JP3652080B2 - 光接続構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光通信システムあるいはコンピュータ・交換機等に使用される光信号−電気信号変換モジュールにおける受光/発光素子と光ファイバとの光信号伝送のための接続構造に関し、詳しくは光電変換素子と光ファイバとを光導波路を介して位置精度よく接続するための光接続構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光通信システムやコンピュータ・交換機等の光信号伝送システムにおいては、伝送された光信号の信号処理は電子デバイスが担っているため、光信号と電気信号との変換を行なう光電変換装置が必要であり、そのような光信号と電気信号の境界領域には光ファイバや光導波路などの光の伝送路と、レーザダイオード等の発光素子・フォトダイオード等の受光素子などの光電変換素子と、それら光電変換素子や電子素子の制御や電気信号の処理を行なうためのLSI・電子部品を駆動させるための電気回路等が混在することとなる。
【0003】
このような光電変換装置として、例えば雑誌O plus E・1997年7月,p94「PLCプラットフォームによる光モジュール構成技術」に紹介されているように、シリコン基板上に光回路を形成し、半導体レーザや受光素子等の光電変換素子をハイブリッド集積実装するPLC(Planar Lightwave Circuit)プラットフォーム技術が、光モジュールの部品点数削減や無調芯接続・小型化等の点から注目されている。
【0004】
このようなPLCプラットフォームの例を図9に斜視図で示す。図9において1はシリコン基板、2は光電変換素子であり、シリコン基板1の表面や内部には光電変換素子2を搭載するための電気配線(図示せず)が形成されている。3はシリコン基板1上に形成された光導波路であり、クラッド部3a中にコア部3bが形成され、半導体素子2はこのコア部3bと光軸中心が一致するように搭載される。4は光ファイバであり、シリコン基板1の上面に異方性エッチングにより形成された光ファイバ4固定用のV溝1aに光導波路3のコア部3bと光軸中心が一致するように固定されて、外部の光回路との光信号の伝送を行なう。
【0005】
このPLCプラットフォームによれば、モジュールの作製の効率化や小型化を図ることができ、V溝1aの形成等はサブミクロン精度の加工技術を利用したものであることから、光導波路3を介しての光電変換素子2と光ファイバ4との接続においてサブミクロン精度の位置合わせが可能である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようなシリコン基板を用いたPLCプラットフォームにおける電気配線は、寄生容量やシリコンの大きな誘電正接(tanδ)のために高周波領域での電気信号の伝搬特性が悪いという問題点がある。
【0007】
例えば、“Assembly and Wiring Technologies in PLC Platforms for Low-Cost and High-Speed Applications" IEEE 1997 Electronic Components and Technology Conference Proceedings, p632には、シリコン基板上にシリカ膜を誘電体層として形成し、その上に形成したコプレーナ型の電気配線の場合であれば、10GHzの電気信号に対してシリカ膜の厚さが1.5μmの時の伝搬損失が17dB/cmと極めて大きく、シリカ膜の厚さが15μmの時でも伝搬損失は4dB/cmという大きな損失となることが報告されている。
【0008】
これに対し、高周波電気特性に優れる多層セラミック回路基板や銅ポリイミド等の有機系薄膜多層回路を積層したセラミック回路基板等の高周波電気回路基板を用い、その上に光導波路を形成したPLCプラットフォーム技術が要求されている。
【0009】
しかしながら、PLCプラットフォームの基板として多層セラミック回路基板や有機系薄膜多層回路を積層したセラミック回路基板等を用いた場合には、通常は基板上面が平坦であって微細な溝加工が難しく、また光ファイバ固定用のガイド溝としてシリコン基板のように異方性エッチングにより高精度なV溝を形成する方法が利用できないため、新たな光ファイバの位置合わせ・固定方法が必要であった。
【0010】
本発明は以上のような従来技術の問題点ならびに要求に鑑みて案出されたものであり、その目的は、セラミック回路基板等のように上面が平坦で微細な加工が困難な基板を用いたPLCプラットフォームに対して有用で、光接続の際のアライメントが簡易化できて光電変換素子と光ファイバとを光導波路を介して位置精度よく接続することができ、さらに高密度集積実装化が可能であり、しかも生産性が高い光接続構造を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の光接続構造は、上面に光電変換素子が実装もしくは形成されており、かつ一端が前記光電変換素子に接続され、他端が前記上面端部に導出する複数本の光導波路がそれぞれ前記上面に突出するとともにそれら光導波路間が空隙により分離されて形成されている実装用基板と、下面に形成した複数本の光ファイバ固定用溝に複数本の光ファイバが固定されているとともに、前記下面と前記光導波路との接触を避けるための前記複数本の光導波路をまとめてまたはそれぞれ独立して囲うような光導波路用溝がその端部に前記複数本の光ファイバの端面を位置させて形成されている固定用基板とから成り、前記実装用基板の上面端部に前記固定用基板を、前記光導波路用溝で前記複数本の光導波路をまとめてまたはそれぞれ独立して囲うとともにそれら複数本の光導波路の端面と前記複数本の光ファイバの端面とを各々の光軸中心が一致するように当接させて固定し得る箇所を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
