JP3643657B2 - 水性樹脂分散液 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性樹脂分散液、特に、無機質基材、金属、プラスチック用の塗料、紙加工剤、繊維処理剤あるいはセメント改質剤などの用途において、優れた安定性と耐久性を備えた皮膜を形成する水性樹脂分散液に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
水性樹脂分散型の水性乳化液は、これまで各種乳化剤を用いた乳化重合法により製造されており、その無公害性、作業性の良さなどの理由で、塗料、接着剤、紙加工剤、繊維加工剤、モルタル改質剤等の用途に利用されている。
【0003】
しかしながら、水分を除去して皮膜を形成しても、これら乳化剤は皮膜中に残存するため、耐水性を初めとする皮膜の諸性能を低下させる原因になっている。このような欠点を解消するために、架橋反応を利用して皮膜の耐水性、耐溶剤性および強度を向上する方法が考案されており、その中でも、N−メチロール(メタ)アクリルアミドやN−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどの反応性極性基を有するモノマーを共重合成分として用いる方法、あるいは、水溶性トリメチロールメラシト樹脂などの所謂、多官能性熱硬化性樹脂を、加工時に併用する方法がよく利用されている。 しかし、これら方法は、何れも水性樹脂分散液の化学的安定性を低下する架橋成分が用いられているため、架橋成分の使用量は自ずと制限されることになる。
【0004】
一方、アクリルモノマー成分中に、グリシジルメタクリレートのようなエポキシ基を導入することで、上述した問題を解決する試みもされているが、この方法によれば、エポキシ基の高い化学反応性が故に、化学的安定性に欠けるという問題が残される。
【0005】
このように、従来の方法によれば、皮膜樹脂の調製に際して乳化剤や架橋成分の使用量に制約が課され、所望の性能を十分に皮膜生成物に反映できなかったのが実情である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述した従来技術の問題点に鑑みて鋭意検討を重ねた結果、従来技術における単一ポリマーの改良とは異なり、複数のポリマーを併用して、各ポリマーが有する長所を引出し、これら長所を有機的に組み合わせることで問題の解決を図るものである。
【0007】
すなわち、本発明の要旨とするところは、
【0008】
【化2】
【0009】
の構造式で示される化合物(以下、「重合用化合物」と称する)と、α、βエチレン性不飽和結合を含む一種以上のモノマー(以下、「不飽和モノマー」と称する)とを、ポリウレタン水性樹脂分散体の存在下で共重合反応させて得られた水性樹脂分散液にある。
【0010】
本発明のこの水性樹脂分散液の構成により、強伸度が高く、しかも耐久性に優れた、極めて安定で有用性の高い水性樹脂分散液が得られるのである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のポリウレタン水性樹脂分散液は、強制乳化法、自己乳化法で製造されたポリウレタン水性樹脂分散液であるが、本発明に従って、ポリウレタン水性樹脂分散体の存在下で、不飽和モノマーを共重合する場合、自己乳化法で製造することがエマルジョンの安定化の観点からして好ましい。
【0012】
本明細書における「ウレタン」とは、水酸基、アミノ基またはカルボキシル基のような極性またはイオン性官能基を分子中に有するポリウレタン樹脂を指し、これらポリウレタンは親水性基を有するため、自己乳化および自己分散する。
【0013】
これらポリウレタンを合成する方法としては、例えば常法に従って、公知のポリオールとポリイソシアネート成分を反応させて得たウレタンプレポリマーを、2個以上の活性水素原子を有する低分子量化合物により鎖伸長化する。 また、このようにして得られる官能基含有ポリウレタンを、水中で安定裏に溶解し、分散せしめて水性ポリウレタンを調製するには、この官能基含有ポリウレタンの側鎖ないし末端に、上述した各種極性またはイオン性官能基を導入する。 こうすることで、ポリウレタンそれ自体に親水性が付与され、これにより、ポリウレタンの水に対する溶解性が増し、あるいは自己乳化により容易に水中に分散する。ところで、これらポリウレタンのイオン性官能基としてカルボキシル基を選択した場合、ポリウレタンの酸価、つまりカルボキシル基が導入された官能基含有ポリウレタンの酸価は、ポリウレタンの固形分当たり10〜 200、好ましくは、15〜 100とするのが適切である。 すなわち、酸価が10未満の場合は、重合時の安定性の確保が難しく、しかも最終的に得られる水性樹脂分散液の貯蔵安定性も悪くなり、一方、酸価が 200を越えれば、強度、耐水性および/または耐溶剤性などの諸物性の低下をきたすことになる。
