JP3640543B2 - 電子楽器の鍵盤装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子ピアノなどに用いられる電子楽器の鍵盤装置に関し、特に鍵およびハンマーの回動の範囲を規制するとともにそれらの衝撃を緩和するストッパを備えた鍵盤装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の鍵盤装置として、例えば実開昭63−153296号公報に開示されたものが知られている。この鍵盤装置では、棚板上に支持されたシャーシに、複数の鍵およびハンマーが回動自在に取り付けられている。鍵は、シャーシの後端部に支持され、前方に延びていて、前端部下端にはストッパ部が設けられている。ハンマーは、シャーシの中央部に支持され、シャーシと棚板の間を前方に延びるとともに、その上面には鍵のアクチュエータ部が当接している。また、ハンマーは、アコースティックピアノと同様のタッチ重さを付与するためのものであり、このため、鍵よりもかなり大きな重量を有している。
【0003】
また、この鍵盤装置は、鍵およびハンマーの回動の上下限位置をそれぞれ規制する緩衝機能付きの鍵上限ストッパ、鍵下限ストッパ、ハンマー上限ストッパおよびハンマー下限ストッパを備えている。鍵下限ストッパおよび鍵上限ストッパは、シャーシの上下面の前端部に、シャーシを上下に挟むように設けられている。一方、ハンマー上限ストッパは、鍵上下限ストッパよりも後方に位置して、シャーシの下面に取り付けられ、ハンマー下限ストッパは、ハンマー上限ストッパに対向するように棚板上に設けられている。
【0004】
この鍵盤装置では、押鍵時、鍵は下方に回動し、ハンマーは、鍵のアクチュエータ部で押下されることによって、上方に回動する。このとき、鍵下限ストッパは、鍵の下面が当接することにより鍵の回動を下限位置に規制するとともに、鍵の当接による衝撃を緩和する。一方、ハンマー上限ストッパは、ハンマーの前端部が当接することによりハンマーの回動を上限位置に規制するとともに、その衝撃を緩和する。この状態から鍵が離鍵されると、鍵およびハンマーはそれぞれの初期位置に復帰回動し、このときの鍵の上限位置は、そのストッパ部が鍵上限ストッパに当接することにより、ハンマーの下限位置は、その前端部がハンマー下限ストッパに当接することによりそれぞれ規制され、同時に、鍵やハンマーの衝撃が、これらの鍵上限ストッパおよびハンマー下限ストッパによって、それぞれ緩和される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、鍵盤装置のストッパには、鍵やハンマーの回動範囲を規制するストップ機能に加えて、それらが当接するときの衝撃を緩和する緩衝機能が要求される。一方、上記従来の鍵盤装置では、鍵の回動の上限位置および下限位置ならびにハンマーの回動の上限位置および下限位置を規制するストッパが、鍵上限ストッパ、鍵下限ストッパ、ハンマー上限ストッパおよびハンマー下限ストッパとして、それぞれ単一の部材で構成されているため、上記ストップ機能および緩衝機能を同時に良好に満たしにくいという問題がある。
【0006】
特に、ハンマー上限ストッパの場合には、ハンマーの重量がもともと大きいとともに、鍵の強打時にはハンマーの回動速度も大きくなることで運動エネルギーが大きくなるため、ハンマーを確実にストップし、かつ良好に緩衝することは困難になる。すなわち、ストップ機能を優先して、ハンマー上限ストッパを比較的堅い緩衝材で構成した場合には、ハンマーを良好に緩衝できず、ハンマーやシャーシに悪影響を及ぼすとともに、ハンマーが反発することで、しっかりとした「止まり感」が得られず、タッチ感が悪化してしまう。逆に、緩衝機能を優先して、ハンマー上限ストッパを比較的柔らかい緩衝材で構成した場合には、特に鍵の強打時に、大きな運動エネルギーをもつハンマーによってハンマー上限ストッパが大きく圧縮されることで、ハンマーが上限位置を大きく越えて過回動(オーバーシュート)してしまい、押下された鍵との衝突による異音の発生やタッチ感の悪化などの不具合を招くことになる。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、鍵の強打時においても、ハンマーの過回動を確実に防止できるとともに、ハンマーを良好に緩衝することができる電子楽器の鍵盤装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明の請求項1による電子楽器の鍵盤装置は、ハンマー支点を有するシャーシと、このシャーシに回動自在に支持された複数の鍵と、シャーシのハンマー支点に回動自在に支持され、複数の鍵の押鍵にそれぞれ連動して上方に回動する複数のハンマーと、緩衝材で構成され、回動するハンマーが当接することによりハンマーの回動の上限位置を規制するハンマー上限ストッパと、緩衝材で構成され、ハンマーが上限位置を越えて回動したときに当接することによりハンマーの過回動を阻止するハンマー過回動防止ストッパと、を備え、ハンマーは、ハンマーに重量を付与するための質量体を備え、ハンマー上限ストッパは、質量体を間にしてハンマー支点と反対側に配置され、ハンマー過回動防止ストッパは、ハンマー支点と質量体の間に配置されていることを特徴とする。
