JP3580162B2 - 誘電体フィルタ、誘電体デュプレクサ、通信機装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロ波帯通信機器の通信基地局で使用される誘電体フィルタ、誘電体デュプレクサ、通信機装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の誘電体フィルタにおける第一の例を、図9に基づいて説明する。なお、図9は第一の従来例における誘電体フィルタの分解斜視図である。
図9に示すように従来の誘電体フィルタ110は、並置された二つの誘電体共振器120a、120bと、金属パネル111a、111bとから構成され、金属パネル111a、111bは誘電体共振器120a、120bの開口部を覆うように取り付けられている。誘電体共振器120a、120bは誘電体セラミックからなる角筒状のキャビティ121と、キャビティ121内に配置された誘電体共振子122とから構成され、キャビティ121の外側面には銀ペーストの塗布・焼成により導電層123が形成されている。誘電体共振子122は、二つの誘電体柱が交差した十字形状を有しており、キャビティ121と十字形状の誘電体共振子122とは誘電体セラミックにより一体成形されている。金属パネル111aには金属板からなるループ112a、112bが取り付けられており、その一端は金属パネル111aに取り付けられた同軸コネクタ113a、113bの中心導体に接続されており、他端は金属パネル111aに接続されて接地されている。また、他方の金属パネル111bには二つの誘電体共振器120a、120b間を結合させる結合用ループ112cが取り付けられている。
【0003】
このような構成を有する誘電体フィルタ110においては、外部より信号が入力されると金属板からなるループ112aの周囲に磁界が発生し、その磁界が誘電体共振子122の一方の誘電体柱周囲の磁界と結合する。そして、十字形状をした誘電体共振子122の交差部に形成された溝125により、一方の誘電体柱の電磁界と直交する他方の誘電体柱との電磁界とが結合し、さらに他方の誘電体柱と結合用ループ112cとが結合する。並置されたもう一方の誘電体共振器120bにおいても同様の動作が起き、誘電体フィルタ110は四段の帯域通過フィルタとして機能している。
【0004】
なお、図9に示すように従来の誘電体フィルタ110におけるループ112aは、一方の誘電体柱と同一方向に延びる第一の部分112a1と、それと直交する方向に延びる第二の部分112a2とから構成されている(他方のループ112bにおいても同様の構造、機能を有するが、ここでは説明を省略する)。すなわち、ループ112aの第一の部分112a1は誘電体共振子122の同一方向に延びる一方の誘電体柱に結合し、同時にループ112aの第二の部分112a2で誘電体共振子122の他方の誘電体柱に結合している。このように入出力結合手段としてのループ112aを誘電体共振器の初段と二段目の共振モードに同時に結合させることにより、共振周波数の低域側または高域側に減衰極を設けることができる。
【0005】
一般に共振周波数より低い周波数の信号は共振器を通過しても位相が変化しないが、共振周波数より高い周波数の信号は共振器を通過すると位相がπ変化する。例えば、ループ112aの第一の部分112a1により同相で一方の誘電体柱に発生する共振モードに結合させ、ループ112aの第二の部分112a2により同相で他方の誘電体柱に発生する共振モードに結合させた場合、ループ112aの第一の部分112a1の結合によるルートの信号とループ112aの第二の部分112a2の結合によるルートの信号とは、共振周波数よりも低い周波数では同相となり、共振周波数よりも高い周波数では逆相となる。したがって、信号が打ち消し合うことにより共振周波数の高域側で減衰極が発生する。逆に、ループ112aの第二の部分112a2の延びる方向を180°反対方向とすることにより、ループ112aの第一の部分112a1により同相で一方の誘電体柱に発生する共振モードに結合させ、ループ112aの第二の部分112a2により逆相で他方の誘電体柱に発生する共振モードに結合させた場合、同様にして共振周波数の低域側で減衰極が発生する。
【0006】
