JP3639433B2 - 誘電体フィルタおよびアンテナ共用器 - Google Patents

誘電体フィルタおよびアンテナ共用器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯域透過フィルタあるいはセルラ基地局用の送信信号・受信信号共用器(Duplexer)などの電子機器に使用して好適な誘電体フィルタ及びアンテナ共用器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の誘電体フィルタとして図20と図21に示すように、箱型のシールドケース201の内部に円柱状の共振器202を必要個数整列配置した構造の誘電体フィルタ203が知られている。この誘電体フィルタ203に内臓されている複数の共振器202は、シールドケース201の底板上に設けられた支持ブロック205によって個々にシールドケース201の内部空間に浮かせた状態で支持されている。また、シールドケース201の一端部側に入力結合素子206と入力端子207とが設けられ、該入力結合素子206と共振器202との間に初段の同軸共振器208が設けられるとともに、シールドケース201の他端部側に出力結合素子209と出力端子210とが設けられ、該出力結合素子209と共振器202との間に終段の同軸共振器211が設けられている。
【0003】
図20と図21に示す従来構造の誘電体フィルタ203は、円柱型の共振器202・・・を導波管の役目をなすシールドケース201の内部に設けた構造であり、図22の2点鎖線に示すように初段の入力結合素子206とそれに隣接する同軸共振器208を電磁界結合させることができ、更に他の共振器202も順次電磁界結合させることで電磁界的な主結合を構成することができる結果、誘電体フィルタの機能を奏する。
【0004】
また、図20と図21に示すシールドケース201の内部に配列された複数の共振器202のうちの離間したものどうしを副結合素子212aを備えた伝送線路212で接続して副結合することにより電磁気的に副次結合させ、有極形誘電体フィルタを構成することができ、前述の電磁界的主結合を経て終段の共振器に至る信号の位相と、前記電磁界的な副次結合を経て終段の共振器に至る信号の位相を互いに逆相とすることができる。
【0005】
次に、図20と図21に示す従来構造の誘電体フィルタ203を応用した誘電体共振器の他の構造例として、図23に示すように2列に配列された6個の共振器202を備えたシールドケース213の内部に共振器202・・・を列毎に仕切る仕切部材214を設け、仕切部材214の端部に結合窓214aを設けて共振器202・・・を平面視コ字型に配置し、このシールドケース213の一端の入力側213aから出力側213bにかけて入力端子207と入力結合素子206と同軸共振器208と共振器202・・・と同軸共振器211と出力結合素子209と出力端子210とを順次設けた構造の誘電体共振器215が知られている。
この構造の誘電体共振器215にあっては、平面視コ字型に配置された共振器202・・・が形成する電磁界的な主結合に対し、窓部217を介して隣接する共振器202、202が電磁気的に副次結合するので、図20と図21に示す誘電体フィルタ203の構造よりも副次結合のための回路を簡略化できる特徴を有していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図23に示す誘電体共振器215を誘電体フィルタとして用いた場合の減衰量の周波数特性を図24に示す。
図24に示すように減衰量の周波数特性は所定の範囲において一定の減衰量帯域を示し、この範囲を透過帯として、その透過帯以外は急激に減衰量が増加する等脚台形型の曲線を示し、前記透過帯以外で減衰量が急激に増加する領域には符号219で示すトラップと称される減衰量の特異領域が生成するものであった。このトラップ219が生じるということは帯域フィルタとして見た場合に信号減衰の切れが良くなることを意味するので帯域フィルタとしては好ましいものであると考えられる。
【0007】
ところが、前記図23に示す構造の誘電体共振器215は通常TEモードの共振器として知られているが、この誘電体共振器215をTMモードの共振器として使用すると、主結合の回路と副次結合の回路が同相になっていしまい、透過帯域の外側に前述のトラップ219を生じない、いわゆる信号の切れの悪い減衰曲線となってしまう問題があった。
【0008】
よって本発明の課題は、TMモードとして用いてもトラップを伴う良好な信号減衰効果を発揮させることができる誘電体フィルタを提供することにある。
また、このような誘電体フィルタを用いることで信号減衰能力の優れたアンテナ共用器を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために本発明の誘電体共振器は、導電性のケースの内部に複数の誘電体ブロックが個々に前記ケースに電気的に接続した状態で少なくとも2列並列収容され、隣接する2列を構成する前記複数の誘電体ブロックが列方向に千鳥状に配置され、前記各誘電体ブロックが前記ケースの内部で互いに導電性の仕切部材で仕切られ、列に沿って並ぶ前記誘電体ブロック同士を電磁気的に結合させる主結合路を生成させる主結合手段が付設され、更に前記主結合路により生じる磁界を打ち消すトラップ結合を生じさせる次結合手段が隣接する列同士の間の近接する誘電体ブロック同士の間に位置する前記仕切部材に設けられてなることを特徴とする。
【0010】
前述の構造のごとく誘電体ブロックを2列以上千鳥状に並列して導電性のケース内に設けた構造により、列に沿って並ぶ誘電体ブロックに沿う電磁界的な主結合を生じさせると同時に、隣接する列どうしの間の近接する誘電体ブロックどうしの間に電磁界的な副次結合を生じさせることで、電磁界的な主結合に対して逆相となる副次結合によって透過帯域の外側にトラップを有する切れの良い減衰曲線をTMモードの場合でも発揮する。
