JP3653199B2 - 残屑由来の性能劣化が低減されたリソグラフ印刷イメージング方法及び関連構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はデジタル印刷装置及び方法に関し、より詳しくは、デジタル制御されたレーザ出力を用いて、リソグラフ印刷プレート構造を印刷機上又は印刷機外でイメージングするためのシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
オフセットリソグラフ印刷においては、印刷可能なイメージは印刷部材上に、インク受容性(親油性)及びインク拒絶性(疎油性)の表面領域のパターンとして存在する。一旦これらの領域に適用されたなら、インクは記録媒体へとかなりの忠実性をもって、イメージに関連したパターンで効率的に転写可能である。乾式印刷システムは、インク反撥部分がインクに対して十分に疎であって、インクを直接に適用することが許容されるような印刷部材を用いる。こうした印刷部材に一様に適用されたインクは、イメージに関連したパターンにおいてのみ、記録媒体に転写される。典型的には、印刷部材は最初にブランケットシリンダと呼ばれる従順な中間表面と接触し、このブランケットシリンダが次いで、紙その他の記録媒体に対してイメージを適用する。典型的な給紙式の印刷システムにおいては、記録媒体は圧胴即ちインプレッションシリンダにピン留めされ、それによって記録媒体とブランケットシリンダとの接触が持ち来たらされる。
【0003】
湿式リソグラフ印刷システムにおいては、非イメージ領域は親水性であり、所要のインク反撥性は、インク付けに先立ってプレート、即ち印刷部材に対し、湿し水(又は「ファウンテン」溶液)を最初に適用することによってもたらされる。インク忌避性の湿し水は、インクが非イメージ領域に付着することを妨げるが、イメージ領域の親油性の特性には影響しない。
【0004】
伝統的な印刷技術において典型的なものである、面倒な写真術的現像、プレート装着及びプレート整合操作を回避するために、印刷業者達は電子的な代替手段を開発した。これはイメージに関連するパターンをデジタル形態で格納し、そのパターンをプレート上へと直接に印像するものである。コンピュータ制御に馴染みやすいプレートイメージングデバイスには、種々の形態のレーザが含まれる。例えば米国特許第5,351,617号及び第5,385,092号(これらの開示の全内容は、ここでの番号の参照によって本明細書に取り入れるものとする)は、融除記録システムを開示している。これは未使用の印刷部材、即ちリソグラフ印刷ブランクの1又はより多くの層をイメージに関連するパターンで除去するために、低出力のレーザ放電を用いるものであり、それによって写真術的現像の必要性なしに、インク付けの準備が整った、即ち即時インク付け可能な印刷部材を生成するものである。これらのシステムによれば、レーザ出力はダイオードから印刷表面へと案内され、その表面に対して(或いは望ましくは、一般には表面層の下側にありレーザによる融除を最も受けやすい層に対して)集束される。
【0005】
米国特許第5,339,737号及び再発行特許第35,512号、並びに同時係属中の米国特許出願第08/700,287号及び08/756,267号は、ここで番号を参照することによってそれらの全内容を本明細書に取り込むものとするが、上記のようなイメージング装置と共に用いるための、種々のリソグラフプレート構成を記載している。一般的に言って、この種のプレート構成は、インク又はインク忌避液体に対する親和性(又は反撥性)について選択された第1の、最上層を含みうる。第1の層の下側には、イメージング(例えば赤外、即ち「IR」)放射線に応答して融除されるイメージ層がある。強固で耐久性のある基体がこのイメージ層の下側にあり、インク又はインク忌避液体に対して第1の層のそれとは逆の親和性(又は反撥性)により特徴付けられる。イメージングパルスによる吸収性の第2の層、即ちイメージ層の融除は、通常は最上層をも弱化する。下側にある層に対する係留、固定を破壊されることにより、最上層はイメージング後の洗浄工程において容易に除去可能なものとなる。このことは、インク又はインク忌避液体に対し、暴露されていない第1の層のそれとは異なる親和性を有するイメージスポットを生成することになり、こうしたスポットのパターンによってリソグラフ印刷プレートのイメージが形成される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
