらに、一周シールド手段15は、鉄心締め金具100に発生する渦電流をも低減することができる。即ち、図11に示すように、巻線間隙5から発生した漏れ磁束6の一部6′は鉄心締め金具100に吸引された後、タンク周壁41の上部に入り、かつその周壁41を通って鉄心締め金具100を経た後、巻線間隙5に戻る経路をとることとなる。この経路の磁束6′は、巻線対23a,23bの高圧巻線3が発生する漏れ磁束であり、低圧巻線2とは鎖交しない。この場合、一周シールド手段15は前記漏れ磁束6′と鎖交し、大域的循環渦電流70の場合と同様に低減することができ、従って、鉄心締め金具100に発生する渦電流をも低減できる。
【0053】
なお、タンク4の周壁41には、上記漏れ磁束6′の他、図示していないが、巻線間隙5から鉄心締め金具100経て鉄心1内を通って戻る経路の磁束があるが、これは低圧巻線2が発生する漏れ磁束であり、高圧巻線3とは鎖交しないので、問題となることはない。
【0054】
また実施例では、図8及び図9に示す一周シールド手段15として、適宜の高さをもつ低抵抗導体を巻線対23a,23bの高さ方向に沿って複数設けた例を示したが、図13に示す如く形状に形成してもよい。即ち、図13に示す一周シールド手段15は、水平シールド部15aと隣接部分縦シールド部15bとが平板状の低抵抗導体により形成されている。この場合、一枚もので一体的に形成してもよいが、例えば図14に示す如く、水平シールド部15aと隣接部分縦シールド部15bとを夫々別個に形成し、それらの交点を溶接によって固定してもよい。
【0055】
また、図15に示すように構成してもよい。即ち、一周シールド手段15のうち、水平シールド部が上下二つに分割されると共に、水平方向にも二つに分割して計四個に形成され、その各四個の水平シールド部15a′に、各巻線対23a,23bの隣接する部分と対応する隣接部分縦シールド部15b′が夫々設けられ、これらがタンク4内に配置されることにより、結果的に一周シールド手段15を形成している。このような分割構造の一周シールド手段15を形成すれば、特に各巻線対23a,23bの配線を引出す場合、上下左右夫々の水平シールド部15a′の間(或いは左右の隣接部分縦シールド部15b′の間)から引き出せるので、配線処理が容易となる。
【0056】
なお、図8に示す実施例をモデル化し、コンピュータによる三次元動磁界解析により検討したところ、一周シールド手段15の設置により、タンク4上の最大密度で約86%、最大渦電流密度で約95%の低減効果と云う試算結果が得られた。このことは、渦電流抑制効果が著しいものであることを証明している。
【0057】
図16に本発明の第6の実施例を述べる。この場合、三個の巻線対23a,23b,23cを有する変圧器に適用している。
【0058】
まず、単相3巻線を有する変圧器について述べると、図17に示すように、巻線対23a〜23c,鉄心1,鉄心締め金具100を有し、これらが図示しない絶縁・冷却用の油に封入されている。巻線対23a〜23cは通常、図示の如きサイドヨーク1aを有する5脚鉄心1或いは図示しない3脚を有する鉄心の各脚に巻かれており、タンク4に収容されている。この変圧器の特徴は、各巻線対23a〜23cのうち、両側の巻線対23a,23cの励磁方向が互いに同じである一方、中央側の巻線対23bが他の両側の巻線対23a,23cとは励磁方向が反転していることにある。
【0059】
そのため、図18に示すように、一方の巻線対23aと中央側の巻線対23b間では単相2巻線変圧器の場合と同様に相間渡り磁束71が発生が発生することにより、タンク4の周壁41では両巻線対23a,23bに対応し、前述した大域的循環渦電流70が流れる。これに加え、中央側の巻線対23bと他方の巻線対23c間でも相間渡り磁束71a,71b(図16参照)が発生することにより、これらの巻線対23b,23cに対応し、大域的循環渦電流70も流れる。この場合の大域的循環渦電流70は、巻線対23a,23b間の場合と非対称となる。さらに、タンク4周壁において中央側の巻線対23bと両側の巻線対23a,23cとの隣接部分では、一方の巻線対23aと中央側の巻線対23bとの隣接部分間の場合と同様、鉄心1及び鉄心締め金具100の上部,下部から垂直方向に向き、また中央側巻線対23bの正面側でほぼ水平な向きに変わって、再び中央側巻線対23bと巻線対23cとの隣接する部分で再び垂直方向に向きが変わる大域的循環渦電流70′も発生することとなる。
