JP3652260B2 - 回折光学素子、該回折光学素子を有する光学系、撮影装置、観察装置 - Google Patents

回折光学素子、該回折光学素子を有する光学系、撮影装置、観察装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回折光学素子、該回折光学素子を有する光学系、撮影装置、観察装置に関し、特に、可視光領域など比較的に帯域幅のある波長領域で使用する回折光学素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
回折光学素子の特徴として
(1)同じ符号のパワーを有する屈折光学系に対する色収差の発現のしかたが逆である。
(2)回折光学素子を構成するレリーフパターンのピッチを変化させることで波面を制御できる。
(3)レリーフパターンは、非常に薄い構造であるため占有する体積が少ない。ということが挙げられる。
特に(1)に関して、カメラレンズ等の一般的に屈折光学系により構成されていたものの中に、回折光学素子を導入すると色収差が大幅に改善される。
さらに、(2)により光学系中にいわゆる非球面レンズを導入した効果をも得ることができる。
さらに(3)であることを加えて光学性能のよい小型の光学系を実現することができる。
このような技術は、SPIE vol.1354 InterbationalLens Design Conference(1990)等の文献や特開平4−213421号公報、特開平6−324262号公報、米国特許5,044,706号明細書などに開示されている。
【0003】
従来からあるもっとも一般的な回折光学素子の概要を図1に示す。図1に示したように、レリーフパターン101が、空気領域102と、屈折率Nd=1.497,アッベ数νd=57.44の樹脂材料領域103との境界に形成されているものである。このレリーフパターン101の高さは図中hで表され、回折光学素子のピッチは図中Pで表される。このような回折光学素子を単層回折光学素子と呼ぶことにする。
P=150μm、h=1.05μmでありこのとき、この回折光学素子105の回折効率の計算結果を図2に示す。図2で、横軸は可視光領域の波長400nm〜700nmを示しており、縦軸は、1次回折光の回折効率を示している。この回折光学素子は、使用波長領域400nm〜700nmにおいて、1次を回折光の回折効率がもっとも高くなる設計次数に選んだものである。回折光学素子のレリーフの高さを変えることで、1次以外の次数の回折効率をもっとも高くなるように設定することも可能であるが、以後設計次数として1次を選び1次回折効率がもっとも高くなるような場合について示す。
【0004】
図2によると、可視領域において単波長側と長波長側の波長領域で回折効率が大きく低下している。この波長領域では、1次以外の不要次数(不図示)の回折効率が高くなる。このような回折光学素子をカメラレンズなどの可視光領域で使用する光学系に適用した場合、不要次数がフレアの原因となることがある。
【0005】
回折光学素子の高さをh、ある波長λにおける屈折率をn(λ)とするとそのとき発生する空気(屈折率1)との間に発生する光路差OPDは
Figure 0003652260
このときの回折効率は
Figure 0003652260
ただし
Figure 0003652260
で、今設計次数を1次としているのでm=1である。ここで上式ηがもっとも高くなるのは
Figure 0003652260
のときである。回折効率は、最も高くなる。
【0006】
図3は、図1における回折光学素子のxの値を示したものである(m=1)。xの値が単波長側と長波長側で、大きく0から外れているため、図2のような特性になる。
このような回折光学素子の回折効率の波長依存性をなくし、フレア等の発生を防ぐ技術として、本出願人による特開平11−223717号公報に開示されており、あるいはそれ以外にも特開平9−325203号公報、特開平9−127322号公報などに開示されている。これらは、2種類以上の光学特性の異なる材料を組み合わせて回折光学素子を構成し、回折効率の波長依存性の低減を目指したものである。
【0007】
図4は、特開平11−223717号公報における実施例に記載の回折光学素子の構成例である。この構成例を用いて積層型の回折光学素子について述べる。図4で、Nd=1.635, νd=22.99である光学材料領域109と空気層108の間に構成されるレリーフパターン106とNd=1.5129, νd=51.00である光学材料領域110と空気層108の間に構成されるレリーフパターン107により積層型回折光学素子111が形成されている。
