JP3647295B2 - 過酸化脂質生成抑制剤及びこれを含有する組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、過酸化脂質生成抑制剤及び該抑制剤を含有する組成物に関するものである。更に本発明は、該抑制剤を含有する医薬品、医薬部外品、化粧品などの分野に利用可能な皮膚外用剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、生体内で生成される活性酸素が、不飽和脂肪酸と反応して過酸化脂質を生じ、人体に悪影響を及ぼすことが明らかになってきている。例えば、活性酸素は、虚血障害や放射線障害、過酸化脂質やその酸化分解物は、核酸や蛋白に作用し、動脈硬化、高血圧症、それらにより発症するによる血管障害、肝機能障害、網膜症や白内障などを引き起こす。特に皮膚では、紫外線などの環境因子の刺激を直接受けるため、活性酸素が生成しやすく、活性酸素濃度の上昇、過酸化脂質の生成等のシミ・ソバカス等の異常な色素沈着、炎症、浮腫、壊死、皺、老化等その影響が顕著である。
【0003】
又、化粧品、医薬品、飲食品等においては、油脂類を含有するものが多く、保存中や使用時に活性酸素と反応して過酸化脂質を生成し、これによる品質低下や栄養の低下・人体への毒性の発現が大きな問題になっている。
【0004】
このために、従来より生体内過酸化脂質異常を改善する薬剤の探索研究が、広く行われている。代表的なものでは、天然物由来のものとして、脂溶性のトコフェロール(ビタミンE)や、水溶性のアスコルビン酸(ビタミンC)があり、合成化合物としてBHT(3,5-tert-butyl-4-hydroxytolen)やBHA(2,(3)-tert-butyl-hydroxyanysol)等が挙げられるが、その効果は満足できるものではなかった。
【0005】
これに対し、生体内過酸化脂質異常を改善する効果の高い過酸化脂質生成抑制物質を得ようという試みが数多くなされており、種々の生薬抽出物が開示されている(例えば、特開平5-316963号、特開平6-183987号、特開平8-175964号等)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記生薬抽出物は、トコフェロールやアスコルビン酸等に比べれば、ある程度高い過酸化脂質異常改善効果は得られるが、未だ充分な過酸化脂質生成抑制効果を有するものではない。又、合成化合物のBHT、BHAには、発癌性の疑いが持たれている等の問題がある。従って、過酸化脂質生成抑制効果に優れ、かつ安全性の高い物質が望まれている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような状況を鑑み、従来技術の問題点を改良せんとして鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことにキク科ハハコグサ属の植物であるグナファリウム・セミアンプレキシコール[Gnaphalium semiamplexicaule]の抽出物が、強い過酸化脂質生成抑制能を有することを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、グナファリウム・セミアンプレキシコール[Gnaphalium semiamplexicaule]の抽出物を含有することを特徴とする過酸化脂質生成抑制剤及びこの過酸化脂質生成抑制剤を含有する化粧品、食品、医薬品等の組成物を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳述する。
発明に用いるグナファリウム・セミアンプレキシコール(Gnaphalium semiamplexicaule)とは、メキシコ原産のキク科ハハコグサ属に属する植物である。
【0010】
本発明で使用するグナファリウム・セミアンプレキシコール(Gnaphalium semiamplexicaule)の抽出物とは、当該植物の葉、茎、花、種子、果実、樹皮、根茎、根等の植物体の一部または全部から抽出して得られるものである。好ましくは、葉もしくは花の一方、又は両方の混合物から抽出して得られるものがよい。又、一般的には乾燥あるいは生植物をそのままあるいは裁断して使用する。使用する抽出溶媒は、当乾燥又は生植物の乾物換算当たり5〜50部に対し下記抽出溶媒100部が用いられる。
