JP3650488B2 - 中空糸膜樹脂固定部の切断装置及び中空糸膜モジュールの製造方法 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数本の束ねられた中空糸膜束が、筒状ケース内部の一端部において樹脂固定された筒状ケースの中空糸膜樹脂固定部を、中空糸膜がその切断端面で開口状態となるよう切断する、中空糸膜樹脂固定部の切断装置及び切断方法に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
近年、中空糸膜を用いた中空糸膜モジュールは、医療用や浄水器、清水器、気体分離用など、多くの分野で用いられている。
このような中空糸膜モジュールの形態としては、中空糸膜の両端を別々に筒状ケース内に樹脂固定して開口状態としたものや、中空糸膜をＵ字状に束ね、その端部を筒状ケース内に樹脂固定して開口状態としたもの、或いは中空糸膜の一端を封止し、他端を樹脂固定して開口状態としたものなどが一般的である。
中空糸膜を前述したモジュールの形態とするには、中空糸膜束を筒状ケース内に充填したのちに、液状の固定用樹脂を注入、固化させた後、筒状ケースの中空糸膜樹脂固定部をギロチンカッターで切断する方法が用いられている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した切断方法に於いては、例えば濾過、分離能力を大きくするためにその外径を大きくした筒状ケース内に充填した中空糸膜の樹脂固定部を切断する際、その切断長が、通常の筒状ケースに比較して長い為、ギロチンカッター先端部に大きな応力が長時間印可され、刃こぼれが発生しやすいといった不都合があった。
【０００４】
更にギロチンカッターを用いた切断方法による中空糸膜樹脂固定部の切断は、刃で傷を付けた部分に発生した応力集中を、切断の進行と共に他の部分に広げるという原理を利用している為、中空糸膜樹脂固定部の切断面がひび割れた状態になり易くなるとともに、硬度の高い筒状ケース外周にも切断バリが発生しやすいといった不都合があった。
【０００５】
またギロチンカッターに変えて回転軸に装着した回転刃により筒状ケースの中空糸膜樹脂固定部の切断を行う切断装置も存在するが、１枚の回転刃で中空糸膜樹脂固定部を切断する為多量のバリが発生するとともに、切断面の平滑性の低い筒状ケースしか得られず、更に中空糸膜内に固定樹脂の切粉が侵入、付着しやすいといった不都合があった。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
本発明はこのような問題点を解決する為になされたもので、筒状ケース、特に大口径を有する筒状ケースの中空糸膜樹脂固定部の切断を行うに当たって、切断面の平滑性が高く、かつ中空糸膜内に樹脂の切粉が侵入しにくい中空糸膜樹脂固定部の切断装置及び切断方法を提供することを目的とするものである。
【０００７】
即ち、本発明の中空糸膜樹脂固定部の切断装置は、筒状ケースの端部に中空糸膜束が樹脂固定された中空糸膜樹脂固定部の切断装置であって、荒切り用回転刃と、仕上げ用回転刃とを有する切断装置である。
また、本発明の中空糸膜モジュールの製造方法は、筒状ケースの端部に中空糸膜束が樹脂固定された中空糸膜樹脂固定部を、荒切り用の回転刃で切断した後に、その端面を仕上げ用回転刃により更に切断して平滑化する製造方法である。
【０００８】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の中空糸膜樹脂固定部の切断装置を更に詳細に説明する。
図１は本発明の中空糸膜樹脂固定部の切断装置の一形態例を示す平面図である。
図１において、それぞれ１ａと１ｂ、２ａと２ｂ、３ａと３ｃ、４ａと４ｂとは、前後方向に重なっており、ａが付された番号の部材が向かって手前側に、ｂが付された番号の部材が向かって後ろ側に配設されている。
【０００９】
荒切り用回転刃回転モータ１ａは、中空糸膜樹脂固定部を最初に切断するための荒切り用回転刃２ａを回転させるモータであり、回転数可変型のインバータ制御のＡＣサーボモータ等を用いることができる。
荒切り切断部を構成する荒切り用回転刃２ａは、中空糸膜樹脂固定部を荒切りする回転刃であり、図３に示すような、その外周部に複数のチップが配設された超硬チップソー等を用いることができる。
１軸ステージ３ａは荒切り用回転刃２ａを上下方向に移動させるためのステージであり、油圧シリンダ４ａにより駆動させる。
【００１０】