次に、従来の誘電体フィルタにおける第二の例を、図10に基づいて説明する。なお、図10は第二の従来例における誘電体フィルタの分解射視図である。また、先の従来例と同一部には同符号を付し、誘電体フィルタを構成する誘電体共振器のみを図示して説明する。
図10に示すように従来の誘電体共振器120cにおいては、十字形状の誘電体共振子122とキャビティ121との四つの接合部分で、キャビティ121の外側から内側に向かって凹部124を設けている。これにより誘電体共振器120cは、図2の電界分布図に示すように三つの共振モード、すなわちTM110モード、TM111モード、TM110モードを有し、誘電体フィルタは三段の帯域通過フィルタとして機能している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
通信基地局などに使用される誘電体フィルタにおいては、通過帯域外に多数のスプリアスが発生するので、それらを抑制するためには通過帯域の低域側および高域側に減衰極を設ける必要がある。しかしながら、第一の従来例における誘電体フィルタでは、二つの共振モードを有する誘電体共振器とそれら二つの共振モードに同時に結合する入出力結合手段としてのループとでは、低域側または高域側のどちらか一方にしか減衰極を設けることができない。したがって、低域側と高域側両方に減衰極を設けるためには、もう一つ誘電体共振器を並置して、そちら側で他方の減衰極を設ける必要があった。すなわち、第一の従来例においては低域側および高域側に減衰極を設けるために、必ず二つの誘電体共振器が必要となり誘電体フィルタが大型化するという問題があった。
【0008】
また、第二の従来例における誘電体フィルタに関しては、共振周波数帯域の低域側および高域側に減衰極を設ける手段は示されてこなかった。
【0009】
本発明の誘電体フィルタ、誘電体デュプレクサ、通信機装置は、上述の問題を鑑みてなされたものであり、これらの問題を解決し、共振周波数の低域側および高域側に減衰極を設け、かつ小型化可能な誘電体フィルタ、誘電体デュプレクサ、通信機装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明の誘電体フィルタは、導電性を有するキャビティと、該キャビティ内に配置される一つの誘電体共振子とを含んで構成され、順次結合している少なくとも三つの共振モードを有する十字形状の誘電体共振器と、該十字形状の誘電体共振器に結合する入出力結合手段とを有する誘電体フィルタであって、前記入出力結合手段のうち入力結合手段は、前記誘電体共振器の共振モードのうち、初段の共振モードに結合するとともに、初段に対して略逆位相でh段目(h=2n+1:nは自然数)における少なくとも一つの共振モードに結合させるために、前記入力結合手段にループを用い、かつ該ループを前記誘電体共振器の交差部の対角線から傾けたことを特徴とする。
【0011】
共振周波数よりも低い周波数の信号は共振器を通過しても位相は変わらず、共振周波数よりも高い周波数の信号は共振器を通過すると位相はπ変化する。したがって、順序通り初段、二段目、三段目・・・というルートを通る場合、h段目においては偶数個の共振器を通過したことになるので、h段目の共振モードにおける信号の位相は共振周波数よりも低い周波数の信号も共振周波数よりも高い周波数の信号も初段の結合位置と同相となる。一方、もう一つのルートすなわち入出力結合手段から直接h段目の共振モードに結合することによるルートは、初段の共振モードに結合するときの位相と逆相で結合させている。つまり、本発明の誘電体フィルタによれば、h段目において共振周波数の低域側および高域側の信号が逆相となって、一つの誘電体共振器で共振周波数の低域側および高域側に減衰極を設けることが可能となる。
【0012】
また、請求項2に係る誘電体フィルタは、導電性を有するキャビティと、該キャビティ内に配置される一つの誘電体共振子とを含んで構成され、順次結合している少なくとも三つの共振モードを有する十字形状の誘電体共振器と、該十字形状の誘電体共振器に結合する入出力結合手段とを有する誘電体フィルタであって、前記入出力結合手段のうち出力結合手段は、前記誘電体共振器の共振モードのうち、最終段の共振モードに結合するとともに、最終段に対して略逆位相で最終段をk段目とした場合の(k−2n)段目(nは自然数)における少なくとも一つの共振モードに結合させるために、前記出力結合手段にループを用い、かつ該ループを前記誘電体共振器の交差部の対角線から傾けたことを特徴とする。
