JP3644280B2 - 鋼材の圧延方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱間圧延における熱延鋼材の温度制御方法に係り、仕上圧延機手前に設置された誘導加熱装置により加熱を行い、材質にすぐれた熱延鋼材を製造する、鋼材の圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、熱間圧延設備では、熱延鋼帯を製造する際に、スラブを加熱炉により所定の温度に加熱した後、粗圧延して粗バーを形成し、しかる後、この粗バーを仕上げ圧延して熱延鋼帯を製造している。
【0003】
この時、スラブ用の加熱炉では、挿入されたスラブを炉内で順次搬送するための搬送機構を有し、炉内のスラブをスキッドビームにて支えている。なお、スキッドビームは内部が水冷され、スラブよりも低い温度に保たれている。
【0004】
このため、加熱炉から抽出されたスラブは、スキッドビームに接した部分が接しなかった他の部分よりも低い温度となる。この低温部は、スキッドビームと同一のピッチで存在し、スキッドマークと呼ばれる。この種のスキッドマークの存在するスラブを圧延すると、スキッドマークの部分にて形状や材質に変動が生じ、品質を低下させてしまう問題がある。
【0005】
このため、従来の技術では、誘導加熱装置入り側に温度検出器を設置し、この温度検出器により検出された温度をもとに、誘導加熱装置を用いて粗バーを加熱し、スキッドマークを除去する制御を行なっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、粗バーには、あらかじめ想定された温度があるため、必要以上に粗バーに加熱を行なうと、その品質を損なうおそれのあるものがある。また、必要以上に加熱を行なうと、加熱性スケールと呼ばれる酸化皮膜が粗バー上に発生し、この粗バーに仕上げ圧延を行なうと、その表面に疵を発生させてしまうおそれもある。さらに、必要以上に加熱を行なうために、不必要な電力を消費してしまうことになる。
【0007】
本発明は上記実情を考慮してなされたもので、第一の発明では、誘導加熱装置入り側の温度検出器により検出された温度信号の極大値を算出し、極大値を結ぶ温度曲線と温度検出値の差を誘導加熱装置で加熱することにより、必要最小限の電力量で精度よく、粗バーの長手方向の温度分布変動及びスキッドマークを除去し、品質を向上し得る鋼材の圧延方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、第二の発明では、誘導加熱装置入り側の温度検出器により検出された温度信号の極大値を算出する。さらに極大値を結ぶ温度曲線の極大値を算出し、その極大値を結ぶ温度曲線と温度検出値の差を誘導加熱装置で加熱することにより、必要最小限の電力量で精度よく、粗バーの長手方向の温度分布変動及びスキッドマークを除去し、品質を向上し得る鋼材の圧延方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明は以下に示す手段を用いている。
【0009】
(1)本発明の方法は、スラブを粗圧延して粗バーとする工程と、この粗バーを誘導加熱する工程と、粗圧延後、誘導加熱前の粗バーの温度を検出して、この検出温度値に基づいて粗バーの誘導加熱温度を制御する工程と、誘導加熱された粗バーを仕上げ圧延する工程とを具備する鋼材の圧延方法において
前記加熱温度制御工程は、
前記検出温度値から、粗バーの長手方向の温度検出値の複数の極大値をそれぞれ算出する工程と、
隣り合う極大値間を順々に結ぶ包絡線を求め、該包絡線上の値と前記温度検出値との差分を算出し、該差分から粗バーの昇温量を求め、該昇温量から前記誘導加熱装置の電力量を算出し、該電力量を粗バーの前記温度検出部位が前記誘導加熱装置に進入したときの前記誘導加熱装置への給電量として粗バーの誘導加熱温度を制御する工程と、
を備えた鋼材の圧延方法である。
【0010】
(2)本発明の方法は、スラブを粗圧延して粗バーとする工程と、この粗バーを誘導加熱する工程と、粗圧延後、誘導加熱前の粗バーの温度を検出して、この検出温度値に基づいて粗バーの誘導加熱温度を制御する工程と、誘導加熱された粗バーを仕上げ圧延する工程とを具備する鋼材の圧延方法において
前記加熱温度制御工程は、
前記検出温度値から、粗バーの長手方向の温度検出値の複数の第1の極大値をそれぞれ算出する工程と、
