JP3651796B2 - 電力変換装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力系統の電圧・無効電力調整を行ったり系統安定化装置などに適用したりするのに好適な、自励式電圧型電力変換装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電力系統の電圧調整を行うために、静止型無効電力補償装置(SVC)を適用したり、潮流を適切に保ち電力系統の損失を低減して電力系統を安定化するために、直列型インピーダンス補償装置や移相器等の系統安定化装置を適用したりしている。これらは、電力系統の出力無効電力を連続的に調整したり、インピーダンスや移相量を連続的に調整したりするために、電力用の半導体スイッチを備えた大容量の電力変換器を用いている。特に近年では、制御能力が高いことから、自励式電圧型電力変換装置が適用される傾向にある。
【0003】
図13は、このような用途で利用される従来の自励式電圧型電力変換装置の構成例を示したものである。同図において、インバータ1は、スイッチング素子11〜14と、逆並列ダイオード15〜18とから構成されている。インバータ1の交流出力端は、変換用変圧器3を介して電力系統側に接続される。一方、直流側にはコンデンサ5を接続している。
【0004】
自励式電圧型電力変換装置の動作としては、直流コンデンサ5を適宜充電した後、例えば、図14(a)に示すようなパルスにより、スイッチング素子11を動作させ、これと逆のパルスをスイッチング素子13に与える(不図示)。また、同図(b)に示すようなパルスにより、スイッチング素子12を動作させ、これと逆のパルスをスイッチング素子14に与える(不図示)。その結果、変換器用変圧器3の1次側には、スイッチング素子11を動作させるパルスとスイッチング素子12を動作させるパルスの差分が供給されて、同図(c)に示す出力電圧Vdが得られる。
【0005】
なお、変換器用変圧器3の巻数比は簡単のため1:1としているが、電力系統側の電圧階級と、インバータ側の定格電圧により適宜巻数比を変更しても動作原理には影響しない。
【0006】
ここで、各スイッチング素子に与えるパルスのタイミングと、導通期間を調整することにより、出力電圧の基本波成分の位相と大きさを任意に調整できるため、この作用を利用して上位の制御装置と組み合わせることによって前述の電圧制御、無効電力制御、インピーダンス補償、移相などの動作をさせている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図14(c)の出力電圧中には多量の高調波成分が含まれている。この高調波成分は、電力系統に流出すると、通信障害を引き起こしたり、他の機器に流れ込んで過熱や異常振動を引き起こしたりする場合があるので、この高調波成分の発生量はなるべく少ないことが望ましい。その高調波成分の上限は、高調波抑制対策ガイドライン等で規定されているとおりである。
【0008】
そこで、従来は、発生した高調波の電力系統側への流出を抑制するために、各スイッチング素子に与えるパルスの数を多くしたり、複数のインバータに対応する変換器用変圧器の複数の巻線を直列接続して多重化したりする技術が適用されていた。
【0009】
しかしながら、パルス数を多くすると、スイッチング素子のスイッチング動作に伴う損失が増加したり、素子の最小オンパルス電圧の制約等によりスイッチング素子の利用率が低下してシステムを経済的に構築することが困難になっていた。一方、多重化すると、多重数に応じて発生高調波が低減するので、多重数は多いほうが望ましいが、変換器用変圧器の巻線の個数およびインバータの台数が多くなり、やはり経済面で不利になるという問題があった。
【0010】
本発明の電力変換装置は、このような問題を解決するために、スイッチング損失を低減しつつ、低コストで発生高調波を低減する電力変換装置を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の電力変換装置は、容量の異なる少なくとも二つのインバータおよびそれぞれのインバータの直流側にコンデンサを有し、少なくとも二つのインバータのうちの第1のインバータは、第2のインバータより大容量で系統周波数と等しい動作周波数で動作し、変換器用変圧器を介して系統に接続され、第2のインバータは、第1のインバータより小容量で系統周波数より高い周波数で第1のインバータと同期して動作し、変換器用変圧器と第1のインバータとの間に直列に配置された加算用変圧器を介して変換器用変圧器に接続されてなることを特徴とする。
【0012】
これにより、スイッチング損失が少なく、発生高調波も少ない電力変換装置を低コストで実現することができる。
【0013】
請求項2記載の電力変換装置は、請求項1に記載の電力変換装置において、
