JP3645963B2 - 金属製中空材の押出用ダイス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、アルミニウム等の金属製の中空押出材を押出加工する押出用ダイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばアルミニウム製の中空押出材の押出加工に用いられるダイスとして、従来、図10に示されるように、中空材の外周部を成形する成形孔ベアリング部(51)を有する雌型(52)と、中空材の中空部を成形する雄型(53)とを組合わせて構成された雌雄組合わせダイス(54)が知られている。
【0003】
このダイス(54)において、雄型(53)は、先端部外周面に中空部成形ベアリング部(55)を有するマンドレル(56)と、このマンドレル(56)を保持する保持部材(57)とに分割構成されており、押出の繰り返しによりマンドレル(56)のベアリング部(55)が摩耗した場合、雄型(53)については、保持部材(57)はそのまま用いて、マンドレル(56)のみを新しいものと交換することで、元の適正なダイス雄型に修復しえて、ダイス修復に要するコストを低減しうるようになされている。
【0004】
特に、ベアリング部(55)の摩耗を少なくするなどの目的において、該ベアリング部(55)を硬質材、例えば超硬合金製とする場合には、上記のような分割構造によれば、ベアリング部(55)を一体に備えた超硬合金製のマンドレル(56)のみを交換すればよく、ベアリング部(55)の摩耗によるダイス修復コストを低く抑えつつ、ダイスの寿命を長くすることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような構造のダイス(54)では、雄型ベアリング部(55)に摩耗を生じた場合、マンドレル(56)そのものを交換しなければならず、その交換コスト、即ちダイス修復コストは、低減されたとはいえ、依然として高いものであった。特に、マンドレル(56)が超硬合金、セラミックス等の高価な硬質材によるものである場合には、先端部の中空部成形ベアリング部(55)のみの摩耗にもかかわらず、マンドレル(56)の全体を交換しなければならず、ダイス修復コストは、かなり高くついた。
【0006】
この発明は、上記のような従来の問題点に鑑み、中空部成形ベアリング部が摩耗した場合のダイス修復コストを更に一層低減することができる構造の金属製中空材の押出用ダイスを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する第1発明は、中空材の外周部を成形する成形孔ベアリング部を有する雌型と、中空材の中空部を成形する雄型との組み合わせからなる金属製中空材の押出用ダイスにおいて、
前記雄型は、
先端部外周面を中空部成形ベアリング部とし、後端部外周面に支承用の凹所を有するマンドレルと、
マンドレルの凹所内に嵌合される嵌合部と、該嵌合状態において凹所の外方に突出される外方突出部とを有して、マンドレルを嵌合部の後面部において支承する支承部材と、
マンドレルがその先端部を前方に突出させた状態に挿入される挿入孔を有すると共に、マンドレル挿入状態において、支承部材の外方突出部をその前面部において支承する支承面部を有するマンドレル保持部材と、
を有し、
前記支承部材は、その嵌合部の後面部と外方突出部の前面部とのマンドレル長手方向における間隔距離を短縮可能に構成され、この短縮により、マンドレルが保持部材に対し前方に進出変位され、マンドレルの中空部成形ベアリング部の後方隣接部分が雌型成形孔ベアリング部との間で中空材成形用の成形隙間を形成するようになされていることを特徴とする金属製中空材の押出用ダイスである。
【0008】
この第1発明では、マンドレルの中空部成形ベアリング部が摩耗した場合には、支承部材において、その嵌合部の後面部と外方突出部の前面部とのマンドレル長手方向における間隔距離を短縮させることによって、マンドレルを保持部材に対し前方に進出変位させ、マンドレルの中空部成形ベアリング部の後方隣接部分に、雌型成形孔ベアリング部との間で中空材成形用の成形隙間を形成させるようにする。これにより、雄型は修復され、マンドレルそのものの交換回数が減少されて、ダイス修復コストが低減される。
【0009】
特に、マンドレルが、超硬合金、セラミックス等の高価な硬質材にて製作されているものである場合には、中空部成形ベアリング部の摩耗によるダイス修復コストが効果的に抑制される。
【0010】
