JP3653379B2 - 光起電力素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光入射により光起電力を発生する光起電力素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
図2は、結晶系シリコン基板を基板とする、本出願人が、特願平8−290707号に提案した光起電力素子の構造を示す断面図である。図2において、1は単結晶シリコン,多結晶シリコン等の結晶系半導体からなるn型の結晶系シリコン基板である。結晶系シリコン基板1の一方の主面(表面)上には、i型の非晶質シリコン層2,p型の非晶質シリコン層3がこの順に積層され、更にその上に、例えばITOからなる透光性導電膜4及びAgからなる櫛形状の集電極5が形成されている。結晶系シリコン基板1の他方の主面(裏面)上には、i型の非晶質シリコン層6,n型の非晶質シリコン層7がこの順に積層され、更にその上に、例えばITOからなる透光性導電膜8及びAgからなる櫛形状の集電極9が形成されている。
【0003】
そして、実際に太陽電池として使用する場合には、このような構成の多数の光起電力素子を、集電極5,9に半田付けされたタブを介して、直列接続させたモジュール構造とする。
【0004】
このような構造の光起電力素子では、結晶系シリコン基板1以外の各層の形成を、プラズマCVD法,スパッタリング法,スクリーン印刷法等の方法を用いて全て200 ℃以下の温度で行うことができるので、基板の反りの発生を防止でき、しかも製造コストの低減化を図ることができる。このような構造の光起電力素子では、非晶質シリコン層2,3,6,7への熱的なダメージを抑制するために、低温環境にて作製されるので、集電極5,9用のAgペーストも低温硬化型のペーストが使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したような従来の光起電力素子にあっては、集電極5,9用に使用しているAgペーストが低温硬化型であるので、光起電力素子間の直列接続を行うための半田付け時の条件範囲が狭くて、条件管理が困難であり、半田付け性が悪く、また、半田付けによるAg食われまたはマイグレーションが発生して、半田不良となる可能性も高いといった課題が残っており、改善の余地がある。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、集電極の上面に導電性膜を備えることにより、集電極に直接半田付けを行う従来例と比べて容易に半田付けを行える光起電力素子を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の他の目的は、裏面側の集電極の上面に備える導電性膜を透光性導電膜の全面を被うように設け、また、その裏面側の導電性膜の材料を高反射性のAgとすることにより、裏面反射効果によって変換効率の向上を図れる光起電力素子を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る光起電力素子は、一導電型の結晶系半導体基板の光透過側に、前記一導電型と同じ導電型の非晶質半導体層を備えると共に、該非晶質半導体層上に透光性導電膜を介して集電極を備えた光起電力素子において、前記集電極の上面に、前記透光性導電膜の全面を覆うように設けられた導電性膜を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記導電性膜が、半田付け性が良好な金属からなることを特徴とし、前記導電性膜がAgからなることを特徴とする。
【0010】
本発明の光起電力素子は、非晶質半導体層上に透光性導電膜を介して集電極を備えた構成であって、集電極の上に導電性膜を備えている。そして、モジュール作製時には、この導電性膜にタブが半田付けされる。よって、集電極を低温硬化型の導電ペーストを使用して形成した場合でも、集電極へ直接半田付け処理を行う従来例と比較して、半田付け密着度を向上できる。
【0011】
この導電性膜の材料としては、Ag,Cu,Ni,Cr,Ti,Al等の金属、またはこれらの合金を用いることができるが、タブの半田付けを考えれば、Ag,Cu,Ni,Cr等の半田付け性が良好な金属を用いることが好ましい。また、裏面側では、この導電性膜を透光性導電膜の全面を被うように設けることにより、導電性膜が裏面側の反射膜として作用し、裏面反射効果を高めて変換効率を向上できる。更に、この裏面側の導電性膜の材料を光反射率が高いAgとすることにより、より高い変換効率を実現できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の光起電力素子の構造を示す断面図である。図1において、1は単結晶シリコン,多結晶シリコン等の結晶系半導体からなるn型の結晶系シリコン基板である。結晶系シリコン基板1の一方の主面(表面)上には、i型の非晶質シリコン層2(膜厚:100 Å),p型の非晶質シリコン層3(膜厚:100 Å)がこの順に積層され、更にその上に、例えばITOからなる透光性導電膜4(膜厚: 700 Å)及びAgからなる櫛形状の集電極5が形成されている。また、透光性導電膜4及び集電極5の上に、例えばAgからなる導電性膜10(膜厚:数百〜5000Å)が形成されている。
【0013】