また本発明の光接続構造は、高さの異なる2段の上面を有し、高い方の第1上面に光電変換素子が実装もしくは形成されており、かつ一端が前記光電変換素子に接続され、他端が前記実装面の前記第1上面の端部に導出する複数本の光導波路がそれぞれ前記第1上面に突出するとともにそれら光導波路間が空隙により分離されて形成されている実装用基板と、下面に形成した複数本の光ファイバ固定用溝に複数本の光ファイバがそれぞれ固定されているとともに、前記下面と前記光導波路との接触を避けるための前記複数本の光導波路をまとめてまたはそれぞれ独立して囲うような光導波路用溝がその端部に前記複数本の光ファイバの端面を位置させて形成されている固定用基板とから成り、前記実装用基板の前記2段の上面の低い方の第2上面に前記固定用基板を、前記光導波路用溝で前記複数本の光導波路をまとめてまたはそれぞれ独立して囲うとともにそれら複数本の光導波路の端面と前記複数本の光ファイバの端面とを各々の光軸中心が一致するように当接させて固定し得る箇所を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の光接続構造の上記各構成において、前記光導波路は、それぞれ実装用基板の上面に突出するように複数本が独立して形成され、それら光導波路間が光導波路のクラッド部より低屈折率の空隙により光学的に分離されているものである。
【0014】
さらに本発明の光接続構造は、上記各構成において、前記固定用基板の下面に形成された凹部内に接合用パッドが形成され、および/または前記実装用基板の上面または第2上面に形成された凹部内に接合用パッドが形成されて、上下の前記接合用パッドの間に接合部材用空隙が形成されており、上下の前記接合用パッドを前記凹部内で接合材により接合することで、前記固定用基板の下面と前記実装用基板の上面または第2上面とが前記各接合用パッドを介在させずに接触していることを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の光接続構造によれば、実装用基板の上面に、一端が光電変換素子に接続され他端がこの上面の端部に導出する複数本の光導波路がそれぞれ上面に突出するとともにそれら光導波路間が空隙により分離されて形成され、この光導波路の端面に、固定用基板の下面に形成した複数本の光ファイバ固定用溝に固定された複数本の光ファイバの端面を、固定用基板の下面に形成したその下面と光導波路との接触を避けるための、複数本の光導波路をまとめてまたはそれぞれ独立して囲うような光導波路用溝で、複数本の光導波路をまとめてまたはそれぞれ独立して囲うとともにそれら複数本の光導波路および複数本の光ファイバの各々の光軸中心が一致するように、実装用基板の上面端部に固定用基板を固定して当接させ得るものであることから、その上面端部において光導波路と光ファイバとの相対的な位置を精度よく規定することができ、上面が平坦でまた微細な加工が困難な実装用基板を用いた場合でも、光電変換素子に接続された複数本の光導波路と複数本の光ファイバとをその上面端部において位置精度よく接続することができる。
【0016】
また本発明の光接続構造によれば、実装用基板上の光導波路や固定用基板の光ファイバ固定用溝および光導波路用溝は従来周知の薄膜加工技術を用いてサブミクロンの寸法精度で形成することができるので、上面が平坦でまた微細な加工が困難な実装用基板に対しても、サブミクロンの位置精度で上面の端部での複数本の光導波路と複数本の光ファイバとの良好な光接続を行なうことができる。
【0017】
また、本発明の光接続構造によれば、実装用基板の第1上面に、一端が光電変換素子に接続され他端がこの第1上面の端部に導出する複数本の光導波路がそれぞれ第1上面に突出するとともにそれら光導波路間が空隙により分離されて形成され、この光導波路の端面に、固定用基板の下面に形成した複数本の光ファイバ固定用溝にそれぞれ固定された複数本の光ファイバの端面を、固定用基板の下面に形成したその下面と光導波路との接触を避けるための、複数本の光導波路をまとめてまたはそれぞれ独立して囲うような光導波路用溝で、複数本の光導波路をまとめてまたはそれぞれ独立して囲うとともにそれら複数本の光導波路および複数本の光ファイバの各々の光軸中心が一致するように、実装用基板の第2上面に固定用基板を固定して当接させ得るものであることから、第1上面の端部において光導波路と光ファイバとの相対的な位置を精度よく規定することができ、第1上面や第2上面が平坦でまた微細な加工が困難な実装用基板を用いた場合でも、光電変換素子に接続された複数本の光導波路と複数本の光ファイバとをその第1上面端部において位置精度よく接続することができる。
【0018】
また上記と同様に、実装用基板の第1上面上の光導波路や固定用基板の光ファイバ固定用溝および光導波路用溝は従来周知の薄膜加工技術を用いてサブミクロンの寸法精度で形成することができるので、上面が平坦でまた微細な加工が困難な実装用基板に対しても、サブミクロンの位置精度で第1上面の端部での複数本の光導波路と複数本の光ファイバとの良好な光接続を行なうことができる。
【0019】
さらに本発明の光接続構造によれば、実装用基板の上面または第1上面に光導波路が複数本独立して形成されており、それら光導波路間が光導波路のクラッド部より低屈折率の空隙により光学的に分離されていることから、クラッド部から空隙に漏洩し伝搬しようとする光はクラッド部と空隙との界面で反射されるため空隙に侵入することができず、従って、クラッド部との界面を透過した光が別の光導波路に侵入してその光導波路内を通り、本来伝搬すべき受光素子以外の受光素子や本来伝搬すべき光ファイバ以外の光ファイバに入射して発生するクロストークを十分に抑制することができる。
【0020】
さらにまた、本発明の光接続構造によれば、固定用基板と実装用基板とに両者を接合するための接合用パッドを形成する場合に、固定用基板側の接合用パッドを固定用基板の下面に凹部を形成してその凹部内に形成し、および/または実装用基板側の接合用パッドを実装用基板の上面または第2上面に凹部を形成してその凹部内に形成することにより、上下の接合用パッドの間に接合部材用空隙が形成されており、上下の接合用パッドを凹部内で接合材により接合することで、固定用基板の下面と実装用基板の上面または第2上面とがそれら接合用パッドを介在させずに接触しているときには、それら基板同士の垂直方向の位置合わせ精度が接合用パッドや接合用パッド同士を接合する接合材の厚さや高さ等の変動に影響されることがないため、より高い位置精度でもって実装用基板の上面または第1上面の端部での光導波路と光ファイバとの良好な光接続を行なうことができる。
【0021】
