JP3638431B2 - 弾性表面波装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車電話及び携帯電話等の移動体無線機器に内蔵される共振器及び周波数帯域フィルタとして好適な弾性表面波装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の弾性表面波(Surface Acoustic Wave 、以下SAWと略す)装置の断面図を図3、4に示す。図3において、11は圧電基板、12は入出力電極のパッド、13はパッケージ表面に形成された外部の駆動回路、共振回路、接地回路等に接続される導電パターンのパッド、14はSAW素子用の圧電基板上に形成された櫛歯状電極のIDT(Inter Digital Transducer)電極、19はパッド12とパッド13とを接続するワイヤであって、これら部材によってSAW素子が構成されている。また、15〜17はセラミックや樹脂等の絶縁性材料からなるパッケージ部材、18はセラミックス、金属材料(例えばコバール、42合金、Al、Cu)等からなる蓋体であり、これら部材によりパッケージが構成され、このパッケージ内にSAW素子が収容されている。
【0003】
このように、従来の弾性表面波装置J1は、パッケージ部材15〜17で囲まれた領域に圧電基板11を接着剤により載置固定し、パッド12,13をAl,Au等のワイヤ19により電気的に接続し、さらに蓋体18をはんだ,接着剤等によりパッケージ部材17上から接着して気密性を保持していた。
【0004】
また、図4において、21は圧電基板、22は入出力電極のパッド、23はパッド22と後記するパッド24とを電気的に接続するバンプ等の接続体、24は基板27に形成され外部の駆動回路、共振回路、接地回路等に接続される導電パターンのパッド、25はSAW素子用の圧電基板21上に形成された櫛歯状のIDT電極、26はSAW装置全体にモールドされた絶縁性材料からなる保護部材である。
【0005】
このように、従来の他の弾性表面波装置J2は、IDT電極25が設けられた機能面が基板27の上面に対面させたフェースダウン構成であり、絶縁性樹脂から成る保護部材26の機能面が存在するSAWの振動空間にまで入り込んでいた。
【0006】
ここで、図4における接続体23は、Au,Al等の金属のワイヤをボールボンディング法によりバンプとなるよう形成するか、Au,はんだ等からなるバンプを蒸着法、印刷法、転写法、無電解メッキ法又は電解メッキ法等により、パッド22上に形成して得られる。そして、接続体23を設けた圧電基板21を、接続体23とパッド24とを位置合わせし、導電性接着剤の塗布やはんだのリフロー溶融法により接続し、基体27上に固定している。
【0007】
また、他の従来例として、図4と同様の構成で、絶縁性樹脂26がSAWの振動空間側に入り込まないように、圧電基板21又は基体27の接続体23の振動空間側に、ダムを設けたものが提案されている(他の従来例(1):例えば、特開平5−55303号公報を参照)。
【0008】
また、図4のパッケージ17の内部に、SAW素子をフェースダウンでフリップチップ実装し、SAW素子の外周部を絶縁性樹脂で固定配置して、絶縁性樹脂が振動空間に入り込まないようにしたものも提案されている。(他の従来例(2):例えば、特開平5−291864号公報を参照)。
【0009】
さらに、図4のパッケージ17の内部にSAW素子をフェースダウン実装し、SAW素子の路面を絶縁性樹脂で蓋体18に固着固定することにより、絶縁性樹脂が振動空間に入り込まないようにしたものも提案されている。(他の従来例(3):例えば、特開平6−61778号公報を参照)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図3の従来例では、ワイヤ19を使用しているため、ワイヤ19が存在する横方向と高さ方向の距離の分だけSAW装置の体積が大きくなり、小型軽量化、薄型化に不利である。また、圧電基板21をパッケージ部材15に接着固定し、ワイヤボンディング装置によりワイヤを1本ずつ接続しているので、製造工程が煩雑となる。
【0011】
さらに、ワイヤ19が存在することにより、不要なインダクタンス成分を付加することになり、SAW装置の周波数特性が変化し、設計上それを考慮しなければならないという問題点があった。
【0012】
また、図4の従来例では、絶縁性樹脂26が振動空間に入り込み、機能面に接しているため、SAWの伝搬を阻害しており、SAW装置としての所望の特性を得るのが困難である。
【0013】