【0011】
前記副次結合を生じさせる手段の一例として、誘電体ブロックの列を仕切る仕切部材に副次結合用の結合窓を設けても良く、副次結合を生じさせる誘電体ブロック同士を導体で電気的に接合しても良い。
誘電体ブロックの列を仕切る仕切部材に副次結合用の結合窓を設けることにより、透過帯域の高周波側にトラップを有する誘電体フィルタを提供することができ、副次結合を生じさせる誘電体ブロック同士を導体で電気的に接合することにより、透過帯域の低周波側にトラップを有する誘電体フィルタを提供することができる。
【0015】
更に本発明のアンテナ共用器は、先に記載の結合窓を用いて副次結合を生じさせる構成の誘電体フィルタを低周波側フィルタ素子とし、導体を用いて誘電体ブロック同士を接続することで副次結合を生じさせる構成の誘電体フィルタを高周波側のフィルタ素子として両フィルタ素子を並設してなることを特徴とする。
結合窓を用いて副次結合を生じさせる誘電体フィルタにあっては通過帯域の高周波域側にトラップが生じ、導体を用いて副次結合を生じさせる誘電体フィルタにあっては通過帯域の低周波域側にトラップが生じるとともに、両誘電体フィルタにおける透過帯域がずれるので、両者を結合することでトラップを有する減衰量の周波数特性を備える優れたアンテナ共振器を提供できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を参照して詳細に説明する。
図1ないし図3は本発明の誘電体フィルタの第1実施形態を示すもので、図1と図2は斜視図、図3は内部構造を示す断面図である。
本実施形態の誘電体フィルタ30は、金属板を薄型の箱状に組み立ててなるケース32、33、34、35、36、37、38、39を底板31上に2列に配列して概略構成されている。この形態において底板31の上では、ケース32、33、34、35がこれらの順に配置されて第1の列が構成され、ケース36、37、38、39がこれらの順に配置されて第2の列が構成されているが、第1の列のケース32、33、34、35と第2の列のケース36、37、38、39は各ケースの幅の半分程度を位置ずれさせて互い違いに、即ち全体的には列方向に沿って千鳥状に配列されている。
【0017】
図4は前述のケース32〜39が固定される底板31の平面形状を示す。この底板31には前述の複数のケースを装着するために各ケースの取付位置の外郭位置に溝孔31aと取付孔32Fが複数形成されるとともに、各ケースの取付位置の中央部に位置するように丸型の透孔31Aが形成されている。前記溝孔31aは、ケース32とケース36との境界位置と、ケース33とケース37との境界位置と、ケース34、35とケース38との境界位置とにそれぞれ形成されるとともに、更にケース32、33の境界位置と、ケース33、34の境界位置と、ケース34、35の境界位置と、ケース35、39の境界位置と、ケース39、38の境界位置と、ケース38、37の境界位置と、ケース37、36の境界位置のそれぞれに形成されている。また、取付孔32Fは、底板31の周縁部に沿って配置されており、ケース32、33、34、35、36、37、38、39の各コーナ部分に位置するように配置されている。
【0018】
また、透孔31Aは前記第1の列と第2の列に沿ってそれぞれ4個ずつ形成され、これらの透孔31A・・・は列方向に沿って千鳥状に形成されている。なお、透孔31Aの直径は、後述する誘電体ブロック45の直径よりも若干(数mm程度)小さくされている。なおまた、本実施形態では1枚の底板31上に複数のケース32〜39を並べた構造を採用したが、底板31をケース毎に区切った複数の底板から構成し、それらの底板同士を半田付け等の接合手段で接合して誘電体フィルタを構成しても良いのは勿論である。
【0019】
第1の列の1番目のケース32を図5に示すが、このケース32は、天板32aとこの天板32aの周辺部から延設された4つの側壁部32b、32c、32d、32eとからなり、4つの側壁部32b、32c、32d、32eを天板32aに対してほぼ直角に折り曲げ、各側壁部の接する部分を半田付けなどの接合手段により接合して一体化されている。また、天板32aには平面Ω型の透孔40が、その丸孔部40aを隣接するケース33側に向けて天板32aの中央部に位置させ、丸孔部以外の胴部40bを隣接するケース33側と反対側に向けて形成され、該ケース33側に位置する側壁部32dの中央部には主結合窓(主結合手段)41が形成されるとともに、側壁部32dに対向する側の側壁部32bの中央部には入力側の端子部42が形成されている。
【0020】
ケース32はそれらの側壁部の下端部に形成された複数の係止凸部32fを図4に示す底板31の溝孔31aあるいは取付孔32Fに嵌合し、ケース32の各側壁部の下端部を底板31に半田付けして固定されている。なお、本実施形態においてケース32の各部分は鋼板等の導電性の金属板を折り返して構成されているが、銀等の導電性の高い金属をメッキで着けることもある。なおまた、本実施形態において、天板32に形成された丸孔部40aの直径は前述の底板31の透孔31Aの直径と同一にされているが、同一の直径でなくとも差し支えない。
【0021】
次に、ケース32の内部中央には誘電体ブロック45(全体形状は図2を参照)が収容されている。
この誘電体ブロック45は、BaO−TiO2−Nd23系などの誘電材料からなるセラミック製の背の低い円柱体からなる。また誘電体ブロック45の上端面および下端面には、それぞれ導電性ペーストを塗布して焼き付けるなどして電極層45a、45bが形成されている。
