JP3639669B2 - 鋼製セグメントとその接合方法 - Google Patents

鋼製セグメントとその接合方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、上下水道、地下鉄、電信ケ−ブル収容トンネル、地下道、取水トンネル、放水トンネルあるいは共同溝等の管渠を、シ−ルド工法等で築造する場合、また深礎杭、地下空間、貯水タンクなどの円筒構造物を構築する場合等の建設分野において使用される鋼製セグメントに関し、特に鉄筋等の連結部材を介して接合する鋼製セグメントとその接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、相対する鋼製セグメントにおける主桁間をボルトを介して引張接合する継手構造として、特公平4−72039号公報に記載されているものが知られている。これは、鋼製セグメントの継手板の内側に、中間部が継手板から離反するように円弧状に湾曲している鋼製ア−チ形状板の両端部が溶接により固着されて、タイドア−チが構成され、そのア−チ形状板と継手板との間に空間が設けられ、ア−チ形状板の中央部に継手板のボルト孔と一致する中心線を有するボルト孔が設けられ、ア−チ形状板のボルト孔と継手板のボルト孔とを挿通するボルトによって、相対する鋼製セグメントを接合するものである。
【0003】
このア−チ形状板のタイドア−チにより、ボルトによる締付力または外力によるボルトの引張力を、直接的に主桁に伝達することができ、しかもボルトの締付力または引張力を、ア−チ形状板の両側の脚部に、分散して伝達することができるので、相対する鋼製セグメント間の大きな継手接合耐力と継手剛性を確保できる。
【0004】
しかし、上記ア−チ形状板は、継手板の局部的な剛性を高める事はできるが、継手板全体の剛性を高める事はできず、主桁直近に配置したものしか効果がなく、継手板の長手方向にわたって広範囲にボルトを配置しても、主桁から距離が離れたボルトは、継手板が撓んでしまって、引張ボルトとしてはほとんど引張力に寄与しない。また、ボルトからの荷重は、上記ア−チ形状板により継手板への支圧力集中は緩和できるが、継手板への総荷重には変化無く、主桁と継手板の溶接部には大きな引張力が作用し、全溶け込み溶接となりコストアップは避けられない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、相対する鋼製セグメントを結合するに際して、大きな剛性と強度を有するとともに、施工が簡単で、コストの低廉な鋼製セグメントの継手構造と接合方法が求められている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を有利に解決するために、本発明に係る鋼製セグメントは主桁の端部に継手板を接合し、前記継手板と平行に、かつ主桁の長手方向中央寄りに縦リブを配設し、前記継手板および前記縦リブに挿通孔を設け、前記各挿通孔にわたって鉄筋を貫通させてなり、各鋼製セグメントの内側空間全体にコンクリ−トを充填して、合成構造化する鋼製セグメントであって、前記鉄筋は、後退時に先端が前記継手板より突出しないで鋼製セグメント内に内蔵可能なように可動的に設けられていることを特徴とする。
【0007】
また本発明は、前記鋼製セグメントの内側空間全体へのコンクリ−トの充填に代えて、前記主桁と、前記継手板と、前記縦リブとによって形成される接合梁の内側空間にのみコンクリ−トを充填して、合成構造化することを特徴とする。
【0008】
また本発明は、前記鉄筋の後端部にアンカ−部材が定着されることを特徴とする。
【0009】
