JP3647033B2 - ポリエステル樹脂およびポリエステル製造用触媒、この触媒を用いるポリエステル樹脂の製造方法、この触媒により得られるポリエステル樹脂およびこのポリエステル樹脂からなる中空成形容器 - Google Patents

ポリエステル樹脂およびポリエステル製造用触媒、この触媒を用いるポリエステル樹脂の製造方法、この触媒により得られるポリエステル樹脂およびこのポリエステル樹脂からなる中空成形容器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル樹脂およびポリエステル製造用触媒、この触媒を用いるポリエステル樹脂の製造方法、この触媒により得られるポリエステル樹脂およびこのポリエステル樹脂からなる中空成形容器に関し、さらに詳しくは、特定のパラメータを満たすポリエステル樹脂、高い重合速度で芳香族ジカルボン酸類と、脂肪族ジオール類とを重縮合することができるようなポリエステル製造用触媒ポリエステル製造用触媒、この触媒を用いるポリエステル樹脂の製造方法、この触媒により製造されるポリエステル樹脂およびこのポリエステル樹脂からなる中空成形容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタレートは、機械的強度、耐熱性、透明性およびガスバリア性に優れており、ジュース、清涼飲料、炭酸飲料等の飲料充填容器の素材をはじめとしてフィルム、シート、繊維等の素材として好適に使用されている。
【0003】
このようなポリエステル樹脂は、通常テレフタル酸等のジカルボン酸と、エチレングリコール等の脂肪族ジオールを原料として製造される。具体的には、まず、芳香族ジカルボン酸類と脂肪族ジオール類とのエステル化反応により低次縮合物(エステル低重合体)を形成し、次いで重縮合触媒の存在下にこの低次縮合物を脱グリコール反応(液相重縮合)させて、高分子量化している。また、飲料充填容器の素材として用いる場合には、通常、固相重縮合を行い、さらに分子量を高めるとともに、飲料の味に悪影響を与えるアセトアルデヒド等の低分子副生物を揮散除去している。さらにこのポリエステル樹脂は、たとえば射出成形機械等の成形機に供給して中空成形体用プリフォームを成形し、このプリフォームを所定形状の金型に挿入し延伸ブロー成形し、あるいはさらに熱処理(ヒートセット)して中空成形容器に成形される。
【0004】
このようなポリエステル樹脂の製造方法では、重縮合触媒として、従来アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物等が使用されている。
しかしながら、アンチモン化合物を触媒として製造したポリエチレンテレフタレートは透明性、耐熱性の点でゲルマニウム化合物を触媒として製造したポリエチレンテレフタレートに劣っている。一方、ゲルマニウム化合物はかなり高価であるため、ポリエステル樹脂の製造コストが高くなるという問題があった。このため触媒コストを下げるため、重縮合時に飛散するゲルマニウム化合物を回収して再利用する等のプロセスが必要となる。
【0005】
また、アンチモン化合物やゲルマニウム化合物等は金属重量あたりの重合活性が高くないため、ポリエステル樹脂を工業的に満足する生産速度で製造しようとした場合、比較的高濃度で使用する必要がある。その結果、これらの化合物を用いて製造されたポリエステル樹脂にはアンチモンないしゲルマニウム等が金属原子として通常50ppm〜300ppm含有されている。
【0006】
近年、工業製品の製造から使用、廃棄にいたるすべてのライフサイクルにおいて、地球環境に与える負荷を低減させることが強く要求されている。たとえば飲料充填容器としてのポリエステル製品のライフサイクルを考えた場合、まず、ポリエステル容器から飲料へ溶出する金属とりわけ重金属が少ないことが本質的に望ましいので、ポリエステル樹脂中の金属含有量は少ないことが好ましい。一方、使用後のポリエステル樹脂を焼却処分する場合においては、追加処理が必要な灰分の生成源となる金属含有量が少ない方が好ましい。また、使用後のポリエステル樹脂を解重合してモノマーを回収再利用する場合においても、回収モノマー中の不純物の原因となる金属含有量が少ない方が好ましい。以上のことから、ポリエステル樹脂に含有される金属とりわけ重金属の含有量を低減することは意義のあることである。
【0007】
ところでチタンは低次縮合物の重縮合反応を促進する作用のある元素であることが知られており、チタンアルコキシド、四塩化チタン、シュウ酸チタニル、オルソチタン酸等が重縮合触媒として公知であり、このようなチタン化合物を重縮合触媒として利用するために多くの検討が行われている。このようなチタン化合物は金属重量あたりの重合活性が高く、ポリエステル樹脂の生産速度の面だけを考慮すれば、使用金属量を低減させうる触媒である。すなわち、これらの化合物を用いてポリエステル樹脂を製造するにはチタン化合物をチタン原子として通常数ppm〜50ppm使用すればよい。
【0008】
しかしながら、これらのチタン化合物は、金属重量あたりの重縮合活性が高い反面、好ましくないポリエステル分解反応を起こす傾向も強く、重縮合反応工程での樹脂の着色や、溶融成形工程における低分子化合物の副生あるいは分子量の低下等による樹脂品質の悪化を引き起こす。
その結果、これらのチタン化合物を重縮合触媒に使用して製造したポリエステル樹脂は安定性が低く、溶融成形時の熱分解によるアセトアルデヒドの生成や分子量の低下が従来のアンチモン化合物やゲルマニウム化合物等を重縮合触媒に使用して製造したポリエステル樹脂と比較して大きいため、飲料充填容器の素材としての使用が困難であるのが現状である。
【0009】
一方、ポリエステル樹脂の溶融成形時の熱分解による樹脂品質の悪化を低減するために上記のチタン化合物の使用量を減らすと、ポリエステル樹脂の重縮合速度が従来のアンチモン化合物やゲルマニウム化合物等を重縮合触媒に使用して製造したポリエステル樹脂より低下するため、重合時間が長くなるもしくは高温での重合を必要とし、その結果ポリエステル樹脂の製造コストが高くなるという問題が生じる。
【0010】
本発明者らは、上記のような技術的背景に鑑みてポリエステル樹脂について鋭意検討したところ、特定の重合性パラメータを満足し、かつ特定の安定性パラメータと金属含有量パラメータとを満足するポリエステル樹脂を見いだした。
本発明者らはさらに、(1)チタン、酸素、炭素、水素、必要に応じてアルカリ金属を含み、Ti−O−C結合を有し、かつエチレングリコールへの最大溶解度がチタン原子換算で特定量以上である固体状含チタン化合物とアルカリ金属化合物とからなるポリエステル製造用触媒であって、その触媒中のアルカリ金属原子とチタン原子のモル比(アルカリ金属/チタン)が特定の範囲にあるポリエステル製造用触媒、または(2)チタン、酸素、炭素、水素およびアルカリ金属を含み、Ti−O−C結合を有し、かつエチレングリコールへの最大溶解度がチタン原子換算で特定量以上である固体状含チタン化合物からなり、その触媒中のアルカリ金属原子とチタン原子のモル比が特定の範囲にあるポリエステル製造用触媒、を用いると、少ない金属使用量で高い生産速度で芳香族ジカルボン酸類と脂肪族ジオール類とを重縮合することが可能であり、かつ生産されたポリエステル樹脂の安定性を向上できることを見いだして、本発明を完成するに至った。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、本発明は、特定のパラメータを満たすポリエステル樹脂、および高い生産速度で重縮合することが可能であり、かつ樹脂の安定性を向上でき、かつ樹脂中の金属含有量を低減することが可能なポリエステル製造用触媒を提供することを目的としている。
【0012】
また本発明は、上記の触媒を用いるポリエステル樹脂の製造方法、上記の触媒を用いて製造されるポリエステル樹脂、およびそのポリエステル樹脂からなる中空成形容器を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば下記ポリエステル樹脂およびポリエステル製造用触媒、この触媒を用いるポリエステル樹脂の製造方法、この触媒により得られるポリエステル樹脂およびこのポリエステル樹脂からなる中空成形容器が提供されて、本発明の上記目的が達成される。
(1)重合性パラメータが下記式(A−1)を満足し、安定性パラメータが下記式(B−1)を満足し、かつ、金属含有量パラメータが下記式(C−1)を満足することを特徴としている。
(A−1) Vssp≧0.025(dl/g・h)
(式中、Vsspは、ポリエステル樹脂の固有粘度と、そのポリエステル樹脂を220℃窒素雰囲気下で2時間ないし12時間の任意の時間固相重縮合させたものの固有粘度から、下記計算式を用いて求められる。
【0014】
ssp=([IV]1−[IV]0)/T
[IV]0および[IV]1はそれぞれ前記固相重縮合前と固相重縮合後の固有粘度(dl/g)を示し、Tは固相重縮合時間(h)を示す。)
(B−1) ΔAA≦7.0(ppm)
(式中、ΔAAは、ポリエステル樹脂にもともと含有されるアセトアルデヒド量と、そのポリエステル樹脂を射出成形機を用いて、シリンダー温度265〜275℃、成形サイクル26±1秒で成形して得られるプリフォームに含有されるアセトアルデヒド量から、下記計算式を用いて求められる。
【0015】
ΔAA=[AA]1−[AA]0
[AA]0および[AA]1はそれぞれ前記成形前と成形後のアセトアルデヒド含有量(重量ppm)を示す。)
(C−1) M≦50(ppm)
(式中、Mはポリエステル樹脂に含有される金属原子の総量(重量ppm)を示す。)。
(2)重縮合時間が下記式(A−2)をさらに満足することを特徴とする上記(1)に記載のポリエステル樹脂;
(A−2) T≦8(h)
(Tは、固有粘度0.64dl/gのポリエステル樹脂を220℃窒素雰囲気下で固相重縮合を行うことにより固有粘度0.84dl/gまで分子量を上昇させるのに要する固相重縮合時間(h)を示す。)。
(3)金属含有量パラメータが下記式(C−2)をさらに満足することを特徴とする上記(1)または(2)に記載のポリエステル樹脂。
(C−2) HM≦2(ppm)
(式中、HMはポリエステル樹脂に含有される重金属原子の総量(重量ppm)を示す。)。
(4)
(a)チタン、酸素、炭素および水素を含み、必要に応じてアルカリ金属を含み、Ti−O−C結合を有し、かつ150℃のエチレングリコールに溶解した場合のエチレングリコールへの最大溶解度がチタン原子換算で1,000ppm以上である固体状含チタン化合物と、
(b)アルカリ金属化合物と
からなるか、または
(a)チタン、酸素、炭素および水素を含み、さらにアルカリ金属を含み、Ti−O−C結合を有し、かつ150℃のエチレングリコールに溶解した場合のエチレングリコールへの最大溶解度がチタン原子換算で1,000ppm以上である固体状含チタン化合物
からなるポリエステル製造用触媒であって、その触媒中のアルカリ金属原子とチタン原子のモル比(アルカリ金属/チタン)が20/1〜0.1/1の範囲にあることを特徴とするポリエステル製造用触媒。
(5)上記固体状含チタン化合物(a)が、チタン、酸素、炭素および水素に加えて、さらにアルカリ金属を含むことを特徴とする(4)に記載のポリエステル製造用触媒。
(6)チタン、酸素、炭素、水素およびアルカリ金属を含み、Ti−O−C結合を有し、かつ150℃加熱下にエチレングリコールに溶解した場合のエチレングリコールへの最大溶解度がチタン原子換算で1,000ppm以上である固体状含チタン化合物(a)からなるポリエステル製造用触媒であって、アルカリ金属原子とチタン原子のモル比が20/1〜0.1/1の範囲にあるポリエステル製造用触媒。
(7)上記固体状含チタン化合物(a)中のチタン原子含量が5〜50重量%、炭素原子含量が1〜35重量%であり、チタン原子と炭素原子との重量比Ti/Cが50〜1の範囲にあることを特徴とする(4)ないし(6)のいずれかに記載のポリエステル製造用触媒。
(8)上記固体状含チタン化合物(a)が、チタン、酸素、炭素、水素およびアルカリ金属以外にベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、アンチモンおよびリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むことを特徴とする上記(4)ないし(7)のいずれかに記載のポリエステル製造用触媒。
(9)上記固体状含チタン化合物(a)が、チタンハロゲン化物の加水分解物またはチタンアルコキシドの加水分解物と、多価アルコールとの接触生成物であることを特徴とする(4)ないし(8)のいずれかに記載のポリエステル製造用触媒。
(10)
(I)上記(4)ないし(9)のいずれかに記載のポリエステル製造用触媒と
(II)ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛、ゲルマニウム、アンチモンおよびリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物からなることを特徴とするポリエステル製造用触媒。
(11)上記固体状含チタン化合物(a)が、チタン原子換算で500〜100,000ppmの量でエチレングリコール含有液(c)に溶解されたチタン含有溶液であることを特徴とする(4)ないし(10)のいずれか1項に記載のポリエステル製造用触媒。
(12)上記チタン含有溶液が、固体状含チタン化合物(a)をエチレングリコール含有液(c)に溶解する際に、アルカリ金属化合物(b)を添加して得られたものであることを特徴とする上記(11)に記載のポリエステル製造用触媒。
(13)上記チタン含有溶液が、溶解助剤をエチレングリコール含有液(c)に対して、1〜50重量%の範囲で含有することを特徴とする上記(11)または(12)に記載のポリエステル製造用触媒。
(14)上記溶解助剤が、グリセリンまたはトリメチロールプロパンであることを特徴とする上記(13)に記載のポリエステル製造用触媒。
(15)上記チタン含有溶液の含水率が、0.05〜15.0重量の範囲にあることを特徴とする上記(13)または(14)に記載のポリエステル製造用触媒。
(16)アンチモン化合物およびゲルマニウム化合物を実質的に含まないことを特徴とする上記(4)ないし(15)のいずれかに記載のポリエステル製造用触媒。
(17)上記(4)ないし(16)のいずれか1項に記載のポリエステル製造用触媒の存在下に、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを重縮合させてポリエステル樹脂を製造することを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
(18)上記(4)ないし(16)のいずれかに記載のポリエステル製造用触媒の存在下に、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを重縮合させて製造されたことを特徴とするポリエステル樹脂。
