JP3642624B2 - 4輪駆動車用駆動装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、横置きエンジンに用いられる4輪駆動車用駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、エンジンを横置き配置した車両の駆動装置に関しては、特開平4−83948号公報の先行技術がある。この先行技術には、エンジン、トルクコンバータ、ダブルピニオン式プラネタリギヤを具備する前後進切換装置及びベルト式無段変速機を車体幅方向に同軸上に設け、無段変速機のセカンダリ軸からの出力をディファレンシャル装置に伝動構成することが示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記先行技術のものにあっては、横置きに配置されるエンジンに、このエンジンと同軸上に順次トルクコンバータ、前後進切換装置、ベルト式無段変速機が設けられ、更にベルト式無段変速機のセカンダリ軸の下方にディファレンシャル装置が設けられ、これらが一体構成されたトランスミッションケースが接合されることから、車幅方向において駆動装置全長が長大となり、車載状態においてエンジンルーム側壁と駆動装置とが接近配置され、側面衝突時のクラッシュストロークを充分に確保しようとすると車体設計の自由度が制限され、またエンジンルーム内の作業空間が得難く、トランスミッション着脱時や整備等の円滑な作業が妨げられるおそれがある。
【0004】
更にこの駆動装置をベースとする4輪駆動車用駆動装置にあってはベルト式無段変速機のセカンダリ軸側にセンタディファレンシャル装置を更に設けることから構造及びそれらを制御する制御装置が複雑になり、コストの高騰を招く等の不具合がある。
【0005】
また、同一形状を有するエンジンルーム構造内にベルト式無段変速機、手動変速機(マニュアルトランスミッション、MT)及び自動変速機(オートマッチクトランスミッション、AT)等との車載互換性を有することが望ましく、比較的コンパクトに設計可能な手動変速機と全長寸法やトランスミッションケース外周寸法、いわゆる胴廻り寸法を略同一にすれば車載のための支持部材や排気系の共用化が可能になる。
【0006】
従って、本発明の目的は、駆動装置、特にトランスミッションケースの車体幅方向の短縮を図り、車体設計の自由度及びクラッシュストローク、トランスミッション脱着時等の作業空間を確保しつつ従来のエンジンルームに搭載可能でしかも、構造及びその制御装置の簡素化が得られる4輪駆動車用駆動装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明による4輪駆動車用駆動装置は、横置きエンジンと、このエンジンからの出力が入力される変速機と、前記エンジンのクランク軸に対して各々平行配置されて一方のディファレンシャル装置及び他方のディファレンシャル装置に各々動力伝達する第1及び第2のドライブ軸と、第1のドライブ軸と同軸上に配置されたダブルピニオン式プラネタリギヤと、このプラネタリギヤのリングギヤ及びキャリヤに変速機からの出力を動力伝達する入力切換手段と、前記プラネタリギヤのサンギヤからの出力を第1のドライブ軸に動力伝達する手段と前記プラネタリギヤのキャリヤからの出力を第2のドライブ軸に選択的に動力伝達する第3の摩擦係合要素と、第1のドライブ軸と第2のドライブ軸との間の伝達トルクを可変制御する第4の摩擦係合要素と、プラネタリギヤのリングギヤ回転を選択的に係止する第5の摩擦係合要素とを有し、上記入力切換手段及び各摩擦係合要素を選択的に作動せしめて前記変速機からの入力を前記プラネタリギヤを介して所定の比率で動力配分及び前後進切換して第1及び第2のドライブ軸に動力伝達することを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1において、本発明が適用される4輪駆動車用駆動装置としてベルト式無段変速機付4輪駆動車用駆動装置の駆動系について説明する。
【0011】
符号10は横置きエンジンであり、このエンジン10に接合されてトルクコンバータ20を収容するトルクコンバータケース1、このトルクコンバータケース1の側方に位置してベルト式無段変速機30及び一方のディファレンシャル装置、例えばフロントディファレンシャル装置40を収容するデフアンドコンバータハウジング2及びサイドケース3、前記トルクコンバータケース1と協働してトランスファユニット50を収容するケース4及びエンドカバー5、トルクコンバータケース1の後方に位置してトランスファユニット50からの出力を後輪へ伝達する動力伝達機構を収容するエクステンションケース6が接合されてトランスミッションケース7を形成し、トランスミッションケース7の下部にオイルパン(図示せず)が設けられる。
【0012】
横置きエンジン10のクランク軸11がトルクコンバータケース1内部のトルクコンバータ20に連結し、トルクコンバータ20からの入力軸21がデフアンドコンバータハウジング2内部のベルト式無段変速機30のプライマリ軸31に連結することによりクランク軸11からの動力をトルクコンバータ20を介して無段変速機30のプライマリ軸31に伝動構成される。
【0013】
そして無段変速機30で無段変速した動力をセカンダリ軸32に出力し、カウンタシャフト39等を介してトランスファユニット50に入力し、トランスファユニット50によってディファレンシャル装置、例えばフロントディファレンシャル装置40を介して前輪に伝動構成する一方、プロペラ軸116及び他方のディファレンシャル装置、例えばリヤディファレンシャル装置117等を介して後輪に伝動構成される。
【0014】
トランスミッションケース7内にはトルクコンバータ20に設けられるオイルポンプドライブ軸24aに連結して常に駆動されるオイルポンプ8が設けられ、オイルポンプ8により常時油圧を発生してトルクコンバータ20等に給油し、無段変速機30の油圧制御を可能にし、かつ車速センサ9a、スロットルセンサ9b、シフトスイッチ9c、前輪回転数センサ9d、後輪回転数センサ9e、舵角センサ9f等の各信号に基づいて油圧制御回路9によって制御してトランスファユニット50の油圧制御を可能にしている。