本発明は、前記のいずれかに記載の鋼製セグメントを用いた接合方法であって、先端が前記継手板より突出しないように、前記鉄筋を鋼製セグメント内に内蔵させ、相対する鋼製セグメントと仮組みした後に、当該鉄筋の先端を前記継手板より相対する鋼製セグメント側に押し出し、相対する継手板に貫通させて掛け渡し、各鋼製セグメントの内側空間にコンクリ−トを充填して接合することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。図1ないし図15は、この発明の一実施形態の鋼製セグメント1を示すものであって、各図に示すように一対の主桁2の間に2枚の中間主桁2aがほぼ等間隔を置くと共に前記各主桁2と平行に配置され、各主桁2、2aの両端部に継手板4が前記主桁2、2aと直角に当接されて、溶接により固着されている。またスキンプレ−ト16は、前記主桁2と継手板4と中間主桁2aと縦リブ9の下端面に当てがわれ、溶接にて固着されている。
【0011】
前記左右の継手板4の間において、これと間隔を置いて平行に複数の補強リブ(以下鋼製縦リブという)9が、前記主桁2、2aと交差するように直角に配置され、かつ各主桁2、2aの部分で分割されて配置され、各主桁2、2aに溶接により固着されている。
【0012】
前記鋼製セグメント1内において、前記継手板4と、当該継手板と平行にかつ主桁の長手方向中央寄りに配設された縦リブ9と、当該縦リブ9と前記継手板4とが接着する主桁2、2aとによって接合梁10が形成される。
【0013】
鋼製セグメント1の前記継手板4と前記縦リブ9には、それぞれ軸線が一致するように挿通孔6、6aを設けられている。そうして第1の前記鋼製セグメント1の前記挿通孔6,6aと、第2の鋼製セグメント1の同じく継手板4と縦リブ9に設けられた前記軸線と一致する挿通孔6,6aとにわたって鉄筋3を貫通させ、各鋼製セグメント1の内側空間全体にコンクリ−トを充填して、合成構造化する。
【0014】
前記鉄筋3は、図1に示すように節またはリブ17のついた異形鉄筋を使用する事が望ましいが、通常の鉄筋を使用してもよい。
【0015】
また、図2ないし図4には、鋼製セグメント1に対し可動的に設けられた鉄筋3の先端が継手板4より突出しないように、当該鉄筋3を鋼製セグメント1内に内蔵させた状態が示されている。このような構成にすると、鋼製セグメント1を搬送する時または組立て時に、鉄筋3の先端が鋼製セグメント1から突出することがないので、鋼製セグメント1を回動、回転あるいは吊り上げまたは吊り下げる場合に好都合である。図4に示すように、ボルト孔6、6aの径は、鉄筋3が可動できるように、鉄筋3の径よりも大きくしている。このような鋼製セグメント1の場合は、鉄筋3の先端が継手板4より突出しない位置に、鉄筋3を鋼製セグメント1内に内蔵させ、仮組み後に、鉄筋3の先端を継手板4より相対するセグメント1側に押し出して接合する。なお、鉄筋3は、鋼製セグメント1に内蔵されたときは、粘着テ−プ等の固着手段を用いて主桁2または中間主桁2aに仮固定しておくものである。
【0016】
次に前記鋼製セグメント1の仮組立工程を説明する。図1〜図4に示した鋼製セグメント1を使用して、例えば矩形断面のトンネル15の内壁を構成すべく、鋼製セグメント環状体を仮組みする場合には、図5〜図13のように行う。図5は、本発明の、鋼製セグメント1が矩形断面のトンネル15の内壁として構成された例を示し、図6と図9と図11と図12は、前記トンネル15の内壁の下方を見た図である。各図における矢印G方向がトンネル軸方向で、図6において、鉄筋3によって鋼製セグメント1を接合してコンクリ−トを打設してある側が既設側であり、鉄筋3が内蔵されている側が新設側である。
【0017】
各図に示すように、既設の鋼製セグメント1の継手板4に、新設の鋼製セグメント1の継手板4を当接させ、これらの継手板4に設けられている仮結合用ボルト孔13によって仮固定用のボルト18、ナットにより既設の鋼製セグメント1に新設の鋼製セグメント1を仮固定する。このような工程を順次行って、図5に示すように矩形等の環状の第1列目のセグメント環状体を築造する。なお、矩形環状体の場合には四隅部にそれぞれ側面がL形の鋼製セグメントが配設される。(但し図示省略)。
【0018】
次に既設の矩形環状体側の鋼製セグメント1における、第1列目のセグメント環状体の築造が終わると、次に、新設側に当接されている主桁2の長手方向に等間隔を置いて配設されているボルト孔13と、新設の矩形環状体における既設側の主桁の長手方向に、既設側と同一間隔を置いて配設されているボルト孔13を挿通するボルト18およびナットにより、両鋼製セグメントを仮固定する。
