JP3638396B2 - 不織布連結体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、不織布連結体、特に、複数枚の不織布を互いに接着して容易に作製され、堅牢で安価な不織布成形体を連結して構成される不織布連結体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
河川、湖沼、又は海などの水質を浄化する手段の1つに、各種の水中生物を利用する方法がある。河川、湖沼、又は海などに、微生物や藻類から魚類に至る各種の生物が生息すると、それらの生物環境によって河川が自然に浄化される。特に、都市部を流れる中小河川の多くは、河床及び河岸がコンクリートやコンクリートブロックなどで覆われ、自然環境から隔離されている。従って、水中生物による浄化作用を利用することは、非常に重要である。
【0003】
例えば、微生物や藻類などが付着し易いネット、不織布などからなる繊維質多孔質体、格子状プレート、又は表面積が増大するように立体成形された柱状体若しくは筒状体などを、河川内に設けることが考えられる。
このような不織布成形体としては、例えば本発明者らによる特開平6−212544号公報に記載されたものがある。この公報には、熱融着により複数枚の不織布を接合した立体状不織布が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような従来の立体状不織布では、水質浄化用として使用した場合、流れのある水中に保持するのは容易ではないという問題点があった。また、立体状不織布を十分な強度で、かつ容易に回転できるように固定するのは困難であるという問題点があった。本発明は、このような従来の問題点を解決するためになされたものであり、水底等に堅牢に固定することができ、作製の容易な不織布成形体を連結して構成される不織布連結体を得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載の発明は、線状の接合部と、前記接合部を中心として前記接合部に接合された複数枚の不織布と、前記接合部の両端部に形成された開口部と、を具備し水中で浮かぶことのできる浮力を有する複数の不織布成形体と、前記開口部を介して前記複数の不織布成形体を直列に連結する直列接続手段と、を備えたことを特徴とする不織布連結体不織布連結体である。また、本発明の請求項2に記載の発明は、点状の接合部と、前記接合部を中心として前記接合部に接合された複数枚の不織布と、前記接合部に形成された開口部と、を具備し水中で浮かぶことのできる浮力を有する複数の不織布成形体と、前記開口部を介して前記複数の不織布成形体を直列に連結する直列接続手段と、を備えたことを特徴とする不織布連結体である。
【0006】
これらの発明によれば、接合部に形成された開口部によって、不織布成形体を回転自在にかつ簡単に保持することができる。また、開口部を不織布成形体の両端部に形成することにより、複数個の不織布成形体を直列に接続することが可能となる。
【0007】
請求項3に記載の発明は、開口部に補強部材が設けられていることを特徴とする。
この発明によれば、開口部に設けられた補強部材によって、開口部が破断するのを防止でき、不織布成形体を長期間にわたって強固に保持することができる。
【0008】
請求項4に記載の発明は、不織布に微小発泡体粒子が担持されていることを特徴とする。
この発明によれば、不織布に担持された微小発泡体粒子によって、不織布成形体に浮力が付加されるので、不織布成形体をその長手方向に直立させて水中に浮遊させることができ、水質浄化の効率を増大させることができる。
【0009】
請求項5に記載の発明は、複数枚の不織布を放射状に接着されていることを特徴とする。
この発明によれば、不織布を放射状とすることによって、その表面積が増大するので、水中の微生物、溶存酸素や栄養源との接触の機会が増大し、水質浄化の効率が向上する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の不織布成形体は、例えば、河川、湖沼、又は海など、水流のある場所の水質浄化に用いることがてきる。本明細書において「河川」には、水が流れる自然又は人工的な水路がすべて含まれ、具体的には、河川、特に中小河川(例えば、流水路法面などの少なくとも一部分をコンクリートやコンクリートブロックなどで覆った河川)、運河、又は掘などを挙げることがてきる。「湖沼」には、陸地内部で水が自然に又は人工的に溜まっている水域がすべて含まれ、具体的には、湖、池、沼、貯水池、又は水溜まりなどを挙げることができる。