【0015】
次に図2乃至図10によってトルクコンバータ20、ベルト式無段変速機30、ディファレンシャル装置40及びトランスファユニット50について順次説明する。
【0016】
トルクコンバータ20は、図2に要部断面を示すようにデフアンドコンバータハウジング2及びサイドカバー3にボールベアリング21aを介してクランク軸11に対して同軸上で回転自在に軸支される入力軸21を有している。
【0017】
入力軸21の外周は略円筒状で基端に設けられたフランジ部がオイルポンプハウジング8cを介在してトルクコンバータケース1にボルト結合されたステータ軸22によって回転自在に囲まれ、ステータ軸22にはインペラ24に一体的に結合されたオイルポンプドライブ軸24aが回転自在に嵌合している。
【0018】
インペラ24は、その外周がフロントカバー25の外周と一体的に結合され、ドライブプレート26を介してクランク軸11に結合することによってクランク軸11と一体的に回転駆動される。
【0019】
インペラ24と対向して入力軸21にスプライン嵌合するタービン27が配置され、インペラ24とタービン27との間においてステータ軸22にワンウエイクラッチ28aを介して支持されるステータ28が介装されている。
【0020】
更にタービン27とフロントカバー25との間にロックアップクラッチ29が介装され、ステータ軸22の基端にはオイルポンプドライブ軸24aによって回転駆動されるインナギヤ8a、インナギヤ8aに噛合するアウタギヤ8b及び前記オイルポンプハウジング8cを具備するオイルポンプ8が設けられている。
【0021】
そしてエンジン10のクランク軸11が回転すると、クランク軸11に結合されたドライブプレート26、フロントカバー25等を介してインペラ24が回転駆動される。
【0022】
インペラ24の回転によりインペラ24内のオイルが遠心力によって外側に放出され、そのオイルがタービン27の外側から流入してタービン27にインペラ24の回転と同方向のトルクを伝達することによりタービン27とスプライン嵌合する入力軸21を回転駆動する。更にステータ28によってタービン27から流出するオイルの流出方向をインペラ24の回転力を助長する方向に反転させてインペラ24のトルク増大を図っている。またタービン27の回転数が大であるときにはオイルの流れがステータ28の背面に当りワンウエイクラッチ28aによりステータ28を空転させるように構成されている。
【0023】
一方一定の車速又は回転数に達したときロックアップクラッチ29によりフロントカバー25を介してインペラ24とタービン27とを直結状態にし、所謂トルクコンバータの滑りをなくし、その分エンジン10の回転数が低下することにより燃費の節約及び静粛性の向上を図っている。
【0024】
ベルト式無段変速機30は互に平行配置されたプライマリ軸31とセカンタリ軸32に各々設けられたプライマリプーリ33とセカンダリプーリ34と、これら両プーリ33、34間に巻き掛けられた駆動ベルト35とを有し、各プーリ33、34のプーリ溝巾を変えることにより各プーリ33、34に対する駆動ベルト35の有効巻付け径の比率を変えて無段階に変速するよう構成されている。
【0025】
このため前記入力軸11と一体に形成されたプライマリ軸31に設けられるプライマリプーリ33は、プライマリ軸31と一体に形成された固定シーブ33aと、この固定シーブ33aに対して軸方向への移動を可能にする可動シーブ33bを有している。固定シーブ33aと可動シーブ33bとは変速機の円滑な無段変速を確保するため駆動ベルト35を所定のクランプ力で挾持してトルク伝達すると共に、固定シーブ33aと可動シーブ33bによって形成されるプーリ溝巾を円滑に可変制御する必要から、プライマリ軸31と可動シーブ33bとの嵌合部には各々軸方向に延在して互いに対向する複数のボール溝を形成し、対向するボール溝の間に介在するボール33cを介してトルク伝達する手段が採られている。
【0026】
可動シーブ33bの固定シーブ33aと反対側の背面には略円筒状のピストン37aが固定されており、このピストン37aはプライマリ軸31に中心部が固定された有底円筒状のシリンダ37bと協働して油圧室37Aを形成すると共にプーリ溝巾を狭くする方向に可動シーブ33bを付勢するスプリング37cを具備する油圧アクチュエータ37が設けられている。
【0027】
プライマリ軸31には油圧室37Aに連通する油路31bが形成され、スロットル開度等に基づいて油圧制御回路9によって制御されてサイドカバー3に形成される油路3aを介して油圧アクチュエータ37の油圧室37A内に給排する油圧によって可動シーブ33bをプライマリ軸31に沿って移動させることによってプーリ溝巾を可変制御している。
【0028】
一方プライマリ軸31と平行に配置されるセカンダリ軸32はデフアンドコンバータハウジング2及びサイドカバー3にローラベアリング32a及びボールベアリング32bを介して回転自在に軸支され、セカンダリ軸32に設けられるセカンダリプーリ34は、セカンダリ軸32と一体に形成された固定シーブ34aと、この固定シーブ34aに対して軸方向への移動を可能にする可動シーブ34bを有し、固定シーブ34aと可動シーブ34bとはセカンダリ軸32と可動シーブ34bの嵌合部に各々軸方向に延在して互いに対向して形成された複数のボール溝間に介在するボール34cを介してトルク伝達するよう構成されている。
【0029】
可動シーブ34bの背面には略円筒状のシリンダ36aが固定されており、このシリンダ36aはセカンダリ軸32に中心部が固定された円筒状のピストン36bと協働して油圧室36Aを形成すると共にプーリ溝巾を狭くする方向に可動シーブ34bを付勢するスプリング36cを具備する油圧アクチュエータ36が設けられている。
【0030】
セカンダリ軸32には油圧室36Aに連通する油路32bが形成され、スロットル開度等に基づいて油圧制御回路9によって制御されてサイドカバー3に形成される油路3bを介して油圧アクチュエータ36の油圧室36Aに給排するよう構成され、かつセカンダリ軸32の一端にはドライブギヤ38が設けられている。