【0009】
この電子楽器の鍵盤装置によれば、鍵が押鍵されると、ハンマーは、これに連動して上方に回動し、所定角度まで回動したときにハンマー上限ストッパに当接する。鍵が弱打された場合には、緩衝材で構成されたハンマー上限ストッパは、ハンマーによって若干、圧縮されながら、ハンマーを緩衝し、上限位置にストップさせる。鍵が強打された場合には、ハンマーは、ハンマー上限ストッパをさらに圧縮させながら且つハンマー上限ストッパにより減速されながら、上限位置を越えて回動し、緩衝材で構成されたハンマー過回動防止ストッパに当接することによって、それ以上の回動を阻止される。
【0010】
以上のように、本発明の鍵盤装置では、鍵が強打された場合、ハンマーは、ハンマー上限ストッパにまず当接することで、ハンマー上限ストッパで減速され、その後、ハンマー過回動防止ストッパに当接することで、それ以上の回動を阻止される。すなわち、ハンマー上限ストッパおよびハンマー過回動防止ストッパによる2段階のストップ作用によって、鍵の強打時におけるハンマーの過回動を確実に防止することができる。また、両ストッパによる2段階の緩衝作用によって、ハンマーを良好に緩衝することができる。また、ハンマー上限ストッパが、質量体を間にしてハンマー支点と反対側の位置、すなわちハンマー支点に対して質量体よりも外側に配置されていて、弱打時に質量体よりも腕の長さの大きい位置でハンマーをストップさせるので、アコースティックピアノに近似した、しっかりとした止まり感を得ることができる。また、ハンマー過回動防止ストッパが、ハンマー支点と質量体の間、すなわちハンマー上限ストッパとは離れて配置されているので、強打時にハンマーが両ストッパに当接する際の反力が、ハンマーの1点に集中せず、異なる2点で分散してハンマーに作用することで、ハンマーの損傷などの不具合を回避できるとともに、両ストッパをシャーシなどの空いたスペースを利用して効率的に配置することができる。
【0011】
この場合、ハンマー上限ストッパは、ハンマー過回動防止ストッパよりも柔らかい材料で構成されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、鍵の弱打時には、ハンマーが、より柔らかいハンマー上限ストッパにのみ当接してストップされるため、ハンマーの反発を生じることなく、ソフトな良好な止まり感を得ることができる。一方、鍵の強打時には、ハンマーは、ハンマー上限ストッパによる減速の後、より堅いハンマー過回動防止ストッパに当接してストップさせられるので、ハンマーの過回動をより確実に防止することができる。
【0015】
さらにこれらの場合、鍵の回動の上限位置を規制する鍵上限ストッパをさらに備え、この鍵上限ストッパおよびハンマー過回動防止ストッパが、互いに同一の部材で構成されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、鍵の上限位置を規制する鍵上限ストッパと、ハンマー過回動防止ストッパが共用されていて、鍵上限ストッパを省略できるので、それにより、ハンマー過回動防止ストッパ18を付加した分が相殺され、ストッパ全体としての部品点数を増やすことなく、本発明の前述した作用を得ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1および図2は、本発明の一実施形態による電子ピアノの鍵盤装置を示している。この鍵盤装置1は、88鍵用のものであり、両図に示すように、シャーシ2と、シャーシ2の後端部に回動自在に取り付けられた白鍵3aおよび黒鍵3bから成る88個の鍵3(両図には白鍵3aおよび黒鍵3bの各1個のみ図示)と、鍵3ごとにシャーシ2の中央部に回動自在に取り付けられた複数のハンマー4(両図に1個のみ図示)などを備えている。
【0018】
シャーシ2は、中央の6個の中間シャーシ2a(図3に1個のみ図示)と、図4に示す最低音部用シャーシ2bと、図5に示す最高音部用シャーシ2cの、計8個のシャーシにより分割構成され、左右方向に並んだ状態で棚板5上に支持されている。
【0019】