そして、支承部材において、その嵌合部の後面部と外方突出部の前面部とのマンドレル長手方向における間隔距離を短縮可能にする構造の一例として、例えば、支承部材が、複数の単位支承部材をマンドレル長手方向に重ね合わせて構成され、該複数の単位支承部材のうちの一部を取り除くことにより、その嵌合部の後面部と外方突出部の前面部とのマンドレル長手方向における間隔距離が短縮されるようになされている構造が挙げられる。第2発明は、このような構造による。このような構造によれば、マンドレルの中空部成形ベアリング部が摩耗した場合には、複数の単位支承部材のうちの一部を取り除き、残りの単位支承部材にて支承部材を構成するようにするだけで、雄型は修復される。
【0011】
また、上記各発明構造において、マンドレルに、その前端面に開口する冷却用ガス導通孔が設けられた構造とした第3発明では、押出中、ダイスから押し出された直後の中空材をその中空部側から冷却し得て、寸法精度の高い中空材が得られる。のみならず、このように冷却用ガス導通孔が穿孔された高付加価値のマンドレルを使用した構造において、中空部成形ベアリング部の摩耗によるダイス修復コストが低減される。
【0012】
なお、本発明ないし本明細書において、「前」、「後」の語は、押出材が押し出されていく方向を前方として考えた場合の概念である。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
本実施形態において押出加工しようとする押出材は、図9に示されるような円筒状のアルミニウム製中空材(E)である。
【0015】
図1〜図4には、この中空材(E)の押出加工に用いる第1実施形態のダイス(1)を示す。図1に示されるダイス(1)において、(2)は雌型、(3)は雄型である。
【0016】
雌型(2)は、超硬合金等の硬質材にて製作されたもので、その軸心部に、中空材(E)の外周部を成形する円形の成形孔ベアリング部(4)を有する。
【0017】
雄型(3)は、中空材(E)の中空部(h)を成形するもので、同雄型(3)において、(5)はマンドレル、(6)は支承部材、(7)は保持部材である。
【0018】
マンドレル(5)は、円柱状の部材で、超硬合金等の硬質材にて製作されたものである。このマンドレル(5)の先端部外周面は、中空部成形ベアリング部(9)として用いられる。そして、このマンドレル(5)の後端部外周面には、図1及び図2に示されるように、支承用の凹所としての環状溝(10)が設けられている。この環状溝(10)の溝幅は、雌型成形孔ベアリング部(4)のベアリング長さの4倍ないしはそれ以上に寸法設計される。
【0019】
また、このマンドレル(5)には、その軸芯部に、冷却用ガス導通用の貫通孔(11)が形成され、この貫通孔(11)に導入されたエアーや窒素ガス等の冷却用ガスがマンドレル(5)の前端面から吹き出されるようになされている。
【0020】
支承部材(6)は、上記マンドレル(5)を保持部材(7)に支承させるもので、図2に示されるように、リング状ないし筒状の部材を縦方向に半割りにした形状を有する。半割り状に形成された各支承部材(6)(6)は、その内周直径がマンドレル(5)の環状溝(10)の底面位置における直径と等しく、その外周直径がマンドレル(5)の外周直径よりも大きく形成されており、それによって、これら支承部材(6)(6)をその内周側からマンドレル(5)の環状溝(10)内に嵌合させた状態において、その半径線方向の内方側の部分が嵌合部(12)としてマンドレル(5)の環状溝(10)内に存置され、半径線方向の外方側の部分が外方突出部(13)としてマンドレル(5)の環状溝(10)の外方に突出されるようになされている。マンドレル(5)は、これら支承部材(6)(6)の各嵌合部(12)の後面部において、支承される。
【0021】
そして、各支承部材(6)(6)はそれぞれ、平面形状を同じくする4つの単位支承部材(6a)…をマンドレル(5)の長手方向において重ね合わせて構成されている。各単位支承部材(6a)…の厚さはそれぞれ、雌型成形孔ベアリング部(4)のベアリング長さに対応する寸法に設計され、これら4つの単位支承部材(6a)…を重ね合わせ状態とすることにより、その合計厚さが、雌型成形孔ベアリング部(4)のベアリング長さの4倍程度となるように設計されている。
【0022】
保持部材(7)は、図1に示されるように、環状のベース部(14)と、該環状ベース部(14)の後面側において後方に突出して環状ベース部(14)を横断するマイナス字状のブリッジ部(15)とを一体に有するもので、ダイス鋼にて製作されている。環状ベース部(14)の内部は、上記雌型(2)を収容させる雌型収容部(16)として用いられる。