また、他の従来例(1)のように、絶縁性樹脂26が振動空間に入り込まないように、ダム材を設けたり、SAW伝搬路を囲むように機能面に環状部材を設けたとしても、絶縁性樹脂26の入り込みを完全に阻止するには不十分であった。また、このような環状部材を設ける場合には、環状部材がシリコーン樹脂等の塗布により形成されるため振動空間を均一な高さ、幅で正確に形成するのが困難であった。
【0014】
また、他の従来例(2)のように、パッケージの内部底面に、SAW素子に形成したバンプと高さがほぼ同じ台座を、その端部がSAW素子の外周部と重なるように配設し、バンプをパッケージ内部底面に設けた導電部にフリップチップ法により接続するものの場合、バルク波が弾性表面波素子の裏面で反射して出力されることを防止するために、弾性表面波素子の裏面にダンピング材を配設することが行われ、このダンピング材として、ダイボンド材にその機能を持たせることがあるが、上記の従来例の場合には、それを行うことができない。また、パッケージ内部底面に配設し、蓋体と圧電素子裏面との間に空間を持たせて蓋体により封止する構造であるため、圧電素子と蓋体との空間及び蓋体の高さが必要となり、弾性表面波部品の薄型化において不利な構造であるという問題点があった。
【0015】
さらに、他の従来例(3)のように、バンプとパッケージ端子とが当接し封止部材とパッケージ基板とで形成される空間が封止されるように封止部材をパッケージ基板に取り付けた弾性表面波装置の場合、蓋体により封止する構造であるため、蓋体の高さの確保が必要となり、弾性表面波装置の薄型化において不利な構造である。
【0016】
上記の従来例においては、いずれも圧電基板を絶縁性接着材で接着固定し、バンプを基体と接合する工程が必要となるため、製造工程が煩雑となる。
【0017】
そこで、本発明は上記従来の諸問題に鑑みて完成されたものであり、極めて簡便な構成でSAWの振動空間への絶縁性樹脂の入り込みを完全に阻止でき、振動空間を均一な高さ、幅で正確に形成することが可能で、ひいてはSAW装置の特性劣化がなく、また極めて薄型化・小型軽量化が可能な優れた弾性表面波装置を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の弾性表面波装置は、導体パターンが形成された基体上に、下面に励振電極と該励振電極の入出力用導体パターンとを設けた圧電基板を載置して成る弾性表面波装置であって、前記圧電基板の上面にガラスペーストを塗布して熱硬化させたガラス質体に弾性部材を固着し、該弾性部材でもって前記圧電基板を押圧するようにして成るとともに、前記基体の導体パターンと前記圧電基板の入出力用導体パターンとを接続したことを特徴とする。
【0019】
また、前記基体に凸部を形成し、該凸部の上に前記圧電基板を載置したことを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
図1,2はそれぞれ本発明に係る弾性表面波装置S1,S2の概略断面図である。なお、図1,2における同じ部材には同一の符号を付している。
【0022】
図1,2において、1は圧電基板、2は入出力用導体パターンである入出力電極パッド、3はバンプ等の電気的な接続体、4は後記するパッケージに形成される電極パターン8のパッド、5は励振電極であるIDT電極、6は弾性部材である金属バネ体、7はセラミックス、樹脂等からなる基体である絶縁性パッケージ、8は外部の駆動回路,共振回路,接地回路等に接続され絶縁性パッケージ7に設けられた電極パターンである。10は絶縁性パッケージ7の蓋体である。9はシーム溶接またはAu−Sn半田等による蓋体10と絶縁性パッケージ7の接続部である。PはIDT5の振動空間である。20は振動空間Pを形成させる数十μm程度の凸部であり、電極パターン4若しくは絶縁パッケージ7上に形成されている。この凸部20は絶縁性のセラミックス等で形成してもよいが、導体で形成された接続体3でもってこの凸部を兼用させるようにしてもよい。30はSiO2を主成分としたガラスペーストを塗布し、熱硬化させたガラス質体である。
【0023】
図1,2において、SAW素子は圧電基板1上に設けられ、互いに噛み合うように形成された少なくとも一対の櫛歯状電極のIDT電極5やその入出力電極パッド2等を設けることにより作製する。なお、IDT電極5は、所望の特性を得るために、複数対の櫛歯状電極を、直列接続、並列接続等の方式で接続して構成してもよい。IDT電極5は蒸着法、スパッタリング法又はCVD法等の薄膜形成法により形成する。
【0024】
絶縁性パッケージ7は、例えばセラミック基板または、セラミック基板と1枚以上の枠上セラミック基板とを積層することによって作製し、絶縁性パッケージ7に設けられる導体パターンは、電解めっき又は無電界めっき法によって形成する。
【0025】