そして、誘電体ブロック45の上端の電極層45aはケース32の天板32aの内面に天板32aの透孔40の丸孔部40aに位置合わせして、更に、誘電体ブロック45の下端の電極層45bは底板31の上面に底板31の透孔30Aに位置合わせして、クリーム半田や導電性ペーストを用いてそれぞれ接着固定されており、かつ電気的に接続されている。詳細には、誘電体ブロック45の電極層45aの周縁部分と天板32aとの接触部分周り、あるいは、電極層45bの周縁部分と底板31との接触部分周りの部分に半田を盛るか、導電性ペーストを焼き付けて電気的に接合されている。
【0022】
更に、誘電体ブロック45の下端側の電極層45bが底板31の透孔31Aに位置合わせされ、上端側の電極層45aがケース32の透孔40の丸孔部40aに位置合わせされているが、誘電体ブロック45の直径は底板31の透孔31Aの内径よりも若干大きく形成されるとともに、ケース32の透孔40の丸穴部分の内径よりも若干大きく形成されているので、誘電体ブロック45はケース32の天板32aと底板31との間に挟まれた状態とされている。
【0023】
この誘電体ブロック45の電極層45a、45bとケース32との電気的接続は、金属板と電極層を接触させることで電気的に容易に接続できるので、導電性ペーストや半田等の接合手段を特に用いなくとも構わないが、ケースと誘電体ブロックとの作成精度の関係で物理的に隙間を生じるおそれもあるのでクリーム半田や導電性ペースト等を用いて電気的に接合しておくことが確実な電気的接続を行う上で好ましい。
更に、ケース32の透孔40の胴部40bはビス等で着脱自在に装着された蓋体48で覆われている。この蓋板48はケース32の内部に別途設けられる図示略のヘリカル共振器を調整するためのものである。
【0024】
図6に第1の列の2番目に設けられるケース33を示す。このケース33はケース32と同様な鋼板等の金属板の折り返し構造からなる薄型の箱状であり、天板33aと側壁部33b、33c、33d、33eを有し、側壁部の下端部に係止凸部33f・・・が形成されていて、天板33aにほぼ直角に折曲された側壁部どうしの接触部分は半田付けされて薄型の箱状に組み付けられ、側壁部33bと33dの中央部には主結合窓(主結合手段)50が形成され、天板33aの中央部に丸型の透孔51が形成されている。
【0025】
このケース33は一方の主結合窓50を底板31上の前述のケース32の主結合窓41に連続させて底板31に取り付けられている。このケース33においても先のケース32と同様に底板31の溝孔31aあるいは取付孔32Fに対して係止凸部33fを嵌合し、各側壁部の下端部を底板31に半田や導電ペーストで接合することで固定され、その内部中央に先のケース32の場合と同様に誘電体ブロック45が固定されている。
【0026】
図7に第1の列の3番目に設けられるケース34を示す。このケース34はケース33と同様な金属板の折り返し構造からなる薄型の箱状であり、天板34aと側壁部34b、34c、34d、34eを有し、各側壁部の下端部に係止凸部34f・・・が形成されていて、天板34aにほぼ直角に折曲された側壁部どうしの接触部分は半田付けされて薄型の箱状に組み付けられ、側壁部34bと34dの中央部には主結合窓(主結合手段)52が形成され、天板34aの中央部に丸型の透孔53が形成されている。また、ケース34の側壁部34cにおいてそれに隣接する側壁部34b側の端部には副次結合窓(副次結合手段)54が形成されている。
【0027】
このケース34は一方の主結合窓52を底板31上の前述のケース33の主結合窓50に連続させ、副次結合窓54を第2の列側に向けて底板31に取り付けられている。このケース34においても先のケース33と同様に底板31の溝孔31aあるいは取付孔32Fに対して係止凸部34fを嵌合し、側壁部の下端部を底板31に半田付けすることで固定され、その内部中央にケース32の場合と同様に誘電体ブロック45が固定されている。
【0028】
図8に第1の列の4番目に設けられるケース35を示す。このケース35はケース34と同様な鋼板等の金属板の折り返し構造からなる薄型の箱状であり、天板35aと側壁部35b、35c、35d、35eを有し、側壁部の下端部に係止凸部35f・・・が形成されていて、天板35aにほぼ直角に折曲された側壁部どうしの接触部分は半田付けされて薄型の箱状に組み付けられ、側壁部35bの中央部には主結合窓(主結合手段)55が形成され、側壁部35cにおいて側壁部35d側の部分に主結合窓(主結合手段)56が形成され、天板35aの中央部に丸型の透孔57が形成されている。
【0029】
このケース35は主結合窓55を底板31上のケース34の主結合窓52に連続させ、主結合窓56を第2の列側に向けて底板31に取り付けられている。このケース35においても先のケース34と同様に底板31の溝孔31aあるいは取付孔32Fに対して係止凸部35fを嵌合し、側壁部の下端部を底板31に半田付けすることで固定され、その内部中央に誘電体ブロック45が先のケース32の場合と同様に固定されている。
【0030】
図9に第2の列の4番目に設けられるケース39を示す。このケース39はケース35と同様な鋼板等の金属板の折り返し構造からなる薄型の箱状であり、天板39aと側壁部39b、39c、39d、39eを有し、各側壁部の下端部に係止凸部39f・・・が形成されていて、天板39aにほぼ直角に折曲された側壁部どうしの接触部分は半田付けされて薄型の箱状に組み付けられ、側壁部39bの中央部には主結合窓(主結合手段)60が形成され、側壁部39eにおいて側壁部39b側の部分に主結合窓(主結合手段)61が形成され、天板39aの中央部に丸型の透孔67が形成されている。
【0031】
このケース39は主結合窓61を底板31上の第1の列のケース35の主結合窓56に連続させて底板31に取り付けられている。このケース39においてもケース32の場合と同様に底板31の溝孔31aあるいは取付孔32Fに対して係止凸部39fを嵌合し、側壁部の下端部を底板31に半田付けすることで固定され、その内部中央に誘電体ブロック45が固定されている。