【0011】
また、「海」には、港湾内、湾内、又は外洋などが含まれる。また、以下の説明においては、河川、湖沼、又は海を一括して「河川等」と称することがあり、この「河川等」には、水が流れる水路及び水が溜まっている水域がすべて含まれ、具体的には、前記した河川、湖沼、海などが含まれる。
なお、本明細書において「底流水」とは、水底の表面上及びそのすぐ上部を流れる流水であって、水底の近くを流れる流水を意味する。
【0012】
本発明による不織布成形体は、水中に浸漬されると、河川などの水質浄化に有用な微生物(例えば、細菌、菌類、藻類、原生動物、微小後生動物)を付着することができ、付着した微生物等によって水質の浄化を行うことができる。不織布成形体としては、それ自体が水中て浮かぶことのできる浮力を有するものである限り、特に限定されるものではないが、不織布等の繊維材料で作製された水草型放射状不織布成形体が好適に使用できる。
【0013】
好ましい不織布成形体としては、例えば、以下の水草型放射状不織布成形体を挙げることができる。
(1)中心にのみ接合部を有し、その中心接合部から不織布繊維層と発泡体層とが放射状に延び、かつその不織布繊維層及び発泡体層のそれぞれの密度が中心接合部から周辺部に向かって密から粗になる放射状不織布成形体〔以下、(A)型不織布成形体と称することがある〕である。この(A)型不織布成形体は、その成形体を水中に浮かせるのに充分な量の発泡体層を有する。
【0014】
(2)中心にのみ接合部を有し、その中心接合部から不織布繊維層が放射状に延び、かつその不織布繊維層の密度が中心接合部から周辺部に向かって密から粗になる不織布成形体と、その不織布成形体の不織布繊維上に担持された微小発泡体粒子とを含む、放射状不織布成形体〔以下、(B)型不織布成形体と称するこどがある〕である。この(B)型不織布成形体は、その成形体を水中に浮かせるのに充分な量の微小発泡体粒子を不織布繊維上に担持している。
【0015】
(3)中心にのみ接合部を有し、その中心接合部から不織布繊維層と発泡体層とが放射状に延び、かつその不織布繊維層及び発泡体層のそれぞれの密度が中心接合部から周辺部に向かって密から粗になり、しかも不織布繊維層の不織布繊維上に担持されるか、及び/又は発泡体層に含まれた微小発泡体粒子を含む放射状不織布成形体〔以下、(C)型不織布成形体と称することがある〕である。この(C)型不織布成形体は、その成形体を水中に浮かせるのに充分な量の発泡体層及び微小発泡体粒子を有する。
【0016】
本発明による不織布成形体例えば放射状不織布成形体2は、図1に示すように、連結手段3を介して、河床4に固定して設置された支持具5(又は5a)に取り付けることができる。また、放射状不織布成形体2は、その放射状不織布成形体2自身を河川水6の中に浮かせるのに充分な量の発泡体層及び/又は微小発泡体粒子を担持して浮カを得ている。従って、放射状不織布成形体2は、図中矢印Aの方向に流れる流水に対し、支持具5aを支点にして漂いながら浮かぶ。なお、水質浄化装置1は、放射状不織布成形体2、連結手段3及び後述する底流水案内手段によって、構成されている。
【0017】
前記の放射状不織布成形体の内、(B)型不織布成形体2は、例えば図2に示すように、その中心にのみ接合部21を有し、接合部21から不織布繊維層22が放射状に延び、かつその不織布繊維層22の密度が中心の接合部21から周辺部23に向かって連続的に徐々に密から粗に変化する。しかも、その不織布成形体の不織布繊維上には、微小発泡体粒子を担持している。
【0018】
不織布成形体は、例えば、特開平6−212544号及び特開平6−257050号公報に記載されているように、一枚又は複数枚が積層された不織布シートに、例えば、シール手段(例えば、熱シール(熱融着シール)、超音波シール又は高周波シール)、接着手段(例えば、接着剤による接着)又は縫合手段(例えば、ミシンなどによる繊製)により、間隔をあけて線状(実線若しくは破線)又は点状に接合部を形成する。形成された線状又は点状の接合部と、この接合部に隣接する接合部との間で不織布シートを切断することにより不織布成形体を製造することができる。