【0019】
以上のようにして仮固定終了した後は、各鋼製セグメント1に内蔵されている鉄筋3を引き出して、鋼製セグメント1の継手板4に設けられた挿通孔6と、当該継手板4と平行にかつ中央寄りに配置された縦リブ9に設けられた、前記挿通孔6と一致する軸線を有する挿通孔6aとに挿通させ、鉄筋3の先端を相対するセグメント1側の継手板4と縦リブ9に同様に設けられた同一の軸線を有する挿通孔6、6aに貫通させた後、両鋼製セグメント1の内面空間全体にコンクリ−トを充填して合成構造化する。
【0020】
図14には本発明の第2の実施の形態が示されている。すなわち、上記の鋼製セグメント1の継手構造においては、鋼製セグメント1の主桁及び中間主桁2、2aの端部に主桁と直角に配設された継手板4と、当該継手板4と平行にかつ主桁2の長手方向中央寄りに配設された中間縦リブ9と、当該縦リブ9と前記継手板4が固着される主桁及び中間主桁2、2aとに囲まれた剛性の高い接合梁10が形成されている。第2の実施形態では、前記接合梁10を利用して、同図に示すように、各鋼製セグメント1の前記各挿通孔6、6aに鉄筋を貫通させた後、前記接合梁10の内面空間にのみコンクリ−トを充填して合成構造化するものである。
【0021】
以上のような第1、第2の実施形態においては、いずれも継手板4の背面に鋼板で囲まれたコンクリ−ト合成構造の剛性の高い梁が形成されることになり、極めて大きな剛性と強度とを有する鋼製セグメントの継手構造となる。
【0022】
前記接合梁10または鋼製セグメント1の全体にコンクリ−トを充填した合成構造鋼製セグメントにおいては、鉄筋3を貫通させるだけでよく、ボルトを用いた場合のようにこのボルトにナットを締め付けて固着する必要がなく、鋼製セグメント1を仮固定後は、鉄筋を配置してコンクリ−トを打設するだけで済むので施工が極めて簡易となる。
【0023】
本発明の第3の実施形態及びその変更例として示す図15と図16には、前記鉄筋の後端部にアンカ−部材5が定着されている状態が示されている。各図には、アンカ−部材5の1例としてアンカ−プレ−トおよびナットが示されているが、他の部材を用いてもよい。つまり、図15は、アンカ−プレ−トおよびナットを鉄筋の先端に螺合して溶接により固着した場合を示し、図16はアンカ−プレ−トを2個のナット(一方がロックナットとなる)で固定した場合を示している。
【0024】
また、本発明の第4の実施形態として図17に示すように、鉄筋3を、主桁2長手方向に延伸して、隣接する鋼製セグメント1の鉄筋3とカプラ−7により結合し、または隣接する側から伸長する鉄筋3をラップ配置(但し、図示せず)させた後にコンクリ−トを打設して、隣接する鋼製セグメント1同士をと締結してもよい。この場合は矩形または円形等の環状体の全体にわたって、合成構造化した鋼製セグメント1を連結することができる。
【0025】
なお、前記各実施形態においては、平版状の鋼製セグメント1を示したが、円弧状の主桁を使用することにより、円形状のセグメントリングが築造される。
【0026】
また、矩形環状体を築造した鋼製セグメント1の前後左右間は、凹溝14に嵌合した環状止水パッキング20により、水蜜的に接合され、地中の湧水が鋼製セグメント間から漏水することがない。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、鋼製セグメントの継手板と縦リブを貫通する鉄筋を配設した後、各鋼製セグメントの内側空間全体にコンクリ−トを充填して合成構造化するため、継手板の背面に鋼板で囲まれたコンクリ−ト合成構造の、剛性の高い鋼製セグメントが構成される。鋼殻で拘束されたコンクリ−トは鉄筋との間で大きな付着力を発揮することがしられており、極めて大きな剛性と引張強度を有する合成セグメントの継手構造を得ることができる。
【0028】