【0011】
抽出溶媒としては、一般的には水、低級1価アルコール類(メタノール、エタノール、1―プロパノール、2―プロパノール、1―ブタノール、2―ブタノール等)、液状多価アルコール(1,3―ブチレングリコール、プロピレングリコール等)、低級アルキルエステル(酢酸エチル等)、炭化水素(ベンゼン、ヘキサン、ペンタン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル)、アセトニトリル等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても2種以上を混合して用いても良い。好ましくは、水もしくは水溶性溶媒(水との任意の割合で混合可能な溶媒。例えば、エタノール、メタノール、プロピレングリコール等)のうち1種又は2種以上の溶媒を用いるのがよい。
【0012】
抽出方法は特に限定されないが、常温又は加熱下で行われ、その方式としては通常抽出、ソックスレー抽出等がある。抽出時間に制限はないが一般的には1時間〜1週間が好ましい。
【0013】
当該抽出液はそのまま使用しても良いが、各種処理を施して使用することもできる。例えばこれらを常圧あるいは減圧下で濃縮した濃縮液、又はさらに該濃縮液中の溶媒を蒸発乾固させた固形物、また濃縮液から晶析後濾別乾燥した固形物、又は濃縮液を凍結乾燥した固形物等が挙げられる。
【0014】
本発明に係るグナファリウム・セミアンプレキシコール(Gnaphalium semiamplexicaule)の抽出物の過酸化脂質生成抑制剤としての乾物換算当たりの使用量(配合量)は、特に限定されないが、総量を基準として0.001〜20.0重量%(以下 wt%という)、特に0.01〜10wt%が望ましい。
【0015】
本発明の過酸化脂質生成抑制剤を含有する組成物は、上記過酸化脂質生成抑制剤を配合することを特徴とし、その用途は任意であるが化粧品、食品、医薬品、医薬部外品、トイレタリー用品等に広く用いることができる。
【0016】
本発明が適用される化粧品としては、剤形は特に限定されず、例えば、化粧水、乳液、クリーム、ファンデーション、パック、口紅、洗顔料、シャンプー、リンス、ヘアトニック等を挙げることができる。これらの化粧品には、化粧品に一般的に用いられる各種成分、すなわち水性成分、油性成分、粉末成分、アルコール類、エステル類、界面活性剤、保湿剤、美白成分、紫外線吸収剤、増粘剤、色剤、香料、抗酸化剤、pH調整剤、キレート剤、防腐剤等の成分を配合することができる。
【0017】
本発明が適用される食品は、特に限定されず、例えば一般食品として各々の食品原料に抽出物の所要量を加え、通常の製造法により加工製造することにより得ることができる。
【0018】
本発明が適用される医薬品、医薬部外品としては、剤形は特に限定されず、例えば錠剤、顆粒剤、カプセル剤、水薬等の内服剤、軟膏、パップ剤、クリーム、水剤などの外用剤、無菌溶液剤、懸濁液剤等の注射剤、浴用剤等が挙げられる。これらの医薬品は、生理的に認められるベヒクル、担体、賦形剤、結合剤、安定剤、香味剤等と共に要求される単位用量形態をとりうる。例えば、錠剤、カプセル剤のための組成物は、トラガント、アラビアゴム、ゼラチン等の結合剤、微晶性セルロース等の賦形剤、ゼラチン化澱粉、アルギン酸等の膨化剤、ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤、ショ糖、乳糖、サッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油、チェリーのような香味剤等を共に混和し、通常の方法によって処方することができる。また、注射剤のための無菌組成物は、注射用水のようなベヒクル中の活性物質、ゴマ油、ヤシ油、落花生油、綿実油のような天然産出植物油、またはエチルオレートのような合成脂肪ベヒクルを溶解又は懸濁させる通常の方法によって処方することができる。外用剤としては基剤としてワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴール等を用い、通常の方法によって軟膏剤、クリーム剤とする。
