JP3640377B2 - 合成樹脂発泡体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、とくに制振性能にすぐれ、制振部材などに好適に使用される、新規な合成樹脂発泡体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近時、たとえば家庭電化製品や自動車、各種産業機械、機器類などにおいて、これまでよりも一層の低振動化、低騒音化を求める声が高まりつつあり、それに対応すべく、振動を減衰する機能にすぐれた制振部材に対する需要が急速に増加してきている。
【0003】
代表的な制振部材としては加硫ゴム製のものがあげられるが、このものは、未加硫のゴムに加硫剤その他の成分を加えて混合、混練したのち所定の形状に成形し、ついでそれを、たとえば加硫缶中で高温、高圧をかけて加硫するなど、その製造に手間がかかる上、一度加硫したものは破損した際に簡単に補修できない、用途廃止後にリサイクルできないといった問題がある。
【0004】
そこで、加硫ゴムと同様に粘弾性を有しながらそれ自体は熱可塑性であって、加硫などの工程を必要とせずに、通常の熱可塑性樹脂と同様の成形加工が可能である上、破損した際の補修や用途廃止後のリサイクルなども容易に行うことができる、いわゆる熱可塑性エラストマーを基本として、制振部材に適するように制振性能を向上させた材料が各種、提案されている。
【0005】
そのうちの1つに、スチレンとビニルイソプレンとのトリブロック共重合体、すなわち2つのポリスチレンブロック間をポリイソプレンの中間ブロックで繋いだ、いわゆるS−I−S型のスチレンブロックコポリマーのうち、中間ブロックを構成するポリイソプレンの少なくとも一部を、通常のシスまたはトランス−1,4結合によるジエン構造でなく、1,2結合また3,4結合によるビニル構造とした共重合体があげられる。
【0006】
このものは各ブロックの鎖長や、あるいは中間ブロック中に含まれる、上記ビニル構造を形成するビニルイソプレン単位の割合などを変更することにより、最適な制振性能を発揮する温度範囲などの制振特性が調整される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の、スチレンとビニルイソプレンとのトリブロック共重合体(以下「S−vI−Sトリブロック共重合体」とする)は、その中間ブロック中にビニル構造を導入するために特殊な合成方法が必要で、制振性能にはすぐれるものの高価であるため、現在のところその用途は、たとえば各種精密計測機器の制振用などに限られており、汎用されるに至っていないのが現状である。
【0008】
すなわち、とくに家庭電化製品や自動車、あるいは一般機械類の制振などの汎用の用途においては、制振部材が、ある程度厚みのある塊(ブロック)状に形成され、そのためには多量の材料が必要となるため、上記のように高価な材料は使用できないのである。
そこで発明者らは、上記S−vI−Sトリブロック共重合体に発泡剤を添加するなどして発泡させることで、その制振性能に影響を及ぼすことなく、体積を増加させる(増量する)ことを検討した。
【0009】
しかし、一般に熱可塑性エラストマーは発泡が難しく、たとえば上記S−vI−Sトリブロック共重合体の場合、単体では、発泡倍率で表しておよそ2倍以下程度までしか発泡させることができないために増量の効果が十分でなかった。
S−vI−Sトリブロック共重合体を架橋させてやると、その発泡倍率を2倍以上に高めることが可能となるが、それによって得られる架橋物はもはや熱可塑性を有しないため、通常の加硫ゴムと同様に、破損した際の補修や用途廃止後のリサイクルができないという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、上記S−vI−Sトリブロック共重合体を、破損した際の補修や用途廃止後のリサイクルなどを容易に行えるようにするために架橋せずに、しかも汎用の用途に利用できるように高発泡させて大幅に増量することが可能な、新規な合成樹脂発泡体を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、発明者らは、S−vI−Sトリブロック共重合体に、発泡性にすぐれた第2の樹脂成分をポリマーブレンドして、架橋せずにその発泡性を向上することを検討した。
そして種々の樹脂について検討した結果、上記S−vI−Sトリブロック共重合体に対する相溶性にすぐれ、溶融、混合などするとS−vI−Sトリブロック共重合体と均一相を形成しうるスチレン系樹脂を使用すると、
・ 架橋しない状態でも高倍率で良好に発泡できること、