【0031】
ここでセカンダリプーリ34の可動シーブ34bが油圧作用を受ける受圧面積に比べプライマリプーリ33の可動シーブ33bの油圧作用を受ける受圧面積が大であることから油圧室37A及び36Aに給排される油圧に従ってプライマリプーリ33とセカンダリプーリ34のプーリ溝巾が逆の関係に変化して各プーリ33、34に対する駆動ベルト35の有効巻付け径の比率を無段階に変えて無段変速した動力をセカンダリ軸32に出力する。
【0032】
セカンダリ軸32からの変速出力はドライブギヤ38から出力され、カウンタシャフト39によって減速されてドリブンギヤ54及びこのドリブンギヤ54に結合された伝動軸53を介してトランスファユニット50へ伝動構成される。
【0033】
カウンタシャフト39はトルクコンバータケース1及びデフアンドコンバータハウジング2に両端が固定される軸39aと、この軸39aに回転自在に嵌合して前記ドライブギヤ38に噛合する比較的大径のドリブン側ギヤ39c及びドライブ側ギヤ39cと一体的に形成されて前記ドリブンギヤ54に噛合するドリブン側ギヤ39dからなり両側がトルクコンバータケース1及びデフアンドコンバータハウジング2に支持されたニードルベアリング39e及びローラベアリング39fのインナレースを介して軸方向の移動が規制されるギヤ39bとによって形成される。
【0034】
次に図2及び図2の要部拡大を示す図3によってフロントディファレンシャル装置40及びトランスファユニット50の部分について述べる。
【0035】
フロントディファレンシャル装置40は、ボールベアリング54bを介してデフアンドコンバータハウジング2に円筒状のフランジ部54aが回転自在に軸支されるドリブンギヤ54と、ボールベアリング53aを介してトルクコンバータケース1に回転自在に軸支される略円筒状の伝動軸53との結合部に拡径形成されたデフハウジング41内に配設される。
【0036】
そしてフロントディファレンシャル装置40の構造は、後述する第1のドライブ軸となるフロントドライブ軸51と一体構成され、略円筒状で前記ドリブンギヤ54のフランジ部54a及び伝動軸53内に回転自在に嵌合する中空状のデフケース42を有し、デフケース42内にはデフケース42に両端が支持されたピニオン軸43aにより一対のピニオン43bが設けられ、両ピニオン43bに左右のサイドギヤ43c、43dが噛み合うことによってディファレンシャルギヤ43を構成している。
【0037】
一方のサイドギヤ43cに連結する駆動軸44はデフケース42からデフアンドコンバータハウジング2を貫通して等速継手、アクスル軸等を介して一方の前輪に動力伝達し、他方のサイドギヤ43dに連結する駆動軸45はデフケース42及びデフケース42と一体構成されるフロントドライブ軸51内を貫通し、エンドカバー5から突出して等速継手、アクスル軸等を介して他方の前輪に動力伝達する。
【0038】
トランスファユニット50は、エンジン10のクランク軸11、入力軸21、プライマリ軸31及びセカンダリ軸32等に対して平行配置される第1のドライブ軸となるフロントドライブ軸51及び第2のドライブ軸となるリヤドライブ軸52を有している。
【0039】
互に平行配置されるクランク軸11、プライマリ軸31、セカンダリ軸32、フロントドライブ軸51及びリヤドライブ軸52等は、図2における矢視A方向からの配置を示す図4に示すように、クランク軸11の回転軸芯11a及びプライマリ軸31が車体幅方向に同軸上に位置し、セカンダリ軸32がプライマリ軸31に対して車体後方で高位置に平行配置されてプライマリプーリ33に対してセカンダリプーリ34が車体後方で高位置に対向配置される。そしてフロントドライブ軸51が略セカンダリ軸32の下方に、更にリヤドライブ軸52がフロントドライブ軸51の車体後方に各々平行配置することにより駆動装置全体の車幅方向及び前後方向寸法を抑えてコンパクト化を図り、エンジンルーム内への収納性を良好にして手動変速機(MT)、自動変速機(AT)搭載車体との互換性の向上を図っている。
【0040】
前記デフケース42と一体構成されるフロントドライブ軸51の一端は伝動軸53及び伝動軸53を軸支するボールベアリング53aを介在してトルクコンバータケース1に、他端部はニードルベアリング51cを介してエンドカバー5に各々回転自在に支持されている。
【0041】
またフロントドライブ軸51の軸方向中央部外周にはダブルピニオン式プラネタリギヤ55のサンギヤ56が嵌合するスプライン51aが、端部外周には第4の摩擦係合要素となる第4の多板クラッチ93のクラッチドラム94が嵌合するスプライン51bが各々形成されている。
【0042】
一方フロントドライブ軸51と平行配置されるリヤドライブ軸52の一端にはトランスファドリブンギヤ52aが、また他端には後述する出力軸113の一端に設けられるベベルギヤ113aと噛み合うベベルギヤ52bが取り付けられ、複数のボールベアリング52cによってトランスミッションケース7のトルクコンバータケース1及びエンドカバー5に回転自在に軸支されている。
【0043】
フロントドライブ軸51の軸方向中央外周に形成されるスプライン51aに嵌合して結合されるダブルピニオン式プラネタリギヤ55は、スプライン51aにスプライン結合されるサンギヤ56と、リングギヤ57と、サンギヤ56及びリングギヤ57に各々が噛み合いかつ互に噛み合う第1及び第2のピニオン58、59と、第1及び第2のピニオン58、59をニードルベアリング60aを介して回転自在に支持するキャリヤ60によって構成され、リングギヤ57に入力する動力をサンギヤ56とリングギヤ57との歯車諸元によるトルク配分でサンギヤ56とキャリヤ60に伝達し、またリングギヤ57をトランスミッションケース7に係止することによりキャリヤ60への入力に対してサンギヤ56へ逆方向に回転せしめる機能を有する。
【0044】