【0013】
この場合も先の作用と同様の作用により、最終段において共振周波数の低域側および高域側の信号が逆相となって、一つの誘電体共振器で共振周波数の低域側および高域側に減衰極を設けることが可能となる。したがって、請求項1、2記載の誘電体フィルタを組み合わせることにより、共振周波数の低域側および高域側にそれぞれ二つ以上の減衰極を設けることも可能となる。
【0014】
さらに本発明に係る誘電体フィルタは、前記入力結合手段および前記出力結合手段は導電性を有するループであって、前記入力結合手段は、初段の共振モードに結合するとともに、初段に対して略逆位相で h 段目( h = 2n + 1 : n は自然数)における少なくとも一つの共振モードに結合するような方向に配置され、前記出力結合手段は、最終段の共振モードに結合するとともに、最終段に対して略逆位相で最終段を k 段目とした場合の( k − 2n )段目( n は自然数)における少なくとも一つの共振モードに結合するような方向に配置されている。
これにより、ループの配置方向を変化させるだけで、初段とh段目の共振モード、あるいは最終段と(k−2n)段目の共振モードにそれぞれ逆相で結合させることが可能となる。
【0015】
さらにまた、本発明の誘電体デュプレクサは、少なくとも二つの誘電体フィルタと、該誘電体フィルタのそれぞれに接続される入出力結合手段と、前記誘電体フィルタに共通的に接続されるアンテナ接続用手段とを含んでなる誘電体デュプレクサであって、前記誘電体フィルタの少なくとも一つが請求項1、2または3記載の誘電体フィルタである。
【0016】
さらにまた、本発明の通信機装置は、請求項5記載の誘電体デュプレクサと、該誘電体デュプレクサの少なくとも一つの入出力結合手段に接続される送信用回路と、該送信用回路に接続される前記入出力結合手段と異なる少なくとも一つの入出力結合手段に接続される受信用回路と、前記誘電体デュプレクサのアンテナ接続用手段に接続されるアンテナとを含んでなる。
これらにより、帯域の低域側および高域側に減衰極が設けられ、特性の良好な誘電体デュプレクサ、通信機装置が得られる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例である誘電体フィルタを、図1に基づいて説明する。なお、図1は本実施例の誘電体フィルタの分解射視図である。
図1に示すように本実施例の誘電体フィルタ10は、誘電体共振器20と、誘電体共振器20の開口部を覆うように取り付けられる金属パネル11a、11bとから構成されている。誘電体共振器20は角筒状のキャビティ21と、キャビティ21内に配置された十字形状の誘電体共振子22とからなり、キャビティ21の外周面には銀の塗布・焼成により導電層23が形成されている。また、十字形状の誘電体共振子22とキャビティ21との四つの接合部分で、キャビティ21の外側から内側に向かって凹部24を設けている。これにより誘電体フィルタ10は、図2の電界分布図に示すように三つの共振モード、すなわち初段の共振モードとしてのTM110モード、二段目の共振モードとしてのTM111モード、三段目の共振モードとしてのTM110モードを有する三段の誘電体フィルタとして機能している。そして、初段のTM110モードと三段目のTM110モードとは直交している。
【0018】
金属パネル11a、11bには金属板からなるループ12a、12bが取り付けられており、ループ12a、12bの一端は金属パネル11a、11bに取り付けられた同軸コネクタ13a、13bの中心導体に接続されている。また、ループ12a、12bの他端は金属パネル11a、11bに接続されて接地されている。本来、入出力結合手段としてのループ12aは図3の平面図に示すように、初段の共振モードと結合するように初段の共振モードの電界方向と同一方向(キャビティ21の底面を0°とした場合の45°の方向)に配置され、それによりループ12aと初段の共振モードとが磁界結合する。しかしながら、本実施例におけるループ12aは図4の平面図に示すように(なお、図4においては初段と三段目の共振モードとを重ね合わせて図示し、初段を実線で三段目を破線で示している。)、初段の共振モードの電界方向からキャビティ21底面の方へ傾いている(すなわち45°以下)。このような方向にループ12aを配置することにより、ループ12aは初段の共振モードと、それと直交する三段目の共振モード両方に結合するようになる。しかも、初段と三段目とではループ12aの周囲をまわる磁界の周回方向が逆となるので、誘起される電流のベクトルも逆方向となって、初段と三段目とでは逆相で結合することとなる。
