JP3801154B2 - 熱延鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粗圧延機と仕上げ圧延機との間に加熱装置を有する熱延設備における熱延鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱延鋼板(以下「鋼板」ともいう。)は、一般的に連続鋳造機を用いて調製されたスラブを加熱炉に装入して所定の温度に加熱してから、粗圧延機を用いた圧延により長さが数10mの粗バーとした後、粗圧延機と仕上げ圧延機との間に設けられた搬送テーブルにより所定の搬送パターンで仕上げ圧延機まで搬送して、仕上げ圧延機を用いて仕上げ圧延することにより、最終的に所定の板厚の熱延鋼板として仕上げられる。
【0003】
ところで、かかる熱延鋼板の材質と仕上げ圧延機出側温度(以下「仕上げ出口温度」ともいう。)には密接な関係がある。特に炭素鋼を熱間圧延する場合、特性確保の観点から仕上げ圧延機における圧延温度をフェライト変態開始温度(Ar3温度)よりも高くする必要がある。圧延中にAr3変態温度以下となると、粗大粒や歪の蓄積により鋼板の強度、延性、靭性等の特性が劣化する可能性があるためである。
【0004】
熱延鋼板の仕上げ圧延では、一般的に粗バーの長手方向の後方側(上流側)ほど、仕上げ圧延機に到達するまでの待ち時間が長くなるため、放熱による温度低下量が大きくなる。このため、以前より粗バーの先端部が仕上げ圧延機を通過した後に圧延速度を増加させる加速圧延を行なうことにより、粗バー長手方向の後方側の温度低下量を抑制し、仕上げ圧延機出側温度を粗バーの全長に亘って確保するようにしていた。
【0005】
しかしながら、この加速圧延により温度低下量を抑制できるのは粗バーの長手方向の後方側であり、粗バーの長手方向の前方側は仕上げ圧延を行なう際の挙動、例えば先端部での蛇行、上下反り、圧下位置精度、さらには速度バランス等が不安定となる為、後方側に比較すると仕上げ圧延を低速で行なわざるを得なかった。粗バーが低速圧延前方側は、圧延機ロールや、圧延機の前後で噴射される冷却水に接触する時間すなわち放熱時間が長くなる。従って、加速圧延を行なっても、粗バーの長手方向の前方側は仕上げ圧延機における放熱による温度低下量が著しかった。
【0006】
これに加え、通常スラブは加熱炉内において、スキッド上に保持された状態で加熱されるため、スキッドに接触している部分の温度が他の部分に比べて低下する加熱むらが発生する。この低温部分をスキッドマークと称するが、粗バーには加熱炉での加熱むらに起因するスキッドマークによる温度低下が長手方向に周期的に発生する。
【0007】
そこで近年、熱延鋼板の仕上げ圧延においては、例えば特許文献1に開示されているように、粗圧延機と仕上げ圧延機との間に粗バーを幅方向全体に亘って加熱するための加熱装置(以下において「粗バー加熱装置」という。)を設置する場合がある。この粗バー加熱装置の出力を適宜調整しながら、粗バーの先端部を、仕上げ圧延機出側における熱延鋼板の温度が長手方向に一定となるように所定の温度まで加熱して、粗バー先端部の温度低下量を抑制してから仕上げ圧延を行なう方法がある。この方法はいわばAr3変態点等に代表される仕上げ出側温度の下限値を確保する目的に用いられる。
【0008】
またスキッドマークによる温度変動抑制対策として、例えば特許文献2に開示されるように、粗圧延機と仕上げ圧延機との間に粗バーの上下面の表面温度を検出する温度計と誘導加熱装置とを設置し、粗バーの温度から仕上げ温度を予測し、予測した仕上げ温度に基づき加熱パターンを決定して仕上げ圧延機の入側で粗バーを加熱することにより、仕上げ温度を一定に制御する方法がある。この方法によれば、粗バーの平均温度を全体的に上げるのみならずスキッドマークの低減が可能である。この粗バー加熱装置の加熱能力即ち昇温能力は、粗バー加熱装置の容量(一般に電力(kW))と粗バーが粗バー加熱装置の内部を通過する際の速度によって決定される。したがって、粗バーの先端部に対する昇温量は、加速圧延開始前は粗バー加熱装置による加熱により決定され、粗バーの先端部以外の部位に対する昇温量は、加速圧延が開始された後にあっては粗バー加熱装置による加熱と加速圧延とにより決定され、これにより仕上げ圧延機出側における熱延鋼板の温度が確保される。
