本発明の請求項1の密閉型圧縮機は、密閉容器内に、冷媒を圧縮する圧縮要素と前記圧縮要素を駆動する電動機とが収納され、前記圧縮要素はシリンダーと前記シリンダー内を往復動するピストンと前記シリンダーの端面に配設され前記シリンダー内に連通してサクションリードにより開閉される吸入孔を有するバルブプレートとを備え、前記電動機がインバータ装置により、2種類以上の運転周波数で回転数制御されるとともに、前記2種類以上の運転周波数の高速回転数側において冷凍能力の飽和が生じる特性を有するものであって、一端が前記吸入孔に実質的に直結し、他端が吸入流路を形成する空間内に開口する吸入パイプを備えることで前記冷凍能力の飽和が生じる回転数近傍で過給作用を発揮させて前記冷凍能力を上昇せしめたものである。
これにより、本発明の密閉型圧縮機は、回転数制御に加えて過給を行うことにより、外気温や負荷に応じた冷凍能力が得られ、消費電力量を少なくすることができる。
また、本発明の密閉型圧縮機は、冷媒ガスの脈動を小さくして密閉容器内の冷媒ガスを加振する力を小さくし、密閉容器内の冷媒ガスの共鳴周波数にかかわらず常に共鳴音が小さくなる。
さらに、本発明の密閉型圧縮機によれば、密閉容器内の冷媒ガスの共鳴周波数にかかわらず、常に圧力波が吸入流路の開口部で反射する時の圧力振幅の減衰を防ぎ、密閉容器形状や運転条件等のあらゆる変化にかかわらず常に吸入圧力を上昇させ、冷凍能力の向上効果を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
まず、本発明の密閉型圧縮機の一例である実施の形態1について説明する。
図1は本発明の実施の形態1による密閉型圧縮機の構成のうち、一般的な圧縮機の構成を説明するために示した密閉型圧縮機の平面断面図である。図2は同実施の形態1による密閉型圧縮機の構成のうち、一般的な圧縮機の構成を説明するために示した密閉型圧縮機の縦断面図である。図3は本発明の実施の形態1における密閉型圧縮機の平面断面図である。図4は同実施の形態1における密閉型圧縮機の概略構造と冷凍装置の制御ブロック図である。図5はインバータ装置を用いて同実施の形態1の密閉型圧縮機の回転数制御時の冷凍能力変化を示す特性図である。
図1及び図2において、密閉型圧縮機1は、下シェル3と上シェル4から構成された密閉容器2を有している。密閉容器2内の電動圧縮要素81は、上方部に圧縮要素300、下方部に電動機211が配置されるようにコイルばね8により密閉容器2に弾性支持されている。圧縮要素300は、ブロック9と一体に設けられたシリンダー10、図1の矢印w上を図1において左右方向に往復運動するピストン11、クランクシャフト12、コンロッド13(連接棒)等により構成されている。電動機211は、クランクシャフト12に焼ばめ固定(加熱後にはめ込み固着すること)されたローター、ステーター等により構成されている。ステーターはブロック9にねじ止め固定されている。潤滑油17は密閉容器2の下部に貯溜されている。
冷媒ガスをシリンダー10内に吸入する吸入流路としての吸入パイプ193は、その一端が圧縮要素300に吸入室25を介して取り付けられ、他端が開口端部193aとして密閉容器2内に配置されている。このため、吸入パイプ193はシリンダー10内と密閉容器2内とを連通させている。
次に、本発明の実施の形態1における密閉型圧縮機の特有の構成について説明する。
図3及び図4において、吸入パイプ193はその一端が密閉容器2内の空間に開口し、他端がバルブプレート150の吸入孔150aにほぼ直結された吸入流路としての吸入管である。図4に示すインバータ装置212は、電動機211を少なくとも2種類以上の特定周波数で運転する。
次に、上記のように構成された実施の形態1の密閉型圧縮機について、その動作を説明する。
一般に低外気温時では、冷凍冷蔵装置は大きな冷凍能力を必要としない。しかし、このような状況において、従来の密閉型圧縮機により必要以上の冷媒循環量が供給されると、吸入圧力の低下、吐出圧力の上昇が起こる。この結果、従来の密閉型圧縮機を含む冷凍システム全体の効率が低下し、結果的に総消費電力量が増加するという問題がある。
この問題を解決するために、低外気温時には、冷媒循環量を少なくすることにより、消費電力量は少なくすることができる。
実施の形態1の密閉型圧縮機は、吸入行程時に吸入孔150a付近で発生した圧力波は、冷媒ガスの流れと逆方向に伝播する。そして、圧力波は、密閉容器2内の空間で位相の反転した反射波となり、冷媒ガスの流れと順方向に伝播し、吸入孔150aに戻ってくる。
吸入行程の間にこの反射波を吸入孔150aへ到達させることにより、吸入完了時点で反射波の持つ圧力エネルギーが冷媒ガスに付加され、冷媒ガスの吸入圧力が上昇する。
そのため、実施の形態1の密閉型圧縮機は、シリンダー10内に、より密度の高い冷媒ガスが充填されることになる。このため、実施の形態1の密閉型圧縮機は、圧縮1行程当たりの吐出冷媒量が増加し、冷媒循環量が増加する。このような過給効果により、実施の形態1の密閉型圧縮機は、冷凍能力を大幅に向上させることができる。
次に、図5を用いて過給効果について具体例について説明する。図5はインバータ装置を用いて密閉型圧縮機を回転数制御したときの冷凍能力変化を示す特性図である。図5において、横軸は回転数(r/s)を示し、縦軸は冷凍能力相対値を示す。冷凍能力相対値は従来の密閉型圧縮機の回転数が60Hzのときを基準としている。図5において、実線は従来の密閉型圧縮機を回転数制御した場合である。破線(1)と破線(2)は実施の形態1における気筒容積の異なる密閉型圧縮機をそれぞれ回転数制御した場合である。なお、図5において1点鎖線は回転数の増加とともに冷凍能力も比例して増加する場合を示す。
回転数制御を行う従来の往復型の密閉型圧縮機を用いて、周波数60Hzの運転時に過給効果が得られるように構成した場合、冷凍能力変化は図5の破線(1)のように変化する。
図5の実線に示すように、従来の密閉型圧縮機では回転数が50Hzを越える高速回転数時において、回転数の増加に比例した冷凍能力がバルブ機構のサクションリードの追従性等の問題で得られず、冷凍能力が飽和し、更に低下するという特性を有していた。
しかし、実施の形態1の密閉型圧縮機によると、過給により高速側の回転数である60Hzの近傍で冷凍能力が従来の装置に比べて大幅に向上しており、同じ60Hz運転において約2割の能力上昇が見られた。図5の破線(1)に示すように、実施の形態1の密閉型圧縮機は回転数の増加に比例して冷凍能力が得られると想定した場合における70Hz運転のときと同等の冷凍能力を確保できた。
また、図5に示すように、60Hz運転時における従来の装置と同じ冷凍能力は、破線(2)で示す約2割小さい気筒容積の実施の形態1の密閉型圧縮機により得られた。
このように、実施の形態1の密閉型圧縮機によれば、冷凍能力の範囲を広くすることができ、外気温や負荷に応じた冷凍能力が得られるように構成できる。更に、図5の破線(2)で示すように、従来よりも小さい気筒容積の密閉型圧縮機により、従来のものとほぼ同等の冷凍能力が得られるように構成でき、密閉型圧縮機の小型化が達成できる。
これにより、実施の形態1の密閉型圧縮機によると、回転数制御に加えて過給を行うことにより、外気温や負荷に応じた冷凍能力が得られ、消費電力量を少なくすることができる。
以上のように、実施の形態1の密閉型圧縮機は、密閉容器2と、密閉容器2内に収納され圧縮要素300及び電動機211により構成される電動圧縮要素81と、圧縮要素300を構成するシリンダー10と、吸入孔150aを有するバルブプレート150と、一端が密閉容器1内あるいはアキュムレータ等の空間に開口し他端が吸入孔150aに実質的に直結する吸入パイプ193と、電動機211を運転するインバータ装置212とから構成されている。このため、実施の形態1の密閉型圧縮機は、外気温や負荷に応じた冷凍能力が得られ、消費電力量を少なくすることができる。
実施の形態1において、吸入流路として吸入パイプを用いて構成したが、吸入流路を有するブロック状のもので構成したものでも上記実施の形態1と同等の効果が得られる。
(実施の形態2)
次に、本発明の密閉型圧縮機の一例である実施の形態2について添付の図面を用いて説明する。