【0032】
次に第2列目の3番目に設けられるケース38は先に説明した図6に示すケース33と略同一形状とされ、ケース38の両側壁部に設けられている図3に示す主結合窓(主結合手段)62の一方を先のケース39の主結合窓60に連続させて底板31上に先に説明のケース33と同様に固定され、その内部中央に誘電体ブロック45が固定されている。
【0033】
図10に第2の列の第2番目に設けられるケース37を示す。このケース37は他のケースと同様な金属板の折り返し構造からなる薄型の箱状であり、天板37aと側壁部37b、37c、37d、37eを有し、側壁部の下端部に係止凸部37f・・・が形成されていて、天板37aにほぼ直角に折曲された側壁部どうしの接触部分は半田付けされて薄型の箱状に組み付けられ、側壁部37b、37dの中央部には主結合窓(主結合手段)63が形成され、側壁部37eにおいて側壁部37b側の部分に副次結合窓(副次結合手段)65が形成され、天板37aの中央部に丸型の透孔66が形成されている。
【0034】
このケース37は一方の主結合窓63を底板31上の先のケース38の主結合窓62に連続させ、副次結合窓65を第1の列のケース34の副次結合窓54と連通させて底板31に取り付けられている。このケース37においても先のケース32の場合と同様に底板31の溝孔31aあるいは取付孔32Fに対して係止凸部37fを嵌合し、各側壁部の下端部を底板31に半田付けすることで固定され、その内部中央に誘電体ブロック45が固定されている。
【0035】
次に第2の列の1番目に設けられるケース36は先に説明した通り第2の列のケース32と略同一形状とされていて、図2に示す天板36aと側壁部36b、36c、36d、36eを有し、側壁部36eの中央部に設けられた主結合窓68を底板31上の先のケース37の主結合窓63に連続させて他のケースと同等の手段により底板31上に取り付けられ、その内部中央に誘電体ブロック45が固定されている。
【0036】
以上説明の如くケース32、33、34、35とケース36、37、38、39がそれぞれ列をなして底板31上に固定されていて、図3に示すように各ケースに形成されている主結合窓(主結合手段)41、50、50、52、52、55、56、61、60、62、62、63、63、68が底板31の上面上をコ字型の平面折り返し状態に連続され、各ケース内の誘電体ブロック45・・・が電磁界結合をなした場合に電磁気的な主結合ループを構成できるように構成されている。従って本実施形態において誘電体ブロック45・・・による主結合ループを形成する主結合手段は、主結合窓41〜68が構成する。また、各誘電体ブロック45を個々に仕切る仕切部材は個々のケース32〜39の各側壁部が構成する

【0037】
また、ケース34に形成された副次結合窓54とケース37に形成された副次結合窓65は連通されていて、ケース34内の誘電体ブロック45とケース37内の誘電体ブロック45とが電磁気的に副次結合できるように構成されている。従って本実施形態において副次結合窓54、65が副次結合手段を構成する。
ところで本実施形態の誘電体フィルタ30において各ケース32〜39の側壁部には各々ネジ孔29Aが2個ずつ形成され、これらのネジ孔29A・・・のうちのいくつかには周波数調整用のネジ29が螺入されるとともに、ケース34とケース37の境界部分に形成されたネジ孔28Aにねじ込まれたネジ28は副次結合周波数調整用のネジである。
【0038】
次に前述のように構成された誘電体フィルタ30の作用効果について以下に説明する。
図1に示す構成の誘電体フィルタ30にあっては、各ケースに収容されている円柱状の誘電体ブロック45が個々に共振器を構成するので、各誘電体ブロック45の中心軸方向が電界の方向となると、磁界の向きは誘電体ブロック45の周方向となる。また、誘電体フィルタ30に設けられている誘電体ブロック45の磁界の向きは、主結合する方向に沿って並ぶ誘電体ブロック45において図3の矢印に示すように互いに隣接する誘電体ブロック45同士で異なる向き、即ち時計回りか反時計回りとなる。
【0039】
この形態の誘電体フィルタ30の等価回路を図11に示す。ケース32とその内部の誘電体ブロック45と底板31で誘電体共振器32Eが構成され、ケース33とその内部の誘電体ブロック45と底板31で誘電体共振器33Eが構成され、ケース34とその内部の誘電体ブロック45と底板31で誘電体共振器34Eが構成され、ケース35とその内部の誘電体ブロック45と底板31で誘電体共振器35Eが構成され、ケース36とその内部の誘電体ブロック45と底板31で誘電体共振器36Eが構成され、ケース37とその内部の誘電体ブロック45と底板31で誘電体共振器37Eが構成され、ケース38とその内部の誘電体ブロック45と底板31で誘電体共振器38Eが構成され、ケース39とその内部の誘電体ブロック45と底板31で誘電体共振器39Eが構成される。
これらの誘電体共振器32E〜39Eは電磁気的に主結合するが、誘電体共振器34Eと誘電体共振器38Eは電磁気的に副次結合する。
【0040】
図12にこの形態の誘電体フィルタ30における位相角の周波数特性と伝送特性を示す。この図から、誘電体共振器32E〜39Eが構成する主結合をなす主伝送路の位相角の周波数特性と、誘電体共振器34Eと38Eが構成する副次結合をなす副伝送路の位相角の周波数特性から、誘電体フィルタとしての減衰量の周波数特性が矩形波に近い等脚台形型となり、その高周波領域において主伝送路の伝送量と副次伝送路の伝送量が等量で逆位相となるので高周波域側に減衰量のトラップを生じることが容易に理解できる。
【0041】
