JP3641712B2 - 手動式電動車椅子の人力検出装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、左右の車輪に加えられる人力の大きさに応じた補助動力を各車輪に与えてこれを回転駆動する手動式電動車椅子の人力検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
手動車椅子と電動車椅子の中間的な存在として手動式電動車椅子が従来より提案されている。この手動式電動車椅子は、左右の車輪に間欠的に加えられる人力を検出し、検出された人力に応じた補助動力を各車輪に加えることによって歩行の不自由な乗員の肉体的な負担を軽減するものであって、これによれば乗員は手動車椅子の感覚で操作することができる。
【0003】
ところで、斯かる手動式電動車椅子にあっては、例えばハンドリムを車輪に対して相対回転可能に弾性支持し、該ハンドリムと車輪との相対回転量をワイヤーを介してポテンショメータ等の検知手段に伝達してこれを検知することによって、ハンドリムに加えられる人力の大きさと方向を検出していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の手動式電動車椅子にあっては、ハンドリムと車輪との相対回転量を検知するポテンショメータ等の検知手段を固定側に設け、ハンドリムと車輪との相対回転量をワイヤーを介して検知していたため、ハンドリムに加えられる横力も同時に検出されてしまい、乗員がハンドリムに加える周方向の力(車輪を回転させようとする力)のみを正確に検出することができなかった。
【0005】
更に、人力の検出にワイヤーを用いると、ワイヤーの伸び等のために正確な検出ができないばかりか、検知手段の調整が面倒であるという問題もあった。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、入力部材に加えられる周方向の人力(車輪を回転させようとする力)のみを固定側に設けられた検知手段によって高精度に検出することができるとともに、調整作業が容易である手動式電動車椅子の人力検出装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、入力部材を車輪に対して相対回転可能に弾性支持し、入力部材に入力される人力を該入力部材と車輪との相対回転量によって検出し、検出された人力に応じた補助動力を車輪に加えてこれを回転駆動する手動式電動車椅子に設けられる人力検出装置を、前記入力部材又は車輪と共に回転する変位検出部材を軸方向に移動自在に設けるとともに、該変位検出部材とこれと共に回転する入力部材又は車輪とを径方向に長孔係合せしめ、前記入力部材と車輪との相対回転をカム機構によって前記変位検出部材の軸方向変位に変換し、該変位検出部材の軸方向変位を固定側に設けられた検知手段に伝達するよう構成したことを特徴とする。
【0008】
従って、請求項1記載の発明によれば、入力部材に加えられる人力の大きさに比例する入力部材と車輪との相対回転はカム機構によって変位検出部材の軸方向変位に変換されて固定側に設けられたリニアポテンショメータ等の検知手段に伝達されるため、回転側と固定側との間で信号伝達が簡単、且つ、確実になされ、人力が高精度に検出される。又、変位検出部材とこれと共に回転する入力部材又は車輪とが径方向に長孔係合されているため、変位検出部材の軸方向変位には入力部材に加えられる横方向の力等の外乱の影響分が含まれず、入力部材に加えられる周方向の人力(車輪を回転させようとする力)のみを高精度に検出することができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記変位検出部材とレバーとの間にスラストベアリングを介設したことを特徴とする。
【0010】
従って、請求項2記載の発明によれば、入力部材又は車輪と共に回転する変位検出部材と静止側に設けられたレバーとの間にスラストベアリングが介設されるため、変位検出部材の回転による摩擦損失及び両部材の摩耗が抑えられるとともに、変位検出部材の軸方向変位のみがレバーに正確に伝達される。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記スラストベアリングと固定側との間に圧縮スプリングを介設したことを特徴とする。
【0012】
従って、請求項3記載の発明によれば、スラストベアリングと変位検出部材が圧縮スプリングによって軸方向に付勢されるため、これらが軸方向に隙間なく配設されて入力部材と車輪との相対回転に追従して軸方向変位を正確に伝達する。尚、圧縮スプリングはスラストベアリングや変位検出部材が入力部材と車輪との相対回転に追従するよう押さえるだけで十分であるため、弱いスプリングで良く、変位検出部材の回転による摩擦損失や部材の摩耗が小さく抑えられる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の発明において、前記レバーの一端を固定側に回動自在に支持し、同レバーの中間部を前記スラストベアリングに当接せしめ、他端部を前記検知手段に当接せしめたことを特徴とする。
【0014】
従って、請求項4記載の発明によれば、レバーの変位量の検知手段への出力点(レバーの検知手段への当接点)とレバーの回動支点との距離は、変位検出部材の軸方向変位のレバーへの入力点(レバーの中間部)とレバーの回動支点との距離よりも長いため、変位検出部材の軸方向変位はレバーによって増幅されて検知手段に伝達され、入力部材に加えられる人力が高精度、且つ、高感度に検出される。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記レバーの回動支点の軸方向位置を調整可能としたことを特徴とする。
【0016】
従って、請求項5記載の発明によれば、レバーの回動支点の軸方向位置を調整可能としたため、当該人力検出装置組付後の検知手段の零点調整を簡単に行うことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明に係る人力検出装置を備える手動式電動車椅子の側面図、図2は同車椅子の平面図、図3は同車椅子の背面図、図4は同車椅子の車輪のハブ部分のカバーを取り外した状態を示す正面図、図5は図4のA−A線断面図、図6は本発明に係る人力検出装置を図5の矢印B方向から見た図、図7は同人力検出装置の破断部分側面図、図8は図7の矢視C方向の図、図9は手動式電動車椅子の車輪のハブ部分の背面図、図10は図9のD−D線断面図、図11は図10のE−E線に沿う一部破断面図、図12は手動式電動車椅子の補助動力系の電気結線図である。
【0019】
本実施の形態に係る手動式電動車椅子1は、既存の折り畳み式手動車椅子の車体の左右に駆動輪である車輪2を脱着自在に取り付けて構成され、これのパイプ枠状のフレーム3の前後部は左右一対のキャスタ4と車輪2によって移動自在に支持されている。
【0020】
又、上記フレーム3の中央部には、乗員が着座すべき布製のシート5(図2及び図3参照)が張設されている。尚、フレーム3は図3に示すように前後一対のクロス部材3aを有しており、X字状を成す2本のクロス部材3aはその交点を軸6によって枢着されている。
【0021】
更に、フレーム3の後部には左右一対のバックパイプ3bが立設されており、各バックパイプ3bの上端部は後方に折曲され、その折曲部には介助者用のグリップ7が取り付けられている。
【0022】
又、フレーム3の上記バックパイプ3bの中間高さ位置から車体前方に水平に延びる左右一対の肘パイプ3cはその前端部が略直角に折り曲げられて垂直下方に延び、その下端部に前記キャスタ4が回転自在に支持されているが、右側(シート5に着座した乗員にとって右側)の肘パイプ3cの直角に折り曲げられた部分(垂直部分の上部)にはメインスイッチ8が取り付けられている。そして、前記肘パイプ3cの下方に配された左右一対のシートパイプ3dの前側部分は車体前方に向かって斜め下方に延出しており、その延出端(前端部)には左右一対のステップ9が取り付けられている。
【0023】