以下、本発明の光接続構造について図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の光接続構造の実施の形態の一例を示す分解斜視図である。図1において11は実装用基板、12は実装用基板11の上面に形成された光導波路であり、光導波路12はその一端が実装用基板11の上面に実装もしくは形成された受光素子あるいは発光素子等の光電変換素子(図示せず)に接続され、他端が図1に示すように上面の端部に導出している。
【0022】
13は固定用基板、14は光ファイバであり、光ファイバ14は固定用基板13の下面に形成された光ファイバ固定用溝13aに固定されている。また、固定用基板13の下面には、光導波路12の端面と光ファイバ14の端面とを当接させつつ固定用基板13を実装用基板11の上面に固定する際に実装用基板11上の光導波路12との接触を避けるための光導波路用溝13bも形成しておくとよく、この例では複数本の光導波路12をまとめて囲うような光導波路用溝13bとしている。また、15は実装用基板11の上面に設けられた接合用パッド、16は固定用基板13の下面の実装用基板11の上面に固定される部位に設けられた接合用パッドである。これら接合用パッド15・16はそれぞれ必要に応じて設けられ、それぞれの基板の面上あるいは基板に形成した凹部内に形成される。
【0023】
そして、図中に矢印で示したように、光導波路12の端面と光ファイバ14の端面とを各々の光軸中心が一致するように実装用基板11の上面端部において当接させて、接合用パッド15・16同士を接合し、実装用基板11の上面端部に固定用基板13を固定することにより、光導波路12と光ファイバ14とが、また光導波路12を介して光電変換素子と光ファイバ14とが、それぞれ光接続される。
【0024】
また、図2に本発明の光接続構造の実施の形態の他の例を図1と同様の分解斜視図で示す。図2において、21は実装用基板、22は実装用基板21の上面に形成された光導波路であり、光導波路22はその一端が実装用基板21の上面に実装もしくは形成された光電変換素子(図示せず)に接続され、他端が図2に示すように上面の端部に導出している。
【0025】
23は固定用基板、24は光ファイバであり、光ファイバ24は固定用基板23の下面に形成された光ファイバ固定用溝23aに固定されている。また、固定用基板23の下面には、光導波路22の端面と光ファイバ24の端面とを当接させつつ固定用基板23を実装用基板21の上面に固定する際に実装用基板21上の光導波路22との接触を避けるための光導波路用溝23bも形成しておくとよく、この例では複数本の光導波路22をそれぞれ独立して囲うような複数の光導波路用溝23bとしている。また、25は実装用基板21の上面に設けられた接合用パッド、26は固定用基板23の下面の実装用基板21の上面に固定される部位に設けられた接合用パッドである。これら接合用パッド25・26もそれぞれ必要に応じて設けられ、それぞれの基板の面上あるいは基板に形成した凹部内に形成される。
【0026】
そして、図中に矢印で示したように、光導波路22の端面と光ファイバ24の端面とを各々の光軸中心が一致するように実装用基板21の上面端部において当接させて、接合用パッド25・26同士を接合し、実装用基板21の上面端部に固定用基板23を固定することにより、光導波路22と光ファイバ24とが、また光導波路22を介して光電変換素子と光ファイバ24とが、それぞれ光接続される。
【0027】
なお、図1および図2の例ではそれぞれ光導波路12・22を複数本独立して形成し、それらの間が空隙17・27により光学的に分離されている。
【0028】
これら図1および図2の例について、その光ファイバ12・22に沿った断面図を図3に示す。図3において図1および図2と同様の箇所には同じ符号を付している。ここで、実装用基板11(21)として多層セラミック回路基板を用いた例を示しており、複数の絶縁層11a(21a)が積層され、各層の間または表面に配線導体11b(21b)が配設されている。また、12a(22a)は光導波路12(22)のクラッド部、12b(22b)はコア部であり、14a(24a)は光ファイバ14(24)のクラッド部、14b(24b)はコア部であり、本発明の光接続構造によれば、光導波路12(22)の光軸中心であるコア部12b(22b)と光ファイバ14(24)の光軸中心であるコア部14b(24b)とが一致するように、実装用基板11(21)の上面の端部において当接され固定用基板13(23)により固定されている。
【0029】
実装用基板11・21としては多層セラミック回路基板の他にも、ポリイミド樹脂・フッ素樹脂・オレフィン樹脂・エポキシ樹脂等の絶縁層と銅等の配線導体とによる有機系薄膜多層回路を積層したセラミック回路基板や多層有機回路基板等も用いることができ、その上面には光ファイバ固定用の溝を形成する必要がないため、種々の基板を用いることができる。
【0030】
実装用基板11・21として多層セラミック回路基板を用いる場合であれば、従来周知の技術を利用して、例えば、アルミナ・シリカ等のセラミックス原料粉末に適当な溶媒を混合してシート状となした絶縁層11a・21aと成るセラミックグリーンシートを製作し、このセラミックグリーンシート上にタングステン・モリブデン等の高融点金属を含有する配線導体11b・21bと成る導電ペーストを所定パターンにスクリーン印刷するとともに順次積層し、しかる後、セラミックグリーンシートと導電ペーストとを同時に一体焼成して多層セラミック回路基板11・21を製作する。また、光電変換素子を実装するための搭載部と成るキャビティを形成し、その内部に光電変換素子の搭載固定用の金属パッドを形成し、樹脂接着剤やAuSn半田等により光電変換素子をキャビティ内の所定位置に搭載・固定して、ボンディングワイヤ等の電気的接続手段により配線導体11b・21bと光電変換素子との電気的な接続を行なう。
【0031】
なお、光電変換素子は、実装用基板11・21の上面に搭載実装されるのが一般的であるが、実装用基板11・21の上面にこれらの素子を形成可能な半導体層を設けた場合などは、実装用基板11・21の上面に光電変換素子を直接形成することもできる。
【0032】
