JP3642681B2 - 自動変速機の油圧コントロールバルブの構造 - Google Patents

自動変速機の油圧コントロールバルブの構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動変速機の油圧コントロールバルブの構造に関し、特にシフトバルブ間の油路連通効率を向上させ、大きなスペースを要しない自動変速機の油圧コントロールバルブの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動変速機の変速制御は、トランスミッションケース内にパワートレーン回転要素に隣接して配設される油圧コントロールバルブによって、各ユニットの油圧機構へ供給される油圧を制御することによって行なわれる。
特に摩擦要素を選択的に接続して油圧供給を行なうシフトバルブの作動効率が変速制御の性能を左右する。
【0003】
油圧コントロールバルブは、例えばロアボデーとアッパボデーにセパレータを挟んで重ねられてユニットに構成される。
油圧制御用のバルブがロアボデーとアッパボデーの端面に組み込まれ、合わせ面に形成された油圧回路に接続されるとともに油圧回路を通じてブレーキ、クラッチなどの摩擦要素やボンプと連通される。シフトバルブは2体のシフトバルブAとシフトバルブBからなり、互いに油路を連通して、4パターンの制御を行なうようになっている。
【0004】
図7は従来のアッパボデーの一例を示す。アッパボデー50に組み込まれる複数のバルブの中に互いに油路で連通されるシフトバルブA100とシフトバルブB200があり、これらは隣接して設置されている。シフトバルブAとシフトバルブBは他の組み込みバルブと同様にポートをロアボデーとの合わせ面に開口させて、重ね合わせられるロアボデーに形成される油路に連通されるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、シフトバルブAとシフトバルブBは摩擦要素などに直接作動油を供給し、変速制御を行なうもので、油路の効率的接続が要求される。上記従来の構成では、油路に折れ曲がりが多いうえ、油路の一部が隣接のロアボデーに設置されるため、油路長が大きくなってしまう。このため、作動油を効率的に摩擦要素に送り出すことができず、応答性の向上などに限度がある。
【0006】
また上記の構成では、各ポートから真横へ出せる油路が少ないため、引き回す油路が多くなり、スペースの利用率が低く、ボデーの大きさを増大させる結果をもたらしている。
さらに上記のような横並び構造ではシフトバルブAとシフトバルブBをなるべく近接して油路を短くするためにボルトをシフトバルブAとBの両側に設置するから、ピッチが長すぎて有効な面圧が形成できず、シフトバルブAとシフトバルブBの間に、作動油が流れる際に漏れ出す可能性があり、ガスケットを設けて防ぐことになり、コストの増加をもたらす問題があった。
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、シフトバルブAとシフトバルブBを連結する油路を短くし、油路を繋ぐ効率を向上させるとともに、コンパクトな構成にできる油圧コントロールバルブの構造を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このため本発明は、それぞれに変速制御用の組み込みバルブと油路が配設された2体のボデーを有し、互いの合わせ面で重合されて構成される油圧コントロールバルブにおいて、該2体のボデー平面方向の略同一位置で、かつ軸方向を互いに平行にしてシフトバルブAを前記2体のボディの一方に、シフトバルブBを前記2体のボディの他方にそれぞれ配置し、該シフトバルブAとシフトバルブBのそれぞれのポートが前記ボデーの合わせ面に、ボデー平面方向で少なくとも一部がオーバーラップする状態で開口され、前記ボデーの合わせ面における前記オーバーラップの領域でのポート同士の接続で、前記シフトバルブAとシフトバルブB間の油路連通が行なわれるものとする
【0008】