ところで、前記左右一対の車輪2の各々は、図5に示すように、フレーム3に溶接されたボス部10に支持された車軸11にボールベアリング12を介して回転自在に支承されており、各車輪2の外側には、乗員が手でこれを回すべきリング状のハンドリム13が設けられている。このハンドリム13は、車輪2のハブ2aに形成されたボス部2a−1にブッシュ14を介して回転自在に支持された円板状のディスク15に3本のスポーク16を介してボルト17によって取り付けられており、従って、該ハンドリム13は車輪2に対して独立に回転し得る。尚、本実施例においては、図5に示すように、車輪2のハブ2aとディスク15との間には弾性体から成るシールリング18が介設されており、ディスク15はこれにボルト19にて結着されたカバー20によって覆われている。尚、シールリング18はシール機能と共にディスク15の慣性に伴う周方向の振動を抑制するフリクションダンパー機能を果たす。
【0024】
而して、上記ハンドリム13は、その全周の3箇所が図4に示す構造によって車輪2に対して弾性的に連結されている。
【0025】
即ち、図4に示すように、車輪2のハブ2aに形成された各一対のストッパ21で挟まれる径方向外方に向かって広がる空間には扇形のガイド溝2c(図11参照)が形成されており、各ガイド溝2cにはスプリング22が介装されており、各スプリング22はハブ2aに固定された保持部材23によってその脱落が防がれている。
【0026】
ところで、上記各スプリング22はその両端がスプリング受け24によって受けられており、前記ハンドリム13に人力が加わらない中立状態においては、図4に示すように、スプリング受け24は前記一対のストッパ21に当接している。尚、各ストッパ21の中央部分には溝21aが貫設されている。
【0027】
一方、図4に示すように、前記ディスク15の全周3箇所にはブラケット25がボルト26によって位置調整可能に取り付けられており、各ブラケット25の両端部には一対のピン27が内方に向かって突設されており、各一対のピン27は、ハンドリム13に人力が加わらない中立状態においては、図4に示すように前記スプリング受け24の端面に当接している。尚、各ブラケット25の両端部には径方向に長い長孔25aが形成されており、各長孔25aには前記ボルト26が挿通されている。従って、ボルト26を緩めれば、ブラケット25を径方向に移動させてその位置を調整することができ、スプリング受け24の端面(ピン27が当接すべき端面)は図示のように傾斜している(ガイド溝2cの両端面が傾斜している)ため、中立状態においてブラケット25を前述のように径方向に移動させることによってスプリング受け24に対するピン27の位置を調整することができ、図4に示すように中立状態において一対のピン27をスプリング受け24に当接せしめることができる。
【0028】
而して、本実施例においては、ハンドリム13と車輪2との相対回転は、図5及び図7に示すカム機構28によって変位検出部材であるスライダ29の軸方向変位に変換され、該スライダ29の軸方向変位はレバー30によって増幅されて固定側に設けられたリニアポテンショメータ31に伝達される。
【0029】
図5及び図7に示すように、各車輪2のハブ2aのボス部2a−2の基端部にはカムリング32が嵌着されており、同ボス部2a−2の車幅方向内側の外周上には前記スライダ29が軸方向(車幅方向)に摺動自在に嵌合されている。そして、スライダ29の外面には複数(少なくとも3つ)の突起29aが突設され、該突起29aは前記カムリング32の内面に突設された突起29aと同数のカム33の斜面(カム面)33aに係合しており、これらの突起29aとカム33とで前記カム機構28が構成されている。
【0030】
又、上記スライダ29には径方向外方に向かって延びる2つのアーム29bが一体に形成されており、各アーム29aの先部に結着されたピン34は車幅方向外方に向かって突出している。そして、各ピン34は、図7及び図8に示すように、ハブ2aに形成された大径の円孔2bを貫通して前記ディスク15に形成された径方向に長い長孔15aに係合されている。尚、各ピン34は長孔15aに対して周方向には密に係合しているため、ハンドリム13及びディスク15の回転をそのままスライダ29に伝達して該スライダ29をハブ2aのボス部2a−2を中心として回動せしめる。
【0031】
更に、上記スライダ29の外周にはスラストベアリング35が嵌着されており、該スラストベアリング35と後述の固定プレート41の間には圧縮スプリング36が縮装されている。従って、スラストベアリング35とスライダ29は圧縮スプリング36によって車幅方向外方に常時付勢されており、前記カム機構28においてはスライダ29に突設された突起29がカム33のカム面33aに所定の圧力で係合している。
【0032】
一方、固定プレート41にはリング状の前記レバー30の一端が回動自在に支持されており、同固定プレート41の車軸11を挟んで前記レバー30の支持点の反対側(図5の左方)には検知手段を構成する前記リニアポテンショメータ31が固設されている。尚、リニアポテンショメータ31から車幅方向外方に突出するロッド31aは本体内に縮装された不図示のスプリングによって車幅方向外方に常時付勢されている。
【0033】
ところで、図5に示すように、前記レバー30の一端は軸37によって回動自在に支持されており、軸37は固定プレート41に固定された調整ボルト38によってその軸方向位置が調整可能に支持されている。即ち、固定プレート41には調整ボルト38が挿通しており、該調整ボルト38の端部ネジ部には前記軸37が軸方向に移動可能に螺合挿通している。そして、調整ボルト38はロックナット39によって固定プレート41に固定されている。従って、ロックナット39を緩めて調整ボルト38を回せば、該調整ボルト38に螺合する軸37が軸方向に移動するため、該軸37に支持されたレバー30の回動支点の軸方向位置が調整される。
【0034】
而して、上記レバー30の他端部には前記リニアポテンショメータ31のロッド31aが当接しており、同レバー30の中間部の左右には車幅方向外方に向かって湾曲する半円状の突部30aが形成されている。従って、レバー30はロッド31aによって軸37を中心として図5及び図7の反時計方向に付勢されており、その中間部に形成された突部30aは図示のように前記スラストベアリング35に当接している。
【0035】
而して、前記スプリング22、カム機構28、スライダ29、レバー30、リニアポテンショメータ31等は、乗員によってハンドリム13に加えられる人力を検知するための人力検出装置を構成しており、該人力検出装置を構成するスプリング22は前記シールリング18によってシールされた車輪2のハブ2aとディスク15及びカバー20によって囲まれる空間内に収納されている。
【0036】
他方、図5及び図9に示すように、左右一対の車輪2の各ハブ2aの車幅方向内側には円板状の固定プレート41が車軸11に結着されて設けられており、該固定プレート41の車体内側面には制御手段を構成するコントローラ42が取り付けられている。又、固定プレート41の車体側外面には、図6及び図7に示すように、駆動モータ43と車輪側カプラー44が取り付けられている。尚、固定プレート41の少なくとも前記コントローラ42が設置される部位の外面には、図5及び図9に示すように、縦方向の複数の放熱用溝41aが形成されている。
【0037】
ところで、各車輪2のハブ2aの内部には前記固定プレート41で囲まれる空間が形成されるが、該空間はリング状の隔壁45によって室S1とS2とに区画されており、室S1内には前記コントローラ42が収納されている。尚、図10に示すように、隔壁45の一部には開口部45aが形成されている。
【0038】
而して、前記駆動モータ43によって発生する補助動力は動力伝達手段を経て車輪2に伝達されるが、この動力伝達手段の構成を図10及び図11に基づいて以下に説明する。
【0039】
動力伝達手段はプーリ46,47とベルト48及び複数のギヤG1〜G4を含んで構成されるが、前記小径のプーリ46は前記駆動モータ43の出力軸43aの端部に結着され、前記大径のプーリ47は中間軸49の一端に結着されており、両プーリ46,47間に無端状の前記ベルト48が巻装されている。
【0040】
上記中間軸49とこれに平行に配された駆動軸50は、図10に示すように、前記固定プレート41とカバー51にベアリング52,53を介してそれぞれ回転自在に支承されており、中間軸49には前記ギヤG1が一体に形成されており、該ギヤG1は駆動軸50の一端に結着されたギヤG2に噛合している。そして、駆動軸50の他端は前記隔壁45に形成された開口部45a(図10参照)を貫通して室S2内に臨んでおり、その端部に一体に形成された小径の前記ギヤG3はハブ2aの内周に結着された大径のリングギヤG4に噛合している。尚、動力伝達手段を構成する前記プーリ46,47とベルト48及びコントローラ42は潤滑油を嫌うため、隔壁45で仕切られた潤滑油ギヤG1,G2は室S1内に収納され、潤滑油が必要なギヤG3,G4は室S2内に収納されている。