【0019】
従って、こうして得られた不織布成形体では、接合部で強く圧織された不織布層がその接合部から離れるのに従って圧縮から関放され、密度が徐々に粗になる。
図2は、連続的に徐々に密度が密から粗になる放射状不織布成形体2を示す部分斜視図である。不織布繊維層22と共に、それらの間で連続的に徐々に間隔が広くなる層間間隙24が形成されている成形体を示す。不織布成形体を放射状とすることにより、その表面積が増大するので、水中の微生物、溶存酸素や栄養源との接触の機会が増大し、水質浄化の効率が向上する。
【0020】
なお、不織布シート原料の厚みと接合部間隙とを調整することにより、層間間隙24を有さずに不織布繊維層のみからなる完全な円柱体とすることもできる。また、球状(接合部が球の中心点の場合)の成形体を得ることもできる。また、これらの円柱状又は球状の成形体を切断などしてさらに別の形状に代えて用いてもよい。
【0021】
なお、層間間隙24を有する放射状不織布成形体2(例えば、図1、図4、図5、図7及び図8等参照)では、不織布繊維層の密度が接合部21から周辺部23へ離れるに従って徐々に粗になり、さらに接合部21から離れた周辺部23では密度が実質的に一定になる場合もあるが、これらも本発明の不織布成形体、及びその不織布成形体から得られる放射状不織布成形体に含まれる。
【0022】
図3は、本発明による不織布成形体である放射状不織布成形体2の中心付近を長手方向に切断した断面図である。図において、複数枚の不織布繊維層22は、前述したようなシール手段等を用いて互いに接着し、接合部25を形成する。この接合部25の一端には、連結手段3に係合される固定用の開口部26が形成されている。また、接合部25の他端に開口部26が形成され、形成された開口部26を補強する補強部材27が設けられている。補強部材27としては、ハトメや金属リング等が使用でき、さらに、水中で使用することから、腐食しない種々の樹脂で作製されたものやステンレス製の補強部材27等が好適に使用できる。このようにして構成された放射状不織布成形体2においては、図1等に示されているように、その開口部26に連結手段3が接続される。
【0023】
ここで、開口部26は、放射状不織布成形体2の両端に形成されているが、必ずしもこれに限定されず、放射状不織布成形体2の一端だけに形成してもよく、また、端部ではなく接合部25の他の場所に形成しても良い。さらに、開口部26を放射状不織布成形体2の両端に形成すれば、複数個の放射状不織布成形体2を直列に接続することが可能となるので望ましい。また、開口部26の大きさは、接続される連結手段3に応じて適宜変更することができる。
【0024】
このような開口部26を放射状不織布成形体2に形成することによって、放射状不織布成形体2を容易に連結手段3に接続することが可能となる。また、開口部26に補強部材27を設けることによって、放射状不織布成形体2を堅牢に保持することが可能となる。従って、温度や流速が変化し、異物が流れる水中においても、放射状不織布成形体2を長期に渡って強固に保持することができる。
【0025】
次に、放射状不織布成形体2に用いる不織布繊維層22を構成する繊維としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの熱可塑性樹脂からなる繊維、又はこれらの熱可塑性樹脂を含む複合繊維を用いることが望ましい。特に、中心の接合部21を熱シールなどのシール手段により形成する場合には、これらの繊維の融着を利用することができるので好ましい。また、特に(B)型不織布成形体2に親水性を付与するか、あるいは微生物などの栄養源として炭素源を付与する要求がある場合には、ビスコースレーヨンや綿などの繊維が含まれていてもよい。
【0026】
これらの繊維の繊度は5デニール以上、より好ましくは10デニール以上であることが望ましく、繊度が小さすぎると目詰りを生じ易くなる。また、接合部21を形成する前の不織布シートの見かけ密度は0.2g/cm3以下であることが望ましく、見かけ密度がこれより大きくなると、目詰りが起きやすくなる。不織布シートの形成手段は特に限定されず、繊維接着不織布、バインダー接着不織布、機械的絡合不織布などが用いられる。
【0027】