従ってこの実施形態の誘電体フィルタ30によれば、受信周波帯域の透過帯域幅が比較的広く、送信周波数帯域の減衰量が極めて大きいとともに、透過帯域の挿入損失が少なく、更に透過帯域の外側にトラップを有する周波数切れの良いTMモードのフィルタを得ることができる。
【0042】
ところで、本実施形態の誘電体フィルタ30において、誘電体共振器32E〜39E内の電流が流る経路は、誘電体ブロック45、誘電体ブロック上端の電極層45a、各々のケースの天板、側壁部、底板、誘電体ブロック下端の電極層45b、誘電体ブロック45の順、あるいはその逆の順序に電流が循環する。
そして、本実施形態の誘電体共振器のケースにあっては、金属板どうしが接合されてなる側壁部の辺部分はいずれも電流の流れる方向に沿っており、電流の流れに直交する方向に接合辺はない。従って、各誘電体共振器32E〜39E内を流れる電流に対する接合辺の影響は小さく、接合辺に起因する電気抵抗増加は低減される結果、Q値が向上し、誘電体共振器としての特性は向上する。
【0043】
ここで、誘電体ブロックの上端の電極層および下端の電極層における電流の流れは、ほとんどが表面に沿って流れ、周波数が高くなるほど表面を流れ易くなることが知られている(表皮効果)。例えば、周波数1GHzの場合、電流は表面の厚さ2μm程度の部分を流れる。従って本実施形態のように各ケースの天板および底板に透孔が形成され、誘電体ブロック45の上端の電極層45aと下端の電極層45bの縁部のみがケースと接合されている構成としても、電流の流れに悪影響はない。
【0044】
図13は本発明に係る誘電体フィルタの第2実施形態の要部を示す断面図である。
この第2実施形態の誘電体フィルタ70の構造において、第1実施形態の構造と異なるのは、誘電体共振器34Fを構成するケース34の側壁部34cに設けられていた第1実施形態の副次結合窓54を省略し、誘電体共振器37Fの側壁部37eに設けられていた第1実施形態の副次結合窓65を省略し、代わりにケース34の側壁部34cに透孔34gをケース37の側壁部37eに透孔37gを形成し、これらの透孔34g、37gを通過するリード線などの導体71を設け、導体71の一端部をケース34内の誘電体ブロック45の上端の電極層45aに半田付けにより接続し、導体70の他端部をケース37内の誘電体ブロック45の下端の電極層45bに半田付けにより接続し、導体71が通過する透孔34g、37g部分とその周囲を樹脂材などの隙間埋め材72で封じて構成されている。
この第2実施形態におけるその他の構成は先に説明した第1実施形態の構成と同等である。
【0045】
この第2実施形態の誘電体フィルタ70においても誘電体共振器34Fと誘電体共振器37Fを副次結合させることができる。
ただしこの第2実施形態の誘電体フィルタ70にあっては、図14に示すような位相角の周波数特性と減衰量の周波数特性が得られる。
この図14に示す周波数特性から、誘電体共振器32E、33E、34F、35E、39E、38E、37F、36Eが構成する主結合をなす主伝送路の位相角の周波数特性と、誘電体共振器34Fと37Fが構成する副次結合をなす副伝送路の位相角の周波数特性から、誘電体フィルタとしての減衰量の周波数特性が台形型となり、低周波領域において主伝送路の伝送量と副次伝送路の伝送量が同量で逆位相となるので低周波域側に減衰量のトラップを生じることが分る。
従って第2実施形態の構造においても減衰量の低周波域側にトラップを有する優れた誘電体フィルタを得ることができる。
【0046】
図15は、先に説明した第1実施形態の誘電体フィルタ30と第2実施形態の誘電体フィルタ70を同軸ケーブル等の導体84、85で接続して構成されたアンテナ共用器90を示す。誘電体フィルタ30の入力端子42と誘電体フィルタ70の入力端子42とを導体84、85で接続し、接続点86にアンテナからの入力部91が設けられるとともに、誘電体フィルタ30の出力端子43に第1出力部82が接続され、誘電体フィルタ70の出力端子43に第2出力部83が接続されて構成されている。
【0047】
第1実施形態の誘電体フィルタ30の減衰量の周波数特性と第2実施形態の誘電体フィルタ70の減衰量の周波数特性を比較すると、後述する実施例から明らかなように、誘電体フィルタ30の透過帯域は誘電体フィルタ70の透過帯域よりも低周波域側に位置し、誘電体フィルタ70の透過帯域は誘電体フィルタ30の透過帯域よりも高周波域側に位置し、誘電体フィルタ30の減衰量にトラップを生じる帯域と誘電体フィルタ70の減衰量にトラップを生じる帯域はほぼ同じであるので、誘電体フィルタ30と誘電体フィルタ70を用いて図15に示すように接続することでアンテナ共用器90を得ることができる。
【0048】
この実施形態のアンテナ共用器90では、低域側の誘電体フィルタ30の入力側の端子部42に同軸ケーブル85を接続し、誘電体フィルタ30の高域側減衰域の周波数におけるインピーダンス位相を変化させて接続点86から誘電体フィルタ30の方を見たインピーダンスを無限大にする。このとき、誘電体フィルタ30の高域側減衰域の周波数は、高域側フィルタ70の通過帯の周波数であるので、この周波数においては、接続点86には低域側フィルタ30は接続されていないかのようにふるまう。また、高域側誘電体フィルタ70の入力側の端子部42に同軸ケーブル84を接続することにより、高域側の誘電体フィルタ70の低域側減衰域、即ち、低域側フィルタ30の通過帯の周波数で接続点86では高域側の誘電体フィルタ70は接続されていないかのようにふるまう。このようにしてアンテナ共用器として動作する。
【0049】
図16は本発明に係る誘電体フィルタの第3実施形態の構造を示す分解斜視図である。
