JP3642718B2 - 重量物空中搬送装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、木材などの重量物を吊り下げても十分な浮力を有する気球を空中に係留し、その気球により木材などの重量物を吊り下げて、現在地点から目的の搬送先へ移動させる気球を用いた重量物空中搬送装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、気球を用いた重量物搬送装置は、気球の牽引ロープを、手動操作式巻取機でロープの出入り量を調整しながら、重量物を現在地点から目的の搬送先へ移動させる技術が報告されている。例えば、特開昭57−4452号公報に開示されているように、主ロープと少なくとも2本の副ロープとにより互いに離れた3点で係留され浮上した気球に、懸垂杆を水平に懸架させ、この懸垂杆に巻揚装置を懸架し、この巻揚装置から係止装置を懸垂させて、この係止装置に搬送物を接続して吊り上げ移送させるようにしてなる作業装置が提案されていた。さらに、この気球には、岩石あるいは水袋等の重量体による重錘が取り付けられていた。
【0003】
また、例えば特開昭59−190097号公報に開示されているように、1個の十分な浮力を有する気球を地上の3点の位置から繋留索によって繋留し、前記3点の位置に数値制御式自動索条巻取機を各々配して、前記繋留索を出入可能とすると共に気流などの外乱による気球の振れを防ぐため繋留索の緩み感知装置を備え、前記気球を空中の所定位置に静止させるようにした気球繋留方法も提案されている。この場合、繋留索を常時緊張させ、気球に取り付けた撮影カメラ等の静止やその他位置制御を目的としたものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開昭57−4452号公報に開示されたものでは、気球に吊り下げた搬送物の移動操作は手動操作式であり、移動範囲も繋留位置の係留ロープの3点で囲まれた範囲内であり、搬送可能範囲が狭いものであった。さらに、気球の浮力調整は、搬送物にあわせて自動的に調節するものではなく、係留ロープの巻取り動力の軽減を可能にしたものでもない。
【0005】
また、特開昭59−190097号公報に開示されているものでは、地上の3点の位置に数値制御式自動索条巻取機を各々配して、気球の繋留索を出入可能にし、搬送物の位置制御機能を備えているが、この場合3点で係留して気球の静止状態を維持させるものであり、気球による重量物等の搬送を目的としたものではないので、搬送可能範囲は狭いもとなる。
【0006】
この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みて成されたもので、木材などの重量物を吊り下げた気球を広い範囲の空間で自在に搬送でき、ワイヤ張力とワイヤ巻取り動力の軽減も可能にする重量物空中搬送装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は、木材などの重量物を吊り下げても十分な浮力を有する気球を設け、この気球を地上の少なくとも4点の位置から軽量高張力ワイヤによって係留し、この気球のワイヤによる係留位置に、上記各ワイヤを巻き取る巻取機を各々配置し、これらのワイヤ巻取機を駆動するサーボモータと、このサーボモータを制御する数値制御装置とを設け、このワイヤ巻取機を駆動するサーボモータを数値制御装置で同時駆動制御する重量物空中搬送装置である。
【0008】
さらに、気球の下部に水袋を備え、吊り下げる重量に見合った分を重量バランス弁により自動排水し予め定めた残存浮力を有した後、この重量バランス弁を閉じるようにしたものである。また、気流などの外乱による浮力変動の影響を防ぐため、遠隔操作で上記水袋の排水口を閉じ残存浮力を保ち、ワイヤ張力とワイヤ巻取動力の軽減を可能にした浮力調整装置を備える。さらに、気球の下部に重量物吊り範囲を拡大できる遠隔操作式ワイヤ巻取機を設けたものである。
【0009】
ここで、気球は、空気より軽い気体を封入した袋であり、具体的には気体としてヘリウムガスを用いることができる。また、ワイヤは、スチール製ワイヤの外、より軽量で、スチール製ワイヤに近い引張り強度を持つワイヤが好ましく、具体的には商品名ケブラー等と金属線を撚り合わせたものや、このケブラー等で形成した軽量高張力ワイヤを用いることができる。
【0010】
また、ワイヤ巻取機の駆動に用いられるサーボモータを制御する数値制御装置は、移動先までの移動量と移動速度を数値化し移動先へ向かって正確に演算をしながらサーボアンプへ指令値を送信し、サーボモータを制御するものである。この数値制御装置は、高機能機種になると4軸以上の同時制御を可能とする。
【0011】