中間シャーシ2aは、図3に示すように、F鍵からE鍵までの1オクターブ分、計12個の鍵3(7個の白鍵3aと5個の黒鍵3b)およびハンマー4を支持するものであり、同じ寸法および形状を有し、同一の金型で成形されたABS樹脂などの射出成形品で構成されている。最低音部用および最高音部用シャーシ2b、2cは、図4および図5に示すように、中間シャーシ2aの一部として構成されている。より具体的には、最低音部用シャーシ2bは、中間シャーシ2aを切断線A−A’に沿って切断した右側の部分で構成されている。一方、最高音部用シャーシ2cは、中間シャーシ2aを切断線B−B’に沿って切断した左側の部分で構成されている。
【0020】
以上の計8個のシャーシ2は、図1に示すように、左右方向に延びる4本の連結バー6にねじ7で固定され、連結バー6上に左右方向に並んだ状態で連結されている。各連結バー6は、シャーシ2の左右方向の全体に渡る長さの細長い1本のアングル状のものであり、例えば鋼板の曲げ加工によって形成されている。また、前後方向に延びる補強用のリブ8がオクターブごとに配置され(図1に1個のみ図示)、連結バー6間にねじ9で固定されている。このリブ8は、例えば1枚の鋼板を金型を用いて曲げプレス加工することによって、形成されている。以上のように連結バー6で連結され、リブ8で補強されたシャーシ2は、前後の連結バー6を介して、ねじ10で棚板5に固定されている。
【0021】
シャーシ2には、後端部に鍵3を支持する鍵用軸孔11が、中央部にハンマー4を支持するハンマー用軸穴12(ハンマー支点)が、さらに、前部およびハンマー用軸穴12の前後には、ハンマー4が通過する第1〜第3ハンマー通過孔13a〜13cが、第1ハンマー通過孔13aの後ろ側には、鍵3のストッパ部14が通過する鍵通過孔15が、それぞれ鍵3ごとに形成されている。さらに、シャーシ2には、第1ハンマー通過孔13aの前側で各白鍵3aに相当する位置に白鍵用ガイド16aが、鍵通過孔15の後ろ側で各黒鍵3bに相当する位置に黒鍵用ガイド16bが、それぞれ立設されている。
【0022】
また、図1に示すように、シャーシ2には、鍵3およびハンマー4の回動を規制するために、鍵下限ストッパ17、ハンマー過回動防止ストッパ18、ハンマー下限ストッパ19、およびハンマー上限ストッパ52が設けられている。鍵下限ストッパ17およびハンマー過回動防止ストッパ18は、鍵通過孔15と黒鍵用ガイド16bの間の同じ位置に、シャーシ2を挟むようにしてシャーシ2の上面および下面にそれぞれ取り付けられている。また、ハンマー下限ストッパ19は、前側の連結バー6の下端部に取り付けられ、ハンマー上限ストッパ52は、白鍵用ガイド16aの後ろ側に位置して、シャーシ2の下面に取り付けられている。
【0023】
これらのストッパ17〜19、52はいずれも、シャーシ2の左右方向の全体にわたる1本の帯状の緩衝材、例えば、表面にフェルトを貼り付けた発泡ウレタンなどで構成されている。これらのうち、ハンマー上限ストッパ52は、ハンマー過回動防止ストッパ18よりも発泡度の高い柔らかい材料で構成されている。また、図2に示すように、ハンマー過回動防止ストッパ18およびハンマー上限ストッパ52の厚さおよび配置は、押鍵時にハンマー4の後述するストッパ部30がハンマー上限ストッパ52に先に当接し、ハンマー4が上限位置を越えてさらに回動したときにハンマー過回動防止ストッパ18に当接するように、設定されている。
【0024】
さらに、シャーシ2のハンマー用軸穴12の後ろ側には、鍵3の押鍵情報を検出するための鍵スイッチ20が設けられている。この鍵スイッチ20は、シャーシ2にねじ止めされたプリント基板21と、その上面に設けられたスイッチ本体22とを備えている。スイッチ本体22は、シャーシ2の第3ハンマー通過孔13cに下方から臨んでおり、プリント基板21を介して、電子ピアノの発音を制御する制御装置(図示せず)に接続されている。
【0025】
鍵3(白鍵3aおよび黒鍵3b)は、例えばAS樹脂の射出成形品で構成されており、両側壁3c(図1に一方のみ図示)と天壁3dから成る逆U形の断面を有している。鍵3の両側壁3cの後端部には、内方に突出する突起23が形成されていて、この突起23がシャーシ2の後端部の鍵用軸孔11に係合することによって、鍵3がシャーシ2に回動自在に支持されている。また、鍵3には、その両側壁3cの前部から下方に延びるフック状のストッパ部14が形成されている。
【0026】
一方、ハンマー4は、前後方向に延びるハンマー本体25と、ハンマー本体25の前端部の左右両側に取り付けられた2枚の質量板(質量体)26(図1に片側のもののみ図示)とで構成されている。ハンマー本体25は、ABS樹脂の射出成形品などで構成され、その後端部には両側方に突出するピン状の突起27が形成されていて、この突起27がシャーシ2のハンマー用軸穴12に係合することによって、ハンマー4がシャーシ2に回動自在に支持されている。