洗浄のための手法として確立されているものには、イメージングされたプレートに機械的な作用を施すことがある。これは例えば、布による擦り取りや拭い取り、或いはブラシの回転などである(米国特許第5,148,746号参照)。機械的作用は乾燥状態の下で行わせることもでき、また洗浄液を使用することもできる。後者の場合、洗浄液は洗浄プロセスを援助し、残屑を除去するのに必要な機械的摩擦の量と強さを低減させる。その結果、最上層のうちイメージングの影響を受けていない部分が損傷を受ける可能性は低減される。洗浄液は通常、最上層に対して非溶剤であるが、これもやはり、非イメージ領域に対する損傷を回避するためである。特に、乾式プレートはシリコーン製の上側層を用いるものであるが、これには種々の溶剤が浸透可能である。従ってこうしたシリコーン層は溶剤の影響下に「膨潤」し、それにより下側にある層に対する係留は弱化され、かくしてプレートの耐久性及び性能が劣化する結果となる。残念ながら、シリコーン層を保護、保持する必要性のために、洗浄の全体的な有効性が制約を受ける可能性がある。イメージングの副生物及び他の熱分解残屑を、プレートのイメージ部分から完全に除去しなければ、インク反撥層とインク受容層の間に必要な、親和性の相違を得ることはできない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、洗浄液と相溶性のある残屑を生成することにより、融除によるイメージングの後の、印刷部材の洗浄性を向上させる。この洗浄液は、印刷部材の最上層を溶解しないように、即ち最上層に対して「非溶剤」として作用するように選択される。例えば、シリコーンの最上層を有する乾式プレートにおいては、洗浄液は本質的に水性でありうる。従来技術による乾式プレート構造体に対して適用された場合、水性の洗浄液はシリコーンフラグメント(及びイメージングされた領域の上側にあるシリコーン最上層の係留離脱部分)を除去するについて、限られた性能しか持たないが、これはシリコーンと化学的な相溶性がないためである。本発明は、シリコーンの乾式プレートに適用して親水性の残屑を生成するようにでき、それにより、特にシリコーンと相溶性があるように配合されたものではない水性溶液でもって、洗浄を行うことが容易なものとされる。ここで用いる用語「残屑」は、ホモリシスのような化学的メカニズムや剪断又は引き裂きのような機械的プロセスから生じうる熱的に生成された分解生成物であって、分子レベルから嵩高(微視的にではあるが)なフラグメント又は断片に至るまでの範囲にあり得る大きさのものを内包することを意図している。
【0008】
一つの側面においては、印刷部材のイメージング層(高分子マトリクスを含む)と表面層の間に配置された介在層が、イメージングに続いての、上側層の除去を助ける。この介在層はまた、絶縁機能をも提供することができ、表面層の熱劣化を妨げる。介在層は望ましくは、所望とする洗浄液と相溶性のある官能基を取り込んだものであり、それによってイメージング後の洗浄プロセスを補助する。例えば、絶縁層は親水性官能基を有するアクリル酸エステル即ちアクリレートの層であることができ、これらの官能基は絶縁層の露出部分が水性の洗浄液と相互作用するようにする。代替的に、絶縁層は親水性のもの、例えば架橋したヒドロキシエチルセルロースや、より好ましくはポリビニルアルコールといった化学種であることができ、金属層及びシリコーン層に対して良好な接着性を示す。
【0009】
第2の側面では、絶縁層ではなく、イメージング(融除)層の特性が変性されて、イメージングに続いての上側層の除去が改善されるようになる。例えば、有機イメージング層に対して、融除に化学的に耐える親水性顔料を充填することができ(カーボンブラックのような在来の赤外線吸収性顔料に加えて、或いはその代替として)、イメージングの結果として上側層にこの顔料が取り込まれることにより、その後の上側層の水性除去が容易なものとされる。同時に、親水性材料がインク受容層に導入されることは、その親水性材料が疎油性でない限り、性能に影響しない。
【0010】
【発明の実施の形態】
以上の議論は、添付図面との関連において以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解されるであろう。
