JP3639062B2 - 浮遊性徐溶型入浴剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、小型の錠剤タイプの入浴剤であり、浴槽の湯中に入れると、湯中で発生する炭酸ガスにより浮力を得て、短時間で湯面に浮上し一定時間の間、溶解し終わるまで湯中に没することなく湯面上をあたかもミズスマシの如く浮遊する浮遊性徐溶型入浴剤の提供にある。
【0002】
【従来の技術】
従来より入浴剤の目的は、浴場に香りや色調を与えて精神状態を安らかにするものや、硫酸ナトリウムに代表される無機塩類や、お湯の中に炭酸ガスを発生させて保湿効果を高めたり、又は、各種保湿剤、植物エキスなどによるスキンケア効果を与えるものがほとんどであったが、近年、入浴中の遊戯性を付与する目的の入浴剤で例えば、軽石や発泡スチロールのような水に浮きやすいものを担体とし、そこに薬用成分を含浸させたものや、カプセル化したものなどが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの入浴剤はお湯に溶解しない成分を残したり、油膜を形成したりして却って浴槽を汚染するようなこともある。又、溶解が早すぎて目的とする遊戯性が不充分となったり、或いは、溶解が非常に遅すぎて入浴中に本質である薬用効果を発揮できないものであった。
本発明者らは、入浴剤の本来の目的を維持することを前提にし、木の葉や花びらや動物など任意の形状を持ち、又、それぞれにふさわしい色調にした非常にデリケートな外観をした小型の錠剤型の浮遊性徐溶型入浴剤であって、お湯の中に入れると一旦は湯中に沈むが、短時間で浮き上がってきてミズスマシのごとくお湯の表面を浮遊する。
【0004】
その間に徐々にお湯に溶解し約10分乃至20分程度で完全に溶解するという、視覚に訴える新しい遊戯性を持ち、入浴を充分に楽しむことができることを特徴とした入浴剤を提供するために本発明に至ったものである。
又、本発明が、製品として生産され、実際に使用されるまでかなりの長期間保存されることが想定される。その間の品質の劣化や変質を防ぐためにも、本発明を構成する各種原料成分についても充分慎重な選択と研究を進めて、経時的安定性も満足する浮遊性徐溶型入浴剤を発明するに至ったものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1では、ポリエチレングリコール(以下、本明細書においてはPEGと略する)が65〜85%、有機酸と炭酸塩の合計が35〜10%配合してなり、前記ポリエチレングリコールはポリエチレングリコール 11000 が 100 〜 20 %、ポリエチレングリコール 6000 が 80 %以下の範囲の単独、又は、混合品であり、前記有機酸はアジピン酸及び/又はコハク酸1ナトリウムであることを特徴とする浮遊性徐溶型入浴剤、請求項2では、ポリエチレングリコールが 65 〜 85 %、有機酸と炭酸塩の合計が 35 〜 10 %配合してなり、前記ポリエチレングリコールはポリエチレングリコール 6000 が 70 〜 95 %、ポリエチレングリコール 20000 が 5 〜 30 %の範囲の混合品であり、前記有機酸はアジピン酸及び/又はコハク酸1ナトリウムであることを特徴とする浮遊性徐溶型入浴剤、請求項3では、乳白剤、無水珪酸、珪酸カルシウム、保湿剤、香料、植物エキス、着色料、酵素の内一種類以上を配合してなる請求項1又は2記載の浮遊性徐溶型入浴剤とした。さらに、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウムなどの無機塩類なども適宜配合することができる。
【0006】