レリーフパターン106とレリーフパターン107の高さh1,h2はそれぞれh1=−7.88μm, h2=10.95μmである。h1の方に負号をつけたのは回折光学素子を形成する格子構造の向きが、h2に対して逆向きだからである。
この構成例の図3に示したxと波長との関係を図5に示す。また、この構成例の1次回折光の回折効率を図6に示す。図6は、図4に示した積層型回折光学素子の1次光の回折効率の波長依存性を示したものであり、図2に比べて、短波長側および長波長側の回折効率が大きく改善している。しかしながら、短波長側の領域で、1次の回折効率の低下が存在していることがわかる。
【0008】
図7は、図4における回折光学素子を構成する2つの光学材料の屈折率を示したものである。図7中の点線と破線がそれぞれ、109と110の領域を構成する材料の屈折率を表している。領域109を構成する材料の単波長側波長に対する屈折率の変化の割合が大きいため、図5における単波長側屈折率の変化が大きくなっている。これが、単波長側の回折効率の低下の原因である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように、単層型の回折光学素子に比べて、この積層型の回折光学素子の回折効率は大幅に改善されたものの、短波長側で回折効率低下しておりフレアの原因の可能性があり、より高い回折効率の達成が望まれている。
また、この積層型の回折光学素子は、回折光学素子を構成する2つのレリーフパターンが双方共空気と接しているため、格子のエッジの散乱が出易い。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、可視光領域などの広い帯域において回折効率が良好であり、格子のエッジでの散乱が小さい回折光学素子、該回折光学素子を有する光学系、撮影装置、観察装置を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、つぎの(1)〜()のように構成した回折光学素子、該回折光学素子を有する光学系、撮影装置、観察装置を提供するものである。
(1)互いに分散が異なる材料で形成され、それぞれレリーフパターンを有する第1の透明領域第2の透明領域とを密接配置すると共に前記第1及び第2の透明領域より分散が大きい材料で形成され、レリーフパターンを有する第3の透明領域を前記第1及び第2の透明領域の一方と空隙を介して近接配置して積層した回折光学素子であって、前記第1及び第2の透明領域は、各々のレリーフパターンの高さが互いに等しく且つ各々のレリーフパターンの向きが互いに逆であり、前記第1及び第2の透明領域のうちの前記第3の透明領域に最も近い側の面にはレリーフパターンが形成されていないことを特徴とする回折光学素子。
)前記第3の透明領域のレリーフパターンの高さは、前記第1及び第2の透明領域のレリーフパターンの高さより低いことを特徴とする上記(1)に記載の回折光学素子。
)レリーフパターンを有する複数の透明領域を密接または近接させて積層した回折光学素子であって、
前記複数の透明領域は、前記レリーフパターンの高さが互いに等しく、前記レリーフパターンの向きが互いに逆であり且つ分散が互いに異なる材料で形成された第1及び第2の透明領域と、該第1及び第2の透明領域のうち前記分散が小さい方と前記レリーフパターンの向きが同じであり且つ前記第1及び第2の透明領域よりも分散が大きい材料で形成された第3の透明領域とを有し、前記第1及び第2の透明領域を密接配置し、前記第3の透明領域を前記第1及び第2の透明領域の一方と空隙を介して近接配置すると共に、前記第1及び第2の透明領域のうちの前記第3の透明領域に最も近い側の面にはレリーフパターンが形成されていないことを特徴とする回折光学素子。
)前記第3の透明領域のレリーフパターンの高さは、前記第1及び第2の透明領域のレリーフパターンの高さより低いことを特徴とする上記()に記載の回折光学素子。
)回折の設計次数をm、回折させるべき波長λの光線に生じる最大光路長差をOPDとする時、
(OPD/λ)−m=0 (m=1,2,3…)
を満たす波長を可視領域内で2つ又は3つ以上有することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の回折光学素子。
