JP3651856B2 - X線高電圧電源制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、高電圧電源制御装置に関し、特に高電圧放電時に自動復旧する機能を備えた、自動運転に好適な高電圧を使用するX線装置システム等のシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
X線装置システムに使用されるX線管の高電圧電源およびフィラメント加熱用電源をマイクロコンピュータで制御することが行われている。これにより、電源電圧、フィラメント電流を撮影条件に則して木目細かく制御したり、X線管の温度、発熱を制御することができる。また、マイクロコンピュータを、制御のためだけでなく、X線装置システムの診断機能にも使用することが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術はX線装置システムの操作を自動化することができる優れた利点がある。しかし、高電圧電源の放電の際の動作の自動再開のため、およびノイズによるマイクロコンピュータの誤動作の防止のために、更に十分な考慮が必要である。
【0004】
X線装置システムの高電圧電源の放電は頻繁に発生する。その多くの場合にはX線管および電源回路に損傷をもたらすものではなく、そのまま動作継続が可能である。しかし、ごくまれではあるが、そのまま動作を継続させるとX線管および電源回路に重大な損傷をもたらす場合がある。したがって、高電圧電源の放電時にはX線装置システムの動作を一旦停止し、動作を継続させても大丈夫であると確認したのちに動作を再開する必要がある。つまり、高電圧電源の放電の度に人手による確認、動作再開の操作が必要である。
【0005】
これら一連の操作をマイクロコンピュータにより実現することが考えられる。これによれば、高電圧電源の放電の際の動作の自動再開が行なえる可能性がある。しかし、従来技術では高電圧電源の放電の際のノイズによりマイクロコンピュータの誤動作が発生するという問題点がある。つまり、せっかくX線装置システムに制御のためのマイクロコンピュータを備えても、高電圧電源の放電の際の動作の自動再開のためには使用できないことになる。特に、動作を継続させても大丈夫かどうかを判断する上で重要な情報となる放電の継続時間、放電電流のデータは最も誤動作が発生しやすい放電最中に収集しなければならないため、ノイズによる誤動作は大きな問題である。
【0006】
本発明の第1の目的は高電圧電源の放電の際に動作を自動的に再開する機能をを有する高電圧電源制御装置およびこれを用いたX線装置システムを提供することである。
【0007】
また本発明の第2の目的は、高電圧電源の放電の際のノイズによるマイクロコンピュータの誤動作を防止することができる高電圧電源制御装置およびこれを用いたX線装置システムを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を実現するために、本発明の装置は、
負荷に接続された高電圧電源を制御する高電圧電源制御装置であって、高電圧電源の放電時に放電電流および放電継続時間を計測する計測手段と、該計測の結果、放電電流の大きさが予め定めた閾値を超えた状態が予め定めた時間以上継続したとき電源供給を停止したままとし、継続しなかったときは電源供給を自動復旧する制御手段とを備える。
【0009】
前記制御手段は冗長化されていることが望ましく、例えば少なくとも3台のコンピュータからなり、かつ、該コンピュータの出力の多数決を採る多数決回路とを有する。
【0010】
本発明による高電圧電源制御装置は、他の見地によれば、負荷に接続された高電圧電源を制御する高電圧電源制御装置であって、高電圧電源の放電時に、一旦、負荷への電源供給を遮断し、高電圧電源部および負荷の異常の有無を自動的にチェックし、異常の無い場合には電源供給を自動復旧することを特徴とする。
【0011】
この本発明の高電圧電源制御装置において、X線管の取替え時期を判定する取替え時期判定手段を有することが好ましい。 この取替え時期判定手段は、例えば、放電の発生頻度を監視し、該発生頻度が予め定めた閾値を超えた場合にX線管の取替え時期であると判定するものである。
【0012】
また、本発明の高電圧電源制御装置によれば、前記取替え時期判定手段は、放電の発生頻度を監視し、該発生頻度が予め定めた閾値を超えた場合にX線管の取替え時期であると判定するものである。
【0013】
また、本発明の高電圧電源制御装置において、高電圧電源およびフィラメント加熱用電源の少なくとも一方を冗長化してもよい。
[その他]
補正の根拠は、【0008】から【0014】の記載に基づいている。なお、【0011】から【0013】の補正は、出願時の特許請求の範囲では、X線装置システムにあるとされた、取替え時期判定手段を高電圧電源制御装置内に移動した形態であり、内容的に変更はない。