即ち、本発明を構成する組成成分はPEG に有機酸、炭酸アルカリとこれに香料などの配合成分を加えたものから成り、先ず、PEG を加熱溶融して均一な液体状態にし、これを攪拌しながらそこに有機酸、炭酸アルカリなどを逐次加えスラリー状を成し、所望の形状の型に注入し、冷却固化して錠剤型にすることを特徴とする浮遊性徐溶型入浴剤である。
【0007】
本発明の構成成分であるPEG は、配合時の粘度と流動性を確保し加工性が容易であり、得られた製品は市場における耐温度性のある融点と相当期間中経時変化を起こすことがなく、お湯の中で適正な速度で溶解して最後は不溶性成分を残さないことを目的として配合する。
【0008】
このような観点から、この発明において使用するPEG は粧原基、粧外規に定められているPEG4000 、PEG6000 、PEG11000及びPEG20000が挙げられる。
これらのPEG のうち、PEG4000 は、加工性はPEG6000 より優れているが、融点がやや低く耐温度性に不安である。又、お湯の中でも溶解速度も早く浮上するまでにかなりの量が溶解する。
PEG6000 は、融点が比較的高く耐温度性があり、加工性も容易であるが、お湯の中での溶解温度がやや早い傾向がある。
PEG11000は融点はPEG6000 とほぼ同じであるが、溶融するとやや粘度が高くなる傾向がある。しかし得られた錠剤は硬く溶解温度も適当であり、さらに経時変化も少なくなる。
【0009】
PEG20000は融点はPEG6000 とほぼ同じであるが、溶融すると非常に粘度が高く曳糸性も出てきて加工やその扱いが困難である。
そのため、PEG11000単独で使用するか、これにPEG6000 を適宜混合して溶解速度を調節することもできる。
PEG20000は単独では使用するのが上記のように困難であるが、PEG6000 と適当な比率で混合して使用することが可能である。
【0010】
本発明者らは、鋭意研究の結果、本発明の浮遊性徐溶型入浴剤中の、これらのPEG11000及び/又は、PEG6000 の混合品、さらに、PEG6000 とPEG20000の混合品の配合率が低い場合、以下に述べる有機酸、炭酸アルカリなどの粉末成分と均一に混合することが困難となり、又、経時変化を起こし易く65%以上が必要である。一方、90%以上の配合率にすると、お湯に投入した際なかなか浮上して来ないことがある。従って、配合比率として、65%から85%の範囲が望ましいことを認めた。
PEG11000に対するPEG6000 の混合比率は、80%以下の範囲が良好であった。PEG6000 が80%以上になるとお湯の中での溶解速度が早くなりすぎ、経時変化を起こす傾向が見られた。同様に、PEG6000 に対するPEG20000の混合比率は70〜95%と30〜5 %の範囲が良好であった。PEG6000 が95%以上になるとお湯の中での溶解速度が早くなり、又、PEG20000が30%以上になると加工性が困難になることを認めた。
【0011】
本発明にかかる浮遊性徐溶型入浴剤には、前記PEG に加え、炭酸ガスの発泡剤として有機酸と炭酸アルカリを配合する。
本発明に使用する炭酸アルカリとして、炭酸水素ナトリウムを使用するが、炭酸ナトリウム或いは、セスキ炭酸ナトリウムなども単独、又は、混合して使うことができる。
この炭酸水素ナトリウムは全組成物重量に対して 3〜20%が望ましく、この炭酸水素ナトリウムの中和剤として使用する有機酸の配合量は炭酸水素ナトリウムに対して等モルになるように全組成物重量に対して 5〜20%の配合が望ましい。
これらの炭酸水素ナトリウム及び有機酸の配合比率は、これ以上少ないと錠剤のお湯からの浮上が不可能或いは、非常に遅くなる。又、これ以上に多く配合すると、溶融した液状のPEG との混合が困難となり、さらに、経時的に錠剤が炭酸ガスを発生して脆くなり不安定である。
【0012】
この発明で使用する有機酸としてはアジピン酸及び/又はコハク酸1ナトリウムを使用することが望ましい。