上記(1)〜(5)に記載の回折光学素子を有する光学系。
上記(6)に記載の光学系を有することを特徴とする撮影装置。
上記(6)に記載の光学系を有することを特徴とする観察装置。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態においては、上記構成を適用することにより、例えば少なくとも2つの領域におけるレリーフパターンの高さ絶対値が等しく、レリーフパターンの向きを逆に構成することで、高さの等しい領域を密接または近接させることができ、レリーフパターンの垂直面等が空気に接する面積を減らすことができる。
また、さらに前記レリーフパターンの高さの等しい領域を密接または近接配置することにより、レリーフパターンのない面を形成することが可能となり、これにより構成が簡単で、製造が容易な回折光学素子を形成することができる。
また、レリーフパターンの高さの等しい2つの領域のレリーフパターンの高さに対して、他の領域のレリーフパターンの高さを低くすることによって、回折光学素子の高さを低く構成することができる。
また、前記レリーフパターンのない面と、レリーフパターンの高さを低くした他の領域の間に、空気層が存在するように構成することによって、回折光学素子のレリーフパターンの保護が可能となりさらに、光学材料の選択範囲を広げることができる。
また、レリーフパターンの高さを低くした他の領域の光学的色分散が、レリーフパターンの高さの絶対値が等しい2つの領域のものより大きくし、さらにこの他の領域と、レリーフパターンの高さの絶対値が等しい2つの領域のうち光学的な色分散のより小さくした領域とにおいて、断面における格子の形状が同じ向きに対して高さが小さくなっていることにしてある所定の波長に対して同じ向きに回折させるように構成することで、回折効率の波長依存性を低減させることが可能となる。
また、前記回折光学素子を対向する2面間に有する光学要素を構成することにより、回折光学素子のレリーフパターンを保護する構成を採ることが可能となる。さらに、この光学要素を有する光学系を構成することによって、回折光学素子の色収差補正効果あるいは非球面効果により、非常に小型で性能良好な光学系を実現することができる。
【0013】
【実施例】
以下に、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
本発明にかかる実施例1の回折光学素子の主要構造の断面図を図8に示す。光は図中上側の矢印の側より素子に入射し、第1の材料領域115、空気層116、第2の材料領域117、第3の材料領域118の順に進み回折光学素子より射出する。第1の材料領域115と空気層116の間には、微細なレリーフパターン112が形成されており、また、第2の材料領域117と第3の材料領域118の間に微細なレリーフパターン114が形成されている。第2の材料領域と第3の材料領域のレーリーフパターンは逆向きであり、高さが等しく結果、ちょうどはまり込むような構造になっている。材料領域115は、Nd=1.636,νd=22.80である樹脂材料、材料領域117は、Nd=1.598,νd=27.99である樹脂材料、材料領域118は、Nd=1.513、νd=51.00である樹脂材料により構成されている。第1の材料領域115のレリーフパターンの高さは、h1=3.538μm、第2のレリーフパターンの高さは、h2=−19.5μm、第3のレリーフパターンの高さは、h3=−h2=19.5μmである。h2に負号がついているのは、h1,hに対して、断面形状における高さの変化の方向が逆向きだからである。図8では、第1と第3の領域における格子形状は、図面右手から左手に向かって格子形状が小さくなっていくが、第2の領域はそれとは逆になっている。
【0014】
この構成における、OPD/λ−1を図9に示す。また、本実施例の回折効率の波長依存性を図10に示す。図9と図5を比べるとわかるように、波長に対するOPD/λ−1の変化が小さくなっているのがわかり、この結果図10のような従来の積層構造以上の回折効率の特性を達成することができた。
【0015】
図11は、115、117、118のそれぞれの材料領域の屈折率を示している。図11のグラフに示した番号はそれぞれの屈折率と対応している。115&118として示したものは、材料領域115と118はそれぞれh1,h3というレリーフパターンで形成されているが、(h1+h3)の高さでできているものとして、2つのレリーフパターンの等価屈折率を算出したものである。つまり、実施例1の3層の構造を有する積層の光学素子は、115&118という材料と117という材料の2つの材料により構成された積層型の回折光学素子と見ることができる。