【0014】
本発明に適用可能なポリオール成分としては、例えば、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが、一方、ポリイソシアネート成分としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートまたは芳香族ジイソシアネートから得られるウレタンプレポリマーなどがある。
【0015】
また、鎖伸長剤として用いられる活性水素原子を含む低分子量化合物としては、ジオール類またはジアミン類などが適用可能である。 そして、強化乳化分散体としては、公知のポリウレタン有機溶剤溶液を乳化剤の存在下で強制的に乳化したもの、あるいは、疎水性イソシアネート基を有するプレポリマーの有機溶剤溶液を乳化した後に、鎖伸長したものなどが使用できる。
【0016】
本願発明におけるポリウレタン構成成分のポリオールとしては、前述したポリエステルポリオール等、そして、ポリイソシアネートとしては前述した脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートまたは芳香族ジイソシアネートから得られるウレタンプレポリマーが使用できる。
【0017】
そして、ポリウレタン水性樹脂分散体の存在下での共重合反応に供する、下記構造式、すなわち、
【0018】
【化3】
【0019】
を有する本願発明に適用可能な重合用化合物の具体例としては、例えば;
下記構造式、すなわち、
【0020】
【化4】
【0021】
を有する、メチルグリシジルメタクリレート、
下記構造式、すなわち、
【0022】
【化5】
【0023】
を有するメチルグリシジルアクリレート、
下記構造式、すなわち、
【0024】
【化6】
【0025】
を有する、 (3,4-エポキシシクロヘキシル)-メチルメタクリレート、あるいは下記構造式、すなわち、
【0026】
【化7】
【0027】
を有する (3,4-エポキシシクロヘキシル)-メチルアクリレートがある。
【0028】
また、これら重合用化合物との共重合反応に供する不飽和モノマーとしては;N−メチロールアクリルアミドもしくはN−メチロールメタクリルアミド、またはN−メトキシメチルアクリルアミドもしくはN−ブトキシメチルメタクリルアミドなどのN−メチロール化合物またはN−メチロールエーテル化合物;
アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルもしくはメタクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどの不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類;
アリルアルコール、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、もしくはアクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステル類;
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、もしくはメタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸エステル類;
酢酸ビニル、もしくはプロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;
スチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、p−ter−ブチルスチレン、もしくはビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;
ビニルピロリドンなどの複素環式ビニル化合物;
塩化ビニル、アクリロニトリル、ビニルエーテル、ビニルケトン、またはビニルアミドなどの各種ビニルモノマー;
塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、もしくはフッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン化合物;
エチレンもしくはプロピレンなどのα−オレフィン類;
ブタジエンなどのジエン類;
ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、もしくはγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのシラン系化合物;
アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン、ジアセトンアクリレートまたはアセトニトリルアクリレートなどのα、β−エチレン性不飽和モノマー;
N−メチルアクリルアミド、N−イソブチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、もしくはN−イソプロポキシメタクリルアミドなどのアクリルアミド、メタクリルアミドもしくはジアセトンアミドなどの各種アミド類;および
これら化合物の1種以上を含む化合物が、本発明において適用可能である。
【0029】
不飽和モノマー中の重合用化合物の比率としては、 0.1〜20重量%の範囲が望ましい。 これはすなわち、 0.1重量%以下であると、エポキシ基と他の官能基との架橋が不充分になって、所定の塗膜性能が望めず、一方で、20重量%以上の場合、生成物の安定性に好ましくない影響を与えることによる。
【0030】
上掲した不飽和モノマーを用いる場合、自己乳化型水性ポリウレタンと不飽和モノマーとの比率は、固形分換算比で、不飽和モノマー類の 100重量部に対して、水性ポリウレタンの5〜400 重量部、好ましくは、10〜100 重量部の範囲が適切である。 これはすなわち、この範囲を逸脱すると、重合安定性が悪くなったり、強度および耐久性などが低下することによる。
【0031】
本発明の場合、水性ポリウレタンの存在下で不飽和モノマーの反応が進行するので、乳化剤などの界面活性剤は、必ずしも必要ではない。 しかしながら、不飽和モノマーの 100重量部に対して0〜20重量部の範囲内での界面活性剤の使用は、反応の進行に関して一向に支障は無い。
【0032】
また、本発明に適用可能な界面活性剤(乳化剤)としては、例えば、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、もしくはアルキルアリールポリエーテル硫酸塩のようなアニオン性乳化剤、またはポリオキシエチレンラウリルエーテル、もしくは、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロック共重合体のようなノニオン性乳化剤などがある。 これら乳化剤は、使用者の裁量で適量を選択して用いる。 また、このような乳化剤の代わりに、あるいは乳化剤との併用の形で、分散剤として水溶性オリゴマーを用いることもできる。 さらに、ポリビニルアルコールもしくはヒドロキシエチルセルロースのような水溶性高分子物質を、上述した乳化剤と併用して共重合したり、あるいは、共重合反応後に水性樹脂分散体に添加することもできる。
【0033】
これら乳化剤、水溶性オリゴマーおよび/または水溶性高分子物質の総使用量としては、不飽和モノマー 100重量部に対して、0〜20重量部が適切である。
【0034】
これは、20重量部を超えると、水を飛散させて皮膜を形成した際の耐水性の低減が著しくなることによる。
【0035】
また、共重合反応に際して用いられるラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、またはアゾビスイソブチロヌトリルもしくはその塩酸塩があり、さらにはクメンハイドロパーオキサイドまたはter-1−ブチルハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物も、必要に応じて使用できる。
【0036】
さらに、これら過硫酸塩や過酸化物などと、鉄イオンのような金属イオン、あるいはナトリウムスルホキシレートホルムアルデヒド、ピロ亜硫酸ナトリウムまたはL−アスコルビン酸などの還元剤も使用できる。 また、いわゆるレドックス系開始剤も用いることができる。
【0037】
共重合反応時における水性樹脂分散液の濃度は、実用性・取扱い易さからして、25〜65重量%の最終固形分含有率とするのがよく、また、反応系への不飽和モノマーおよびラジカル重合開始剤の導入は、一括仕込み方式、連続滴下方式または分割添加方式などの公知のいずれの方法によってもよい。
【0038】
共重合反応時の反応温度も、公知の乳化重合反応で行われているような条件、例えば、50〜90℃の範囲とする。 また、この共重合反応は常圧下で、あるいはガス状の不飽和モノマー類を使用する時は加圧下で行われる。
【0039】
【化8】
【0040】