それはアジピン酸、コハク酸1ナトリウムは他の有機酸に較べて、お湯表面への浮遊性、お湯への溶解性、耐経時変化が良好であり、本発明の効果の発揮に必要な条件をそなえていることが明らかになったからである。
前記PEG と、炭酸水素ナトリウムと有機酸からなる炭酸ガスの発泡剤との配合比率は、つぎの3つの条件から定められる。
【0013】
第一は入浴剤に配合する際の粘度、流動性が適正で容易に加工できること及び硬い錠剤が得られることである。
第二はお湯に投入した際、確実に浮上し、しかも適度な速度で溶解することである。
前述のように、PEG 組成や有機酸、炭酸水素ナトリウムの配合比率によって浮上後の溶解速度が非常に異なり、早すぎても遅すぎても、その目的を満足させられない。一般的な入浴時間である10分から20分の間に溶解することが望ましいと考えた。
第三は製品として、使用されるまでの市場や流通における保存期間中に変質を起こさないことである。特に、保存中に炭酸ガスを発生して錠剤が崩壊したり、容器の変形が起こらないようにせねばならない。
これらの条件を充たすためにもっとも好適な配合比率は、PEG 65〜85%、有機酸と炭酸水素ナトリウムの合計が35〜10%であることが望ましい。
有機酸と炭酸水素ナトリウムは等モルになるよう配合することとした。
【0014】
【実施例】
以下に本発明による実施例及び比較例を示す。
【0015】
(実施例1)
75%のPEG11000を75〜85℃に加熱溶融し攪拌しながら炭酸水素ナトリウム10.7%を加え均一になったところにアジピン酸9.3 %を加える。さらに予め無水珪酸2 %で粉末化した香料3 %を加えて1時間攪拌を続けた後、24mmφの型に2g流し込み、その後冷却して錠剤型入浴剤を得た。
【0016】
(実施例2)
37.5%のPEG6000 に37.5%PEG11000を加えて実施例1と同じ量の炭酸水素ナトリウム、アジピン酸及び粉末化香料を加えて実施例1と同じ要領で錠剤型入浴剤を得た。
【0017】
(実施例3)
PEG6000 を67.5%、PEG20000を7.5 %に炭酸水素ナトリウム10.7%、アジピン酸9.3 %、及び粉末化香料5 %を加え、実施例1と同じ操作によって錠剤型入浴剤を得た。
【0018】
(実施例4)
52.5%のPEG6000 にPEG20000を22.5%加えて70〜80℃に加熱溶融し、実施例1と同じ量の炭酸水素ナトリウム、アジピン酸及び粉末化香料を加えて実施例1と同じ要領で錠剤型入浴剤を得た。
【0019】
(実施例5)
実施例1と同じPEG 組成物75%に、炭酸水素ナトリウム 7.5%、コハク酸1ナトリウム12.5%及び予め無水珪酸2 %で粉末化した香料3 %を加えて実施例1と同じ操作によって錠剤型入浴剤を得た。
【0020】
(実施例6)
実施例2のPEG 組成物に、実施例5と同じ量の炭酸水素ナトリウム、コハク酸1ナトリウム及び粉末化香料を加えて実施例1と同じ要領で錠剤型入浴剤を得た。
【0021】
(実施例7)
実施例3のPEG 組成に、炭酸水素ナトリウム 7.5%、コハク酸1ナトリウム12.5%及び粉末化香料5 %を加え、実施例1と同じ操作によって錠剤型入浴剤を得た。
【0022】
(実施例8)
実施例4のPEG 組成に、炭酸水素ナトリウム 7.5%、コハク酸1ナトリウム12.5%及び粉末化香料5 %を加え、実施例1と同じ操作によって錠剤型入浴剤を得た。
【0023】
以下に比較例1〜8を示す。
PEG6000 を75%、以下の各種有機酸と炭酸水素ナトリウムを等モルになる比率で合計20%、及び粉末化香料5 %を加えた組成で実施例に示した方法で錠剤型入浴剤を作成した。
(比較例1)有機酸としてマロン酸を使用した。
(比較例2)有機酸としてマレイン酸を使用した。
(比較例3)有機酸としてフマル酸を使用した。
(比較例4)有機酸としてコハク酸を使用した。