【0041】
而して、以上説明した人力検出装置、コントローラ42、駆動モータ43及び動力伝達手段が補助動力系を構成しているが、この補助動力系は各車輪2のハブ2aの車軸11廻りに径方向及び軸方向に亘って集約的に配置されており、このように補助動力系をハブ2aに配置して成る車輪2は左右が同一構造に構成され、前述のように各車輪2は車体に対して脱着自在に取り付けられている。
【0042】
ここで、車輪2の脱着構造を図5に基づいて説明する。
【0043】
車輪2を回転自在に支承する前記車軸11は中空状に成形されており、その内部には小径のロッド54が挿通されている。そして、該ロッド54の内端部には車軸11の内端面に係合する係止部材55が結着され、同ロッド54の外端部には押圧部材56が結着されており、これら係止部材55と押圧部材56は車軸11内に摺動自在に嵌装されており、これらの径はロッド54のそれよりも大きく設定されている。尚、上記ロッド54と係止部材55及び押圧部材56はスプリング57によって外側方(図5の下方)に常時付勢されている。又、図5において、58はストッパを構成するサークリップである。
【0044】
又、車軸11の内端部(係止部材55が嵌装されている部分)には複数の円孔11aが形成されており、各円孔11aにはボール59が保持されている。尚、前記カバー20の中央部には撓曲自在なゴムキャップ60が被着されており、該ゴムキャップ60内に前記押圧部材56が臨んでいる。
【0045】
一方、フレーム3に溶接された前記ボス部10には円筒状のスリーブ61が挿通しており、該スリーブ61はこれの外周に螺合するナット62によってボス部10に結着されている。
【0046】
而して、各車輪2は車軸11の内端部分を外側方から上記スリーブ61に挿通することによって車体に取り付けられるが、これの取付状態においては、図5に示すようにボール59が係止部材55によって径方向外方に押し出されて車軸11の外周面から突出しており、該ボール59がスリーブ61の内端面に係止されるために車軸11の抜けが阻止され、これによって車輪2が車体に確実に取り付けられる。
【0047】
次に、取付状態にある車輪2を車体から取り外すには、ゴムキャップ60を指で押して押圧部材56とロッド54及び係止部材55をスプリング57の付勢力に抗して一体的に車体内側方に移動させる。すると、係止部材55がボール59の位置から退避して小径のロッド54がボール59の部分に位置するため、ボール59は車軸11の径方向内方に移動して車軸11の外表面から没することができ、そのまま車輪2全体を外側方へ引き出せば車軸11をスリーブ61から抜くことができ、従って、車輪2をワンタッチで容易に車体から取り外すことができる。
【0048】
そして、車輪2を車体に再び取り付けるには、ゴムキャップ60を押さえて押圧部材56とロッド54及び係止部材55を車体内側方へ移動させたまま車軸11をスリーブ61に挿通せしめ、その後にゴムキャップ60から指を離せば良い。すると、ボール59が係止部材55によって径方向外方に押し出されて車軸11の外周面から突出し、該ボール59がスリーブ61の内端面に係止されるために車軸11の抜けが阻止され、これによって車輪2が車体にワンタッチで容易に取り付けられる。
【0049】
尚、図5及び図9に示すように、各車輪2の固定プレート41の外面周縁には車体内側方(即ち、車輪2の脱着方向)に向かってコ字状に開口する回り止め部材63が結着されており、フレーム3には係止部材64が結着されており、前述の要領で車輪2を車体に取り付けると同時に回り止め部材63が係止部材64に嵌合して固定プレート41等の固定側部分の回り止がなされる。
【0050】
ところで、本実施例に係る手動式電動車椅子1にあっては、図1乃至図3に示すように右側の車輪2側にバッテリ65が脱着可能に取り付けられており、車体(フレーム3)側にはワイヤーハーネス66が設置されている。
【0051】
而して、前述のように左右の車輪2は同一構造を有しているため、これらを車体に取り付けると、これらは車体前後方向中心廻りに点対称となる位置関係を保って配置されることとなる。同一構造の左右の車輪2をこのように配置することによって、図3に示すように、左右の車輪2の各内側方に突出する駆動モータ43が上下方向に互いに段差をもって配されることとなり、当該車椅子1を折り畳んだ際に両駆動モータ43が互いに干渉することがなく、この結果、車椅子1をコンパクトに、且つ、容易に折り畳むことができる。又、左右の車輪2を同一構造とすることによって部品を共通化することができるため、量産効果による部品のコストダウンを図ることができる。
【0052】
尚、左右の車輪2を前述の要領で車体に取り付けた後は、各車輪2の固定プレート41に取り付けられた前記カプラー44に車体側に設置された前記ワイヤーハーネス66のカプラー66Aを接続すれば、右側の車輪2に配置された前記バッテリ65から左側の車輪2に設けられた駆動モータ43やコントローラ42等への給電がワイヤーハーネス66を介してなされる。
【0053】
ここで、当該手動式電動車椅子1の電気結線構造を図12に基づいて説明する。
【0054】
図示のように、車体(フレーム3)側に設置された前記ワイヤーハーネス66は制御電源線66a、エラー信号線66b、パワー電源線66c及びアース線66dの計4本のワイヤーを結束して構成されており、これは左右の車輪2に設けられたカプラー44を介して左右の車輪2に設けられたコントローラ42のパワー部42aと制御部42bに接続されている。尚、図12において、8は前記メインスイッチである。
【0055】
而して、前述のようにバッテリ65は右側の車輪2に設けられており、該バッテリ65からは右側の車輪2に設けられたコントローラ42に給電されると同時に、ワイヤーハーネス66を介して左側の車輪2に設けられたコントローラ42にも給電される。そして、各コントローラ42のパワー部42aに供給される電力は駆動モータ43に供給されて該駆動モータ43の駆動に供され、制御部42bに供給される電力はリニアポテンショメータ31に供給されるとともに、ポテンショメータ31からの検出信号はコントローラ42へ伝達される。
【0056】
次に、本手動式電動車椅子1の作用を説明する。
【0057】
乗員が左右一対のハンドリム13を例えば前進方向に回すためにこれに力を加えると、一方のピン27がスプリング受け24を押圧してスプリング22を圧縮し、該スプリング22の反力がストッパ21を介してハブ2aに伝達されるため、車輪2に人力が伝達される。
【0058】
ところで、ハンドリム13の回転はディスク15及び該ディスク15の長孔15aに係合するピン34を介してスライダ29に伝達され、ハンドリム13とディスク15及びスライダ29がスプリング22の圧縮変形量に見合う角度だけ車輪2(ハブ2a)に対して一体的に相対回転し、これらの相対回転はカム機構28によってスライダ29及びスラストベアリング35の軸方向変位に変換される。即ち、スライダ29がハンドリム13及びディスク15と共に上述のように車輪2に対して相対回転すると、カム機構28において突起29aがカム33の斜めのカム面33aに沿って軸方向に移動するため、該突起29aを備えるスライダ29とこれに保持されたスラストベアリング35がハブ2aのボス部2a−1に沿って軸方向に移動せしめられる。
【0059】
而して、上述のようにスライダ29とスラストベアリング35が軸方向に移動すると、これらの軸方向変位がレバー30によって増幅されてリニアポテンショメータ31に伝達され、該リニアポテンショメータ31によってその増幅された軸方向変位が検出される。即ち、スライダ29とスラストベアリング35が軸方向に移動すると、スラストベアリング35にその突部30aが当接するレバー30が軸37を中心として回動せしめられ、このレバー30の回動がリニアポテンショメータ31のロッド31aの軸方向変位に変換され、このロッド31aの軸方向変位が検出されるが、レバー30のロッド31aが当接する点と軸37との距離はレバー30の突部30a(スラストベアリング35との当接点)と軸37との距離よりも長いため、前述のようにスライダ29とスラストベアリング35の軸方向変位がレバー30によって増幅されてリニアポテンショメータ31に伝達される。
【0060】
