JP3640680B2 - ゴルフボール材料 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ゴルフボール材料に関する。さらに詳しくは、柔軟性、反発弾性に優れ、ゴルフボール表皮に使用した場合にボールコントロールの容易なゴルフボールの製造が可能なゴルフボール材料に関する。
【0002】
【従来の技術及び問題点】
バラタを表皮材とするゴルフボールは打球感に優れ、ボールコントロールが容易であるという利点を有しており、とくに熟練プレイヤーには好まれているが、耐久性が悪いという欠点を有している。一方、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体の硬質アイオノマーは、反発弾性、耐久性に優れるところから、これを表皮材とするゴルフボールも広く使用されてきたが、バラタ製のものと打球感等は異なるものであった。
【0003】
このためアイオノマーの特長を生かしつつ柔軟材料を配合することによってバラタ製ボール同様の利点を付与する試みもすでになされている。
例えば、柔軟材料としてエチレン・(メタ)アクリル酸エステル・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマーを用いる方法(Research Disclosure 27103(1986年11月)、特開平1−308577号公報、特開平5−3931号公報);エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体の部分けん化物を使用する方法(特開平2−103244号公報);エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体の不飽和カルボン酸(又はその無水物)グラフト物のアイオノマーを使用する方法(特開平5−84330号公報)などの提案がある。
【0004】
このような柔軟材料を使用する場合の大きな課題は、反発弾性を実質的に損なうことなく柔軟化する点にあり、例えば前記したエチレン・(メタ)アクリル酸エステル・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマーを使用する提案では、この点において必ずしも満足しうるものとは言えなかった。
【0005】
【発明の課題】
そこで、本発明者らは、柔軟でしかも反発弾性が高く、通常の硬質アイオノマーと配合した場合に柔軟で反発弾性の大きい組成物を得ることができ、従ってゴルフボール表皮材として好適な素材を求めて検討を行った。その結果、特殊なターポリマーのアイオノマーがこのような性状を満たしており、したがってゴルフボール材料として好適であることを見出すに至り、本発明に到達した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明においては、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル・マレイン酸ハーフエステル共重合体のアイオノマーからなるゴルフボール材料が提供される。
【0007】
本発明においてはまた、前記アイオノマーとエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマーを配合してなるゴルフボール材料が提供される。
【0008】
【作用】
本発明は、種々のアイオノマーの内でも、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル・マレイン酸ハーフエステル共重合体のアイオノマーは、柔軟性でありながら、高い反発弾性を有し、ボールコントロール、打球感及び飛距離の組み合わせに優れているという発見に基づくものである。
【0009】
後述する表1を参照されたい。
エチレン・(メタ)アクリル酸二元共重合体は、反発弾性は高いが、硬度が高く、柔軟性に欠け、打球感や、ボールコントロールが未だ十分でないという問題がある(エチレン共重合体アイオノマーA及びB)。
一方、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル・(メタ)アクリル酸三元共重合体は、柔軟性があるが、柔軟性が増加した反面、反発弾性が低下するという問題がある(エチレン三元共重合体アイオノマーC)。
【0010】
これに対して、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル・マレイン酸ハーフエステル共重合体のアイオノマーは、柔軟性に顕著に優れていながら、反発弾性がエチレン・(メタ)アクリル酸二元共重合体のアイオノマーとほぼ同じレベルに維持されるという利点を与える。
【0011】
本発明のゴルフボール材料において、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル・マレイン酸ハーフエステル共重合体のアイオノマーは、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマーと反発弾性がほぼ同じレベルにあるため、この両成分のブレンド比を変更することにより、柔軟性(硬度)を自由に調節し得るという利点を与える。