【0014】
本発明によるX線装置システムは、他の見地によれば、X線管と、X線管に高電圧を印加する高電圧電源と、前記高電圧電源の放電頻度を監視し、前記該放電頻度があらかじめ定められた閾値を超えた場合にはX線管の取替え時期であることを判定する取替え時期判定手段とを備える。
【0015】
【作用】
本発明では、高電圧電源の放電時に、一旦、負荷への電源供給を遮断し、高電圧電源部および負荷の異常の有無を自動的にチェックし、異常の無い場合には電源供給を自動復旧する。
【0016】
この際、X線管の高電圧電源(および、場合によってはフィラメント加熱用電源)を制御する高電圧電源制御装置(マイクロコンピュータ)をフォールトトレラント化する。これにより、高電圧電源の放電の最中及び放電後のノイズによる高電圧電源制御装置の誤動作を防止し、正常に動作することを保証する。
【0017】
具体的には、正常動作が保証された高電圧電源制御装置により(1) 放電の継続時間及び電流を計測しその値を記録し、(2) 記録した値から動作継続が可能かどうかを判断し、(3) 動作継続が可能と判断した場合には電源を再投入し、X線装置システムの動作を再開する。
【0018】
以上述べた一連の操作を冗長構成により正常動作が保証された高電圧電源制御装置に実行させれば、X線装置システムの高電圧放電の際に動作再開を確実かつ自動的に実現することができる。
【0019】
【実施例】
以下、図面に従い本発明の実施例について詳細に説明する。
【0020】
まず、図9に、本発明が適用されるX線撮影用のシステムの構成を示す。このシステムは、X線管5からX線を発生させるためのものであり、X線管5の他に、制御整流器91、高電圧電源2、フィラメント加熱回路98、制御システム97からなる。高電圧電源2は、高周波インバータ92、高電圧トランス95、高電圧整流器93、高電圧ケーブル94等からなる。制御システム97の制御の下で、制御整流器91により3相または単相200/400ボルトの商用電源電圧を交流−直流変換し、これを高周波インバータ92で高周波の交流に変換し、さらに、高周波の高電圧トランス95で昇圧し、高電圧ダイオード整流器93で整流して、40KV〜150kVの直流高電圧を得て、これをX線管5に供給している。なお、X線管5には、そのフィラメントを加熱する回路98が設けられている。
【0021】
図1は、本発明によるX線装置システムの実施例構成を示す。この実施例では、冗長化などの手法によりフォールトトレラント化された高電圧電源制御回路(制御装置)1が高電圧電源2を制御し、高電圧電源2はX線管5の陽極に高電圧を印加する。高圧電源制御回路1は図9の制御システム97に対応する。電流検出回路4は、図9の構成に追加したものであり、X線管5の陽極に流れる電流を検出し、通常動作時には検出した電流値を基に高電圧電源制御回路1、高電圧電源2を介して、X線管5の陽極に流れる電流をフィードバック制御する。また高電圧電源2の放電が発生した場合には、電流検出回路4により得られた放電電流、放電継続時間に基づき、放電後に動作継続が可能かどうかを判断する。
【0022】
本実施例では高電圧電源制御回路1がフォールトトレラント化されている点が特徴であり、高電圧放電によるノイズによっても誤動作することがない。従って、高電圧電源制御回路1の誤動作が最も発生しやすい高電圧電源の放電時でも正常動作が保証され、その間に放電電流、放電継続時間の記録を収集することができる。さらに放電後には収集した放電電流、放電継続時間の記録に基づき、その後の動作継続が可能かどうかを判断し、動作継続が可能と判断した場合には電源を再投入し、X線装置システムの動作を再開することができる。
【0023】
高電圧電源制御回路1をフォールトトレラント化する方法については、冗長化して出力の多数決を採る方法など多くの方法が既に提案または発明されている。図6に、制御回路1のフォールトトレラント化の手段として冗長化・多数決を採用した構成例を示す。この例では、制御回路1は、3台のコンピュータ1a,1b,1cからなり、各コンピュータは、マイクロプロセッサユニット11、RAM12、ROM13、インタフェース回路I/F14を有する。RAM12には、誤り訂正回路ECCを付加することが望ましい。電流検出回路4により検出された各部の電流はA/D変換器16−1〜16−nによりデジタル信号に変換されて各コンピュータ1a,1b,1cに入力される。3台のコンピュータは入力されたデータに基づいてそれぞれ処理を実行し、高電圧電源2への制御出力(トリガ信号)を発生する。これらの制御出力は多数決回路17に入力され、それらの多数決に応じた出力信号を高電圧電源2へ出力する。
【0024】