(19)固有粘度が0.60dl/g以上であるとともに、固相重縮合してなることを特徴とする上記(18)に記載のポリエステル樹脂。
(20)上記(18)または(19)に記載のポリエステル樹脂からなることを特徴とする中空成形容器。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るポリエステル樹脂、ポリエステル製造用触媒、この触媒を用いるポリエステル樹脂の製造方法、この触媒により得られるポリエステル樹脂およびこのポリエステル樹脂からなる中空成形容器について説明する。
ポリエステル樹脂
本発明のポリエステル樹脂は、
重合性パラメータが下記式(A−1)を満足し、安定性パラメータが下記式(B−1)を満足し、かつ、金属含有量パラメータが下記式(C−1)を満足する。
(A−1) Vssp≧0.025(dl/g・h)
(式中、Vsspは、ポリエステル樹脂の固有粘度と、そのポリエステル樹脂を220℃窒素雰囲気下で2時間ないし12時間の任意の時間固相重縮合させたものの固有粘度から、下記計算式を用いて求められる。
【0017】
ssp=([IV]1−[IV]0)/T
[IV]0および[IV]1はそれぞれ前記固相重縮合前と固相重縮合後の固有粘度(dl/g)を示し、Tは固相重縮合時間(h)を示す。)
(B−1) ΔAA≦7.0(ppm)
(式中、ΔAAは、ポリエステル樹脂にもともと含有されるアセトアルデヒド量と、そのポリエステル樹脂を射出成形機を用いて、シリンダー温度265〜275℃、成形サイクル26±1秒で成形して得られるプリフォームに含有されるアセトアルデヒド量から、下記計算式を用いて求められる。
【0018】
ΔAA=[AA]1−[AA]0
[AA]0および[AA]1はそれぞれ前記成形前と成形後のアセトアルデヒド含有量(重量ppm)を示す。)
(C−1) M≦50(ppm)
(式中、Mはポリエステル樹脂に含有される金属原子の総量(重量ppm)を示す。)
ここで、式(A−1)に記載のポリエステル樹脂の重合性パラメータVsspは、ポリエステル樹脂を220℃窒素雰囲気下で2時間ないし12時間の任意の時間固相重縮合させたときの、時間あたりの固有粘度上昇速度を示している。本発明者らの実験的な検討によれば、固相重縮合時間が2時間より短い場合には反応系内の温度や雰囲気が安定せず、また、固相重縮合時間が12時間より長い場合には固有粘度上昇速度が飽和し、いずれも固有粘度と固相重縮合時間との直線関係が失われるが、固相重縮合時間が2時間ないし12時間の時間内ではVsspはほぼ一定とみなしうる。
【0019】
式(A−1)は、本発明に係るポリエステル樹脂が、現時点で工業化されているアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物を用いて製造されるポリエステル樹脂と同等以上の重合性を有することを示している。すなわち、本発明に係るポリエステル樹脂は、既存のアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物を用いた場合と同等以上の生産速度で製造しうることを示している。
【0020】
式(B−1)に記載のポリエステル樹脂の安定性パラメータΔAAは、ポリエステル樹脂を射出成形機を用いて、シリンダー温度265〜275℃、成形サイクル26±1秒で成形してプリフォームを得る際のアセトアルデヒドの増加量を示している。式(B−1)は、本発明に係るポリエステル樹脂が、現時点で工業化されているアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物を用いて製造されるポリエステル樹脂と、アセトアルデヒドの増加量が同等あるいはより少ないことを意味している。アセトアルデヒドは、プリフォーム成形時の加熱とポリエステル樹脂に含有される重縮合触媒の作用によりポリエステル樹脂が分解されることにより生成され、ポリエステル樹脂を飲料容器として用いる際、飲料に異味異臭を与える原因となる。すなわち、本発明に係るポリエステル樹脂により、既存のアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物を用いた場合と同等以上の品質で飲料充填容器を製造しうることを示している。
【0021】
式(C−1)に記載のポリエステル樹脂の金属含有量パラメータMは、ポリエステル樹脂に含有される金属原子の総量を示している。ポリエステル樹脂中の金属含有量は、発明の技術的背景の項に記したように、地球環境への負荷低減の観点から、できる限り低減することが望まれている。また、同じく発明の技術的背景の項に記したように、現時点で工業化されているアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物を用いて製造されるポリエステル樹脂には金属原子が通常50〜300ppm含有されている。
【0022】
式(C−1)は本発明に係るポリエステル樹脂が、現時点で工業化されているアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物を用いて製造されるポリエステル樹脂と、金属含有量が同等あるいはより少ないことを示している。すなわち、本発明に係るポリエステル樹脂は、既存のアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物を用いた場合と同等以上の環境安全性を有することを示している。
【0023】
なお、従来のアンチモン系触媒またはゲルマニウム系触媒で得られたポリエステル樹脂には、上記3つのパラメータのうちのいずれか2つまでを満たすものはあるが、上記3つのパラメータのすべてを満たすものはない。
本発明に係るポリエステル樹脂は、さらに、その重縮合時間が下記式(A−2)を満足することが好ましい。
【0024】
(A−2)T≦8 (h)
(Tは、固有粘度0.64dl/gのポリエステル樹脂を220℃窒素雰囲気下で固相重縮合を行うことにより固有粘度0.84dl/gまで分子量を上昇させるのに要する固相重縮合時間を示す。)
本発明に係るポリエステル樹脂は、さらに、製造されたポリエステル樹脂の金属含有量パラメータが下記式(C−2)を満足することが好ましい。
【0025】
(C−2)HM≦2(ppm)
(式中、HMはポリエステル樹脂に含有される重金属原子の総量(重量ppm)を示す。)
ここで、重金属としては、土屋健三郎編「金属中毒学」、医歯薬出版(1983)に分類されているように、ラジウム、スカンジウムとイットリウムを除く3族元素、チタンを除く4族元素、5族から12族の全元素、ホウ素とアルミニウムを除く13族元素、炭素とケイ素を除く14族元素、窒素とリンとヒ素を除く15族元素、酸素と硫黄とセレンを除く16族元素を指す。
【0026】
ポリエステル製造用触媒
本発明に係るポリエステル製造用触媒は、
(a)チタン、酸素、炭素、水素およびアルカリ金属を含み、Ti−O−C結合を有し、かつ150℃のエチレングリコールに溶解した場合のエチレングリコールへの最大溶解度がチタン原子換算で1,000ppm以上である固体状含チタン化合物からなるか、または
(a)チタン、酸素、炭素および水素、必要に応じてアルカリ金属を含み、Ti−O−C結合を有し、かつ150℃のエチレングリコールに溶解した場合のエチレングリコールへの最大溶解度がチタン原子換算で1,000ppm以上である固体状含チタン化合物と、
(b)アルカリ金属化合物とからなる。
【0027】
(a)固体状含チタン化合物
本発明に係るポリエステル製造用触媒を形成する固体状含チタン化合物(a)は、チタン、酸素、炭素および水素、必要に応じてアルカリ金属を含み、Ti−O−C結合を有している。
ここでアルカリ金属としては、Li、Na、K、RbおよびCsが挙げられる。
【0028】
固体状含チタン化合物(a)は、チタンを5〜50重量%、好ましくは(5〜40)重量%、酸素を(35〜75)重量%、好ましくは(40〜60)重量%、炭素を1〜35重量%、好ましくは(5〜25)重量%、水素を(1〜10)重量%、好ましくは(1〜6)重量%の量で含むことが望ましい。
固体状チタン化合物(a)が、チタン、酸素、炭素および水素を上記範囲で含有すると固体状含チタン化合物の溶解性が良好であり好ましい。
【0029】
アルカリ金属は、固体状含チタン化合物(a)中のチタン原子とのモル比(アルカリ金属/チタン)で、20/1〜0.1/1、好ましくは10/1〜0.1/1の範囲の量で含有することが望ましい。
固体状含チタン化合物(a)中のチタン原子と、アルカリ金属原子とのモル比が、上記範囲内にあると、高い重合活性で優れた品質のポリエステル樹脂を製造することができ、溶解性も向上する。アルカリ金属原子の含有量が上記範囲を下回ると、アルカリ金属を含有することによる活性と品質への効果が充分に得られないことがある。また、上記範囲を上回ると、逆に活性が低下することがある。
【0030】
また、固体状チタン化合物(a)がTi−O−C結合を有すると固体状含チタン化合物の溶解性が良好であり好ましい。
固体状含チタン化合物(a)は、該化合物中のチタン原子と炭素原子との重量比(Ti/C)が50〜1、好ましくは25〜2の範囲にある。
チタン原子と炭素原子との重量比が上記範囲内にあると、以下の効果がある。炭素は特定の液体状アルコール由来であるが、この範囲の上限以下であると固体として扱える。またこの範囲の下限以上であるとエチレングリコールへの最大溶解度が1000ppm以上となる。
【0031】
固体状含チタン化合物(a)中のチタンの含有量は、例えばICP分析法により、その他の元素の含有量は、例えば元素分析により測定することができる。
また、固体状含チタン化合物(a)がTi−O−C結合を有することは、元素分析、EXAFS分析法、13C−NMR分析により、確認することができる。
固体状含チタン化合物は、150℃加熱下にエチレングリコールに溶解した場合のエチレングリコールへの最大溶解度がチタン原子換算で1000ppm以上、好ましくは1500ppm以上、より好ましくは2000ppm以上である。
【0032】
150℃のエチレングリコールに溶解した場合のエチレングリコールへの最大溶解度が上記範囲を大きく下回ると、触媒を重合器に添加する時に重合器に添加される溶媒量が重合に影響するほど過剰となり、また溶解自体も困難となるため好ましくない。
固体状含チタン化合物(a)のエチレングリコールへの最大溶解度は、溶媒としてエチレングリコールのみを使用し、150℃加熱下で100gのエチレングリコールに固体状含チタン化合物(a)を溶解させその溶液の透明性をヘイズメーターにより測定し、10%を超えてしまう量を確認し、その際の固体状含チタン化合物量から最大溶解度を求める。
【0033】
固体状含チタン化合物(a)は、平均粒径が1〜30μm、好ましくは1.5〜20μmの範囲にあることが好ましい。
固体状含チタン化合物(a)の平均粒径が上記範囲内にあると固体状含チタン化合物の溶解性が良好であり好ましい。
また、固体状含チタン化合物(a)は、2θ(回折角度)が18°〜35°の範囲にあるX線回折パターンから算出したアナターゼ型二酸化チタンの構造由来の結晶化度が50%以下であることが好ましい。結晶化度が50%以下であると、触媒活性に優れ、また固体状含チタン化合物の溶解性が良好であり好ましい。
【0034】
固体状含チタン化合物(a)は、チタン、酸素、炭素および水素以外の他の元素(以下単に「他の元素」ともいう。)を含んでいてもよく、そのような元素としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、アンチモンおよびリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素が挙げられる。これらのなかでは、マグネシウムが好ましい。これらの他の元素は、固体状含チタン化合物中に2種以上含んでいてもよい。
【0035】
他の元素を含む固体状含チタン化合物(a)は、該化合物(a)中のチタン(Ti)と、他の元素(M)とのモル比(M/Ti)が、1/50〜50/1、好ましくは1/40〜40/1、さらに好ましくは1/30〜30/1の範囲にあることが好ましい。
固体状含チタン化合物(a)中のチタン(Ti)と、他の元素(M)とのモル比が上記範囲内にあると触媒活性に優れ、また固体状含チタン化合物の溶解性への悪影響もないため好ましい。
【0036】
固体状含チタン化合物(a)は、後述するようにエチレングリコール含有液(c)に溶解してチタン含有溶液として用いることができる。
上記固体状含チタン化合物(a)がアルカリ金属を含まない場合には、アルカリ金属化合物(b)と併用してポリエステル製造用触媒として用いることができる。固体状含チタン化合物(a)がアルカリ金属を含む場合には、これのみまたはアルカリ金属化合物(b)と併用してポリエステル製造用触媒として用いることができる。いずれの場合も、後述する化合物(II)を併用してポリエステル製造用触媒として用いてもよい。
【0037】
(b)アルカリ金属化合物
本発明に係るポリエステル製造用触媒を形成するアルカリ金属化合物(b)は、アルカリ金属単体、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド化合物、アルカリ金属ハロゲン化物、および炭酸、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、有機スルホン酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、メタリン酸、ポリリン酸、有機ホスホン酸、有機ホスフィン酸、ホウ酸、アルミン酸、チタン酸、ケイ酸、脂肪酸、芳香族カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アミノ酸から選ばれる酸のアルカリ金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属化合物である。
【0038】
アルカリ金属単体としては、Li、Na、K、Rb、Csが挙げられる。
アルカリ金属水素化物としては、LiH、NaH、KH、RbH、CsHが挙げられる。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が挙げられる。
【0039】
アルカリ金属アルコキシド化合物としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトシキド等が挙げられる。
アルカリ金属ハロゲン化物としては、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化セシウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化ルビジウム、臭化セシウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ルビジウム、ヨウ化セシウムなどが挙げられる。