ところで、本実施の形態では、ディスク15と共に回転するスライダ29と固定側に設けられたレバー30との間にスラストベアリング35が介設されるため、スライダ29の回転による摩擦損失及びスラストベアリング35とレバー30の摩耗が抑えられるとともに、スライダ29の軸方向変位のみがレバー30に正確に伝達される。
【0061】
又、本実施の形態では、スラストベアリング35とスライダ29が圧縮スプリング36によって軸方向に付勢されるため、これらが軸方向に隙間なく配設されてハンドリム13と車輪2との相対回転に追従して軸方向変位を正確に伝達することができる。このとき、圧縮スプリング36はスライダ29とスラストベアリング35がハンドリム13と車輪2との相対回転に追従するよう押さえるだけで十分であるため、弱いスプリングで良く、スライダ29の回転による摩擦損失やスライトベアリング35とレバー30の摩耗が小さく抑えられる。
【0062】
然るに、スプリング22の圧縮変形量はハンドリム13に加えられる人力の大きさに比例し、ハンドリム13の車輪2に対する相対回転量とスライダ29及びスラストベアリング35の軸方向変位はスプリング22の圧縮変形量に比例するため、スライダ29及びスラストベアリング35の軸方向変位は人力の大きさに比例する。従って、レバー30によって増幅されてリニアポテンショメータ31に伝達されるスライダ29及びスラストベアリング35の軸方向変位を検出すれば、ハンドリム13に加えられる人力の大きさを検出することができる。このとき、スライダ29及びスラストベアリング35の軸方向変位はレバー30によって増幅されてリニアポテンショメータ31に伝達されるため、ハンドリム13に加えられる人力が高精度、且つ、高感度に検出される。又、前述のようにレバー30の回動支点である軸37の軸方向位置が調整可能であるため、当該人力検出装置を組み付けた後のリニアポテンショメータ31の零点調整を簡単に行うことができる。
【0063】
而して、リニアポテンショメータ31はスライダ29及びスラストベアリング35の軸方向変位(つまり、人力の大きさ)に比例する検出信号をコントローラ42に送信し、コントローラ42の制御部42bはその検出信号に基づいてハンドリム13に加えられる人力の大きさを求め、その人力の大きさに応じた制御信号をパワー部42aに送信し、検出された人力(トルク)に応じた電力(電流)を駆動モータ43に供給し、該駆動モータ43を回転駆動して所要の補助動力を発生せしめる。
【0064】
上述のように駆動モータ43が駆動されると、その回転は図10及び図11に示すプーリ46、ベルト48及びプーリ47を経て1段減速されて中間軸49に伝達され、該中間軸49の回転はギヤG1,G2によって2段減速されて駆動軸50に伝達される。そして、この駆動軸50の回転はギヤG3,G4によって3段減速されて車輪2に伝達され、該車輪2が人力に補助動力を加えた大きさの駆動力によって回転駆動され、これによって車椅子1が前進せしめられ、乗員は全駆動力の例えば約1/2程度の小さな人力で楽に車椅子1を操作することができる。
【0065】
以上のように、本発明に係る人力検出装置においては、ハンドリム13に加えられる人力の大きさに比例するハンドリム13と車輪2との相対回転はカム機構28によってスライダ29及びスラストベアリング35の軸方向変位に変換されて固定側に設けられたリニアポテンショメータ31にレバー30を介して増幅されて伝達されるため、回転側と固定側との間で信号伝達が簡単、且つ、確実になされ、人力が高精度に検出される。
【0066】
又、本発明に係る人力検出装置においては、ディスク15とこれと共に回転するスライダ29とが径方向に長孔係合されているため、スライダ29及びスラストベアリング35の軸方向変位にはハンドリム13に加えられる横方向の力等の外乱の影響分が含まれず、ハンドリム13に加えられる周方向の人力(車輪2を回転させようとする力)のみを高精度に検出することができる。
【0067】
その他、本実施の形態では、ハブ2a内に固定プレート41によって囲まれる空間を隔壁45によって室S1と室S2に区画して室S1内にコントローラ42及びプーリ46,47やベルト48等で構成される動力伝達手段を収納したため、補助動力系を構成するコントローラ42や動力伝達手段への水や潤滑油、ゴミ等の侵入を防ぐことができ、これらに高い作動安定性を確保することができる。
【0068】
尚、以上の実施の形態では変位検出部材であるスライダ29を入力部材であるハンドリム13(ディスク15)と共に回転するよう構成したが、該スライダ29が車輪2(ハブ2a)と共に回転するよう構成しても良い。
【0069】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、請求項1記載の発明によれば、入力部材に加えられる人力の大きさに比例する入力部材と車輪との相対回転はカム機構によって変位検出部材の軸方向変位に変換されて固定側に設けられたリニアポテンショメータ等の検知手段に伝達されるため、回転側と固定側との間で信号伝達が簡単、且つ、確実になされ、人力が高精度に検出される。又、変位検出部材とこれと共に回転する入力部材又は車輪とが径方向に長孔係合されているため、変位検出部材の軸方向変位には入力部材に加えられる横方向の力等の外乱の影響分が含まれず、入力部材に加えられる周方向の人力(車輪を回転させようとする力)のみを高精度に検出することができるという効果が得られる。
【0070】
請求項2記載の発明によれば、入力部材又は車輪と共に回転する変位検出部材と静止側に設けられたレバーとの間にスラストベアリングが介設されるため、変位検出部材の回転による摩擦損失及び両部材の摩耗が抑えられるとともに、変位検出部材の軸方向変位のみがレバーに正確に伝達されるという効果が得られる。
【0071】
請求項3記載の発明によれば、スラストベアリングと変位検出部材が圧縮スプリングによって軸方向に付勢されるため、これらが軸方向に隙間なく配設されて入力部材と車輪との相対回転に追従して軸方向変位を正確に伝達することができるという効果が得られる。
【0072】
請求項4記載の発明によれば、レバーの変位量の検知手段への出力点(レバーの検知手段への当接点)とレバーの回動支点との距離は、変位検出部材の軸方向変位のレバーへの入力点(レバーの中間部)とレバーの回動支点との距離よりも長いため、変位検出部材の軸方向変位はレバーによって増幅されて検知手段に伝達され、入力部材に加えられる人力を高精度、且つ、高感度に検出することができるという効果が得られる。
【0073】
請求項5記載の発明によれば、レバーの回動支点の軸方向位置を調整可能としたため、当該人力検出装置組付後の検知手段の零点調整を簡単に行うことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る人力検出装置を備える手動式電動車椅子の側面図である。
【図2】本発明に係る人力検出装置を備える手動式電動車椅子の平面図である。
【図3】本発明に係る人力検出装置を備える手動式電動車椅子の背面図である。
【図4】本発明に係る人力検出装置を備える手動式電動車椅子の車輪のハブ部分のカバーを取り外した状態を示す正面図である。
【図5】図4のA−A線断面図である。
【図6】本発明に係る人力検出装置を図5の矢印B方向から見た図である。
【図7】本発明に係る人力検出装置の破断部分側面図である。
【図8】図7の矢視C方向の図である。
【図9】本発明に係る人力検出装置を備える手動式電動車椅子の車輪のハブ部分の背面図である。
【図10】図9のD−D線断面図である。
【図11】図10のE−E線に沿う一部破断面図である。
【図12】本発明に係る人力検出装置を備える手動式電動車椅子の補助動力系の電気結線図である。
【符号の説明】
1 手動式電動車椅子
2 車輪
13 ハンドリム(入力部材)
22 スプリング
28 カム機構
29 スライダ(変位検出部材)
30 レバー
35 スラストベアリング
36 圧縮スプリング
【発明の属する技術分野】
本発明は、左右の車輪に加えられる人力の大きさに応じた補助動力を各車輪に与えてこれを回転駆動する手動式電動車椅子の人力検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
手動車椅子と電動車椅子の中間的な存在として手動式電動車椅子が従来より提案されている。この手動式電動車椅子は、左右の車輪に間欠的に加えられる人力を検出し、検出された人力に応じた補助動力を各車輪に加えることによって歩行の不自由な乗員の肉体的な負担を軽減するものであって、これによれば乗員は手動車椅子の感覚で操作することができる。
【0003】