重量バランス弁は、気球が小型で吊り上げ力が小さい場合は不要であるが、気球が大型で木材などの重量物の搬送用に用いられる場合は、気球の下部に水袋を備え、吊り下げる重量に見合った分を重量バランス弁により自動排水し、予め定めた残存浮力を備えることができる。これにより、ワイヤ張力とワイヤ巻取り動力の軽減になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
この発明の気球を用いた重量物空中搬送装置の実施の形態について、図面を基にして説明する。図1はこの発明の一実施形態の重量物空中搬送装置を示し、図示する様に、搬送物である木材などの重量物6を吊り下げても十分な浮力を有する気球1を設け、この気球1を地上の4点の位置から軽量高張力ワイヤ2によって係留する。気球1には、ヘリウムガスが充填されている。この4点の係留位置にはワイヤ巻取機3を各々配置し、ワイヤ2を出し入れ可能にすると共に、これらのワイヤ巻取機3を、数値制御装置4で制御されるサーボモータ5でワイヤ巻取機3を駆動する。なお、各サーボモータ5は、数値制御装置4と制御用ケーブル4aで接続されている。
【0013】
この実施形態の重量物空中搬送装置は、数値制御装置4により、4点に配置したサーボモータ5で駆動されるワイヤ巻取機3を同時制御することによって、気球1で吊り下げた木材などの重量物6を、上記4点で形成されるほぼ四角形の広い空間で移動自在(停止,上下,前後・左右,斜行等の移動)に搬送することができる。
【0014】
次に、実施形態の水バランス式浮力調整装置7を、図2を基にして示す。この水バランス式浮力調整装置7は、中心の全荷重吊り下げ棒8が気球1の浮力により、貯水袋9内の水10と吊り下げる木材などの重量物6を合わせた全荷重を受け止める。全荷重吊り下げ棒8には、ばね11を内蔵した重量バランス弁機構20が設けられている。重量バランス弁機構20は、貯水袋9内に開口した開口部12を有し、全荷重吊り下げ棒8が挿通された本体22と、予め設定した残存浮上力(気球1の浮力に対して、重量物6と貯水袋9内の水10、その他の荷重との差)が得られた状態で排水開口部12が閉じられるように設定されたばね11を備えている。ばね11は、本体22内で重量物6による荷重がけられるように設置され、本体22の排水開口部12と全荷重吊り下げ棒8の排水口13とが連通及び閉鎖可能に設けられている。全荷重吊り下げ棒8の排水口13は、下端部の排水口15に連通し、下端部の排水口15には、本体22の側面に設けられた排水阻止装置24が位置している。
【0015】
そして、水バランス式浮力調整装置7の本体22にかかる荷重が、ばね11の支え力より大きい場合は、ばね11を水バランス式浮力調整装置7の本体22が押し下げ、水バランス式浮力調整装置7の排水開口部12と中心の全荷重吊り下げ棒8の排水口13が連通し、貯水袋9から水10が排水される。そして、排水が進み、水バランス式浮力調整装置7にかかる荷重とばね11の支え力とが同一になると、排水口13に対して本体22がばね11の反発力により上昇し、排水口13と排水開口部12とが一致しなくなり、排水は止まる。
【0016】
逆に、水バランス式浮力調整装置7の全荷重がばね11の支え力より小さい場合は、排水口13が閉じられたままとなっており、貯水袋9の注水口14から注水の必要がある。このような状況は、木材などの重量物6を地上の台車の上に降ろす時に発生する。ここで、注水量の加減は、排水口13から排水が始まることで察知できる。注水後は、遠隔操作で排水阻止装置24を作動させ、排水口15を閉じることができる。
【0017】
この重量バランス弁機構20は、例えば気球1の吊り下げ重量が30,000N(ニュートン)であり残存浮上力を5,000Nに設定した場合、空荷時の水袋の重量は25,000N必要である。ここで、木材などの重量物6の重量が20,000Nの場合、上記機構により吊り上げ時に自動的に20,000Nの水を排水することになる。
【0018】
また、遠隔操作で排水口15を閉じる排水阻止装置24は、気球1で吊り下げた木材などの重量物6が移動開始や停止動作の際、その他気流の流れの変化などで振られた結果、吊り下げ重量が変動する場合の排水を止めるものである。これにより、負荷荷重の変動の度に排水が行なわれことを防ぎ、残存浮上力を予め定めた設定値に保つ。
【0019】
なお、ここでは重量バランス弁機構20のメカ的な例を示すが、気球1を用いた重量物空中搬送装置の、予め設定した残存浮上力を得るものであれば、電気的制御を行う電磁弁機構を用いても良く、排水構造や、重量バランス弁の構造も適宜設定可能である。
【0020】
次にこの実施形態の重量物空中搬送装置の使用方法に付いて図3〜図6を基にして説明する。まず、数値制御装置4による同時制御は、例えば図3に示すように、サーボモータ付ワイヤ巻取機3A,3Bを、2軸同時水平化移動制御すると、ワイヤ巻取機3Aのワイヤ2を緩めながら一方のワイヤ巻取機3Bのワイヤ2が巻取られ、気球1が図上のaの位置から順次bを経てcの位置まで水平移動する。