また、不織布シートの積層数は、2〜10枚、より好ましくは3〜6枚(不織布成形体に形成後の不織布繊維層の数は、接合部21から数えて倍の6〜12枚になる)が適当であり、不織布シートの厚みは2〜20mm、より好ましくは3〜15mmが適している。なお、不織布繊維層22は、ポリビニルピリジン−スチレン共重合体四級塩化物、スチリルピリジニウム基をもつポリビニルアルコール、ポリエチルポリアミン、ポリエチレンイミン、ポリアミド−エピクロルヒドリン、ポリアリルアミン、ポリカチオン−アクリル共重合体、ポリピぺリジン共重合体などの微生物吸着性のあるポリマーやカチオン化処理剤で処理することによって、あるいは活性炭やケイソウ土などの多孔質粉体を付着させることによって、微生物吸着能カが高められていることが望ましい。特に、多孔質粉体を付着させた場合、微生物吸着能力が高まるだけでなく、繊維を覆うことによって、紫外線などによる繊維の劣化を防げるので好ましい。
【0028】
前記の不織布成形体は前記の繊維材料からなるので、それ自体単独では、水中に浮くことはなく、水底に沈む。例えば、一端を水底に固定して水中に置くと、流水から受ける抵抗によって一時的に流水内を漂うことはあっても、水中に浮遊することなく、水底に沈んだ状態で静止する。
一方、本発明による不織布成形体において、前記の(B)型不織布成形体では、図2に示すように、その成形体を水中に浮かせるのに充分な量の微小発泡体粒子28を不織布繊維層22上に担持している。また、河川などの水位が変動して、特に水位が低下した場合でも、(B)型不織布成形体のほぼ全体が常に水中に浸漬している状態を維持することができる量の微小発泡体粒子28を担持させるのが好ましい。微小発泡体粒子28が、これを担持する個々の部材としての不織布の体積に対して占める割合は、10体積(vol)%〜70体積%とするのが好適である。さらに、係る構成によって浮力を付与するためには30体積%以上、係る構成によって水質浄化機能を維持するためには60体積%以下とするのが望ましい。
【0029】
微小発泡体粒子としては、発泡ガラスビーズ、シラスバルーンなどの中空無機質粒子や、熱可塑性樹脂を外壁とし、熱膨張性物質を内包する中空有機質粒子(例えば、松本油脂製薬製の商品名「マイクロスフェアー」:塩化ビニリデン系共重合物を外壁とし、イソブタンを内包する中空有機質粒子など)を用いることができる。これらの微小発泡体粒子は、そのままで、あるいは熱膨張させた後に、ラテックス系の接着剤などを用いて不織布に接着させるか、ラテックス系の接着剤などを用いて不織布に付与した後に、加熱して熱膨張させると共に接着させることにより、不織布に担持させることができる。
【0030】
また、微小発泡体粒子の不織布繊維への接着は、不織布成形体の状態で行ってもよいが、不繊布製立体成形体とする前の不織布シートの状態で行ってもよい。また、微小発泡体粒子の担持は、不織布成形体の全体に及んでもよいが、適切な浮力が得られるのであれば、前記成形体の一部分であってもよい。例えば、不織布成形体を構成する不織布繊維層の内、特定の繊維層だけが微小発泡体粒子を担持していてもよい。このような構造は、例えば、不織布成形体の材料となる複数枚の不織布シートの内、一部の特定の枚数だけに微小発泡体粒子を付着させておくことにより製造することができる。
【0031】
また、不織布成形体を構成する不織布繊維層の一方表面にのみ微小発泡体粒子を担持していてもよく、このような構造は、例えば、不織布成形体の材料となる不織布シートの一方の表面だけに微小発泡体粒子を付着させておくことにより製造することがてきる。この他、成形後の放射状不織布成形体の上部(水面方向)のみに微小発泡体粒子を担持するなど、種々の担持形態をとることが可能である。
【0032】
放射状不織布成形体において、(A)型不織布成形体は、(B)型不織布成形体における微小発泡体粒子に代えて発泡体層を有する構造からなる。例えば図2に示すように、(B)型不織布成形体を構成する複数枚の不織布繊維層22の一部を発泡体層29、すなわち、水質浄化機能を有する繊維成分が表面に露出せず、実質的に浮力の付与のみを目的とした発泡体シートに変え、しかも微小発泡体粒子を担持していない構造を有する。従って、(A)型不織布成形体は、(B)型不織布成形体を調製する際に用いる複数枚の不織布シートの内の少なくとも1枚を発泡体シートに置き換えて調製することができる。使用する発泡体層の割合は、
不織布成形体に付与する浮力に応じて、任意好適に設計することができる。
【0033】