の構造式を有する重合用化合物と、不飽和モノマーを共重合させて得られる本発明の水性樹脂分散体と、ポリウレタン水性樹脂分散体を混合する場合、不飽和モノマーの重合方法は、ポリウレタン水性樹脂分散体を欠き、乳化剤が存在している条件下で重合を行わない限り、前述した重合方法に従う。 また、不飽和モノマーとポリウレタンとの混合比率は、生成する皮膜の強度、耐久性などを考慮すれば、固形分換算比で、不飽和モノマー共重合物の 100重量部に対して、水性ポリウレタンの5〜 400重量部、好ましくは10〜 100重量部が適切である。
【0041】
本発明における重合用化合物と不飽和モノマーの組み合わせにより、グリシジルメタクリレートでのグリシジル基に加えて、メチル基も導入されるため、立体構造的に極性を有する官能基、例えば、カルボキシル基等と重合用化合物との反応が阻害されて、反応の進行が緩慢になり、結果として化学的安定性が増大するものと推定される。 一方で、脂環エポキシ基を有する重合用化合物は疎水性が大きく、グリシジル基の場合と異なり、水性樹脂分散体の粒子内でのカルボン酸などの反応性基との接触が阻害されるため、本発明における脂環エポキシ基を有する重合用化合物と不飽和モノマーの組み合わせによっても、本発明の水性樹脂分散体の化学的安定性が増大するものと推定される。
【0042】
かくして得られる本発明の水性樹脂分散体は、安定性、耐候性、耐水性、耐溶剤性などの諸特性に優れ、建築用塗料、セメント基材用のシーリング剤、紙加工用処理剤、衣料用の繊維処理剤、接着剤などの用途に適用できる。
【0043】
【実施例】
以下に本発明を実施例に沿って具体的に説明するが、これら実施例の開示に基づいて本願発明が限定的に解釈されるべきでないことは勿論である。
【0044】
実施例1
〔水性ポリウレタンの製造〕
ポリカプロラクトンジオール(PCL 210(ダイセル化学工業):分子量1000)49g、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート 176g、ジメチロールプロピオン酸70g、およびN−メチルピロリドン 196gを、還流冷却器、温度計および撹拌装置を備えた反応器に取り、反応環境を80〜 100℃に保ちながらウレタン化反応を進行せしめてプレポリマーを調製した。
【0045】
次いで、このプレポリマーにトリエチルアミン48gを加えて中和した後、ヘキサメチレンジアミン 5.0gを加え、蒸留水を添加しながら反応器内の温度を35℃以下に保って高分子化反応を行い、反応終了までに1002.6gの蒸留水を加えて水性ポリウレタンを得た。 このポリウレタンの樹脂固型分当たりの酸価は、98であった。
【0046】
〔水性樹脂分散液の調製〕
撹拌機、温度計、滴下漏斗および窒素ガス導入口を備えた四つ口フラスコに、「レベノールWZ」(アニオン性乳化剤、花王製:固形分=25%)8部、イオン交換水15.7部、および前記水性ポリウレタン 111部を仕込んで、撹拌を開始し窒素気流中で70℃に昇温した。
【0047】
次いで、過硫酸アンモニウムの 0.6部を加えてから、予めアクリル酸エチル75部、アクリル酸−n−ブチル10部、アクリロニトリル5部、およびメチルグリシジルメタクリレート10部から調製した不飽和モノマー 100部と、「レベノールWZ」の8部、およびイオン交換水30部、を用いて調製した混合乳化液を3時間に亘って滴下した。 この際の反応温度は、70±3℃に保持した。
【0048】
滴下終了後も反応環境を同温度範囲に1時間保持しつつ、撹拌を継続して、反応を進行せしめた。 そして、冷却して25%アンモニア水にてpHを8〜9に調整し、不揮発分が44.5%で、25℃における粘度が50cps で、かつpHが 8.0なる水溶液を得た。
【0049】
得られた水性樹脂分散液を 200メッシュの濾布で濾過したところ、0.001g/lの凝集物が得られた。
【0050】
実施例2〜7/比較例1〜2
下記表1に示した組成に従って、実施例1と同様の操作により各水性樹脂分散液を得た。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例8
実施例1〜7ならびに比較例1〜2で得られた水性樹脂分散液を、表面処理(アルマイト処理)したアルミ板に50μm の塗膜が形成されるように塗布し、これを80℃で 180分硬化させて、各皮膜の耐汚染性、密着性、耐水性について比較した。 なお、耐汚染性、密着性および耐水性に関する各検定試験は、以下の手順に従って行った。
【0053】
耐汚染性:
試験皮膜にマジックインキ(黒)にてインク痕を付け、これを石油ベンジンを浸したガーゼで拭き取った。 そして、エタノール、次いで乾燥したガーゼで、インク痕付着部分を軽く拭き取り、インク痕の有無について確認した。
【0054】