そしてさらに、前記シフトバルブBは前記シフトバルブAとのポート同士の接続を2対以上有するようにシフトバルブAに対して軸方向位置が設定されたものとした。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記シフトバルブAとシフトバルブBのポートは、前記オーバーラップしていない領域で他の油路に接続させたものとした。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記ボデーの合わせ面にセパレートプレートが挟まれ、前記シフトバルブAとシフトバルブBは前記セパレートプレートに設けた穴によって油路連結が行われるものとした。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記シフトバルブAとシフトバルブBを挟んでその両側に前記ボデーを固定するボルトが設けられているものとした。
【0012】
【作用】
請求項1記載の発明では、シフトバルブAとシフトバルブBをそれぞれ重ね合わせられる2体のボディの一方および他方に、平面方向の略同一位置でかつ軸方向を互いに平行にして配置し、互いのポートをオーバーラップさせた領域で連通するので、シフトバルブAとシフトバルブBを連通する油路は同一のボデーに設けて隣接するボデーでの接続を介して行なうより、距離が短く、必要なスペースが少なく済むという効果が得られる。
【0013】
そして、シフトバルブBはシフトバルブAとのポート同士の接続を2対以上有するようにシフトバルブAに対して軸方向位置の設定が行われるため連通油路が最短となり、油路のためのスペースとりが最小となって、油路における損失が小さくて済む。
【0014】
請求項2記載の発明では、シフトバルブAのポートとシフトバルブBのポートは上記オーバーラップしていない領域で他の油路に接続させるから、油路の連通はオーバーラップ部分で行うことができるとともに、オーバーラップしていない部分から、他の油路への連通も可能になる。これにより、油路の連通距離が最短となり、全体として小さいスペースの構造になる。
【0015】
請求項3記載の発明では、シフトバルブAのポートとシフトバルブBのポートはセパレートプレートに設けた穴を介して油路連通が行われるから、隣接ボデーを介して油路を迂回するより油路長が短く、必要なスペースが少なくて済む。
【0016】
請求項4記載の発明では、上下に並んだシフトバルブAとシフトバルブBを挟んでその両側にボデーを固定するボルトが配設されるため、ピッチが短く、シフトバルブAとシフトバルブB間の油路接続面圧が高くなり、シフトバルブAとシフトバルブB間の油漏れを有効に防げる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を実施例により説明する。
図1は実施例の全体を示す正面図である。アルミ製のアッパーボデー1、インタボデー2、ロアボデー3がセパレータ4、5を介して重合されている。各ボデーの間には位置決めピンが設置され、図示しないボルトによって固定されている。各ボデーの端面に組み込みバルブが設けられ、ボデーの合わせ面に形成された油圧回路に繋がり、ボデー開口部から変速要素やオイルポンプの吐出口に連結されている。3体のボデーに設置される組み込みバルブはそれぞれの繋がり関係で上下略対向するようになっている。
【0018】
アッパボデー1とインタボデー2において、上下略対向する位置に設けられた組み込みバルブ10はシフトバルブAで、20はシフトバルブBである。シフトバルブA、シフトバルブBは他の組み込みバルブと同じようにボデーに形成されたスプール穴にスプールを挿入し抜け止めを施して構成される。30はマニュアルバルブで、スプールがスプール穴から外方へ延び、図示しないマニュアルレバーに連結されるようになっている。
【0019】
図2は、シフトバルブAを含む組み込みバルブの配列を示す図で、図3はシフトバルブBを含む組み込みバルブの配列を示す図である。両図はボデーの輪郭内に組み込みバルブの配列を実線で示した。
図2のアッパボデーにおいて、シフトバルブA(10)は他の組み込みバルブとともに軸方向を互いに平行に揃えて設置される。バルブとバルブの間には間隔を設け、ボルトを挿入する貫通穴が形成されている。例えばシフトバルブAの両側には隣接するバルブとの間に貫通穴12、13、14、15が設けられている。また供油圧力が小さい組み込みバルブやマニュアルバルブなど高い面圧を要しないバルブの周囲にはボルトを通す貫通穴を少なめに設置する。各貫通穴は他のボデーに設置され対応関係を持った組み込みバルブを挟むように位置設定されている。