ところで、斯かる手動式電動車椅子にあっては、例えばハンドリムを車輪に対して相対回転可能に弾性支持し、該ハンドリムと車輪との相対回転量をワイヤーを介してポテンショメータ等の検知手段に伝達してこれを検知することによって、ハンドリムに加えられる人力の大きさと方向を検出していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の手動式電動車椅子にあっては、ハンドリムと車輪との相対回転量を検知するポテンショメータ等の検知手段を固定側に設け、ハンドリムと車輪との相対回転量をワイヤーを介して検知していたため、ハンドリムに加えられる横力も同時に検出されてしまい、乗員がハンドリムに加える周方向の力(車輪を回転させようとする力)のみを正確に検出することができなかった。
【0005】
更に、人力の検出にワイヤーを用いると、ワイヤーの伸び等のために正確な検出ができないばかりか、検知手段の調整が面倒であるという問題もあった。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、入力部材に加えられる周方向の人力(車輪を回転させようとする力)のみを固定側に設けられた検知手段によって高精度に検出することができるとともに、調整作業が容易である手動式電動車椅子の人力検出装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、入力部材を車輪に対して相対回転可能に弾性支持し、入力部材に入力される人力を該入力部材と車輪との相対回転量によって検出し、検出された人力に応じた補助動力を車輪に加えてこれを回転駆動する手動式電動車椅子に設けられる人力検出装置を、前記入力部材又は車輪と共に回転する変位検出部材を軸方向に移動自在に設けるとともに、該変位検出部材とこれと共に回転する入力部材又は車輪とを径方向に長孔係合せしめ、前記入力部材と車輪との相対回転をカム機構によって前記変位検出部材の軸方向変位に変換し、該変位検出部材の軸方向変位を固定側に設けられた検知手段に伝達するよう構成したことを特徴とする。
【0008】
従って、請求項1記載の発明によれば、入力部材に加えられる人力の大きさに比例する入力部材と車輪との相対回転はカム機構によって変位検出部材の軸方向変位に変換されて固定側に設けられたリニアポテンショメータ等の検知手段に伝達されるため、回転側と固定側との間で信号伝達が簡単、且つ、確実になされ、人力が高精度に検出される。又、変位検出部材とこれと共に回転する入力部材又は車輪とが径方向に長孔係合されているため、変位検出部材の軸方向変位には入力部材に加えられる横方向の力等の外乱の影響分が含まれず、入力部材に加えられる周方向の人力(車輪を回転させようとする力)のみを高精度に検出することができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記変位検出部材とレバーとの間にスラストベアリングを介設したことを特徴とする。
【0010】
従って、請求項2記載の発明によれば、入力部材又は車輪と共に回転する変位検出部材と静止側に設けられたレバーとの間にスラストベアリングが介設されるため、変位検出部材の回転による摩擦損失及び両部材の摩耗が抑えられるとともに、変位検出部材の軸方向変位のみがレバーに正確に伝達される。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記スラストベアリングと固定側との間に圧縮スプリングを介設したことを特徴とする。
【0012】
従って、請求項3記載の発明によれば、スラストベアリングと変位検出部材が圧縮スプリングによって軸方向に付勢されるため、これらが軸方向に隙間なく配設されて入力部材と車輪との相対回転に追従して軸方向変位を正確に伝達する。尚、圧縮スプリングはスラストベアリングや変位検出部材が入力部材と車輪との相対回転に追従するよう押さえるだけで十分であるため、弱いスプリングで良く、変位検出部材の回転による摩擦損失や部材の摩耗が小さく抑えられる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の発明において、前記レバーの一端を固定側に回動自在に支持し、同レバーの中間部を前記スラストベアリングに当接せしめ、他端部を前記検知手段に当接せしめたことを特徴とする。
【0014】
従って、請求項4記載の発明によれば、レバーの変位量の検知手段への出力点(レバーの検知手段への当接点)とレバーの回動支点との距離は、変位検出部材の軸方向変位のレバーへの入力点(レバーの中間部)とレバーの回動支点との距離よりも長いため、変位検出部材の軸方向変位はレバーによって増幅されて検知手段に伝達され、入力部材に加えられる人力が高精度、且つ、高感度に検出される。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記レバーの回動支点の軸方向位置を調整可能としたことを特徴とする。
【0016】
従って、請求項5記載の発明によれば、レバーの回動支点の軸方向位置を調整可能としたため、当該人力検出装置組付後の検知手段の零点調整を簡単に行うことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明に係る人力検出装置を備える手動式電動車椅子の側面図、図2は同車椅子の平面図、図3は同車椅子の背面図、図4は同車椅子の車輪のハブ部分のカバーを取り外した状態を示す正面図、図5は図4のA−A線断面図、図6は本発明に係る人力検出装置を図5の矢印B方向から見た図、図7は同人力検出装置の破断部分側面図、図8は図7の矢視C方向の図、図9は手動式電動車椅子の車輪のハブ部分の背面図、図10は図9のD−D線断面図、図11は図10のE−E線に沿う一部破断面図、図12は手動式電動車椅子の補助動力系の電気結線図である。
【0019】
本実施の形態に係る手動式電動車椅子1は、既存の折り畳み式手動車椅子の車体の左右に駆動輪である車輪2を脱着自在に取り付けて構成され、これのパイプ枠状のフレーム3の前後部は左右一対のキャスタ4と車輪2によって移動自在に支持されている。
【0020】
又、上記フレーム3の中央部には、乗員が着座すべき布製のシート5(図2及び図3参照)が張設されている。尚、フレーム3は図3に示すように前後一対のクロス部材3aを有しており、X字状を成す2本のクロス部材3aはその交点を軸6によって枢着されている。
【0021】
更に、フレーム3の後部には左右一対のバックパイプ3bが立設されており、各バックパイプ3bの上端部は後方に折曲され、その折曲部には介助者用のグリップ7が取り付けられている。
【0022】
又、フレーム3の上記バックパイプ3bの中間高さ位置から車体前方に水平に延びる左右一対の肘パイプ3cはその前端部が略直角に折り曲げられて垂直下方に延び、その下端部に前記キャスタ4が回転自在に支持されているが、右側(シート5に着座した乗員にとって右側)の肘パイプ3cの直角に折り曲げられた部分(垂直部分の上部)にはメインスイッチ8が取り付けられている。そして、前記肘パイプ3cの下方に配された左右一対のシートパイプ3dの前側部分は車体前方に向かって斜め下方に延出しており、その延出端(前端部)には左右一対のステップ9が取り付けられている。
【0023】
ところで、前記左右一対の車輪2の各々は、図5に示すように、フレーム3に溶接されたボス部10に支持された車軸11にボールベアリング12を介して回転自在に支承されており、各車輪2の外側には、乗員が手でこれを回すべきリング状のハンドリム13が設けられている。このハンドリム13は、車輪2のハブ2aに形成されたボス部2a−1にブッシュ14を介して回転自在に支持された円板状のディスク15に3本のスポーク16を介してボルト17によって取り付けられており、従って、該ハンドリム13は車輪2に対して独立に回転し得る。尚、本実施例においては、図5に示すように、車輪2のハブ2aとディスク15との間には弾性体から成るシールリング18が介設されており、ディスク15はこれにボルト19にて結着されたカバー20によって覆われている。尚、シールリング18はシール機能と共にディスク15の慣性に伴う周方向の振動を抑制するフリクションダンパー機能を果たす。
【0024】
而して、上記ハンドリム13は、その全周の3箇所が図4に示す構造によって車輪2に対して弾性的に連結されている。
【0025】