光導波路12・22としては基板上に形成される一般的な埋め込み型光導波路を用いることができ、例えば、クラッド部12a・22aにSiO2膜を用い、コア部12b・22bにSiO2−GeO2を用いたシリカ系のものや、クラッド部12a・22aとコア部12b・22bとにシロキサンポリマを用いたもの、ポリイミド・ベンゾシクロブテン・PMMA・SiO2−TiO2等を用いたものを使用することができる。
【0033】
中でも、シロキサンポリマから成る光導波路を用いると、下地の平坦化材料を兼ねた光導波路12・22の下部のクラッド部12a・22a用材料としてキュア前後の膜厚の収縮率が99%程度と極めて小さいため、深さや高さが100μm程度もあるような基板上の段差や溝あるいは光電変換素子と基板との段差等があっても下部のクラッド部12a・22aの形成後には1μm程度の段差が生じるだけとなり、光導波路12・22を形成した場合の損失がほとんど問題とならなくなり、十分低損失な光伝送が可能となる。併せて、下地基板の起伏形状による散乱が極めて小さくなり、クロストーク発生の原因となるような散乱光の発生を抑制することもできる。また、シロキサンポリマが下地の平坦化層と光導波路12・22の下部のクラッド部12a・22aとを兼ねているものであることから、製造上の容易性ならびに経済性にも優れたものとなる。
【0034】
このようなシロキサンポリマから成る光導波路12・22を形成するには、例えば以下のようにすればよい。まず、実装用基板11・21の上面にシロキサンポリマ溶液をスピンコート法により塗布し、100℃/30分+270℃/60分の熱処理を行ない、厚さ15μmのシロキサンポリマ膜(屈折率1.441、λ=1.3μm)から成る下部のクラッド部12a・22aを形成する。次に、テトラnブトキシチタン/シロキサンポリマ固形分重量比=0.082として調整したテトラnブトキシチタン/シロキサンポリマ混合液をスピンコート法・ロールコート法・スプレーコート法等により塗布し、100℃/30分+270℃/60分の熱処理を行ない、厚さ8μmのシロキサンポリマ膜(屈折率1.445、λ=1.3μm)から成るコア部12b・22bを形成する。続いてRIE加工を行なうためのマスクとなるAl膜をスパッタリング法により形成し、コア部12b・22bのパターンとなるライン幅8μmのレジストパターンをフォトリソグラフィの手法により形成してH3PO4/CH3COOH/HNO3の混合溶液によりAl膜をエッチングしてレジストパターンをAl膜に転写する。次いでレジストパターンを除去した後フッ素ガスを用いたRIE加工によりコア部12b・22bのエッチングを行ない、その後Al膜を除去してクラッド部12a・22aを形成する。
【0035】
以上により、コア部12b・22bの高さが8μmで幅が8μm、屈折率が1.445であり、クラッド部12a・22aの屈折率が1.441のシロキサンポリマから成る埋め込み型光導波路12・22を得ることができる。そして、コア部12b・22bの形成方法と同様にして、Alマスクパターンの形成とRIE加工を行ない光導波路12・22の不要部をエッチング除去して、光ファイバ14・24との当接部となる端面を実装用基板11・21の上面端部にて露出させる。
【0036】
さらに、反射端の反射面にはAl・Au・Ni等の金属膜をコートすると、広い反射角にわたって反射率が高くなり好適である。なお、反射端の加工は、各光導波路を分離する加工と同時に行なってもよい。
【0037】
また、光電変換素子の受発光面と接続される光導波路12・22の一端は、光電変換素子が平面型である場合はその受発光面上の下部のクラッド部12a・22aを除去してコア部12a・22aが直接に受発光面を覆うように形成することにより光接続を行なってもよい。
【0038】
なお、光導波路12・22のコア部12b・22bならびに上部のクラッド部12a・22aには、前述のように以下のような種々の材料を使用することができる。
材料 屈折率 成膜方法
ポリイミド 1.53〜1.60 スピンコート法・ロールコート法等
ベンゾシクロブテン 1.53〜1.58 同上
PMMA 1.53〜1.56 同上
SiO2−TiO2 1.44〜2.00 スパッタリング法・CVD法等
SiO2−GeO2 1.44〜2.00 同上
これらの材料の中からコア部12b・22bの屈折率が下部のクラッド部12a・22aおよび上部のクラッド部12a・22aの屈折率よりも大きくなるようにそれぞれ選択して使用すればよい。そして、これらの材料によるコア部12b・22bの加工には上記の例と同様にフォトリソグラフィ法およびRIE加工を利用すればよく、例えば前述のように下部のクラッド部12a・22aとしてシロキサンポリマ膜を形成した後に屈折率1.45・厚さ8μmのSiO2−TiO2膜をスパッタリング法により形成し、その後、コア部12b・22bの加工等を同様に行なえばよい。
【0039】
固定用基板13・23としては、例えば、切削により光ファイバ固定用溝13a・23aを形成したセラミック基板やガラス基板、あるいはシリコン異方性エッチングによるV溝によって光ファイバ固定用溝13a・23aを形成したシリコン基板など周知の光ファイバ固定用基板を用いることができる。この固定用基板13・23により光導波路12・22の水平方向の間隔に対応して光ファイバ14・24を精度よく配置することが容易となり、複数の光導波路12・22と光ファイバ14・24とを一括して実装用基板11・21の上面端部で当接させて光接続することができる。
【0040】
このような固定用基板13・23として、例えばシリコン基板を使用しV溝加工技術を利用して光ファイバ固定用溝13a・23aを形成する場合であれば、下面となる表面に<100>面が出ているシリコン基板にシリカ膜を形成し、フォトリソグラフィの手法を用いて光ファイバ固定用溝13a・23aならびに光導波路12・22との干渉を避けるための光導波路用溝13b・23bとなるパターンを開口したシリカパターンを形成して、KOHによりシリコンのエッチングを行ない光ファイバ固定用溝13a・23aならびに光導波路用溝13b・23bを形成する。その後、リフトオフ法により接合用パッド15・25となるCr/Au金属層ならびにAuSn半田膜を形成する。
【0041】