【0023】
そして、ブリッジ部(15)は、マンドレル(5)を保持するのに用いられるもので、その長さ方向中央部に、軸線方向に延びてブリッジ部(15)を貫通するマンドレル挿入孔(17)が設けられている。この挿入孔(17)内は、後部側の所定長さ範囲が前方側と比べて径大に形成され、これら径大孔部(17a )と径小孔部(17b )との間に、後方に面した環状の段(19)が形成されている。この環状段(19)が、支承部材(6)の外方突出部(13)をその前面部において支承する支承面部として用いられる。径小孔部(17b )は、マンドレル(5)をしっくりとした適合した挿入状態にさせる直径に設計されている。
【0024】
マンドレル(5)は、その環状溝(10)に、4つの単位支承部材(6a)…からなる各支承部材(6)(6)の嵌合部(12)を嵌合させ、保持部材(7)の後方から、ブリッジ部(15)の挿入孔(17)に挿入させていき、支承部材(6)の外方突出部(13)を、挿入孔(17)内の環状段(19)に支承させることにより、先端部がブリッジ部(15)の前方に突出された状態に保持部材(7)に保持される。この保持状態において、図3(イ)に示されるように、マンドレル(5)の先端部は、環状ベース部(14)内に収容された雌型(2)の成形孔ベアリング部(4)まで突出され、該成形孔ベアリング部(4)との間に成形隙間(20)を形成する。マンドレル(5)において、雌型(2)の成形孔ベアリング部(4)と対抗する外周部分が、中空部成形ベアリング部(9)である。なお、この組合わせ状態において、マンドレル(5)と保持部材(7)と雌型(2)とは、必要に応じて、焼嵌めにて一体化される。
【0025】
また、上記ブリッジ部(15)には、図1(イ)に示されるように、挿入孔(17)の径大孔部(17a )内に連通されるように横方向に延ばされ、側面に開口された孔(21)が設けられ、冷却用ガスが、該孔(21)から径大孔部(17a )を介してマンドレル(5)の冷却用ガス導通孔(11)に導入されるようになされている。なお、(22)は蓋材である。
【0026】
上記構成のダイス(1)では、押出の繰り返しによりマンドレル(5)の中空部成形ベアリング部(9)が摩耗した場合、ダイス(1)の修復においては、マンドレル(5)を後方に抜出し、そして、支承部材(6)を構成する4つの単位支承部材(6a)…のうちの1つを取り外し、支承部材(6)を3つの単位支承部材(6a)…にて形成する。そして、そのマンドレル(5)を保持部材(7)の挿入孔(17)に再び挿入セットする。すると、図3(ロ)に示されるように、マンドレル(5)は、保持部材(7)に対して単位支承部材(6a)の1つ分の厚さ距離だけ、即ち雌型成形孔ベアリング部(4)のベアリング長さ分だけ、前方に進出変位されたセット状態となり、マンドレル(5)において摩耗を起こした中空部成形ベアリング部(9´)が雌型成形孔ベアリング部(4)の位置よりも前方に突出され、該中空部成形ベアリング部(9´)の後方隣接部分(9)が雌型成形孔ベアリング部(4)との間に成形隙間(20)を形成することになる。即ち、マンドレル(5)におけるこの後方隣接部分(9)が新たな中空部成形ベアリング部として機能する。
【0027】
なお、摩耗した中空部成形ベアリング部対応部分(9´)は、必要に応じて、図3(ロ)に示されるように段付け加工(23)を施して径を小さくされるか、切除される。
【0028】
そして、このようにして修復されたダイス(1)を用いて押出を繰り返すうち、再び、マンドレル(5)の中空部成形ベアリング部(9)が摩耗した場合、上記と同様にして、支承部材(6)を構成している3つの単位支承部材(6a)…のうちの1つを取り外し、図4(ハ)に示されるように、2つの単位構成部材(6a)(6a)からなる支承部材(6)にてマンドレル(5)を支承させたセット状態に修復する。更に、その中空部成形ベアリング部(9)も摩耗した場合には、支承部材(6)を構成している2つの単位支承部材(6a)…のうちの1つを取り外し、図4(ニ)に示されるように、1つの単位支承部材(6a)からなる支承部材(6)にてマンドレル(5)を支承させたセット状態に修復する。そして、その中空部成形ベアリング部(9)も摩耗した場合に初めて、マンドレルそのものを新たなものと交換し、図3(イ)に示される最初のダイス構造に修復する。
【0029】