【0009】
一方、特許文献3に開示されているように加熱装置へ投入する電力の制御条件を特定し、必要最低限の電力量で粗バーを加熱する方法や、特許文献4に開示されるように加熱装置入側での温度目標値と実測値とを比較し、加熱装置の出力と仕上げ圧延機前後に設置された冷却装置の冷却水量の両方を調整する仕上げ温度制御方法等もある。
【特許文献1】
特開平10−230313号公報
【特許文献2】
特開2000−176525号公報
【特許文献3】
特開平11−221606号公報
【特許文献4】
特開2001−334305号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1や特許文献2に開示されている方法は、目標温度まで粗バーを加熱する際には有用である。しかし、例えば粗バー長手方向の実測温度が高く仕上げ出側目標温度が低い場合や長手方向に周期的に発生するスキッドマーク量(温度変動のピークからピーク)が小さい場合等は加熱量を長手方向で最小値もしくは零にする必要が生じるが、その手段については明確な記述がない。実施形態から推定すると加熱装置の出力を次第に低下させ、最終的には全て零にすると考えられるが、スキッドマーク消去の為には加熱量は零ではなく、最小値とする必要がある場合が考えられる。
【0011】
特許文献3においても、粗バー加熱装置にて加熱不要と判断した際には全ての加熱ユニットの出力を零にする考えが示されており、また特許文献4についても同様に粗バー加熱装置にて加熱不要時には加熱量を全て零もしくは冷却水使用による温度低下対策をとる旨記載されている。
【0012】
しかし、ソレノイド型誘導加熱方式に代表される粗バー加熱装置は一般に20000〜30000kW級の大容量のものであり、インダクターコイル(加熱ユニット)も3〜6基に分割されている。さらに特許文献3に記載のように、全ての加熱ユニットには同一電力が投入される。これら大容量加熱装置に使用するインバータ機種は、装置保護やコスト面より電流型サイリスタインバータが採用されている。この電流型サイリスタインバータは、低電圧、低電流下では起動時に電流が流れずにトリップが発生する(転流失敗)。そのため、粗バー加熱装置には常時電流と電圧との積からなる出力(電力)を10%程度出しておく必要があり、それ以下では加熱制御不可能である。そのため、粗バー加熱時は出力を最小値設定にしても電流を零にすることはできず、その分固定電力を使用することになり、電力原単位の増加、コストアップとなる。逆に加熱必要量が最低出力以下となった場合、従来方法では全ての加熱ユニットの出力を完全に零にしなければならず、加熱不足を招く恐れもある。
【0013】
また本来スキッドマークを消去しようとする場合はスキッドの高温部の加熱は実施せず、低温部のみ加熱実施するが、高温部において出力を最小値に設定しても電流を零にできないため、完全にスキッドマークを消し去ることは困難である。完全に電流を流さずに出力を一旦零にすると、次起動時には3秒程度のアイドリング時間(応答遅れ)が必要となる。仕上げ圧延材の入出側板厚、速度にもよるが、粗バー加熱装置を通過する材料の速度は通常1m/秒前後はあるので、この応答遅れは許容することはできず、粗バー加熱によるスキッドマーク消去時は応答遅れによりスキッドマークの残存を招いてしまう問題がある。いずれにしても、必要加熱量を全加熱ユニットに均等に分配する従来加熱方法では、必要加熱量が低下し加熱装置自体の常時出力以下となると、固定電力の増加に繋がる。
【0014】