【0020】
図3のインタボデー2においては、シフトバルブB(20)は他の組み込みバルブと軸方向を揃えて設置されている。各組み込みバルブを挟んで図2のアッパボデーに形成される貫通穴に対応してボルトを通す貫通穴が形成されている。
【0021】
各ボデーの位置を揃えセパレートを挟んだ状態でアッパボデー1の上部から各貫通穴にボルトを通しロアボデーに形成されるボルト穴にねじ込んで、ボデーの固定が行なわれる。これによって例えば図4に示すように、シフトバルブA(10)とシフトバルブB(20)を挟んだ両側にボルト31と32が設けられ、短いピッチCでシフトバルブAとシフトバルブB間が高い面圧で固定される。
【0022】
図5はシフトバルブAとシフバルブBの軸方向断面図である。
アッパボデー1に形成されるスプール穴18にスプール11を挿入して構成されるシフトバルブAは、スプール1の外方にばね16が設けられ、ボデーの合わせ面から挿入するL字形のリテーナ17で抜け止めされている。スプール穴18に形成されているポート1a〜1kは、インタボデーとの合わせ面に開口されている。
【0023】
シフトバルブBはシフトバルブAと同様にインタボデー2に形成されるスプール穴28にスプール21を挿入し、ばね26を介して図示省略したロアボデーとの合わせ面から挿入されるL字形リテーナ27で抜け止めされている。スプール穴28にあるポート2a〜2jは軸方向においてアッパボデー内のポート1b〜1kとそれぞれ位置を合わせてボデーの合わせ面に開口される。
【0024】
リテーナ17とリテーナ27とは軸方向に異なる奥行きを有している。
セパレータ4はポートに対応して油路の接続と遮断を行なうようになっている。すなわち油路連通することが必要なポート1bと2a、ポート1fと2e、ポート1hと2gに対して、油路の連通が行なえるようにセパレータ4に穴が形成されている。
シフトバルブAのポートとシフトバルブBのポートは軸方向ではそれぞれ対向する位置にあるが、横方向では図6に示すポート1fとポート2eのように開口が位置ずれしている。なお、図6は図5におけるポート1fとポート2eのD−D断面を示した図である。
【0025】
油路を連通する各穴は軸方向ではポートの開口幅をカバーし、横方向では図6に示すポート1fとポート2eの開口の重なる部分の中央に穴4aのようにセパレータ4に形成されている。またポート1fとポート2eの開口の重ならない部分には他の油路との連通を行う穴4b、4cがセパレータ4に形成されている。セパレータ4で連通が遮断された他のポートはボデーの合わせ面に形成される油路に接続されている。
なお、本実施例では、リテーナ17、27は異なる奥行きに設定されたが、スプールの構造やばね力によっては同じ奥行きに設定し、スプール穴を抜け止めすることもできる。
【0026】
本実施例は以上のように構成され、シフトバルブAとシフトバルブBをそれぞれ重合されるボデーの略対向する位置に設置するので、互いに連通する油路を迂回せずに接続することができる。油路長が短くなるとともに作動油を効率よく摩擦要素へ送り出すことができる。
またこれによってポートを連通する油路の影響を受けずに油路のパターン設計が可能となり、組み込みバルブの真横から出る油路を多く形成することができ、コンパクトな構成ができる。
【0027】
さらに、ボデーを固定するボルトを上下方向に並んだシフトバルブAとシフトバルブBを挟んで小ピッチに設けることができるため、シフトバルブ間の面圧が高く、ガスケットを設けなくても油漏れを防ぐことができる。
なお、本実施例ではアッパボデー、インタボデー、ロアボデーの3ボデー構成を例に説明したが、これに限らず、2ボデーの構成でも上記の構造を適用することができる。
【0028】
【発明の効果】
請求項1記載の発明では、シフトバルブAとシフトバルブBをそれぞれ重ね合わせられる2体のボディの一方および他方に、平面方向の略同一位置でかつ軸方向を互いに平行にして配置し、互いのポートをオーバーラップさせた領域で連通するので、シフトバルブAとシフトバルブBを連通する油路が短くなり、変速制御する際に、作動油を効率的に送り出すことができ、制御性が向上する。必要なスペースが少ない効果と合わて、高性能、コンパクトな自動変速機の油圧コントロールバルブの構造となる。