・ このように高倍率で発泡した状態では、制振に寄与しないスチレン系樹脂を添加したことによる制振効果の低下を補って、S−vI−Sトリブロック共重合体単独での非発泡の、あるいは前記のように2倍以下程度の低発泡のものと同等またはそれ以上の良好な制振性能を発揮できること、
を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明の合成樹脂発泡体は、少なくとも、
(a) スチレンとビニルイソプレンとのトリブロック共重合体(S−vI−Sトリブロック共重合体)と、
(b) スチレン系樹脂と
を、重量比でa/b=30/70〜80/20の範囲で混合し、発泡させたことを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を説明する。
本発明の合成樹脂発泡体は、上記のように少なくとも、
(a) S−vI−Sトリブロック共重合体と、
(b) スチレン系樹脂と
を混合し、発泡させることによって形成される。
【0014】
上記(a)のS−vI−Sトリブロック共重合体としては、前述したように2つのポリスチレンブロック間をポリイソプレンの中間ブロックで繋いだS−I−S型のスチレンブロックコポリマーのうち、中間ブロックを構成するポリイソプレンの少なくとも一部を、通常のシスまたはトランス−1,4結合によるジエン構造ではなく、式(1):
【0015】
【化1】
【0016】
で表される1,2結合の、または式(2):
【0017】
【化2】
【0018】
で表される3,4結合の、いわゆるビニルイソプレン単位からなるビニル構造とした共重合体が、いずれも使用可能である。
かかる共重合体は、これも前述したように各ブロックの鎖長や、あるいは中間ブロック中に含まれる、上記ビニルイソプレン単位の割合などを変更することにより、最適な制振性能を発揮する温度範囲などの制振特性が調整される。
【0019】
S−vI−Sトリブロック共重合体の具体例としては、これに限定されないがたとえば、(株)クラレ製の商品名HYBRAR VS−1などがあげられる。
上記S−vI−Sトリブロック共重合体と混合される(b)のスチレン系樹脂としてはポリスチレン、すなわちスチレンの単独重合体が最も好適に使用される他、トリブロック共重合体との相溶性を有する限り、スチレンと、他のビニルモノマーとの共重合体なども使用可能である。
【0020】
スチレンと共重合される他のビニルモノマーとしては、たとえばα−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸などがあげられる。
またスチレン系樹脂としては、発泡体の耐衝撃性などを向上するために、たとえばポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体などのジエン系のゴム状重合体を添加したゴム変性スチレン系樹脂、いわゆるハイインパクトポリスチレンを使用してもよい。
【0021】
これらスチレン系樹脂もそれぞれ単独で使用される他、2種以上を併用することもできる。
上記(a)のS−vI−Sトリブロック共重合体と、(b)のスチレン系樹脂との混合割合は、重量比a/bで表してa/b=30/70〜80/20の範囲内である必要がある。
【0022】
上記の範囲よりも(a)のトリブロック共重合体が少ない場合には、当該トリブロック共重合体に基づく、前述した高い制振性能が得られない。
また逆に、上記の範囲よりも(b)のスチレン系樹脂が少ない場合には、当該スチレン系樹脂を添加したことによる、発泡性を高める効果が不十分となって、十分に高い発泡倍率を持った発泡体が得られない。
【0023】
なお上記両成分の重量比a/bは、上記の範囲内でもとくにa/b=40/60〜70/30の範囲内であるのが好ましい。
上記(a)のS−vI−Sトリブロック共重合体と、(b)のスチレン系樹脂とを混合して発泡させる方法としては、押出機を用いたいわゆる押出発泡法が好適に採用される。
【0024】
すなわち
▲1▼ 上記(a)(b)の両樹脂を押出機のスクリューシリンダ内で溶融、混合し、かつ溶融状態の樹脂に、当該樹脂の溶融温度以下の沸点を有する揮発性の発泡剤、または気体状の発泡剤を圧入しながら、上記スクリューシリンダの先端に接続したダイを通して大気中に押し出して発泡させるか、
▲2▼ (a)(b)の両樹脂を、熱分解型の発泡剤とともに、押出機のスクリューシリンダ内で、上記発泡剤の熱分解温度以上の温度で溶融、混合し、ついで上記スクリューシリンダの先端に接続したダイを通して大気中に押し出して発泡させるか、あるいは