図6は本発明の実施の形態2による密閉型圧縮機の縦断面図を示す。図7は本発明の実施の形態2による密閉型圧縮機の吸入パイプの開口端部付近と吸入マフラーの断面図を示す。なお、実施の形態2の密閉型圧縮機において、前述の各実施の形態の密閉型圧縮機と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は省略する。
図6及び図7において、圧縮要素6のシリンダー10の端面に固着されたバルブプレート19には吸入孔19aが形成されており、この吸入孔19aには吸入流路としての吸入パイプ29の一端が直接接続されている。吸入パイプ29の他端には吸入マフラー28が設けられている。
次に、上記のように構成された実施の形態2の密閉型圧縮機について、その動作を説明する。
吸入行程時にサクションリード20が開くと同時に発生した圧力波は、バルブプレート19の吸入孔19aを通って冷媒ガスの流れと逆方向に伝播し、吸入マフラー28内の空間で位相の反転した反射波となる。この反射波は冷媒ガスの流れと順方向に伝波し、吸入孔19aに戻ってくる。
このとき、密閉容器2内の冷媒ガスが共鳴しているとしても、吸入パイプ29の開口端部29aが吸入マフラー28内にあるため、圧力波が吸入パイプ29の開口端部29aで反射する時に密閉容器2内の冷媒ガスの共鳴の影響を受けない。従って、実施の形態2の密閉型圧縮機は、圧力波が反射するときの圧力振幅の減衰を防ぐ。密閉容器2の形状や運転条件等の変化によって密閉容器2内の共鳴周波数がどのように変化しても、実施の形態2の密閉型圧縮機は、常に吸入圧力を上昇させ、冷凍能力の向上効果を得ることができる。
また、実施の形態2の密閉型圧縮機は、吸入マフラー28があるために、吸入される冷媒ガスの脈動が小さくなり、密閉容器2内の冷媒ガスを加振する力を小さくする。このため、実施の形態2の密閉型圧縮機は、密閉容器2内の冷媒ガスの共鳴周波数にかかわらず常に共鳴音を小さくする。
以上のように、実施の形態2の密閉型圧縮機は、吸入マフラー28と、一端が吸入マフラー28内に開口し他端が吸入孔19aに直結された吸入パイプ29とから構成されている。このため、実施の形態2の密閉型圧縮機は、吸入される冷媒ガスの脈動を小さくして密閉容器2内の冷媒ガスを加振する力を小さくし、密閉容器2内の冷媒ガスの共鳴周波数にかかわらず常に共鳴音を小さくすることができる。
また、実施の形態2の密閉型圧縮機は、密閉容器2内の冷媒ガスの共鳴周波数にかかわらず、常に圧力波が吸入パイプ29の開口部で反射する時の圧力振幅の減衰を防止する。このため、実施の形態2の密閉型圧縮機は、密閉容器2の形状や運転条件等のあらゆる変化にかかわらず、常に吸入圧力を上昇させ、冷凍能力の向上効果を得ることができる。
(実施の形態3)
次に、本発明の密閉型圧縮機の一例である実施の形態3について添付の図面を用いて説明する。
図8は本発明の実施の形態3の密閉型圧縮機の縦断面図である。図9は実施の形態3の密閉型圧縮機の縦断面図を示す。図10は実施の形態3の密閉型圧縮機における冷媒ガス挙動とクランクシャフトとの関係を示す説明図である。なお、実施の形態3の密閉型圧縮機において、前述の各実施の形態の密閉型圧縮機と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は省略する。
図8及び図9において、圧縮要素6のシリンダー10の端面に固着されたバルブプレート19には吸入孔19aが形成されており、この吸入孔19aには吸入流路としての吸入パイプ229の一端が直接接続されている。吸入パイプ229の他端は、開口端部229aとして密閉容器2内空間に配置されている。
図10において、冷媒ガスは、吸入行程の開始(図10の(a)の時点)では、クランクシャフト12が基準位置にあり、バルブプレート19の吸入孔19aは塞がれている。このため、冷媒ガスの流れは停止している。
次に、クランクシャフト12が回転して、ピストン11が右側に移動し、シリンダー10内の容積が急激に増加する。この結果、シリンダー10内の空間と密閉容器2内の空間とに圧力差が発生し、サクションリード20が開き始める(図10の(b)の時点)。このときのクランクシャフト12の回転位置(以後、クランク角度と称す)をθs(rad)とする。
サクションリード20が開き、冷媒ガスは吸入パイプ229内を右方向(シリンダー10の方向)へと流れ始める。このとき同時に、シリンダー10内の容積が急激に増加することに起因して、シリンダー10内において圧力波Waが発生する。シリンダー10内の圧力波Waは、開口である吸入孔19aを経て、冷媒ガスの流れと逆方向に吸入パイプ229内を密閉容器2内の空間に向かって伝播していく。
密閉容器2内の空間まで到達した圧力波Waは、冷媒ガスのよどみ状態の密閉容器2内の空間において反転した反射波Wbとなる。この反射波Wbは、吸入パイプ229内を冷媒ガスの流れと同一方向に伝播していく(図10の(c)の時点)。
そして、反射波Wbは、冷媒ガスの流れと順方向に伝播して、バルブプレート19の吸入孔19aに戻ってくる(図10の(d)の時点)。
図10の(a)に示す上死点のクランク角度を0(rad)としたとき、サクションリード20の開き始め(図10の(b))のクランク角度をθs(rad)とし、吸入パイプ229の長さをL(m)とし、クランクシャフト12の回転数をf(Hz)とし、吸入パイプ229内の吸入される冷媒ガス中の音速をAs(m/sec)とし、吸入開始時に吸入孔19aにおいて発生する圧力波が反射波となって吸入孔19aに戻るクランク角度をθr(rad)とすると、これらの関係は下記(式1)により表される。
θr=θs+4π×L×f/As ・・・・ (式1)
1.4(rad)≦θr≦3.0(rad) ・・・・ (式2)
このとき、圧力波の戻りクランク角度θrは(式2)の範囲に入るように吸入パイプ229の長さL等が調整されている。
次に、上記のように構成された実施の形態3の密閉型圧縮機について、その動作を説明する。
吸入行程時にサクションリード20が開くと同時に発生した圧力波Waは、冷媒ガスの流れと逆方向に伝播する。それはさらに、密閉容器2内の空間で位相の反転した反射波Wbとなり、冷媒ガスの流れと順方向に伝播し、吸入孔19aに戻ってくる。また、反射波Wbには幅があるので(式1)で示すクランク角度θrで反射波の波頭が吸入孔19aに戻る。また、それに遅れてクランク角度がさらに進んだ時に反射波Wbの波尾が吸入孔19aに戻り、幅を持った反射波Wbの戻りが完了する。
次に、反射波Wbが吸入孔19aに戻るときのクランク角度と冷凍能力の向上効果との関係を吸入パイプ229の長さを例にとって説明する。
吸入パイプ229の長さLが短いときは、(式1)からわかるように反射波Wbの戻りクランク角度θrは小さくなる、すなわち反射波Wbは吸入行程の早いタイミングで返ってくる。そのため、吸入行程が完了する前に幅を持った反射波Wbが全て吸入孔19aに戻り終ることが起こり得る。その場合には、反射波Wbの戻りが完了した後は吸入孔19aにおける圧力が下がることになり、吸入行程の途中であるにもかかわらず、サクションリード20が閉じたり、シリンダー10内から吸入パイプ229に冷媒ガスが逆流したりする。このため、シリンダー10内に吸入する冷媒ガスの密度を十分に高めることができず、冷凍能力の向上効果は小さくなってしまう。
また、逆に吸入パイプ229の長さLが長いときは、反射波Wbは吸入行程の遅いタイミングで返ってくる。あるいは吸入行程が終わった後で返ってくることになる。そのため、幅を持った反射波Wbが全て吸入孔19aに戻り終わる前に吸入行程が終わり、シリンダー10内に吸入する冷媒ガスの密度を十分に高めることができない。従って、冷凍能力の向上効果は小さくなってしまう。
このように、吸入パイプ229の長さは、短過ぎても長過ぎても冷凍能力の向上効果は小さくなる。冷凍能力の向上効果が最大限になる最適な吸入パイプ229の長さ、すなわち最適な反射波Wbの戻りクランク角度θrは存在する。しかし、反射波Wbには幅があるため、冷凍能力の向上効果がほぼ最大限に得られる反射波の戻りクランク角度も幅を有する。往復式の密閉型圧縮機の場合、反射波の戻りクランク角度θrは、(式2)の範囲において冷凍能力の向上効果がほぼ最大限に得られる。