このダブルピニオン式プラネタリギヤ55は、伝動軸53に支持されるスラストベアリング61aと、ボールベアリング82a及びトランスファドライブギヤ82を介してケース4に支持されるスラストベアリング61bとによってサンギヤ56を挾持することによって軸方向への移動が防止される。
【0045】
フロントドライブ軸51はトルクコンバータケース1に一体形成された略円筒状の固定軸62によって囲まれ、固定軸62の内周面とフロントドライブ軸51との間を第1の摩擦係合要素となる第1の多板クラッチ68のクラッチドラム69によって閉じてオイル室62Aが形成され、固定軸62にはオイル室62Aに連通する油圧路62aが形成されると共に固定軸62の外周に油路62bが形成される。
【0046】
伝動軸53と前記ダブルピニオン式プラネタリギヤ55との間に選択的に伝動軸53からの出力をリングギヤ57或いはキャリヤ60に入力する前記第1の多板クラッチ68と第2の摩擦係合要素となる第2の多板クラッチ78とを有する入力切換手段67が設けられている。
【0047】
第1の多板クラッチ68について述べると、固定軸62に回転自在に軸支されたクラッチドラム69が伝動軸53の先端に形成されたスプライン53bに嵌合し、クラッチハブ70がダブルピニオン式プラネタリギヤ55のリングギヤ57に結合する。このようにして第1の多板クラッチ68は伝動軸53とリングギヤ57との間にバイパスして動力伝達可能に介設される。そして油圧室71の油圧でピストン72を介してクラッチドラム69内に固定したスナップリング73dに当接するリテーニングプレート73c及びドリブンプレート73bとクラッチハブ70との間のドライブプレート73aを押圧して動力伝達するように構成される。符号72aはピストン72とクラッチドラム69との間を摺動可能でかつ液密的に保持するシールである。またピストン72の油圧室71と反対側にはピストン74を介してリテーナ75aが設けられ、ピストン72にはピストン74を介してリターンスプリング76の押圧力が付勢される。
【0048】
第2の多板クラッチ78について述べると、クラッチドラム69を第1の多板クラッチ68と共用し、クラッチハブ79がダブルピニオン式プラネタリギヤ55のキャリヤ60に結合する。こうして第2の多板クラッチ78は伝動軸53とキャリヤ60との間にバイパスして動力伝達可能に介設される。そして油圧室80の油圧でピストン74を介してピストン72に固定したスナップリング81dに当接するリテーニングプレート81c及びドリブンプレート81bとクラッチハブ79との間のドライブプレート81aを押圧して動力伝達するように構成される。前記同様油圧室80に発生する遠心油圧は、バランス油圧室75の油圧によって相殺され、ピストン74にはリターンスプリング76の押圧力が付勢される。
【0049】
ダブルピニオン式プラネタリギヤ55に対して入力切換手段67と反対側にはボールベアリング82aを介して回転自在にトランスミッションケース7のケース4に軸支され、かつニードルベアリング82bを介してフロントドライブ軸51に回転自在にトランスファドライブギヤ82が軸支され、リヤドライブ軸52のトランスファドリブンギヤ52aが動力伝達可能に噛合している。
【0050】
ダブルピニオン式プラネタリギヤ55とトランスファドライブギヤ82との間にはダブルピニオン式プラネタリギヤ55のキャリヤ60からの出力をトランスファドライブギヤ82に選択的に動力伝達する第3の摩擦係合要素となる第3の多板クラッチ84が設けられる。
【0051】
第3の多板クラッチ84は、クラッチドラム85がトランスファドライブギヤ82にスプライン嵌合し、クラッチハブ86がダブルピニオン式プラネタリギヤ55のキャリヤ60に結合する。こうして第3の多板クラッチ84はキャリヤ60とトランスファドライブギヤ82との間にバイパスして動力伝達可能に介設される。そして油圧室87の油圧でピストン88を介してクラッチドラム85内に固定したスナップリング89dに当接するリテーニングプレート89c及びドリブンプレート89bとクラッチハブ86との間のドライブプレート89aを押圧して動力伝達するよう構成される。ピストン88の油圧室87と反対側にはリテーナ90により油圧室87に発生する遠心油圧を相殺するバランス油圧室91が設けられ、ピストン88にはリターンスプリング92の圧力が付勢される。
【0052】
フロントドライブ軸51の端部とトランスファドライブギヤ82との間には、第4の摩擦係合要素となる第4の多板クラッチ93が動力伝達可能に介設される。
【0053】
第4の多板クラッチ93はクラッチドラム94がフロントドライブ軸51のスプライン51bにスプライン結合し、クラッチハブ95がトランスファドライブギヤ82に結合してフロントドライブ軸51とトランスファドライブギヤ82との間に動力伝達可能に介設される。そして油圧室96の油圧でピストン97を介してクラッチドラム94内に固定したスナップリング98dに当接するリテーニングプレート98c及びドリブンプレート98bとクラッチハブ95との間のドライブプレート98aを押圧して動力伝達するよう構成され、かつリテーナ99により油圧室96による遠心油圧を相殺するバランス油圧室100が設けられ、ピストン97にはリターンスプリング101の圧力が付勢される。
【0054】
トランスミッションケース7のケース4とダブルピニオン式プラネタリギヤ55のリングギヤ57との間には選択的にトランスミッションケース7に係止してリングギヤ57を固定するための第5の摩擦係合要素となる第5の多板クラッチ102が配設される。
【0055】
第5の多板クラッチ102は、油圧室103の油圧でピストン104を介してケース4内に固定したスナップリング105dに当接するリテーニングプレート105c及びドリブンレート105bとリングギヤ57に設けられたクラッチハブ70との間のドライブプレート105aを押圧してリングギヤ57をトランスミッションケース7に係止固定するよう構成され、かつピストン104にはリターンスプリング106の押圧力が付勢される。
【0056】
トルクコンバータケース1の後端に設けられるエクステンションケース6内にはリテーナ110によってエクステンションケース6に支持され、かつスペーサ111を介して所定寸法離間する一対のローラベアリング112によって出力軸113が軸支されている。