▲3▼ 上記両法を併用する、すなわち(a)(b)の両樹脂を、熱分解型の発泡剤とともに、押出機のスクリューシリンダ内で、上記発泡剤の熱分解温度以上の温度で溶融、混合し、かつ溶融状態の樹脂に、当該樹脂の溶融温度以下の沸点を有する揮発性の発泡剤、および/または気体状の発泡剤を圧入しながら、上記スクリューシリンダの先端に接続したダイを通して大気中に押し出して発泡させる、
ことにより、本発明の合成樹脂発泡体が連続的に製造される。
【0025】
なお(a)(b)の両樹脂は、それぞれ別々に押出機に投入して、押出機内で溶融、混合してもよいが、両樹脂の粉体などをあらかじめドライブレンドしておいた混合物、または両樹脂をあらかじめ溶融、混合しておいた混練物を、押出機に投入してもよい。このようにすると溶融、混合の時間を短縮できるという利点がある。
【0026】
上記の方法で使用される揮発性の発泡剤としては、たとえばプロパン、ブタン、ペンタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロペンタンなどの環状脂肪族炭化水素類、トリクロロフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、メチルクロライドなどのハロゲン化炭化水素類などがあげられる。
また気体状の発泡剤としては、たとえば二酸化炭素、空気、窒素などのガスがあげられる。
【0027】
さらに熱分解型の発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどの有機系の発泡剤や、あるいは弱酸と、当該弱酸との反応によって二酸化炭素を発生する無機塩とを組み合わせた無機系の発泡剤とがあげられる。
無機塩としては、たとえばアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩または重炭酸塩(重炭酸ナトリウムなど)や、炭酸アンモニウムなどがあげられる。また弱酸としては、たとえばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、イタコン酸、シトラコン酸、アジピン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸、オレイン酸、カプリル酸、エナント酸、カプロン酸、吉草酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、フタル酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、クロル酢酸、ジグリコール酸などの有機酸や、あるいはホウ酸などの無機酸、酸性酒石酸カルシウムなどの酸性酸などがあげられ、このうちとくにクエン酸が好適に使用される。弱酸と無機塩とは、それぞれ別々に樹脂に添加してもよく、両者を、ワックス類や熱可塑性樹脂などでコーティングしたり、あるいはマスターバッチ化した状態で添加してもよい。
【0028】
これらの発泡剤もそれぞれ単独で使用される他、2種以上を併用することもできる。
またとくに揮発性または気体状の発泡剤を使用する場合は、気泡を微細化するために、発泡核剤(気泡調整剤)を添加してもよい。発泡核剤としては、たとえばタルク、炭酸カルシウム、クレー、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ガラスビーズ、ガラスパウダー、酸化チタン、カーボンブラック、無水シリカ、ケイ酸カルシウムなどの無機微粉末があげられる。
【0029】
本発明の合成樹脂発泡体には、上記発泡剤、発泡核剤の他に、たとえば着色剤、難燃剤、滑剤(炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系などの各種ワックス類、金属石けん類、シリコーン油、低分子量ポリエチレンなど)、展着剤(流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ポリブテンなど)、分散剤などの各種添加剤を添加してもよい。これら添加剤は、発泡体を製造する際の妨げとならず、かつ製造される発泡体の特性、とくに制振性能に影響を及ぼさない程度の範囲で添加される。
【0030】
本発明の合成樹脂発泡体は、前述したように制振性能や、あるいは発泡による増量の効果などを考慮すると、(a)のトリブロック共重合体単独の場合に比べて、その発泡倍率が大きいことが好ましい。
発泡倍率の範囲についてはとくに限定されないが、発泡後の発泡体の密度で表して0.6〜0.035g/cm3の範囲内となるように発泡倍率を設定するのが好ましい。
【0031】