例えば、冷媒がHFC−134aで、吸入される冷媒ガスの圧力が0.085(MPa)、その冷媒ガスの温度が80(℃)の場合、音速Asは176.3(m/s)となる。そして、クラクンシャフト12の回転数fを58.5(Hz)、サクションリード20の開き始めのクランク角度θsを0.96(rad)とすると、(式2)を満たすためには吸入パイプ229の長さLを0.10〜0.48(m)とすればよい。
このように、本発明の実施の形態3の密閉型圧縮機は反射波の戻りクランク角度が最適となるよう吸入パイプ229の長さ等が調整されているので、冷凍能力の向上効果が最大限に得られる。
以上のように、本実施の形態3の密閉型圧縮機では、サクションリード20の開き始めのクランク角度をθs(rad)とし、吸入パイプ229の長さをL(m)とし、クランクシャフト12の回転数をf(Hz)とし、吸入パイプ229内の吸入される冷媒ガス中の音速をAs(m/sec)として、吸入開始時に吸入孔19aにおいて発生する(式1)で示される圧力波の戻りクランク角度θr(rad)が(式2)の範囲になるように構成されている。
このため、本実施の形態3の密閉型圧縮機は、反射波Wbが吸入孔19aに戻ってくるクランク角度が最適となり、吸入圧力を上昇させ最大限の冷凍能力の向上効果を得ることができる。
なお、冷媒種類や吸入される冷媒ガスの圧力、温度が違い音速が違う場合、反射波Wbの戻りクランク角度が(式2)を満たされるように吸入パイプ229の長さを調整すれば、上記実施の形態3と同様の効果が得られる。また、クランクシャフト12の回転周波数、サクションリード20の開き始めのクランク角度が違う場合でも、反射波Wbの戻りクランク角度が(式2)を満たされるように吸入パイプ229の長さを調整すれば、上記実施の形態3と同様の効果が得られる。
(実施の形態4)
次に、本発明の密閉型圧縮機の一例である実施の形態4について添付の図面を用いて説明する。
図11は本発明の実施の形態4による密閉型圧縮機の縦断面図を示す。図12は本発明の実施の形態4の密閉型圧縮機の平面断面図を示す。なお、実施の形態4の密閉型圧縮機において、前述の各実施の形態の密閉型圧縮機と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は省略する。
図11及び図12において、圧縮要素6のシリンダー10の端面に固着されたバルブプレート19には吸入孔19aが形成されており、この吸入孔19aには吸入パイプ23の一端が直接接続されている。吸入パイプ23の他端は、開口端部23aとして密閉容器2内空間に配置されている。
図11、図12において、密閉容器2は、下シェル3と上シェル4から構成されている。図12における符号aは密閉容器2の内面のピストン11の往復方向に対して直角方向の最大距離であり、符号bは密閉容器2内面のピストン11の往復方向の最大距離である。図11における符号cは密閉容器2の内面から潤滑油17面までのクランクシャフト12の軸心方向の最大距離である。これらのa、b、cのそれぞれの長さに対応して、密閉容器2内の冷媒ガスはそれぞれの方向に固有の共鳴周波数を持つ。それらの共鳴周波数がクランクシャフト12の回転数の整数倍付近とならないように、実施の形態4の密閉型圧縮機においては各距離a、b、c等が調整されている。
次に、上記のように構成された実施の形態4の密閉型圧縮機について、その動作を説明する。
吸入行程時にサクションリード20が開くと同時に発生した圧力波は、冷媒ガスの流れと逆方向に伝播し、密閉容器2内の空間で位相の反転した反射板となり、冷媒ガスの流れと順方向に伝播し、吸入孔19aに戻ってくる。
もし密閉容器2内の冷媒ガスが共鳴すると騒音が大きくなるだけでなく、前記の圧力波が吸入パイプ23の開口端部23aで反射する時に、密閉容器2内の冷媒ガスの共鳴、すなわち定在波の影響を受け、ロスが生じる。そのために、反射波の圧力振幅が小さくなり、吸入圧力の上昇率が低下して、冷凍能力の向上効果が小さくなる。
密閉容器2内の冷媒ガスが共鳴するのは、密閉容器2内の共鳴周波数と密閉型圧縮機の運転周波数の整数倍、すなわち加振周波数とがほぼ一致する場合である。
一般に向かい合う壁の間に発生する共鳴について、2壁間の距離Lw、共鳴周波数fr、媒体の音速Acとの間には下記(式3)の関係がある。
Lw=Ac/(2fr) ・・・・・ (式3)
この(式3)の関係を密閉型圧縮機に適用すると、Lwは向かい合う密閉容器2の内面間の距離、frは向かい合う密閉容器2の内面間に発生し得る共鳴周波数、Acは密閉容器2内の冷媒の音速である。すなわち、密閉容器2の共鳴周波数が運転周波数の整数倍に近くならないように、密閉容器2の内面の前記各方向長さa、b、cを決めれば共鳴は起こらない。しかし、実際は密閉容器2内の圧縮要素6、電動機7等の影響により(式3)で計算したLwから多少ずれるので、音響実験あるいは数値解析の結果との比較から求めた補正係数をかける必要があり、発明者の行った音響実験及び数値解析から、補正値は0.977であることが分かっている。従って、この補正値を考慮した各方向長さa、b、cを決めれば共鳴は起こらない。このように実施の形態4の密閉型圧縮機は密閉容器2内の冷媒ガスが共鳴しないため、共鳴音の発生を防ぐと共に、圧力波が吸入パイプ23の開口端部23aで反射する時の圧力振幅の減衰を防ぎ、常に吸入圧力が上昇し、冷凍能力の向上効果が得られる。
以上のように、実施の形態4の密閉型圧縮機は、密閉容器2内の冷媒ガスの共鳴周波数がクランクシャフト12の回転数の整数倍付近とならないように構成されているので、密閉容器2内の冷媒ガスが共鳴しない。このため、実施の形態4の密閉型圧縮機は、共鳴音の発生を防ぐと共に、圧力波が吸入パイプ23の開口端部23aで反射する時の圧力振幅の減衰を防ぎ、常に吸入圧力が上昇し、冷凍能力の向上効果が得られる。
(実施の形態5)
次に、本発明の密閉型圧縮機の一例である実施の形態5について添付の図面を用いて説明する。
図13は本発明の実施の形態5による密閉型圧縮機の縦断面図を示す。図14は図13の密閉型圧縮機のB−B線における平面断面図を示す。なお、実施の形態5の密閉型圧縮機において、前述の各実施の形態の密閉型圧縮機と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は省略する。
図13及び図14において、圧縮要素6のシリンダー10の端面に固着されたバルブプレート19には吸入孔19aが形成されており、この吸入孔19aには吸入流路としての吸入パイプ200の一端が直接接続されている。吸入パイプ200の他端は、開口端部200aとして密閉容器2内空間に配置されている。
吸入パイプ200は少なくともその一部がテフロン(登録商標)あるいはPBT等の熱伝導率の低い材料で形成されている。
次に、上記のように構成された実施の形態5の密閉型圧縮機について、その動作を説明する。
シリンダー10内で発生した圧力波は、バルブプレート19の吸入孔19aを通って、冷媒ガスの流れと逆方向に伝播し、密閉容器2内の空間で位相の反転した反射波となる。この反射波は冷媒ガスの流れと順方向に伝播し、吸入孔16aに戻ってくる。
吸入行程の間に、この反射波が吸入孔19aに到達させることにより、吸入完了時点で反射波の持つ圧力エネルギーが付加され、冷媒ガスの吸入圧力が上昇する。
そのため、シリンダー10内には、より密度の高い冷媒ガスが充填されることになり、圧縮1行程当たりの吐出冷媒量が増加する。この結果、実施の形態5の密閉型圧縮機は冷媒循環量が増加して、冷凍能力の大幅な向上が図られている。
実施の形態5の密閉型圧縮機は吸入パイプ200の少なくとも一部がテフロン(登録商標)あるいはPBT等の熱伝導率の低い材料で形成されているので、密閉型圧縮機の起動後の時間経過に伴いシリンダーヘッド80等の温度が大きく上昇しても、熱が吸入パイプ200に伝導するのを防止し、吸入パイプ200の温度変化を小さくすることができる。このため、実施の形態5の密閉型圧縮機は吸入パイプ200内の冷媒ガス中の音速変化を小さくすることができる。このため、実施の形態5の密閉型圧縮機は、安定した圧力波を発生させて吸入圧力の高い上昇効果を得ることができるとともに、起動後の時間経過に影響されず安定した高い冷凍能力を得ることができる。
実施の形態5の密閉型圧縮機は温度の低い冷媒ガスをシリンダー10内へ供給でき、冷媒循環量を向上させることができる。
以上のように、実施の形態5の密閉型圧縮機においては、吸入パイプ200の一端が密閉容器2内の空間に開口し、他端がバルブプレート19の吸入孔19aに直結され、かつ少なくとも一部がテフロン(登録商標)あるいはPBT等の熱伝導率の低い材料で形成されている。