【0057】
出力軸113の先端には前記リヤドライブギヤ52に設けられたベベルギヤ52aと噛み合うベベルギヤ113aが設けられ、他端は自在継手、プロペラ軸116等を介してリヤディファレンシャル装置117に動力伝達可能に構成される。
【0058】
トランスミッションケース7の下部に設けられるオイルパン内には、オイルポンプ8からの油圧を車速センサ9a、スロットルセンサ9b、シフトスイッチ9c、前輪回転数センサ9d、後輪回転数センサ9e、舵角センサ9f等からの信号に基づく油圧制御回路9によって制御され、上記入力切換手段67、第3、第4、第5の多板クラッチ84、93、102の各油圧室71、80、87、96、103及び無段変速機30に選択的に切換供給するためのコントロールバルブが設けられている。
【0059】
次にこのように構成された4輪駆動車用駆動装置の作用を図5乃至図9に示す概略説明図及び図10に示す各走行レンジにおける第1、第2、第3、第4、第5の各多板クラッチ68、78、84、93、102の連結状態を示す摩擦係合要素作動説明図に従って説明する。この摩擦係合要素作動説明図において◯印は、対応する多板クラッチが係合或いは作動していることを示し、(◯)は後述する必要に応じて係合或いは作動していることを示している。
【0060】
先ずエンジン10の動力は、クランク軸11からトルクコンバータ20を介して無段変速機30のプライマリ軸31に入力する。そしてプライマリ軸31、プライマリプーリ33、駆動ベルト35及びセカンダリプーリ34により無段階に変速してセカンダリ軸32に出力する。セカンダリ軸32からの変速出力は、ドライブギヤ38、カウンタシャフト39、ドリブンギヤ54によって減速されて伝動軸53、クラッチドラム69を介して第1の多板クラッチ68及び第2の多板クラッチ78へ入力される。ここでニュートラル(N)レンジ、パーキング(P)レンジでは第1及び第2の多板クラッチ68、78は解放されて動力伝達遮断状態となり、これ以降の動力伝達はしなくなる。
【0061】
前進段となるドライブ(D)レンジでは、第1の多板クラッチ68及び第3の多板クラッチ84が係合し、図5に動力伝達状態を太線で示すようになる。すなわち油圧室71へコントロールバルブから油圧が供給され、ピストン72を介してクラッチドラム69内に固定したスナップリング73dに当接するリテーニングプレート73c、ドリブンプレート73b及びドライブプレート73aを押圧し、係合した第1の多板クラッチ68により伝動軸53からダブルピニオン式プラタリギヤ55のリングギヤ57に動力伝達するとともに、油圧室87へ供給される油圧によりピストン88を介して第3の多板クラッチ84のスナップリング89dにリテーニングプレート89c、ドリブンプレート89b及びドライブプレート89aを押圧して係合する第3の多板クラッチ84によりダブルピニオン式プラネタリギヤ55のキャリヤ60とトランスファドライブギヤ82とを動力伝達可能に連結する。
【0062】
従って、ダブルピニオン式プラネタリギヤ55は図6に示すように入力側のリングギヤ57が第1のピニオン58に噛み合い、第1のピニオン58に噛み合う第2のピニオン59がサンギヤ56に噛み合いサンギヤ56及びキャリヤ60をリングギヤ57と同一方向に回転させてサンギヤ56とキャリヤ60とに所定の配分比でトルクが伝達しながら差動回転するように構成され、サンギヤ56とスプライン結合するフロントドライブ軸51及びキャリヤ60に動力伝達可能に結合するトランスファドライブギヤ82とをリングギヤ57と同一方向に回転せしめ、トランスファドライブギヤ82に噛み合うトランスファドリブンギヤ52aに出力してリヤドライブ軸52をリングギヤ57と逆方向に回転駆動する。そしてトルク伝達時に第1及び第2のピニオン58、59の自転と公転とによりサンギヤ56とキャリヤ60との回転差を吸収する所謂センタディファレンシャル装置として機能する。
【0063】
ここで図6の略図を用いてダブルピニオン式プラネタリギヤ55のトルク配分について説明する。
【0064】
リングギヤ57の入力トルクをTi、サンギヤ56によるフロント側トルクをTF、キャリヤ60によるリヤ側トルクをTR、サンギヤ56の歯数をZS、リングギヤ57の歯数をZRとすると、
Ti=TF+TR
TF:TR=ZS:(ZR−ZS)
が成立する。このことからサンギヤ56の歯数ZSとリングギヤ57の歯数ZRとを適切に設定することでフロント側トルクTF及びリヤ側トルクTRの基準トルク配分を自由に設定し得ることがわかる。
【0065】
ここでZS=37、ZR=82にすると、
TF:TR=37:(82−37)
になる。従って前後輪トルク配分率は
TF:TR≒45:55
になり、前輪に略45%、後輪に略55%各々配分され充分に後輪偏重の基準トルク配分に設定し得る。
【0066】
一方第4の多板クラッチ93は油圧室96の油圧でピストン97を介してスナップリング98d、リテーニングプレート98c、ドリブンプレート98b及びドライブプレート98aを押圧してクラッチトルクTcを生じるように構成され、油圧制御回路9によって制御されるコントロールバルブからの油圧によってクラッチトルクTcを可変制御する。
【0067】
ここで、前輪回転数センサ9d及び後輪回転数センサ9eにより検出された前輪回転数NF、後輪回転数NRは、油圧制御回路9に入力されるが滑り易い路面走行時にはTF<TRの後輪偏重の基準トルク配分で常に後輪が先にスリップすることから、スリップ率S=NF/NR(S>O)に算出される。このスリップ率Sと舵角センサ9fから油圧制御回路9に入力される舵角ψとは制御回路9の図7に示すマップからクラッチ圧Pcを検索する。ここでS≧1のノンスリップではクラッチ圧Pcは低い値に設定されてあり、S<1のスリップ状態でスリップ率の減少に応じてクラッチ圧Pcを増大し、スリップ率Sが設定値S1 以下になるとPmax に定める。このクラッチ圧Pcにライン圧が調圧され第4の多板ラッチ94のクラッチトルクTcを可変制御する。