第1のインバータと第2のインバータの直流側は相互に接続されて一個のコンデンサを共有し、変換器用変圧器と第1のインバータとの間に直列に配置された加算用変圧器の1次巻線と2次巻線の巻数は互いに異なることを特徴とする。
【0014】
これにより、直流コンデンサを一つとしても、第1の実施の形態と同様、スイッチング損失が少なく、発生高調波も少ない電力変換装置をさらに低コストで実現することができる。
【0015】
請求項3記載の電力変換装置は、請求項1または請求項2に記載の電力変換装置において、第1のインバータと第2のインバータはそれぞれが二つのコンデンサを有するNPCインバータによって構成されてなることを特徴とする。
【0016】
これにより、インバータ1,2をNPC(Neutral Point Clamped)インバータとすることにより、第1の実施の形態における効果よりさらに高調波を低減することができる。
【0017】
請求項4記載の電力変換装置は、請求項1に記載の電力変換装置において、第2のインバータの出力端は加算用変圧器を介さず、変換器用変圧器と第1のインバータとの間に直列に接続されてなることを特徴とする。
【0018】
これにより、変圧器を省略しても、第1の実施の形態と同様に、スイッチング損失が少なく、発生高調波も少ない電力変換装置をさらに低コストで実現することができる。
【0019】
請求項5記載の電力変換装置は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電力変換装置において、第1のインバータと第2のインバータはそれぞれが単相インバータ、NPCインバータまたは三相インバータの任意の組み合わせで構成されることを特徴とする。
【0020】
これにより、第1の実施の形態乃至第4の実施の形態と同様、スイッチング損失が少なく、発生高調波も少ない電力変換装置を低コストで実現することができる。
【0021】
請求項6記載の電力変換装置は、請求項5に記載の電力変換装置において、変換器用変圧器の第1の巻線を介して系統に接続される第1のインバータと変換器用変圧器の第1の巻線と第1のインバータとの間に第1の加算用変圧器を介して直列に接続される第2のインバータに加えて、第2のインバータより大容量で系統周波数と等しい動作周波数で動作し、変換器用変圧器の第2の巻線を介して系統に接続される第3のインバータと、第1のインバータより小容量で系統周波数より高い周波数で第3のインバータと同期して動作し、変換器用変圧器の第2の巻線と第3のインバータとの間に第2の加算用変圧器を介して直列に接続される第4のインバータを有し、変換器用変圧器の第1の巻線と第2の巻線の1次側は直列に接続され、かつ位相差を発生するように結線されてなることを特徴とする。
【0022】
このように多重化を移相を行いながら組合せることにより、第1の実施の形態にあげた、スイッチング損失が少なく、発生高調波も少ない電力変換装置を低コストで実現するという効果に加えて、さらに高調波を低減することができる。
【0023】
請求項7記載の電力変換装置は、請求項6に記載の電力変換装置において、変換器用変圧器の巻線は一組であり、第1のインバータ、第2のインバータおよび第1の加算用変圧器からなる出力端と、第3のインバータ、第4のインバータおよび第2の加算用変圧器からなる出力端とを、それぞれに対応する結合リアクトルを介して接続し、変換器用変圧器の1次巻線に出力することを特徴とする。
【0024】
これにより、変圧器の巻線の個数を減らしても、第6の実施の形態と同様、多重化を組合せることにより、第1の実施の形態にあげた、スイッチング損失が少なく、発生高調波も少ない電力変換装置を低コストで実現するという効果に加えて、さらに高調波を低減することができる。
【0025】
請求項8に記載の電力変換装置は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の電力変換装置において、第1のインバータおよび第2のインバータより小容量で系統周波数より十分高い周波数で第1のインバータおよび第2のインバータに同期して動作する第3のインバータは、変換器用変圧器と第1のインバータとの間に直列に接続される第2の加算用変圧器を介して接続されてなることを特徴とする。
【0026】
このようにインバータの数を増やすことにより、出力電圧きざみを細かくし、高調波を顕著に抑制することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態:請求項1に対応)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電力変換装置の構成図である。
同図に示すように、1は所定の容量のインバータ、2はインバータ1より少ない容量のインバータであり、夫々は、スイッチング素子11〜14,21〜24、逆並列ダイオード15〜18,25〜28によって構成されている。
【0028】