結晶系シリコン基板1の他方の主面(裏面)上には、i型の非晶質シリコン層6(膜厚:100 Å),n型の非晶質シリコン層7(膜厚:100 Å)がこの順に積層され、更にその上に、例えばITOからなる透光性導電膜8(膜厚:700 Å)及びAgからなる櫛形状の集電極9が形成されている。また、透光性導電膜8及び集電極9の上に、例えばAgからなる導電性膜11(膜厚:数百〜5000Å)が形成されている。なお、本実施の形態では、裏面側の集電極9上に形成される導電性膜11を、裏面側の透光性導電膜8の全面を被うように設けている。
【0014】
以上のような本実施の形態による光起電力素子によれば、低温硬化型の金属ペーストを用いて集電極5,9を形成しても、この集電極5,9上に導電性膜10, 11を介して確実に半田付けを行うことができ、また、半田付けによるAg食われまたはマイグレーションが発生することもないので、長期にわたる信頼性を向上することができる。また、裏面側の集電極9上に備えられる導電性膜11を、裏面側の透光性導電膜8の全面を被うように設けているので、この導電性膜11による裏面反射効果が生じ、導電性膜を備えない従来例と比べて、変換効率の最大特性を約2.5 %向上させることができた。なお、このような裏面反射効果を最大とするためには、導電性膜11の材料として上述したようなAg等の高反射性の金属を用いることが好ましい。
【0015】
次に、このような構成を有する光起電力素子の製造手順について簡単に説明する。まず、n型の結晶系シリコン基板1の一方の主面に、SiH4 を用いたプラズマCVD法により、i型の非晶質シリコン層2を形成し、更にその上に、SiH4 とB2 6 との混合ガスを用いたプラズマCVD法により、p型の非晶質シリコン層3を形成する。次いで、結晶系シリコン基板1の他方の主面に、SiH4 を用いたプラズマCVD法により、i型の非晶質シリコン層6を形成し、更にその上に、SiH4 とPH3 との混合ガスを用いたプラズマCVD法により、n型の非晶質シリコン層7を形成する。
【0016】
次に、スパッタリング法により、非晶質シリコン層3と非晶質シリコン層7との上に、何れもITOからなる透光性導電膜4と透光性導電膜8とをそれぞれ形成する。そして、Agペーストを用いたスクリーン印刷法により、透光性導電膜4と透光性導電膜8との上に、それぞれ集電極5と集電極9とを形成する。
【0017】
次に、スパッタリング法により、集電極5の表面を含む透光性導電膜4上、及び、集電極9の表面を含む透光性導電膜8上に、導電性膜10及び11をそれぞれ形成する。この際のスパッタ条件は、以下の通りである。
【0018】
ターゲット:Ag
加熱温度:150 ℃
スパッタ圧力:3×10-3Torr
なお、ここではスパッタリング法によって導電性膜10,11を形成することとしたが、抵抗加熱またはエネルギビームによる蒸着処理、或いは、メッキ処理にて、この導電性膜10,11を形成するようにしても良い。
【0019】
また、導電性膜10,11の材料はAgに限るものではなく、Cu,Ni,Cr,Ti,Al等の他の金属またはこれらの合金を用いても良いが、後の工程でタブを半田付けすることを考慮すると、Cu,Ni,Crのような半田付け性が良好な金属を用いることが好ましい。更に、集電極5,9の材料もAgに限るものではなく、Cu,Ni,Ti,Al,Cr等の他の金属またはこれらの合金を用いても良い。
【0020】
また、結晶系シリコン基板1の導電型をn型としたが、光入射側に逆導電型のヘテロ接合を形成する構成であれば、結晶系シリコン基板1の導電型はp型であっても良い。
【0021】
また、上述した実施の形態では、結晶系半導体と非晶質半導体とから構成される光起電力素子について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、非晶質半導体層上に透光性導電膜を介して集電極を備える構造のものであれば、如何なる構成であっても良い。このような構成を有するものとしては、例えば、金属基板/nip構成の非晶質半導体層/透光性導電膜/集電極の構成のもの、結晶系基板の光入射側にのみ非晶質半導体層を設けた構成のもの、または、結晶系基板の光透過側にのみ非晶質半導体層を設けた構成のもの等がある。
【0022】
【発明の効果】
以上のように、本発明の光起電力素子では、集電極の上面に導電性膜を備えるようにしたので、半田付け時のAg食われによるコンタクト抵抗を増加させることなく、半田付け性が良好となりタブの密着性を向上することができ、また、半田付けの処理も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明における光起電力素子の断面図である。
【図2】 従来例における光起電力素子の断面図である。
【符号の説明】
1 結晶系シリコン基板(n型)
2,6 非晶質シリコン層(i型)
3 非晶質シリコン層(p型)
4,8 透光性導電膜
5,9 集電極
7 非晶質シリコン層(n型)
10,11 導電性膜

Claims (4)

  1. 一導電型の結晶系半導体基板の光透過側に、前記一導電型と同じ導電型の非晶質半導体層を備えると共に、該非晶質半導体層上に透光性導電膜を介して集電極を備えた光起電力素子において、前記集電極の上面に、前記透光性導電膜の全面を覆うように設けられた導電性膜を備えることを特徴とする光起電力素子。
  2. 前記一導電型の結晶系半導体基板の光入射側に、前記一導電型と逆の導電型の非晶質半導体層を備えると共に、該非晶質半導体層上に透光性導電膜を介して集電極を備えたことを特徴とする請求項1記載の光起電力素子。
  3. 前記導電性膜が、半田付け性が良好な金属からなる請求項1または2記載の光起電力素子。
  4. 前記導電性膜がAgからなる請求項3記載の光起電力素子。
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