【0040】
炭酸、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、有機スルホン酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、メタリン酸、ポリリン酸、有機ホスホン酸、有機ホスフィン酸、ホウ酸、アルミン酸、チタン酸、ケイ酸、脂肪酸、芳香族カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アミノ酸から選ばれる酸のアルカリ金属塩としては、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ラク酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の脂肪酸アルカリ金属塩;グリコール酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム等のヒドロキシカルボン酸アルカリ金属塩;グルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム等のアミノ酸アルカリ金属塩などが挙げられる。
【0041】
これらのアルカリ金属化合物(b)の中では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等が好ましい。
これらのアルカリ金属化合物(b)は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0042】
アルカリ金属化合物(b)は、該アルカリ金属化合物(b)中のアルカリ金属と、固体状含チタン化合物(a)中またはチタン含有溶液中のチタンとのモル比(アルカリ金属/チタン)、固体状含チタン化合物(a)がアルカリ金属を含む場合は固体状含チタン化合物(a)中のアルカリ金属およびアルカリ金属化合物(b)中のアルカリ金属と、固体状含チタン化合物(a)中またはチタン含有溶液中のチタンとのモル比(アルカリ金属/チタン)で、20/1〜0.1/1、好ましくは10/1〜0.1/1の範囲となるような量で用いられることが望ましい。
【0043】
固体状含チタン化合物(a)中またはチタン含有溶液中のチタン原子と、アルカリ金属原子とのモル比が、上記範囲内にあると、高い重合活性で優れた品質のポリエステル樹脂を製造することができ、溶解性も向上する。アルカリ金属化合物(b)の使用量が上記範囲を下回ると、アルカリ金属化合物(b)を使用することによる活性と品質への効果が充分に得られないことがある。また、上記範囲を上回ると、逆に活性が低下することがある。
【0044】
化合物( II
化合物(II)は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛、ゲルマニウム、アンチモンおよびリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物である。
【0045】
ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛、ゲルマニウム、アンチモンおよびリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物としては、これらの元素の酢酸塩等の脂肪酸塩、これらの元素の炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物等のハロゲン化物、これらの元素のアセチルアセトナート塩、これらの元素の酸化物等が挙げられるが、酢酸塩または炭酸塩が好ましい。
【0046】
また、リン化合物としては、元素の周期表第1族、第2族、周期表第4周期の遷移金属、ジルコニウム、ハフニウムおよびアルミニウムから選ばれる少なくとも1種の金属のリン酸塩、亜リン酸塩が挙げられる。
本発明で必要に応じて用いられる化合物(II)の好ましい具体的化合物として以下のものが挙げられる。
【0047】
アルミニウム化合物としては、酢酸アルミニウム等の脂肪酸アルミニウム塩、炭酸アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミニウムのアセチルアセトナート塩等が挙げられ、特に酢酸アルミニウムまたは炭酸アルミニウムが好ましい。
バリウム化合物としては、酢酸バリウム等の脂肪酸バリウム塩、炭酸バリウム、塩化バリウム、バリウムのアセチルアセトナート塩等が挙げられ、特に酢酸バリウムまたは炭酸バリウムが好ましい。
【0048】
コバルト化合物としては、酢酸コバルト等の脂肪酸コバルト塩、炭酸コバルト、塩化コバルト、コバルトのアセチルアセトナート塩等が挙げられ、特に酢酸コバルトまたは炭酸コバルトが好ましい。
マグネシウム化合物としては、酢酸マグネシウム等の脂肪酸マグネシウム塩、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、マグネシウムのアセチルアセトナート塩等が挙げられ、特に酢酸マグネシウムまたは炭酸マグネシウムが好ましい。
【0049】
マンガン化合物としては、酢酸マンガン等の脂肪酸マンガン塩、炭酸マンガン、塩化マンガン、マンガンのアセチルアセトナート塩等が挙げられ、特に酢酸マンガンまたは炭酸マンガンが好ましい。
ストロンチウム化合物としては、酢酸ストロンチウム等の脂肪酸ストロンチウム塩、炭酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、ストロンチウムのアセチルアセトナート塩等が挙げられ、特に酢酸ストロンチウムまたは炭酸ストロンチウムが好ましい。
【0050】
亜鉛化合物としては、酢酸亜鉛等の脂肪酸亜鉛塩、炭酸亜鉛、塩化亜鉛、亜鉛アセチルアセトナート等が挙げられ、特に酢酸亜鉛または炭酸亜鉛が好ましい。ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウム、酢酸ゲルマニウム等が挙げられる。
アンチモン化合物としては、二酸化アンチモン、酢酸アンチモン等が挙げられる。
【0051】
リン化合物のうちリン酸塩としては、リン酸リチウム、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸ストロンチウム、リン酸二水素ストロンチウム、リン酸水素二ストロンチウム、リン酸ジルコニウム、リン酸バリウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等が挙げられる。このうち、特にリン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムが好ましく使用される。
【0052】
また、リン化合物のうち亜リン酸塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4周期の遷移金属、ジルコニウム、ハフニウム、およびアルミニウムから選ばれる少なくとも1種の金属の亜リン酸塩が使用され、具体的には、亜リン酸リチウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸ストロンチウム、亜リン酸ジルコニウム、亜リン酸バリウム、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸亜鉛等が挙げられる。このうち、特に亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウムが、好ましく使用される。
【0053】
化合物(II)としては、これらのなかでも炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム等のマグネシウム化合物;炭酸カルシウム、酢酸カルシウム等のカルシウム化合物;塩化亜鉛、酢酸亜鉛等の亜鉛化合物が好ましい。
これらの化合物(II)は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0054】
このような化合物(II)は、上記固体状含チタン化合物(a)中またはチタン含有溶液中のチタン(Ti)と、化合物(II)中の金属原子(M)とのモル比(M/Ti)で、1/50〜50/1、好ましくは1/40〜40/1、より好ましくは1/30〜30/1の範囲の量で用いられることが望ましい。なお、リン酸塩や亜リン酸塩等のリン化合物を使用する場合は、リン化合物に含まれる金属原子換算である。
【0055】
固体状含チタン化合物(a)中またはチタン含有溶液中のチタンと、化合物(II)中の金属原子とのモル比が上記範囲内にあると、化合物(II)を使用したことによる活性向上の効果が充分に得られる。化合物(II)の使用量が上記範囲を下回ると、その効果が得られないことがある。また、上記範囲を上回ると、得られるポリエステル樹脂の品質が悪化することがある。
【0056】
また、化合物(II)として、マグネシウム化合物を使用する場合には、上記固体状含チタン化合物(a)中またはチタン含有溶液中のチタン(Ti)と、マグネシウム化合物中のMg原子との重量比(Mg/Ti)が、0.01以上、好ましくは0.06〜10、特に好ましくは0.06〜5の範囲となるような量で用いられることも望ましい。このような範囲でマグネシウム化合物を使用すると、得られるポリエステル樹脂は透明性に優れる。
【0057】
固体状含チタン化合物(a)の調製方法
このような本発明に係るポリエステル製造用触媒を形成する固体状含チタン化合物(a)は、例えばチタンハロゲン化物またはチタンアルコキシドを加水分解して得られる加水分解物(h−1)を、多価アルコールの共存下に脱水乾燥させて得ることができる。
【0058】
上記チタンハロゲン化物としては、チタン原子とハロゲン原子との結合が少なくとも1つ以上分子内に存在する化合物が用いられ、具体的には、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン等の四ハロゲン化チタン;三塩化チタン等の三ハロゲン化チタン;二塩化チタン等の二ハロゲン化物および一ハロゲン化チタンが挙げられる。上記チタンハロゲン化物は、使用前に水で2倍程度までは希釈しておいてもよい。また、チタンアルコキシドとしては、具体的には、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド等が挙げられる。
【0059】
チタンハロゲン化物またはチタンアルコキシドを加水分解する方法としては、特に限定されず、例えば▲1▼水中にチタンハロゲン化物またはチタンアルコキシドを添加する方法、▲2▼チタンハロゲン化物中またはチタンアルコキシド中に水を添加する方法、▲3▼水中にチタンハロゲン化物またはチタンアルコキシドの蒸気を含んだガスを通じる方法、▲4▼チタンハロゲン化物中またはチタンアルコキシド中に水蒸気を含んだガスを通じる方法、▲5▼チタンハロゲン化物またはチタンアルコキシドを含んだガスと水蒸気を含んだガスとを接触させる方法等が挙げられる。
【0060】
本発明では上記のように加水分解方法は特に限定されないが、いずれの場合でもチタンハロゲン化物またはチタンアルコキシドに大過剰の水を作用させて加水分解を完全に進行させることが必要である。加水分解を完全に進行させず、得られた加水分解物が特公昭51−19477項公報に記載されているような部分加水分解物となる場合には、重縮合触媒としての活性が充分でないことがある。
【0061】
加水分解を行う温度は、通常100℃以下、特に0〜70℃の範囲であることが好ましい。
上記加水分解により得られるチタンハロゲン化物またはチタンアルコキシドの加水分解物(h−1)は、この段階ではオルソチタン酸とも呼ばれる含水水酸化物のゲルである。この含水水酸化物ゲルを、後述するように多価アルコールの共存下で脱水乾燥することにより固体状含チタン化合物(a)が得られる。
【0062】
上記のようにチタンハロゲン化物を加水分解すると、チタンハロゲン化物の加水分解物(h−1)を含む酸性溶液が得られ、この酸性溶液のpHは通常1程度である。
原料として、チタンハロゲン化物を用いる場合は、脱水乾燥する前に加水分解物(h−1)を含む溶液のpHを2〜6に調整することが望ましい。その方法としては、塩基にて一旦塩基性にした後、酸によりpHを2〜6に調整する方法、加水分解物(h−1)を含む溶液を塩基により、直接pHを2〜6に調整する方法等がある。
【0063】
塩基にて一旦塩基性にした後、酸によりpHを2〜6に調整する方法としては、特に限定はされず、例えばアンモニアや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を用いて一旦pH9〜12に調製し、その後、酢酸や硝酸等を用いてpHを2〜6に調整すればよい。
また、加水分解物(h−1)を含む溶液を塩基により、直接pHを2〜6に調整する方法としては、特に限定はされず、例えばアンモニアや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を用いてチタン化合物が析出するpH2〜6に調整すればよい。
【0064】
上記加水分解物(h−1)を含む溶液のpH調整を行う温度は、通常50℃以下、特に40℃以下で行うことが好ましい。
加水分解物(h−1)を含む溶液のpHを2〜6に調整することにより沈殿物が生成する。
このように脱水乾燥する前に加水分解物(h−1)を含む溶液のpHを2〜6に調整すると、脱水工程を短時間で行うことができる。また触媒中に塩基由来の窒素等が残存することが少なく、重縮合触媒としての活性や、これにより製造したポリエステル樹脂の品質の低下を招くことが少ない。
【0065】
また、本発明に係るポリエステル製造用触媒を形成する固体状含チタン化合物(a)は、チタンハロゲン化物またはチタンアルコキシドと、他の元素から選ばれる少なくとも1種の元素の化合物またはその前駆体(以下「他の元素の化合物」ということがある。)との混合物を加水分解して得られる加水分解物(h−2)を、多価アルコールの共存下に脱水乾燥させて得ることもできる。
【0066】
他の元素の化合物としては、例えば、上記元素の水酸化物等が挙げられる。これら他の元素の化合物は、1種で用いることも2種以上組み合わせて用いることもできる。
