JP3643454B2 - 発電プラントのボイラ洗浄方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は発電プラントのボイラ洗浄方法に係り、特に発電プラントの建設後、定常運転前にボイラ内に残留している油分を除去するためのボイラ洗浄方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
火力発電プラントのボイラ、またはガスタービン設備と蒸気タービン設備とを複合した複合発電プラントの排熱回収ボイラ等には、これらのボイラ製造時あるいは組立て時に塗着した油脂等の各種油分が残留している。この油分が残留したままでボイラ運転を行うと、油分が泡立ちしたり、ボイラチユーブ内に付着して炭化し、硬質スケール化して局部過熱する等の問題を生じる。このため、発電プラント建設後、運転前にボイラ内を洗浄して油分を除去することが一般的に行われている。
【0003】
このボイラ洗浄に係る従来方法について図3を参照して説明する。図3は複合発電プラントにおける排熱回収ボイラの一つのボイラドラム廻りの系統を示したものである。
【0004】
ボイラ給水配管1に給水ポンプ2が設けてあり、運転時にはこの給水ポンプ2によって昇圧された給水が節炭器3に供給された後、給水流量調節弁4を経由してボイラドラム5に送られるようになっている。ボイラドラム5内の水は、蒸発器6において排ガス通路7内を流れるガスタービン排気により加熱されて蒸気となり、さらに過熱器8で過熱されて蒸気タービンヘ送られるようになっている。ボイラドラム5にはマンホール9が設けられている。
【0005】
従来、このような構成のもとでプラント建設後、運転前にボイラドラム5内の残留油分を除去する場合、マンホール9の蓋を開け、そこからボイラドラム5内に洗浄液としてアルカリ性薬品、例えば各種ソーダ類の薬品を注入するアルカリ洗浄、あるいはソーダ煮と称する加熱併用の脱脂洗浄等を行ってきた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが上述した従来の洗浄方法では、大型設備であるボイラドラム5のマンホール9を開閉したり保温材を着脱するのに多くの手間がかかるうえ、薬品を注入するために大掛かりな設備を必要とし、さらに洗浄薬品および中和薬品等の多種類の薬品を使用するため費用も高く、洗浄期間も長くなる等の問題があった。
【0007】
近年、複合発電プラント等においては、設備規模が大きいことから建設等に要する費用を低減するとともに、短期間のうちに営業運転を開始する等の要望が特に強くなってきており、これに伴ってボイラ洗浄についての低コスト化、作業期間短縮等が望まれている。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、使用設備が簡略化できるとともに作業が容易かつ迅速に行え、しかも低廉な洗浄液を使用して油分が確実に除去でき、さらに後処理等も容易となる発電プラントのボイラ洗浄方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決すための手段】
上記の目的を達成するために、本発明では、ガスタービン設備と蒸気タービン設備とを複合した複合発電プラントの建設後、定常運転前に、ボイラドラムの内部に残留している油分を除去するための洗浄を行うボイラ洗浄方法であって、洗浄液として濃度が50〜100ppmの非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルを使用し、この非イオン性界面活性剤を節炭器とボイラドラムとを結ぶボイラ給水配管に、仮設した洗浄液タンク、洗浄液注入ポンプおよび洗浄液注入配管を使用して、前記ボイラドラムに連続的に注入することを特徴とする発電プラントのボイラ洗浄方法を提供する。
【0010】
このような本発明の方法によれば、洗浄液として界面活性剤を使用することにより、多種類の洗浄薬品や中和薬品を使用して油分を除去していた従来の方法に比べて同様の洗浄効果が安価に行えるとともに、ボイラ給水配管を利用して洗浄液を供給するので、従来行われていたボイラドラムのマンホールの開閉、それに伴う保温材の着脱等の手間、および大型設備を省略することができ、使用設備の簡略化、作業手間の軽減が大幅に図られる。特に設備規模が大きい複合発電プラントに適用した場合には、建設等に要する費用の低減、短期間の営業運転開始等の観点から効果的なものとなる。なお、洗浄液注入ポンプとしては、定量供給ポンプとすることが望ましい。