【0029】
そしてさらに、シフトバルブBはシフトバルブAとのポート同士の接続を2対以上有するようにシフトバルブAに対して軸方向位置の設定が行われるため連通油路が最短となり、油路のためのスペースとりが最小となって、油路における損失が小さく済み、効率よく作動油の送り出すことが可能になる。
【0030】
請求項2記載の発明では、シフトバルブAのポートとシフトバルブBのポートは上記オーバーラップしていない領域で他の油路に接続させるから、油路の連通はオーバーラップ部分で行うことができるとともに、オーバーラップしていない部分から、他の油路への連通も可能になる。これにより、油路の連通距離が最短となり、全体として小さいスペースの構造になる。
【0031】
請求項3記載の発明では、シフトバルブAのポートとシフトバルブBのポートはセパレートプレートに設けた穴を介して油路連通が行われるから、隣接ボデーを介して油路を迂回するより油路長が短く、必要なスペースが少なくて済む。
【0032】
請求項4記載の発明では、シフトバルブAとシフトバルブを挟んでその両側にボデーを固定するボルトを配設し、短いピッチでシフトバルブAとシフトバルブBの間で両ボデーを高い面圧で接続できるため、油漏れ防止のためのガスケットが不要になり、コストが下がる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の構成を示す全体図である。
【図2】シフトバルブAを含む組み込みバルブの配列を示す図である。
【図3】シフトバルブBを含む組み込みバルブの配列を示す図である。
【図4】ボルトの設置位置を示す図である。
【図5】シフトバルブAとシフトバルブBのポート接続関係を示す図である。
【図6】ポートの横方向開口位置を示す図である。
【図7】従来例を示す図である。
【符号の説明】
1 アッパボデー
2 インタボデー
3 ロアボデー
4、5 セパレート
4a、4b、4c 穴
10、100 シフトバルブA
20、200 シフトバルブB
50 ボデー
31、32 ボルト
11 スプール
12、13、14、15 貫通穴
16、26 ばね
17、27 リテーナ
21 スプール
22、23、24、25 貫通穴
30 マニュアルバルブ
1a〜1k ポート
2a〜2j ポート

Claims (4)

  1. それぞれに変速制御用の組み込みバルブと油路が配設された2体のボデーを有し、互いの合わせ面で重合されて構成される油圧コントロールバルブにおいて、
    該2体のボデー平面方向の略同一位置で、かつ軸方向を互いに平行にしてシフトバルブAを前記2体のボディの一方に、シフトバルブBを前記2体のボディの他方にそれぞれ配置し、該シフトバルブAとシフトバルブBのそれぞれのポートが前記ボデーの合わせ面に、ボデー平面方向で少なくとも一部がオーバーラップする状態で開口され、前記ボデーの合わせ面における前記オーバーラップの領域での前記ポート同士の接続で、前記シフトバルブAとシフトバルブB間の油路連通が行なわれ
    前記シフトバルブBは前記シフトバルブAとの前記ポート同士の接続を2対以上有するように前記シフトバルブAに対して軸方向位置の設定が行われることを特徴とする自動変速機の油圧コントロールバルブの構造。
  2. 前記シフトバルブAとシフトバルブBの前記ポートは、前記オーバーラップしていない領域で他の油路に接続させたことを特徴とする請求項1記載の自動変速機の油圧コントロールバルブの構造。
  3. 前記ボデーの合わせ面にセパレートプレートが挟まれ、前記シフトバルブAとシフトバルブBは前記セパレートプレートに設けた穴によって油路連結が行われることを特徴とする請求項1または2記載の自動変速機の油圧コントロールバルブの構造。
  4. 前記シフトバルブAとシフトバルブBを挟んでその両側に前記ボデーを固定するボルトが設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載の自動変速機の油圧コントロールバルブの構造。
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