このため、密閉型圧縮機の起動後の時間経過に伴いシリンダーヘッド80等の温度が大きく上昇しても、熱が吸入パイプ200を伝導することが防止され、吸入パイプ200の温度変化を小さくする。これにより、吸入パイプ200内の冷媒ガス中の音速変化を小さくすることができる。
この結果、実施の形態5の密閉型圧縮機は、安定した圧力波を発生させて吸入圧力の上昇を得ることができ、起動後の時間経過に影響されず安定した高い冷凍能力を得ることができる。
実施の形態5の密閉型圧縮機は、温度の低い冷媒ガスをシリンダー10内へ供給でき、冷媒循環量を向上させることができる。
なお、実施の形態5において、熱伝導率の低い材料で形成された吸入パイプを用いた密閉型圧縮機を示した。しかし、シリンダー部付近だけなどの部分的に熱伝導率の低い材料を用いても、上記実施の形態5と同様の効果が得られる。
(実施の形態6)
次に、本発明の密閉型圧縮機の一例である実施の形態6について添付の図面を用いて説明する。
図15は本発明の実施の形態6による密閉型圧縮機の縦断面図を示す。図16は図15の密閉型圧縮機のC−C線における平面断面図を示す。図17は吸入圧力上昇比率変化を示す特性図である。図18は冷凍能力向上比率の変化を示す特性図である。図19は騒音変化率の変化を示す特性図である。なお、実施の形態6の密閉型圧縮機において、前述の各実施の形態の密閉型圧縮機と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は省略する。
図15及び図16において、圧縮要素6のシリンダー10の端面に固着されたバルブプレート19には吸入孔19aが形成されており、この吸入孔19aには吸入流路としての第1の吸入パイプ210の一端が直接接続されている。第1の吸入パイプ210の他端は、開口端部210aとして密閉容器2内空間に配置されており、第2の吸入パイプ190の開口端部190aの近傍に配置されている。
次に、上記のように構成された実施の形態6の密閉型圧縮機について、その動作を説明する。
シリンダー10内で発生した圧力波は、バルブプレート19の吸入孔19aを通り、冷媒ガスの流れと逆方向に伝播し、密閉容器2内の空間で位相の反転した反射波となる。この反射波は、冷媒ガスの流れと順方向に伝播し、吸入孔19aに戻ってくる。
吸入行程の間に、この反射波が吸入孔19aに到達することにより、吸入完了時点で反射波の持つ圧力エネルギーが冷媒ガスに付加され、冷媒ガスの吸入圧力が上昇する。
そのため、シリンダー10内には、より密度の高い冷媒ガスが充填されることになり、圧縮1行程当たりの吐出冷媒量が増加し、冷媒循環量が増加する。この結果、実施の形態10の密閉型圧縮機は冷凍能力が大幅に向上したものとなる。
実施の形態6の密閉型圧縮機においては、密閉容器2内の第2の吸入パイプ190の開口端部190aの近傍に第1の吸入パイプ210の開口端部210aが配置されている。このため、実施の形態6の密閉型圧縮機は、温度が低く、密度の高い冷媒ガスを第1の吸入パイプ210内に吸入することができ、冷媒ガス中の音速が遅くなる。このため、実施の形態6の密閉型圧縮機は、圧縮性の影響が大きくなり、大きな圧力波を発生させることができる。
これにより、実施の形態6の密閉型圧縮機は、吸入圧力上昇効果を増加させることができる。そして、実施の形態6の密閉型圧縮機は、温度の低い冷媒ガスをシリンダー10内に吸入させることにより、冷凍能力の向上効果を大幅に増加させ、効率が良く高い冷凍能力を得ることができる。
実施の形態6の密閉型圧縮機は、第2の吸入パイプ190の開口端部190aと第1の吸入パイプ210の開口端部210aの間の隙間により、圧力脈動が第2の吸入パイプ190から冷凍サイクルへ伝わるのが低減される。このため、実施の形態6の密閉型圧縮機は、騒音を大幅に低減できる。
第1の吸入パイプ210の開口端部210aと第2の吸入パイプ190の開口端部190aとの間の距離(開口端部間距離)は、吸入圧力の上昇効果を大きく、冷凍能力の向上効果を大きく、そして騒音の低減効果を大きくするために、発明者の実験によれば3mmから50mmの間が好ましいことが明らかとなった。
この結果を図17、図18及び図19に示す。図17は縦軸に吸入圧力上昇比率(%)を示し、横軸に第2の吸入パイプ190の開口端部190aと第1の吸入パイプ210の開口端部210aとの間の隙間である開口端部間距離(mm)を示したグラフである。図17における吸入圧力上昇比率とは、シリンダー10内で発生した圧力波の圧力に対する、密閉容器2内の空間において圧力波が反射した反射波の圧力の比率を示す。
図18は縦軸に冷凍能力向上比率(%)を示し、横軸に開口端部間距離(mm)を示したグラフである。図18における冷凍能力向上比率とは、最大冷凍能力に対する測定された冷凍能力の比率である。
図19は縦軸に騒音変化率(%)をとり、横軸に開口端部間距離(mm)をとって示したものである。図19における騒音変化率とは、開口部間距離が0mmのときを100%としたときの騒音の圧力変化を示す。
以上のように、実施の形態6の密閉型圧縮機は、第1の吸入パイプ210の一端がバルブプレート19の吸入孔19aに直結されており、他端が密閉容器2内の第2の吸入パイプ190の開口端部190aの近傍に配置されている。このため、実施の形態6の密閉型圧縮機は、温度が低く、密度の高い冷媒ガスを第1の吸入パイプ210内に吸入することができるため、冷媒ガス中の音速を遅くすることができる。このために、実施の形態6の密閉型圧縮機は、圧縮性の影響が大きくなり、大きな圧力波を発生させることができる。このため、実施の形態6の密閉型圧縮機は、吸入圧力の上昇効果を増加させると共に、温度の低い冷媒ガスをシリンダー10内に吸入させることで、冷凍能力の向上効果を大幅に増加させ、高い冷凍能力を得ることができる。
実施の形態6の密閉型圧縮機は、第2の吸入パイプ190の開口端部190aと第1の吸入パイプ210の開口端部210aの間に隙間を形成することにより、圧力脈動が第2の吸入パイプ190から冷凍サイクルへ伝わるのを低減することができる。このため、実施の形態6の密閉型圧縮機は、騒音を大幅に低減することができる。
なお、吸入流路としての第1の吸入パイプ210の開口端部210aを広くして、第2の吸入パイプ190の開口端部190aと相対向させることにより、冷媒ガスが流れやすくなり、冷凍能力の向上が図られることは言うまでもない。
(実施の形態7)
次に、本発明の密閉型圧縮機の一例である実施の形態7について添付の図を用いて説明する。
図20は本発明の実施の形態7による密閉型圧縮機の縦断面図を示す。図21は図20の密閉型圧縮機のD−D線における平面断面図を示す。図22は実施の形態7における第1の吸入パイプの開口端部の縦断面図を示す。図23は実施の形態7の第1の吸入パイプの開口端部の開口面を示す図である。
なお、実施の形態7の密閉型圧縮機において、前述の各実施の形態の密閉型圧縮機と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は省略する。
図20及び図21において、圧縮要素6のシリンダー10の端面に固着されたバルブプレート19には吸入孔19aが形成されており、この吸入孔19aには吸入流路としての第1の吸入パイプ220の一端が直接接続されている。第1の吸入パイプ220の他端は、開口端部220aとして密閉容器2内空間に配置されている。第2の吸入パイプ190はその開口端部190aが密閉容器2の内部空間に配置されている。
図21及び図22に示すように、第1の吸入パイプ220は、一端がバルブプレート19の吸入孔19aに直結され、他端が密閉容器2内の空間に開口する複数の開口端部220a、220bを持ち、かつ吸入孔19aから複数の開口端部220a、220bまでの長さが異なっている。
次に、上記のように構成された実施の形態7の密閉型圧縮機について、その動作を説明する。
シリンダー10内で発生した圧力波は、バルブプレート19の吸入孔19aを通り、冷媒ガスの流れと逆方向に伝播し、密閉容器2内の空間で位相の反転した反射波となる。この反射波は冷媒ガスの流れと順方向に伝播し、吸入孔19aに到達する。