また、接続体3は、Au,Al等の金属のワイヤをボールボンディング法によりバンプとなるように形成するか、Au,はんだ等からなるバンプを蒸着法,印刷法,転写法,無電解めっき法又は電解めっき法等により、入出力電極パッド2上に形成することによって得られる。
【0026】
そして、SAW素子の裏面が絶縁性パッケージ7のバネ体6に接し、IDT電極5が設けられた主面(機能面)をパッケージの導体パターン4に対して対向させた形でパッケージ内に載置し、バネ体の加重によって、接続体3を導体パターン4により電気的に導通させて接続し、SAW素子を絶縁性パッケージ7に固定する。この時、バネ体の圧力ばらつきがあっても、凸部20が用意されているため振動空間Pを一定値で保持できる構造となっている。
【0027】
金属バネ体の構成は、図1に示すように蓋体10とSAW素子の間に接しているか、蓋体10に樹脂,半田,ガラス質で固着させている。図2のようにSAW素子とガラス質体30をもって固着させることもできる。
【0028】
最後に圧電基板1を載置した絶縁性パッケージ7の端部をコバール,42アロイ等の金属蓋体10で絶縁性樹脂又はAu−Sn系半田等により接着固定するか、またはシーム溶接により接着固定する。このようにして、IDT電極5の振動空間Pが確保されて構成で、SAW装置S1,S2を完成する。
【0029】
なお、上記のSAW装置の作製方法とは逆に、最初に絶縁性基板7上の導電パターンに当設し、接続体3を介してSAW素子を接着固定した後に、蓋体10をSAW素子を載置した絶縁性パッケージ7に接着固定しても構わない。
【0030】
また、電気的な接続体3は、SAW素子側に形成しなくともよく、絶縁性パッケージ7側の導体パターン4上に設けてもよい。
【0031】
また、IDT電極5はAlあるいはAl合金(Al−Cu系、Al−Ti系等)からなり、特にAl合金は励振効率が高く、材料コストが低いため好ましい。また、IDT電極5の形状は、互いに噛み合うように形成された櫛歯状であるが、複数の電極指を平行に配列した反射器のようなスリット型のものにも適用でき、それらを併用したタイプであってよい。
【0032】
IDT電極5の対数は30〜200、電極指の幅は0.1〜10.0μm、電極指の間隔は0.1〜10.0μm程度、電極指の交差幅は10〜80μm、IDT電極5の厚みは0.2〜0.4μm程度とすることが、共振器あるいはフィルタとしの所期の特性を得るうえで好適である。また、IDT電極5のSAW伝搬路の両端に、SAWを反射し効率よく共振させるための反射器を設けてもよく、さらに、電極指間にZnO、AlN等の圧電材料を成膜すれば、SAWの共振効率が向上するので好適である。
【0033】
SAW素子用の圧電基板としては、42°または36°Yカット−X伝搬のLiTaO3 結晶、64°Yカット−X伝搬のLiNbO3 結晶、45°Xカット−Z伝搬のLiB4 O7 結晶は電気機械結合係数が大きく且つ群遅延時間温度係数が小さいため好ましい。圧電基板の厚みは0.3〜0.5mm程度がよく、0.3mm未満では圧電基板が脆くなり、0.5mm超では材料コストが大きくなる。
【0034】
かくして、本発明はSAW素子の接続に絶縁性樹脂を用いないので、絶縁性樹脂の振動空間への入り込みが無い、SAW素子の振動空間を確保した構造を実現できる。
【0035】
また、振動空間を均一な高さ、幅で正確に形成できるので薄型化及び小型軽量化が可能である。
【0036】
また、SAW素子の接続体と絶縁性パッケージの導体パターンの接続にバネ体の加重を利用しているので、簡便な製造方法で製造可能となるという作用効果を有する。
【0037】
さらに、前記バネ体とガラスで接合することにより、従来に比べ、温度による周波数特性の変化量は、約2分の1程度小さくなり、品質の良い弾性表面波装置を提供できる効果も有する。
【0038】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、例えば弾性部材は金属以外に樹脂等の材料を用いてもよく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更は何等差し支えない。
【0039】
【実施例】
<実施例1>
次に、図1に基づいて本発明の具体的な実施例1について説明する。
【0040】
図1に示すように、SAW素子用の圧電基板1として42°Yカット−X伝搬のLiTaO3結晶を用い、そのチップサイズは、1.1mm×1.5mmであった。また、絶縁性パッケージ7として3.0mm×3.0mm、高さ1.4mmのアルミナ製パッケージを用いた。アルミナ製パッケージには合計1μm膜厚のAu及びNiを無電解めっきにて形成した。
【0041】
接続体3は、Auのワイヤーをボールボンディング法によりバンプ3となるように形成した。バンプ径は70μm、高さは50μmであった。