チタンハロゲン化物またはチタンアルコキシドと、他の元素の化合物との混合物を加水分解する方法としては特に限定されず、例えば▲1▼他の元素の化合物が溶解または懸濁した水中に、チタンハロゲン化物またはチタンアルコキシドを添加する方法、▲2▼水中にチタンハロゲン化物またはチタンアルコキシドと、他の元素の化合物との混合物を添加する方法、▲3▼チタンハロゲン化物またはチタンアルコキシドと、他の元素の化合物との混合物中に水を添加する方法、▲4▼チタンハロゲン化物中またはチタンアルコキシド中に、他の元素の化合物が溶解または懸濁した水を添加する方法、▲5▼他の元素の化合物が溶解または懸濁した水中に、チタンハロゲン化物またはチタンアルコキシドの蒸気を含んだガスを通じる方法、▲6▼水中にチタンハロゲン化物またはチタンアルコキシドの蒸気および他の元素の化合物の蒸気を含んだガスを通じる方法、▲7▼チタンハロゲン化物またはチタンアルコキシドと、他の元素の化合物との混合物中に水蒸気を含んだガスを通じる方法、▲8▼チタンハロゲン化物中またはチタンアルコキシドに、水蒸気と他の元素の化合物の蒸気を含んだガスを通じる方法、▲9▼チタンハロゲン化物またはチタンアルコキシドを含んだガスと、他の元素の化合物の蒸気を含んだガスと水蒸気を含んだガスを接触させる方法等が挙げられる。
【0067】
本発明では上記のように加水分解方法は特に限定されないが、いずれの場合でも、チタンハロゲン化物またはチタンアルコキシドと、他の元素の化合物との混合物に大過剰の水を作用させて加水分解を完全に進行させることが必要である。加水分解を完全に進行させず、得られる加水分解物が部分加水分解となる場合には、重縮合触媒としての活性が充分でないことがある。
【0068】
加水分解の際には、チタンハロゲン化物またはチタンアルコキシド中のチタン(Ti)と、他の元素の化合物中の他の元素(M)とのモル比(M/Ti)は、1/50〜50/1の範囲であることが望ましい。また加水分解を行う温度は、通常100℃以下、好ましくは0〜70℃の範囲であることが好ましい。
上記加水分解により得られるチタンハロゲン化物またはチタンアルコキシドと、他の元素の化合物との混合物の加水分解物(h−2)は、この段階ではオルソチタン酸とも呼ばれる含水水酸化物ゲルを含む含水複合水酸化物ゲルである。このゲルを、後述するように多価アルコールの共存下で脱水乾燥することにより固体状含チタン化合物(a)が調製される。
【0069】
加水分解物(h−2)を含む溶液はpHを調整することが好ましく、加水分解物(h−2)を含む溶液のpHを調整する方法としては、上記加水分解物(h−1)を含む溶液のpHを調整する方法と同様の方法が挙げられる。
加水分解物(h−2)を含む溶液のpHを2〜6に調整することにより沈殿物が生成する。
【0070】
このように脱水乾燥する前に加水分解物(h−2)を含む溶液のpHを2〜6に調整すると、脱水工程を短時間で行うことができる。また触媒中に塩基由来の窒素等が残存することが少なく、重縮合触媒としての活性や、これにより製造したポリエステル樹脂の品質の低下を招くことが少ない。
さらに、本発明に係るポリエステル製造用触媒を形成する固体状含チタン化合物(a)は、チタンハロゲン化物またはチタンアルコキシドを加水分解して得られる加水分解物(h−1)と、他の元素の化合物またはその前駆体を加水分解して得られる加水分解物(h−3)との混合物を、多価アルコールの共存下に脱水乾燥させて得ることもできる。
【0071】
他の元素の化合物は、1種で用いても2種以上を組み合わせて用いても良い。他の元素の化合物またはその前駆体を加水分解する方法としては特に限定されず、例えば上記加水分解物(h−1)を調製する方法においてチタンハロゲン化物またはチタンアルコキシドに代えて、他の元素の化合物またはその前駆体を用いること以外は同様にして行うことができる。他の元素の化合物またはその前駆体を加水分解することにより加水分解物(h−3)を含む溶液が得られる。
【0072】
チタンハロゲン化物またはチタンアルコキシドを加水分解して得られる加水分解物(h−1)と、他の元素の化合物またはその前駆体を加水分解して得られる加水分解物(h−3)の混合物は、上記のような方法で別々に調製した加水分解物(h−1)の溶液と、加水分解物(h−3)の溶液とを混合することにより調製することができる。
【0073】
加水分解物(h−1)と加水分解物(h−3)とは、加水分解物(h−1)中のチタン(Ti)と、加水分解物(h−3)中の他の元素(M)とのモル比(E/Ti)が、1/50〜50/1の範囲となるように混合することが好ましい。この混合物を、後述するように多価アルコールの共存下で脱水乾燥することにより固体状含チタン化合物(a)が得られる。
【0074】
加水分解物(h−1)および加水分解物(h−3)を含む溶液はpHを調整することが好ましく、加水分解物(h−1)および加水分解物(h−3)を含む溶液のpHを調整する方法としては、上記加水分解物(h−1)を含む溶液のpHを調整する方法と同様の方法が挙げられる。
加水分解物(h−1)および加水分解物(h−3)を含む溶液のpHを2〜6に調整することにより沈殿物が生成する。
【0075】
このように脱水乾燥する前に加水分解物(h−1)および加水分解物(h−3)を含む溶液のpHを2〜6に調整すると、脱水工程を短時間で行うことができる。また触媒中に塩基由来の窒素等が残存することが少なく、重縮合触媒の活性や、これにより製造したポリエステル樹脂の品質の低下を招くことが少ない。
次に、上記加水分解物(h−1)、(h−2)または(h−3)を、多価アルコールの共存下で脱水乾燥することにより、固体状含チタン化合物(a)が得られる。
【0076】
上記加水分解物(h−1)、(h−2)または(h−3)を脱水乾燥させる際に共存させる多価アルコールとしては、具体的には、エチレングリコール等の二価アルコール;グリセリン等の三価のアルコール等が挙げられる。これらの中では、二価のアルコール、三価のアルコールが好ましく、特にエチレングリコール、グリセリンが好ましい。
【0077】
加水分解物(h−1)、(h−2)または(h−3)を脱水乾燥させる際に多価アルコールを共存させる方法としては、例えば加水分解物(h−1)、(h−2)または(h−3)を、1〜90重量%、好ましくは2〜80重量%、特に好ましくは5〜50重量%の多価アルコールを含有する水に懸濁させた後、乾燥させる方法がある。この場合、加水分解物(h−1)、(h−2)または(h−3)をスラリーとした後、数分〜数時間保持することが望ましい。
【0078】
保持後のスラリーを乾燥させる方法としては、固液分離した後、乾燥させる方法、造粒乾燥機としてスプレードライヤーを使用する方法等があり、スプレードライヤーを使用することが好ましい。
造粒乾燥機としてスプレードライヤーを用いて脱水乾燥する際には、例えば0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%の加水分解物、(h−1)、(h−2)または(h−3)を含むスラリーを、通常80〜250℃、好ましくは120〜200℃の雰囲気に噴霧することにより固体状含チタン化合物(a)を得ることができる。
【0079】
このようにして得られた固体状含チタン化合物(a)は、粒径が1〜30μmの範囲にあることが好ましい。
上記固体状含チタン化合物(a)は、共存させる多価アルコールの種類や濃度、乾燥方法、乾燥の程度によって異なるが、これらの固体状含チタン化合物(a)中のチタンの含有量は、通常5〜50重量%の範囲にある。50重量%を越える場合、多価アルコールを含浸した効果がほとんど現れないことがあり、また、5重量%未満の場合は、多価アルコール残存量が多くなりすぎ、均一な固体状含チタン化合物(a)得られないことがある。
【0080】
固体状含チタン化合物(a)が他の元素を含む場合、固体状含チタン化合物(a)中のチタン(Ti)と、他の元素Mとのモル比(M/Ti)が、1/50〜50/1、好ましくは1/40〜40/1、さらに好ましくは1/30〜30/1であることが望ましい。
固体状含チタン化合物(a)中のチタン(Ti)と、他の元素(M)とのモル比(M/Ti)が上記範囲内にあると、他の元素を使用したことによる活性向上の効果が充分に得られる。他の元素の使用量が上記範囲を下回ると、その効果が得られないことがある。また、上記範囲を上回ると、得られるポリエステル樹脂の品質が悪化することがある。
【0081】
本発明では固体状含チタン化合物(a)中のチタンの含有量は例えばICP分析法により測定することができる。
上記固体状含チタン化合物(a)は、原料としてチタンハロゲン化物を用いる場合、ハロゲン元素含量が通常0〜10,000ppm、好ましくは0〜100ppmである。
【0082】
固体状含チタン化合物(a)は、エチレングリコールを含むエチレングリコール含有液(c)に溶解して触媒として用いることができ、固体状含チタン化合物(a)をエチレングリコール含有液(c)に溶解する際には、上記アルカリ金属化合物(b)等の塩基性化合物の存在下に、溶解させることが好ましい。
固体状含チタン化合物(a)を、エチレングリコール含有液(c)に溶解する際には、加熱することが好ましく、加熱温度は通常100〜200℃、好ましくは110〜195℃の範囲である。
【0083】
アルカリ金属化合物(b)を用いる場合には、溶液中のチタンに対するモル比で、アルカリ金属/チタン=20/1〜0.1/1の範囲となる量で用いられる。
アルカリ金属/チタン比が上記範囲内にあると、高い重合活性で優れた品質のポリエステル樹脂を製造することができ、溶解性も向上する。アルカリ金属化合物(b)の使用量が上記範囲を下回ると、アルカリ金属化合物(b)を使用することによる活性と品質への効果が充分に得られないことがある。また、上記範囲を上回ると、逆に活性が低下することがある。
【0084】
本発明では、固体状含チタン化合物(a)を、アルカリ金属化合物(b)の存在下にエチレングリコール含有液(c)に溶解する際には、必要に応じて溶解助剤を含むエチレングリコール含有液(c)を用いることができる。また、固体状含チタン化合物(a)を、エチレングリコール含有液(c)に溶解する際にアルカリ金属化合物(b)を用いない場合は、必要に応じて溶解助剤および/または酸成分を含むエチレングリコール含有液(c)を用いることができる。
【0085】
溶解助剤としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられ、グリセリンまたはトリメチロールプロパンが好ましい。
溶解助剤は、エチレングリコール含有液(c)に対して1〜50重量%、好ましくは1〜25重量%となるような量で用いられる。
【0086】
酸成分としては、硫酸、パラトルエンスルホン酸等の有機スルホン酸;シュウ酸、酢酸、クエン酸等の有機カルボン酸等が挙げられ、硫酸または有機スルホン酸が好ましい。
酸成分はエチレングリコール含有溶液に対して0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%となるような量で用いられる。
【0087】
このようにして固体状含チタン化合物(a)がエチレングリコール含有液(c)に溶解した溶液であるチタン含有溶液が調製される。
このチタン含有溶液は、透明であることが好ましく、後述する方法でヘイズメーターにより測定したHAZE値が30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下である。
【0088】
チタン含有溶液のHAZE値が上記範囲内にあると、重合時の添加が容易である。HAZE値が上記範囲を超えると長期間放置すると白濁した成分が沈殿することがある。
このチタン含有溶液は、固体状含チタン化合物(a)に由来するチタンの含有量が、通常500〜100,000ppm、好ましくは3,000〜100,000ppm、より好ましくは5,000〜50,000ppmの範囲にある。
【0089】
本発明ではチタン含有溶液中のチタンの含有量は、例えばICP分析法により測定することができる。
チタン含有溶液中の固体状含チタン化合物(a)に由来するチタンの含有量が上記範囲内にあると、触媒を重合器に添加する時に重合器に添加される溶媒量が重合に影響するほど過剰とならず、また、固体状含チタン化合物(a)の反応系への溶解が困難とはならない。
【0090】
上記チタン含有溶液は、含水率が0.05〜15.0重量、好ましくは0.05〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
チタン含有溶液の含水率が上記範囲内にあると、溶解性も良好であり、保存安定性も良好であり好ましい。
ポリエステル樹脂の製造方法
本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、上記のポリエステル製造用触媒の存在下に、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを重縮合させてポリエステル樹脂を製造する。以下、その一例について説明する。
【0091】
(使用原料)
本発明に係るポリエステル樹脂の製造方法は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体を原料として用いる。
本発明で用いられる芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
【0092】
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコール等の脂肪族グリコールが挙げられる。
また、本発明では、芳香族ジカルボン酸とともに、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を原料として使用することができる。また、脂肪族ジオールとともに、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン類等の芳香族ジオール等を原料として使用することができる。
【0093】
さらに本発明では、トリメシン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、ペンタエリスリトール等の多官能性化合物を原料として使用することができる。
(エステル化工程)
まず、ポリエステル樹脂を製造するに際して、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とをエステル化させる。
【0094】
具体的には、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを含むスラリーを調製する。
このようなスラリーには芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体1モルに対して、通常1.005〜1.4モル、好ましくは1.01〜1.3モルの脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体が含まれる。このスラリーは、エステル化反応工程に連続的に供給される。
【0095】
エステル化反応は好ましくは2個以上のエステル化反応基を直列に連結した装置を用いてエチレングリコールが還流する条件下で、反応によって生成した水を精留塔で系外に除去しながら行う。