【0011】
本発明においては、ボイラに注入する洗浄液としての界面活性剤を、非イオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルとすることが望ましい。このような非イオン性界面活性剤は、植物油および動物油の両者の除去に有効に作用するからである。また、界面活性剤の濃度は、50〜100ppmとすることが望ましい。界面活性剤の濃度が50ppm未満では、油脂分除去のための濃度が不十分となり、100ppmを越えるとCOD(生物化学的酸素要求量)濃度が排水規制値の観点から過度に高くなり、排水処理作業が面倒となる。上記の50〜100ppmの範囲に設定することにより、油脂分を十分除去することが可能な飽和濃度を有し、かつ泡立ちを少なくしてボイラから下流へのキャリオーバを抑止することができ、かつCOD(生物化学的酸素要求量)濃度が排水規制値の観点から過度に高くならず排水処理作業を減少することができる。
【0012】
界面活性剤のボイラへの注入時期は、無負荷運転時に設定することが望ましい。これにより、洗浄作業を温水クリーンアップと兼用できるとともに、試験運転と平行して効率よく行うことができる。複合発電プラントの場合には、ガスタービン無負荷運転時にすることが望ましい。これにより、大きな熱負荷がかかる前に油脂分を除去することができ、プラントシステムに問題を与えることを少なくすることができる。この場合、さらに望ましい洗浄タイミングは、初着火無負荷運転後であってガスタービンが良好に運転できることを確認した後の第2回無負荷運転前である。このタイミングであれば、初着火が失敗した場合であっても、ボイラ水をブロー排水することによる洗浄剤の濃度低下がなく、再注入作業も不要となる。
【0013】
また、本発明では無負荷運転後100%負荷到達までの間に、数回に亘ってボイラ水をブローする水洗を行い、系統の洗浄を行うことが望ましい。これにより系統の洗浄効果をより高めることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について、図1および図2を参照して説明する。
【0015】
図1は、本実施形態によるボイラ洗浄方法を実施する設備構成を示す系統図であり、図2は本実施形態で使用する界面活性剤の特性を示す図である。
【0016】
本実施形態では、複合発電プラントの排熱回収ボイラの洗浄に本発明を適用しており、図1に一つのボイラドラム廻りの系統を示している。この系統では、ボイラ給水配管11に給水ポンプ12が設けてあり、運転時にはこの給水ポンプ12によって昇圧された給水が、図1に矢印で示すように節炭器13に供給された後、給水流量調節弁14を経由してボイラドラム15に送られるようになっている。ボイラドラム15内の水は、蒸発器16において排ガス通路17内を流れるガスタービン排気により加熱されて蒸気となり、さらに過熱器18で過熱されて蒸気タービンヘ送られるようになっている。ボイラドラム15にはマンホール19が設けられている。
【0017】
このような構成において、本実施形態ではボイラドラム15付近に洗浄液を収容するための洗浄液タンク20と、この洗浄液タンク20から洗浄液を送給するするための定量供給ポンプである洗浄液注入ポンプ21を備えた洗浄液注入配管22とが仮設されており、この洗浄液注入配管22がボイラ給水配管11に管継手23を介して着脱可能に接続されている。なお、洗浄液注入配管22は途中において分岐部し、分岐した他の洗浄液注入配管22は、図示しない他のボイラドラムに接続されている。各洗浄液注入配管22の分岐点の下流側位置には、それぞれ弁24が設けられている。
【0018】
洗浄液タンク20には、洗浄液として界面活性剤が収容されている。本実施形態では、この洗浄液を非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルとし、その濃度を30〜500ppmの間で種々変更して洗浄試験を行った。
【0019】
ボイラドラム15の洗浄を行う場合には、洗浄すべきボイラドラム15に通じる洗浄液注入配管22の弁24を開け、洗浄液注入ポンプ21を起動する。これにより、洗浄液タンク20に収容された洗浄液としての界面活性剤が定量、洗浄液注入ポンプ21により加圧されて洗浄液注入配管22を通り、ボイラドラム15に注入される。なお、分岐した各洗浄液注入配管22によって、複数のボイラドラム15を同時に洗浄することができる。本実施形態では、界面活性剤のボイラへの注入時期を、ガスタービンの初着火後の無負荷運転後であって、ガスタービンが良好に運転できることを確認した後の第2回無負荷運転前に設定した。また、無負荷運転後100%負荷到達までの間に、数回に亘ってボイラ水をブローする水洗を行った。