筒状ケース５、６は、筒状ケース内部の一端部において中空糸膜が樹脂固定されており、インデックステーブル９に、それぞれ１８０度毎に配置されている。インデックステーブル９は、筒状ケースを１８０度づつ回転させるためのものであり、図中回転刃の位置から最も遠い位置で装着した筒状ケースをインデックステーブルにより回転させ、筒状ケース５の位置（回転刃の最接近位置）で中空糸膜樹脂固定部の切断を行う。
インデックステーブルとしては油圧式のもの等を用いることができる。
【００１１】
クランパ７、８は、それぞれインデックステーブル９上の筒状ケース５、６を固定するものであり、中空糸膜樹脂固定部の切断を行う際に位置ずれなど起こさぬよう、筒状ケースの上面と側面からサポートするよう設計されている。
１軸ステージ１０はインデックステーブル９を図中向かって左右方向に移動させるものであり、ＡＣサーボモーター、パルスモータ等により駆動する。
装置架台１１は装置を固定する架台であり、枠１２は、荒切り用回転刃回転用モータ１ａ、荒切り用回転刃２ａ、１軸ステージ３ａ、油圧シリンダ４ａ及び後述する仕上げ用回転刃回転用モータ１ｂ、仕上げ用回転刃２ｂ、１軸ステージ３ｂ、油圧シリンダ４ｂを固定するものである。
【００１２】
仕上げ用回転刃回転用モータ１ｂは仕上げ用回転刃を回転させるモータであり、回転数可変型のインバータ制御のＡＣサーボモータ等が使用できる。
仕上げ用切断部を構成する仕上げ用回転刃２ｂは、荒切りを行った中空糸膜樹脂固定部を更に切断するための回転刃であり、図４に示すように、その外周部にチップ等が配設されておらず、外周部に形成された歯が連続的に中空糸膜樹脂固定部に接触することにより、中空糸膜樹脂固定部を切断することができるものである。
この様な仕上げ用回転刃としては、スリッター、サーキュラーナイフ、高速度鋼円形状切り出し刃等を用いることができる。
１軸ステージ３ｂは仕上げ用回転刃２ｂを上下方向に移動させるもので、油圧シリンダ４ｂにより駆動する。
【００１３】
次に図１により、本発明の中空糸束樹脂固定部の切断装置の動作を、装置動作開始初期状態から説明する。
まず図示していない装置全体の動作開始スイッチを押すと、荒切り用回転刃回転用モータ１ａ及び仕上げ用回転刃回転用モータ１ｂが予め設定された回転数で回転を開始させる。
その後装置筒状ケースを、インデックステーブル９上のクランパ８に載せ、図示していないクランプ＆インデックス回転ＯＮスイッチ押すと、筒状ケースはクランパ８により固定されるとともに、インデックステーブル９が１８０度回転し、筒状ケース５の位置に移動する。その後１軸ステージ１０が図中左方向に移動することにより、筒状ケースの切断部を荒切り用回転刃２ａの真下まで移動する。
【００１４】
その後荒切り用回転刃２ａを上下方向に移動させる１軸ステージ３ａが下方へ移動し、荒切り用回転刃２ａにより筒状ケース５の中空糸膜樹脂固定部の荒切りが行われる。
荒切り終了後、１軸ステージ３ａは上方に移動し、荒切り用回転刃がもとの位置に復帰するのと同時に、仕上げ用回転刃２ｂを上下方向に移動させる１軸ステージ３ｂが下方に移動し、仕上げ用回転刃２ｂにより筒状ケースの中空糸膜樹脂固定部の切断端面が更に切断される。
図２は、本発明の切断装置により筒状ケースの中空糸膜樹脂固定部の切断を行う際の、切断位置の関係を示す模式図であるが、仕上げ用回転刃は荒切り用回転刃により切断を行った端面から０．５〜１ｍｍの所を切断できるようセットしておく。
仕上げ用回転刃による切断終了後、１軸ステージ３ｂは上方に移動し、仕上げ用回転刃がもとの位置に復帰する。また１軸ステージ１０も図中向かって右方向の動作開始原点までに移動する。
【００１５】
これらの動作終了後、次に切断を行う筒状ケースを、インデックステーブル９上のクランパ７ｂに載せ、再度図示していないクランプ＆インデックス回転ＯＮスイッチ押す。すると６の位置にある筒状ケースは、クランパ８により固定され、インデックステーブル９にて１８０度回転し、前述した切断動作を繰り返す。前回中空糸膜樹脂固定部の切断が終了した筒状ケースは、この時筒状ケース５の位置から筒状ケース６の位置に移動するので、この時次に切断する筒状ケースの交換装着を行う。
【００１６】
本発明の切断装置及び切断方法においては、中空糸膜樹脂固定部を荒切り用回転刃により荒切りした後に、仕上げ用回転刃により更に切断するので、荒切り用回転刃による切断の際の発生したバリが仕上げ用回転刃による切断で除去され、中空糸膜樹脂固定部切断面の平滑性を向上させることができるとともに、樹脂切粉の中空糸膜内への侵入の少ない切断を行うことができる。
【００１７】