【0016】
115のように短波長側の波長変化による屈折率の変化が大きい材料を用いることで、等価屈折率の分散特性を適切に制御することができる。
材料領域115,117,118のそれぞれのアッベ数をν1、ν2、ν3とするとき
ν1<ν2<ν3
とすることでこのような補正が可能となる。さらに、
図11より、部分分散特性を算出し、材料領域115,117,118の部分分散比θg,Fをθ1、θ2、θ3とすると、θ1=0.697,θ2=0.595、θ3=0.560により
θ1>θ2>θ3
となる。
このように材料の配置を選ぶことで、格子の高さが小さいにもかかわらず単波長の分散を制御でき、特に単波長の特性を改善することができる。
【0017】
また、本実施例において、空気層に接するレリーフパターンは、4μm以下と小さいため、散乱の影響が緩和することが可能となる。またさらに、材料領域117,118のレリーフパターンの高さの絶対値を等しくすることができたため、図8の空気層116と接する面113を平坦にすることが可能となり、回折光学素子が非常に簡単である。また、さらに材料領域117と118の間の材料の屈折率差が小さいため、レリーフパターン114の高さの割にエッジでの散乱を減らすことが可能となる。
【0018】
本実施例における回折光学素子は、図10に示したように、回折効率の波長依存性が少ないため、可視光領域のような広い帯域において使用される光学系に対して有効である。また、本実施例においては、本発明にかかる回折光学素子の主要構造のみを示したため図8に示したように、平面上に回折光学素子を構成したがこれに限定するものでなく、曲面上等にも適用できる。
【0019】
また、本実施例における回折光学素子では、第2の材料領域117のレリーフパターン114と空気層116の間に格子が形成されていない材料領域120が存在するが、厚みL1は少ないほど望ましい。
本実施例においては、材料領域115の側より、入射する場合を示したが、反対側から入射しても前述した効果が得られる。
さらに、本実施例においては、回折光学素子を構成する材料を樹脂材料としたことにより、入射側あるいは射出側の基板を自由に設定できるが、この基板について特に限定しない。また、基板材料自身により、回折光学素子を構成してよい。
【0020】
[実施例2]
本発明にかかる実施例2の回折光学素子の主要構造の断面図を図12に示す。光は図中上側矢印の側より素子に入射し、第1の材料領域126、空気層127、第2の材料領域128、第3の材料領域129の順に進み回折光学素子より射出する。第1の材料領域126と空気層127の間には、微細なレリーフパターン123が形成されており、また、第2の材料領域128と第3の材料領域129の間に微細なレリーフパターン125が形成されている。材料領域126は、Nd=1.679,νd=19.17、材料領域128は、Nd=1.635,νd=22.80である樹脂材料、材料領域129は、Nd=1.513,νd=51.00である樹脂材料により構成されている。第1の材料領域126のレリーフパターンの高さは、h1=2.784μm、第2のレリーフパターンの高さは、h2=−10.5μm、第3のレリーフパターンの高さh3=−h2=10.5μmである。
【0021】
この構成における、OPD/λ−1を図13に示す。また、本実施例の回折効率の波長依存性を図14に示す。図13と図5を比べるとわかるように、波長に対するOPD/λ−1の変化が小さくなっているのがわかり、この結果図14のような従来の積層構造以上の、回折効率の波長依存性が小さくフレアの少ない特性を達成することができた。また、非常に薄い回折光学素子を実現できている。
【0022】
図15は、126、128、129のそれぞれの材料領域の屈折率を示している。図15のグラフに示した番号はそれぞれの屈折率と対応している。126&129として示したものは、材料領域126と128はそれぞれh1,h3というレリーフパターンで形成されているが、(h1+h3)の高さでできているものとして、2つのレリーフパターンの等価屈折率を算出したものである。つまり、実施例2の3層の構造を有する積層の光学素子は、126&129という材料と128という材料の2つの材料により構成された積層型の回折光学素子と見ることができる。