即ち、図4に示すように、車輪2のハブ2aに形成された各一対のストッパ21で挟まれる径方向外方に向かって広がる空間には扇形のガイド溝2c(図11参照)が形成されており、各ガイド溝2cにはスプリング22が介装されており、各スプリング22はハブ2aに固定された保持部材23によってその脱落が防がれている。
【0026】
ところで、上記各スプリング22はその両端がスプリング受け24によって受けられており、前記ハンドリム13に人力が加わらない中立状態においては、図4に示すように、スプリング受け24は前記一対のストッパ21に当接している。尚、各ストッパ21の中央部分には溝21aが貫設されている。
【0027】
一方、図4に示すように、前記ディスク15の全周3箇所にはブラケット25がボルト26によって位置調整可能に取り付けられており、各ブラケット25の両端部には一対のピン27が内方に向かって突設されており、各一対のピン27は、ハンドリム13に人力が加わらない中立状態においては、図4に示すように前記スプリング受け24の端面に当接している。尚、各ブラケット25の両端部には径方向に長い長孔25aが形成されており、各長孔25aには前記ボルト26が挿通されている。従って、ボルト26を緩めれば、ブラケット25を径方向に移動させてその位置を調整することができ、スプリング受け24の端面(ピン27が当接すべき端面)は図示のように傾斜している(ガイド溝2cの両端面が傾斜している)ため、中立状態においてブラケット25を前述のように径方向に移動させることによってスプリング受け24に対するピン27の位置を調整することができ、図4に示すように中立状態において一対のピン27をスプリング受け24に当接せしめることができる。
【0028】
而して、本実施例においては、ハンドリム13と車輪2との相対回転は、図5及び図7に示すカム機構28によって変位検出部材であるスライダ29の軸方向変位に変換され、該スライダ29の軸方向変位はレバー30によって増幅されて固定側に設けられたリニアポテンショメータ31に伝達される。
【0029】
図5及び図7に示すように、各車輪2のハブ2aのボス部2a−2の基端部にはカムリング32が嵌着されており、同ボス部2a−2の車幅方向内側の外周上には前記スライダ29が軸方向(車幅方向)に摺動自在に嵌合されている。そして、スライダ29の外面には複数(少なくとも3つ)の突起29aが突設され、該突起29aは前記カムリング32の内面に突設された突起29aと同数のカム33の斜面(カム面)33aに係合しており、これらの突起29aとカム33とで前記カム機構28が構成されている。
【0030】
又、上記スライダ29には径方向外方に向かって延びる2つのアーム29bが一体に形成されており、各アーム29aの先部に結着されたピン34は車幅方向外方に向かって突出している。そして、各ピン34は、図7及び図8に示すように、ハブ2aに形成された大径の円孔2bを貫通して前記ディスク15に形成された径方向に長い長孔15aに係合されている。尚、各ピン34は長孔15aに対して周方向には密に係合しているため、ハンドリム13及びディスク15の回転をそのままスライダ29に伝達して該スライダ29をハブ2aのボス部2a−2を中心として回動せしめる。
【0031】
更に、上記スライダ29の外周にはスラストベアリング35が嵌着されており、該スラストベアリング35と後述の固定プレート41の間には圧縮スプリング36が縮装されている。従って、スラストベアリング35とスライダ29は圧縮スプリング36によって車幅方向外方に常時付勢されており、前記カム機構28においてはスライダ29に突設された突起29がカム33のカム面33aに所定の圧力で係合している。
【0032】
一方、固定プレート41にはリング状の前記レバー30の一端が回動自在に支持されており、同固定プレート41の車軸11を挟んで前記レバー30の支持点の反対側(図5の左方)には検知手段を構成する前記リニアポテンショメータ31が固設されている。尚、リニアポテンショメータ31から車幅方向外方に突出するロッド31aは本体内に縮装された不図示のスプリングによって車幅方向外方に常時付勢されている。
【0033】
ところで、図5に示すように、前記レバー30の一端は軸37によって回動自在に支持されており、軸37は固定プレート41に固定された調整ボルト38によってその軸方向位置が調整可能に支持されている。即ち、固定プレート41には調整ボルト38が挿通しており、該調整ボルト38の端部ネジ部には前記軸37が軸方向に移動可能に螺合挿通している。そして、調整ボルト38はロックナット39によって固定プレート41に固定されている。従って、ロックナット39を緩めて調整ボルト38を回せば、該調整ボルト38に螺合する軸37が軸方向に移動するため、該軸37に支持されたレバー30の回動支点の軸方向位置が調整される。
【0034】
而して、上記レバー30の他端部には前記リニアポテンショメータ31のロッド31aが当接しており、同レバー30の中間部の左右には車幅方向外方に向かって湾曲する半円状の突部30aが形成されている。従って、レバー30はロッド31aによって軸37を中心として図5及び図7の反時計方向に付勢されており、その中間部に形成された突部30aは図示のように前記スラストベアリング35に当接している。
【0035】
而して、前記スプリング22、カム機構28、スライダ29、レバー30、リニアポテンショメータ31等は、乗員によってハンドリム13に加えられる人力を検知するための人力検出装置を構成しており、該人力検出装置を構成するスプリング22は前記シールリング18によってシールされた車輪2のハブ2aとディスク15及びカバー20によって囲まれる空間内に収納されている。
【0036】
他方、図5及び図9に示すように、左右一対の車輪2の各ハブ2aの車幅方向内側には円板状の固定プレート41が車軸11に結着されて設けられており、該固定プレート41の車体内側面には制御手段を構成するコントローラ42が取り付けられている。又、固定プレート41の車体側外面には、図6及び図7に示すように、駆動モータ43と車輪側カプラー44が取り付けられている。尚、固定プレート41の少なくとも前記コントローラ42が設置される部位の外面には、図5及び図9に示すように、縦方向の複数の放熱用溝41aが形成されている。
【0037】
ところで、各車輪2のハブ2aの内部には前記固定プレート41で囲まれる空間が形成されるが、該空間はリング状の隔壁45によって室S1とS2とに区画されており、室S1内には前記コントローラ42が収納されている。尚、図10に示すように、隔壁45の一部には開口部45aが形成されている。
【0038】
而して、前記駆動モータ43によって発生する補助動力は動力伝達手段を経て車輪2に伝達されるが、この動力伝達手段の構成を図10及び図11に基づいて以下に説明する。
【0039】
動力伝達手段はプーリ46,47とベルト48及び複数のギヤG1〜G4を含んで構成されるが、前記小径のプーリ46は前記駆動モータ43の出力軸43aの端部に結着され、前記大径のプーリ47は中間軸49の一端に結着されており、両プーリ46,47間に無端状の前記ベルト48が巻装されている。
【0040】
上記中間軸49とこれに平行に配された駆動軸50は、図10に示すように、前記固定プレート41とカバー51にベアリング52,53を介してそれぞれ回転自在に支承されており、中間軸49には前記ギヤG1が一体に形成されており、該ギヤG1は駆動軸50の一端に結着されたギヤG2に噛合している。そして、駆動軸50の他端は前記隔壁45に形成された開口部45a(図10参照)を貫通して室S2内に臨んでおり、その端部に一体に形成された小径の前記ギヤG3はハブ2aの内周に結着された大径のリングギヤG4に噛合している。尚、動力伝達手段を構成する前記プーリ46,47とベルト48及びコントローラ42は潤滑油を嫌うため、隔壁45で仕切られた潤滑油ギヤG1,G2は室S1内に収納され、潤滑油が必要なギヤG3,G4は室S2内に収納されている。
【0041】
而して、以上説明した人力検出装置、コントローラ42、駆動モータ43及び動力伝達手段が補助動力系を構成しているが、この補助動力系は各車輪2のハブ2aの車軸11廻りに径方向及び軸方向に亘って集約的に配置されており、このように補助動力系をハブ2aに配置して成る車輪2は左右が同一構造に構成され、前述のように各車輪2は車体に対して脱着自在に取り付けられている。
【0042】
ここで、車輪2の脱着構造を図5に基づいて説明する。
【0043】