このとき、光導波路12・22を前述のシロキサンポリマから成るものとした場合、そのコア部12b・22bの中心は実装用基板11・21上面からの高さが19μmの位置にあるので、固定用基板13・23に光ファイバ14・24を固定して実装用基板11・21に当接・固定した際の光ファイバ14・24のコア部14b・24bの中心が固定用基板13・23の下面の実装用基板11・21の上面と接合される面から19μm基板内部側となるように、光ファイバ固定用溝13a・23aや光ファイバ14・24の固定高さを設定する必要がある。またこのとき、例えば接合用パッド16の厚さが3μmあれば、光ファイバ14・24のコア部14b・24bの中心は固定用基板13・23の実装用基板11・21との接合部の下面から16μmの位置となり、これに対してはシリコン基板のエッチング時のマスク開口幅を175.7 μmとしておけば所望の光ファイバ固定用溝13a・23aが得られる。
【0042】
光ファイバ14・24としては、従来周知の光ファイバあるいはそれらと同様の構成のものであれば、どのような種類の光ファイバであっても差し支えない。
【0043】
接合用パッド15・16・25・26としては、例えば多層セラミック回路基板に対してはリフトオフ法により形成したCr/AuやTi/Pt/Au等の金属層を用いればよく、それらの接合はAuSn半田やAuGe半田・AuSi半田・AgSn半田・SnPb半田等の半田により行なえばよい。これらのうちAu系の半田は耐腐食性に優れるため高い信頼性が得られ、中でも、AuSn半田は接合後のクリープ性が小さく、すなわち接合前後の位置の変位が極めて小さいため、高い位置精度が要求される光学部品の接合にはAuSn半田が好適である。
【0044】
また、接合用パッド15・16・25・26同士の半田等の接合材による接合は、図3に示したように膜状の半田層による接合の他にも、図4に図3と同様の断面図で示すように、半田ボール18による接合としてもよい。このように半田ボール18による接合とした場合は、最近の半田ボールを用いたマイクロソルダリング技術の進歩により半田ボール18の球径・真球度は高精度で制御できるので、本発明のような実装方法に利用した場合、半田層を利用した場合よりも高さ方向の位置精度を向上させることが期待できる。また、半田層よりも半田ボール18の方が表面張力によるセルフアライメント効果が大きくなるので、これを利用して実装時の位置精度を向上させることも期待できる。なお、図4において図3と同様の箇所には同じ符号を付している。
【0045】
前述のように、光導波路12・22を複数本形成する場合には、それらを独立して形成し、それら光導波路12・22の間にクラッド12a・22aより低屈折率の空隙17を形成することにより、光学的に分離しておくことが望ましい。
【0046】
このような空隙については、一般的なシングルモード光導波路においては光導波路12・22の壁面の汚れや光導波路12・22中の屈折率分布の揺らぎに起因する散乱光、または段差による光導波路12・22の曲がり部や屈曲部で発生する放射光・光ファイバ14・24と光導波路12・22との接続部分で光ファイバ14・24の伝搬光と光導波路12・22の伝搬光とのモードフィールド径のミスマッチのために生じる迷光など、クロストークの発生原因となるような光がクラッド部12a・22aと空隙17との界面に入射する際の角度は数度以下であると考えられるため、全反射の臨界角から考えると、低屈折率部である空隙17の屈折率は1.43程度(臨界角7°)で有効である。なお、低屈折率部である空隙17の屈折率は小さい程有効であることは言うまでもない。
【0047】
また、光導波路12・22と光電変換素子のうち発光素子との接続部分で発光素子から発せられる光と光導波路12・22との伝搬光のモードフィールド径のミスマッチのために生じる迷光については15°程度の角度を持つことが考えられるため、空隙17の屈折率は1.3以下とすることが好ましい。
【0048】
一方、空隙17の幅については、大きい程分離が確実なものとなるので、幅の上限値についてはPLCプラットフォームや光電変換装置の仕様に応じて適宜設定すればよい。また、幅の下限値については以下のように考えればよい。
【0049】
一般に、屈折率の大きい媒質から屈折率の小さい媒質に向かって光が入射し全反射を起こしている場合において、光の電磁界は屈折率の小さい媒質に侵入し、その電磁界の強さは指数関数的に減少する。このとき、屈折率の大きい媒質と小さい媒質の屈折率をそれぞれn1,n2(n1>n2)とすると、電磁界の強さが1/eとなる侵入深さは(λ/2π)×(n1 2cos2θ−n2 2)1/2となる。ここで、λは光の波長、θは界面と光の伝搬方向との間の角度である。
【0050】
屈折率が大きい媒質から小さい媒質に光が入射した場合の光の侵入深さ(電磁界の強さが1/eとなる深さ)を入射角に対して計算すると、侵入深さは入射角が増加するに連れて徐々に増加し、臨界角に近づくと急激に増加する。この全反射時の光のしみ出しによる別の光導波路12・22との結合を避けるためには、空隙17の幅をこの侵入深さより大きくとる必要がある。
【0051】
前述のように、屈折率が1.44の媒質と屈折率が1.43の媒質との臨界角は7°程度、屈折率が1.3 の媒質との臨界角は15°程度であり、また屈折率が1の媒質(例えば空気)との臨界角は46°程度である。侵入深さが10μmに相当する角度はこれら臨界角からわずかに0.05°程度小さいだけであるので、空隙17の幅を10μm以上とすれば、臨界角内の角度で光導波路12・22外部に向かう光のほぼ全てを空隙17で遮断することができる。従って、空隙17の幅は10μm以上に設定することが好ましい。
【0052】
また、光導波路12・22の伝搬光の電磁界のクラッド部12a・22aへの広がりを考慮し、コア部12b・22bと空隙17 との間のクラッド部12a・22aの厚みは10μm以上とすることが好ましい。また、全反射時の光のしみ出しによるトンネリングをさけるため、前述のように空隙17 の幅を10μm以上に設定する。
【0053】
また、光ファイバ14・24との接続部においては、接続されるべきでない光ファイバ14・24と光導波路12・22とは部分的にも、すなわちそれぞれのクラッド部12a・22a同士も重ならないようにする必要がある。これは、光導波路12・22のクラッド部12a・22aからの漏れ光が接続されるべきでない光ファイバ14・24のクラッド部14a・24aに進入し伝搬する可能性があるからである。