密度がこの範囲を超える場合には発泡倍率が十分でないので、制振性能を補う効果が不十分となって、発泡体の制振性能が低下するおそれがある。また前述したように、発泡によって材料を増量する効果も不十分となって、コストアップにつながるおそれもある。
一方、密度が上記の範囲未満では、発泡体の強度が低下し、荷重などによって発泡がつぶれるなどして、却って制振性能が低下するおそれがある。
【0032】
なお発泡体の密度は、上記の範囲内でもとくに0.5〜0.06g/cm3の範囲内であるのが好ましい。
かかる本発明の合成樹脂発泡体は、たとえば前述した押出発泡法によって連続的に製造されたものをカットしたり、あるいは逆に2個以上を接着したりすることによって所定の寸法とした上で、前述したように家庭電化製品や自動車、各種産業機械、機器類などの制振部材として好適に使用される。
【0033】
【実施例】
以下に本発明を、実施例、比較例に基づいて説明する。
実施例1
下記の各成分をドライブレンドして混合物を調製した。重量比a/bは70/30であった。
【0034】
つぎにこの混合物を、2本のスクリューシリンダを有するタンデム型の押出機のホッパに供給し、当該ホッパに接続された1本目のスクリューシリンダ内で溶融、混合しつつ、この1本目のスクリューシリンダの途中に設けたノズルから、シリンダ内に、揮発性の発泡剤としてのブタンを圧入した。ブタンの圧入量は、樹脂100重量部に対して2.0重量部とした。
【0035】
つぎに上記の溶融混合物を、1本目のスクリューシリンダから2本目のスクリューシリンダに連続的に供給し、当該2本目のスクリューシリンダ内で、発泡に適した温度まで均一に冷却したのち、この2本目のスクリューシリンダの先端に接続した、リップ幅W=90mm、厚みt=1.4mmのダイを通して、毎時30kgの吐出量で大気中に連続的に押し出して発泡させるとともに、一対のロール間を通して、その厚みが一定になるように矯正しつつ冷却して合成樹脂発泡体を製造した。
【0036】
かかる合成樹脂発泡体の幅は160mm、厚みは11mm、密度は0.075g/cm 3 であった。
実施例2
下記の各成分をドライブレンドして混合物を調製したこと以外は実施例1と同様にして合成樹脂発泡体を製造した。重量比a/bは30/70であった。
【0037】
かかる合成樹脂発泡体の幅は165mm、厚みは13mm、密度は0.065g/cm 3 であった。
【0038】
比較例1
下記の各成分をドライブレンドして混合物を調製したこと以外は実施例1と同様にして合成樹脂発泡体を製造した。
かかる合成樹脂発泡体の幅は165mm、厚みは13mm、密度は0.065g/cm 3 であった。
【0039】
比較例2
前記実施例1と同じ配合のドライブレンドされた混合物を、単軸型の押出機を用いて溶融、混合し、押出成形して、厚み5mmの、非発泡のシート体を製造した。
制振性能試験
上記各実施例、比較例で得た発泡体、ならびに非発泡のシート体の制振性能を、振動試験機を用いて測定した。
【0040】
すなわち発泡体、シート体をカットして作製した直径39mm、厚み4mmの測定サンプルを、振動試験機の加振機の上にセットし、その上に2.0kgの荷重を加えた状態で振動させた際の加速度を、振動試験機のピックアップで測定した。そしてこの測定を、振動周波数を種々変化させながら繰り返し行い、最大の伝達率を示した周波数値を共振周波数(Hz)として求め、共振周波数(Hz)が小さいほど制振性能は良好であると評価した。
【0041】
結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表より、実施例1、2の合成樹脂発泡体は、比較例1、2に比べてすぐれた制振性能を有することが確認された。
【0044】
【発明の効果】
以上、詳述したように本発明によれば、制振性能にすぐれたS−vI−Sトリブロック共重合体を、破損した際の補修や用途廃止後のリサイクルなどを容易に行えるようにするために架橋せずに、しかも高い制振性能を維持しつつ汎用の用途に利用できるように高発泡させて大幅に増量することが可能な、新規な合成樹脂発泡体を提供できるという特有の作用効果を奏する。
Claims (2)
- 少なくとも、
(a) スチレンとビニルイソプレンとのトリブロック共重合体と、
(b) スチレン系樹脂と
を、重量比でa/b=30/70〜80/20の範囲で混合し、発泡させたことを特徴とする合成樹脂発泡体。 - 密度が0.6〜0.035g/cm3の範囲内である請求項1記載の合成樹脂発泡体。
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