【0019】
本発明の皮膚外用剤とは、外用可能なあらゆる剤形を意味し、例えば、化粧水、乳液、クリーム、ファンデーション、パック、エッセンス、口紅、洗顔料、ゲル剤、エアゾル剤、軟膏、パップ剤、ペースト剤、プラスター剤浴用剤、洗浄剤等の皮膚に適用されるものや、シャンプー、リンス、トリートメント、ヘアトニック等の毛髪に適用されるものを挙げることができる。また、本発明の皮膚外用剤は、医薬用、医薬部外用、化粧用のいずれにも用いることができる。
【0020】
本発明の皮膚外用剤には、通常の皮膚外用剤に用いられる成分である水性成分、油性成分、粉末成分、ロウ類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、保湿剤、美白成分、紫外線吸収剤、増粘剤、色剤、香料、抗酸化剤、pH調整剤、キレート剤、防腐剤等を本発明の目的を達成する範囲内で適宜配合することができる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
[抽出例1](グナファリウム・セミアンプレキシコール(Gnaphalium semiamplexicaule)抽出物Iの製造)
乾燥したグナファリウム・セミアンプレキシコール(Gnaphalium semiamplexicaule)100gを1Lのメタノールで室温にて24時間抽出、さらにその後2回同様に抽出を行った後、抽出液を併せて濃縮乾固し、粉状固形物8gを得た。
【0023】
[抽出例2](グナファリウム・セミアンプレキシコール(Gnaphalium semiamplexicaule)抽出物IIの製造)
乾燥したグナファリウム・セミアンプレキシコール(Gnaphalium semiamplexicaule)100gを水/エタノール(1:1、容量比)溶媒1L中に入れ、室温で24時間攪拌しながら抽出を行った後濾過し、その濾液を濃縮乾固し、粉状固形物9.2gを得た。
【0024】
[抽出例3](グナファリウム・セミアンプレキシコール(Gnaphalium semiamplexicaule)抽出物IIIの製造)
乾燥したグナファリウム・セミアンプレキシコール(Gnaphalium semiamplexicaule)100gを1Lの1,3―ブチレングリコールと水との混合液(1:1)で室温にて10日間抽出後濾過し、その濾液を濃縮乾固し、粉状固形物7.2gを得た。
【0025】
[試験例1]
上記抽出物の過酸化脂質生成抑制能を調べるために、本発明において使用した過酸化脂質生成抑制効果の評価試験法は以下の通りである。尚、比較のために、dl―α―トコフェロール、ビタミンC(ナカライテスク(株)製)についても同様の評価を行い、検体100ug/mlにおける脂質過酸化抑制率(%)を求めた。
【0026】
(1) 過酸化脂質生成抑制効果試験(ミトコンドリアにおける脂質過酸化)
生体脂質の過酸化抑制能を調べるために、ミトコンドリアにおける脂質過酸化抑制能を高柳らの方法(Takayanagi et al.,Biochem.J.192:853-860,1980)を参考に測定した。ラット(Wistar系オス、体重100−150g)より摘出した肝臓より常法通り調整したミトコンドリア画分50ul及び検体10ulを以下の溶液に加えた。
上記混合物を37℃、5分保温後、100ulの1mMNADHを添加し37℃,15分反応させ、90ul,2%BHTと2mlTCA−TBA−HCl溶液を添加混合後100℃,15分間加熱した。室温に冷却後、5000rpmで10分間遠心分離を行い、上清中の吸光度(535nm)を測定した。
結果を第1表(表1)に示す。抽出例1、2、3のグナファリウム・セミアンプレキシコール(Gnaphalium semiamplexicaule)抽出物は、dl―α―トコフェロール、ビタミンCに比べ、ミトコンドリアにおける脂質過酸化の抑制効果に優れていることがわかる。