【0054】
次に、本発明の光接続構造の実施の形態のさらに他の例を、図5に図3・図4と同様の断面図で示す。図5において、31は実装用基板、32は実装用基板31の上面に形成された、クラッド部32aとコア部32bとを具備する光導波路、33は固定用基板、34は固定用基板33の下面に形成された光ファイバ固定用溝に固定された、クラッド部34aとコア部34bとを具備する光ファイバである。この例においては、固定用基板35の下面の実装用基板31と接合される部位に凹部33cが形成され、その凹部33c内に接合用パッド36が形成されている。このような凹部33cは、例えばシリコン基板の異方性エッチングを利用して形成すればよい。
【0055】
そして、実装用基板31の上面にはそれら接合用パッド36に対応して接合用パッド35が形成されており、これら接合用パッド35と接合用パッド36とを接合材37により接合することで、光導波路32を形成した実装用基板31の上面と光ファイバ34を固定した固定用基板33の下面とが、接合用パッド35・36や接合材37を介在させることなく直接接触して固定される。
【0056】
このように、本例においては凹部33cが実装用基板31と固定用基板33との接合部材用空隙となり、実装用基板31と固定用基板33との接合における垂直方向の位置合わせ精度が接合用パッド35・36や接合材37の厚さや高さの変動に影響されることがなく、極めて高い位置精度でもって実装用基板31の上面の端部での光導波路32と光ファイバ34との良好な光接続を行なうことができる。
【0057】
また、本発明の光接続構造の実施の形態のさらに他の例を、図6に図3〜図5と同様の断面図で示す。図6において、41は実装用基板、42は実装用基板41の上面に形成された、クラッド部42aとコア部42bとを具備する光導波路、43は固定用基板、44は固定用基板43の下面に形成された光ファイバ固定用溝に固定された、クラッド部44aとコア部44bとを具備する光ファイバである。この例においては、実装用基板41の上面の固定用基板45と接合される部位に凹部41cが形成され、その凹部41c内に接合用パッド45が形成されている。このような凹部41cは、例えば多層セラミック回路基板を構成するセラミックグリーンシートを積層する際に上面となるセラミックグリーンシートに所定の打ち抜き加工を施したり、あるいは切削加工により形成すればよい。
【0058】
そして、固定用基板43の下面にはそれら接合用パッド45に対応して接合用パッド46が形成されており、これら接合用パッド45と接合用パッド46とを接合材47により接合することで、光導波路42を形成した実装用基板41の上面と光ファイバ44を固定した固定用基板43の下面とが、接合用パッド45・46や接合材47を介在させることなく直接接触して固定される。
【0059】
このように、本例においても凹部41cが実装用基板41と固定用基板43との接合部材用空隙となり、実装用基板41と固定用基板43との接合における垂直方向の位置合わせ精度が接合用パッド45・46や接合材47の厚さや高さの変動に影響されることがなく、極めて高い位置精度でもって実装用基板41の上面の端部での光導波路42と光ファイバ44との良好な光接続を行なうことができる。
【0060】
次に、本発明の光接続構造の実施の形態のさらに他の例を、図7に図1・図2と同様の分解斜視図で、また図8に図3〜図6と同様の断面図で示す。
【0061】
図7・図8において、51は実装用基板であり、この実装用基板51は高さの異なる2段の上面として、高い方の第1上面51Aおよび低い方の第2上面51Bを有している。52は実装用基板51の第1上面51Aに形成された光導波路であり、光導波路52はその一端が実装用基板51の第1上面51Aに実装もしくは形成された光電変換素子(図示せず)に接続され、他端が図7・図8に示すように第1上面51Aの端部に導出している。
【0062】
53は固定用基板、54は光ファイバであり、光ファイバ54は固定用基板53の下面に形成された光ファイバ固定用溝53aに固定されている。また、55は実装用基板51の第2上面51Bに設けられた接合用パッド、56は固定用基板53の下面の実装用基板51の第2上面51Bに固定される部位に、接合用パッド55に対応して設けられた接合用パッドである。これら接合用パッド55・56もそれぞれ必要に応じて設けられ、それぞれの基板の面上あるいは基板に形成した凹部内に形成される。
【0063】
そして、図中に矢印で示したように、光導波路52の端面と光ファイバ54の端面とを各々の光軸中心が一致するように実装用基板51の第1上面51Aの端部において当接させて、接合用パッド55・56同士を接合し、実装用基板51の第2上面51Bに固定用基板53を固定することにより、光導波路52と光ファイバ54とが、また光導波路52を介して光電変換素子と光ファイバ54とが、それぞれ光接続される。
【0064】
なお、図7の例でも光導波路52を複数本独立して形成し、それらの間が空隙57により光学的に分離されている。
【0065】
また、実装用基板51として多層セラミック回路基板を用いた場合は、図8に示すように、複数の絶縁層51aが積層され、各層の間または表面に配線導体51bが配設されている。なお、52aは光導波路52のクラッド部、52bはコア部であり、54aは光ファイバ54のクラッド部、54bはコア部であり、本例においては、光導波路52の光軸中心であるコア部52bと光ファイバ54の光軸中心であるコア部54bとが一致するように、実装用基板51の第1上面51Aの端部において当接され、第2上面51Bにおいて接合用パッド55と接合用パッド56とを半田等の接合材58により接合して固定用基板53により固定されている。
【0066】
なお、本例における固定用基板53はその一部を実装用基板51の第1上面51A上に延長し、図1〜図6に示した例と同様にして、光導波路52が形成された第1上面51A上においても実装用基板51と固定用基板53との接合を行なってもよい。また、固定用基板53の下面の接合用パッド56が形成される部位に凹部を形成し、および/または実装用基板51の第2上面51Bの接合用パッド55が形成される部位に凹部を形成して、接合用パッド55・56をそれら凹部内に形成することによって、図5・図6に示したように、固定用基板53の下面と実装用基板51の第2上面51Bとが各接合パッド55・56や接合材を介在させずに直接接触するようにしてもよい。