吸入行程の間に、この反射波が吸入孔19aに到達することにより、吸入完了時点で反射波の持つ圧力エネルギーが冷媒ガスに付加され、吸入圧力が上昇する。
そのため、シリンダー10内には、より密度の高い冷媒ガスが充填されることになり、圧縮1行程当たりの吐出冷媒量が増加し、冷媒循環量が増加する。この結果、実施の形態7の密閉型圧縮機によれば、冷凍能力を大幅に向上させることができる。
このとき、吸入孔19aにおいて発生した圧力波は、吸入孔19aから開口端までの長さが異なる複数の開口端部220a、220bで次々反射し、吸入孔19aに到達して、シリンダー10内に供給される。
このことにより、実施の形態7の密閉型圧縮機は、吸入孔19aに反射波の到達するタイミングを広くとることができる。
従って、実施の形態7の密閉型圧縮機においては、運転条件の変化等により、冷媒ガス中の音速が変化し、1つの反射波の到達するタイミングがずれても、次々に他の反射波が吸入孔19aに到達する。このため、実施の形態7の密閉型圧縮機は、常にシリンダー10内に高い圧力の冷媒ガスを供給できる。
これにより、実施の形態7の密閉型圧縮機は、運転条件変化によらず常に吸入圧力を上昇させ安定した高い冷凍能力を得ることができる。
以上のように、実施の形態7の密閉型圧縮機は、第1の吸入パイプ220の一端がバルブプレート19の吸入孔19aに直結されており、他端が密閉容器2内の空間に開口し、かつ吸入孔19aから開口端までの長さが異なる複数の開口端部220a、220bを有している。このため、吸入孔19aにおいて発生した圧力波は、吸入孔19aから開口端までの長さが異なる複数の開口端部220a、220bで次々反射する。
この結果、実施の形態7の密閉型圧縮機は、吸入孔19aに反射波の戻るタイミングを広くとることができる。従って、実施の形態7の密閉型圧縮機においては、運転条件変化等により、冷媒ガス中の音速が変化し、1つの反射波の吸入孔19aに到達するタイミングがずれても、次々に他の反射波が吸入孔19aに到達する。このため、シリンダー10内には常に高い圧力の冷媒ガスが供給される。これにより、実施の形態7の密閉型圧縮機によれば、運転条件変化によらず常に吸入圧力を上昇させ安定した高い冷凍能力を得ることができる。
なお、実施の形態7においては、吸入流路として長さの異なる複数の開口端部220a,220bを有する吸入パイプ220を用いたが、長さの異なる複数本の吸入パイプとしても上記実施の形態7と同様の効果を得られる。
(実施の形態8)
次に、本発明の密閉型圧縮機の一例である実施の形態8について添付の図面を用いて説明する。
図24は本発明の実施の形態8による密閉型圧縮機を示す縦断面図である。図25は図24の密閉型圧縮機のB−B線における正面断面図である。図26は実施の形態8による別の吸入流路形状を有する密閉型圧縮機を示す縦断面図である。図27は図26の密閉型圧縮機のC−C線における正面断面図である。
なお、実施の形態8の密閉型圧縮機において、前述の各実施の形態の密閉型圧縮機と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は省略する。
図24及び図25において、圧縮要素6のシリンダー10の端面に固着されたバルブプレート191には吸入孔191aが形成されており、この吸入孔191aは吸入パイプ201(吸入流路)の一端に直接接続されている。吸入パイプ201の他端は、開口端部201aとして密閉容器2内空間の所定の位置に配置されている。吸入パイプ201(吸入流路)は、ほぼ均一な曲率の曲げ部201bを有している。
次に、上記のように構成された実施の形態8の密閉型圧縮機について、その動作を説明する。
吸入行程時にバルブプレート191の吸入孔191a付近で発生した圧力波は、冷媒ガスの流れと逆方向に伝播し、密閉容器2内の空間で位相の反転した反射波となり、冷媒ガスの流れと順方向に伝播し、吸入孔191aに戻ってくる。
吸入行程の間に、この反射波が吸入孔191aに到達させることにより、吸入完了時点での反射波の持つ圧力エネルギーが冷媒ガスに付加され、冷媒ガスの吸入圧力が上昇する。
そのため、実施の形態8の密閉型圧縮機においては、シリンダー10内に、より密度の高い冷媒ガスが充填されることになり、圧縮1行程当たりの吐出冷媒量が増加し、冷媒循環量が増加して、冷凍能力を向上させることができる。
また、実施の形態8の密閉型圧縮機は、吸入パイプ201の各曲げ部201bの曲率をほぼ均一にすることで、曲げ部201bにおける圧力波の振幅の減少を抑制し、圧力の高い反射波をシリンダー10内に戻すことができ、より高い冷凍能力の向上を図ることができる。
また、実施の形態8の密閉型圧縮機は、吸入パイプ201をコンパクトに形成でき、密閉容器2の小型化を達成できる。
以上のように、実施の形態8の密閉型圧縮機は、吸入孔191aを有しシリンダー10の端面に配設されたバルブプレート191と、一端が密閉容器2内の空間に開口し、他端がバルブプレート191の吸入孔191aにほぼ直結され、かつほぼ均一な曲率の曲げ部201bを有する吸入パイプ201とを具備している。このため、実施の形態8の密閉型圧縮機は、圧力波や反射波の圧力振幅の減衰を低減することができる。そのため、実施の形態8の密閉型圧縮機は、吸入圧力を上昇させ、高い冷凍能力を得ることができる。
実施の形態8の密閉型圧縮機においては、吸入流路である吸入パイプを図26及び図27に示すような、らせん状の吸入パイプ212に形成することにより、曲げ部212bの曲率を大きくとることができる。このため、実施の形態8の密閉型圧縮機は、吸入パイプ212内の圧力の減衰をさらに低減できる。
なお、実施の形態8において、吸入パイプ201、212がバルブプレート191の吸入孔191aにほぼ直結する構成とした。しかし、吸入パイプ201、212とバルブプレート191の吸入孔191aとを断面積が実質的に等しい流路空間を介して連結しても上記実施の形態8と同等の効果が得られる。
実施の形態8の密閉型圧縮機において、吸入流路を管状の吸入パイプ201、212により構成した。しかし、吸入パイプに代えて、例えば吸入流路を有するブロック状のものにより吸入流路を構成しても上記実施の形態8と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態9)
次に、本発明の密閉型圧縮機の一例である実施の形態9について添付の図を用いて説明する。
図28は本発明の実施の形態9による密閉型圧縮機を示す縦断面図である。図29は図28の密閉型圧縮機のD−D線における正面断面図である。
なお、実施の形態9の密閉型圧縮機において、前述の各実施の形態の密閉型圧縮機と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は省略する。
図28及び図29において、圧縮要素6のシリンダー10の端面に固着されたバルブプレート192には吸入孔192aが形成されており、この吸入孔192aは吸入パイプ221(吸入流路)の一端に直接接続されている。吸入パイプ221の他端は、開口端部221aとして密閉容器2内空間の所定の位置に配置されている。図29に示すように、吸入パイプ221(吸入流路)は、吸入流路間が近接するように複数回曲げられている。
次に、上記のように構成された実施の形態9の密閉型圧縮機について、その動作を説明する。
吸入行程時にバルブプレート192の吸入孔192a付近で発生した圧力波は、冷媒ガスの流れと逆方向に伝播し、密閉容器2内の空間で位相の反転した反射波となり、冷媒ガスの流れと順方向に伝播し、吸入孔192aに戻ってくる。
吸入行程の間に、この反射波が吸入孔192aに到達させることにより、吸入完了時点での反射波の持つ圧力エネルギーが冷媒ガスに付加され、冷媒ガスの吸入圧力が上昇する。
そのため、実施の形態8の密閉型圧縮機においては、シリンダー10内に、より密度の高い冷媒ガスが充填されることになり、圧縮1行程当たりの吐出冷媒量が増加し、冷媒循環量が増加して、冷凍能力を向上させることができる。
実施の形態9の密閉型圧縮機においては、吸入パイプ221を複数回曲げ、内部に低温の吸入ガスが流れる吸入パイプ221を近接させて配置している。このため、実施の形態9の密閉型圧縮機は、密閉容器2内の圧縮発熱、電動機の発熱、摺動発熱等の影響で高温となっている密閉容器2内の冷媒ガスの影響を少なくすることができる。