車輪2を回転自在に支承する前記車軸11は中空状に成形されており、その内部には小径のロッド54が挿通されている。そして、該ロッド54の内端部には車軸11の内端面に係合する係止部材55が結着され、同ロッド54の外端部には押圧部材56が結着されており、これら係止部材55と押圧部材56は車軸11内に摺動自在に嵌装されており、これらの径はロッド54のそれよりも大きく設定されている。尚、上記ロッド54と係止部材55及び押圧部材56はスプリング57によって外側方(図5の下方)に常時付勢されている。又、図5において、58はストッパを構成するサークリップである。
【0044】
又、車軸11の内端部(係止部材55が嵌装されている部分)には複数の円孔11aが形成されており、各円孔11aにはボール59が保持されている。尚、前記カバー20の中央部には撓曲自在なゴムキャップ60が被着されており、該ゴムキャップ60内に前記押圧部材56が臨んでいる。
【0045】
一方、フレーム3に溶接された前記ボス部10には円筒状のスリーブ61が挿通しており、該スリーブ61はこれの外周に螺合するナット62によってボス部10に結着されている。
【0046】
而して、各車輪2は車軸11の内端部分を外側方から上記スリーブ61に挿通することによって車体に取り付けられるが、これの取付状態においては、図5に示すようにボール59が係止部材55によって径方向外方に押し出されて車軸11の外周面から突出しており、該ボール59がスリーブ61の内端面に係止されるために車軸11の抜けが阻止され、これによって車輪2が車体に確実に取り付けられる。
【0047】
次に、取付状態にある車輪2を車体から取り外すには、ゴムキャップ60を指で押して押圧部材56とロッド54及び係止部材55をスプリング57の付勢力に抗して一体的に車体内側方に移動させる。すると、係止部材55がボール59の位置から退避して小径のロッド54がボール59の部分に位置するため、ボール59は車軸11の径方向内方に移動して車軸11の外表面から没することができ、そのまま車輪2全体を外側方へ引き出せば車軸11をスリーブ61から抜くことができ、従って、車輪2をワンタッチで容易に車体から取り外すことができる。
【0048】
そして、車輪2を車体に再び取り付けるには、ゴムキャップ60を押さえて押圧部材56とロッド54及び係止部材55を車体内側方へ移動させたまま車軸11をスリーブ61に挿通せしめ、その後にゴムキャップ60から指を離せば良い。すると、ボール59が係止部材55によって径方向外方に押し出されて車軸11の外周面から突出し、該ボール59がスリーブ61の内端面に係止されるために車軸11の抜けが阻止され、これによって車輪2が車体にワンタッチで容易に取り付けられる。
【0049】
尚、図5及び図9に示すように、各車輪2の固定プレート41の外面周縁には車体内側方(即ち、車輪2の脱着方向)に向かってコ字状に開口する回り止め部材63が結着されており、フレーム3には係止部材64が結着されており、前述の要領で車輪2を車体に取り付けると同時に回り止め部材63が係止部材64に嵌合して固定プレート41等の固定側部分の回り止がなされる。
【0050】
ところで、本実施例に係る手動式電動車椅子1にあっては、図1乃至図3に示すように右側の車輪2側にバッテリ65が脱着可能に取り付けられており、車体(フレーム3)側にはワイヤーハーネス66が設置されている。
【0051】
而して、前述のように左右の車輪2は同一構造を有しているため、これらを車体に取り付けると、これらは車体前後方向中心廻りに点対称となる位置関係を保って配置されることとなる。同一構造の左右の車輪2をこのように配置することによって、図3に示すように、左右の車輪2の各内側方に突出する駆動モータ43が上下方向に互いに段差をもって配されることとなり、当該車椅子1を折り畳んだ際に両駆動モータ43が互いに干渉することがなく、この結果、車椅子1をコンパクトに、且つ、容易に折り畳むことができる。又、左右の車輪2を同一構造とすることによって部品を共通化することができるため、量産効果による部品のコストダウンを図ることができる。
【0052】
尚、左右の車輪2を前述の要領で車体に取り付けた後は、各車輪2の固定プレート41に取り付けられた前記カプラー44に車体側に設置された前記ワイヤーハーネス66のカプラー66Aを接続すれば、右側の車輪2に配置された前記バッテリ65から左側の車輪2に設けられた駆動モータ43やコントローラ42等への給電がワイヤーハーネス66を介してなされる。
【0053】
ここで、当該手動式電動車椅子1の電気結線構造を図12に基づいて説明する。
【0054】
図示のように、車体(フレーム3)側に設置された前記ワイヤーハーネス66は制御電源線66a、エラー信号線66b、パワー電源線66c及びアース線66dの計4本のワイヤーを結束して構成されており、これは左右の車輪2に設けられたカプラー44を介して左右の車輪2に設けられたコントローラ42のパワー部42aと制御部42bに接続されている。尚、図12において、8は前記メインスイッチである。
【0055】
而して、前述のようにバッテリ65は右側の車輪2に設けられており、該バッテリ65からは右側の車輪2に設けられたコントローラ42に給電されると同時に、ワイヤーハーネス66を介して左側の車輪2に設けられたコントローラ42にも給電される。そして、各コントローラ42のパワー部42aに供給される電力は駆動モータ43に供給されて該駆動モータ43の駆動に供され、制御部42bに供給される電力はリニアポテンショメータ31に供給されるとともに、ポテンショメータ31からの検出信号はコントローラ42へ伝達される。
【0056】
次に、本手動式電動車椅子1の作用を説明する。
【0057】
乗員が左右一対のハンドリム13を例えば前進方向に回すためにこれに力を加えると、一方のピン27がスプリング受け24を押圧してスプリング22を圧縮し、該スプリング22の反力がストッパ21を介してハブ2aに伝達されるため、車輪2に人力が伝達される。
【0058】
ところで、ハンドリム13の回転はディスク15及び該ディスク15の長孔15aに係合するピン34を介してスライダ29に伝達され、ハンドリム13とディスク15及びスライダ29がスプリング22の圧縮変形量に見合う角度だけ車輪2(ハブ2a)に対して一体的に相対回転し、これらの相対回転はカム機構28によってスライダ29及びスラストベアリング35の軸方向変位に変換される。即ち、スライダ29がハンドリム13及びディスク15と共に上述のように車輪2に対して相対回転すると、カム機構28において突起29aがカム33の斜めのカム面33aに沿って軸方向に移動するため、該突起29aを備えるスライダ29とこれに保持されたスラストベアリング35がハブ2aのボス部2a−1に沿って軸方向に移動せしめられる。
【0059】
而して、上述のようにスライダ29とスラストベアリング35が軸方向に移動すると、これらの軸方向変位がレバー30によって増幅されてリニアポテンショメータ31に伝達され、該リニアポテンショメータ31によってその増幅された軸方向変位が検出される。即ち、スライダ29とスラストベアリング35が軸方向に移動すると、スラストベアリング35にその突部30aが当接するレバー30が軸37を中心として回動せしめられ、このレバー30の回動がリニアポテンショメータ31のロッド31aの軸方向変位に変換され、このロッド31aの軸方向変位が検出されるが、レバー30のロッド31aが当接する点と軸37との距離はレバー30の突部30a(スラストベアリング35との当接点)と軸37との距離よりも長いため、前述のようにスライダ29とスラストベアリング35の軸方向変位がレバー30によって増幅されてリニアポテンショメータ31に伝達される。
【0060】
ところで、本実施の形態では、ディスク15と共に回転するスライダ29と固定側に設けられたレバー30との間にスラストベアリング35が介設されるため、スライダ29の回転による摩擦損失及びスラストベアリング35とレバー30の摩耗が抑えられるとともに、スライダ29の軸方向変位のみがレバー30に正確に伝達される。
【0061】
又、本実施の形態では、スラストベアリング35とスライダ29が圧縮スプリング36によって軸方向に付勢されるため、これらが軸方向に隙間なく配設されてハンドリム13と車輪2との相対回転に追従して軸方向変位を正確に伝達することができる。このとき、圧縮スプリング36はスライダ29とスラストベアリング35がハンドリム13と車輪2との相対回転に追従するよう押さえるだけで十分であるため、弱いスプリングで良く、スライダ29の回転による摩擦損失やスライトベアリング35とレバー30の摩耗が小さく抑えられる。
【0062】