【0067】
このような本発明の光接続構造によっても、実装用基板51の第1上面51Aの端部において光導波路52と光ファイバ54との相対的な位置を精度よく規定することができ、第1上面51Aや第2上面51Bが平坦でまた微細な加工が困難な実装用基板51を用いた場合でも、光電変換素子に接続された光導波路52と光ファイバ54とをその第1上面51A端部において位置精度よく接続することができる。
【0068】
このような第1上面51Aと第2上面51Bを有する実装用基板51は、第1上面51Aを有する実装用基板に固定用基板53を固定するための第2上面51Bを有する補助基板を付加したものとみなすこともでき、また、第2上面51Bを有する実装用基板に光導波路52を形成する実装用の第1上面51Aを有する補助基板を付加したものとみなすこともできる。また、これら第1上面51Aと第2上面51Bとの高さの差は光導波路52・光ファイバ54や固定用基板53のサイズ等に応じ光接続構造の仕様に応じて適宜設定される。このとき、第1上面51Aと第2上面51Bの高さを同一とすると、実装用基板51の平坦な上面上で光導波路52と光ファイバ54とを当接させて固定用基板54により光ファイバ54を固定するものとなる。
【0069】
第1上面51Aと第2上面51Bの高さの差や光導波路52のサイズ等の設定は、例えば、直径125μmの光ファイバ54を用いる場合であれば、光ファイバ54が載置される第1上面51Bから光ファイバ54のコア部54bである光軸中心までの高さは62.5μmであり、光導波路52の下部のクラッド部52aの厚さを15μm、コア部の厚さを8μmとした場合には、第1上面51Aから第2上面51Bまでの高さの差は43.5μmとすればよい。
【0070】
また、光ファイバ54を光ファイバ固定用溝53aに固定した固定用基板53が実装用基板51の第2上面51Bに固定され実装されたときに、光ファイバ54は固定用基板53と実装用基板51とに接するようにして、固定用基板53が実装用基板51の第2上面51Bと直接接触せずに接合用パッド55・56と接合材58を介して接合されるように設定してもよい。この際は、接合材58の高さを実装用基板51の第2上面51Bから固定用基板53の下面(接合用パッド56)までの高さを超えるような高さとし、固定用基板53を実装用基板51の第2上面51Bに合わせたときに接合材58が両基板51・53(両接合用パッド55・56)に接するようにしておけばよい。
【0071】
さらに、接合用パッド55・56の大きさを、両基板51・53が固定されたときに接合用パッド55・56に囲まれる空間の体積が接合材58の体積よりも大きくなるように設定することにより、接合材58を溶融したときに接合材58の表面張力により両基板51・53間に張力が働き、光ファイバ54と固定用基板53と実装用基板51とを、接合材58の厚さや高さ等の変動に影響されることなく位置精度よく固定することができる。
【0072】
なお、以上はあくまで本発明の実施の形態の例示であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や改良を加えることは何ら差し支えない。
【0073】
例えば、以上の例では光導波路として波長1.3μmの光がシングルモードで導波するものの例について述べたが、クラッド部ならびにコア部のサイズや屈折率の設定は光信号の伝搬において要求される光導波路ごとに設計されるべきものであり、上記の例に何ら限定されるものではない。
【0074】
【発明の効果】
以上のように、本発明の光接続構造によれば、実装用基板の上面の端部に導出する複数本の光導波路がそれぞれ上面に突出するとともにそれら光導波路間が空隙により分離されて形成され、この光導波路の端面に、固定用基板の下面の複数本の光ファイバ固定用溝に固定された複数本の光ファイバの端面を、固定用基板の下面に形成したその下面と光導波路との接触を避けるための、複数本の光導波路をまとめてまたはそれぞれ独立して囲うような光導波路用溝で、複数本の光導波路をまとめてまたはそれぞれ独立して囲うとともにそれら複数本の光導波路および複数本の光ファイバの各々の光軸中心が一致するように、実装用基板の上面端部に固定用基板を固定して当接させ得るものであることから、実装用基板の上面端部において光導波路と光ファイバとの相対的な位置を精度よく規定することができ、上面が平坦でかつ微細な加工が困難な実装用基板を用いた場合でも、光電変換素子に接続された光導波路と光ファイバとをその上面端部において位置精度よく接続することができる。
【0075】
また本発明の光接続構造によれば、実装用基板上の光導波路や固定用基板の光ファイバ固定用溝および光導波路用溝は薄膜加工技術を用いてサブミクロンの寸法精度で形成することができるので、上面が平坦でかつ微細な加工が困難な実装用基板に対しても、サブミクロンの位置精度で上面の端部での複数本の光導波路と複数本の光ファイバとの良好な光接続を行なうことができる。
【0076】
また、本発明の光接続構造によれば、実装用基板の第1上面の端部に導出する複数本の光導波路がそれぞれ第1上面に突出するとともにそれら光導波路間が空隙により分離されて形成され、この光導波路の端面に、固定用基板の下面の複数本の光ファイバ固定用溝に固定された複数本の光ファイバの端面を、固定用基板の下面に形成したその下面と光導波路との接触を避けるための、複数本の光導波路をまとめてまたはそれぞれ独立して囲うような光導波路用溝で、複数本の光導波路をまとめてまたはそれぞれ独立して囲うとともにそれら複数本の光導波路および複数本の光ファイバの各々の光軸中心が一致するように、実装用基板の第2上面に固定用基板を固定して当接させ得るものであることから、第1上面の端部において光導波路と光ファイバとの相対的な位置を精度よく規定することができ、第1上面や第2上面が平坦でかつ微細な加工が困難な実装用基板を用いた場合でも、光電変換素子に接続された光導波路と光ファイバとをその第1上面端部において位置精度よく接続することができる。
【0077】