【0021】
また、図4、図5に示すように、気球1に重量物6を吊り下げる遠隔操作式のワイヤ巻上機18を備えても良い。これにより、4台のワイヤ巻取機3をワイヤ2の許容引張り力で巻き上げても、重量物6が谷間V等の低い位置にあるため気球1を地上まで誘導することができない場合などに、吊り下げワイヤ26を延ばして重量物6をフック28に引っ掛けて搬送することができる。
【0022】
この実施形態の重量物空中搬送装置は、図6に示すように、所定の4個所でワイヤ2を巻き取り可能に備え、気球1は4本のワイヤ2により所定の高度で浮遊するとともに、例えば重量物6である木材の切り出しにおいては、各モータ5を駆動して各ワイヤ2を巻き取りまたは繰り出して所定の位置まで搬送させる。これにより、道路のない場所でも木材等の重量物6はフック28により吊り下げられて、搬出可能となり、搬出口で待機しているトラック30に積み込むことができる。
【0023】
またこの実施形態では、ワイヤ巻取機3の配置台数を4台としたので、木材などの重量物6の搬送範囲を大きくとることができ、さらに、4個所以上に設置しても良い。また、軽量高張力ワイヤ2を用いたので、大きな空間で気球1を係留した場合も、ワイヤ2の重量が嵩み搬送重量が削減されるのを防ぐことができる。
【0024】
さらに、この実施形態において、ワイヤ巻取機3の巻取り制御を数値制御装置4により行っているので、4台のワイヤ巻取機3の制御を正確に行うことができ、手動操作による誤操作を防止することができる。また、数値制御装置4は、気球の移動先を一定間隔の量を累積しながら変更することができ、戻る位置の固定化等のプログラムが組みやすく、危険エリアの回避インターロックが組める等、反復作業は人より勝るものである。さらに、オペレータによる移動先の修正が必要な場合は、手動介入も可能である。
【0025】
また、水を用いた浮力調整装置を採用したので、山にある川から水を容易に手に入れることが可能であり、水を山に排水しても害にならない。
【0026】
【発明の効果】
この発明の重量物空中搬送装置は、木材などの重量物を大きな空間で移動自在に搬送することができ、地上を進むときの障害物の多さに比べ搬送経路として制約が少ない。特に、植林された木の伐採等においては、植樹された場所が急斜面であっても、容易に木材等の重量物の搬出が可能となる。しかも搬出作業は、安全で安価、かつ迅速に木材などの重量物を大きな空間で自在に移動できる。
【0027】
また、水バランス式浮力調整装置を設けることにより、簡単な機構でワイヤにかかる負担を軽くし、位置制御を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態の重量物空中搬送装置の斜視図である。
【図2】この実施形態の重量物空中搬送装置の水バランス式浮力調整装置の正面図(a)と水バランス式浮力調整装置の拡大縦断面図(b)である。
【図3】この実施形態の重量物空中搬送装置の使用状態を示す概略図である。
【図4】この実施形態の重量物空中搬送装置の他の使用状態を示す概略図である。
【図5】この実施形態の重量物空中搬送装置のワイヤ巻上機を示す正面図である。
【図6】この実施形態の重量物空中搬送装置の使用状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 気球
2 ワイヤ
3 ワイヤ巻取機
4 数値制御装置
5 サーボモータ
6 重量物
7 水バランス式浮力調整装置
11 ばね
12 開口部
13,15 排水口
18 ワイヤ巻上機
20 重量バランス弁機構
Claims (3)
- 搬送物を吊り下げても十分な浮力を有する気球を、地上の少なくとも4点の位置からワイヤによって係留し、この気球のワイヤによる略四角形状の係留位置に、上記各ワイヤを巻き取る巻取機を各々配置し、これらのワイヤ巻取機を駆動するモータと、このモータを制御する制御装置とを設け、上記各ワイヤ巻取機を制御して上記搬送物を上記略四角形の範囲で空中移動可能とし、上記気球の下方に注水と排水が可能に設けられた浮力調整装置を備え、この浮力調整装置は、搬送物を吊り下げる際にその重量と釣り合う浮力になるまで上記重量により開いて排水する重量バランス弁と、この重量バランス弁からの排水を止める排水阻止装置を設けたことを特徴とする重量物空中搬送装置。
- 上記浮力調整装置は、ばねの支え力に抗して上記搬送物による荷重が上記浮力調整装置にかかり、上記ばねに抗して重量バランス弁機構の排水口が開き、浮力と上記荷重とが釣り合うと上記排水口が閉じることを特徴とする請求項1記載の重量物空中搬送装置。
- 上記気球は、その下部に搬送物を吊り下げる遠隔操作式ワイヤ巻取機を備えたことを特徴とする請求項2記載の重量物空中搬送装置。
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