【0012】
【発明の好適態様】
本発明のアイオノマーの原料となるエチレン・(メタ)アクリル酸エステル・マレイン酸ハーフエステル共重合体は、エチレン、(メタ)アクリル酸エステル及びマレイン酸ハーフエステルを高温、高圧下、ラジカル共重合することによって得られる。
【0013】
ここに(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステル又はメタアクリル酸エステルを意味し、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチルなどを例示することができる。これらの中でとくに、(メタ)アクリル酸低級アルキルエステル、とりわけ(メタ)アクリル酸メチルまたは(メタ)アクリル酸エチルの使用が好ましい。
【0014】
またマレイン酸ハーフエステルとしては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソブチルなどを例示できるが、とくに前2者のものが好ましい。
【0015】
エチレン・(メタ)アクリル酸エステル・マレイン酸ハーフエステル共重合体における各成分の重合割合としては、(メタ)アクリル酸エステルが10〜40重量%、とくに15〜35重量%、マレイン酸ハーフエステルが0.5〜10重量%、とくに1〜8重量%、残余がエチレンの割合にあることが望ましい。
(メタ)アクリル酸エステルの重合割合が過少であると充分な柔軟性が得られず、一方その重合割合が過大になると、耐カット性が低下するのでゴルフボール材料として欠点が大きくなり過ぎる。該共重合体におけるマレイン酸ハーフエステルの重合割合が過少であると、アイオノマーにした場合に充分な反発弾性は得られない。一方、その量があまり多くなっても反発弾性の向上は期待できず、むしろ柔軟性や反発弾性が低下し、またメルトフローレートが極端に下がり、流動性が損なわれるので適当な範囲に調整すべきである。
【0016】
本発明におけるエチレン・(メタ)アクリル酸エステル・マレイン酸ハーフエステル共重合体のアイオノマーとしては種々の金属種のものが使用できる。例えばリチウム、ナトリウム、カリウムのような1価金属、マグネシウム、カルシウム、亜鉛のような2価金属を代表例として例示することができる。これら金属における中和度としては、20〜100モル%、とくに30〜90モル%である。
【0017】
前記アイオノマーとしては230℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.001〜20g/10分、とくに0.01〜15g/10分のものが好適である。またショアD硬度が5〜35、とくに10〜30のものを用いるのが好ましい。
【0018】
このようなアイオノマーはそれ自体ゴルフボール材料として用いることができるが、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマーと任意割合で配合して用いることができる。
【0019】
このようなアイオノマーとして、アクリル酸及び又はメタアクリル酸含有量が10〜30重量%、好ましくは12〜25重量%のエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体を中和度が25モル%以上、好ましくは30〜80モル%の割合で金属イオンで中和したものを好適例として挙げることができる。
金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムのような1価金属、マグネシウム、カルシウム、亜鉛のような2価金属を例示できる。また亜鉛のような遷移金属のアイオノマーにあっては、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンのようなアミンで錯化されたアイオノマーであってもよい。
このようなアイオノマーとしては、190℃,2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜30g/10分、とくに0.5〜15g/10分のものが好ましく、またショアD硬度が50〜80、特に55〜75のものが好ましい。
【0020】
エチレン・(メタ)アクリル酸エステル・マレイン酸ハーフエステル共重合体のアイオノマーと、上記エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマーは、任意割合で配合して用いることができるが、両者の特長を生かすためには、80/20〜10/90好ましくは70/30〜20/80、とくに好ましくは60/40〜30/70の重量比となるような割合で配合して用いるのがよい。
【0021】
エチレン・(メタ)アクリル酸エステル・マレイン酸ハーフエステル共重合体のアイオノマー、あるいはこれとエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマーの配合物はゴルフボール材料として用いることができる。