そこで本発明は、必要最低限の電力で粗バーを加熱し、仕上げ出側温度を目標温度に制御することにより省エネルギーが可能であり、あわせてスキッドマークを消し去ることが容易な熱延鋼板の製造方法を提供することを課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0016】
請求項1の発明は、スラブを粗圧延機(2)で粗圧延して粗バー(8)とした後、該粗圧延機の下流に位置した加熱装置(4)で粗バーを幅方向全体にわたって加熱して、仕上げ圧延機(6)により仕上げ圧延を行なう熱延鋼板の製造方法において、加熱装置として粗バーの搬送方向に複数の加熱ユニット(4a、4b、4c、…)を設け、該加熱ユニットを個別に制御する方法であって、粗バー(8)を加熱装置(4)で加熱中に、加熱ユニット(4a、4b、4c、…)の使用台数を変更することを特徴とする熱延鋼板の製造方法により前記課題を解決する。
【0017】
請求項2の発明は、スラブを粗圧延機(2)で粗圧延して粗バー(8)とした後、該粗圧延機の下流に位置した加熱装置(4)で粗バーを幅方向全体にわたって加熱して、仕上げ圧延機(6)により仕上げ圧延を行なう熱延鋼板の製造方法において、加熱装置として粗バーの搬送方向に複数の加熱ユニット(4a、4b、4c、…)を設け、該加熱ユニットを個別に制御する方法であって、仕上げ圧延機(6)出側の仕上げ圧延温度を目標温度となるように、加熱装置(4)で加熱する際に、加熱ユニット(4a、4b、4c、…)の使用台数を最小限とし、粗バー(8)を加熱装置(4)で加熱中に、加熱ユニット(4a、4b、4c、…)の使用台数を変更することを特徴とする。
【0018】
請求項1または2に記載の熱延鋼板の製造方法において、仕上げ圧延機(6)出側の仕上げ圧延温度を粗バー(8)全長に亘って目標温度となるように加熱装置(4)で加熱する際に、加熱ユニット(4a、4b、4c、…)一台当りの最大加熱能力と使用台数との積が、粗バーの長手方向に変化する加熱必要出力の最大値を上回る範囲内で、加熱ユニットの使用台数を最小限とすることが好ましい。ここに、上記「加熱ユニット一台当りの最大加熱能力」、および「加熱必要出力の最大値」は、鋼帯の単位時間あたりの投入電力量である。
【0020】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の熱延鋼板の製造方法において、加熱ユニット(4a、4b、4c、…)の使用台数を変更する際、優先して使用する加熱ユニットを使用頻度に応じて変更することを特徴とする。
【0021】
請求項4の発明は、請求項1または2に記載の熱延鋼板の製造方法において、加熱ユニット(4a、4b、4c、…)の使用台数を変更する際、仕上げ圧延機(6)側の加熱ユニットから優先して使用することを特徴とする。
【0022】
かくして本発明によれば、設置されている加熱ユニットのうち、必要最小限の台数のみを使用するので、熱延鋼板の製造において省エネルギーをはかることが可能となる。
【0023】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する実施の形態から明らかにされる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる熱延鋼板の製造方法の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
(圧延設備1)
図1は、本実施形態にかかる圧延設備1の構成の概略を模式的に示す説明図である。同図に示すように、この圧延設備1は、粗圧延機2と搬送装置3と複数の加熱ユニットからなる粗バー加熱装置4と、デスケーラ5と、仕上げ圧延機6と、制御装置7とを備えている。
【0026】
(粗圧延機2)
図1における粗圧延機2は、連続鋳造設備により鋳造されたスラブを熱間で粗圧延を実施し、粗バー8を製造するための粗圧延機である。本発明においては、この種の粗圧延機として慣用される粗圧延機を用いることができる。
【0027】