このように、上記構成のダイス(1)は、マンドレル(5)の中空部成形ベアリング部(9)が摩耗した場合には、その摩耗を起こしたマンドレル(5)を交換することなく利用して修復するものであるから、マンドレル(5)を新たなマンドレルと交換する場合に比べて、ダイス修復コストを大幅に低減することができる。
【0030】
しかも、支承部材(6)を複数の単位支承部材(6a)…の重ね合わせ構造としていることにより、単位支承部材(6a)…の数を3以上とすることによって、同じマンドレル(5)を3回以上も継続して使用することができ、ダイス修復コストをより一層低減することができる。
【0031】
特に、上記のように、高価な超硬合金製のマンドレル(5)を採用している場合には、ベアリング部(9)の摩耗のたびに、新しい高価な超硬合金製のマンドレルと交換する場合に比べて、ダイス修復コストを効果的に低減することができる。
【0032】
加えて、このように、支承部材(6)を複数の単位支承部材(6a)…の重ね合わせ構造とし、これら複数の単位支承部材(6a)の一部を取り外していくことにより、修復するものであるから、マンドレル(5)の環状溝(10)や保持部材(7)の環状段(19)に機械加工による構造的な変更を加える必要がなく、修復に伴って、マンドレル(5)を強度的に劣化させることがなく、また、保持部材(7)の汎用性を損なうのも防ぐことができる。
【0033】
また、上記構造のダイス(1)では、冷却用のガスを、ブリッジ部(15)の孔(21)、そしてマンドレル(5)の孔(11)を通じて、マンドレル(5)の前端面から吐出させながら押出を行っていくことにより、ダイス(1)の成形隙間(20)通過直後の中空材(E)をその中空部側から冷却していくことができ、中空材(E)を寸法精度高いものに押出加工することができる。
【0034】
図5〜図7には、第2実施形態にかかるダイス(1)を示す。同ダイス(1)は、支承部材(6)の構造が、上記第1実施形態のダイスとは異なる。即ち、本ダイス(1)における支承部材(6)は、図6に示されるように、リング状ないし筒状の部材を縦方向に半割りにした形状を有するが、縦方向において一体の構造とされている。
【0035】
そして、マンドレル(5)の環状溝(10)に嵌合される内周側の嵌合部(12)と、マンドレル(5)の環状溝(10)の外方に突出される外方突出部(13)とを一体に備えているが、この場合に、図6(イ)に示されるように、縦方向一方の側における嵌合部(12)の面(12a )と、縦方向もう一方の側における外方突出部(13)の面(13b )との縦方向間隔距離をi1 とし、縦方向前記一方の側における外方突出部(13)の面(13a )と、縦方向前記もう一方の側における嵌合部(12)の面(12b )との縦方向間隔距離をi2 とした場合に、i1 とi2 とが互いに異なる間隔寸法となるように設計されている。
【0036】
具体的には、嵌合部(12)の縦方向における一方の側に偏ってその外周側に、嵌合部(12)よりも短い縦方向長さの外方突出部(13)が一体に設けられた構造となされている。
【0037】
この支承部材(6)は、図5(イ)及び図7(イ)に示されるように、その外方突出部(13)側を前方側に位置させるように向けて、その嵌合部(12)をマンドレル(5)の環状溝(10)内に嵌合させ、マンドレル(5)を保持部材(7)の挿入孔(17)にその後方から挿入させていくことにより、該支承部材(6)の外方突出部(13)が、保持部材(7)の挿入孔(17)内の環状段(19)に当接、支承され、それによって、マンドレル(5)が保持部材(7)に保持されたダイス(1)に構成される。
【0038】
本実施形態のダイス(1)では、押出の繰り返しによりマンドレル(5)の中空部成形ベアリング部(9)が摩耗した場合、ダイス(1)の修復においては、マンドレル(5)を後方に抜出し、そして、支承部材(6)をその向きを前後逆にしてマンドレル(5)に嵌合し直し、マンドレル(5)を保持部材(7)の挿入孔(17)に再び挿入セットする。すると、図7(ロ)に示されるように、マンドレル(5)は、前方に進出変位されたセット状態となり、マンドレル(5)において摩耗を起こした中空部成形ベアリング部(9´)が雌型成形孔ベアリング部(4)の位置よりも前方に突出され、該中空部成形ベアリング部(9´)の後方隣接部分(9)が雌型成形孔ベアリング部(4)との間に成形隙間(20)を形成するようになり、これによりダイス(1)は修復される。尚、このようにして修復したダイス(1)のマンドレル(5)が再び摩耗した場合には、マンドレル(5)を新たなマンドレルと交換することになる。本実施形態のような構造の支承部材(6)によっても、ダイス修復コストを低減することができる。