【0027】
(2) 過酸化脂質生成抑制効果試験(ミクロソームにおける脂質過酸化)
生体脂質の過酸化抑制能を調べるために、ミクロソームにおける脂質過酸化抑制能をPedersonらの方法(Pederson et al.,J.Biol.Chem.248:7134-7141,1973)を参考に測定した。ラット(Wistar系オス、体重100−150g)より摘出した肝臓より常法通り調整したミクロソーム画分50ul及び検体10ulを以下の溶液に加えた。
上記混合物を37℃、5分保温後、100ulの1mMNADPHを添加し37℃,15分反応させ、90ul,2%BHTと2mlTCA−TBA−HCl溶液を添加混合後100℃,15分間加熱した。室温に冷却後、5000rpmで10分間遠心分離を行い、上清中の吸光度(535nm)を測定した。
結果を第1表(表1)に示す。抽出例1、2、3のグナファリウム・セミアンプレキシコール(Gnaphalium semiamplexicaule)抽出物は、dl―α―トコフェロール、ビタミンCに比べ、ミクロソームにおける脂質過酸化の抑制効果に優れていることがわかる。
【0028】
【表1】
【0029】
[実施例1](クリーム)
下記記載の配合量においてB成分をA成分に混合し、均一に加熱溶解して温度を80℃にした。次いでC成分を注入撹拌混合した後、撹拌しながら30℃まで冷却しクリームを得た。
【0030】
[比較例1](クリーム)
実施例1において成分(B)グナファリウム・セミアンプレキシコール(Gnaphalium semiamplexicaule)抽出物を除いた以外はすべて実施例1と同様にして調製し、前述した各試験に使用した。
【0031】
[実施例2](二相型ローション)
下記記載の配合量においてA成分を室温にて均一に混合溶解し、B成分をゆっくり撹拌添加し二相型ローションを得た。
【0032】
[比較例2](二相型ローション)
実施例2において成分(B)グナファリウム・セミアンプレキシコール(Gnaphalium semiamplexicaule)抽出物を除いた以外はすべて実施例2と同様にして調製し、前述した各試験に使用した。
【0033】
[試験例2]有用性評価試験
実施例1、2及び比較例1、2において調製された組成物の有用性評価試験を下記の試験方法によって行った。
則ち、健康な女性(25〜40才)80名を20名ずつに4群に分け、それぞれ実施例1、2及び比較例1、2の試料を1日2回ずつ塗布し、塗布開始後3ヶ月後の老化防止効果(肌荒れ防止、皮膚の艶・張り)についてアンケート調査を行って評価した。アンケートの評価基準は、有効なものを「優」、やや有効なものを「良」、わずかに有効なものを「可」、無効なものを「不可」として、比較例と比較して評価を行った。
第2表(表2)に示すごとく、比較例1、2に比べ実施例1、2では良好な結果が得られた。
【0034】
【表2】
【0035】
[実施例3](油性軟膏)
下記記載の配合量において各成分を混合し、80℃まで加温し徐々に冷却し油性軟膏を得た。
【0036】
[試験例3]
実施例3で調製された油性軟膏を試験例1の過酸化脂質生成抑制効果の評価試験法に示す方法と同様の方法に準じて過酸化脂質生成抑制試験を行った。その結果、該油性軟膏は(B)成分を配合しない以外全ての成分を含む油性軟膏と比べて、生体膜脂質過酸化の抑制効果に優れていた。
【0037】
【発明の効果】
本発明の過酸化脂質生成抑制剤を含む化粧品、医薬品、医薬部外品、食品等の組成物は、生体内に生成した活性酸素や過酸化脂質によって引き起こされる障害を抑制する効果がある。従って、健康上、美容上の障害についての治療に有効であり、さらに飲食品の安定化・保存性の向上にも有用である。
Claims (3)
- メキシコ原産植物である学名:Gnaphalium semiamplexicauleの抽出物を含有することを特徴とする過酸化脂質生成抑制剤。
- 請求項1記載の過酸化脂質生成抑制剤を含有する組成物。
- 請求項1記載の過酸化脂質生成抑制剤を含有する皮膚外用剤。
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