(搬送装置3)
粗圧延機2で圧延された粗バー8は、搬送装置3により、仕上げ圧延機6へと搬送される。本実施形態にかかる圧延設備1では、搬送装置3として複数併設されたテーブルローラを用いている。各テーブルローラはモータ駆動式であり、後述する圧延ライン制御装置7cにより所定の周速度で回転駆動されることにより粗バー8を仕上げ圧延機6へと搬送する。
【0028】
(粗バー加熱装置4)
本実施形態にかかる圧延設備1では、粗圧延機2と後述する仕上げ圧延機6との間には、搬送装置3により搬送される粗バー8が通過しながら加熱される粗バー加熱装置4が設置される。搬送装置3により仕上げ圧延機6まで搬送される粗バー8は、この粗バー加熱装置4により幅方向全体に亘って加熱される。この粗バー加熱装置4は、加熱容量として20000〜30000kWあるものであり、加熱ユニット4a、4b、4c、…が3〜6分割(本実施形態では3分割)されている。各加熱ユニット4a、4b、4c、…は、コンパクトで、スパークの発生がなく、短時間で目標温度まで昇温可能で制御応答性の良い、誘導加熱方式で構成することが好ましい。中でも、板幅方向に均一な加熱が可能なソレノイド型誘導加熱方式が好ましい。また、電子的な電力制御が可能なインバータ方式の電源回路を使用することが好ましい。
【0029】
(デスケーラ5)
本実施形態にかかる圧延設備1には、仕上げ圧延機6の直前にデスケーラ5が備えられている。仕上げ圧延の直前に、必要に応じて粗バー8表面に浮き上がるスケール(酸化鉄等)が、デスケーラ5により除去される。
【0030】
(仕上げ圧延機6)
デスケーラ5によりスケールを除去された粗バー8は、搬送装置3により仕上げ圧延機6まで搬送され、複数の圧延スタンドF1〜Fnを有する仕上げ圧延機6により所定厚さの熱延鋼板に仕上げ圧延される。
【0031】
(制御装置7)
本実施の形態における制御装置7は、粗バー加熱出力制御装置7aと仕上げ圧延機出側温度予測装置7bと圧延ライン制御装置7cとを備える。粗バー加熱出力制御装置7aは、粗バー加熱装置4との間で信号の授受を行なうことにより、粗バー加熱装置4の動作を制御する。仕上げ圧延機出側温度予測装置7bは、後述する粗圧延機出側温度計9、粗バー加熱出力制御装置7a、圧延ライン制御装置7cに基づいて仕上げ圧延機6の出側における熱延鋼板(図示しない)の温度を予測演算し、粗バー加熱装置4の制御信号を出力する。
【0032】
(温度検出手段9〜12)
本実施形態にかかる圧延設備1では、粗バー8および仕上げ圧延が行われる熱延鋼板(図示しない)それぞれの温度検出手段として、粗圧延機出側温度計9、粗バー加熱装置入側温度計10、仕上げ圧延機入側温度計11、および仕上げ圧延機出側温度計12が設置されている。粗圧延機出側温度計9による測定温度は上記した仕上げ圧延機出側温度予測装置7bに出力され、粗バー加熱装置入側温度計10、および仕上げ圧延機入側温度計11による測定温度は、粗バー加熱出力制御装置7aに出力され、さらに仕上げ圧延機出側温度計12による測定温度は最終圧延温度として圧延ライン制御装置7cに出力される。
【0033】
粗圧延機出側温度計9により全長に亘って測定された粗バー8の温度と、生産計画に基づいて圧延ラインの初期諸条件(仕上げ寸法、目標仕上げ圧延機出側温度等)を決定する圧延ライン制御装置7cにより決定された粗バー8の厚さと、仕上げ圧延機6の圧下スケジュールと、速度設定パターンとから、仕上げ圧延機出側温度予測装置7bにより仕上げ圧延機6の出側における熱延鋼板の温度が予測される。これにより必要となる粗バー8の加熱量、すなわち粗バー加熱装置4によって粗バー8へ投入される電力量となるように粗バー加熱出力制御装置7aにより粗バー加熱装置4の出力制御が行われる。この際、粗バー加熱出力制御装置7aは、予め設定された加熱パターンだけではなく、粗バー8が粗バー加熱装置4を通過する時の搬送速度の変化に追従することにより、仕上げ圧延機6の出側における熱延鋼板の温度が長手方向に一定となるように加熱出力(投入電力)が調整される。