好ましくはゴルフボールの表皮材料としての使用であるが、この外にスリーピースボールのアウターコア材料、ツーピースボールのコア材料、ワンピースボール材料としても使用できる。
【0022】
ゴルフボール材料としての使用に際し、本発明の目的を損なわない範囲において少量の他の重合体を配合してもよい。またゴルフボール材料に通常配合されているような種々の添加剤を配合してもよいことは勿論である。
このような添加剤として、各種着色剤、無機充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤などを例示することができる。例えば酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸亜鉛などの顔料や各種染料、色素などが代表的な添加剤である。
【0023】
【実施例】
まず本発明の組成物を調製するために使用した原料は表1の通りである。
【0024】
【表1】
Figure 0003640680
【0025】
また樹脂組成物及び原料の試験方法は以下の方法によった。
(1)MFR:
東洋精機製作所試験機を用い、190℃または230℃,2160gの荷重で測定した。
(2)硬度:
ショアーA硬度計(Zwick Gmbh & Co.製)を用い23℃で測定した(ASTM D2240)。
(3)曲げ剛性率:
東洋精機製作所製オルゼン式曲げ剛性測定機を使用して23℃で測定した(ASTM D747)。
(4)反発弾性:
(株)上島製作所製反発弾性試験機(振り子型)を使用して23℃で測定した。
【0026】
参考例▲1▼
30mmφ2軸押出機を用いて表2に示した配合割合で現行ゴルフボール表皮材として使用されている表1に示したエチレン共重合体アイオノマーA及びB(50/50重量部)を樹脂温度200℃、押出量4.0kg/hrでメルトブレンドし、得られた樹脂組成物の物性を評価した。その結果を表2に示した。反発弾性は高いが高硬度で柔軟性が乏しいことを示している。
【0027】
実施例▲1▼
65mmφベント押出機を用いて230℃でエチレン3元共重合体AにNaOH水溶液を注入して得られたエチレン3元共重合体アイオノマーAの物性を表2に示した。参考例▲1▼に比べて低硬度で柔軟であり反発弾性も63%と高い値を示していた。
【0028】
実施例▲2▼
エチレン3元共重合体Aの代わりにエチレン3元共重合体Bを用いNaOH水溶液の注入量が異なる以外は実施例▲1▼の操作を繰り返した。得られたエチレン3元共重合体アイオノマーBの物性を表2に示した。やはり低硬度で柔軟であり反発弾性も61%と高い値を示した。
【0029】
実施例▲3▼
ラボプラストミル150C型((株)東洋精機製作所)を用いてエチレン3元共重合体アイオノマーA,エチレン共重合体アイオノマーAおよびBを表2に示した配合割合で80g仕込み、220℃,60回転で10分間混練した。得られた配合物の物性を表2に示した。反発弾性を大きく損なわずに硬度が参考例▲1▼より低下し柔軟性を示した。
【0030】
比較例▲1▼及び▲2▼
実施例▲1▼及び▲2▼の柔軟エチレン3元共重合体アイオノマーの代わりに中和しない場合のエチレン3元共重合体の物性を表3に示した。実施例▲1▼及び▲2▼と比較して低硬度であるが反発弾性が低い。
【0031】
比較例▲3▼
実施例▲1▼及び▲2▼の柔軟エチレン3元共重合体アイオノマーの比較としてマレイン酸モノエチルの代わりにメタアクリル酸を使用したエチレン3元共重合体Cを使用してNaOH水溶液を注入する以外は実施例▲1▼の操作を繰り返し得られたエチレン3元共重合体アイオノマーCの物性を表3に示した。低硬度で柔軟であるが実施例▲1▼及び▲2▼に比較して反発弾性が非常に低い。
【0032】
比較例▲4▼
実施例▲3▼のエチレン3元共重合体アイオノマーの代わりにエチレン3元共重合体アイオノマーCを使用する以外は同じ配合割合で実施例▲3▼の操作を繰り返し、得られた配合物の物性を表3に示した。実施例▲3▼に比較して反発弾性が低い。
【0033】
【表2】
Figure 0003640680
【0034】
【表3】
Figure 0003640680
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、柔軟にして反発弾性の優れたゴルフボール材料が提供できる。かかる材料を表皮材とするゴルフボールは、ボールコントロールや打球感並びに飛距離が優れている。

Claims (2)

  1. エチレン・(メタ)アクリル酸エステル・マレイン酸ハーフエステル共重合体のアイオノマーからなるゴルフボール材料。
  2. エチレン・(メタ)アクリル酸エステル・マレイン酸ハーフエステル共重合体のアイオノマー及びエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマーを配合してなるゴルフボール材料。
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