エステル化反応工程は通常多段で実施され、第1段目のエステル化反応は、通常、反応温度が240〜270℃、好ましくは245〜265℃であり、圧力が0.02〜0.3MPaG(0.2〜3kg/cm2 G)、好ましくは0.05〜0.2MPaG(0.5〜2kg/cm2 G)の条件下で行われ、また最終段目のエステル化反応は、通常、反応温度が250〜280℃、好ましくは255〜275℃であり、圧力が0〜0.15MPaG(0〜1.5kg/cm2 G)、好ましくは0〜0.13MPaG(0〜1.3kg/cm2 G)の条件下で行われる。
【0096】
エステル化反応を2段階で実施する場合には、第1段目および第2段目のエステル化反応条件がそれぞれ上記の範囲であり、3段階以上で実施する場合には、第2段目から最終段の1段前までエステル化反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件であればよい。
例えば、エステル化反応が3段階で実施される場合には、第2段目のエステル化反応の反応温度は通常245〜275℃、好ましくは250〜270℃であり、圧力は通常0〜0.2MPaG(0〜2kg/cm2 G)、好ましくは0.02〜0.15MPaG(0.2〜1.5kg/cm2 G)であればよい。
【0097】
これらの各段におけるエステル化反応率は、特に制限はされないが、各段階におけるエステル化反応率の上昇の度合いが滑らかに分配されることが好ましく、さらに最終段目のエステル化反応生成物においては通常90%以上、好ましくは93%以上に達することが望ましい。
このエステル化工程により、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのエステル化反応物(低次縮合物)が得られ、この低次縮合物の数平均分子量が500〜5,000程度である。
【0098】
上記のようなエステル化工程で得られた低次縮合物は、次いで重縮合(液相重縮合)工程に供給される。
(液相重縮合工程)
液相重縮合工程においては、上記したポリエステル製造用触媒の存在下に、エステル化工程で得られた低次縮合物を、減圧下で、かつポリエステル樹脂の融点以上の温度(通常250〜280℃)に加熱することにより重縮合させる。この重縮合反応では、未反応の脂肪族ジオールを反応系外に留去させながら行われることが望ましい。
【0099】
重縮合反応は、1段階で行ってもよく、複数段階に分けて行ってもよい。例えば、重縮合反応が複数段階で行われる場合には、第1段目の重縮合反応は、反応温度が250〜290℃、好ましくは260〜280℃、圧力が0.07〜0.003MPaG(500〜20Torr)、好ましくは0.03〜0.004MPaG(200〜30Torr)の条件下で行われ、最終段の重縮合反応は、反応温度が265〜300℃、好ましくは270〜295℃、圧力が1〜0.01kPaG(10〜0.1Torr)、好ましくは0.7〜0.07kPaG(5〜0.5Torr)の条件下で行われる。
【0100】
重縮合反応を3段階以上で実施する場合には、第2段目から最終段目の1段前間での重縮合反応は、上記1段目の反応条件と最終段目の反応条件との間の条件で行われる。例えば、重縮合工程が3段階で行われる場合には、第2段目の重縮合反応は通常、反応温度が260〜295℃、好ましくは270〜285℃で、圧力が7〜0.3kPaG(50〜2Torr)、好ましくは5〜0.7kPaG(40〜5Torr)の条件下で行われる。
【0101】
このような重縮合反応では、固体状含チタン化合物(a)またはチタン含有溶液を、低次縮合物中の芳香族ジカルボン酸単位に対して、金属原子換算で、0.001〜0.2モル%、好ましくは0.002〜0.1モル%使用することが望ましい。
固体状含チタン化合物(a)またはチタン含有溶液に加えてさらに化合物(II)を使用する場合、化合物(II)は低次縮合物中の芳香族ジカルボン酸単位に対して、金属原子換算で0.001〜0.5モル%、好ましくは0.002〜0.3モル%の量で使用することが望ましい。
【0102】
また、固体状含チタン化合物(a)またはチタン含有溶液に加えてさらにアルカリ金属化合物(b)を使用する場合、アルカリ金属化合物(b)は低次縮合物中の芳香族ジカルボン酸単位に対して、アルカリ金属原子換算で0.001〜0.5モル%、好ましくは0.002〜0.3モル%の量で使用することが望ましい。
【0103】
このような固体状含チタン化合物(a)またはチタン含有溶液から選ばれる少なくとも1種の溶液と、必要に応じて化合物(II)および/またはアルカリ金属化合物(b)とからなる触媒は、重縮合反応時に存在していればよい。このため触媒の添加は、原料スラリー調製工程、エステル化工程、液相重縮合工程等のいずれの工程で行ってもよい。また、触媒全量を一括添加しても、複数回に分けて添加してもよい。また、化合物(II)および/またはアルカリ金属化合物(b)を併用する場合、固体状含チタン化合物(a)またはチタン含有溶液と同じ工程で添加しても、別の工程で添加してもよい。
【0104】
また、重縮合反応では、安定剤の共存下で行われることが望ましい。
安定剤として具体的に、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ-n-ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルフェニホスファイト等の亜リン酸エステル類;メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート等のリン酸エステルおよびリン酸、ポリリン酸等のリン化合物が挙げられる。
【0105】
このようなリン化合物の添加量は、芳香族ジカルボン酸に対して、該リン化合物中のリン原子換算で、0.005〜0.2モル%、好ましくは0.01〜0.1モル%の量であることが望ましい。
以上のような液相重縮合工程で得られるポリエステル樹脂の固有粘度[IV]は0.40〜1.0dl/g、好ましくは0.50〜0.90dl/gであることが望ましい。なお、この液相重縮合工程の最終段目を除く各段階において達成される固有粘度は特に制限されないが、各段階における固有粘度の上昇の度合いが滑らかに分配されることが好ましい。
【0106】
なお、本明細書において、固有粘度[IV]は、ポリエステル樹脂1.2gをo-クロロフェノール15cc中に加熱溶解した後、冷却して25℃で測定された溶液粘度から算出される。
この重縮合工程で得られるポリエステル樹脂は、通常、溶融押し出し成形されて粒状(チップ状)に成形される。
【0107】
(固相重縮合工程)
この液相重縮合工程で得られるポリエステル樹脂は、所望によりさらに固相重縮合することができる。
固相重縮合工程に供給される粒状ポリエステル樹脂は、予め、固相重縮合を行う場合の温度より低い温度に加熱して予備結晶化を行った後、固相重縮合工程に供給してもよい。
【0108】
このような予備結晶化工程は、粒状ポリエステル樹脂を乾燥状態で通常、120〜200℃、好ましくは130〜180℃の温度に1分から4時間加熱することによって行うことができる。またこのような予備結晶化は、粒状ポリエステル樹脂を水蒸気雰囲気、水蒸気含有不活性ガス雰囲気下、または水蒸気含有空気雰囲気下で、120〜200℃の温度で1分間以上加熱することによって行うこともできる。
【0109】
予備結晶化されたポリエステル樹脂は、結晶化度が20〜50%であることが望ましい。
なお、この予備結晶化処理によっては、いわゆるポリエステル樹脂の固相重縮合反応は進行せず、予備結晶化されたポリエステル樹脂の固有粘度は、液相重縮合後のポリエステル樹脂の固有粘度とほぼ同じであり、予備結晶化されたポリエステル樹脂の固有粘度と予備結晶化される前のポリエステル樹脂の固有粘度との差は、通常0.06dl/g以下である。
【0110】
固相重縮合工程は、少なくとも1段からなり、温度が190〜230℃、好ましくは195〜225℃であり、圧力が98〜0.001MPaG(1kg/cm2 G〜10Torr)、好ましくは常圧から0.01MPaG(100Torr)の条件下で、窒素、アルゴン、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気下で行われる。使用する不活性ガスとしては窒素ガスが望ましい。
【0111】
このような固相重縮合工程を経て得られた粒状ポリエステル樹脂には、例えば特公平7−64920号公報記載の方法で、水処理を行ってもよく、この水処理は、粒状ポリエステル樹脂を水、水蒸気、水蒸気含有不活性ガス、水蒸気含有空気等と接触させることにより行われる。
このようにして得られた粒状ポリエステル樹脂の固有粘度は、通常0.60dl/g以上、好ましくは0.60〜1.00dl/g、より好ましくは0.75〜0.95dl/gであることが望ましい。
【0112】
上記のようなエステル化工程と重縮合工程とを含むポリエステル樹脂の製造工程はバッチ式、半連続式、連続式のいずれでも行うことができる。
本発明に係るポリエステル製造用触媒、特に固体状含チタン化合物(a)またはチタン含有溶液と、化合物(II)からなり、化合物(II)がマグネシウム化合物である触媒は、ポリエチレンテレフタレートの製造用触媒として好適である。このような固体状含チタン化合物(a)またはチタン含有溶液とマグネシウム化合物とからなる触媒を用いてポリエチレンテレフタレートを製造するには、例えば原料としてテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体と、必要に応じてテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸および/またはエチレングリコール以外の脂肪族ジオールを用いて、上述したような方法でエステル化、液相重縮合、所望によりさらに固相重縮合を行う。
【0113】
この際、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体は、芳香族ジカルボン酸100モル%に対して、80モル%以上、好ましくは90モル%以上となるような量で用いられ、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体は脂肪族ジオール100モル%に対して、80モル%、好ましくは90モル%以上となるような量で用いられる。
【0114】
このようにして得られたポリエチレンテレフタレートは、チタンの含有量が1〜200ppm、特に1〜50ppmの範囲にあることが好ましく、マグネシウムの含有量が1〜200ppm、特に1〜100ppmの範囲にあることが好ましい。また、該ポリエチレンテレフタレートに含まれるチタンとマグネシウムとの重量比(Mg/Ti)が0.01以上、好ましくは0.06〜10、特に好ましくは0.06〜5の範囲にあることが望ましい。さらに該ポリエチレンテレフタレートは、塩素の含有量が0〜1,000ppm、好ましくは0〜100ppmの範囲である。
【0115】
このようなポリエチレンテレフタレートは、色相に優れ、特に透明性に優れ、アセトアルデヒド含有量が少なく、中空成形容器用途に用いることが特に好ましい。
本発明に係るポリエステル製造用触媒を用いることにより、上記式(A−1)に示されるように現時点で工業化されているアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物を用いた場合と同等以上の生産速度でポリエステル樹脂を製造しうる。
【0116】
本発明に係るポリエステル製造用触媒を用いて製造されるポリエステル樹脂は式(B−1)に示されるように、現時点で工業化されているアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物を用いた場合と、成形時のアセトアルデヒド増加量が同等あるいはより少ない。すなわち、アンチモン化合物またはゲルマニウム化合物を用いた場合と同等以上の品質で、飲料充填容器用ポリエステル樹脂を製造しうる。
【0117】
本発明のポリエステル製造用触媒を用いることにより、式(C−1)に記載するようにポリエステル樹脂の金属含有量を50ppm以下にすることができ、既存のアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物を用いた場合と同等以上の環境安全性を有するポリエステル樹脂を製造しうる。
本発明に係るポリエステル製造用触媒は、アンチモン化合物およびゲルマニウム化合物を重縮合触媒として実質的に含まないことが好ましい。
【0118】
このようにして製造されたポリエステル樹脂は、従来から公知の添加剤、例えば、安定剤、離型剤、帯電防止剤、分散剤、染顔料等の着色剤等が添加されていてもよく、これらの添加剤はポリエステル製造時のいずれかの段階で添加してもよく、成形加工前、マスターバッチにより添加したものであってもよい。
本発明によって得られるポリエステル樹脂は各種成形体の素材として使用することができ、例えば、溶融成形して中空成形容器等の中空成形体、シート、フィルム、繊維等に使用されるが、中空成形容器に使用することが好ましい。
【0119】
本発明によって得られるポリエステル樹脂、例えば上記ポリエチレンテレフタレートから中空成形容器、シート、フィルム、繊維等を成型する方法としては従来公知の方法を採用することができる。
例えば、中空成形容器を成形する場合には、上記ポリエステル樹脂を溶融状態でダイより押出してチューブ状パリソンを形成し、次いでパリソンを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、金型に着装することにより中空成形体を製造する方法、上記ポリエステル樹脂から射出成形によりプリフォームを製造し、該プリフォームを延伸適性温度まで加熱し、次いでプリフォームを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、金型に着装することにより中空成形体を製造する方法等がある。
【0120】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0121】
【参考例1】
1,000mlガラス製ビーカーに脱イオン水500mlを秤取し、氷浴にて冷却した後撹拌しながら四塩化チタン5gを滴下した。塩化水素の発生が止まったら氷浴より取り出し、室温下で撹拌しながら25%アンモニア水を滴下し、液のpHを9にした。これに、室温下で攪拌しながら15%酢酸水溶液を滴下し、液のpHを5にした。生成した沈殿物を濾過により分離した。この沈殿物を脱イオン水で5回洗浄した。洗浄後の沈殿物を、20重量%エチレングリコール含有水に30分間浸した後、固液分離は洗浄時同様に濾過により行った。洗浄後のチタン化合物を40℃、1.3kPa(10Torr)、20時間の減圧乾燥で水分を除去し、固体状の加水分解物(固体状含チタン化合物)を得た。得られた固体状含チタン化合物を、エチレングリコールに溶解する前に10〜20μm程度の粒子に粉砕した。