【0060】
そこで、本実施例においては、前記大域的循環渦電流70,70′を抑制するための一周シールド手段15を有している。即ち、該一周シールド手段15は図16に示すように、タンク4内と各巻線対23a〜23c及び鉄心1のサイドヨーク1aとの間において、各巻線対23a〜23c及び鉄心サイドヨーク1aを覆う水平シールド部15aと、一端側の巻線対23a,中央側の巻線対23b間の隣接する部分と中央側の巻線対23,他端側の巻線対23c間の隣接する部分とを夫々覆う隣接部分縦シールド部15b,15cとを有している。
【0061】
そして、各巻線対23a〜23cの巻線間隙5から漏れ磁束6a〜6cが発生すると共に、互いに隣り合う巻線対23a,23b間と23b,23c間とに相間渡り磁束71a,71bが発生したとき、これら漏れ磁束6a〜6c及び相間渡り磁束71a,71bに対し、一周シールド手段15の水平シールド部15a及び隣接部分縦シールド部15b,15cが交差しているので、一周シールド手段15に矢印方向の向きとなるシールド電流16a〜16cが発生する。その結果、単相3巻線変圧器においても、単相2巻線変圧器の場合と同様、大域的循環渦電流70,70′のみならず局所的循環渦電流72をも抑制することができる。
【0062】
図19及び図20は本発明による変圧器の第七の実施例を示している。
この場合は、単相3巻線の変圧器に一周シールド手段15を用いたものに適用している。即ち、本実施例の一周シールド手段15は図19に示すように、タンク周壁と、各巻線対23a〜23c,鉄心1のサイドヨーク1aとの間に、これらを水平方向に沿って覆うよう水平シールド部15aと、両側の巻線対23a,23cからの漏洩磁束によって発生するシールド電流16a,16cの向きに対し、中央側の巻線対23bからの漏洩磁束によって発生するシールド電流の向きを同じにする閉ループ部18とを有している。
【0063】
該閉ループ部18は、水平シールド部15aの途中位置において、中央側の巻線対23bと対応する部分を積層鋼板17に巻き付けることにより形成されている。この場合、図20にて示すように、水平シールド部15aの途中位置が積層鋼板17の下部に対し、外側から内側に周り込んで巻き付くと共に、その積層鋼板17の内側において下部から斜め上方を経て、さらに積層鋼板の上部表面側に巻き付き、結果的に積層鋼板17の表面側で二重のループ部18a,18bとなるように形成されている。なお、積層鋼板17は、巻線対23bの高さとほぼ同じ高さをなしており、厚み方向に複数の鋼板を積層して形成されている。
【0064】
この変圧器において、各巻線対23a〜23cから漏れ磁束6a〜6cが発生するが、両側の巻線対23a,23cからの漏れ磁束6a,6cに対し一周シールド手段15の水平シールド部15aが鎖交しているので、矢印の如くシールド電流16a,16cが流れる。この場合、一周シールド手段15の途中位置(中央部分)には閉ループ部18が設けられているので、中央側の巻線対23bからの漏れ磁束6bに対しては、それと対向する積層鋼板17に水平シールド部15bが巻き付けられることによって形成され閉ループ部18が鎖交することにより、該閉ループ部18上に、両側の漏れ磁束6a,6cにより発生するシールド電流16a,16cの向きと同方向のシールド電流16bが発生し、このシールド電流16bとシールド電流16a,16cが重畳されることとなる。
【0065】
その結果、各巻線対23a〜23cからの漏れ磁束6a〜6cにより、一周シールド手段15に重畳されたシールド電流16が流れるので、タンクに発生する渦電流を抑制することができる。なお、積層鋼板17には起電力が発生するが、積層方向には導通しないので、渦電流が発生することはほとんどない。また、一周シールド手段15において積層鋼板17部分の閉ループ部18は、積層鋼板17の外側に対し二重となるように形成し、ループ内磁束が誘導する起電力の方向が逆転し、機能しなくなるのに留意する必要がある。