【0011】
本発明の印刷部材に関連して用いるのに適したイメージング装置には、プレートの応答性が最大の領域で発光する、即ちそのλmaxがプレートが最も強い吸収を行う波長領域にほぼ近似している、少なくとも1つのレーザ装置が含まれる。近赤外領域で発光するレーザの仕様は、前述の米国特許第5,339,737号及び再発行特許第35,512号(これらの開示の全内容は、ここでの番号の参照によって本明細書に取り入れるものとする)に完全に記述されている。電磁スペクトルの他の領域で発光する他のレーザも、当業者には周知である。
【0012】
適切なイメージング構成もまた、前述の米国特許第5,339,737号及び再発行特許第35,512号に詳細に記載されている。簡略に言えば、レーザ出力はレンズその他のビーム案内部材を介してプレート表面に対して直接にもたらされるか、或いはブランク印刷プレートの表面に対して光ファイバケーブルを用いて遠隔部位のレーザから伝送される。コントローラ及び関連する位置決めハードウェアがビーム出力をプレート表面に対して正確な向きに維持し、この出力で表面全体を走査し、そしてプレートの選択個所又は領域に隣接した位置においてレーザを活性化する。コントローラは、プレート上に複製される原本ドキュメント又は画像に対応する入力イメージ信号に応答して、原本の正確な陰画又は陽画イメージを生成する。イメージ信号は、コンピュータにビットマップデータファイルとして格納されている。こうしたファイルは、ラスタイメージプロセッサ(RIP)その他の適切な手段によって発生することができる。例えば、RIPは入力データを、印刷プレート上に転写されることが必要な全ての特徴を規定するページ記述言語で受け取ることができ、或いはページ記述言語と一つ又はより多くのイメージデータファイルの組み合わせとして受け取る。ビットマップは、色相並びにスクリーン周波数及び角度を規定するよう構成されている。
【0013】
イメージング装置は、プレート作成機としてのみ機能するようそれ自体で動作することができ、或いはリソグラフ印刷機に直接に組み込むことができる。後者の場合には、イメージをブランクプレートに適用した後、直ちに印刷を開始することができ、それによって印刷機のセットアップ時間を大きく短縮させる。イメージング装置は、フラットベッドレコーダとして、或いはリソグラフプレートブランクをドラムの内側又は外側の円筒形表面に装着してドラムレコーダとして構成することができる。明らかに、ドラムの外側表面に装着する設計は、現場でリソグラフ印刷機上で使用するのにより適しており、その場合には印刷シリンダそれ自体がレコーダ又はプロッタのドラム部材を構成する。
【0014】
このドラム構成において、レーザビームとプレートの間に必要とされる相対的な動作は、ドラム(及びその上に設けられたプレート)をその軸の周囲で回転させ、ビームをその回転軸と平行に移動させて、それによってプレートを周方向に走査して、イメージが軸方向に「成長」するようにして達成される。或いはまた、ビームをドラムの軸と平行に移動させ、プレートを横断する各パスの後に角度をインクリメントさせて、プレート上のイメージが周方向に「成長」するようにさせることができる。両方の場合について、ビームによる走査が完了した後に、原本のドキュメント又は画像に対応する(陽画的又は陰画的に)イメージが、プレートの表面に適用されていることになる。
【0015】
フラットベッド構成においては、ビームはプレートの何れかの軸に沿って掃引され、各々のパスの後に他方の軸に沿って位置合わせされる。勿論、ビームとプレートの間における所要の相対運動は、ビームの移動ではなく(或いはそれに加えて)プレートの移動によって生成することもできる。
【0016】
ビームが走査される仕方とは関係なしに、複数のレーザを用いてそれらの出力を単一の書き込みアレイへと案内することが一般に好ましい(機上の用途について)。この書き込みアレイは次いで、プレートを横切る又はプレートに沿っての各々のパスの完了の後に、アレイから発せられるビームの数と、所望の解像度(即ち単位長当たりのイメージポイントの数)によって定まる距離だけインデクシンシグ又はスライドされる。機外の用途の場合には、非常に迅速なプレートの動きに対処するように設計を行うことができ(例えば高速モータの使用を通じて)、従って高いレーザパルスレートをが用いられるものであり、多くの場合にイメージング源として単一のレーザを使用可能である。