これにより、実施の形態9の密閉型圧縮機は、密閉容器2内の高温の冷媒ガスの熱が吸入パイプ221に伝わることが抑制され、吸入パイプ221内の吸入ガスの温度の上昇を低減させることができる。この結果、実施の形態9の密閉型圧縮機は、吸入ガスの密度を高め、冷媒循環量を増加させることができる。
実施の形態9の密閉型圧縮機は、吸入される冷媒ガスの温度(吸入ガス温度)が低く、密度の高い冷媒ガスが吸入パイプ221内に吸入される。これにより、吸入ガスの音速が遅くなるため、冷媒ガスの圧縮性の効果が大きくなり、大きな圧力波が発生し、高い冷凍能力を得ることができる。
また、実施の形態9の密閉型圧縮機は、吸入パイプ221をコンパクトに形成でき、密閉容器を小型化できる。
以上のように、実施の形態9の密閉型圧縮機は、吸入孔191aを有しシリンダー10の端面に配設されたバルブプレート191と、一端が密閉容器2内の空間に開口し、他端がバルブプレート191の吸入孔191aにほぼ直結され、かつ吸入流路間が近接するように複数回曲げられた吸入パイプ221とを備えたものである。このため、実施の形態9の密閉型圧縮機は、吸入パイプ221が密閉容器1内の高温の冷媒ガスから受ける熱量を小さくし、吸入パイプ221の温度上昇を低減し、吸入パイプ221内の吸入ガス温度の上昇を低減させている。この結果、実施の形態9の密閉型圧縮機は、大きな冷媒循環量を得ることができる。
それと共に、実施の形態9の密閉型圧縮機は、吸入ガス温度が低く、密度の高い冷媒ガスを吸入パイプ221内に吸入することにより、吸入される冷媒ガス中の音速が遅くなる。このため、実施の形態9の密閉型圧縮機は、冷媒ガスの圧縮性の影響が大きくなり、大きな圧力波が発生し、高い冷凍能力の向上効果を得ることができる。
なお、実施の形態9において、吸入パイプ221を複数回曲げて吸入流路間を近接させ、吸入パイプ221が高温の密閉容器内の冷媒ガスから受ける熱量を減らす構成としたが、例えば近接した吸入流路を有するブロック状のものでも上記実施の形態9の密閉型圧縮機と同様の効果が得られる。
実施の形態9において、吸入パイプ221どうしを近接させる構成とした。しかし、吸入パイプ221どうしを密着させることにより、吸入パイプ221と高温の密閉容器内の冷媒ガスとの熱交換面積を減少させてもよい。このように構成することにより、本発明の密閉型圧縮機は、吸入パイプ221の受熱量が低減でき、さらに、高い冷凍能力の向上効果を得ることができる。
実施の形態9において、吸入パイプ221をバルブプレート191の吸入孔191aにほぼ直結させる構成とした。しかし、吸入パイプ221とバルブプレート191の吸入孔191aとを断面積が実質的に等しい流路空間を介して連結してもほぼ同等の効果が得られる。
(実施の形態10)
次に、本発明の密閉型圧縮機の一例である実施の形態10について添付の図面を用いて説明する。
図30は本発明の実施の形態10による密閉型圧縮機の平面断面図である。図31は図30のB−B線における正面断面図である。図32は実施の形態10の密閉型圧縮機の吸入流路付近を示す断面図である。
なお、実施の形態10の密閉型圧縮機において、前述の各実施の形態の密閉型圧縮機と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は省略する。
図30、図31及び図32において、吸入ブロック227に形成された吸入流路222は一端が開口端部として密閉容器2内の空間に配置され、他端がバルブプレート192の吸入孔192aに実質的に直結されている。図32に示すように、吸入流路222とともに吸入ブロック227内に形成されている共鳴型マフラー232は、空胴部242と結合部252とを有している。共鳴型マフラー232の結合部252は、その一端が空胴部242に開口し、他端が吸入流路222に開口している。共鳴型マフラー232の共振周波数は、吸入される冷媒ガスの脈動等により吸入孔192a付近で発生する騒音のうち最も問題となる騒音の周波数と一致するように、空胴部242の容積、結合部252の長さ、結合部252の断面積等が調整されている。
次に、上記のように構成された実施の形態10の密閉型圧縮機について、その動作を説明する。
冷媒ガスがシリンダー10内に吸入されると、冷媒ガスの脈動やサクションリードの動作により吸入孔192a付近で騒音が発生する。この発生した騒音は吸入流路222を伝達する際、吸入流路222に設けられた共鳴型マフラー232によって減衰される。そのため、吸入流路222から密閉容器2内の空間に伝達する騒音は小さくなり、密閉型圧縮機から生じる騒音を小さくすることができる。
次に、実施の形態10おける共鳴型マフラー232が冷凍能力を向上させる効果、すなわち過給効果に与える影響について説明する。
前述の背景技術において説明した従来の密閉型圧縮機において、吸入流路からの騒音で最も問題となる周波数は通常400Hzから600Hz程度である。それに対し、吸入行程時に発生して過給効果を与える圧力波の周波数はかなり小さい。また、共鳴型のマフラーは、一般に共振周波数付近の狭い周波数帯域だけの消音効果が大きいという特徴がある。
従って、上記実施の形態10において、吸入行程時に発生した圧力波(膨張波)が反射波(圧縮波)となり、吸入孔192aに戻ってくる過程において、共鳴型マフラー232は問題となる騒音だけを減衰させて、過給効果を与える圧力波に対してはほとんど影響を与えないため、大きな冷凍能力は共鳴型マフラー232が設置されていないものと同じように得られる。
このように、過給効果を与える仕様の密閉型圧縮機においては、吸入流路222に共鳴型マフラー232を設ける構成は非常に有効であり、過給効果と騒音低減を両立することができる。
以上のように、本実施の形態10の密閉型圧縮機は、一端が密閉容器2内の空間に開口し、他端が吸入孔192aにほぼ直結する吸入流路222と、吸入流路222に設けられた共鳴型マフラー232とから構成されている。このため、大きな冷凍能力は従来通り得られ、さらに吸入された冷媒ガスの脈動に伴い発生する騒音は吸入流路222に設けた共鳴型マフラー232により減衰され、吸入流路222から密閉容器2内に伝達する騒音は小さくなる。
このため、実施の形態10の密閉型圧縮機は、最終的に密閉容器外に伝達する騒音を小さくすることができる。
なお、実施の形態10において、共鳴型マフラー232は空胴部242と結合部252とを有する構成にしたが、空胴部が吸入流路222に直接接続した形状のもの、いわゆるサイドブランチ形や、その他の形状であっても共鳴型マフラー形状であれば、上記実施の形態10と同様の効果が得られる。
(実施の形態11)
次に、本発明の密閉型圧縮機の一例である実施の形態11について添付の図面を用いて説明する。
図33は本発明の実施の形態11による密閉型圧縮機のシリンダー付近を示す断面図である。
なお、実施の形態11の密閉型圧縮機において、前述の各実施の形態の密閉型圧縮機と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は省略する。
図33において、吸入孔273を有するバルブプレート263はシリンダー10の端面に固着されている。吸入流路283はその一端が開口端部として密閉容器2内の空間に配置されている、他端が前記吸入孔273に実質的に直結している。
バルブプレート263にはサクションリード293が取り付けられており、吸入孔273の開閉を行っている。
図33に示すように、吸入孔273に対する吸入流路283の接続部分における流路の軸方向は、バルブプレート263の端面に対して直角とならないように傾斜して構成されている。
次に、上記のように構成された実施の形態11の密閉型圧縮機について、その動作を説明する。
まず、背景技術において説明した図40に示した従来の密閉型圧縮機の場合について説明する。図40において、吸入行程時に発生した圧力波(膨張波)は、密閉容器2内の空間で位相の反転した反射波Wb(圧縮波)となり、吸入孔19aに戻ってくる。しかし、図40に示すように、反射波Wbの進む方向に対してサクションリード20の開閉面は垂直に近い角度であるため、反射波Wbの多くはサクションリード20においてほぼ反対の方向に反射される。このため、従来の密閉型圧縮機においては、シリンダー10内に反射波Wbの圧力エネルギーが有効に働かず、過給効果が十分に得られないという問題があった。