【0066】
また、上記積層鋼板17を有する一周シールド手段15は、一枚ものの銅板若しくはアルミ板により形成された例を示したが、例えば、図21に示すように環状のシールドリングを複数用いて形成しても同様の効果を得ることができ、さらに図示していないが、適宜の高さをなす複数の筒状部材により形成してもよいのは勿論である。なお図示実施例では、単相3巻線の変圧器に閉ループ部18を有するシールド手段15を用いた例を示したが、これに限定されるものではなく、単相2巻線の場合、隣接する二つの巻線対のうち、何れか一方の巻線対と対応する位置に閉ループ部18を設けると、上記と同様の作用効果を得ることができるので、単相2巻線の変圧器にも同様に適用することができる。
【0067】
以上説明した一周シールド手段15の材料として例えば銅を用いた場合、タンクに用いる鉄に比べ1/10程度の電気抵抗であるため、渦電流は10対1程度の割合で大部分この一周シールド手段15上を流れるようになり、鉄製のタンクに流れる渦電流を10分の1に抑制することができる。このような系において渦電流の強さは導体の抵抗率よりもむしろインダクタンスに支配され、ほぼ鎖交磁束を相殺する分だけ流れる。従って、一周シールド手段15を設けない場合も、設ける場合も、全電流はあまり変わらない。渦電流損は抵抗率の一乗、渦電流の二乗に比例する。このことから一周シールド手段を設けた場合、全渦電流損を従来の1/11程度にできることになる。
【0068】
以上の内容を式で表現すると、次のようになる。なお、以下の式中、「=」は概略等しいと意味である。
【0069】
【数1】
電気抵抗Rの関係は Rシールド=0.1×Rタンク
【0070】
【数2】
誘導電流Iの関係は 10×Iタンク(シールドあり)=Iシールド
【0071】
【数3】
Iタンク(シールドなし)=Iタンク(シールドあり)+Iシールド
【0072】
【数4】
W(シールドなし)=Rタンク×(Iタンク(シールドなし))2
【0073】
【数5】
W(シールドあり)=Rタンク×(Iタンク(シールドあり))2+Rシールド×(Iシールド)2
【0074】
【数6】
比率は
なお、図8以降の実施例では、一周シールド手段15を用いた例を示したが、次に、一周シールド手段15の取付け例を図22及び図23により説明する。
【0075】
まず、一周シールド手段15は、タンク周壁41と、鉄心1,そのサイドヨーク1a,巻線対23a〜23c,鉄心締め金具100との間の空間に、それらから数cm程度離して設置するのが望ましい。その理由は、一周シールド手段15に流れるシールド電流は二次磁束を発生するため、タンク4に近づけ過ぎると、タンク4に二次電流を誘導するおそれがあるからである。従って、図22及び図23に示す夫々の取付け治具9は、一周シールド手段15を離して設置するように構成されている。
【0076】
即ち、図22に示す取付け治具9は、一周シールド手段15として、巻線対23a〜23c全体を一枚の銅板、或いは複数の筒状からなる銅板で形成したものに適用したものであり、座91と、溝93を形成した保持部92と、溝93に装着される絶縁スペーサ11と、ボルト10とを有し、基本的には図3にて前述したものと同様である。
【0077】
また、図23に示す取付け治具9は、一周シールド手段15として、環状のシールドコイルを複数用いて形成したものに適用したものであり、座91と、保持部92と、絶縁碍子12と、締め具13と、ボルト10とを有し、基本的には図6にて前述したものと同様である。
【0078】
上記図22,図23の何れの場合も、鉄等のような磁性体を用いると磁束を吸引し、渦電流による局部発熱が起こるので、ステンレスのような非磁性体或いはセラミック等の絶縁体で取付け治具9を構成することが好ましい。その場合、ステンレス或いはセラミックを用いる場合、鉄製のタンク4に対し溶接等で直付けすることが難しくなるため、ボルト10を用いることにより、取付け作業性を容易にすることができ、しかもステンレス製のボルト10で形成すれば、より効果的である。