インバータ1の交流出力は、変換器用変圧器3を介して電力系統側に送られる。インバータ2の交流出力は、変換器用変圧器3とインバータ1との間に直列に接続された加算用変圧器4を介して送り込まれる。また、インバータ1,2の直流側には各々コンデンサ5,6が接続されている。
【0029】
図2を用いて本実施の形態の動作を説明する。容量の大きいインバータ1は、図2(a)に示すように、系統周波数と等しい動作周波数で動作し、その出力電圧の大きさは3Vdであるとする。一方、容量の小さいインバータ2は、図2(b)に示すように、系統周波数より高い動作周波数で第1のインバータと同期して動作し、その出力電圧の大きさはVdとする。両者の出力は、巻数比1:1の加算用変圧器4を介して直列接続されているので加算され、加算された合計の出力電圧は、図2(c)に示すように、正弦波により近い波形となる。
【0030】
本実施の形態の構成は、図1に示すように、簡単のために単相ブリッジで示されている。しかしながら、一般的なインバータは、図3に示すように、三相分が直流側のコンデンサ5を共有しているケースが多い。この場合にも、各相に対応するインバータ、すなわち第1相のスイッチング素子11a〜14a、逆並列ダイオード15a〜18a、第2相のスイッチング素子11b〜14b、逆並列ダイオード15b〜18b、第3相のスイッチング素子11c〜14c、逆並列ダイオード15c〜18cによる作用・効果は、本実施の形態の単相の場合と同一である。
【0031】
したがって、以下の実施の形態においても、構成は単相ブリッジであるが、三相分構成と同一の作用・効果をも示している。
【0032】
また、加算用変圧器4の巻数比は1:1としたが、第1のインバータと第2のインバータの直流側の電圧比を変化させても、この電圧比に応じて巻数を変化させれば、作用・効果に変りは無くなる。例えば、インバータ2の直流電圧をVdから2Vdに変化させ、同時に変圧器4の巻数比を1:2とすれば、合成出力電圧は変化しない。
【0033】
本実施の形態によれば、容量全体の3/4を占める大容量インバータ1が、系統周波数と同じ動作周波数、すなわち最小の動作周波数で動作するため、スイッチング損失を十分小さく保つことができる。
【0034】
また、容量全体の1/4を占める中容量インバータ2のみを高い動作周波数で動作させるため、電力変換装置全体で発生する高調波を著しく低減することができる。
【0035】
さらに、同じ出力電圧を単純な多重化のみで得ようとすると、4つのインバータと変換器用変圧器の4つの巻線が必要となるが、本実施の形態のように工夫された多重化では2つのインバータ1,2と一つの巻線を有する変換器用変圧器3と加算用変圧器4だけで実現しており、システム構成がシンプルになるので、低コストで電力変換装置を提供することができる。
【0036】
(第2の実施の形態:請求項2に対応)
図4は、本発明の第2の実施形態を示す電力変換装置の構成図である。ここで、図1と同一の要素は説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
図4では、インバータ1,2の直流側は並列に接続されており、一つのコンデンサ5を共有している。一方、加算用変圧器4の2次側(インバータ1と直列側)と1次側(インバータ2と並列側)の巻数比は1:3でインバータ2の交流出力電圧の1/3を2次側に発生させるように構成されている。
【0037】
本実施の形態のインバータ1,2のスイッチング動作は、第1の実施形態と同じであるが、スイッチング動作以外で第1の実施形態と異なる点は、コンデンサ5を共有したので、インバータ2の動作電圧がVdから3Vdへ3倍大きくなっている点である。したがって、加算用変圧器4の巻数比を考慮すると、1次側で見たときの動作、すなわち合計の交流出力電圧は第1の実施の形態と同一になる。
【0038】
本実施の形態によれば、直流コンデンサを一つとしても、第1の実施の形態と同一の効果、すなわち、システム構成がシンプルになるので、低コストで電力変換装置を提供することができる。
【0039】
(第3の実施の形態:請求項3に対応)
図5は、本発明の第3の実施の形態における電力変換装置の構成図である。ここで、図1と同一の要素は説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
図5において、インバータ1,2は、NPC(Neutral Point Clamped)インバータと呼ばれる構成のものであり、それぞれのインバータは、スイッチング素子11〜14,41〜44,21〜24,51〜54、逆並列ダイオード15〜18,45〜48,25〜28,55〜58および中性点クランプダイオード19,20,49,50,29,30,59,60によって構成されている。また、それぞれのインバータの直流側には、二つづつのコンデンサ5a,5bと、6a,6bが接続されている。インバータ1,2の直流電圧すなわちコンデンサの充電電圧は、インバータ1側が各々5Vd、インバータ2側が各々Vdとする。