【0122】
ICP分析法により測定した固体状含チタン化合物中の金属チタン含量は、35.4重量%であった。
固体状含チタン化合物がチタン、酸素、炭素および水素を含みTi−O−C結合を有することは、元素分析、EXAFS分析および13C−NMR分析により確認した。また固体状含チタン化合物のエチレングリコールへの最大溶解度は3,000ppmであり、炭素含有量は11.8重量%、チタンと炭素との重量比(Ti/C)は3であった。
【0123】
次に、200mlガラス製フラスコにエチレングリコール100gを秤取し、これに上記固体状含チタン化合物を0.34g添加し、150℃で1時間加熱して溶解させてチタン含有溶液を得た。ICP分析法により測定したチタン含有溶液中のチタンの含有量は、0.12重量%であった。また、ヘイズメーター(日本電色工業(株)製、ND-1001DP)を用いて測定したこの溶液のHAZE値は1.5%であった。
【0124】
【参考例2】
1,000mlガラス製ビーカーに脱イオン水500mlを秤取し、氷浴にて冷却した後撹拌しながら四塩化チタン5gを滴下した。塩化水素の発生が止まったら氷浴より取り出し、室温下で撹拌しながら25%アンモニア水を滴下し、液のpHを9にした。これに、室温下で攪拌しながら15%酢酸水溶液を滴下し、液のpHを5にした。生成した沈殿物を濾過により、分離した。洗浄後の沈殿物を、30重量%エチレングリコール含有水でスラリー濃度2.0重量%のスラリーとして30分間保持した後、二流体ノズル式のスプレードライヤーを用いて温度90℃で造粒乾燥を行い、固体状の加水分解物(固体状含チタン化合物)を得た。
【0125】
得られた固体状含チタン化合物の粒径分布は、0.5〜20μmであり、平均粒径は1.8μmであった。
参考例1と同様に測定し、固体状含チタン化合物中の金属チタン含量は、34.8重量%であった。
固体状含チタン化合物が、チタン、酸素、炭素および水素を含みTi−O−C結合を有することは、元素分析、EXAFS分析および13C−NMR分析により確認した。また固体状の加水分解物のエチレングリコールへの最大溶解度は3,000ppmであり、炭素含有量は11.6重量%、チタンと炭素との重量比(Ti/C)は3であった。
【0126】
次に、300mlガラス製フラスコにエチレングリコール170gとグリセリン30gを秤取し、これに上記固体状含チタン化合物を5.75g添加し、170℃で2時間加熱して溶解させてチタン含有溶液を得た。ICP分析法により測定したチタン含有溶液中のチタンの含有量は、1.0重量%であり、参考例1と同様にして測定したHAZE値は1.3%であった。
【0127】
【参考例3】
2,000mlガラス製フラスコに脱イオン水1,000mlを秤取し、これに酢酸亜鉛二水和物8.7gを溶解させた。続いて5%水酸化ナトリウム水溶液を66g入れ、pH11にした。こうして生成した沈殿物を濾過により分離し、脱イオン水で5回洗浄した。こうして得られた沈殿物9gと、実施例1と同様の処方で調製した洗浄後のチタン化合物の沈殿物78g(チタン含量5.4重量%)とを混合し、20重量%のエチレングリコール含有水に30分間浸した後、固液分離は洗浄同様に濾過により行った。洗浄後の沈殿物を40℃、1.3kPa(10Torr)、20時間の減圧乾燥で水分を除去し固体状の加水分解物(固体状含チタン化合物)を得た。得られた固体状含チタン化合物を、エチレングリコールに溶解する前に、10〜20μm程度の粒子に粉砕した。
【0128】
ICP分析法により測定した固体状含チタン化合物中のチタン含量は30.2重量%、亜鉛含量は16.8重量%であった。
固体状含チタン化合物が、チタン、酸素、炭素および水素を含みTi−O−C結合を有することは、元素分析、EXAFS分析および13C−NMR分析により確認した。また固体状の加水分解物のエチレングリコールへの最大溶解度は3,000ppmであり、炭素含有量は10.1重量%、チタンと炭素との重量比(Ti/C)は3であった。
【0129】
次に、200mlガラス製フラスコにエチレングリコール100gを秤取し、これにp-トルエンスルホン酸を0.5g添加した後、上記固体状含チタン化合物を0.38g添加し、150℃で1時間加熱して溶解させチタン含有溶液を得た。得られた溶液についてICP分析法により測定したチタン含有溶液中のチタン含有量は0.12重量%であり、参考例1と同様にして測定したHAZE値は5.2%であった。
【0130】
【参考例4】
1,000mlガラス製ビーカーに脱イオン水500mlを秤取し、無水水酸化マグネシウム0.15gを加えて分散させた。氷浴にて冷却した後撹拌しながら四塩化チタン5gを滴下した。液性は、滴下とともに酸性となり、分散していた水酸化マグネシウムは溶解した。塩化水素の発生が止まったら氷浴より取り出し、室温下で撹拌しながら25%アンモニア水を滴下し、液のpHを9にした。これに、室温下で攪拌しながら15%酢酸水溶液を滴下し、液のpHを5にした。生成した加水分解物の沈殿物を濾過により分離した。この沈殿物を脱イオン水で5回洗浄した。洗浄後の沈殿物を、10重量%エチレングリコール含有水に30分間浸した後、固液分離は洗浄時同様に濾過により行った。洗浄後の加水分解物を40℃、1.3kPa(10Torr)、20時間の減圧乾燥で水分を除去し、固体状の加水分解物(固体状含チタン化合物)を得た。得られた固体状含チタン化合物を重縮合触媒と使用する前に10〜20μm程度の粒子に粉砕した。
【0131】
ICP分析法により測定した固体状含チタン化合物中の金属チタン含量は33.4重量%、金属マグネシウム含有量は3.2重量%であった。
固体状含チタン化合物がチタン、酸素、炭素および水素を含みTi−O−C結合を有することは、元素分析、EXAFS分析および13C−NMR分析により確認した。また固体状の加水分解物のエチレングリコールへの最大溶解度は3,000ppmであり、炭素含有量は11.1重量%、チタンと炭素との重量比(Ti/C)は3であった。
【0132】
次に、200mlガラス製フラスコにエチレングリコール100gを秤取し、これにp-トルエンスルホン酸を0.5g添加した後、上記固体状含チタン化合物を0.36g添加し、150℃で1時間加熱して溶解させチタン含有溶液を得た。ICP分析法により測定したチタン含有溶液中のチタン含有量は0.12重量%であり、参考例1と同様にして測定したHAZE値は5.4%であった。
【0133】
【調製例1】
200mlのガラス製フラスコにエチレングリコール100gを採取し、これに水酸化ナトリウム1.74gを添加し、100℃で30分間加熱して溶解させた。
【0134】
【調製例2】
200mlのガラス製フラスコにエチレングリコール100gを採取し、これに水酸化カリウム1.43gを添加し、100℃で30分間加熱して溶解させた。
【0135】
【調製例3】
200mlのガラス製フラスコにエチレングリコール100gを採取し、これにナトリウムメトキシド2.35gを添加し、100℃で30分間加熱して溶解させた。
【0136】
【調製例4】
200mlのガラス製フラスコにエチレングリコール100gを採取し、これに酢酸ナトリウム3.56gを添加し、100℃で30分間加熱して溶解させた。
【0137】
【調製例5】
200mlのガラス製フラスコにエチレングリコール100gを採取し、これにラウリン酸ナトリウム9.65gを添加し、100℃で30分間加熱して溶解させた。
【0138】
【調製例6】
200mlのガラス製フラスコにエチレングリコール100gを採取し、これにパルミチン酸ナトリウム12.1gを添加し、100℃で30分間加熱して溶解させた。
【0139】
【調製例7】
200mlのガラス製フラスコにエチレングリコール100gを採取し、これにステアリン酸ナトリウム13.3gを添加し、100℃で30分間加熱して溶解させた。
【0140】
【調製例8】
200mlのガラス製フラスコにエチレングリコール100gを採取し、これに乳酸ナトリウム4.87gを添加し、100℃で30分間加熱して溶解させた。
【0141】
【調製例9】
200mlのガラス製フラスコにエチレングリコール100gを採取し、これにクエン酸三ナトリウム3.74gを添加し、100℃で30分間加熱して溶解させた。
【0142】
【調製例10】
200mlのガラス製フラスコにエチレングリコール100gを採取し、これにグルタミン酸ナトリウム7.35gを添加し、100℃で30分間加熱して溶解させた。
【0143】
【実施例1】
ポリエステルの製造
予め33,500重量部の反応液(定常運転時)が滞留する反応器内に、撹拌下、窒素雰囲気で260℃、0.9kg/cm2 G(0.09MPaG)に維持された条件下に、6,458重量部/時の高純度テレフタル酸と2,615重量部/時のエチレングリコールとを混合して調製されたスラリーを連続的に供給し、エステル化反応を行った。このエステル化反応では、水とエチレングリコールとの混合液が留去された。
【0144】
エステル化反応物(低次縮合物)は、平均滞留時間が3.5時間になるように制御して、連続的に系外に抜き出した。
上記で得られたエチレングリコールとテレフタル酸との低次縮合物の数平均分子量は、600〜1,300(3〜5量体)であった。
重縮合触媒として、参考例1〜4で調製したチタン触媒のエチレングリコール溶液と、調製例1〜10で調製したアルカリ金属化合物のエチレングリコール溶液あるいは未溶解の固体状態のアルカリ金属化合物とを表1に示す組合せで用い、上記で得られた低次縮合物の重縮合反応を行った。
【0145】
その際各触媒の添加量としては、チタン原子に換算して、生成ポリエチレンテレフタレートに対し、18ppmとなるように参考例1〜4の溶液を添加し、アルカリ金属化合物をアルカリ金属に換算して生成ポリエチレンテレフタレートに対し、ナトリウムで18ppm、カリウムで30ppmとなるように調製例1〜10の溶液あるいは固体状のアルカリ金属化合物を添加し、さらにリン酸をリン原子に換算して生成ポリエチレンテレフタレートに対し、6ppmとなるように加え、285℃、0.1kPa(1Torr)の条件下で重縮合を行い、固有粘度が0.64dl/gの液重品ポリエチレンテレフタレートが得られる時間を測定した。
【0146】
次に得られた液重品ポリエチレンテレフタレートを170℃で2時間、予備結晶化を行った後、220℃で窒素ガス雰囲気下で加熱し、固有粘度が0.64dl/gから0.84dl/gになるまで固相重合で分子量を上昇させた。この際に要する固相重縮合時間(h)を測定した。結果を表1に示す。
プリフォームの成形
得られた固重後のポリエチレンテレフタレートを、除湿エア乾燥機を用いて170℃、4時間乾燥した。乾燥後の樹脂中の水分量は40ppm以下であった。乾燥したポリエチレンテレフタレートを日精ASB機械株式会社製ASB−50を用いて、シリンダー温度265〜275℃、成形サイクル26±1秒で成形し、プリフォームを得た。
【0147】
アセトアルデヒド含有量の測定
得られた固重品ポリエチレンテレフタレートおよびプリフォームについて、アセトアルデヒド含有量を以下の方法で測定し、ポリエステル樹脂の安定性パラメータ(ΔAA)を求めた。これらの結果についても、上記同様に表1に示す。
アセトアルデヒド含有量は、試料2.0gを秤量し、フリーザーミルを用いて冷凍粉砕し、次いで粉砕試料は窒素置換したパイアル瓶に投入、さらに内部標準物質(アセトン)と水を入れて密栓し、パイアル瓶は120±2℃の乾燥機で1時間加熱した後、上澄み液をガスクロマトグラフィー(島津製作所(株)製GC−6A)にて測定した。
【0148】
【比較例1】
1,000mlガラス製ビーカーに脱イオン水500mlを秤取し、氷浴にて冷却した後撹拌しながら四塩化チタン5gを滴下した。塩化水素の発生が止まったら氷浴より取り出し、室温下で撹拌しながら25%アンモニア水を滴下し、液のpHを9にした。これに、室温下で攪拌しながら15%酢酸水溶液を滴下し、液のpHを5にした。生成した沈殿物を濾過により、分離した。この沈殿物を脱イオン水で5回洗浄した。洗浄後の固液分離は同様に濾過により行った。洗浄後のチタン化合物を40℃、10Torr、20時間の減圧乾燥で水分を除去し、加水分解物を得た。
【0149】
得られた固体状の加水分解物をエチレングリコールに溶解する前に10〜20ミクロン程度の粒子に粉砕した。
参考例1と同様に測定し、固体状の加水分解物中の金属チタン含量は、50.7重量%であった。
固体状の加水分解物がチタン、酸素、炭素および水素を含みTi−O−C結合を有することは、元素分析、EXAFS分析により確認した。なお、炭素含有量は0.5重量%であった。また固体状含チタン化合物のエチレングリコールへの最大溶解度は500ppmであった。
【0150】
200mlガラス製フラスコにエチレングリコール120gを秤取し、これに上記固体状含チタン化合物を2.36g添加し、170℃で2時間加熱したが、溶解させることはできなかった。
【0151】
【比較例2】
実施例1において、触媒として工業的に用いられている酢酸アンチモンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして重縮合反応を行った。酢酸アンチモンの添加量は、アンチモン原子に換算して、生成ポリエチレンテレフタレートに対し、160ppmとなるように添加し、さらにリン酸をリン原子に換算して生成ポリエチレンテレフタレートに対し、15ppmとなるように加えた。
【0152】
【比較例3】
比較例2において、酢酸アンチモンの添加量を、アンチモン原子に換算して、生成ポリエチレンテレフタレートに対し、225ppmとなるように添加したこと以外は、比較例2と同様にして重縮合反応を行った。
下記表1に、実施例1および比較例2,3における液相重縮合時間、固相重縮合時間、ポリエステル樹脂に含有される金属原子の総量(M)、ポリエステル樹脂に含有される重金属原子の総量(HM)、重合性パラメータの値(Vssp)、固相重縮合前の固有粘度([AA]0)、固相重縮合後の固有粘度([AA]1)、成形前と成形後のアセトアルデヒド含有量の差(ΔAA)を示す。
【0153】
【表1】
Figure 0003647033
【0154】
【参考例5】
200mlガラス製フラスコにエチレングリコール100gを秤取し、これに水酸化ナトリウムを1.74g添加し溶解させた。溶解後、参考例1で調製された固体状含チタン化合物を2.83g添加し、120℃で30分間加熱して溶解させて、ポリエステル製造用触媒であるチタン含有溶液を調製した。ICP分析法により測定したこのチタン含有溶液中の金属チタン含量は0.98重量%であり、参考例1と同様にして測定したHAZE値は、1.3%であった。
【0155】
【参考例6】