【0068】
従って第4の多板クラッチ93によってサンギヤ56からフロントドライブ軸51、トランスファドライブギヤ82を介してサンギヤ56に至るバイパス系115が各別に構成される。このバイパス系115では、後輪がスリップすると、トランスファユニット50内で後輪回転数NR>リングギヤ57の回転数>前輪回転数NFの差動機能が成立し、クラッチトルクTcに応じてフロントドライブ軸51は、トランスファドライブギヤ82から第4の多板クラッチ93を介しフロントドライブ軸51にトルクがTcだけ増加して伝達し、更にトランスファドライブギヤ82噛み合うトランスファドリブンギヤ52aには前輪に流れたクラッチトルクTc分を減じたトルクが入力してリヤドライブ軸52にもトルクが伝達するものであり、この結果、前後輪トルクTF、TRは以下のようになる。
【0069】
TF=0.45Ti+Tc
TR=0.55Ti−Tc
従ってノンスリップ状態では、クラッチトルクTcが零のためTF:TR=45:55の後輪偏重にトルク配分され、後輪スリップ発生時にクラッチトルクTcが生じると、このクラッチトルクTcに応じてクラッチトルクTcが大きい程バイパス系115を経由して入力トルクTiが前輪側に流れ、図7に示すようTF:TR=TF1 :TR1 に変化して前輪トルクが積極的に増大制御され、後輪トルクは減じてスリップを生じなくなり走破性も良好になる。そして上述のスリップSが設定値以下になると、第4の多板クラッチ93の油圧と共に差動制限トルクが最大になってサンギヤ56とキャリヤ60とを直結する。このためトランスファユニット50はディファレンシャルロックされ、前後輪の軸重配分に相当したトルク配分の直結式4輪駆動走行になり走破性が最大に発揮される。
【0070】
一方前輪がスリップすると、トランスファユニット50内で後輪回転数NR<リングギヤ57の回転数<前輪回転数NFの差動機能が成立し、クラッチトルクTcに応じてフロントドライブ軸51からトランスファドライブギヤ82にトルクが伝達し、かつフロントドライブ軸51から前輪には後輪に流れたクラッチトルクTc分を減じたトルクが伝達するものであり、この結果前後輪トルクTF、TRは以下のようになる。
【0071】
TF=0.45Ti−Tc
TR=0.55Ti+Tc
従ってノンスリップ状態では、クラッチトルクTcが零のためTF:TR=45:55の後輪偏重にトルク配分され、前輪スリップ発生時にクラッチトルクTcが生じると、このクラッチトルクTcに応じて入力トルクTiが後輪側に流れて後輪トルクが積極的に増大制御され、前輪トルクは減じてスリップを生じなくなり走破性も良好になる。またスリップ率が設定値以下になると、第4の多板クラッチ93の油圧と共に差動制限トルクが最大になってサンギヤ56とキャリヤ60が直結するため、前後輪の軸重配分に相当したトルク配分の直結式4輪駆動走行になり走破性が充分に発揮される。こうしてスリップ状態に応じ、それを回避すべく幅広く前後輪へのトルクが制御される。
【0072】
また、上述のスリップの発生に伴うトルク配分制御において旋回する場合にはその舵角ψにより第4の多板クラッチ93の差動制限トルクが減少補正される。このためトランスファユニット50の差動制限は減じて回転数差を充分に吸収することが可能になり、タイトコーナーブレーキング現象が回避され、操縦性が良好に確保される。
【0073】
後退段となるリバース(R)レンジでは、第1の多板クラッチ68及び第3の多板クラッチ84が解放され、第2の多板クラッチ78、第4の多板クラッチ93及び第5の多板クラッチ102が係合して図8に示す動力伝達状態を太線で示すようになる。すなわち油圧室80へコントロールバルブから油圧を供給してピストン74を介してスナップリング81d、リテーニングプレート81c、ドリブンプレート81b及びドライブプレート81aを押圧して第2の多板クラッチ78を係合して伝動軸53からダブルピニオン式プラネタリギヤ55のキャリヤ60に動力伝達するとともに、油圧室103へ供給する油圧によりピストン104を介してスナップリング105d、リテーニングプレート105c、ドライブプレート105a、ドリブンプレート105bを押圧して係合する第5の多板クラッチ102によりリングギヤ57をトランスミッションケース7に係止固定する。そしてピストン97を介してスナップリング98d、リテーニングプレート98c、ドリブンプレート98b及びドライブプレート98aを押圧して第4の多板クラッチ93によりフロントドライブ軸51からトランスファドライブギヤ82に動力伝達可能にする。
【0074】
従って、ダブルピニオン式プラネタリギヤ55は図9に示すように入力側のキャリヤ60の回転により互に噛合した第1及び第2のピニオン58、59は互に逆回転しつつリングギヤ57に沿って回転してサンギヤ56をキャリヤ60と逆方向に回転してフロントドライブ軸51を入力側に対して逆方向に回転せしめ、かつフロントドライブ軸51は第4の多板クラッチ93を介してトランスファドライブギヤ82に動力伝達し、リヤドライブ軸52をフロントドライブ軸51と逆方向に回転駆動する。
【0075】
従って、伝動軸53からの入力は、ダブルピニオン式プラネタリギヤ55のリングギヤ57を第5の多板クラッチ102によってトランスミッションケース7に係止することによりドライブ(D)レンジ状態と逆方向にフロントドライブ軸51及びリヤドライブ軸52に出力され、このダブルピニオン式プラネタリギヤ55は前後進切換機能を有する。
【0076】
この場合、キャリヤ60の入力に対するフロントドライブ軸51及びリヤドライブ52に出力される変速比は次式で設定される。
【0077】
変速比=[ZS+(−ZR)]/ZS
ここで前記同様ZS=37、ZR=82にすると、
変速比=[37+(−82)]/37=−1.216
となり、リバース(R)レンジでの減速比が適切に確保される。
【0078】
一方、キャリヤ60に入力するトルクTiはクラッチトルクTcに応じてトランスファドライブギヤ82に伝達し、前輪には後輪に伝達したクラッチトルクTc分を減じたトルクが入力され、この結果前後輪トルクTF、TRは以下のようになる。