図5に、高電圧電源2の構成例を示す。ここでは、電源回路を冗長化した例を示している。後述するようにフィラメント加熱用電源3をも制御回路1で制御する場合、フィラメント加熱用電源3についても同様な構成を採用することができる。図5に示すようにN個の電源21〜2Nを並列に接続することにより冗長化が可能である。各電源回路の高周波インバータ92の電力素子51のゲートには前述した多数決回路17からのトリガ信号が印加される。すなわち、トリガ信号のタイミングによって、電力素子51のターンオン、ターンオフが制御され、高電圧電源2の出力電圧が所望の大きさになるように制御される。この例では、電源回路が並列に接続されているので、電源21〜2N個々の出力をPo/Nとすると、電源21〜2N全てが正常なときにはPoの最大出力が得られ、電源21〜2Nのなかでn個の電源が故障した場合には(N−n)Po/Nの最大出力が得られる。つまり、分割した電源のうち一部に故障があっても、最大出力が低下するだけで動作を継続することができる。また、X線撮影の際に常に最大電力を必要とするのではないので、最大電力の低下は実用上許容でき、全く問題とならない。
【0025】
この構成によれば、高電圧電源制御回路1だけでなく、X線装置システムの主要な構成要素である高電圧電源2、フィラメント加熱用電源3を冗長化することができるので、X線装置システムの信頼性、可用性(Availability)を高めることができる。
【0026】
図7に、電流検出回路4の構成例をシステムの他の部分と共に示す。この例では、インバータ92のアーム電流はカレントトランス71,72で検出している。インバータ出力電流はカレントトランス70により検出する。X線管5の管電流は高電圧整流器93の一端に設けた抵抗73により検出する。また、電流ではないが、X線管5の管電圧はその両端間に直列接続した抵抗からなる分圧器74により検出される。なお、検出の方法はこれらに限るものではなく、ホール素子型検出器等を用いてもよい。
【0027】
図2は高電圧電源制御回路1が高電圧電源2だけでなくフィラメント加熱用電源3も制御する実施例である。本実施例によれば高電圧電源制御回路1が高電圧電源2、フィラメント加熱用電源3の両方の制御回路を兼ねることができるので、X線装置システムの構成をより簡略化することができる。
【0028】
図3は高電圧電源の放電が発生した場合の高電圧電源制御回路1での処理の流れを示す。高電圧電源の放電が発生した場合(60)、これは電流検出回路4において管電流の過電流を検出することにより検出される(61)。その際、高電圧電源制御回路1では放電電流の大きさ及び継続時間を計測し記録する(62)。次いで高電圧電源2およびX線管5の保護のために電源を一旦遮断する(63)。続いて、記録した放電電流の大きさ及び継続時間に基づきその後の動作継続が可能かどうか判断する(64)。この時、記録した放電電流の大きさまたは継続時間はあらかじめ定められたしきい値以下ならば動作継続が可能と判断し、上回るならば、動作継続が不可能と判断する。動作継続が可能と判断された場合には、電源を再投入し動作を再開する(65)。また動作継続が不可能と判断された場合には、動作を停止したままにし、警報を発する(66)。以上述べた本実施例によれば、従来手動で実施していたステップ64,65,66の手続きを自動的に実施することが可能となる。
【0029】
また図1、図2の実施例に示したように高電圧電源制御回路1をフォールトトレラント化することによりステップ64,65,66の手続きを確実に実施することができる上、ステップ64,65,66の手続きの自動化に不可欠な手続き64の拠り所となる放電電流の大きさ及び継続時間を計測し記録する手続(62)を確実に実施できるようになる。
【0030】
図8に各部の電流等の波形例を示し、本実施例でのコンピュータによる判定処理について説明する。以下には、X線管5の管電流、管電圧、インバータ出力電流、インバータアーム電流の例を示すが、これらのうち少なくとも1つを用いる。あるいは複数を併用してもよい。
【0031】
図8(a)は管電流の波形例を示す。この例では、管電流に対して予め正常/異常の閾値71を定め、管電流がこれを一定時間以上継続して超えた場合に動作計継続不可能な異常と判定する。図の実線72の場合は閾値71を超えるが瞬間的なので動作継続可能と判定する。破線73の場合は管電流が一定時間以上継続して閾値71を超えているので動作継続不可能と判定する。
【0032】
図8(b)は管電圧の波形例を示す。この例では、管電圧に対して予め正常/異常の閾値71を定め、管電圧がこれを一定時間以上継続して下回った場合に動作計継続不可能な異常と判定する。図の実線75の場合は閾値74を下回るが瞬間的なので動作継続可能と判定する。破線76の場合は管電圧が一定時間以上継続して閾値76を下回っているので動作継続不可能と判定する。
【0033】
図8(c)はインバータ出力電流の波形例を示す。この例では、インバータ出力電流に対して予め正常/異常の閾値(の範囲)77を定め、インバータ出力電流がこれを一定時間以上継続して超えた場合に動作計継続不可能な異常と判定する。図の実線78の場合は閾値77を超えるが瞬間的なので動作継続可能と判定する。破線79の場合はインバータ出力電流が一定時間以上継続して閾値77を超えているので動作継続不可能と判定する。