また上記と同様に、実装用基板の第1上面上の光導波路や固定用基板の光ファイバ固定用溝および光導波路用溝は薄膜加工技術を用いてサブミクロンの寸法精度で形成することができるので、上面が平坦でかつ微細な加工が困難な実装用基板に対しても、サブミクロンの位置精度で第1上面の端部での複数本の光導波路と複数本の光ファイバとの良好な光接続を行なうことができる。
【0078】
さらに本発明の光接続構造によれば、実装用基板の上面または第1上面に光導波路が複数本独立して形成されており、それら光導波路間が光導波路のクラッド部より低屈折率の空隙により光学的に分離されていることから、クラッド部から空隙に漏洩し伝搬しようとする光はクラッド部と空隙との界面で反射されて空隙に侵入することができず、従って、クラッド部との界面を透過した光が別の光導波路に侵入して本来伝搬すべき受光素子以外の受光素子や本来伝搬すべき光ファイバ以外の光ファイバに入射して発生するクロストークを十分に抑制することができる。
【0079】
さらにまた、本発明の光接続構造によれば、固定用基板と実装用基板とに両者を接合するための接合用パッドを形成する場合に、固定用基板側の接合用パッドを固定用基板の下面に凹部を形成してその凹部内に形成し、および/または実装用基板側の接合用パッドを実装用基板の上面または第2上面に凹部を形成してその凹部内に形成することにより、上下の接合用パッドの間に接合部材用空隙が形成されており、上下の接合用パッドを凹部内で接合材により接合することで、固定用基板の下面と実装用基板の上面または第2上面とがそれら接合用パッドを介在させずに接触しているときには、それら基板同士の垂直方向の位置合わせ精度が接合用パッドや接合用パッド同士を接合する接合材の厚さや高さ等の変動に影響されることがないため、より高い位置精度でもって実装用基板の上面または第1上面の端部での光導波路と光ファイバとの良好な光接続を行なうことができる。
【0080】
以上により、本発明によれば、セラミック回路基板等のように上面が平坦で微細な加工が困難な基板を用いたPLCプラットフォームに対して有用で、光接続の際のアライメントが簡易化できて複数本の光導波路と複数本の光ファイバとを、ならびに光導波路を介して光電変換素子と光ファイバとを位置精度よく接続することができ、さらに高密度集積実装化が可能であり、しかも生産性が高い光接続構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光接続構造の実施の形態の一例を示す分解斜視図である。
【図2】 本発明の光接続構造の実施の形態の他の例を示す分解斜視図である。
【図3】 図1および図2に示した本発明の光接続構造の例の断面図である。
【図4】 本発明の光接続構造の実施の形態のさらに他の例を示す断面図である。
【図5】 本発明の光接続構造の実施の形態のさらに他の例を示す断面図である。
【図6】 本発明の光接続構造の実施の形態のさらに他の例を示す断面図である。
【図7】 本発明の光接続構造の実施の形態のさらに他の例を示す分解斜視図である。
【図8】 図7に示した本発明の光接続構造の例の断面図である。
【図9】 従来のPLCプラットフォームの例を示す斜視図である。
【符号の説明】
11、21、31、41、51・・・・・実装用基板
12、22、32、42、52・・・・・光導波路
13、23、33、43、53・・・・・固定用基板
13a、23a、53a・・・・・・光ファイバ固定用溝
13 b、 23 b・・・・・・・・・光導波路用溝
14、24、34、44、54・・・・・光ファイバ
15、25、35、45、55・・・・・実装用基板側の接合用パッド
16、26、36、46、56・・・・・固定用基板側の接合用パッド
17、27、57・・・・・・・・・空隙
Claims (3)
- 上面に光電変換素子が実装もしくは形成されており、かつ一端が前記光電変換素子に接続され、他端が前記上面端部に導出する複数本の光導波路がそれぞれ前記上面に突出するとともにそれら光導波路間が空隙により分離されて形成されている実装用基板と、下面に形成した複数本の光ファイバ固定用溝に複数本の光ファイバがそれぞれ固定されているとともに、前記下面と前記光導波路との接触を避けるための前記複数本の光導波路をまとめてまたはそれぞれ独立して囲うような光導波路用溝がその端部に前記複数本の光ファイバの端面を位置させて形成されている固定用基板とから成り、前記実装用基板の上面端部に前記固定用基板を、前記光導波路用溝で前記複数本の光導波路をまとめてまたはそれぞれ独立して囲うとともにそれら複数本の光導波路の端面と前記複数本の光ファイバの端面とを各々の光軸中心が一致するように当接させて固定し得る箇所を設けたことを特徴とする光接続構造。
- 高さの異なる2段の上面を有し、高い方の第1上面に光電変換素子が実装もしくは形成されており、かつ一端が前記光電変換素子に接続され、他端が前記実装面の前記第1上面の端部に導出する複数本の光導波路がそれぞれ前記第1上面に突出するとともにそれら光導波路間が空隙により分離されて形成されている実装用基板と、下面に形成した複数本の光ファイバ固定用溝に複数本の光ファイバがそれぞれ固定されているとともに、前記下面と前記光導波路との接触を避けるための前記複数本の光導波路をまとめてまたはそれぞれ独立して囲うような光導波路用溝がその端部に前記複数本の光ファイバの端面を位置させて形成されている固定用基板とから成り、前記実装用基板の前記2段の上面の低い方の第2上面に前記固定用基板を、前記光導波路用溝で前記複数本の光導波路をまとめてまたはそれぞれ独立して囲うとともにそれら複数本の光導波路の端面と前記複数本の光ファイバの端面とを各々の光軸中心が一致するように当接させて固定し得る箇所を設けたことを特徴とする光接続構造。
- 前記固定用基板の下面に形成された凹部内に接合用パッドが形成され、および/または前記実装用基板の上面または第2上面に形成された凹部内に接合用パッドが形成されて、上下の前記接合用パッドの間に接合部材用空隙が形成されており、上下の前記接合用パッドを前記凹部内で接合材により接合することで、前記固定用基板の下面と前記実装用基板の上面または第2上面とが前記各接合用パッドを介在させずに接触していることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光接続構造。
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