【0019】
なお、ループ12aの取り付け角度を変更することにより、ループ12aと初段の共振モードとの結合の度合い、ループ12aと三段目の共振モードとの結合の度合いを調整することができる。つまり、ループ12aの方向が初段の共振モードにおける電界方向と近い程、初段との結合度が強まり、初段の共振モードにおける電界方向と離れる程、三段目の共振モードとの結合が強まっていく。さらに、ループ12aの幅や長さを長くしたり、ループ12aを誘電体共振子22に近づけるなどにより、初段および三段目両方の共振モードとの結合を強めることもできる。
【0020】
また、誘電体共振器20の三つの共振モードは、十字形状をした誘電体共振子22の交差部に溝25を設けたり、交差部にここでは図示しない孔を所定の位置に形成することにより、初段の共振モード、二段目の共振モード、三段目の共振モードとが順次結合される。
【0021】
このような構成により、入力された信号は一方で初段、二段目、三段目と通過し、他方で入出力結合手段としてのループ12aから直接三段目の共振モードに、初段との結合とは逆相で結合する。一方のルートを通過した信号は二つの共振器を通過したことになるので、三段目の位置における位相は共振周波数よりも低い周波数では初期の位相と同相であり、共振周波数よりも高い周波数では初期の位相とπ×2だけ変化、つまり同相となる。他方のルートを通過した信号について、三段目の位置における位相は、初段の位相とは逆相で結合させているので共振周波数よりも低い周波数、高い周波数両方で初期の位相と逆相となる。すなわち、三段目において共振周波数の低域側と高域側両方の信号が逆相で打ち消し合うことになり、共振周波数の低域側および高域側で減衰極が発生する。
【0022】
このようにして、入力された信号は三段目の共振モードの電界方向と同一方向に他方の金属パネル11bに取り付けられたループ12bに結合し、他方の同軸コネクタ13bを介して出力され、誘電体フィルタ20は三段の帯域通過フィルタとして機能している。
【0023】
本実施例によれば、三つの共振モードを有する一つの誘電体共振器20のみで共振周波数の低域側および高域側に減衰極を設けることが可能となり、小型で要求される特性を満たす誘電体フィルタが得られる。
【0024】
なお、本実施例における入出力結合手段としてのループ12aは、一方向に延びた金属板から形成されているが、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、図5に示すようにループ12aを一方向に延びる第一の部分12a1と、第一の部分12a1が延びる方向と直交する方向に延びる第二の部分12a2とから構成して、初段と三段目に結合させてもよい。また、図6に示すようにループ12aに金属細片14を取り付けて、その金属細片14の位置または傾きによって結合度の調整を行ってもよい。
【0025】
次に、本発明の実施例である誘電体デュプレクサを、図7に基づいて説明する。なお、図7は本実施例の誘電体デュプレクサの分解射視図であり、先の実施例と同一部には同符号を付し、その部分についての説明は省略する。
図7に示すように本実施例の誘電体デュプレクサ30は、二つの誘電体共振器20a、20bからなる送信用フィルタ10aと、二つの誘電体共振器20c、20dからなる受信用フィルタ10bとから構成されている。さらに、送信用フィルタ10a、受信用フィルタ10bにはそれぞれ帯域阻止フィルタ35a、35bが接続されている。送信用フィルタ10aに用いられる所定の共振周波数を有する二つの誘電体共振器20a、20bと、受信用フィルタ10bに用いられる送信用フィルタ10aの共振周波数とは異なる共振周波数を有する二つの誘電体共振器20c、20dとは、キャビティ21開口部を同一方向に向けて並置されている。そして、誘電体共振器20a〜20dのキャビティ21開口部にはそれぞれ金属パネル11c、11dが取り付けられ、金属パネル11cには外部の送信用回路、受信用回路に接続するための同軸コネクタ13c、13fと、アンテナに接続するための同軸コネクタ13iがそれぞれ取り付けられている。