この第3実施形態の誘電体フィルタは、5段構造のものであり、導電性の金属板からなる底板102と天板103との間に平面略凸字型の金属製の枠体105を設け、この枠体105内に誘電体ブロック106を5個収容して構成されている。
誘電体ブロック106は先の第1実施形態の誘電体ブロック45と同様に上端面と下端面に電極層が形成されている。
【0050】
枠体105は、平面略長方形状をなして第1の列の2個の誘電体ブロック106、106を収容する第1の収容部107と、平面略長方形状をなして第1の収容部107に並設され第2の列の2個の誘電体ブロック106、106を収容する第2の収容部108とを有し、更に、第1の収容部107と第2の収容部108の端部に接続して設けられ1個の誘電体ブロック106を収容した第3の収容部109を有して構成されている。
【0051】
この形態の構造において第1の収容部107と第2の収容部108は互いの側部壁を共用化して一体とされ、第1の収容部106と第2の収容部107と第3の収容部109との境界部分も共用化して一体化されている。この形態の構造において共用化された枠体107、108の側壁部が第1の列の誘電体ブロック106、106と第2の列の誘電体ブロック106、106を仕切る仕切部材を構成する。また、第1の列の誘電体ブロック106、106と第2の列の誘電体ブロック106、106は列方向に沿って同一位置に配置され、第3の収容部109の誘電体ブロック106は第1の列の誘電体ブロック106、106の列方向延長位置と第2の列の誘電体ブロック106、106の延長位置との中間位置に配置されている。
【0052】
次に、第1の収容部107において2個の誘電体ブロック106を仕切る中間位置に仕切板110が設けられ、この仕切板110の中央部には主結合窓(主結合手段)111が形成されていて誘電体ブロック106、106が電磁気的に主結合できるように構成されるとともに、第2の収容部108において2個の誘電体ブロック106を仕切る位置に仕切板112が設けられ、この仕切板112の中央部には主結合窓(主結合手段)113が形成されていて、誘電体ブロック106、106が電磁気的に主結合できるように構成されている。
【0053】
また、第1の収容部107と第3の収容部109との間の部分には枠体の一部を切り欠いて形成した主結合窓(主結合手段)115が形成されていて第1の収容部107の端部の誘電体ブロック106と第3の収容部109の誘電体ブロック106とが電磁気的に主結合できるように構成されるとともに、第2の収容部108と第3の収容部109との間の部分には枠体の一部を切り欠いて形成した主結合窓(主結合手段)116が形成されていて第3の収容部109の誘電体ブロック106と第2の収容部107の端部の誘電体ブロック106とが電磁気的に主結合できるように構成されている。従ってこの実施形態において主結合窓111、115、116、113が主結合手段とされている。
【0054】
更に、第1の収容部107の誘電体ブロック106、106のうち、第3の収容部109側の誘電体ブロック106と、第2の収容部108の誘電体ブロック106、106のうち、第3の収容部109側の誘電体ブロック106との間の枠体部分には、枠体の一部を切り欠いて副次結合窓(副次結合手段)117が形成されていて、この副次結合窓117を介して第1の収容部107の誘電体ブロック106と第2の収容部108の誘電体ブロック106とが電磁気的に副次結合できるように構成されている。従ってこの実施形態において副次結合窓117が副次結合手段とされている。
【0055】
なお、図16に示す第3の実施形態の構造においては、第1の収容部107と第2の収容部108と第3の収容部109の境界壁を共用化しているが、各収容部を第1または第2実施形態の構造の如く誘電体ブロック毎にこれらを囲む導電体からなる箱状に形成し、これらの箱状の収容部を結合して構成しても良いのは勿論である。
【0056】
次に、第1の収容部107において第3の収容部側に対する反対側には入力端子部120が形成され、この入力端子部120と誘電体ブロック106との間にはヘリカル共振器121が設けられるともに、第2の収容部108において第3の収容部側に対する反対側には入力端子部122が形成され、この入力端子部122と誘電体ブロック106の間にはヘリカル共振器123が設けられている。以上の構成に加え、天板103は枠体105の上面に対して複数のビス125により固定されて第3実施形態の誘電体フィルタが構成されている。
【0057】
図16に示す構造の誘電体フィルタは、第1の収容部107の2つの誘電体ブロック106、106と、第3の収容部105の誘電体ブロック106と第2の収容部108の誘電体ブロック106、106が順次電磁気的に主結合するとともに、副次結合窓117を介して第1の収容部107の誘電体ブロック106と第2の収容部108の誘電体ブロック106とが電磁気的に副次結合する結果、誘電体フィルタとしてのフィルタ機能を奏する。
【0058】
また、第1の収容部107の第1の誘電体ブロック106における磁界の向きが誘電体ブロック106の上面に沿って反時計方向周りであるとすると、第2番目の誘電体ブロック106における磁界の向きは時計方向になり、第3の収容部109の誘電体ブロック106における磁界の向きは反時計方向になり、第2の収容部108の第2番目の誘電体ブロック106における磁界の向きは時計方向になり、第2の収容部108の第1番目の誘電体ブロック106における磁界の向きは反時計方向になる。即ち、主結合方向に隣接する誘電体ブロック106毎に磁界の向きは順次方向が変換されて方向が異なるようになる。
従って第1の実施形態の誘電体フィルタ30と同様にトラップを有する減衰量の周波数特性を示す誘電体フィルタを得ることができる。
【0059】
図17は本発明に係る誘電体フィルタの第4実施形態の構造を示す分解斜視図である。