【0039】
図8には第3実施形態にかかるダイス(1)を示す。同ダイス(1)では、支承部材によるマンドレル支承構造は上記第1実施形態と同様のものが採用されているが、図8(イ)に示されるように、マンドレル(5)の先端部が中間部よりも細く加工されていて、そこを中空部成形ベアリング部(9)としている構成である。この構成では、中空部成形ベアリング部(9)が摩耗した場合、マンドレル(5)を保持部材(7)から抜出して、図8(ロ)に示されるように、マンドレル(5)の先端部に機械加工を施して、摩耗した中空部成形ベアリング部(9´)の後方隣接部分(9)を新しく中空部成形ベアリング部とする。そして、単位支承部材の一つを取り外し、マンドレル(5)を保持部材(7)にセットし直すというようにして修復する。
【0040】
このように、マンドレル(5)の先端部が細くされているなど、加工が施されていて、そこに中空部成形ベアリング部(9)が形成されているというような構成であっても、ダイス(1)の修復においては、摩耗したマンドレルを新たなものと交換することなく利用し得るので、ダイス修復コストを低減することができる。のみならず、既に加工されているマンドレルに対して新たな中空部成形ベアリング部(9)を加工すればよいから、加工量が少なくてすみ、加工コストを低減し得る。なお、支承部材によるマンドレル支承構造は、上記第2実施形態と同様のもの、あるいはその他の構成態様のものであってもよいことはいうまでもない。
【0041】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、各種変形が可能である。例えば、上記実施形態では、支承部材の構造として2種類の構造を示しているが、その他の構造が採用されてもよい。要は、支承部材が、その嵌合部の後面部と外方突出部の前面部とのマンドレル長手方向における間隔距離を短縮可能に構成されており、この短縮により、マンドレルが保持部材に対し前方に進出変位される構成であればよい。また、ダイスの形式は、上記のように、環状ベース部(14)と、該環状ベース部(14)から後方に突出するように該ベース部に一体に設けられたブリッジ部(15)とを備えて、環状ベース部(14)内に雌型(2)を、ブリッジ部(15)にマンドレル(5)を保持させた形式のものに限られるものではなく、その他、よく知られているポートホールダイス形式など、各種形式のものであってもよい。
【0042】
【発明の効果】
上述の次第で、第1ないし第3の発明の金属製中空材の押出用ダイスは、支承部材が、その嵌合部の後面部と外方突出部の前面部とのマンドレル長手方向における間隔距離を短縮可能に構成され、この短縮により、マンドレルが保持部材に対し前方に進出変位され、マンドレルの中空部成形ベアリング部の後方隣接部分と雌型成形孔ベアリング部との間に中空材成形用の成形隙間が形成されるようになされている構成であるから、マンドレルの中空部成形ベアリング部の摩耗のたびにマンドレルを交換していく必要がなく、中空部成形ベアリング部が摩耗した際のマンドレル交換回数を減少することができて、ダイスの修復コストを低減することができる。
【0043】
しかも、上記発明の金属製中空材の押出用ダイスは、支承部材を採用し、この支承部材にてマンドレルを保持部材に保持させた構造において、この支承部材に上記のような短縮機能をもたせた構造であるから、マンドレルを保持部材に対し前方に進出変位させる前後において、マンドレルそれ自体及び保持部材それ自体が、構造的に異なったものに変更されることがなく、従って、マンドレルの進出変位前後においてマンドレルそれ自体に強度的劣化を生じさせるのを防止することができると共に、保持部材の汎用性を損わせるのも防止することができる。
【0044】
また、第2の発明の金属製中空材の押出用ダイスは、支承部材が、複数の単位支承部材をマンドレル長手方向に重ね合わせて構成され、該複数の単位支承部材のうちの一部を取り除くことにより、その嵌合部の後面部と外方突出部の前面部とのマンドレル長手方向における間隔距離が短縮されるようになされている構造であるから、中空部成形ベアリング部の摩耗時には、複数の単位支承部材のうちの一部を取り除くだけの操作で対応し得るから、ダイスの修復作業を手間を要することなく極めて容易に遂行することができる。
【0045】