【0079】
Ti=TF+TR
TF=Ti−Tc
TR=Tc
従って後輪スリップ発生時にクラッチトルクTcを減じることにより入力トルクTiを前輪側に流し、前輪トルクを積極的に増大制御し、後輪トルクを減じてスリップを生じなくして走破性を良好にし、かつ前輪スリップ時にはクラッチトルクTcを増大させることにより入力トルクTiを後輪側に流し、後輪トルクを積極的に増大制御して前輪トルクを減じてスリップを生じなくして走破性を良好にする。またスリップ率が設定値以下になると、第4の多板クラッチ93の油圧と共に差動制限トルクTcを最大にしてフロントドライブ軸51とトランスファドライブギヤ82を直結にして前後輪の軸重配分に相当したトルク配分の直結式4輪駆動走行にして走破性が最大に発揮される。更に旋回する場合には、その舵角ψにより第4の多板クラッチ93の差動制限トルクが減少され、回転数差を充分に吸収することが可能になり、タイトコーナーブレーキング現象が回避され、操縦性が良好になる。
【0080】
従って、以上説明した本実施の形態では、ベルト式無段変速機30の出力側に伝動構成したフロントディファレンシャル装置40或いはリヤディファレンシャル装置117に各々動力伝達するフロントドライブ軸51及びリヤドライブ軸52を横置きエンジン10のクランク軸11に対して平行配置し、フロントドライブ軸51にサンギヤ56が結合するダブルピニオン式プラネタリギヤ55を設け、無段変速機30からの出力をリングギヤ57に伝達する第1の多板クラッチ68、キャリヤ60に伝達する第2の多板クラッチ78、キャリヤ60とトランスファドライブギヤ82とを動力伝達可能に連結する第3の多板クラッチ84、フロントドライブ軸51とリヤドライブ軸52とを動力伝達可能に連結する第4の多板クラッチ93及びリングギヤ57を係止する第5の多板クラッチ102を設け、これら第1、第2、第3、第4及び第5の各多板クラッチ68、78、84、93、102を選択的に制御することにより前進段であるドライブ(D)レンジ及び後退段であるリバース(R)レンジではフロントドライブ軸51及びリヤドライブ軸52へ適切なトルク配分及び差動制限を可能にするセンターディファレンシャル装置として機能して良好な走行性が得られ、かつドライブ(D)レンジ、リバース(R)レンジへの切換時の前後進切換装置として機能する。
【0081】
よって従来センターディファレンシャル装置用及び前後進切換装置用として各単独機能する各々専用のダブルピニオン式プラネタリギヤを要したが、単一のダブルピニオン式プラネタリギヤによって両機能が達成され、高性能を維持しつつ駆動装置の構成及び制御の簡素化及び軽量化が可能になり、コスト低減及びコンパクト化、特に車幅方向の全長が短縮され、このコンパクト化に伴い、車載状態においてエンジンルーム側壁と駆動装置とが充分に離間し、エンジンルーム側壁と駆動装置との間の増大に伴って側面衝突時のクラッシュストロークが確保され、かつトランスミッション脱着時の作業空間として充分に有効活用でき車両設計の自由度が増大する。
【0082】
更にトルクコンバータ20に代えて発進クラッチとして電磁クラッチや湿式クラッチを用いることも可能であり、この場合ニュートラル(N)レンジ、パーキング(P)レンジにおいてベルト式無段変速機30のプライマリ軸31への入力を遮断して無段変速機30以降の動力伝達はなくなる。
【0083】
更に本実施の形態における4輪駆動装置にあっては、図11に要部を示すように第1、第2、第4の各多板クラッチ68、78、93及びトランスファドライブギヤ82、リヤドライブ軸52等の後輪駆動部を廃止し、変更した連結部材120により伝動軸53からダブルピニオン式プラネタリギヤ55のキャリヤ60に直接入力し、かつ第3の多板クラッチ84のクラッチドラム85とフロントドライブ軸51のスプライン51dとを連結するとともにトルクコンバータケース1、ケース4を2輪駆動車用のトルクコンバータケース121、エンドケース122に変更することにより2輪駆動車用駆動装置に容易に変更し得る。
【0084】
この2輪駆動車用駆動装置への変更にあたり、図3と対応する部分に同一符号を付けることで詳細な説明は省略するが、上記した連結部材120、トルクコンバータケース121、エンドケース122以外の多くの部品は4輪駆動車用駆動装置との共用化が得られる。
【0085】
このように形成された2輪駆動車用駆動装置は、前進段となるドライブ(D)レンジにおいて第3の多板クラッチ84が係合し、図12に動力伝達状態を太線で示すようになる。すなわち油圧室87へ油圧を供給し、ピストン88を介してスナップリング89d、リテーニングクラッチ89c、ドリブンプレート89b及びドライブプレート89aを押圧して第3の多板クラッチ84を係合することにより、伝動軸53からの入力は連結部材120を経由してダブルピニオン式プラネタリギヤ55のキャリヤ60、第3の多板クラッチ84を介してフロントドライブ軸51へ動力伝達され、伝動軸53と同方向に回転駆動する。
【0086】
一方後退段となるリバース(R)レンジでは第3の多板クラッチ84の係合を解除し、油圧室103に油圧を供給して第5の多板クラッチ102によりダブルピニオン式プラネタリギヤ55のリングギヤ57をトランスミッションケース7に係止することにより図13に動力伝達状態を太線で示すようにする。これにより伝動軸53から連結部材120によってダブルピニオン式プラネタリギヤ55のキャリヤ60への入力によるキャリヤ60の回転により互に噛合した第1及び第2のピニオン58、59は互に逆回転しつつリングギヤ57に沿って回転してサンギヤ56をキャリヤ60と逆方向に回転してフロントドライブ軸51を入力側に対して逆方向に回転駆動する。
【0087】
この場合キャリヤ60の入力に対するフロントドライブ軸51に出力される変速比は前記同様次式で設定される。
【0088】
変速比=[ZS+(−ZR)]/ZS
ここでZS=37、ZR=82であることから
変速比=[37+(−82)]/37=−1.216
となりリバース(R)レンジでの減速比が適切に確保される。
【0089】