不織布シートと発泡体シートとを交互に、又は不織布シートの一部を発泡体シートに変えて順次積層してから、例えば、特開平6−212544号及び特開平6−257050号公報に記載されている方法に準じて、複数枚積層したシートに、間隔をあけて線状(実線若しくは破線)又は点状に、接合部を、例えば、シール手段(例えば、熱シール、超音波シール又は高周被シール)、接着手段(例えば、接着剤による接着)又は縫合手段(例えば、ミシンなどによる縫製)により接合部を形成し、互いに隣接する接合部のほぼ中間で、積層体を切断することにより製造することができる。
【0034】
こうして得られた不織布成形体では、接合部で強く圧縮された不織布層及び発泡体層がその接合部から離れるに従って圧縮から開放され、密度が徐々に粗になる。(A)型不織布成形体も、(B)型不織布成形体と同様に、徐々に密度が密から粗になる不織布層及び発泡体層と共に、それらの間で徐々に間隔が広くなる層間間隙が形成される場合と、層間間隙を有さずに不織布層及び発泡体層のみからなる完全な円柱体になる場合とがある。また、球状(接合部が球の中心点の場合)の成形体を得ることもできる。さらに、これらの円柱状又は球状の成形体を切断などしてさらに別の形状に代えて用いてもよい。なお、層間間隙を有する放射状不織布成形体では、接合部から離れた周辺部で不織布層及び発泡体層の密度が実質的に一定になる場合があるが、これらも本発明の放射状不織布成形体に含まれる。
【0035】
(A)型不織布成形体を調製する際に用いる不織布シートは、前記(B)型不織布成形体を調製する際に用いる不織布シートと同じものを使用できる。また、(A)型不織布成形体を調製する際に用いる発泡体シートは、独立気泡を有するシートであることが好ましい。例えば、独立気泡を有する合成樹脂発泡体、例えば、発泡スチロール、発泡ポリエチレン、及び発泡ポリウレタンのシート;発泡体中に繊維を分散させるか、あるいは不織布に発泡体を含浸した繊維(特に、不織布)強化発泡体;1枚の不織布層と1枚の発泡体層とを貼り合わせたラミネート体;又は、2枚の不織布層と、それらに挟まれた1枚の発泡体層とを貼り合わせたラミネート体が好適に使用できる。前記のラミネート体に用いる不織布層は、発泡体単独では水中生物を付着し担持する能カが低下するのを補う働きをしており、前記ラミネート体は、水中生物の担持能力を維持しながら、放射状不織布成形体に浮力を与えることができる。
【0036】
前記(A)型不織布成形体に用いる不織布繊維層を構成する繊維としては、前記(B)型不織布成形体の不織布成形体に用いる繊維と同様の繊維(好ましくは熱可塑性樹脂又はこれらの熱可塑性樹脂を含む複合繊維)を用いることができる。特に中心の接合部を熱シールなどのシール手段により形成する場合には、これらの繊維の融着を利用できるので好適である。また、特に(A)型不織布成形体に親水性を付与するか、あるいは微生物などの栄養源として炭素源を付与する要求がある場合には、ビスコースレーヨンや綿などの繊維が含まれていても良い。
【0037】
これらの繊維の繊度は、5デニール以上、より好ましくは10デニール以上であることが望ましく、繊度が小さすぎると目詰りを生じやすくなる。また、接合部を形成する前の不織布シートの見かけ密度は0.2g/cm3以下であることが望ましく、見かけ密度がこれより大きくなると、目詰りが起きやすくなる。不織布シートの形成手段は特に限定されず、繊維接着不織布、バインダー接着不織布、機械的絡合不織布などが用いられる。
【0038】
(A)型不織布成形体を形成する場合には、不織布シート及び発泡体シートの総積層数は2〜10枚、より好ましくは3〜6枚(放射状不織布成形体に形成後の不織布層及び発泡体層の総数は、中心の接合部22から数えて倍の6〜12枚になる)が適当である。また、不織布シートの厚みは2〜20mm、より好ましくは3〜15mmが、発泡体シートの厚みは2〜40mm、より好ましくは3〜30mmが適している。不織布シートと発泡体シートの比率は、各シートの厚みや密度、要求される浮力などによって適宜設定されるが、通常は2:8〜8:2の範囲にあることが望ましい。
【0039】
また、不織布シートと発泡体シートの積層構造は、特に限定されないが、不織布シートと発泡体シートが交互に積層されているのが好ましい。なお、不織布繊維層及び発泡体層には、前記(B)型不織布成形体と同様に、微生物吸着性のあるポリマーやカチオン化処理剤で処理することによって、あるいは多孔質粉体を付着させることによって、微生物吸着能力が高められていることが望ましい。