この第4実施形態の誘電体フィルタは、先に説明した実施形態の誘電体フィルタと基本構造はほぼ同等であるが、内部に誘電体フィルタ106を7個収容した7段構造とされたもので、導電性の金属板からなる底板132と天板133との間に平面略凸字型の金属製の枠体135を設け、この枠体135内に誘電体ブロック106を7個収容して構成されている。
この第4実施形態の構造は先の第3実施形態の構造とほぼ同等であり、符号137は誘電体ブロック106を3個収容した第1の収容部、符号138は誘電体ブロック106を3個収容した第2の収容部、139は1個の誘電体ブロック106を収容した第3の収容部である。また、この実施形態において枠体135において第1の収容部137の側壁部と第2の収容部138の側壁部が共用化されているが、この共用化された側壁部が第1の列の誘電体ブロック106・・・と第2の列の誘電体ブロック106・・・を仕切る仕切部材とされている。
【0060】
更に符号140は第1の収容部137の内部の誘電体ブロック106を仕切る仕切板、141は仕切板140に形成された主結合窓(主結合手段)、142は第2の収容部138の内部の誘電体ブロック106とを仕切る仕切板、143は仕切板142に形成された主結合窓(主結合手段)、145は第1の収容部137と第3の主要部139との境界部分に設けられた主結合窓、146は第3の収容部139と第2の収容部132との境界部分に設けられた主結合窓(主結合手段)、147は第1の列の中央の誘電体ブロック106と第2の列の中央の誘電体ブロック106との境界部分の枠体に設けられた副次結合窓(副次結合手段)をそれぞれ示す。従ってこの実施形態において、主結合窓141、141、145、146、143、143が主結合手段とされ、副次結合窓147が副次結合手段とされている。
【0061】
図17に示す7段の誘電体フィルタにおいても先の形態の5段の誘電体フィルタと同様に誘電体ブロック毎に交互に磁界の向きを時計回りか反時計周りにすることができ、誘電体ブロック106・・・どうしの電磁界的な主結合に加えて副次結合窓147を介する誘電体ブロック106どうしの間に電磁界的な副次結合を生じさせて誘電体フィルタとしての機能を奏し得ることができる。
従って第1の実施形態の誘電体フィルタ30と同様にトラップを有する減衰量の周波数特性を示す誘電体フィルタを得ることができる。
【0062】
【実施例】
「実施例1」
図1に示す第1実施形態の構造の誘電体フィルタを組み立てて減衰量の周波数特性を測定した。厚さ0.5mmの鋼板からなる底板を用い、第1の列に沿う底板部分の長さを123mm、幅を30mmに設定し、底板に形成した透孔の内径を12mmに設定し、BaO−TiO2−Nd23からなる円柱状の誘電体ブロック(直径17mm、高さ10mm)を8個用い、各誘電体ブロックを囲むケース(縦幅26mm、横幅28mm、高さ11.5mm)を厚さ0.3mmの鋼板を折り曲げ加工し銀メッキをして、接合辺部分を半田付けし、更に各ケースを底板に半田付けして作製した。
以上の構成の誘電体フィルタの入力端子に正弦波の信号を入力して出力端子からの出力波形を測定した結果を図18に示す。
【0063】
図18に示す結果から明らかなように、880MHz付近から910MHz付近までの範囲において減衰量2〜3dB程度のほぼフラットな透過領域を示し、この透過領域から外れた帯域のものは急激に減衰し得る特性を有する優れた減衰量特性を備えた波形が得られた。また、この減衰量波形において高域側に減衰量のトラップを生じていることも確認でき、切れの良好な減衰量特性が得られたことが明らかになった。
【0064】
「実施例2」
図1に示す構造と底板形状及びケース形状はほぼ同等とし、副次結合窓に代えて導体を配した図13に示す第2実施形態の構造の誘電体フィルタを作製し、実施例1と同様にして減衰量の周波数特性を測定した。第1の列の第3番目の誘電体ブロックの上端電極層と第2の列の第2番目の誘電体ブロックの下端の電極層とをリード線で半田付けにより接合して誘電体フィルタを作製し、実施例1と同様に計測に供した。その結果を図19に示す。
【0065】
図19に示す結果から明らかなように、920MHz付近から960MHz付近までの範囲において減衰量2〜3dB程度のほぼフラットな透過領域を示し、この透過領域から外れた帯域のものは急激に減衰し得る特性を有する優れた減衰量特性を備えた波形が得られた。また、この減衰量波形において低域側に減衰量のトラップを生じていることも確認でき、切れの良好な減衰量特性が得られたことが明らかになった。
【0066】
また、図18と図19に示す測定結果から明らかなように、副次結合を生じさせるための構造として副次結合窓を用いた実施例1の構造の誘電体フィルタと、副次結合を生じさせるためにリード線の導体を用いた実施例2の誘電体フィルタとでは、それぞれ透過帯域が880〜910MHzと920〜960MHzであり、両者は隣接しており、しかも、実施例1の誘電体フィルタの減衰量のトラップの存在周波数領域と、実施例2の誘電体フィルタの減衰量のトラップの存在周波数領域がほぼ同じであるので、実施例1、2の誘電体フィルタを図15に示すようにケーブルで接続することで、アンテナ用共用器を構成できることが明らかになった。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の誘電体フィルタは、仕切部材で仕切られた誘電体ブロックを2列以上千鳥状に並列して導電性のケース内に設け、列に沿って並ぶ前記誘電体ブロック同士を電磁気的に結合させる主結合路を生成させる主結合手段を付設し、更に前記主結合路により生じる磁界を打ち消すトラップ結合を生じさせる次結合手段を隣接する列同士の間の近接する誘電体ブロック同士の間に位置する仕切部材に設けたので、列に沿って並ぶ誘電体ブロックに沿う電磁界的な主結合を生じさせることができる。また、隣接する列同士の間の近接する誘電体ブロック同士の間に位置する仕切部材に次結合手段を設けることで、隣接する列どうしの間の近接する誘電体ブロックどうしの間に電磁界的な副次結合を生じさせ、列に沿って隣接する誘電体ブロック同士の間での電磁界結合を交互に逆相にすることができ、電磁界的な主結合に対して逆相となる副次結合を生じさせることができ、よって透過帯域の外側の帯域にトラップを有する切れの良い減衰曲線をTMモードの場合でも有する誘電体フィルタを得ることができる。