それに対し、図33に示す本発明の実施の形態11の密閉型圧縮機は、吸入流路273がバルブプレート263の端面に対して垂直ではなく傾斜して接続している。このため、図33に示すように、反射波Wcはサクションリード293において反射されることなく直接シリンダー10内に入る。また、反射波Wdは、サクションリード293に反射される場合でも、反射波Wdの進む方向とサクションリード293の開閉面との角度が小さいため、図33に示すように、反射後の反射波Wdの進む向きは大きく変わらず、シリンダー10内に入りやすくなる。
以上のように、実施の形態11の密閉型圧縮機においては、反射波がサクションリード293によって妨害されにくい構成であるため、シリンダー10内に反射波の圧力エネルギーが有効に入るようになり、実施の形態11の密閉型圧縮機は大きな冷凍能力を有する。
吸入される冷媒ガスの進む方向とサクションリード293の開閉面とのなす角度は小さいため、サクションリード293による冷媒ガスの流れの抵抗も小さくなり、圧力損失が減少する。このため、さらに実施の形態11の密閉型圧縮機は優れた冷凍効率を有し、高い冷凍能力を有する。
以上のように、実施の形態11の密閉型圧縮機は、吸入孔273への吸入流路283の接続部分の流路の軸方向がバルブプレート263の端面に対して垂直とならないように傾斜して構成されている。このため、実施の形態11の密閉型圧縮機は、反射波がシリンダー10内に戻るとき、反射波はサクションリード293に反射されずに直接シリンダー10内に入りやすい構成である。また、反射波がサクションリード293に反射される場合でも、反射波の進む方向とサクションリード293の開閉面とのなす角度は小さくなる。このため、反射後の反射波の進む向きは大きく変わらず、反射波はシリンダー10内に入りやすくなる。すなわち、反射波はサクションリード293によって妨害されにくくなり、シリンダー10内に反射波の圧力エネルギーが有効に入るようになる。このため、実施の形態11の密閉型圧縮機は優れた冷凍効率を有し、高い冷凍能力を有する。
サクションリード293による吸入された冷媒ガスの流れの抵抗が小さく、圧力損失が小さい。このため、実施の形態11の密閉型圧縮機はさらに高い冷凍能力を有する。
(実施の形態12)
次に、本発明の密閉型圧縮機の一例である実施の形態12について添付の図面を用いて説明する。
図34は本発明の実施の形態12による密閉型圧縮機の低外気温時の停止時におけるシリンダー付近を示す断面図である。図35は本発明の実施の形態12による密閉型圧縮機の高外気温時の停止時におけるシリンダー付近を示す断面図である。
なお、実施の形態12の密閉型圧縮機において、前述の各実施の形態の密閉型圧縮機と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は省略する。
図34及び図35において、シリンダー10の端面とバルブプレート194との間にサクションリード304が設けられている。このサクションリード304はバルブプレート194の吸入孔194aの開閉を行うよう構成されている。サクションリード304にはサクションリード304の初期たわみ量を制御するたわみ制御機構314が取り付けられている。実施の形態12において、たわみ制御機構314は、サクションリード304より線膨張係数の小さい材料により形成されており、サクションリード304のピストン側に固定されている。
次に、上記のように構成された実施の形態12の密閉型圧縮機について、その動作を説明する。
一般に低外気温時では、冷凍冷蔵装置は大きな冷凍能力を必要としない。しかし、このような状況において従来の密閉型圧縮機により必要以上の冷媒循環量が供給されると、吸入圧力の低下、吐出圧力の上昇が起こる。この結果、従来の密閉型圧縮機を含む冷凍システム全体の効率が低下し、結果的に総消費電力量が増加するという問題がある。
この問題を解決するために、低外気温時には、冷媒循環量を少なくすることにより、消費電力量は少なくすることができる。
実施の形態12の密閉型圧縮機は、低外気温時には各部温度も全体に低くなり、サクションリード304とたわみ制御機構314の温度も低くなっている。その場合、停止時におけるサクションリード304は、図34に示すように、吸入孔194aを閉じる状態、すなわちサクションリード304の初期たわみが0の状態となっている。この状態においては、吸入孔194aが開いてから閉じるまでの時間は、初期たわみがある場合に比べて短くなるとともに、サクションリード304の変位量も小さくなる。そのため、吸入行程時に発生した圧力波が反射波となって吸入孔194aに戻ってきたとき、シリンダー10内に吸入される冷媒ガスの量はやや少なくなり、過給による冷媒循環量の向上効果は小さくなる。従って、実施の形態12の密閉型圧縮機は、低外気温時においては消費電力量を小さく抑えることができる。
高外気温時ではサクションリード304とたわみ制御機構314の温度も高くなり、サクションリード304よりたわみ制御機構314の方が線膨張係数が小さいため、温度上昇による材料の膨張率に差が生じてバイメタルの様に働く。その結果、停止時におけるサクションリード304は、図35に示すように、吸入孔194aを開ける状態、すなわちサクションリード304の初期たわみがある状態となっている。この状態においては、吸入孔194aが開いてから閉じるまでの時間は、初期たわみが0の場合に比べて長くなるとともに、サクションリード304の変位量も大きくなる。そのため、吸入行程時に発生した圧力波が反射波となって吸入孔194aに戻ってきたとき、シリンダー10内に吸入される冷媒ガスの量は多くなり、過給による冷媒循環量の向上効果は十分に得られる。従って、実施の形態12の密閉型圧縮機は、大きな冷凍能力が必要となる高外気温時に、過給効果による十分な冷凍能力の向上効果が得られる。
以上のように、実施の形態12の密閉型圧縮機は、サクションリード304の初期たわみ量を制御するたわみ制御機構314がサクションリード304より線膨張係数の小さい材料により形成され、サクションリード304のピストン側に固定されている。このため、実施の形態12の密閉型圧縮機は、大きな冷凍能力を必要としない低外気温時には冷凍能力の向上効果が小さくなって消費電力量を小さく抑え、一方大きな冷凍能力を必要とする高外気温時には十分な冷凍能力向上効果が得られるように構成している。このため、実施の形態12の密閉型圧縮機においては、冷凍能力制御をすることにより総消費電力量を小さくすることができる。
なお、実施の形態12において、たわみ制御機構314はサクションリード304より線膨張係数の小さい材料により形成し、サクションリード304のピストン側に固定するように構成した。しかし、たわみ制御機構314はサクションリード304より線膨張係数の大きい材料で、サクションリード304の反ピストン側に固定しても、上記実施の形態12と同様の効果が得られる。
(実施の形態13)
次に、本発明の密閉型圧縮機の一例である実施の形態13について添付の図面を用いて説明する。
図36は本発明の実施の形態13による密閉型圧縮機の低外気温時の停止時におけるシリンダー付近を示す断面図である。図37は本発明の実施の形態13による密閉型圧縮機の高外気温時の停止時におけるシリンダー付近を示す断面図である。
なお、実施の形態13の密閉型圧縮機において、前述の各実施の形態の密閉型圧縮機と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は省略する。
図36及び図37において、シリンダー10の端面とバルブプレート195との間にサクションリード325が設けられている。サクションリード325はバルブプレート195の吸入孔195aの開閉を行うよう構成されている。実施の形態13にはサクションリード325の初期たわみ量を制御するたわみ制御機構345が取り付けられている。たわみ制御機構345はバイメタルあるいは形状記憶合金等の温度によって変形する材料により構成されており、バルブプレート195に形成された貫通孔195b内に配置されている。たわみ制御機構345は貫通孔195b内において伸縮自在に備え付けられている。
次に、上記のように構成された実施の形態13の密閉型圧縮機について、その動作を説明する。