(比較例5)有機酸としてクエン酸を使用した。
(比較例6)有機酸としてアジピン酸を使用した。
(比較例7)有機酸としてコハク酸1ナトリウムを使用した。
(比較例8)
PEG11000を90%、アジピン酸及び炭酸水素ナトリウムを等モルになる比率で合計5 %、及び粉末化香料5 %を加えた組成で実施例に示した方法で錠剤型入浴剤を作成した。
【0024】
【試験例】
これらの実施例1〜8及び比較例1〜8についてお湯での浮上試験、溶解試験及び貯蔵時の炭酸ガス発生試験を行った。
【0025】
(試験条件)
▲1▼浮上試験:800ml、40℃のお湯に錠剤サンプル1ケを投入し浮上するまでの時間を測定した。
▲2▼溶解試験:800ml、40℃のお湯に錠剤サンプル1ケを投入し浮上して完全に溶解するまでの時間を測定した。
▲3▼炭酸ガス発生試験:各錠剤サンプル2ケを予めそれぞれ重量を精秤し、アルミラミネート袋(寸法:85mm×120mm)に密封して40℃に20日間保存して袋の膨潤程度及び重量変化を測定した。
これらの試験結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【発明の効果】
以上述べた如く、本発明は請求項1記載の発明が、ポリエチレングリコールが 65 〜 85 %、有機酸と炭酸塩の合計が 35 〜 10 %配合してなり、前記ポリエチレングリコールはポリエチレングリコール 11000 が 100 〜 20 %、ポリエチレングリコール 6000 が 80 %以下の範囲の単独、又は、混合品であり、前記有機酸はアジピン酸及び/又はコハク酸1ナトリウムであることを特徴とする浮遊性徐溶型入浴剤に係り、請求項2記載の発明が、ポリエチレングリコールが 65 〜 85 %、有機酸と炭酸塩の合計が 35 〜 10 %配合してなり、前記ポリエチレングリコールはポリエチレングリコール 6000 が 70 〜 95 %、ポリエチレングリコール 20000 が 5 〜 30 %の範囲の混合品であり、前記有機酸はアジピン酸及び/又はコハク酸1ナトリウムであることを特徴とする浮遊性徐溶型入浴剤に係り、請求項3記載の発明が、乳白剤、無水珪酸、珪酸カルシウム、保湿剤、香料、植物エキス、着色料、酵素の内一種類以上を配合してなる請求項1又は2記載の浮遊性徐溶型入浴剤に係わることから、入浴剤の本来の目的を維持し、木の葉や花びらや動物など任意の形状を持った小型の錠剤型の入浴剤であって、お湯の中に入れると一旦は湯中に沈んで、短時間で浮き上がりお湯表面を浮遊、徐々にお湯に溶解して約10分乃至20分程度で完全に溶解するという、視覚に訴える新しい遊戯性を持ち、入浴時間を充分楽しむことができる効果を奏する浮遊性徐溶型入浴剤とすることができる。
Claims (3)
- ポリエチレングリコールが65〜85%、有機酸と炭酸塩の合計が35〜10%配合してなり、
前記ポリエチレングリコールはポリエチレングリコール 11000 が 100 〜 20 %、ポリエチレングリコール 6000 が 80 %以下の範囲の単独、又は、混合品であり、
前記有機酸はアジピン酸及び/又はコハク酸1ナトリウムであることを特徴とする浮遊性徐溶型入浴剤。 - ポリエチレングリコールが65〜85%、有機酸と炭酸塩の合計が35〜10%配合してなり、
前記ポリエチレングリコールはポリエチレングリコール 6000 が 70 〜 95 %、ポリエチレングリコール 20000 が 5 〜 30 %の範囲の混合品であり、
前記有機酸はアジピン酸及び/又はコハク酸1ナトリウムであることを特徴とする浮遊性徐溶型入浴剤。 - 乳白剤、無水珪酸、珪酸カルシウム、保湿剤、香料、植物エキス、着色料、酵素の内一種類以上を配合してなる請求項1又は2記載の浮遊性徐溶型入浴剤。
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