【0017】
本発明による代表的な印刷部材が図1に示されている。本明細書において使用される「プレート」又は「部材」という用語は、インク及び/又はファウンテン溶液に対して差別的な親和性を示す領域によって画定されたイメージを記録することのできる、あらゆる型式の印刷媒体又は表面を指している。適切な構成に含まれるものとしては、印刷機のプレートシリンダ上に設けられる伝統的な平坦なリソグラフ印刷プレートがあるが、シリンダ(例えばプレートシリンダのロール状表面)、エンドレスベルト、或いはその他の構成配置もまた含まれ得る。
【0018】
図1を参照すると、代表的な印刷部材は、基体100と、放射線吸収性イメージング層104と、表面層106と、イメージング層104と表面層106の間に配置された絶縁層108を含んでいる。この場合、基体100、イメージング層104及び絶縁層108は、米国特許第5,339,737号の図1に例示された湿式プレート構成に類似している。しかしながら本明細書の文脈では、この印刷部材は乾式印刷を意図したものであり、従って表面層106は疎油性である。
【0019】
表面層106は、インクが付着しないシリコーンポリマーであることができるが、絶縁層108は親油性でありインクを受容する。イメージング層104は通常、高分子材料からなる。即ち、高分子材料のマトリクスをベースとしている。この層はイメージング放射線に応答して融除される。
【0020】
基体100の特性は、用途に依存する。剛性と寸法安定性が重要な場合には、基体100は金属、例えば5ミル厚のアルミニウムシートであることができる。イメージング放射線に対するイメージング層104の透過性に応じて、アルミニウムを研磨し、上側の層を貫通してきた何らかの放射線をイメージング層104へと反射して戻すようにすることができる。代替的には、基体の層100は例示したようにポリエステルフィルムの如きポリマーであることができる。この場合にも、フィルムの厚みは大体において、用途によって定まる。反射性能の利点は、ポリマーの基体100に関しても、イメージング(例えばIR)放射線を反射する顔料を含有する材料を用いることによって保持することができる。IR反射性の基体100として用いるに適した材料は、米国デラウェア州ウィルミントンのICI Filmsにより市販されているWhite 329フィルムであり、これはIR反射性の硫酸バリウムを白色顔料として用いている。好ましい厚みは0.007インチ(0.18ミリ)である。最後に、ポリマーの基体100は所望ならば、金属支持体(図示せず)にラミネートすることができ、その場合には0.002インチ(0.05ミリ)の厚みが好ましい。ここで番号を参照することによってその全内容を本明細書に取り込む米国特許第5,570,636号に開示されているように、金属支持体又はラミネート用の接着剤が、イメージング放射線を反射することもできる。
【0021】
表面層106に有用な材料、及びそのコーティング技術については、上述した米国特許第5,339,737号及び再発行特許第35,512号に開示されている。基本的には、適切なシリコーン材料が巻線ロッドを用いて塗布され、次いで乾燥され熱硬化されて、例えば2g/m2で堆積された均一なコーティングが生成される。乾式プレートの実施形態においては、表面層106と基体100はインクに対して異なる親和性を示す。
【0022】
絶縁層108は、イメージングに続いての除去性能を補助する官能基を有する。即ちイメージングパルスを適用するとイメージングされた領域内ではイメージング層104が除去されるが、絶縁層108に対しては、またその結果として表面層106に対しては、軽い損傷しか生じないであろう。しかしながらこれらの層は、基体100に対する係留を解かれることにより、除去可能なものとされる。この除去は、洗浄液の存在下に機械的作用によって達成可能であり、その洗浄液と絶縁層108のポリマーの官能基との間での化学的相溶性は、イメージングされた領域におけるその除去を助ける。適切な相間接着性を示すように材料が選ばれる限りにおいて、この相溶性は洗浄時に、非イメージ領域に対して損傷を及ぼすものではない。
【0023】