【0027】
ハンマー本体25のハンマー用軸穴12よりも後ろ側の部分は、スイッチ押圧部28になっており、このスイッチ押圧部28は、シャーシ2の第3ハンマー通過孔13cに臨み、鍵スイッチ20のスイッチ本体22に上方から対向するとともに、このスイッチ押圧部28に、鍵3の下面に設けたアクチュエータ部29が上方から当接している。また、ハンマー本体25は、その中央部がシャーシ2の第2ハンマー通過孔13bを上下に横切ってシャーシ2の下側を前方に延びており、その前端にはストッパ部30が前方に突出して形成されている。
【0028】
また、質量板26は、ハンマー4にアコースティックピアノと同様のタッチ重さを付与するためのものであり、鋼板などの重い材料で構成され、ハンマー過回動防止ストッパ18とハンマー上限ストッパ52の間に位置するような位置関係で、ハンマー本体25に取り付けられている。
【0029】
以上の構成により、鍵3が押鍵されると、鍵3は、そのストッパ部14がシャーシ2の鍵通過孔15を通過しながら下方に回動するとともに、白鍵用ガイド16aまたは黒鍵用ガイド16bにより、左右方向にぶれないように案内される。また、このときの鍵3の下限位置は、その下面が鍵下限ストッパ17に当接することによって規制されるとともに(図2の状態)、そのときの衝撃が鍵下限ストッパ17で緩和される。
【0030】
この鍵3の押鍵に伴い、ハンマー4は、スイッチ押圧部28が鍵3のアクチュエータ部29で押圧されることによって、上方(図1の時計方向)に回動する。この回動の際、ハンマー4の質量板26がシャーシ2の第1ハンマー通過孔13cを通るとともに、質量板26の後ろ側の部分が、押下された鍵3のストッパ部14間を通る。また、白鍵3aのハンマー4の場合には、質量板26は、第1ハンマー通過孔13cを越えて、白鍵3aの両側壁3c間に入り込むようになっている(図2参照)。
【0031】
そして、ハンマー4が所定角度まで回動したときに、そのストッパ部30がハンマー上限ストッパ52に当接する(図2の状態)。鍵3の押鍵が弱打の場合には、ハンマー上限ストッパ52は、ハンマー4によって若干、圧縮されながら、ハンマー4を緩衝し、上限位置にストップさせる。一方、鍵3が強打された場合には、ハンマー4は、ハンマー上限ストッパ52をさらに圧縮させながら且つハンマー上限ストッパ52により減速されながら、上限位置を越えてさらに回動し、ハンマー過回動防止ストッパ18に当接することによって、それ以上の回動を阻止される。
【0032】
また、このハンマー4の回動に伴い、そのスイッチ押圧部28が鍵スイッチ20のスイッチ本体22を押下し、オン動作させることによって、鍵3の押鍵情報が検出され、その検出結果に応じて、制御装置により電子ピアノの発音が制御される。
【0033】
この状態から鍵3が離鍵されると、鍵3およびハンマー4はそれぞれの初期位置に復帰回動し、このときのハンマー4の下限位置は、ストッパ部30がハンマー下限ストッパ19に当接することによって規制されるとともに(図1の状態)、そのときの衝撃がハンマー下限ストッパ19で緩和される。一方、鍵3の上限位置は、そのストッパ部14がハンマー過回動防止ストッパ18に当接することによって規制されるとともに、そのときの衝撃がハンマー過回動防止ストッパ18で緩和される。すなわち、本実施形態では、ハンマー過回動防止ストッパ18が、鍵3の上限位置を規制する鍵上限ストッパとして兼用されている。
【0034】
以上のように、本実施形態の鍵盤装置1によれば、鍵3が強打された場合、ハンマー4は、ハンマー上限ストッパ52にまず当接することで、ハンマー上限ストッパ52で減速され、その後、ハンマー過回動防止ストッパ18に当接することで、それ以上の回動を阻止される。すなわち、ハンマー上限ストッパ52およびハンマー過回動防止ストッパ18による2段階のストップ作用によって、鍵3の強打時におけるハンマー4の過回動を確実に防止することができる。その結果、押下された鍵3との衝突による異音の発生やタッチ感の悪化などの不具合を確実に回避することができる。また、両ストッパ52、18による2段階の緩衝作用によって、ハンマー4を良好に緩衝することができる。
【0035】
また、鍵3の弱打時には、ハンマー4が、より柔らかいハンマー上限ストッパ52にのみ当接してストップされるため、ハンマー4の反発を生じることなく、ソフトな良好な止まり感を得ることができる。一方、鍵の強打時には、ハンマー4は、ハンマー上限ストッパによる減速の後、より堅いハンマー過回動防止ストッパ18に当接してストップさせられるので、ハンマー4の過回動をより確実に防止することができる。