【0026】
また、誘電体基板36上に形成されたマイクロストリップライン37により帯域阻止フィルタ35a、35bが形成され、シールドケース38内に配置し、並置された誘電体共振器20a、20d両端部に取り付けられている。そして、マイクロストリップライン37の一端は送信用回路に接続するための同軸コネクタ13cの中心導体と、受信用回路に接続するための同軸コネクタ13fの中心導体とにそれぞれ接続されている。なお、さらに誘電体デュプレクサ30は誘電体共振器20a〜20d部分など補強するための、ここでは図示しない金属ケースに収納されている。
【0027】
送信用フィルタ10aを構成する二つの誘電体共振器20a、20bは、それぞれ三つの共振モードを有する共振器であり、合計六段の帯域通過フィルタとして機能し、受信用フィルタ10bを構成する二つの誘電体共振器20c、20dも同様に六段の帯域通過フィルタとして機能する。一方の金属パネル11cには送信用フィルタ10aの初段と三段目の共振モードに結合するループ12cと、四段目と最終段の共振モードに結合するループ12dが取り付けられている。同様に、受信用フィルタ10bの初段と三段目の共振モードに結合するループ12fと、四段目と最終段の共振モードに結合するループ12gが取り付けられている。また、他方の金属パネル11dには送信用フィルタ10aの三段目の共振モードに結合し、さらに四段目の共振モードに結合する結合用ループ12eが取り付けられている。同様に、受信用フィルタ10bの三段目の共振モードに結合し、さらに四段目の共振モードに結合する結合用ループ12hが取り付けられている。
【0028】
送信用フィルタ10aの初段と三段目の共振モードに結合するループ12cの一端は帯域阻止フィルタのマイクロストリップライン37の一端に接続され、同様に受信用フィルタ10bの四段目と最終段の共振モードに結合するループ12gの一端も帯域阻止フィルタのマイクロストリップライン37の一端に接続されている。また、送信用フィルタ10aの四段目と最終段の共振モードに結合するループ12dと、受信用フィルタ10bの初段と最終段の共振モードに結合するループ12fとは、アンテナに接続するための同軸コネクタ13iの中心導体に共通に接続されている。
【0029】
このような構成により、二つの誘電体共振器20a、20bから構成される送信用フィルタ10aは、所定の周波数を通過させる帯域通過フィルタとして機能し、さらに通過帯域の低域側および高域側両方にそれぞれ二つの減衰極が発生する。同様に、二つの誘電体共振器20c、20dから構成される受信用フィルタ10bは、先の周波数とは異なる所定の周波数を通過させる帯域通過フィルタとして機能し、さらに通過帯域の低域側および高域側両方にそれぞれ二つの減衰極が発生する。
【0030】
なお、本実施例においては一方の金属パネル11cに取り付けられたループ12c、12d、12f、12gを、取り付け角度を調整することなどにより、本発明で言うところの二つの共振モードに結合させる入出力結合手段として用いた。しかしながら、本実施例における他方の金属パネル11dに取り付けられた結合用ループ12e、12hを、取り付け角度を調整することなどにより、本発明で言うところの二つの共振モードに結合させる入出力結合手段として用いても構わない。また、本出願人が特願平10−220371号や特願平10−220372号において提案している多重モード誘電体フィルタ、例えばTMモード、TEモードそれぞれ三つの共振モードを有する六重モードフィルタに適用することも可能である。
【0031】
さらに、本発明の実施例である通信機装置を、図8に基づいて説明する。なお、図8は本実施例の通信機装置の概略図である。
図8に示すように本実施例の通信機装置40は、誘電体デュプレクサ30と、送信用回路41と、受信用回路42と、アンテナ43から構成される。ここで誘電体デュプレクサ30は先の実施例で示したものであり、図7における送信用フィルタ10aと接続される同軸コネクタ13cが、送信用回路41に接続されており、受信用フィルタ10bと接続される同軸コネクタ13fが、受信用回路42に接続されている。また、同軸コネクタ13iはアンテナ43に接続されている。