126のように短波長側の波長変化による屈折率の変化が大きい材料を用いることで、等価屈折率の分散特性を適切に制御することができる。
【0023】
材料領域126,128,129のそれぞれのアッベ数をν1、ν2、ν3とするとき
ν1<ν2<ν3
とすることでこのような補正が可能となる。さらに、
図11より、部分分散特性を算出し、材料領域126,128,129の部分分散比θg,Fをθ1、θ2、θ3とするとθ1=0.70、θ2=0.697、θ3=0.560、
θ1>θ2>θ3
となる。これにより材料領域126のようにレリーフパターンの高さが小さいにもかかわらず等価屈折率の単波長側の特性を適性にすることができる。
【0024】
また、本実施例において、空気層に接するレリーフパターンは、2.784μmであり4μm以下と小さいため、散乱の影響が緩和することが可能となる。またさらに、材料領域128,129のレリーフパターンの高さの絶対値を等しくすることができたため、図12の空気層127と接する面124を平坦にすることが可能となり、回折光学素子が非常に簡単である。また、さらに材料領域128と129の間の材料の屈折率差が小さいため、レリーフパターン125の高さの割にエッジでの散乱を減らすことが可能となる。
【0025】
本実施例における回折光学素子は、図14に示したように、回折効率の波長依存性が少ないため、可視光領域のような広い帯域において使用される光学系に対して有効である。また、本実施例においては、本発明にかかる回折光学素子の主要構造のみを示したため図8に示したように、平面上に回折光学素子を構成したがこれに限定するものでなく、曲面上等にも適用できる。
また、本実施例における回折光学素子では、第2の材料領域128のレリーフパターン125と空気層127の間に格子が形成されていない材料領域131が存在するが、厚みL1は少ないほど望ましい。
【0026】
[実施例3]
本発明にかかる実施例3のレンズ136,137の対向面間に回折光学素子135を形成した構成(134は正面からみた構成)を図16に示す。回折光学素子のレリーフパターンについて、同図においてはわかりやすいように大きく拡大して示している。
図中138a,b,cは、実施例1あるいは実施例2における3層構造の回折光学素子に相当する構成を示している。
138は、回折光学素子の138aと138b,cとの間隔を出すための構造であり、回折光学素子135の外周部に位置している。
このように光学系の対向面間に回折光学素子を形成することで、レリーフパターンや境界面が保護されるといった効果がある。またさらに本実施例では、平面上に回折光学素子を形成したが、これに限定するものでなく曲面上に形成しても良い。またさらに、本実施例においては、回折光学素子のパターンを略回転対称のように示したがこれに限定するものでない。
更に、以上の実施例では、回折の設計次数(絶対値)をm、回折させるべき波長λの光線に生じる最大光路長OPDとする時、
(OPD/λ)−m=0 (m=1,2,3…)
を満たす波長を可視領域内で2つ有する回折光学素子を示したが、この条件を満たす波長を可視領域内で3つ以上有する構成もとれる。
【0027】
このように構成することで、従来の光学系中に回折光学素子を形成することができる。
また、実施例1〜実施例3では、回折光学素子を構成する材料の屈折率およびレリーフ構造により発生する位相差のみに着目して示したが、空気層とレリーフパターンとの界面、あるいは光学材料間の界面などのフレネル反射を考慮してコーティングなどの反射防止手段を形成すると効果的であるが、回折効率の特性は、本発明の構成で決定されるため、同様の効果が得られる。また、樹脂材料同士の密着性あるいは、基板とも密着性を考慮して、コーティングをしてよい。この場合、界面の間にコーティングが存在することになるが、この構成が本発明を限定するものではない。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、可視光領域などの広い帯域において回折効率が良好であり、小型で構成の簡単な回折光学素子、該回折光学素子を有する光学系、撮影装置、観察装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来例の単層型回折格子の構成例を示す図である。
【図2】従来例の単層型回折光学素子の回折効率を示す図である。
【図3】従来例の単層型回折光学素子の位相特性を示す図である。
【図4】従来例である積層型回折光学素子の構成例を示す図である。