【0042】
絶縁性パッケージの内寸とSAW素子のサイズと同程度に作製してあるため、アライメントしないで、SAW素子をパッケージ内に載置した。
【0043】
バンプ3と基板電極4との接続は、SAW素子が裏面からリン青銅製の長さ1mm×幅1mm、厚さ0.1mm、凹凸最大最小厚み0.3mmの金属製のバネ体6により押圧され、SAW素子に設けた突起状バンプ3が絶縁性パッケージ7の導電パターンにめり込む形で実現した。最後に、コバールの蓋体をパッケージ端部にシーム溶接で接続した。
【0044】
このような工程で作製した弾性表面波装置の高さは1.4mmであった。
以上のように、従来のワイヤボンディング工程が不要となり、ワイヤの横方向空間及びワイヤ高さ方向のサイズを縮小でき、小型化・薄型化を図ることができた。
【0045】
<実施例2>
次に、図2に基づいて本発明の具体的な実施例2について説明する。
【0046】
構成は、実施例1にほぼ同様である。異なるところは、バネ体6の接合方法である。
【0047】
まず、SAW素子は励振電極5及びバンプ3を実施例1同様に形成させた。次に、SiO2を主成分としたガラスペースト30を薄く塗布し、ついで、パッケージ7にSAW素子を載置した。次に、バネ体6をSAW素子1上のガラスペースト塗布面に接するように置き、上限温度320度、所要時間1時間のリフロー炉中に入れてSAW素子1とバネ体6を固着させた。
【0048】
次に、蓋体10を上から被せて封止した。蓋体10の材質は、42アロイの金属蓋であり、これを用いて絶縁性パッケージ7とシーム溶接封止を行った。
【0049】
この実施例2の構造で作製した弾性表面波フィルタの温度による周波数特性の変化は、約−20ppm/℃であった。従来の温度変化による周波数特性の変化の−40ppm/℃の値に比べ、2分の1程度の温度による周波数特性の変化量になった。
【0050】
この考察として、ガラスペーストの線膨張係数が4〜8×10−6m/℃であり、本実施例のSAW素子の線膨張係数が16×10−6m/℃となっており、これらの線膨張係数の差異が、温度特性が良好になった大きな要因としてあげられる。
【0051】
【発明の効果】
本発明の弾性表面波装置によれば、圧電基板がその裏面側から弾性部材により押圧されることによって、圧電基板側の入出力用導体パターンと基体側の導体パターンとが電気的に確実に導通され、これにより短時間且つ簡便な製造工程で弾性表面波装置を作製することが可能となる。
【0052】
また、SAW素子の固定接着に絶縁性接着剤を不要とすることで、従来問題となっていた絶縁性樹脂のSAWの振動空間内への入り込みが無く、必要最小限のSAW素子の振動空間を確保できる上、弾性表面波装置の十分な薄型化・小型化を図ることができる。
【0053】
また、弾性部材をガラス質体に固着したことにより、従来に比べ、温度による周波数特性の変化量は、約2分の1程度小さくでき、品質の良い弾性表面波装置を提供できる。
さらに、基体に形成した凸部の上に圧電基板を載置したので、弾性部材の圧力ばらつきがあっても、凸部により振動空間を一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】g
【図1】 本発明の弾性表面波装置の一実施形態を説明する断面図である。
【図2】 本発明の他の弾性表面波装置の一実施形態を説明する断面図である。
【図3】 従来の弾性表面波装置の断面図である。
【図4】 従来の他の弾性表面波装置の断面図である。
【符号の説明】
1:圧電基板
2:入出力電極パッド(入出力用導体パターン)
3:接続体(バンプ)
4:導体パターン
5:IDT電極
6:バネ体(弾性部材)
7:絶縁性パッケージ(基体)
8:電極リードパターン
9:蓋体と絶縁性パッケージの接続部
10:蓋体
20:凸部
30:ガラス質体
P :振動空間
S1,S2:弾性表面波装置
Claims (2)
- 導体パターンが形成された基体上に、下面に励振電極と該励振電極の入出力用導体パターンとを設けた圧電基板を載置して成る弾性表面波装置であって、前記圧電基板の上面にガラスペーストを塗布して熱硬化させたガラス質体に弾性部材を固着し、該弾性部材でもって前記圧電基板を押圧するようにして成るとともに、前記基体の導体パターンと前記圧電基板の入出力用導体パターンとを接続したことを特徴とする弾性表面波装置。
- 前記基体に凸部を形成し、該凸部の上に前記圧電基板を載置したことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波装置。
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