従ってダブルピニオン式プラネタリギヤ55及び第3及び第5の多板クラッチ102を主要部とする前後進切換装置が構成される。
【0090】
【発明の効果】
以上説明した本発明の4輪駆動車用駆動装置によれば、横置きエンジンのクランク軸に対して一方及び他方のディファレンシャル装置に各々動力伝達する第1及び第2のドライブ軸を平行配置し、エンジン側からの入力を単一のダブルピニオン式プラネタリギヤにより選択的に動力配分及び前後進切換した第1及び第2のドライブ軸に動力伝達することから単一のダブルピニオン式プラネタリギヤによってセンターディファレンシャル装置及び前後進切換装置としての両機能が達成され、高性能を維持しつつ駆動装置の構成及び制御の簡素化、軽量化、コンパクト化が得られ、コンパクト化に伴い車載状態において駆動装置とエンジンルーム側壁とが充分に離間され側面衝突時のクラッシュストローク及び組立て、整備等の作業空間を確保しつつ車体設計の自由度が得られ、従来のエンジンルームにも搭載可能である等本発明特有の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による4輪駆動車用駆動装置の一実施の形態の概要を説明する駆動系を示す図である。
【図2】同じく、フロントディファレンシャル装置とベルト式無段変速機の配置状態を説明する要部斜視図である。
【図3】同じく、図2の要部拡大断面図である。
【図4】同じく、図2における矢視A方向から見た要部配置説明図である。
【図5】同じく、作用を示す概略説明図である。
【図6】同じく、作用を示す概略説明図である。
【図7】同じく、作用を示す概略説明図である。
【図8】同じく、作用を示す概略説明図である。
【図9】同じく、作用を示す概略説明図である。
【図10】同じく、作用を示す摩擦係合要素作動説明図である。
【図11】同じく、本発明の4輪駆動車用駆動装置を2輪駆動車用駆動装置への転用を説明する図である。
【図12】図11に示す2輪駆動車用駆動装置の作用を示す概略説明図である。
【図13】同じく、2輪駆動車用駆動装置の作用を示す概略説明図である。
【符号の説明】
10 エンジン
11 クランク軸
20 トルクコンバータ
30 ベルト式無段変速機
31 プライマリ軸
32 セカンダリ軸
33 プライマリプーリ
34 セカンダリプーリ
35 駆動ベルト
40 フロントディファレンシャル装置
51 フロントドライブ軸
52 リヤドライブ軸
55 ダブルピニオン式プラネタリギヤ
56 サンギヤ
57 リングギヤ
58 第1のピニオン
59 第2のピニオン
60 キャリヤ
67 入力切換手段
68 第1の多板クラッチ
78 第2の多板クラッチ
84 第3の多板クラッチ
93 第4の多板クラッチ
102 第5の多板クラッチ
117 リヤディファレンシャル装置

Claims (7)

  1. 横置きエンジンと、
    このエンジンからの出力が入力される変速機と、
    前記エンジンのクランク軸に対して各々平行配置されて一方のディファレンシャル装置及び他方のディファレンシャル装置に各々動力伝達する第1及び第2のドライブ軸と、
    第1のドライブ軸と同軸上に配置されたダブルピニオン式プラネタリギヤと、
    このプラネタリギヤのリングギヤ及びキャリヤに変速機からの出力を選択的に動力伝達する入力切換手段と、
    前記プラネタリギヤのサンギヤからの出力を第1のドライブ軸に動力伝達する手段と、
    前記プラネタリギヤのキャリヤからの出力を第2のドライブ軸に選択的に動力伝達する第3の摩擦係合要素と、
    第1のドライブ軸と第2のドライブ軸との間に動力伝達可能に介設される第4の摩擦係合要素と、
    プラネタリギヤのリングギヤ回転を選択的に係止する第5の摩擦係合要素とを有し、
    上記入力切換手段及び各摩擦係合要素を選択的に作動せしめて前記変速機からの入力を前記プラネタリギヤを介して所定の比率で動力配分及び前後進切換して第1及び第2のドライブ軸に動力伝達することを特徴とする4輪駆動車用駆動装置。
  2. 前進段は、前記入力切換手段が変速機からの出力をリングギヤへ動力伝達状態であって、第5の摩擦係合要素が解放したリングギヤ回転許容状態でありダブルピニオン式プラネタリギヤがキャリヤとサンギヤに所定の比率で動力配分するセンタディファレンシャル装置として機能し、第3の摩擦係合要素が動力伝達状態にあり、かつ第4の摩擦係合要素を動力伝達状態にしてキャリヤとサンギヤとの間の差動制限を行う請求項に記載の4輪駆動車用駆動装置。
  3. 前進段において、第4の摩擦係合要素が走行状態に基づいて伝達トルクを可変制御して動力伝達する請求項に記載の4輪駆動車用駆動装置。
  4. 後退段は、前記入力切換手段が変速機からの出力をキャリヤへ動力伝達状態であって、第5の摩擦係合要素が締結してリングギヤ回転係止状態であり第3の摩擦係合要素が解放状態で、ダブルピニオン式プラネタリギヤが変速動力をサンギヤに出力し、第4の摩擦係合要素が動力伝達状態である請求項1〜3のいずれか1つに記載の4輪駆動車用駆動装置。
  5. 後退段において、第4の摩擦係合要素が走行状態に基づいて伝達トルクを可変制御して動力伝達する請求項に記載の4輪駆動車用駆動装置。
  6. 入力切換手段が、前進段において係合して変速機からの出力をリングギヤへ動力伝達する第1の摩擦係合要素及び後退段において係合して変速機からの出力をキャリヤへ動力伝達する第2の摩擦係合要素を有する請求項1〜5のいずれか1つに記載の4輪駆動車用駆動装置。
  7. 変速機がプライマリ軸と、このプライマリ軸と平行配置されたセカンダリ軸と、プライマリ軸及びセカンダリ軸に各々設けられたプライマリプーリ及びセカンダリプーリと、プライマリプーリとセカンダリプーリとの間に巻き掛けられた駆動ベルトとを有し、駆動ベルトのプライマリプーリとセカンダリプーリとに対する巻付径の比率を変えて無段階に変速するベルト式無段変速機である請求項1〜6のいずれか1つに記載の4輪駆動車用駆動装置。
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