【図5】従来例である回折光学素子の位相特性を示す図である。
【図6】従来例である積層型回折格子の回折効率を示す図である。
【図7】積層型回折格子を構成する材料の特性を示す図である。
【図8】本発明にかかる実施例1の構成例を示す図である。
【図9】本発明にかかる実施例1の位相特性を示す図である。
【図10】本発明にかかる実施例1の回折効率を示す図である。
【図11】本発明にかかる実施例1を構成する材料の特性を示す図である。
【図12】本発明にかかる実施例2の構成例を示す図である。
【図13】本発明にかかる実施例2の位相特性を示す図である。
【図14】本発明にかかる実施例2の回折効率を示す図である。
【図15】本発明にかかる実施例2を構成する材料の特性を示す図である。
【図16】本発明にかかる実施例3の構成を示す図である。
【符号の説明】
101:レリーフパターン面
102:空気層
103:材料領域
104:入射光
105:回折光学素子
106:レリーフパターン
107:レリーフパターン
108:空気層
109:材料領域
110:材料領域
111:回折光学素子
112:レリーフパターン
113:界面
114:レリーフパターン
115:材料領域
116:空気層
117:材料領域
118:材料領域
119:レリーフパターンのない材料領域
120:レリーフパターンのない材料領域
121:レリーフパターンのない材料領域
122:回折光学素子
123:レリーフパターン
124:界面
125:レリーフパターン
126:材料領域
127:空気層
128:材料領域
129:材料領域
130:レリーフパターンのない領域
131:レリーフパターンのない領域
132:レリーフパターンのない領域
133:入射光
134:回折光学素子(正面)
135:回折光学素子
136:レンズ
137:レンズ
138:回折光学素子の間隔を出すための構造

Claims (8)

  1. 互いに分散が異なる材料で形成され、それぞれレリーフパターンを有する第1の透明領域第2の透明領域とを密接配置すると共に前記第1及び第2の透明領域より分散が大きい材料で形成され、レリーフパターンを有する第3の透明領域を前記第1及び第2の透明領域の一方と空隙を介して近接配置して積層した回折光学素子であって、前記第1及び第2の透明領域は、各々のレリーフパターンの高さが互いに等しく且つ各々のレリーフパターンの向きが互いに逆であり、前記第1及び第2の透明領域のうちの前記第3の透明領域に最も近い側の面にはレリーフパターンが形成されていないことを特徴とする回折光学素子。
  2. 前記第3の透明領域のレリーフパターンの高さは、前記第1及び第2の透明領域のレリーフパターンの高さより低いことを特徴とする請求項1に記載の回折光学素子。
  3. レリーフパターンを有する複数の透明領域を密接または近接させて積層した回折光学素子であって、
    前記複数の透明領域は、前記レリーフパターンの高さが互いに等しく、前記レリーフパターンの向きが互いに逆であり且つ分散が互いに異なる材料で形成された第1及び第2の透明領域と、該第1及び第2の透明領域のうち前記分散が小さい方と前記レリーフパターンの向きが同じであり且つ前記第1及び第2の透明領域よりも分散が大きい材料で形成された第3の透明領域とを有し、前記第1及び第2の透明領域を密接配置し、前記第3の透明領域を前記第1及び第2の透明領域の一方と空隙を介して近接配置すると共に、前記第1及び第2の透明領域のうちの前記第3の透明領域に最も近い側の面にはレリーフパターンが形成されていないことを特徴とする回折光学素子。
  4. 前記第3の透明領域のレリーフパターンの高さは、前記第1及び第2の透明領域のレリーフパターンの高さより低いことを特徴とする請求項に記載の回折光学素子。
  5. 回折の設計次数をm、回折させるべき波長λの光線に生じる最大光路長差をOPDとする時、
    (OPD/λ)−m=0 (m=1,2,3…)
    を満たす波長を可視領域内で2つ又は3つ以上有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  6. 請求項1〜5に記載の回折光学素子を有する光学系。
  7. 請求項6に記載の光学系を有することを特徴とする撮影装置。
  8. 請求項6に記載の光学系を有することを特徴とする観察装置。
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