【0034】
圧延中に、仕上げ圧延機出側温度計12により実測された粗バー8の温度が、目標温度からずれているときには、粗バー加熱装置入側温度計10の検出温度を制御装置7にフィードフォワードするか、仕上圧延機入側温度計11、または仕上圧延機出側温度計12の検出温度をフィードバックし、粗バー8の搬送速度をもとに、加熱装置4の出力を変えて、粗バー8の温度が所定温度になるようにする。
【0035】
具体的には、仕上げ圧延機出側温度予測装置7bには以下の式(1)〜(3)が予め設定されており、加熱装置4の加熱出力が演算される。
T=TO−ΔT (1)
ΔT=ΔTw+ΔTa+ΔTr一ΔTq一ΔTu (2)
P=ΔTu・(c・ρ・H・B・V) (3)
ここで、
T:仕上げ圧延機出側温度
TO:粗圧延機出側温度
ΔT:粗バーもしくは鋼板の温度降下量
ΔTw:水冷による温度降下量
ΔTa:空冷による温度降下量
ΔTr:ロール接触による温度降下量
ΔTq:圧延時の加工発熱による温度上昇量
ΔTu:加熱装置による温度上昇量
P:加熱装置の加熱出力
c:鋼板の比熱
ρ:鋼板の密度
H:鋼板の板厚
B:鋼板の板幅
V:加熱装置を通過する粗バーもしくは鋼板の移動速度
である。
【0036】
【実施例】
以下に本発明を、2つの実施例によりさらに具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
<実施例1>
(1)圧延ライン制御装置7cからの情報をもとに、例えば粗バー長さ換算300mmピッチ程度で、最大100m程度の長さを有する粗バー8の全長温度を粗圧延機出側温度計9にて測定、サンプリングする。
【0038】
(2)このサンプリング各点について、圧延ライン制御装置7cからの情報をもとに、制御装置7bを用いて仕上げ圧下スケジュール、圧延速度パターン、仕上げ出側目標温度等より粗バー加熱装置4の出力パターンを粗バー8の全長に亘って計算する。
【0039】
(3)(2)の計算結果をもとに、各サンプリング点において加熱必要最大出力(最大投入電力)より、粗バー加熱装置の加熱ユニットの必要運転台数を計算する。従来技術では加熱必要最大出力を総加熱ユニット数で均等に分配して加熱量を設定していたが、本実施例1では各サンプリング点での最大出力値と加熱ユニット毎の最大加熱可能出力値とを比較し、例えば加熱ユニット2基で設定最大出力を満足できる場含には、加熱ユニット1基は未使用(全く電流を流さず)として、残りのユニット2基のみを用いて加熱する。
【0040】
かかる、加熱ユニット使用台数の計算(判断)を一般化して示すのが以下の表1である。加熱必要最大出力を(Pmax)、1加熱ユニット毎の最大加熱能力を(A)、使用ユニット台数を(n)としたとき、加熱必要最大出力(Pmax)が、1加熱ユニット毎の最大加熱能力(A)と使用ユニット台数(n)との積(A*n)より大、すなわち
Pmax>A*n
であれば、仕上げ圧延機出側目標温度にするには台数をn台以上としなければならないと判断する。
【0041】
加熱必要最大出力(Pmax)が、1加熱ユニット毎の最大加熱能力(A)と使用ユニット台数(n)との積(A*n)より小、かつ(A)と加熱使用ユニット台数から「1」を差し引いた数(n−1)との積(A*(n−1))より大、すなわち
A*n>Pmax>A*(n−1)
であれば、加熱必要台数をn台と判断する。
【0042】
また、 加熱必要最大出力(Pmax)が、1加熱ユニット毎の最大加熱能力(A)と使用ユニット台数(n−1)との積(A*(n−1))より小、かつ(A)と加熱使用ユニット台数から「2」を差し引いた数(n−2)との積(A*(n−2))より大、すなわち
A*(n−1)>Pmax>A*(n−2)
であれば、加熱必要台数を(n−1)台と判断する。
【0043】