【0040】
各インバータのスイッチング素子と出力電圧の関係の詳細説明は省略するが、スイッチング素子のオン/オフの組み合わせによって、インバータ1は、+10Vd,+5Vd,0,−5Vd,−10Vdの出力電圧を、インバータ2は、+2Vd,+Vd,0,−Vd,−2Vdの出力電圧を発生させることができる。
【0041】
このときのインバータ1の各スイッチング素子のオン/オフ状態は、図6(a)に示すように、系統周波数の1周期内で1回オン/オフを繰り返している。
【0042】
図6(b)および(c)に示すようにインバータ1,2を動作させることによって、変換器用変圧器3の1次側には、図6(d)に示すように、正弦波にさらに近い波形のインバータ1,2の合成出力が加えられる。
【0043】
本実施の形態によれば、インバータ1,2をNPCインバータとすることにより、第1の実施の形態であげた、システム構成がシンプルになるので、低コスト化を図りながら高調波を低減する効果に加えて、さらに高調波を低減することができる。
【0044】
(第4の実施の形態:請求項4に対応)
図7は、本発明の第4の実施形態を示す電力変換装置の構成図である。ここで、図1と同一の要素は説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
図7においては、インバータ2の交流側出力端が、変換器用変圧器3とインバータ1の間に直列に接続されており、図1で示した加算用変圧器4は省略されている。なお、本実施の形態において3相を構成する場合には、インバータ1側は図3で示したようにコンデンサ5を共有することができるが、加算用変圧器4による回路の絶縁がなされないため、インバータ2側ではコンデンサ6を共有することができず、インバータ2およびコンデンサ6はそれぞれ3相回路分必要となる。
【0045】
本実施の形態のインバータ1,2のスイッチング動作は第1の実施形態と同じであり、合計の交流出力電圧は第1の実施例と同一となる。
【0046】
本実施の形態によれば、変圧器を省略しても、第1の実施例と同じく、システム構成がシンプルになるので、低コストで電力変換装置を提供することができる。
【0047】
(第5の実施の形態:請求項5に対応)
第5の実施形態に対する構成図と詳細な動作説明は省略するが、インバータ1を図1の単相ブリッジ・インバータ構成、インバータ2を図5のNPCインバータ構成としても、あるいはその逆の組み合わせとしても、インバータ1とインバータ2の直流電圧の比、または、加算用変圧器4の1次巻線と2次巻線の巻線比を適切に選定し、インバータ1側は系統周波数と等しい動作周波数で動作させ、インバータ2側に高調波を低減するのに適切な、かつ系統周波数より高い動作周波数となるパルスを与えれば、第1の実施の形態乃至第4の実施の形態と同じ効果を奏することができる。
【0048】
インバータ1が図1の単相ブリッジ・インバータ構成、インバータ2が図5のNPCインバータ構成の場合を例にして、それぞれのインバータの出力電圧波形例を図8(a)、(b)に、合成の出力電圧波形例を図8(c)に示す。インバータ1のレベル数が3、インバータ2のレベル数が5とすると、合成した交流出力電圧のレベル数は3×5=15となる。一般に、インバータ1のレベル数がM、インバータ2のレベル数がNとすると、合成した交流出力電圧のレベル数はM×Nと表すことができる。
【0049】
第5の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果と第3の実施の形態の効果との相乗効果を得ることができる。すなわち、システム構成がシンプルになるので、低コストで高周波成分を低減することができ、両実施の形態よりさらに高周波成分を低減することができる。
【0050】
(第6の実施の形態:請求項6に対応)
図9は、本発明の第6の実施形態を示す電力変換装置の構成図である。ここで、図1と同一の要素は説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
図9においては、大容量で系統周波数と等しい動作周波数で動作するインバータ7、小容量で系統周波数より高い周波数で動作するインバータ8が追加され、それらの直流側は、それぞれがインバータ1,2の直流側と並列に接続されており、それぞれがコンデンサ5、6を共有している。
【0051】
インバータ1,7の交流側は、変換器用変圧器の第1の巻線31と第2の巻線32へ、2次側がインバータ1,7と直列に配置された加算用変圧器4a,4bを介して接続されている。インバータ2,8の交流側は、加算用変圧器4a,4bの1次側へ接続されている。なお、変換器用変圧器3の2次側は電力系統に接続されている。
【0052】