200mlガラス製フラスコにエチレングリコール100gを秤取し、これに30重量%水酸化ナトリウム水溶液5.80gを添加し混合した。これを120℃で加熱し、3.0gの水を留出させた。この後、参考例1で調製された固体状含チタン化合物2.83gを添加し、125℃で30分間加熱して溶解させて、ポリエステル製造用触媒であるチタン含有溶液を調製した。ICP分析法により測定したこのチタン含有溶液中の金属チタン含量は0.96重量%であり、参考例1と同様に測定したHAZE値は、1.2%であった。
【0156】
【参考例7】
200mlガラス製フラスコにエチレングリコール100gを秤取し、これに30重量%水酸化ナトリウム水溶液5.80gを添加し混合した。これに参考例1で調製した固体状含チタン化合物2.83gを添加し、120℃で30分間加熱して溶解させて、ポリエステル製造用触媒であるチタン含有溶液を調製した。ICP分析法により測定したこのチタン含有溶液中の金属チタン含量は0.93重量%であり、参考例1と同様に測定したHAZE値は1.1%であった。
【0157】
【参考例8】
200mlガラス製フラスコにエチレングリコール100gを秤取し、これにナトリウムメトキシド2.35gを添加し溶解させた。溶解後、参考例1で調製した固体状含チタン化合物2.83gを添加し、120℃で30分間加熱して溶解させて、ポリエステル製造用触媒であるチタン含有溶液を調製した。ICP分析法により測定したこのチタン含有溶液中の金属チタン含量は、0.97重量%であり、参考例1と同様に測定したHAZE値は1.2%であった。
【0158】
【参考例9】
200mlガラス製フラスコにエチレングリコール100gを秤取し、これに水酸化ナトリウム0.87gを添加し溶解させた。溶解後、参考例1で調製された固体状含チタン化合物2.83gを添加し、120℃で30分間加熱して溶解させて、ポリエステル製造用触媒であるチタン含有溶液を調製した。ICP分析法により測定したこのチタン含有溶液中の金属チタン含量は0.99重量%であり、参考例1と同様に測定したHAZE値は1.4%であった。
【0159】
【参考例10】
200mlガラス製フラスコにエチレングリコール100gを秤取し、これに水酸化ナトリウム3.09gを添加し溶解させた。溶解後、参考例1で調製された固体状含チタン化合物2.83gを添加し、120℃で30分間加熱して溶解させて、ポリエステル製造用触媒であるチタン含有溶液を調製した。ICP分析法により測定したこのチタン含有溶液中の金属チタン含量は0.98重量%であり、参考例1と同様に測定したHAZE値は1.2%であった。
【0160】
【参考例11】
200mlガラス製フラスコにエチレングリコール100gを秤取し、これに水酸化カリウム2.49gを添加し溶解させた。溶解後、参考例1で調製された固体状含チタン化合物2.83gを添加し、120℃で30分間加熱して溶解させて、ポリエステル製造用触媒であるチタン含有溶液を調製した。ICP分析法により測定したこのチタン含有溶液中の金属チタン含量は、0.98重量%であり、参考例1と同様に測定したHAZE値は1.2%であった。
【0161】
【参考例12】
200mlガラス製フラスコにエチレングリコール102gとグリセリン18gを秤取し、これに水酸化ナトリウム1.74gを添加し溶解させた。溶解後、参考例1で調製された固体状含チタン化合物3.38gを添加し、120℃で30分間加熱して溶解させて、ポリエステル製造用触媒であるチタン含有溶液を調製した。ICP分析法により測定したこのチタン含有溶液中の金属チタン含量は1.0重量%であり、参考例1と同様に測定したHAZE値は1.0%であった。
【0162】
【参考例13】
1,000mlガラス製ビーカーに脱イオン水500mlを秤取し、氷浴にて冷却した後撹拌しながら四塩化チタン5gを滴下した。塩化水素の発生が止まったら氷浴より取り出し、室温下で撹拌しながら25%アンモニア水を滴下し、液のpHを5にした。生成した沈殿物を濾過により、分離した。この沈殿物を脱イオン水で5回洗浄した。洗浄後の沈殿物を、20重量%エチレングリコール含有水に30分間浸した後、固液分離は洗浄時同様に濾過により行った。洗浄後のチタン化合物を40℃、1.3kPa(10Torr)、20時間の減圧乾燥で水分を除去し、固体状の加水分解物(固体状含チタン化合物)を得た。
【0163】
得られた固体状含チタン化合物を、エチレングリコールに溶解する前に10〜20μm程度の粒子に粉砕した。
参考例1と同様に測定した固体状含チタン化合物中の金属チタン含量は、34.6重量%であった。
固体状含チタン化合物がチタン、酸素、炭素および水素を含み、Ti−O−C結合を有することは、元素分析、EXAFS分析および13C−NMR分析により確認した。また固体状含チタン化合物のエチレングリコールへの最大溶解度は3,000ppmであり、炭素含有量は11.5重量%、チタンと炭素との重量比(Ti/C)は3であった。
【0164】
次に、300mlのガラス製フラスコにエチレングリコール200gを秤取し、これに水酸化ナトリウム3.48gを添加し溶解させた。溶解後、上記固体状含チタン化合物5.78gを添加し、120℃で30分間加熱して溶解させて、ポリエステル製造用触媒であるチタン含有溶液を調製した。ICP分析法により測定したこのチタン含有溶液中の金属チタン含量は、0.98重量%であった。また、参考例1と同様に測定したHAZE値は、1.3%であった。
【0165】
【参考例14】
1,000mlガラス製ビーカーに脱イオン水500mlを秤取し、氷浴にて冷却した後撹拌しながらチタンテトライソプロポキシド7.5gを滴下した。滴下終了後、室温下で30分間撹拌した。撹拌終了後、生成した沈殿物を濾過により、分離した。この沈殿物を、20重量%エチレングリコール含有水に30分間浸した後、固液分離は洗浄時同様に濾過により行った。洗浄後のチタン化合物を40℃、1.3kPa(10Torr)、20時間の減圧乾燥で水分を除去し、固体状の加水分解物(固体状含チタン化合物)を得た。
【0166】
得られた固体状含チタン化合物を、エチレングリコールに溶解する前に10〜20μm程度の粒子に粉砕した。
参考例1と同様に測定した固体状含チタン化合物中の金属チタン含量は、36.3重量%であった。
固体状含チタン化合物がチタン、酸素、炭素および水素を含みTi−O−C結合を有することは、元素分析、EXAFS分析および13C−NMR分析により確認した。また固体状含チタン化合物のエチレングリコールへの最大溶解度は3,000ppmであり、炭素含有量は11.4重量%であり、チタンと炭素との重量比(Ti/C)は3であった。
【0167】
次に、300mlガラス製フラスコにエチレングリコール200gを秤取し、これに水酸化ナトリウム3.48gを添加し溶解させた。溶解後、上記固体状含チタン化合物5.51gを添加し、120℃で30分間加熱して溶解させて、ポリエステル製造用触媒であるチタン含有溶液を調製した。ICP分析法により測定したこのチタン含有溶液中の金属チタン含量は、0.98重量%であった。また、実施例1と同様に測定したHAZE値は、1.2%であった。
【0168】
【参考例15】
300mlガラス製フラスコにエチレングリコール200gを秤取し、これに水酸化ナトリウム3.48gを添加し溶解させた。溶解後、参考例2で調製された固体状含チタン化合物5.75gを添加し、120℃で30分間加熱して溶解させて、ポリエステル製造用触媒であるチタン含有溶液を調製した。ICP分析法により測定したこのチタン含有溶液中の金属チタン含量は、0.98重量%であった。また、参考例1と同様に測定したHAZE値は、1.3%であった。
【0169】
【参考例16】
300mlガラス製フラスコにエチレングリコール200gを秤取し、これに水酸化ナトリウム3.48gを添加し溶解させた。溶解後、参考例3で調製された固体状含チタン化合物6.62gを添加し、120℃で30分間加熱して溶解させて、ポリエステル製造用触媒であるチタン含有溶液を調製した。ICP分析法により測定したこのチタン含有溶液中の金属チタン含量は、0.98重量%であり、また金属亜鉛含量は0.54重量%であった。さらに、参考例1と同様に測定したHAZE値は、2.0%であった。
【0170】
【参考例17】
次に、300mlガラス製フラスコにエチレングリコール200gを秤取し、これに水酸化ナトリウム3.48gを添加し溶解させた。溶解後、参考例4で調製された固体状含チタン化合物5.99gを添加し、120℃で30分間加熱して溶解させて、ポリエステル製造用触媒であるチタン含有溶液を調製した。ICP分析法により測定したこのチタン含有溶液中の金属チタン含量は、0.98重量%であり、また金属マグネシウム含量は0.09重量%であった。さらに、参考例1と同様に測定したHAZE値は、2.2%であった。
【0171】
【参考例18】
200mlガラス製フラスコにエチレングリコール102gとグリセリン18gを秤取し、これに酢酸ナトリウム4.28gを添加し溶解させた。溶解後、これに参考例1で調製された固体状含チタン化合物3.38gを添加し、120℃で30分間加熱して溶解させチタン含有溶液を得た。ICP分析法により測定したチタン含有溶液中の金属チタン含量は、1.0重量%であり、参考例1と同様に測定したHAZE値は、1.1%であった。
【0172】
【参考例19】
200mlガラス製フラスコにエチレングリコール102gとグリセリン18gを秤取し、これにラウリン酸ナトリウムを11.6gを添加し溶解させた。溶解後、参考例1で調製された固体状含チタン化合物を3.38gを添加し、120℃で30分間加熱して溶解させチタン含有溶液を得た。ICP分析法により測定したチタン含有溶液中の金属チタン含量は、0.99重量%であり、参考例1と同様に測定したHAZE値は、1.2%であった。
【0173】
【参考例20】
200mlガラス製フラスコにエチレングリコール102gとグリセリン18gを秤取し、これにパルミチン酸ナトリウム14.5gを添加し溶解させた。溶解後、参考例1で調製された固体状含チタン化合物3.38gを添加し、120℃で30分間加熱して溶解させチタン含有溶液を得た。ICP分析法により測定したチタン含有溶液中の金属チタン含量は、1.01重量%であり、参考例1と同様に測定したHAZE値は、1.2%であった。
【0174】
【参考例21】
200mlガラス製フラスコにエチレングリコール102gとグリセリン18gを秤取し、これにステアリン酸ナトリウム16.0gを添加し溶解させた。溶解後、参考例1で調製された固体状含チタン化合物3.38gを添加し、120℃で30分間加熱して溶解させチタン含有溶液を得た。ICP分析法により測定したチタン含有溶液中の金属チタン含量は、0.98重量%であり、参考例1と同様に測定したHAZE値は、1.2%であった。
【0175】
【参考例22】
200mlガラス製フラスコにエチレングリコール102gとグリセリン18gを秤取し、これに乳酸ナトリウム5.79gを添加し溶解させた。溶解後、参考例1で調製された固体状含チタン化合物3.38gを添加し、120℃で30分間加熱して溶解させチタン含有溶液を得た。ICP分析法により測定したチタン含有溶液中の金属チタン含量は、1.0重量%であり、参考例1と同様に測定したHAZE値は、1.3%であった。
【0176】
【参考例23】
200mlガラス製フラスコにエチレングリコール102gとグリセリン18gを秤取し、これにクエン酸三ナトリウム4.48gを添加し溶解させた。溶解後、参考例1で調製された固体状含チタン化合物3.38gを添加し、120℃で30分間加熱して溶解させチタン含有溶液を得た。ICP分析法により測定したチタン含有溶液中の金属チタン含量は、1.01重量%であり、参考例1と同様に測定したHAZE値は、1.2%であった。
【0177】
【参考例24】
200mlガラス製フラスコにエチレングリコール102gとグリセリン18gを秤取し、これにグルタミン酸ナトリウム9.80gを添加し溶解させた。溶解後、参考例1で調製された固体状含チタン化合物3.38gを添加し、120℃で30分間加熱して溶解させチタン含有溶液を得た。ICP分析法により測定したチタン含有溶液中の金属チタン含量は、1.0重量%であり、参考例1と同様に測定したHAZE値は、1.1%であった。
【0178】
【比較例4】
200mlガラス製フラスコにエチレングリコール100gを秤取し、これに水酸化ナトリウム1.74gを添加し溶解させた。溶解後、比較例1で調製された固体状の加水分解物1.97gを添加し、140℃で3時間加熱したが、白濁状態のままで変化せず、溶解することができなかった。
【0179】
このスラリー中の金属チタン含量を、同様にICP分析法により測定した結果、1.01重量%であった。
【0180】
【比較例5】
200mlガラス製フラスコにエチレングリコール102gとグリセリン18gを秤取し、参考例1で調製された固体状の加水分解物3.38gを添加し、170℃で2時間加熱して溶解させて、ポリエステル製造用触媒である溶液を調製した。ICP分析法により測定したこの溶液中の金属チタン含量は、1.0重量%であり、参考例1と同様に測定したHAZE値は、2.0%であった。
【0181】
【実施例2】
ポリエステルの製造
重縮合触媒として、参考例5〜24および比較例4、5で調製したチタン含有溶液またはチタン触媒のエチレングリコール溶液を用い、実施例1で得られた低次縮合物の重縮合反応を行った。
【0182】
その際各触媒の添加量としては、チタン原子に換算して、生成ポリエチレンテレフタレートに対し、18ppmとなるように参考例5〜24の溶液を添加し、さらにリン酸をリン原子に換算して生成ポリエチレンテレフタレートに対し、6ppmとなるように加え、実施例1と同様に液重品ポリエチレンテレフタレートが得られる時間、固相重縮合時間(T)、固相重合品およびプリフォームのアセトアルデヒド含量、安定性パラメータ(ΔAA)を測定した。
【0183】
下記表2に、実施例2および比較例4,5における液相重縮合時間、固相重縮合時間、およびM、HM、Vssp、[AA]0、[AA]1、ΔAAの値を示す。
【0184】
【表2】
Figure 0003647033
【0185】
【参考例25】
参考例5において、水酸化ナトリウムの使用量を0.87gとしたこと以外は同様にポリエステル製造用触媒であるチタン含有溶液を調製した。ICP分析法により測定したこのチタン含有溶液中の金属チタン含量は、0.98重量%であり、参考例1と同様にして測定したHAZE値は、1.5%であった。
【0186】
【参考例26】
参考例21において、ステアリン酸ナトリウムの使用量を8.0gとしたこと以外は同様にポリエステル製造用触媒であるチタン含有溶液を調製した。ICP分析法により測定したこのチタン含有溶液中の金属チタン含量は、0.98重量%であり、参考例1と同様にして測定したHAZE値は、1.3%であった。
【0187】
【調製例11】
200mlのガラス製フラスコにエチレングリコール100gを採取し、これに水酸化ナトリウム0.87gを添加し、100℃で30分間加熱して溶解させた。
【0188】
【調製例12】