以下同様にして、加熱必要最大出力(Pmax)が、1加熱ユニット毎の最大加熱能力(A)と使用ユニット台数(n−k+1)との積(A*(n−k+1))より小、かつ(A)と加熱使用ユニット台数から「k」(kは3以上の自然数)を差し引いた数(n−k)との積(A*(n−k))より大、すなわち
A*(n−k+1)>Pmax>A*(n−k)
であれば、加熱必要台数を(n−k+1)台と判断する。
【表1】
【0044】
(4)予め算出した加熱ユニット使用台数については、計算の簡略化のために粗バー全長に亘って一定とし、粗バー長手方向の全サンプリング点において必要加熱量を満足するために必要な加熱ユニット台数を設定する。図2にこれら粗バー加熱装置台数設定の違いが投入電力に与える影響を模式化したものを示す。(a)は3台設置されている加熱ユニットの全数を使用した場合の投入電力パターンであり、(b)は、3台設置されている加熱ユニットのうち、一台のみを使用した場合の投入電力のパターンを示す。なお、これらの図において、縦軸は加熱装置全体の使用電力、横軸は時間を表している(以下に示す図3においても同じ。)。このように設定した場合、加熱必要最大出力Pmaxに対応する使用ユニット台数が、設置されている加熱ユニット台数より少なければ、少なくともその台数の差の数の加熱ユニットの最小設定量の電力分について省エネルギーをはかることが可能である。
【0045】
<実施例2>
(1)圧延ライン制御装置7cからの情報をもとに、例えば粗バー長さ換算300mmピッチ程度で、最大100m程度の長さを有する粗バー8の全長温度を粗圧延機出側温度計9にて測定、サンプリングする。
【0046】
(2)このサンプリング各点について、圧延ライン制御装置7cからの情報をもとに、制御装置7bを用いて仕上げ圧下スケジュール、圧延速度パターン、仕上げ出側目標温度等より粗バー加熱装置4の出力パターンを粗バー8の全長に亘って計算する。
【0047】
(3)(2)の計算結果をもとに、各サンプリング点において加熱必要最大出力(最大投入電力)より、粗バー加熱装置の加熱ユニットの必要運転台数を計算する。従来の方法では加熱必要最大出力を総加熱ユニット数で均等に分配して加熱量を設定していたが、本実施例2では上記実施例1と同様に各サンプリング点での最大出力値と加熱ユニット毎の最大加熱可能出力値とを比較し、例えば加熱ユニット2基で設定最大出力を満足できる場合には、加熱ユニット1基は未使用(全く電流を流さず)とし、残りのユニット2基のみを用いて加熱する。
【0048】
(4)実施例1では、予め算出した加熱ユニット使用台数については粗バー全長に亘って一定とした。そのため、例えば特許文献1に記載のように、仕上げ出口温度の確保が困難な粗バー長手方向の先端部には粗バー加熱装置による加熱を用い、後方側については仕上げ加速圧延によって仕上げ出側温度を確保できる場合でも、粗バー全長サンプリング点の中で必要最大加熱量を満足するために必要加熱ユニット台数が多く設定される可能性がある。そこで、本実施例2では粗バー長手方向全サンプリング点における加熱必要量を算出した後、長手方向で任意に加熱ユニット台数を可変とする。これにより、例えば粗バー先端部の加速圧延前では全加熱ユニットによる昇温量確保、加速圧延開始後は途中から必要加熱ユニット台数を最小値もしくは0台とすることも可能となり、その分固定電力の削減ができる。図3に粗バー加熱台数を長手方向で可変化とした時の投入電力を模式化したものを示す。
【0049】
なお、前記加熱ユニットの使用台数を変更する際、優先して使用する加熱ユニットを使用頻度に応じて変更してもよい。例えば、各加熱ユニットの使用履歴を圧延ライン制御装置7cに記録しておき、使用頻度の低い加熱ユニットから優先的に使用する。このようにすれば、各加熱ユニットを均等に使用することが可能となり、メインテナンス上、特定なユニットが酷使されることがないので有利である。また、前記加熱ユニットの使用台数を変更する際、仕上げ圧延機側の加熱ユニットから優先して使用してもよい。このような方法をとった場合、加熱ユニットから仕上げ圧延機までの距離が最小化されるので、放熱によるエネルギーロスが少なくなり、省エネルギーに資することができる。