本実施の形態のインバータ7,8のスイッチング動作はそれぞれインバータ1,2と同じであるが、変換器用変圧器3の巻線部で30度移相されるため、インバータ7,8の出力電圧もインバータ1,2に対して移相される。その結果、変換器用変圧器3の2次側に現れる合成の出力電圧は、第1の実施の形態よりも正弦波に近くなり高調波がさらに低減する。
【0053】
本実施の形態によれば、移相と多重化とを組み合わせることにより、第1の実施の形態例にあげた効果とともに、さらに高調波を低減する効果を奏することができる。
【0054】
また、本実施の形態では、変換器用変圧器3の巻線構成を変えることにより、移相を行っているが、各巻線の巻線構成は全て同一とし、各インバータに与えるパルスのタイミングを適宜ずらすだけでも特定の次数の高調波を抑制する効果を奏することができる。
【0055】
(第7の実施の形態:請求項7に対応)
図10は、本発明の第7の実施形態を示す電力変換装置の構成図である。ここで、図9と同一の要素は説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0056】
図10においては、変換器用変圧器3は巻線を一組しか備えておらず、インバータ1およびインバータ2の交流出力電圧が合成される加算用変圧器4aの2次側の一端は、結合リアクトル9を介して変換器用変圧器3に接続されている。他方のインバータ7およびインバータ8の交流出力電圧が合成される加算用変圧器4bの2次側の一端も、結合リアクトル9を介して変換器用変圧器3に接続されている。
【0057】
本実施の形態のインバータ1,2,7,8のスイッチング動作は、第6の実施の形態と同じである。
【0058】
結合リアクトル9は、インバータ1とインバータ7の間の出力電圧の差異によって発生するが系統側へは流出しない横流成分に対して大きなリアクタンス成分を有しているので、横流電流が流れるのを抑制する。一方、インバータ1から系統側およびインバータ7から系統側へ流出する成分に対して小さなリアクタンス成分を有している。
【0059】
本実施の形態によれば、変圧器の巻線の個数を減らしても、第6の実施の形態と同一の効果を奏することができる。また、一般に多重化するための変圧器は構造が複雑でコストが高くなりがちであるが、本実施の形態例ではより簡単な構成要素で多重化を実現することができる。
【0060】
(第8の実施の形態:請求項8対応)
図11は、本発明の第8の実施形態を示す電力変換装置の構成図である。ここで、大容量で系統周波数と等しい動作周波数で動作する第1のインバータの直流電圧を9Vd、中容量で系統周波数より高い周波数で第1のインバータに同期して動作する第2のインバータの直流電圧を3Vd、小容量で系統周波数より十分高い周波数で前記第1、第2のインバータに同期して動作する第3のインバータの直流電圧をVdとすることによって、図12(d)に示すように、交流側の出力電圧は、+13Vdから−13Vdの範囲をVdの刻みで調整できるようになるので、発生高調波を顕著に低減することができる。
【0061】
以上のように、インバータの数を増やすことにより出力電圧刻みを細かくし、高調波を抑制することができる。
【0062】
一般的に、図1で示すような単相インバータを用いた場合には、直流電圧比を小さいほうから1:3:32:…:3Nとすることにより、出力電圧の範囲を+(1+3+32+…+3N)〜−(1+3+32+…+3N)とすることができる。
【0063】
図5のNPCインバータを用いた場合には、直流電圧比を小さいほうから1:5:52:…:5Nとすることで、出力電圧の範囲を+2×(1+5+52+…+5N)〜−2×(1+5+52+…+5N)とすることができる。しかしながらインバータの数をあまり多くすると、「従来の技術」で述べたように経済面で不利となるため、目標とする高調波のレベルやシステムの損失を考慮して最適な最終構成を決定することになる。
【0064】
本実施の形態によれば、インバータの数を増すことにより、出力電圧のきざみを細かくして、高周波成分を顕著に抑制することができる。
【0065】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、第2のインバータより容量が大きく系統周波数と等しい動作周波数で動作する第1のインバータと、第1のインバータより容量が小さく系統周波数より高い周波数で、第1のインバータと同期して動作する第2のインバータとからなり、両者の出力電圧を変換器用変圧器と第1のインバータとの間に直列に接続された加算用変圧器を介して合成することにより、スイッチング損失を低減しつつ低コストで発生高調波を低減できる電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る動作を説明する図。
【図3】図1のインバータ1の詳細を示す構成図。
【図4】本発明の第2の実施の形態を示す構成図。
【図5】本発明の第3の実施の形態を示す構成図。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る動作を説明する図。