洗浄液の性質が水性である場合には、絶縁層108は親水性(或いは少なくとも、表面層よりも親水性)である。1つの手法では、絶縁層はポリビニルアルコールである。こうした材料はシリコーン層106及びチタンベースのイメージング層104の両者に対し、優れた接着性を示す。さらにまた、水から流延されたポリビニルアルコールの層は、殆どの印刷用溶剤の影響を受けず、結果として使用時に優れた耐久性を有する。適切なポリビニルアルコール材料には、AIRVOLポリマー製品(例えば米国ペンシルバニア州アレンタウンのAir Productsにより市販されているAIRVOL 125又はAIRVOL 165といった、高度に加水分解されたポリビニルアルコールが含まれる。ポリビニルアルコールは、これを大過剰の水(例えば重量比で水98に対して2)と組み合わせ、この混合物を巻線ロッドで適用し、続いて実験室の熱対流炉中で1分間華氏300度(150℃)でコーティングを乾燥することによって、基体100上へとコーティング可能である。典型的な塗布重量は、0.2〜0.5 g/m2である。
【0024】
別の手法では、絶縁層108はアクリレート材料であり、親水性官能基を取り込んでいて、水性洗浄液と相溶性がある(そしてそれにより除去可能である)ようにされる。アクリレートモノマー又はオリゴマーに対し、又はその内部に結合しうる親水基には、ペンダント(側基)のリン酸及びエチレンオキシド置換などがある。好ましい材料には、β-カルボキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレートなどのポリエチレングリコールジアクリレート、米国ジョージア州アトランタのUCB Radcure, Inc.から市販されているEB-170製品即ちリン酸官能性アクリレート、及びヘンケルにより市販されているPHOTOMER 4152(ヒドロキシペンダント)、4155及び4158(高エポキシ含有量)、及び6173(カルボキシペンダント)が含まれる。
【0025】
代替的に、親水性化合物をコーティング混合物中に非反応性成分として含めることができ、これは得られる硬化マトリクス中に坦持され、コーティングに対して水に対する濡れ性を与える親水性部位を示すようになる。こうした化合物に含まれるものには、ポリエチレングリコールやトリメチロールプロパンがある。特に、コーティング(真空蒸着ではなく)によって適用される場合には、アクリレート混合物に添加可能な非アクリレートの親水性有機材料の範囲は相当なものになる。というのは、分子量が重要な考慮事項ではないからである。本質的に、アクリレートのベースコーティングに対する溶解性又は混和性しか必要ではない。アクリル酸含有量の高いアクリル酸コポリマー(ポリアクリル酸ポリマーを含む)もまた可能なものである。非真空での適用はまた、固形の充填剤、特に無機物質(シリカの如き)を使用して、水ベースの洗浄液との相互作用を助長することを容易にする。こうした充填剤は親水性であり、及び/又は多孔性(テクスチャ)を導入することができる。これは導電性カーボンブラック(例えば米国マサチューセッツ州ウォルサムのCabot社のSpecial Blacks Divisionにより市販されているVulcan XC-72顔料)で得られるごときものである。
【0026】
Tレジン及びはしご形ポリマーは、絶縁層108として役立つことのできる、さらに別のクラスの材料を表すものである。これらの材料は溶媒からコーティング可能であり、高い耐熱性を示す。Tレジンは高度に架橋された材料であり、RSiO1.5という実験式を有する。はしご形ポリマーは、
【0027】
【化1】
【0028】
という構造を示しうる。
【0029】
これらのタイプの材料は両方とも、R基を適切に選ぶことを通じて、例えばシラノール、アミノプロピル、グリシドキシプロピル、又はクロロプロピルとすることにより、親水性にすることが可能である。或いはまた、これらは上側の相と反応性にすることができる(例えばビニル置換を用いてRを-CH=CH2として)。さらにまた、これらの材料は劣化して低分子量のシロキサンではなく、SiO2-xガラスとなる傾向を有する。この種の材料のうち最も単純で有用なものはポリメチルシルセスキオキサンであるが、高次のTレジン及びはしご形ポリマーをより有利に用いることができる。
【0030】
イメージング層104は、本来的に近赤外領域で吸収を行う高分子系、或いは近赤外吸収性成分が分散又は溶解された高分子コーティングからなることができる。以下の例は、ポリエステル基体上への、顔料が充填された有用なニトロセルロースのイメージング層の適用について記述するものである。