【0034】
図8(d)はインバータアーム電流の波形例を示す。この例では、インバータアーム電流に対して予め正常/異常の閾値80を定め、インバータアーム電流がこれを一定時間以上継続して超えた場合に動作計継続不可能な異常と判定する。図の実線81の場合は閾値80を超えるが瞬間的なので動作継続可能と判定する。破線82の場合はインバータアーム電流が一定時間以上継続して閾値80を超えているので動作継続不可能と判定する。
【0035】
以上の例では、閾値を継続して超えた時間を問題としたが、ある時間内に連続して2回以上閾値を超えたら継続不可とするような変形例も考えられる。
【0036】
図4はX線管取替え時期を予告する機能を加えた実施例における処理を示すフローチャートである。ステップ65,67までは、図3に示した手順と同じなので説明を省略する。ステップ65での電源再投入の後、放電の頻度を算出し(67)、放電の頻度が予め定められたしきい値と比較し(68)、放電の頻度が予め定められたしきい値を上回る場合にはX線管の取替え時期であることを予告する(69)。この実施例は、X線管での高電圧電源の放電の要因の1つに陽極(ターゲット)表面の荒れによる尖端への電荷集中があり、X線管の寿命末期には高電圧電源の放電の頻度が高まるという性質を利用したものである。本実施例によれば、X線管の寿命を予め知ることができるので、不意にX線管の故障によりX線装置システムが動作不能に陥ることを防止できる。
【0037】
以上、X線装置システムに使用されるX線管の高電圧電源制御回路についての実施例について説明したが、X線管に限らず、高電圧の必要な電子管、とくに進行波管、クライストロン、マグネトロンなどの送信出力管の高電圧電源制御回路にも本発明は適用することができる。
【0038】
【発明の効果】
以上述べた本発明によれば、X線装置システムの高電圧放電の際に動作再開を確実かつ自動的に実現することができ、X線装置システムの操作にかかる手数を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるX線装置システムの構成例を示すブロック図。
【図2】本発明によるX線装置システムの他の構成例を示すブロック図。
【図3】実施例における高電圧電源放電時の処理手順を示すフローチャート。
【図4】X線管取替え時期予告のための処理手順を示すフローチャート。
【図5】実施例において、電源を冗長化した場合の電源構成を示す回路図。
【図6】実施例における制御回路の構成例を示すブロック図。
【図7】実施例における電流検出回路の構成を示す回路ブロック図。
【図8】実施例における制御回路内の判定例を説明するための波形図。
【図9】本発明が適用されるX線装置システムの構成例を示す回路ブロック図。
【符号の説明】
1……高電圧電源制御回路、1a,1b,1c…コンピュータ、2……高電圧電源、3……フィラメント加熱用電源、4……電流検出回路、5……X線管、91…制御整流器、92…高周波インバータ、93…高電圧整流器、94…高電圧ケーブル、95…高電圧トランス、98…フィラメント加熱回路。

Claims (2)

  1. X線管と接続された高電圧電源及び前記X線管のフィラメント加熱用電源の各電源について、前記高電圧電源により前記X線管で放電が生じた時に前記各電源の供給を停止する機能を有したX線高電圧電源制御装置であって、
    前記放電時における放電電流および放電継続時間を計測するとともに、前記計測された放電電流の大きさが予め定めた閾値を超えるか否かの状態、又は前記計測された放電継続時間が予め定めた時間以上であるか否かの状態を判定する機能を有した少なくとも3台のマイクロコンピュータと、
    前記マイクロコンピュータによって判定されたそれぞれ結果の多数決を採る多数決手段と、
    前記多数決手段によって採られた結果により、前記計測された放電電流の大きさが予め定められた閾値を超えた状態であって前記計測された放電継続時間が予め定められた時間以上継続していれば前記X線管への前記各電源の供給を停止したままとし、前記計測された放電電流の大きさが予め定められた閾値を超えた状態であっても前記計測された放電継続時間が予め定められた時間以上継続していなければ前記X線管への前記各電源を再投入する制御手段と、を備えたことを特徴とするX線高電圧電源制御装置。
  2. 前記制御手段は、前記各電源の再投入後に、前記X線管の放電の発生頻度を監視し、その監視された放電の発生頻度が予め定めた閾値を上回る場合に前記X線管の取替え時期と予告判定することを特徴とする請求項1に記載のX線高電圧電源制御装置。
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