また、隣接する列どうしの間の近接する誘電体ブロックどうしの間に電磁界的な副次結合を生じさせる副結合手段を設けることにより、列に沿って並ぶ主結合した複数の誘電体ブロックの並びのうち、主結合した順の並びでは離れた位置に存在する誘電体ブロック同士を次結合することができる。
【0069】
更に、以上のような誘電体フィルタにおいて電磁界的主結合を生じさせる具体的な構造として仕切部材に設けた主結合窓を適用することができ、列を越えて隣接する誘電体フィルタ同士を接続する導体を適用することもできる。
そして、主結合窓を用いた構造では透過帯域の高周波側にトラップを有する減衰量特性を得ることができ、導体を用いた構造では透過帯域の低周波側にトラップを有する減衰量特性を有する減衰量特性を得ることができる。
【0070】
次に、主結合窓を用いた誘電体ブロックと導体を用いた誘電体ブロックを結合してアンテナ共用器を構成することで、透過帯域を隣接させた広い領域として、透過帯域の外側の帯域にトラップを有する周波数切れの良好な特性を発揮するアンテナ共用器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る誘電体フィルタの第1実施形態を示す斜視図。
【図2】 図1に示す誘電体フィルタの一部を拡大した分解斜視図。
【図3】 図1に示す誘電体フィルタの水平断面図。
【図4】 図1に示す誘電体フィルタに用いられた底板の平面図。
【図5】 図1に示す誘電体フィルタに組み込まれた第1の列の第1番目のケースの斜視図。
【図6】 図1に示す誘電体フィルタに組み込まれた第1の列の第2番目のケースの斜視図。
【図7】 図1に示す誘電体フィルタに組み込まれた第1の列の第3番目のケースの斜視図。
【図8】 図1に示す誘電体フィルタに組み込まれた第1の列の第4番目のケースの斜視図。
【図9】 図1に示す誘電体フィルタに組み込まれた第2の列の第4番目のケースの斜視図。
【図10】 図1に示す誘電体フィルタに組み込まれた第2の列の第2番目のケースの斜視図。
【図11】 図1に示す誘電体フィルタの等価回路を示す回路図。
【図12】 図1に示す誘電体フィルタで得られる位相角と減衰量の周波数特性を示す図。
【図13】 本発明に係る誘電体フィルタの第2実施形態の要部を示す断面図。
【図14】 図13に示す誘電体フィルタで得られる位相角と減衰量の周波数特性を示す図。
【図15】 本発明に係るアンテナ共用器を示す構成図。
【図16】 本発明に係る誘電体フィルタの第3実施形態を示す斜視図。
【図17】 本発明に係る誘電体フィルタの第4実施形態を示す斜視図。
【図18】 本発明に係る誘電体フィルタの実施例1における減衰量の周波数特性を示す図。
【図19】 本発明に係る誘電体フィルタの実施例2における減衰量の周波数特性を示す図。
【図20】 従来の誘電体共振器の一例を示す水平断面図。
【図21】 図20に示す誘電体共振器の垂直断面図。
【図22】 図20に示す誘電体共振器の磁気的結合状態を示す図。
【図23】 従来の誘電体共振器の他の例を示す図。
【図24】 図23に示す誘電体共振器で得られる減衰量特性を示す図。
【符号の説明】
30、70・・・誘電体フィルタ、32、33、34、35・・・第1の列のケース(仕切部材)、36、37、38、39・・・第2の列のケース(仕切部材)、41、50、52、55、56、61、60、62、63、68・・・主結合窓(主結合手段)、45・・・誘電体ブロック、54、65・・・副次結合窓(副次結合手段)、71・・・導体(副次結合手段)、106・・・誘電体ブロック、107、108、109・・・枠体(仕切部材)、111、113、115、116・・・主結合窓(主結合手段)、117・・・副次結合窓(副次結合手段)、137、138、139・・・枠体(仕切部材)、141、143、145、146・・・主結合窓(主結合手段)、147・・・副次結合窓(副次結合手段)。

Claims (4)

  1. 導電性のケースの内部に複数の誘電体ブロックが個々に前記ケースに電気的に接続した状態で少なくとも2列並列収容され、隣接する2列を構成する前記複数の誘電体ブロックが列方向に千鳥状に配置され、前記各誘電体ブロックが前記ケースの内部で互いに導電性の仕切部材で仕切られ、
    列に沿って並ぶ前記誘電体ブロック同士を電磁気的に結合させる主結合路を生成させる主結合手段が付設され、更に前記主結合路により生じる磁界を打ち消すトラップ結合を生じさせる次結合手段が、隣接する列同士の間の近接する誘電体ブロック同士の間に位置する前記仕切部材に設けられてなることを特徴とする誘電体フィルタ。
  2. 前記主結合手段及び前記副次結合手段が前記仕切部材に設けられた結合窓から構成されたことを特徴とする請求項1記載の誘電体フィルタ。
  3. 前記副次結合手段が副次結合させる前記誘電体ブロック同士を電気的に接続する導体から構成されたことを特徴とする請求項1記載の誘電体フィルタ。
  4. 請求項2記載の誘電体フィルタが低周波側フィルタ素子とされ、請求項3記載の誘電体フィルタが高周波側のフィルタ素子とされて両フィルタ素子が並設されてなることを特徴とするアンテナ共用器。
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