密着性:
素地に達する様にカッターナイフで皮膜試験片のほぼ中央に直交する縦横11本ずつの平行線を1mmの間隔で引いて、1cm2 の中に 100個の弁目ができるように、ゴバン目状に切傷を付けた。 その塗面に粘着テープを張りつけ、それを、急激に剥がした後、ゴバン目塗面を目視により評価判定した。
【0055】
耐水性:
皮膜試験片を、25℃の水に10日間浸した後に水面から引上げて、皮膜の状況を目視判定した。
【0056】
各項目に関する試験結果を、以下の表2に示した。
【0057】
【表2】
【0058】
上記した実施例/比較例での結果から、比較例1〜2でのグリシジルメタクリレートを用いた反応系では凝集物が多量に発生することが判明した。 これは、カルボキシル基等の官能基とグリシジル基との重合中の反応に起因するものと推定され、塗膜を形成した時に、この反応系が塗膜の硬化に寄与していないために所望の皮膜性能が得られなかったものと考えられる。 一方、実施例1〜5でのメチルグリシジルメタクリレートを用いた反応系では、その立体構造的な安定性が故に、重合中でも安定性が維持され、塗膜硬化時には、カルボキシル基等の官能基とグリシジル基が相互に作用して、皮膜の硬化に良好に寄与していることから、良好な塗膜性能が得られたものと思われる。 同様に、 (3,4-エポキシシクロヘキシル)-メチルメタクリレートあるいは (3,4-エポキシシクロヘキシル)-メチルアクリレートを用いた実施例6〜7での反応系でも、重合中の安定性が維持された状態下で皮膜の硬化が進行し、最終生成物である塗膜の良好な性能に反映されていることが認められた。
【0059】
【発明の効果】
本発明により、皮膜の密着性能を損なわずに、保存安定性、耐汚染性、耐水性、耐溶剤性ならびに強度などの様々な皮膜性能が改善された、有用性の高い水性樹脂分散液が得られたのである。
【0060】
また、本発明によれば、塗膜硬化の作用機序が示唆され、脱溶剤に依存しない塗料を開発する上での貴重な手掛かりをも提供するなどの効果も奏する。
Claims (6)
- 前記重合用化合物が、メチルグリシジルメタクリレート、メチルグリシジルアクリレート、 (3,4-エポキシシクロヘキシル)-メチルメタクリレート、 (3,4-エポキシシクロヘキシル)-メチルアクリレート、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項1に記載の水性樹脂分散液。
- 前記モノマーが、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミド、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アリルアルコール、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、p-ter-ブチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルピロリドン、塩化ビニル、アクリロニトリル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミド、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、フッ化ビニリデン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン、ジアセトンアクリレート、アセトニトリルアクリレート、N-メチルアクリルアミド、N-イソブチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-n-ブトキシメチルアクリルアミド、N-イソプロポキシメタクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアミド、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項1または2に記載の水性樹脂分散液。
- 前記ポリウレタンが、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択された官能基を含む請求項1乃至3のいずれかに記載の水性樹脂分散液。
- 前記重合用化合物に対して0.1重量%〜20重量%の前記モノマーを含む請求項1乃至4のいずれかに記載の水性樹脂分散液。
- 前記モノマー100重量部に対して5重量部〜400重量部の前記ポリウレタンを含む請求項1乃至5のいずれかに記載の水性樹脂分散液。
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