【0079】
また、ステンレスは非磁性体であるが導体であるため、一周シールド手段15によって発生するシールド電流が作る渦電流の発生を避けるため、図22の如き絶縁スペーサ11、図23の如き絶縁碍子12を設けることが望ましい。但し、流動帯電などによる帯電を避けるため、一周シールド手段15にはアースをとっておくことが必要である。
【0080】
なお、これまで述べた図7以降の実施例においては、両側にサイドヨーク1aを有する鉄心1に2個,3個の巻線対を設けた例を示したが、前述した如く、サイドヨークを設けず、単に2脚或いは3脚を有する鉄心を用いたものにも適用しても、同様の作用効果を得ることができる。
【0081】
以上述べたように、本発明の請求項1記載の発明によれば、シールド手段を、複数の環状のシールドコイルをタンク周壁と両巻線の外周間においてタンク高さ方向に沿って適宜の間隔を隔てて配設して形成したため、低圧巻線、高圧巻線間の巻線間隙からの漏洩磁束と反対方向の磁界を発生させる渦電流を、周囲に亘って発生するように構成し、タンクの周囲のように大域的な経路にわたり発生する渦電流に対し極めて有効となり、タンクの発熱を可及的に抑えることができ、従って、低圧巻線,高圧巻線の巻線と鉄製のタンクとを近接させることができる結果、変圧器の小型化を実現でき、しかもタンクが鉄製の安価なものであるばかりでなく、タンクの強度を維持でき、また運搬時にタンクが変形するのも防止することができると云う効果がある。
【0083】
そして、請求項3〜4によれば、一周シールド手段によりタンク周壁に発生する大域的循環渦電流を抑制するように構成したので、長距離大容量送電の変圧器でも、機器の発熱を抑え、損失を低減させることができ、渦電流に対する信頼性を高め得る効果がある。特に、請求項3によれば、各巻線対の巻線間隙からの漏洩磁束のみならず、隣接する巻線対間に発生する相間渡り磁束に対しても有効であるので、大容量であるが故に困難を伴っていた冷却系負荷を軽減することができる効果がある。また請求項3〜4によれば、各巻線対の巻線間隙からの漏洩磁束を容易に抑制でき、安価に製作し得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による変圧器の第一の実施例を示す説明用斜視図。
【図2】従来技術の変圧器を示す説明用斜視図。
【図3】図1の変圧器におけるシールド手段の取付け例を示す要部の説明図。
【図4】本発明による変圧器の第二の実施例を示す説明用斜視図。
【図5】本発明による変圧器の第三の実施例を示す説明用斜視図。
【図6】図5の変圧器におけるシールド手段の取付け例を示す要部の説明図。
【図7】本発明による変圧器を超大容量変圧器に適用した第四の実施例を示す説明用斜視図。
【図8】本発明による変圧器の第五の実施例を示す一周シールド手段を用いたときの説明用斜視図。
【図9】漏れ磁束と相間渡り磁束とシールド電流との関係を示す説明図。
【図10】電力大容量2巻線変圧器の一般的な例を示す一部破断の説明用斜視図。
【図11】図10の変圧器の一部を縦断した説明図。
【図12】同じく図10の変圧器における漏れ磁束と渦電流との関係を示す説明用斜視図。
【図13】一周シールド手段の他の例を示す説明斜視図。
【図14】図13に示す一周シールド手段を形成する場合の具体例を示す説明用斜視図。
【図15】一周シールド手段のさらに他の例を示す説明用斜視図。
【図16】本発明による変圧器の第六の実施例を示す一周シールド手段を用いたときの説明用斜視図。
【図17】電力大容量3巻線変圧器の一般的な例を示す一部破断の説明用斜視図。
【図18】同じく図17の変圧器における漏れ磁束と渦電流との関係を示す説明用斜視図。
【図19】本発明による変圧器の第七の実施例を示し、積層鋼板を有する一周シールド手段を用いた斜視図。
【図20】漏れ磁束と積層鋼板を有する一周シールド手段との関係を示す説明用斜視図。