【図7】本発明の第4の実施の形態を示す構成図。
【図8】本発明の第5の実施の形態に係る動作を説明する図。
【図9】本発明の第6の実施の形態を示す構成図。
【図10】本発明の第7の実施の形態を示す構成図。
【図11】本発明の第8の実施の形態を示す構成図。
【図12】本発明の第8の実施の形態に係る動作を説明する図。
【図13】従来の電力変換装置の構成図。
【図14】従来の電力変換装置の動作を説明する図。
【符号の説明】
1,2,7,8・・・インバータ、3・・・変換器用変圧器、4,4a,4b・・・加算用変圧器、5,6,5a,5b,6a,6b・・・コンデンサ、9・・・結合リアクトル、11〜14,21〜24,41〜44,51〜54・・・スイッチング素子、11a〜14a,11b〜14b,11c〜14c・・・スイッチング素子、15〜18,25〜28,45〜48,55〜58・・・逆並列ダイオード、15a〜18a,15b〜18b,15c〜18c・・・逆並列ダイオード、19,20,49,50,29,30,59,60・・・中性点クランプダイオード、31,32・・・変換器用変圧器巻線

Claims (8)

  1. 容量の異なる少なくとも二つのインバータおよびそれぞれのインバータの直流側にコンデンサを有し、前記少なくとも二つのインバータのうちの第1のインバータは、第2のインバータより大容量で系統周波数と等しい動作周波数で動作し、変換器用変圧器を介して系統に接続され、第2のインバータは、第1のインバータより小容量で系統周波数より高い周波数で第1のインバータと同期して動作し、前記変換器用変圧器と前記第1のインバータとの間に直列に配置された加算用変圧器を介して前記変換器用変圧器に接続されてなることを特徴とする電力変換装置。
  2. 前記第1のインバータと前記第2のインバータの直流側は相互に接続されて一個のコンデンサを共有し、前記変換器用変圧器と前記第1のインバータとの間に直列に配置された前記加算用変圧器の1次巻線と2次巻線の巻数は互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
  3. 前記第1のインバータと前記第2のインバータはそれぞれが二つのコンデンサを有するNPCインバータによって構成されてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
  4. 前記第2のインバータの出力端は前記加算用変圧器を介さず、変換器用変圧器と第1のインバータとの間に直列に接続されてなることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
  5. 前記第1のインバータと前記第2のインバータはそれぞれが単相インバータ、NPCインバータまたは三相インバータの任意の組み合わせで構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
  6. 前記変換器用変圧器の第1の巻線を介して系統に接続される前記第1のインバータと前記変換器用変圧器の第1の巻線と前記第1のインバータとの間に第1の加算用変圧器を介して直列に接続される前記第2のインバータに加えて、前記第2のインバータより大容量で系統周波数と等しい動作周波数で動作し、前記変換器用変圧器の第2の巻線を介して系統に接続される第3のインバータと、前記第1のインバータより小容量で系統周波数より高い周波数で前記第3のインバータと同期して動作し、前記変換器用変圧器の第2の巻線と前記第3のインバータとの間に第2の加算用変圧器を介して直列に接続される第4のインバータを有し、前記変換器用変圧器の第1の巻線と第2の巻線の1次側は直列に接続され、かつ位相差を発生するように結線されてなることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
  7. 前記変換器用変圧器の巻線は一組であり、前記第1のインバータ、前記第2のインバータおよび前記第1の加算用変圧器からなる出力端と、前記第3のインバータ、前記第4のインバータおよび前記第2の加算用変圧器からなる出力端とを、それぞれに対応する結合リアクトルを介して接続し、前記変換器用変圧器の1次巻線に出力することを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置。
  8. 前記第1のインバータおよび前記第2のインバータより小容量で系統周波数より十分高い周波数で前記第1のインバータおよび前記第2のインバータに同期して動作する第3のインバータは、前記変換器用変圧器と前記第1のインバータとの間に直列に接続される第2の加算用変圧器を介して接続されてなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
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