【0036】
さらに、弱打時に、ハンマー上限ストッパ52が質量体26よりも外側の位置でハンマー4をストップさせるので、アコースティックピアノに近似した、しっかりとした止まり感を得ることができる。また、ハンマー過回動防止ストッパ18が、ハンマー用軸穴12と質量板26の間、すなわちハンマー上限ストッパ52とは離れて配置されているので、強打時にハンマー4が両ストッパ52、18に当接する際の反力が、ハンマー4の1点に集中せず、異なる2点で分散してハンマー4に作用することで、ハンマー4の損傷などの不具合を回避できるとともに、両ストッパ18、52をシャーシ2の空いたスペースを利用して効率的に配置することができる。
【0037】
また、ハンマー過回動防止ストッパは、ハンマー支点と質量体の間、すなわちハンマー上限ストッパとは離れて配置されている。したがって、ハンマーが両ストッパに当接する際の反力が、ハンマーの1点に集中せず、異なる2点から分散してハンマーに作用することで、ハンマーの損傷などの不具合を回避できるとともに、両ストッパをシャーシなどの空いたスペースを利用して効率的に配置することができる。
【0038】
さらに、本実施形態では、ハンマー過回動防止ストッパ18が、鍵3の上限位置を規制する鍵上限ストッパとして兼用され、鍵上限ストッパを省略できるので、それにより、ハンマー過回動防止ストッパ18を付加した分が相殺され、ストッパ全体としての部品点数を増やすことなく、本発明の前述した効果を得ることができる。
【0039】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態で示した各構成要素の材質などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。また、実施形態は、本発明を電子ピアノに適用した例であるが、本発明は、これに限らず、シンセサイザなどの他のタイプの電子楽器に適用することも、もちろん可能である。
【0040】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の電子楽器の鍵盤装置は、鍵の強打時においても、ハンマーの過回動を確実に防止できるとともに、ハンマーを良好に緩衝することができるなどの効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による電子ピアノの鍵盤装置の離鍵状態における側断面図である。
【図2】図1の鍵盤装置の押鍵状態における側断面図である。
【図3】中間シャーシの(a)平面図および(b)側断面図である。
【図4】最低音部用シャーシの平面図である。
【図5】最高音部用シャーシの平面図である。
【符号の説明】
1 鍵盤装置
2 シャーシ
3 鍵
4 ハンマー
12 ハンマー用軸穴(ハンマー支点)
18 ハンマー過回動防止ストッパ
26 質量板(質量体)
52 ハンマー上限ストッパ
Claims (3)
- ハンマー支点を有するシャーシと、
このシャーシに回動自在に支持された複数の鍵と、
前記シャーシの前記ハンマー支点に回動自在に支持され、前記複数の鍵の押鍵にそれぞれ連動して上方に回動する複数のハンマーと、
緩衝材で構成され、回動する前記ハンマーが当接することにより当該ハンマーの回動の上限位置を規制するハンマー上限ストッパと、
緩衝材で構成され、前記ハンマーが前記上限位置を越えて回動したときに当接することにより当該ハンマーの過回動を阻止するハンマー過回動防止ストッパと、
を備え、
前記ハンマーは、当該ハンマーに重量を付与するための質量体を備え、前記ハンマー上限ストッパは、前記質量体を間にして前記ハンマー支点と反対側に配置され、前記ハンマー過回動防止ストッパは、前記ハンマー支点と前記質量体の間に配置されていることを特徴とする電子楽器の鍵盤装置。 - 前記ハンマー上限ストッパは、前記ハンマー過回動防止ストッパよりも柔らかい材料で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の電子楽器の鍵盤装置。
- 前記鍵の回動の上限位置を規制する鍵上限ストッパをさらに備え、この鍵上限ストッパおよび前記ハンマー過回動防止ストッパが、互いに同一の部材で構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の電子楽器の鍵盤装置。
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JP2023050756A (ja) | 鍵盤楽器の鍵盤装置 |
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