200mlのガラス製フラスコにエチレングリコール100gを採取し、これに水酸化カリウム0.71gを添加し、100℃で30分間加熱して溶解させた。
【0189】
【調製例13】
200mlのガラス製フラスコにエチレングリコール100gを採取し、これに酢酸ナトリウム1.78gを添加し、100℃で30分間加熱して溶解させた。
【0190】
【調製例14】
200mlのガラス製フラスコにエチレングリコール100gを採取し、これにステアリン酸ナトリウム6.6gを添加し、100℃で30分間加熱して溶解させた。
【0191】
【調製例15】
200mlのガラス製フラスコにエチレングリコール100gを採取し、これに乳酸ナトリウム2.41gを添加し、100℃で30分間加熱して溶解させた。
【0192】
【調製例16】
200mlのガラス製フラスコにエチレングリコール100gを採取し、これにクエン酸三ナトリウム1.87gを添加し、100℃で30分間加熱して溶解させた。
【0193】
【調製例17】
200mlのガラス製フラスコにエチレングリコール100gを採取し、これにグルタミン酸ナトリウム3.67gを添加し、100℃で30分間加熱して溶解させた。
【0194】
【実施例3】
ポリエステルの製造
重縮合触媒として、参考例5、12、15、21、23、25、26で調製したチタン含有溶液と、調製例11〜17で調製したアルカリ金属のエチレングリコール溶液或いは、未溶解の固体状態のアルカリ金属化合物とを表3に示す組合せで用い、実施例1で得られた低次縮合物の重縮合反応を行った。
【0195】
その際の添加量としては、参考例5、12、15、21、23、25、26で調製したチタン含有溶液を、チタン原子に換算して、生成ポリエチレンテレフタレートに対し、18ppmとなるように添加し、さらに、調製例11〜17で調製したアルカリ金属化合物のエチレングリコール溶液あるいは未溶解の固体状態のアルカリ金属化合物をアルカリ金属に換算して生成ポリエチレンテレフタレートに対し、ナトリウムで9ppm、カリウムで15ppmとなるように添加し、さらにリン酸をリン原子に換算して生成ポリエチレンテレフタレートに対し、6ppmとなるように加え、実施例1と同様に液重品ポリエチレンテレフタレートが得られる時間、固相重縮合時間(T)、固相重合品およびプリフォームのアセトアルデヒド含量、安定性パラメータ(ΔAA)を測定した。
【0196】
下記表3に、実施例3における液相重縮合時間、固相重縮合時間、およびM、HM、Vssp、[AA]0、[AA]1、ΔAAの値を示す。
【0197】
【表3】
Figure 0003647033
【0198】
【参考例27】
1,000mlガラス製ビーカーに脱イオン水500mlを秤取し、氷浴にて冷却した後撹拌しながら四塩化チタン5gを滴下した。塩化水素の発生が止まったら氷浴より取り出し、室温下で撹拌しながら25%アンモニア水を滴下し、液のpHを9にした。これに、室温下で攪拌しながら15%酢酸水溶液を滴下し、液のpHを5にした。生成した沈殿物を濾過により、分離した。洗浄後の沈殿物を、別途調製しておいた水酸化ナトリウムの30重量%エチレングリコール含有水溶液(Na換算濃度で1.0重量%)でスラリー濃度2.0重量%のスラリーとして30分間保持した後、二流体ノズル式のスプレードライヤーを用いて温度90℃で造粒乾燥を行い、固体状の加水分解物(固体状含チタン化合物)を得た。
【0199】
得られた固体状含チタン化合物の粒径分布は、0.5〜20μmであり、平均粒径は1.8μmであった。
参考例1と同様に測定した固体状含チタン化合物中の金属チタン含量は、26.2重量%であり、金属ナトリウム含量は、25.9重量%であった。
固体状含チタン化合物が、チタン、酸素、炭素および水素を含みTi−O−C結合を有することは、元素分析、EXAFS分析および13C−NMR分析により確認した。また固体状含チタン化合物のエチレングリコールへの最大溶解度は15,000ppm以上であり、炭素含有量は9.7重量%、チタンと炭素との重量比(Ti/C)は2.7であった。
【0200】
次に、300mlガラス製フラスコにエチレングリコール170gとグリセリン30gを秤取し、これに上記固体状含チタン化合物を7.63g添加し、120℃で30分間加熱して溶解させチタン含有溶液を得た。ICP分析法により測定したチタン含有溶液中のチタンの含有量は1.0重量%、ナトリウム含有量は0.99重量%であり、参考例1と同様にして測定したHAZE値は1.4%であった。
【0201】
【参考例28】
参考例27において、水酸化ナトリウムの30重量%エチレングリコール含有水溶液のNa換算濃度を0.5重量%としたこと以外は、同様にポリエステル製造用触媒である溶液を調製した。
得られた固体状含チタン化合物の粒径分布は、0.5〜20μmであり、平均粒径は1.7μmであった。
【0202】
参考例1と同様に測定した固体状含チタン化合物中の金属チタン含量は、30.1重量%であり、金属ナトリウム含量は、14.9重量%であった。
固体状含チタン化合物が、チタン、酸素、炭素および水素を含みTi−O−C結合を有することは、元素分析、EXAFS分析13C−NMR分析により確認した。また固体状含チタン化合物のエチレングリコールへの最大溶解度は15,000ppmであり、炭素含有量は10.3重量%、チタンと炭素との重量比(Ti/C)は2.9であった。
【0203】
次に、300mlガラス製フラスコにエチレングリコール170gとグリセリン30gを秤取し、これに上記固体状含チタン化合物を6.64g添加し、120℃で30分間加熱して溶解させチタン含有溶液を得た。ICP分析法により測定したチタン含有溶液中のチタンの含有量は0.98重量%、ナトリウム含有量は0.49重量%であり、参考例1と同様にして測定したHAZE値は1.5%であった。
【0204】
【実施例4】
ポリエステルの製造
重縮合触媒として、参考例27、28で調製したチタン含有溶液と、調製例11〜17で調製したアルカリ金属のエチレングリコール溶液または、未溶解の固体状態のアルカリ金属化合物とを表3に示す組合せで用い、実施例1で得られた低次縮合物の重縮合反応を行った。
【0205】
その際の添加量としては、参考例27、28で調製したチタン含有溶液を、チタン原子に換算して、生成ポリエチレンテレフタレートに対し、18ppmとなるように添加し、さらに、調製例11〜17で調製したアルカリ金属化合物のエチレングリコール溶液あるいは未溶解の固体状態のアルカリ金属化合物をアルカリ金属に換算して生成ポリエチレンテレフタレートに対し、ナトリウムで9ppm、カリウムで15ppmとなるように添加し、さらにリン酸をリン原子に換算して生成ポリエチレンテレフタレートに対し、6ppmとなるように加え、実施例1と同様に液重品ポリエチレンテレフタレートが得られる時間、固相重縮合時間(T)、固相重合品およびプリフォームのアセトアルデヒド含量、安定性パラメータ(ΔAA)を測定した。
【0206】
下記表4に、実施例4における液相重縮合時間、固相重縮合時間、およびM、HM、Vssp、[AA]0、[AA]1、ΔAAの値を示す。
【0207】
【表4】
Figure 0003647033
【0208】
【発明の効果】
本発明のポリエステル樹脂は、高い生産性と安定性、安全性を備える。本発明に係るポリエステル製造触媒は、従来から重縮合触媒として使用されていたゲルマニウム化合物、アンチモン化合物に比べて高い触媒活性、高い安定性、低い金属含有量でポリエステル樹脂を製造することができ、アンチモン化合物を重縮合触媒として用いる場合に比べて、透明性、色相に優れ、アセトアルデヒドの含有量の少ないポリエステル樹脂を得ることができる。

Claims (20)

  1. 重合性パラメータが下記式(A−1)を満足し、安定性パラメータが下記式(B−1)を満足し、かつ、金属含有量パラメータが下記式(C−1)を満足することを特徴とするポリエステル樹脂;
    (A−1) Vssp≧0.025(dl/g・h)
    (式中、Vsspは、ポリエステル樹脂の固有粘度と、そのポリエステル樹脂を220℃窒素雰囲気下で2時間ないし12時間の任意の時間固相重縮合させたものの固有粘度から、下記計算式を用いて求められる。
    ssp=([IV]1−[IV]0)/T
    [IV]0および[IV]1はそれぞれ前記固相重縮合前と固相重縮合後の固有粘度(dl/g)を示し、Tは固相重縮合時間(h)を示す。)
    (B−1) ΔAA≦7.0(ppm)
    (式中、ΔAAは、ポリエステル樹脂にもともと含有されるアセトアルデヒド量と、そのポリエステル樹脂を射出成形機を用いて、シリンダー温度265〜275℃、成形サイクル26±1秒で成形して得られるプリフォームに含有されるアセトアルデヒド量から、下記計算式を用いて求められる。
    ΔAA=[AA]1−[AA]0
    [AA]0および[AA]1はそれぞれ前記成形前と成形後のアセトアルデヒド含有量(重量ppm)を示す。)
    (C−1) M≦50(ppm)
    (式中、Mはポリエステル樹脂に含有される金属原子の総量(重量ppm)を示す。)。
  2. 重縮合時間が下記式(A−2)をさらに満足することを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂;
    (A−2) T≦8(h)
    (Tは、固有粘度0.64dl/gのポリエステル樹脂を220℃窒素雰囲気下で固相重縮合を行うことにより固有粘度0.84dl/gまで分子量を上昇させるのに要する固相重縮合時間(h)を示す。)。
  3. 金属含有量パラメータが下記式(C−2)をさらに満足することを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル樹脂。
    (C−2) HM≦2(ppm)
    (式中、HMはポリエステル樹脂に含有される重金属原子の総量(重量ppm)を示す。)。
  4. (a)チタン、酸素、炭素および水素を含み、Ti−O−C結合を有し、かつ150℃のエチレングリコールに溶解した場合のエチレングリコールへの最大溶解度がチタン原子換算で1,000ppm以上である固体状含チタン化合物と、
    (b)アルカリ金属化合物と
    からなるポリエステル製造用触媒であって、その触媒中のアルカリ金属原子とチタン原子のモル比(アルカリ金属/チタン)が20/1〜0.1/1の範囲にあることを特徴とするポリエステル製造用触媒。
  5. 上記固体状含チタン化合物(a)が、チタン、酸素、炭素および水素に加えて、さらにアルカリ金属を含むことを特徴とする請求項4に記載のポリエステル製造用触媒。
  6. チタン、酸素、炭素、水素およびアルカリ金属を含み、Ti−O−C結合を有し、かつ150℃加熱下にエチレングリコールに溶解した場合のエチレングリコールへの最大溶解度がチタン原子換算で1,000ppm以上である固体状含チタン化合物(a)からなるポリエステル製造用触媒であって、アルカリ金属原子とチタン原子のモル比が20/1〜0.1/1の範囲にあるポリエステル製造用触媒。
  7. 上記固体状含チタン化合物(a)中のチタン原子含量が5〜50重量%、炭素原子含量が1〜35重量%であり、チタン原子と炭素原子との重量比Ti/Cが50〜1の範囲にあることを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載のポリエステル製造用触媒。
  8. 上記固体状含チタン化合物(a)が、チタン、酸素、炭素、水素およびアルカリ金属以外にベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、アンチモンおよびリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むことを特徴とする請求項4ないし請求項7のいずれか1項に記載のポリエステル製造用触媒。
  9. 上記固体状含チタン化合物(a)が、チタンハロゲン化物の加水分解物またはチタンアルコキシドの加水分解物と、多価アルコールとの接触生成物であることを特徴とする請求項4ないし請求項8のいずれか1項に記載のポリエステル製造用触媒。
  10. (I)請求項4ないし請求項9のいずれか1項に記載のポリエステル製造用触媒と
    (II)ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛、ゲルマニウム、アンチモンおよびリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物
    からなることを特徴とするポリエステル製造用触媒。
  11. 上記固体状含チタン化合物(a)が、チタン原子換算で500〜100,000ppmの量でエチレングリコール含有液(c)に溶解されたチタン含有溶液であることを特徴とする請求項4ないし請求項10のいずれか1項に記載のポリエステル製造用触媒。
  12. 上記チタン含有溶液が、固体状含チタン化合物(a)をエチレングリコール含有液(c)に溶解する際に、アルカリ金属化合物(b)を添加して得られたものであることを特徴とする請求項11に記載のポリエステル製造用触媒。
  13. 上記チタン含有溶液が、溶解助剤をエチレングリコール含有液(c)に対して、1〜50重量%の範囲で含有することを特徴とする請求項11または請求項12に記載のポリエステル製造用触媒。
  14. 上記溶解助剤が、グリセリンまたはトリメチロールプロパンであることを特徴とする請求項13に記載のポリエステル製造用触媒。
  15. 上記チタン含有溶液の含水率が、0.05〜15.0重量の範囲にあることを特徴とする請求項13または請求項14に記載のポリエステル製造用触媒。
  16. アンチモン化合物およびゲルマニウム化合物を実質的に含まないことを特徴とする請求項4ないし請求項15のいずれか1項に記載のポリエステル製造用触媒。
  17. 請求項4ないし請求項16のいずれか1項に記載のポリエステル製造用触媒の存在下に、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを重縮合させてポリエステル樹脂を製造することを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
  18. 請求項4ないし請求項16のいずれか1項に記載のポリエステル製造用触媒の存在下に、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを重縮合させて製造されたことを特徴とするポリエステル樹脂。
  19. 固有粘度が0.60dl/g以上であるとともに、固相重縮合してなることを特徴とする請求項18に記載のポリエステル樹脂。
  20. 請求項18または請求項19に記載のポリエステル樹脂からなることを特徴とする中空成形容器。
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