更に好ましくは、荒切り用回転刃の送り速度を７００ｍｍ／ｍｉｎ以下、仕上げ用回転刃の送り速度を３００ｍｍ／ｍｉｎ以下とすると、回転体の歯の破損を防止することができ、回転体を長寿命化することができるとともに、平滑性の高い切断面を有する筒状ケースを得ることができる。
また、荒切り用回転刃の回転数を２５００〜４０００ｒｐｍとすると、切断効率よく荒切りを行うことができるとともに仕上げ用回転刃の回転数を５０〜２００ｒｐｍとすると、更に平滑性の更に高い切断面を有する筒状ケースを得ることができる。
【００１８】
また、回転刃及び／又は中空糸膜樹脂固定部に対し、圧力印加した気体を噴射しながら切断を行う構成とすると、切断時のバリ、切粉の除去効率を更に向上させることができる。
この際の気体噴射は、例えば４ｋｇｆ／ｃｍ²の常温圧縮空気をデューティー比５０％（１秒ＯＮ,１秒ＯＦＦ）印加とした条件下で実施することができるが、噴出気体の種類、圧力、印加デューティー比などは切断条件に合わせて適宜設定することが好ましい。
【００１９】
また、本発明の中空糸膜樹脂固定部の切断装置及び切断方法においては、万一誤操作を行っても本質的に安全であるフェールセーフ機構や、樹脂切粉の飛散を防ぐ樹脂切粉集塵機構、刃温上昇によるバリ発生を低減する刃冷却機構、自動化を進める為の筒状ケース自動脱着機構などを装備してもよい。
図示していない本装置部分の内、制御機器については、制御盤内にプログラマブルコントローラを実装し、上記シーケンスを実行することで、本発明の動作を実現しているが、ファクトリーコンピュータを含むパーソナルコンピュータやハードウエアシーケンサーなど、同様の効果を得ることが可能な機器に変更することもできる。
【００２０】
【発明の効果】
本発明の中空糸束樹脂固定部の切断装置及び切断方法においては、筒状ケース内部の一端部において中空糸膜が樹脂固定された筒状ケースの中空糸膜樹脂固定部を切断する際、中空糸膜樹脂固定部を荒切り用回転刃で切断した後に、その端面を仕上げ用回転刃により更に切断する構成としたので、高い切断面平滑性を有する筒状ケースが得られるとともに、中空糸膜内への切分の侵入の少ない切断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】図１は、本発明の中空糸膜樹脂固定部の切断装置の一形態例を示す平面図である。
【図２】図２は、本発明の切断装置により筒状ケースの切断を行う際の、切断位置の関係を示す断面図である。
【図３】図３は、本発明に用いる荒切り用回転刃の一形態例を示す模式図である。
【図４】図４は、本発明に用いる仕上げ用回転刃の一形態例を示す模式図である。
【符号の説明】
１ａ 荒切り用回転刃回転用モータ
１ｂ 仕上げ用回転刃回転用モータ
２ａ 荒切り用回転刃
２ｂ 仕上げ用回転刃
３ａ １軸ステージ
３ｂ １軸ステージ
４ａ 油圧シリンダ
４ｂ 油圧シリンダ
５、６ 筒状ケース
７、８ クランパ
９ インデックステーブル
１０ １軸ステージ
１１ 装置架台
１２ 枠
１３ 筒状ケース
１４ 中空糸膜樹脂固定部
１５ 中空糸膜

Claims (9)

1. 筒状ケースの端部に中空糸膜束が樹脂固定された中空糸膜樹脂固定部の切断装置であって、荒切り用回転刃と、仕上げ用回転刃とを有する切断装置。
2. 前記荒切り用回転刃は円盤形状であって、外周部にチップを有する請求項１に記載の切断装置。
3. 前記仕上げ用回転刃は円盤形状であって、外周部が滑らかな円形である請求項１又は２に記載の切断装置。
4. 筒状ケースの端部に中空糸膜束が樹脂固定された中空糸膜樹脂固定部を、荒切り用の回転刃で切断した後に、その端面を仕上げ用回転刃により更に切断して平滑化する中空糸膜モジュールの製造方法。
5. 前記荒切り用回転刃は円盤形状であって、外周部にチップを有する請求項４に記載の製造方法。
6. 前記仕上げ用回転刃は円盤形状であって、外周部が滑らかな円形である請求項４又は５に記載の製造方法。
7. 前記荒切り用回転刃の送り速度を７００ｍｍ／ｍｉｎ以下とし、前記仕上げ用回転刃の送り速度を３００ｍｍ／ｍｉｎ以下として中空糸膜樹脂固定部を切断する請求項４〜６のいずれか一項に記載の製造方法。
8. 前記荒切り用回転刃の回転数を２５００〜４０００ｒｐｍとし、前記仕上げ用回転刃の回転数を５０〜２００ｒｐｍとして中空糸膜樹脂固定部を切断する請求項４〜７のいずれか一項に記載の製造方法。
9. 切断中に中空糸膜樹脂固定部に気体を噴射する請求項４〜８のいずれか一項に記載の製造方法。

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