隣り合う第1の極大値間を順々に結ぶ第1の包絡線を求め、該第1の包絡線から複数の第2の極大値をそれぞれ算出する工程と、
隣り合う第2の極大値間を順々に結ぶ第2の包絡線を求め、該第2の包絡線上の値と前記温度検出値との差分を算出し、該差分から粗バーの昇温量を求め、該昇温量から前記誘導加熱装置の電力量を算出し、該電力量を粗バーの前記温度検出部位が前記誘導加熱装置に進入したときの前記誘導加熱装置への給電量として粗バーの誘導加熱温度を制御する工程と、
を備えた鋼材の圧延方法である。
【0011】
第一の発明では、誘導加熱装置入り側で検出された温度信号から、粗バーの長手方向の温度検出値の複数の極大値をそれぞれ算出し、これらの極大値間を結ぶ包絡線を求め、包絡線上の値と温度検出値との差分を算出し、その差分から粗バーの昇温量を求め、その昇温量から誘導加熱装置の電力量を算出し、その電力量を粗バーの温度検出部位が誘導加熱装置に進入したときの誘導加熱装置への給電量として粗バーの誘導加熱温度を制御するものである。これにより、必要以上に粗バーを加熱することなく、必要最小限の電力量で、粗バーのスキッドマークを取り除くことができる
【0012】
また、第二の発明では、誘導加熱装置入り側で検出された温度信号から、複数の第1の極大値を算出し、これら第1の極大値間を結ぶ第1の包絡線を求める。次いで第1の包絡線から複数の第2の極大値をそれぞれ算出し、これら第2の極大値間を結ぶ第2の包絡線を求める。次いで第2の包絡線上の値と温度検出値との差分を算出し、その差分から粗バーの昇温量を求め、その昇温量から誘導加熱装置の電力量を算出し、その電力量を粗バーの前記温度検出部位が前記誘導加熱装置に進入したときの誘導加熱装置への給電量として粗バーの誘導加熱温度を制御するものである。これにより、必要以上に粗バーを加熱することなく、必要最小限の電力量で、粗バーの長手方向の温度分布変動およびスキッドマークを取り除くことができる
【0013】
以上の知見に基づき、本発明者らは、仕上圧延機の入側に設けられた誘導加熱装置の温度制御において、誘導加熱装置入り側の温度検出器により検出された温度信号の極大値を算出し、極大値を結ぶ温度曲線と温度検出値の差を誘導加熱装置で加熱することにより、必要最小限の電力量で精度よく、粗バーの長手方向の温度分布変動及びスキッドマークを除去し、品質を向上し得る誘導加熱装置による鋼材の加熱方法を見出し、本発明を完成させた。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1に本発明の概略構成を示す。
【0016】
(第1実施形態)
本発明は、誘導加熱装置1と誘導加熱装置1入り側の温度検出器2、および検出された温度信号から粗バー3の昇温量を算出する昇温量演算装置4、粗バー3の昇温量から誘導加熱装置1の電力量を算出する電力量演算装置5、さらに誘導加熱された粗バーを仕上げ圧延する仕上げ圧延機6からなる。粗バー3が誘導加熱装置1入り側の温度検出器2を通過することにより、粗バー3の長手方向全体の温度が検出される。
【0017】
この温度検出値から、図2に示されるように、温度検出値7の極大値9を算出する。その際、温度検出値7の差分を算出し、その差分が正から負に変わる点を極大値9とする。図2には極大値9の一例を示す。さらに、この極大値9間を補完することにより、極大値9を結ぶ温度曲線(包絡線)8を算出する。図3に示される、この包絡線8と温度検出値7との差分を求め、この差分を誘導加熱装置1での粗バーの昇温量とする。粗バー3が誘導加熱装置1に進入した際、粗バー3の該当する部分に、この昇温量から算出された電力量を加えることにより、粗バー3を所定の温度に加熱する。この結果、必要以上に粗バー3を加熱することなく、必要最小限の電力量で、粗バー3の長手方向の温度分布変動およびスキッドマークを取り除くことができ、安定した材質の熱延鋼材の製造が可能となる。
【0018】
(第2実施形態)