【0031】
【実施例】
【0032】
【表1】
【0033】
使用されたニトロセルロースは、米国デラウェア州ウィルミントンのAqualon社により市販されている、30%イソプロパノール湿潤5-6 Sec RSニトロセルロースであった。Cymel 303は、American Cyanamid社により市販されているヘキサメトキシメチルメラミンである。
【0034】
このベース組成物に対してIR吸収性化合物を添加し、分散させた。以下の5つの化合物を下記の比率で用いたところ、有用な吸収層が生成される結果となった。
【0035】
【表2】
【0036】
NaCure 2530は米国コネチカット州ノーワークのKing Industries社により市販されており、イソプロパノール/メタノール混合物中における、アミンブロックp-トルエンスルホン酸溶液である。Vulcan XC-72は、米国マサチューセッツ州ウォルサムのCabot社のSpecial Blacks Divisionにより市販されている、導電性カーボンブラック顔料である。Nigrosine Base NG-1は、米国ペンシルバニア州ハリスブルグのN H Laboratories社により、パウダーとして市販されている。Projet 900NPは、英国マンチェスターのICI Colors & Fine Chemicals社により市販されているIR吸収剤である。上記で用いた酸化バナジウム(V6O13)は、米国ウィスコンシン州ミルウォーキーのCerac社によりパウダーとして市販されている。Titanium Black 12-Sは、米国ニュージャージー州バーナーズビルのPlastics & Chemical社から市販されている。
【0037】
IR吸収剤の添加、及びそのベース組成物中への分散に続いて、ブロック化PTSA触媒が添加され、得られた混合物は巻線ロッドを用いてポリエステル基体へと塗布された。乾燥して揮発性溶媒を除去し、硬化(両方の機能を営む実験室の対流式乾燥器中で300°F(150℃)において1分間)した後、コーティングは1g/m2で堆積された。
【0038】
ニトロセルロースの熱硬化機構は、2つの機能を営む。即ちポリエステル基体に対するコーティングの固定と、溶剤耐性の増大(印刷室環境においては特に関心事である)である。
【0039】
このコーティングされた基体(プライマーを備えていてもよい)に、ポリビニルアルコール組成物(例えば95重量部の水に対して5重量部のAIRVOL 125)を、巻線ロッドで塗布した。塗布されたコーティングは実験室の対流式乾燥器中で300°F(150℃)において1分間乾燥され、塗布重量が0.5g/m2とされた。次いでこのポリビニルアルコールの層に、シリコーンコーティングを施した。下記のものは、適切なコーティングの1例を示す。
【0040】
【表3】
【0041】
これらの成分は一般的なものであり、上述した米国特許第5,339,737号に詳細に記載されている。
【0042】
次の実施例では、絶縁層108を省略し、上述したIR吸収性顔料に加えて、或いはこれに代えて、イメージング層104に親水性顔料を与えた。もちろん、親水性顔料を単独で用いる場合には、その顔料、又はそれが分散された高分子バインダーが、イメージング放射線の必要な吸収をもたらすことになる。1つの好ましい手法においては、顔料はベース組成物中に直接に導入される。下記の配合は、上述したベース組成物を代替することのできるものであり、シリカ充填材の取り込みを例示するものである。
【0043】
実施例6−7
【0044】
【表4】
【0045】
Imsil A108は、米国イリノイ州エルコのUnimin Specialty Minerals社から市販されている天然結晶性シリカ製品である。Aerosil 90は米国ニュージャージー州リッジフィールド・パークのDegussa社のPigments Divisionから市販されている合成アモルファスシリカである。
【0046】