【0032】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、少なくとも三つの共振モードを有する誘電体共振器と入出力結合手段とから構成される誘電体フィルタにおいて、入力結合手段を初段と初段を除く奇数段とにそれぞれ逆相で結合させた。または、出力結合手段を最終段側からみて奇数段とにそれぞれ逆相で結合させた。これにより、二つの誘電体共振器を用いることなく、共振周波数の低域側および広域側両方に減衰極を設けることが可能になり、大型化することなく所望の特性を有する誘電体フィルタが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の誘電体フィルタの分解射視図である。
【図2】誘電体共振器の三つの共振モードを示す平面図である。
【図3】本来の誘電体フィルタにおけるループの取り付け位置を示す平面図である。
【図4】本発明の誘電体フィルタにおけるループの取り付け位置を示す平面図である。
【図5】本発明の誘電体フィルタにおける他のループの構成を示す分解射視図である。
【図6】本発明の誘電体フィルタにおける他のループの構成を示す分解射視図である。
【図7】本発明の誘電体デュプレクサの分解射視図である。
【図8】本発明の通信機装置の概略図である。
【図9】従来の誘電体フィルタの分解射視図である。
【図10】従来の他の誘電体共振器の射視図である。
【符号の説明】
10,10a,10b 誘電体フィルタ
11a〜11d 金属パネル
12a〜12h ループ
13a,13b,13c,13f,13I 同軸コネクタ
20,20a〜20d 誘電体共振器
21 キャビティ
22 誘電体共振子
23 導電層
24 凹部
25 溝
30 誘電体デュプレクサ
35a,35b 帯域阻止フィルタ
36 誘電体基板
37 マイクロストリップライン
38 シールドケース
40 通信機装置
Claims (5)
- 導電性を有するキャビティと、該キャビティ内に配置される一つの誘電体共振子とを含んで構成され、順次結合している少なくとも三つの共振モードを有する十字形状の誘電体共振器と、該十字形状の誘電体共振器に結合する入出力結合手段とを有する誘電体フィルタであって、
前記入出力結合手段のうち入力結合手段は、前記誘電体共振器の共振モードのうち、初段の共振モードに結合するとともに、初段に対して略逆位相でh段目(h=2n+1:nは自然数)における少なくとも一つの共振モードに結合させるために、前記入力結合手段にループを用い、かつ該ループを前記誘電体共振器の交差部の対角線から傾けたことを特徴とする誘電体フィルタ。 - 導電性を有するキャビティと、該キャビティ内に配置される一つの誘電体共振子とを含んで構成され、順次結合している少なくとも三つの共振モードを有する十字形状の誘電体共振器と、該十字形状の誘電体共振器に結合する入出力結合手段とを有する誘電体フィルタであって、
前記入出力結合手段のうち出力結合手段は、前記誘電体共振器の共振モードのうち、最終段の共振モードに結合するとともに、最終段に対して略逆位相で最終段をk段目とした場合の(k−2n)段目(nは自然数)における少なくとも一つの共振モードに結合させるために、前記出力結合手段にループを用い、かつ該ループを前記誘電体共振器の交差部の対角線から傾けたことを特徴とする誘電体フィルタ。 - 前記入出力結合手段が導電性を有するループであって、前記入出力結合手段が結合する前記誘電体共振器の共振モードに対して略逆位相で結合するような方向に、前記入出力結合手段を配置することを特徴とする請求項1または2記載の誘電体フィルタ。
- 少なくとも二つの誘電体フィルタと、該誘電体フィルタのそれぞれに接続される入出力結合手段と、前記誘電体フィルタに共通的に接続されるアンテナ接続用手段とを含んでなる誘電体デュプレクサであって、
前記誘電体フィルタの少なくとも一つが請求項1、2または3記載の誘電体フィルタであることを特徴とする誘電体デュプレクサ。 - 請求項4記載の誘電体デュプレクサと、該誘電体デュプレクサの少なくとも一つの入出力結合手段に接続される送信用回路と、該送信用回路に接続される前記入出力結合手段と異なる少なくとも一つの入出力結合手段に接続される受信用回路と、前記誘電体デュプレクサのアンテナ接続用手段に接続されるアンテナとを含んでなることを特徴とする通信機装置。
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