【0050】
なお、ユニット毎に最大加熱能力を変化させて、必要とされる加熱能力に応じて、使用するユニットの組み合わせを最適化しても良い。
【0051】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う熱延鋼板の製造方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【0052】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の熱延鋼板の製造方法によれば、粗バー長手方向に亘って粗バー加熱装置による加熱を行なう際、粗バー長手方向各サンプリング点にて適切な加熱量(電力量)を必要最低限の電力で投入できる。これにより、省エネルギーに加え、仕上げ出口温度の変動を抑制する製造方法が提供可能となる。さらに粗バー加熱装置の加熱ユニット設定台数を長手方向で可変とすることにより、長手方向での必要加熱量の変化に対応でき、省エネルギーに加え、仕上げ出口温度の変動を抑制する製造方法が提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の実施形態が適用される圧延設備の概略構成を示す図である。
【図2】粗バー加熱装置台数設定の違いが投入電力に与える影響を模式化した図で、(a)は3台設置されている加熱ユニットの全数を使用した場合の投入電力パターン、(b)は3台設置されている加熱ユニットのうち、一台のみを使用した場合の投入電力のパターンを示す。
【図3】粗バー加熱台数を長手方向で可変化とした時の投入電力の模式図である。
【符号の説明】
1 圧延設備
2 粗圧延機
3 搬送装置
4 粗バー加熱装置
4a、4b、4c 加熱ユニット
5 デスケーラ
6 仕上げ圧延機
7a 粗バー加熱出力制御装置
7b 仕上げ圧延機出側温度予測装置
7c 圧延ライン制御装置
8 粗バー
9 粗圧延機出側温度計
10 粗バー加熱装置入側温度計
11 仕上げ圧延機入側温度計
12 仕上げ圧延機出側温度計
Claims (4)
- スラブを粗圧延機で粗圧延して粗バーとした後、該粗圧延機の下流に位置した加熱装置で前記粗バーを幅方向全体にわたって加熱して、仕上げ圧延機により仕上げ圧延を行なう熱延鋼板の製造方法において、前記加熱装置として前記粗バーの搬送方向に複数の加熱ユニットを設け、該加熱ユニットを個別に制御する方法であって、前記粗バーを前記加熱装置で加熱中に、前記加熱ユニットの使用台数を変更することを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
- スラブを粗圧延機で粗圧延して粗バーとした後、該粗圧延機の下流に位置した加熱装置で前記粗バーを幅方向全体にわたって加熱して、仕上げ圧延機により仕上げ圧延を行なう熱延鋼板の製造方法において、前記加熱装置として前記粗バーの搬送方向に複数の加熱ユニットを設け、該加熱ユニットを個別に制御する方法であって、前記仕上げ圧延機出側の仕上げ圧延温度を目標温度となるように、前記加熱装置で加熱する際に、前記加熱ユニットの使用台数を最小限とし、前記粗バーを前記加熱装置で加熱中に、前記加熱ユニットの使用台数を変更することを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
- 前記加熱ユニットの使用台数を変更する際、優先して使用する加熱ユニットを使用頻度に応じて変更することを特徴とする請求項1または2に記載の熱延鋼板の製造方法。
- 前記加熱ユニットの使用台数を変更する際、仕上げ圧延機側の加熱ユニットから優先して使用することを特徴とする請求項1または2に記載の熱延鋼板の製造方法。
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