親水性顔料はまた、ポリピロール、ポリアニリン、及びポリチオフェンなどをベースとする、他の融除可能なコーティング配合物においても使用可能である。これらは樹脂バインダー中で、現場で重合させることができる。国際公開公報WO97/900735号を参照されたい。これにより公開されたPCT出願は、こうしたポリマーの性質に由来して生ずる問題を回避するために、導電性ポリマーを現場で調製することを記述している。親水性顔料は、これらの現場形成される導電性ポリマーと組み合わせて用いて、それらの融除の結果生ずる残屑の親水性特性を増大させることができる。こうした親水性顔料は最終段階において、重合の完了に続き、分散を通じて添加することができる。実際のところ、これらの顔料それ自体を現場で形成することも可能である。代替的には、顔料は重合に先立って添加することができる。その場合には顔料は、導電性ポリマーが形成される表面(核)を提供することができる。好ましい親水性顔料(一般にはシリカ類)、粒径、及び天然か合成材料かの選択は、用途によって定められる。例えば、顔料が核形成部位として機能することが意図される場合には、表面積が大きいことから合成材料が好ましいであろう。他方、天然顔料は、粘度が過剰になることを回避すべき用途に好ましいであろう。
【0047】
図1によるプレートをイメージングすることの効果が、図2Aに示されている。イメージングパルスは暴露領域においてイメージング層104を融除し、基体100と絶縁層108の間に係留の解かれた空所112を残し、これによって上側の表面層106及び絶縁層108は、洗浄による除去に馴染みやすいものとなる。図2Bに示されているこのプロセスは、絶縁層108の親水性によって増強される。水性洗浄液を適用すると、表面層106と絶縁層108の係留の解かれた領域は一連のフラグメント115に分解され、洗浄液中に取り込まれて除去され、イメージングパルスが当たった個所に基体100を残す。
【0048】
親水性の絶縁層108を有する印刷部材について用いるための、例示的な水性洗浄液は、水道水(11.4リットル)と、米国カリフォルニア州ハンチントンビーチのSunshine Makers, Inc.により市販されているSimple Greenという濃縮クリーナー(150 ml)と、米国ニュージャージー州オークランドのVarn Products Companyから市販されているSuper Defoamer 225をキャップ1杯分組み合わせることにより調製される。ここで番号を参照することによりその全内容を本明細書に取り入れる米国特許第5,148,746号に記載されているように、この洗浄液はイメージング後に、表面層106と接触している回転ブラシに対して適用することができる。
【0049】
【発明の効果】
本発明のタイプの改良型イメージング層は、図示したような絶縁層108に関してのみ有用なものではなく、この層を有しない乾式プレート構造、即ち親油性基体100と疎油性表面層106を有するものに対しても有用である。後者の場合、親水性顔料が水性洗浄を容易にするという能力は、それ自体で価値がある。
【0050】
かくして本発明者らが、上述した技法及び構成により、優れた印刷特性及び性能を有するリソグラフ印刷部材を開発したことが看取されよう。本明細書において用いられた用語及び表現は説明のために用いたものであって、限定を行うためのものではなく、こうした用語及び表現を用いることについては、本明細書及び図面に説明し図示した特徴又はその一部に対するどのような均等物をも排除する意図はない。むしろ特許請求の範囲の枠内において、種々の設計変更が可能であることが認識されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】シリコーンの最上層と、絶縁層と、高分子イメージング層と、基体とを有するリソグラフ印刷プレートの拡大断面図である。
【図2】Aは図1に示すプレートのイメージングの影響を示す図であり、Bはイメージングされたプレートを水性の液体で洗浄する効果を示す図である。
【符号の説明】
100 基体
104 イメージング層
106 表面層
108 絶縁層
112 空所
115 フラグメント
Claims (20)
- リソグラフ印刷部材のイメージング方法であって、
a.印刷表面を有し、(i)第1の固体層と、(ii)高分子マトリクスからなるイメージング層と、(iii)イメージング層の下側にある基体と、(iv)イメージング層の融除に応じ、第1の固体層を溶解しない洗浄液に対して親和性を有する残屑を生成する材料とを含み、(v) 前記残屑を生成する材料が第1の固体層の下側にある固体の絶縁層として存在し、絶縁層の熱劣化が前記残屑を生成し、 (vi)第1の固体層と基体がインクに対して異なる親和性を有し、(vii)イメージング層がイメージング放射線の吸収による融除を受ける材料から形成されているが第1の固体層はそうではない印刷部材を準備するステップと、