また本発明は、前記主桁と、前記継手板と、前記縦リブとによって形成される接合梁の内側空間にのみコンクリ−トを充填することにより、鉄筋が貫通する合成構造化した剛性の高い梁を有するセグメントの継手構造が簡易に得られる。
【0029】
また、鉄筋は、長尺のボルトを用いる場合のように、このボルトにナットを締結する必要がなく、鉄筋の配置仮固定後、コンクリ−トを打設するだけで済むので、施工が簡易となり、大きなコストダウンが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る鋼製セグメントの斜視図である。
【図2】固着具を内部に納めた状態の図1の鋼製セグメントの正面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図2のB−B線に沿う断面図である。
【図5】図1に示す鋼製セグメントを用いて、矩形断面のトンネル内壁として組み立てた状態の断面説明図である。
【図6】図1の鋼製セグメントを複数接合して図5のトンネル内壁を構成している途中の状態の正面図である。
【図7】図6のC−C線に沿う断面図である。
【図8】図6のD−D線に沿う断面図である。
【図9】図6において鉄筋を隣接するセグメントにわたって引き出した状態の正面図である。
【図10】図9のE−E線に沿う断面図である。
【図11】図9において新設セグメントと仮組した状態の鋼製セグメントの正面図である。
【図12】全体にコンクリ−トを打設した状態の鋼製セグメントの正面図である。
【図13】図12のF−F線に沿う断面図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態として、接合梁の内側空間にのみコンクリ−トを打設した状態の鋼製セグメントを示す断面図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態として、全体にコンクリ−トを打設した鋼製セグメントおよびアンカ−部材の状態を示す断面説明図である。
【図16】同じく図15に示すアンカ−部材の変形使用例の断面説明図である。
【図17】本発明の第4の実施の形態として、鉄筋相互を連結した状態を示す断面説明図である。
【符号の説明】
1 鋼製セグメント
2 主桁
2a 中間主桁
3 鉄筋
4 継手板
5 アンカ−部材
6 挿通孔
6a 挿通孔
7 カプラ−
8 カプラ−固定ナット
9 縦リブ
10 接合梁
13 仮止め用ボルト孔
14 環状止水パッキング用凹溝
15 トンネル
16 スキンプレ−ト
17 リブ
18 仮固定用ボルト
19 環状止水パッキング

Claims (4)

  1. 主桁の端部に継手板を接合し、前記継手板と平行に、かつ主桁の長手方向中央寄りに縦リブを配設し、前記継手板および前記縦リブに挿通孔を設け、前記各挿通孔にわたって鉄筋を貫通させてなり、各鋼製セグメントの内側空間全体にコンクリ−トを充填して、合成構造化する鋼製セグメントであって、前記鉄筋は、後退時に先端が前記継手板より突出しないで鋼製セグメント内に内蔵可能なように可動的に設けられていることを特徴とする鋼製セグメント
  2. 前記請求項1に記載する、鋼製セグメントの内側空間全体へのコンクリ−トの充填に代えて、前記主桁と、前記継手板と、前記縦リブとによって形成される接合梁の内側空間にのみコンクリ−トを充填して、合成構造化することを特徴とする鋼製セグメント
  3. 前記鉄筋の後端部にアンカ−部材が定着されている請求項1または請求項2記載の鋼製セグメント
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼製セグメントを用いた接合方法であって、先端が前記継手板より突出しないように、前記鉄筋を鋼製セグメント内に内蔵させ、相対する鋼製セグメントと仮組みした後に、当該鉄筋の先端を前記継手板より相対する鋼製セグメント側に押し出し、相対する継手板に貫通させて掛け渡し、各鋼製セグメントの内側空間にコンクリ−トを充填して両者を接合することを特徴とした鋼製セグメントの接合方法。
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