特に、このように、支承部材を、複数の単位支承部材をマンドレル長手方向に重ね合わせて構成した構造とすることにより、支承部材をそれ自体で、2段階のみならず3段階以上の多段階に短縮させていくことができて、マンドレルを保持部材に対して前方に多段階的に進出変位させていくことができ、1つのマンドレルを有効利用し得て、中空部成形ベアリング部が摩耗した際のマンドレル交換回数をより一層減少することができ、ダイスの修復コストを更に低減することが可能となる。
【0046】
第3発明の金属製中空材の押出用ダイスは、マンドレルに、その前端面に開口する冷却用ガス導通孔が設けられた構造であるから、押出中、ダイスから押し出された直後の中空材をその中空部側から冷却し得て、寸法精度の高い中空材を得ることができる。のみならず、このように冷却用ガス導通孔が穿孔された高付加価値のマンドレルを使用した構造において、中空部成形ベアリング部の摩耗によるダイス修復コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態にかかるダイスを示すもので、図(イ)は縦断面図、図(ロ)は背面図である。
【図2】支承部材によるマンドレルの支承状態を拡大して示すもので、図(イ)は縦断面図、図(ロ)は図(イ)のI−I線断面、図(ハ)は図(ロ)において保持部材を省略すると共に支承部材をマンドレルから分離させた状態を示す断面図である。
【図3】図(イ)は、ダイスにおけるマンドレルの支承状態を示す縦断面図、図(ロ)はダイスの第1回目の修復後のマンドレルの支承状態を示す縦断面図である。
【図4】図(ハ)はダイスの第2回目の修復後のマンドレルの支承状態を示す縦断面図、図(ニ)はダイスの第3回目の修復後のマンドレルの支承状態を示す縦断面図である。
【図5】第2実施形態にかかるダイスを示すもので、図(イ)は縦断面図、図(ロ)は背面図である。
【図6】支承部材を示すもので、図(イ)は縦断面図、図(ロ)は平面図、図(ハ)は分離状態にして示す平面図である。
【図7】図(イ)はダイスにおけるマンドレルの支承状態を示す縦断面図、図(ロ)はダイスの修復後のマンドレルの支承状態を示す縦断面図である。
【図8】第3実施形態にかかるダイスを示すもので、図(イ)はマンドレルの支承状態を示す縦断面図、図(ロ)はダイス修復後のマンドレルの支承状態を示す縦断面図である。
【図9】押出加工しようとする中空材の斜視図である。
【図10】従来のダイスを示す縦断面図である。
【符号の説明】
1…ダイス
2…雌型
3…雄型
4…ベアリング部
5…マンドレル
6…支承部材
6a…単位支承部材
7…保持部材
9…ベアリング部
10…環状溝(凹所)
11…冷却ガス導通孔
12…嵌合部
13…外方突出部
17…挿入孔
19…環状段(支承面部)
20…成形隙間
E…中空材
Claims (2)
- 中空材の外周部を成形する成形孔ベアリング部を有する雌型と、中空材の中空部を成形する雄型との組み合わせからなる金属製中空材の押出用ダイスにおいて、
前記雄型は、
先端部外周面を中空部成形ベアリング部とし、後端部外周面に支承用の凹所を有するマンドレルと、
マンドレルの凹所内に嵌合される嵌合部と、該嵌合状態において凹所の外方に突出される外方突出部とを有して、マンドレルを嵌合部の後面部において支承する支承部材と、
マンドレルがその先端部を前方に突出させた状態に挿入される挿入孔を有すると共に、マンドレル挿入状態において、支承部材の外方突出部をその前面部において支承する支承面部を有するマンドレル保持部材と、
を有し、
前記支承部材は、複数の単位支承部材をマンドレル長手方向に重ね合わせて構成され、該複数の単位支承部材のうちの一部を取り除くことにより、その嵌合部の後面部と外方突出部の前面部とのマンドレル長手方向における間隔距離を短縮可能に構成され、この短縮により、マンドレルが保持部材に対し前方に進出変位され、マンドレルの中空部成形ベアリング部の後方隣接部分が雌型成形孔ベアリング部との間で中空材成形用の成形隙間を形成するようになされていることを特徴とする金属製中空材の押出用ダイス。 - 前記マンドレルに、その前端面に開口する冷却用ガス導通孔が設けられている請求項1に記載の金属製中空材の押出用ダイス。
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JP10774896A JP3645963B2 (ja) | 1996-04-26 | 1996-04-26 | 金属製中空材の押出用ダイス |
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