【図21】積層鋼板を有する一周シールド手段の他の例を示す斜視図。
【図22】筒状の一周シールド手段の取付け例を示す要部の説明図。
【図23】同じく環状の一周シールド手段の取付け例を示す要部の説明図。
【符号の説明】
1…鉄心、2…低圧巻線、3…高圧巻線、4…タンク、41…タンク周壁、5…巻線間隙、6,6a〜6c…漏洩磁束、7…シールド手段に発生する渦電流、7′…タンクの周壁の内側に発生する渦電流、8…シールド手段、81…複数の筒状の銅板、82…複数のシールドコイル、15…一周シールド手段、15a…水平シールド部、15b…隣接部分縦シールド部、16a〜16c…シールド電流、23a〜23c…巻線対、70…大域的循環渦電流、71…相間渡り渦電流、72…局所的循環渦電流。
Claims (4)
- 鉄心と、該鉄心の周囲に互いに同心上に配置された低圧巻線,高圧巻線とを鉄製のタンクに収容した変圧器において、
前記タンクの周壁と前記両巻線の外周との間に、前記鉄製のタンクより低抵抗導体で形成され、かつ前記両巻線間の巻線間隙からの漏洩磁束と反対方向の磁界を発生させるシールド電流を周囲に亘って発生し得るシールド手段を設置し、該シールド手段は、複数本の環状のシールドコイルが、前記タンクの周壁と前記両巻線の外周との間に、タンクの高さ方向に沿って適宜の間隔を隔てて配設されて形成されていることを特徴とする変圧器。 - 鉄心と、該鉄心の周囲に互いに同心上に配置された低圧巻線,高圧巻線からなる複数の巻線対とを鉄製のタンクに収容した変圧器において、
前記タンクの周壁と前記複数の巻線対との間に、前記鉄製のタンクより低抵抗導体で形成され、かつ各巻線対の巻線間隙から発生する漏洩磁束と一方の巻線対及びこれに隣接する巻線対間に発生する相間渡り磁束との双方に鎖交し、かつこれら双方の磁束による大域的循環渦電流を抑制するシールド電流を発生し得る一周シールド手段を設置し、該一周シールド手段は、前記タンク周壁と各巻線対との間に、これら各巻線対を水平方向に沿って覆う水平シールド部と、各巻線対の互いに隣り合う部分の周囲及びそれに対応する前記鉄心の上下部分を覆う隣接部分縦シールド部とを有することを特徴とする変圧器。 - 鉄心と、該鉄心の周囲に互いに同心上に配置された低圧巻線,高圧巻線からなる少なくとも2個の巻線対とを鉄製のタンクに収容し、該2個の巻線対のうち、何れか一方の巻線対に対し他方の巻線対の励磁方向が互いに逆方向となる変圧器において、タンクの周壁と前記複数の巻線対との間に、鉄製のタンクより低抵抗導体で形成され、かつ各巻線対の巻線間隙から発生する漏洩磁束と鎖交し、かつその磁束によりタンク周壁に発生する大域的循環渦電流を抑制するシールド電流を発生し得る一周シールド手段を設置し、該一周シールド手段は、タンク周壁と各巻線対との間に、これら各巻線対を水平方向に沿って覆うように配置された水平シールド部と、何れか一方の巻線対からの漏洩磁束によって発生するシールド電流の向きを、他方の巻線対からの漏洩磁束によって発生するシールド電流の向きと同じにする閉ループ部とを有することを特徴とする変圧器。
- 鉄心と、該鉄心の周囲に互いに同心上に配置された低圧巻線,高圧巻線からなる3個の巻線対とを鉄製のタンクに収容し、該3個の巻線対のうち、両側の巻線対の励磁方向が互いに同じになると共に、両側の巻線対に対し中央側の巻線対の励磁方向が逆方向となる変圧器において、タンクの周壁と前記複数の巻線対との間に、鉄製のタンクより低抵抗導体で形成され、かつ各巻線対の巻線間隙から発生する漏洩磁束と鎖交し、かつその磁束によりタンク周壁に発生する大域的循環渦電流を抑制するシールド電流を発生し得る一周シールド手段を設置し、該一周シールド手段は、タンク周壁と各巻線対との間に、これら各巻線対を水平方向に沿って覆うように配置された水平シールド部と、両側の巻線対からの漏洩磁束によって発生するシールド電流の向きに対し、中央側の巻線対からの漏洩磁束によって発生するシールド電流の向きを同じにする閉ループ部とを有することを特徴とする変圧器。
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