然るに、スプリング22の圧縮変形量はハンドリム13に加えられる人力の大きさに比例し、ハンドリム13の車輪2に対する相対回転量とスライダ29及びスラストベアリング35の軸方向変位はスプリング22の圧縮変形量に比例するため、スライダ29及びスラストベアリング35の軸方向変位は人力の大きさに比例する。従って、レバー30によって増幅されてリニアポテンショメータ31に伝達されるスライダ29及びスラストベアリング35の軸方向変位を検出すれば、ハンドリム13に加えられる人力の大きさを検出することができる。このとき、スライダ29及びスラストベアリング35の軸方向変位はレバー30によって増幅されてリニアポテンショメータ31に伝達されるため、ハンドリム13に加えられる人力が高精度、且つ、高感度に検出される。又、前述のようにレバー30の回動支点である軸37の軸方向位置が調整可能であるため、当該人力検出装置を組み付けた後のリニアポテンショメータ31の零点調整を簡単に行うことができる。
【0063】
而して、リニアポテンショメータ31はスライダ29及びスラストベアリング35の軸方向変位(つまり、人力の大きさ)に比例する検出信号をコントローラ42に送信し、コントローラ42の制御部42bはその検出信号に基づいてハンドリム13に加えられる人力の大きさを求め、その人力の大きさに応じた制御信号をパワー部42aに送信し、検出された人力(トルク)に応じた電力(電流)を駆動モータ43に供給し、該駆動モータ43を回転駆動して所要の補助動力を発生せしめる。
【0064】
上述のように駆動モータ43が駆動されると、その回転は図10及び図11に示すプーリ46、ベルト48及びプーリ47を経て1段減速されて中間軸49に伝達され、該中間軸49の回転はギヤG1,G2によって2段減速されて駆動軸50に伝達される。そして、この駆動軸50の回転はギヤG3,G4によって3段減速されて車輪2に伝達され、該車輪2が人力に補助動力を加えた大きさの駆動力によって回転駆動され、これによって車椅子1が前進せしめられ、乗員は全駆動力の例えば約1/2程度の小さな人力で楽に車椅子1を操作することができる。
【0065】
以上のように、本発明に係る人力検出装置においては、ハンドリム13に加えられる人力の大きさに比例するハンドリム13と車輪2との相対回転はカム機構28によってスライダ29及びスラストベアリング35の軸方向変位に変換されて固定側に設けられたリニアポテンショメータ31にレバー30を介して増幅されて伝達されるため、回転側と固定側との間で信号伝達が簡単、且つ、確実になされ、人力が高精度に検出される。
【0066】
又、本発明に係る人力検出装置においては、ディスク15とこれと共に回転するスライダ29とが径方向に長孔係合されているため、スライダ29及びスラストベアリング35の軸方向変位にはハンドリム13に加えられる横方向の力等の外乱の影響分が含まれず、ハンドリム13に加えられる周方向の人力(車輪2を回転させようとする力)のみを高精度に検出することができる。
【0067】
その他、本実施の形態では、ハブ2a内に固定プレート41によって囲まれる空間を隔壁45によって室S1と室S2に区画して室S1内にコントローラ42及びプーリ46,47やベルト48等で構成される動力伝達手段を収納したため、補助動力系を構成するコントローラ42や動力伝達手段への水や潤滑油、ゴミ等の侵入を防ぐことができ、これらに高い作動安定性を確保することができる。
【0068】
尚、以上の実施の形態では変位検出部材であるスライダ29を入力部材であるハンドリム13(ディスク15)と共に回転するよう構成したが、該スライダ29が車輪2(ハブ2a)と共に回転するよう構成しても良い。
【0069】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、請求項1記載の発明によれば、入力部材に加えられる人力の大きさに比例する入力部材と車輪との相対回転はカム機構によって変位検出部材の軸方向変位に変換されて固定側に設けられたリニアポテンショメータ等の検知手段に伝達されるため、回転側と固定側との間で信号伝達が簡単、且つ、確実になされ、人力が高精度に検出される。又、変位検出部材とこれと共に回転する入力部材又は車輪とが径方向に長孔係合されているため、変位検出部材の軸方向変位には入力部材に加えられる横方向の力等の外乱の影響分が含まれず、入力部材に加えられる周方向の人力(車輪を回転させようとする力)のみを高精度に検出することができるという効果が得られる。
【0070】
請求項2記載の発明によれば、入力部材又は車輪と共に回転する変位検出部材と静止側に設けられたレバーとの間にスラストベアリングが介設されるため、変位検出部材の回転による摩擦損失及び両部材の摩耗が抑えられるとともに、変位検出部材の軸方向変位のみがレバーに正確に伝達されるという効果が得られる。
【0071】
請求項3記載の発明によれば、スラストベアリングと変位検出部材が圧縮スプリングによって軸方向に付勢されるため、これらが軸方向に隙間なく配設されて入力部材と車輪との相対回転に追従して軸方向変位を正確に伝達することができるという効果が得られる。
【0072】
請求項4記載の発明によれば、レバーの変位量の検知手段への出力点(レバーの検知手段への当接点)とレバーの回動支点との距離は、変位検出部材の軸方向変位のレバーへの入力点(レバーの中間部)とレバーの回動支点との距離よりも長いため、変位検出部材の軸方向変位はレバーによって増幅されて検知手段に伝達され、入力部材に加えられる人力を高精度、且つ、高感度に検出することができるという効果が得られる。
【0073】
請求項5記載の発明によれば、レバーの回動支点の軸方向位置を調整可能としたため、当該人力検出装置組付後の検知手段の零点調整を簡単に行うことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る人力検出装置を備える手動式電動車椅子の側面図である。
【図2】本発明に係る人力検出装置を備える手動式電動車椅子の平面図である。
【図3】本発明に係る人力検出装置を備える手動式電動車椅子の背面図である。
【図4】本発明に係る人力検出装置を備える手動式電動車椅子の車輪のハブ部分のカバーを取り外した状態を示す正面図である。
【図5】図4のA−A線断面図である。
【図6】本発明に係る人力検出装置を図5の矢印B方向から見た図である。
【図7】本発明に係る人力検出装置の破断部分側面図である。
【図8】図7の矢視C方向の図である。
【図9】本発明に係る人力検出装置を備える手動式電動車椅子の車輪のハブ部分の背面図である。
【図10】図9のD−D線断面図である。
【図11】図10のE−E線に沿う一部破断面図である。
【図12】本発明に係る人力検出装置を備える手動式電動車椅子の補助動力系の電気結線図である。
【符号の説明】
1 手動式電動車椅子
2 車輪
13 ハンドリム(入力部材)
22 スプリング
28 カム機構
29 スライダ(変位検出部材)
30 レバー
35 スラストベアリング
36 圧縮スプリング
Claims (5)
- 入力部材を車輪に対して相対回転可能に弾性支持し、入力部材に入力される人力を該入力部材と車輪との相対回転量によって検出し、検出された人力に応じた補助動力を車輪に加えてこれを回転駆動する手動式電動車椅子に設けられる装置であって、前記入力部材又は車輪と共に回転する変位検出部材を軸方向に移動自在に設けるとともに、該変位検出部材とこれと共に回転する入力部材又は車輪とを径方向に長孔係合せしめ、前記入力部材と車輪との相対回転をカム機構によって前記変位検出部材の軸方向変位に変換し、該変位検出部材の軸方向変位を固定側に設けられた検知手段に伝達するよう構成されることを特徴とする手動式電動車椅子の人力検出装置。
- 前記変位検出部材とレバーとの間にスラストベアリングを介設したことを特徴とすることを特徴とする請求項1記載の手動式電動車椅子の人力検出装置。
- 前記スラストベアリングと固定側との間に圧縮スプリングを介設したことを特徴とする請求項2記載の手動式電動車椅子の人力検出装置。
- 前記レバーの一端を固定側に回動自在に支持し、同レバーの中間部を前記スラストベアリングに当接せしめ、他端部を前記検知手段に当接せしめたことを特徴とする請求項2又は3記載の手動式電動車椅子の人力検出装置。
- 前記レバーの回動支点の軸方向位置を調整可能としたことを特徴とする請求項4記載の手動式電動車椅子の人力検出装置。
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