【0020】
以上の実施形態によれば、洗浄液として界面活性剤のみを使用することにより、多種類の洗浄薬品や中和薬品を使用して油分を除去していた従来の方法に比べて同様の洗浄効果が安価に得られる。また、ボイラ給水配管11を利用して洗浄液を供給するので、ボイラドラム15のマンホール19の開閉、それに伴う保温材の着脱等の手間、および大型設備を省略することができ、使用設備の簡略化、作業手間の軽減が大幅に図られる。
【0021】
また、洗浄液としての界面活性剤を非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルとすることにより、ボイラドラム15内に残留付着している油分が確実に除去できる。この場合、非イオン性界面活性剤の濃度としては、下記のように、50〜100ppmとすることが望ましいことが分かった。
【0022】
即ち、図2は界面活性剤の特性を示したもので、界面活性剤濃度(ppm)を横軸に表し、油脂飽和濃度(ppm)、泡高さ(mm)およびCOD(生物化学的酸素要求量)濃度(ppm)を縦軸に表して、これらの関係を示している。
【0023】
この図2で示したように、界面活性剤の濃度を50〜100ppmとした場合には、油脂除去のための油脂飽和濃度が40〜45ppmと十分に高い。また、泡立ち高さが約65mm以下と少なく、ボイラドラム15からのキャリオーバが抑制できる。また、COD(生物化学的酸素要求量)濃度が20ppm程度と、排水規制値の観点から過度に高くならず、排水処理作業を減少することができる。
【0024】
即ち、本実施形態においては、ボイラドラム15内の油分除去に有効な洗浄剤を最適な時期に注入することにより、多種類の洗浄薬品や中和薬品を使用することなくボイラドラム15の洗浄を効率よく、低コストで、短時間で行える。
【0025】
なお、以上の実施形態では複合発電プラントの排熱回収ボイラを洗浄する場合について説明したが、本発明は通常の火力発電プラントのボイラ洗浄にも適宜使用することが可能である。
【0026】
【発明の効果】
以上で詳述したように、本発明に係る発電プラントのボイラ洗浄方法によれば、油分除去に有効な洗浄剤としての界面活性剤を最適な時期に注入することにより、使用設備の簡略化、作業の容易かつ迅速化、低廉な洗浄液による油分の確実な除去、および後処理等の容易化等の優れた実用的効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る発電プラントのボイラ洗浄方法の一実施例を説明するための糸統図。
【図2】前記実施形態で使用する界面活性剤の特性を示す図。
【図3】従来のボイラ洗浄方法を説明するための系統図。
【符号の説明】
11 ボイラ給水配管
12 給水ポンプ
13 節炭器
14 給水流量調節弁
15 ボイラドラム
16 蒸発器
17 排ガス通路
18 過熱器
19 マンホール
20 洗浄液タンク
21 洗浄液注入ポンプ
22 洗浄液注入配管
23 管継手
24 弁
Claims (3)
- ガスタービン設備と蒸気タービン設備とを複合した複合発電プラントの建設後、定常運転前に、ボイラドラムの内部に残留している油分を除去するための洗浄を行うボイラ洗浄方法であって、洗浄液として濃度が50〜100ppmの非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルを使用し、この非イオン性界面活性剤を節炭器とボイラドラムとを結ぶボイラ給水配管に、仮設した洗浄液タンク、洗浄液注入ポンプおよび洗浄液注入配管を使用して、前記ボイラドラムに連続的に注入することを特徴とする発電プラントのボイラ洗浄方法。
- 請求項1記載の発電プラントのボイラ洗浄方法において、洗浄後の洗浄液である排水の生物化学的酸素要求量CODが10〜20ppmであることを特徴とする発電プラントのボイラ洗浄方法。
- 請求項2記載の発電プラントのボイラ洗浄方法において、洗浄液の注入時期を、タービンの無負荷運転時とすることを特徴とする発電プラントのボイラ洗浄方法。
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