本発明は、図1に示す第1実施形態と同様に、誘導加熱装置1と誘導加熱装置1入り側の温度検出器2、および検出された温度信号から粗バー3の昇温量を算出する昇温量演算装置4、粗バー3の昇温量から誘導加熱装置1の電力量を算出する電力量演算装置5、さらに誘導加熱された粗バー3を仕上げ圧延する仕上げ圧延機6からなる。粗バー3が誘導加熱装置1入り側の温度検出器2を通過することにより、粗バー3の長手方向全体の温度が検出される。この温度検出値7から、図4に示されるように、温度検出値7の第1の極大値9を算出する。その際、温度検出値7の差分を算出し、その差分が正から負に変わる点を第1の極大値9とする。図4では第1の極大値9の一例を示す。さらに、この第1の極大値9間を補完することにより、第1の極大値9を結ぶ温度曲線(包絡線)8を算出する。さらにこの温度曲線の第2の極大値10を算出する。その際、温度検出値7の差分を算出し、その差分が正から負に変わる点を第2の極大値10とする。図4では第2の極大値10の一例を示す。そして、この第2の極大値10間を補完することにより、第2の極大値を結ぶ温度曲線(包絡線)11を算出する。
【0019】
図5に示される、この温度曲線11と温度検出値7の差を誘導加熱装置での粗バーの昇温量とする。粗バー3が誘導加熱装置1に進入した際、粗バー3の該当する部分に、この昇温量から算出された電力量を加えることにより、粗バー3を所定の温度に加熱する。
【0020】
この結果、必要以上に粗バー3を加熱することなく、必要最小限の電力量で、粗バー3の長手方向の温度分布変動およびスキッドマークを取り除くことができ、安定した材質の熱延鋼材の製造が可能となる。
【0021】
【発明の効果】
以上の構成により、必要最小限の電力量で粗バーを加熱するため、粗バーの長手方向の温度分布変動およびスキッドマークが除去され、安定した材質の熱延鋼材の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る誘導加熱装置を表す側面図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る粗バー長手方向の温度検出値とその極大値を結ぶ包絡線を表す図。
【図3】本発明の第1実施形態に係る粗バー長手方向の昇温量を表す図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る粗バー長手方向の温度検出値とその極大値を結ぶ包絡線を表す図。
【図5】 本発明の第2実施形態に係る粗バー長手方向の昇温量を表す図。
【符号の説明】
1…誘導加熱装置、2…温度検出器、3…粗バー、4…昇温量演算装置、5…電力量演算装置、6…仕上げ圧延機、7…温度検出値、8,11…包絡線(温度曲線)、9…第1の極大値、10…第2の極大値。

Claims (2)

  1. スラブを粗圧延して粗バーとする工程と、この粗バーを誘導加熱する工程と、粗圧延後、誘導加熱前の粗バーの温度を検出して、この検出温度値に基づいて粗バーの誘導加熱温度を制御する工程と、誘導加熱された粗バーを仕上げ圧延する工程とを具備する鋼材の圧延方法において
    前記加熱温度制御工程は、
    前記検出温度値から、粗バーの長手方向の温度検出値の複数の極大値をそれぞれ算出する工程と、
    隣り合う極大値間を順々に結ぶ包絡線を求め、該包絡線上の値と前記温度検出値との差分を算出し、該差分から粗バーの昇温量を求め、該昇温量から前記誘導加熱装置の電力量を算出し、該電力量を粗バーの前記温度検出部位が前記誘導加熱装置に進入したときの前記誘導加熱装置への給電量として粗バーの誘導加熱温度を制御する工程と、
    を備えた鋼材の圧延方法。
  2. スラブを粗圧延して粗バーとする工程と、この粗バーを誘導加熱する工程と、粗圧延後、誘導加熱前の粗バーの温度を検出して、この検出温度値に基づいて粗バーの誘導加熱温度を制御する工程と、誘導加熱された粗バーを仕上げ圧延する工程とを具備する鋼材の圧延方法において
    前記加熱温度制御工程は、
    前記検出温度値から、粗バーの長手方向の温度検出値の複数の第1の極大値をそれぞれ算出する工程と、
    隣り合う第1の極大値間を順々に結ぶ第1の包絡線を求め、該第1の包絡線から複数の第2の極大値をそれぞれ算出する工程と、
    隣り合う第2の極大値間を順々に結ぶ第2の包絡線を求め、該第2の包絡線上の値と前記温度検出値との差分を算出し、該差分から粗バーの昇温量を求め、該昇温量から前記誘導加熱装置の電力量を算出し、該電力量を粗バーの前記温度検出部位が前記誘導加熱装置に進入したときの前記誘導加熱装置への給電量として粗バーの誘導加熱温度を制御する工程と、
    を備えた鋼材の圧延方法。
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