b.印刷表面をイメージング放射線に対して、イメージを表すパターンでもって選択的に暴露し、イメージング層を融除するステップと、及び
c.印刷部材が放射線を受容した個所で、第1の固体層とイメージング層の残部を前記洗浄液で除去するステップとからなる方法。 - 印刷部材の絶縁層がポリビニルアルコールである、請求項1の方法。
- 印刷部材の絶縁層がヒドロキシセルロースである、請求項1の方法。
- 印刷部材の絶縁層が、前記洗浄液と化学的に相溶性のある官能基を取り込んだアクリレート材料である、請求項1の方法。
- 印刷部材の絶縁層がTレジンである、請求項1の方法。
- 印刷部材の絶縁層がはしご形ポリマーである、請求項1の方法。
- 絶縁層が親水性であり、前記洗浄液が水性である、請求項1の方法。
- a.印刷表面を有し、 (i) 第1の固体層と、 (ii) 高分子マトリクスからなるイメージング層と、 (iii) イメージング層の下側にある基体と、 (iv) イメージング層の融除に応じ、第1の固体層を溶解しない洗浄液に対して親和性を有する残屑を生成する材料とを含み、 (v) 前記残屑を生成する材料がイメージング層に存在し、 (vi) 第1の固体層と基体がインクに対して異なる親和性を有し、 (vii) イメージング層がイメージング放射線の吸収による融除を受ける材料から形成されているが第1の固体層はそうではなく、 (viii) イメージング層が親水性顔料と、イメージング放射線を吸収する手段からなる印刷部材を準備するステップと、
b.印刷表面をイメージング放射線に対して、イメージを表すパターンでもって選択的に暴露し、イメージング層を融除するステップと、及び
c.印刷部材が放射線を受容した個所で、第1の固体層とイメージング層の残部を前記洗浄液で除去するステップとからなる方法。 - イメージング放射線を吸収する手段がカーボンブラックである、請求項8の方法。
- 親水性顔料がシリカである、請求項8の方法。
- リソグラフ印刷部材であって、
a.第1の固体層と、
b.第1の固体層の下側にある第2の固体の絶縁層と、
c.高分子マトリクスからなるイメージング層と、
d.イメージング層の下側にある基体と、及び
e.イメージング層の融除に応じ、第1の固体層を溶解しない洗浄液に対して親和性を有する残屑を生成する材料とを含み、
f.第1の固体層と基体がインク及びインク忌避液体からなる群より選択される少なくとも1つの印刷液体に対して異なる親和性を有し、及び
g.イメージング層がイメージング放射線の吸収による融除を受ける材料から形成されているが第1の固体層はそうではなく、
h.前記第2の固体の絶縁層が前記残屑を生成する材料からなり、この絶縁層の熱劣化が前記残屑を生成することからなる印刷部材。 - 印刷部材の絶縁層がポリビニルアルコールである、請求項11の部材。
- 印刷部材の絶縁層がヒドロキシセルロースである、請求項11の部材。
- 印刷部材の絶縁層が、前記洗浄液と化学的に相溶性のある官能基を取り込んだアクリレート材料である、請求項11の部材。
- 印刷部材の絶縁層がTレジンである、請求項11の部材。
- 印刷部材の絶縁層がはしご形ポリマー、請求項11の部材。
- 絶縁層が親水性である、請求項11の部材。
- リソグラフ印刷部材であって、
a.第1の固体層と、
b.高分子マトリクスからなるイメージング層と、
c.イメージング層の下側にある基体と、及び
d.イメージング層の融除に応じ、第1の固体層を溶解しない洗浄液に対して親和性を有する残屑を生成する材料とを含み、
e.第1の固体層と基体がインク及びインク忌避液体からなる群より選択される少なくとも1つの印刷液体に対して異なる親和性を有し、及び
f.イメージング層がイメージング放射線の吸収による融除を受ける材料から形成されているが第1の固体層はそうではなく、
g.前記残屑を生成する材料がイメージング層に存在し、
h.イメージング層が親水性顔料と、イメージング放射線を吸収する手段からなる印刷部材。 - イメージング放射線を吸収する手段がカーボンブラックである、請求項18の部材。
- 親水性顔料がシリカである、請求項18の部材。
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