一般に低外気温時では、冷凍冷蔵装置は大きな冷凍能力を必要としない。しかし、このような状況において従来の密閉型圧縮機により必要以上の冷媒循環量が供給されると、吸入圧力の低下、吐出圧力の上昇が起こる。その結果、従来の密閉型圧縮機を含む冷凍システム全体の効率が低下し、結果的に総消費電力量が増加するという問題がある。
この問題を解決するために、低外気温時には、冷媒循環量を少なくすることにより、消費電力量は少なくすることができる。
実施の形態13の密閉型圧縮機は、低外気温時には各部温度も全体に低くなり、たわみ制御機構345の温度も低くなっている。その場合、たわみ制御機構345はサクションリード325を押し上げることがなく、停止時におけるサクションリード325は、図36に示すように、吸入孔195aを閉じる状態、すなわちサクションリード325の初期たわみが0の状態となっている。この状態においては、吸入孔195aが開いてから閉じるまでの時間は、初期たわみがある場合に比べて短くなる。そのため、吸入行程時に発生した圧力波が反射波となって吸入孔195aに戻ってきたとき、シリンダー10内に吸入される冷媒ガスの量はやや少なくなり、過給による冷媒循環量の向上効果は小さくなる。従って、実施の形態13の密閉型圧縮機は、低外気温時においては消費電力量を小さく抑えることができる。
一方、高外気温時ではたわみ制御機構345の温度も高くなり、たわみ制御機構345は伸びて、サクションリード325を押し上げる。このため、停止時におけるサクションリード325は、図37に示すように、吸入孔195aを開ける状態、すなわちサクションリード325の初期たわみがある状態となっている。この状態における吸入孔195aが開いてから閉じるまでの時間は、初期たわみが0の場合に比べて長くなる。そのため、吸入行程時に発生した圧力波が反射波となって吸入孔195aに戻ってきたとき、シリンダー10内に吸入される冷媒ガスの量は多くなり、過給による冷媒循環量の向上効果は十分に得られる。
従って、実施の形態13の密閉型圧縮機は、大きな冷凍能力が必要となる高外気温時には、過給効果による十分な冷凍能力の向上効果が得られる。
以上のように、実施の形態13の密閉型圧縮機は、サクションリード325の初期たわみ量を制御するたわみ制御機構345がバイメタルあるいは形状記憶合金等の温度によって変形する材料により構成されており、バルブプレート195内に伸縮自在に備え付けられた構成となっている。このため、実施の形態13の密閉型圧縮機では、大きな冷凍能力を必要としない低外気温時には冷凍能力の向上効果が小さくなって消費電力量を小さく抑え、大きな冷凍能力を必要とする高外気温時には十分な冷凍能力向上効果が得られる。従って、実施の形態13の密閉型圧縮機は、冷凍能力制御をすることにより、総消費電力量を小さくすることができる。
(実施の形態14)
次に、本発明の密閉型圧縮機の一例である実施の形態14について添付の図面を用いて説明する。
図38は本発明の実施の形態14による密閉型圧縮機を示す縦断面図である。図39は図38の密閉型圧縮機のE−E線における正面断面図である。
なお、実施の形態14の密閉型圧縮機において、前述の各実施の形態の密閉型圧縮機と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付して、その説明は省略する。
図38及び図39において、圧縮要素6のシリンダー10の端面に固着されたバルブプレート193には吸入孔193aが形成されており、この吸入孔193aは第1の吸入パイプ231(吸入流路)の一端に直接接続されている。第1の吸入パイプ231の他端は、開口端部231aとして密閉容器2内空間の所定の位置に配置されている。図39に示すように、第1の吸入パイプ231(吸入流路)は、吸入流路間が近接するように複数回曲げられている。
図39に示すように、実施の形態14の密閉型圧縮機には吸入マフラー241が設けられている。この吸入マフラー241は第1の吸入パイプ231をほぼ包み込むよう構成されている。吸入マフラー241は、圧力波を反射するのに必要な容積を有している。
次に、上記のように構成された実施の形態14の密閉型圧縮機について、その動作を説明する。
吸入行程時にバルブプレート193の吸入孔193a付近で発生した圧力波は、冷媒ガスの流れと逆方向に伝播し、密閉容器2内の空間で位相の反転した反射波となり、冷媒ガスの流れと順方向に伝播し、吸入孔193aに戻ってくる。
吸入行程の間に、この反射波が吸入孔193aに到達させることにより、吸入完了時点での反射波の持つ圧力エネルギーが冷媒ガスに付加され、冷媒ガスの吸入圧力が上昇する。
そのため、実施の形態14の密閉型圧縮機においては、シリンダー10内に、より密度の高い冷媒ガスが充填されることになる。このため、実施の形態14の密閉型圧縮機は、圧縮1行程当たりの吐出冷媒量が増加し、冷媒循環量が増加して、冷凍能力を向上させることができる。
このとき、実施の形態14の密閉型圧縮機は、第1の吸入パイプ231の開口端部231aは吸入マフラー241内に配設されている。このため、実施の形態14の密閉型圧縮機においては、吸入ガスの脈動が吸入マフラー241で減衰され、密閉容器2内の冷媒ガスを加振する力を小さくし、密閉容器2内の冷媒ガスの共鳴周波数にかかわらず、常に共鳴音を小さくすることができる。
実施の形態14の密閉型圧縮機においては、密閉容器2内の冷媒ガスが共鳴しているとしても、第1の吸入パイプ231の開口端部231aが吸入マフラー241内にあるために、圧力波が吸入第1の吸入パイプ231の開口端部231aで反射する時に密閉容器2内の冷媒ガスの共鳴の影響を受けない。
従って、実施の形態14の密閉型圧縮機は、圧力波が第1の吸入パイプ231の吸入マフラー241内の開口端部241aで反射する時に密閉容器2空間内の共鳴の影響を受けて圧力振幅が減衰するのを防止する。このため、実施の形態14の密閉型圧縮機は、密閉容器2の形状や運転条件等におけるあらゆる変化にもかかわらず、冷媒ガスの吸入圧力が常に上昇し、安定した高い冷凍能力を得ることができる。
実施の形態14の密閉型圧縮機では、第1の吸入パイプ231を吸入マフラー241で囲うことにより、第1の吸入パイプ231の温度分布を均一化し、冷媒ガス中の音速変化を小さくすることができる。このため、実施の形態14の密閉型圧縮機は、圧力波の減衰を小さくして、安定した冷媒ガスの吸入圧力の上昇を得ることができ、安定した冷凍能力の向上効果を得ることができる。
実施の形態14の密閉型圧縮機においては、第1の吸入パイプ231をコンパクトに形成でき、密閉容器2を小型化することができる。
以上のように、実施の形態14の密閉型圧縮機は、吸入孔191aを有しシリンダー10の端面に配設されたバルブプレート191と、一端が密閉容器2内の空間に開口し、他端がバルブプレート191の吸入孔191aにほぼ直結された第1の吸入パイプ231と、第1の吸入パイプ231をほぼ包み込む吸入マフラー241とを具備している。このため、実施の形態14の密閉型圧縮機は、吸入ガスの脈動を小さくして密閉容器2内の冷媒ガスを加振する力を小さくし、密閉容器2内の冷媒ガスの共鳴周波数にかかわらず、常に共鳴音を小さくすることができる。
実施の形態14の密閉型圧縮機は、密閉容器2内の冷媒ガスの共鳴周波数にかかわらず、圧力波が第1の吸入パイプ231の開口端部231aで反射する時の圧力振幅の減衰を常に防ぐことができる。実施の形態14の密閉型圧縮機は、密閉容器2の形状や運転条件等のあらゆる変化にかかわらず、常に冷媒ガスの吸入圧力が上昇し、安定した高い冷凍能力を得ることができる。
実施の形態14の密閉型圧縮機は、第1の吸入パイプ231の温度分布を均一化し、冷媒ガス中の音速変化を小さくすることができる。このため、実施の形態14の密閉型圧縮機は、圧力波の減衰を小さくし安定した吸入圧力の上昇を得ることで、安定した冷凍能力を得ることができる。
なお、実施の形態14において、第1の吸入パイプ231がバルブプレート191の吸入孔191aにほぼ直結した構成とした。しかし、第1の吸入パイプ231とバルブプレート191の吸入孔191aとをわずかな空間(実質的に同じ断面形状を有する流路空間)を介して連結しても上記実施の形態14とほぼ同等の効果が得られる。
実施の形態14において、吸入流路を管状の第1の吸入パイプ231として説明した。しかし、例えば吸入流路が形成されたブロック状のものでも、上記実施の形態14と同様の効果を得ることができる。