(A)型不織布成形体は、その成形体を水中に浮かせるのに充分な量の発泡体層を含有している。また、河川などの水位が変動して、特に水位が低下した場合でも、(A)型不織布成形体のほば全体が常に水中に浸漬している状態を維持することができる量の発泡体層を含有しているのが好ましい。
【0040】
(C)型不織布成形体は、前記の(A)型不織布成形体に、微小発泡体粒子をさらに担持させた構造を有する。微小発泡体粒子の種類、及び担持方法としては、前記の(B)型不織布成形体に関して説明した微小発泡体粒子の種類、及び担持方法を用いることができる。また、微小発泡体粒子は、不織布層及び/又は発泡体層あるいはそれらの一部分に担持させることができる。(C)型不織布成形体においては、その成形体を水中に浮かせるのに充分な量の微小発泡体粒子及び発泡体層を含有していればよい。また、河川などの水位が変動して、特に水位が低下した場合でも、(C)型不織布成形体のほぼ全体が常に水中に浸漬している状態を維持することができる量の微小発泡体粒子及び発泡体層を含有しているのが好ましい。
【0041】
こうして得られた放射状不織布成形体は、(A)型不織布成形体、(B)型不織布成形体、及び(C)型不織布成形体、のいずれの場合も多様で連続的に変化する密度分布を有する繊維構造を含んでいるので、各種の水中生物の担持に適している。また、放射状不織布成形体は製造が容易であり、しかも耐候性にも優れている。また、浮カの付与及び浮カの程度の調整が非常に簡単である。さらに、放射状不織布成形体それ自体で充分な浮カを有するので、生物付着用担体にフロートを連結させた従来の不織布成形体に比べて、構造を簡単にすることがてき、流水の流れを妨げることが少ない。
【0042】
本発明で用いることのできる水草型の不織布成形体は、図4に示すように、複数の放射状不織布成形体2を、直列接続手段7(例えば、糸、紐、ワイヤー、テープなど)を介して、河床4から川面まで直列に連結したものであっても良く、このような実施の形態も本発明の不織布成形体に含まれる。このようにすると、各放射状不織布成形体2には各々浮カがあるため、水位が高い時には連結された各放射状不織布成形体2が河床から水面へと一列に並び、全ての放射状不織布成形体2の全体が水中に浸漬される。
一方、水位が低下しても、図5に示すように、上部の放射状不織布成形体2aも水面付近に漂いながら水中に実質的に浸漬し、それより下の放射状不織布成形体2はそれぞれ全体が水中に浸漬されるので好ましい。
【0043】
本発明において、連結手段3は、その一端が放射状不織布成形体2と接続し、他端を、河床に固定された支持具5に着脱自在に取り付けることのできるものであれば特に限定されずに使用できる。また、連結手段3は、放射状不織布成形体2が、それ自体の浮力と流水から受ける抵抗によって位置を変えながら、しかも支持具5から自然に脱離して流失しないで、流水内に漂うのを妨害しない作用を有する。従って、例えば、大型のゴミや流木などが流れてきて放射状不織布成形体2と衝突しても、それらと絡まずに避けることができる。さらに、大雨等により河川の流速が一時的に増加した場合には、河床とほば平行に横たわり、流水の妨害になることもない。
【0044】
また、同様の理由により、本発明による不織布連結体は、魚類などの河川等における移動(例えば、上り下り)にほとんど支障を与えることがない。また、洪水などの増水時には、従来の不織布成形体として提案されていた比較的大型の格子状プレートやネットなどでは、押し流された場合に河岸の護岸又は橋梁等に衝突してそれらを破壊したり、それが原因で、さらに大型のごみが堆積して、流水の抵抗等によってそれらを破壊したりするおそれがある。しかし、本発明による不織布連結体では、洪水などの増水時などに、仮に、連結手段等が破断して放射状不織布成形体が支持具から離脱した場合でも、各々の放射状不織布成形体は小型で、柔らかく、水上に浮遊する。従って、衝突して護岸や橋梁等を破壊したり、河川等の流れを妨げることがない。しかも、河川等の護岸又は橋梁等にも引っ掛かりにくく、これらの構造物に支障を与えることがない。
【0045】
本発明における連結手段3としては、例えば糸、紐、ワイヤー、バンドや、切れ目のあるリング、鎖などを用いることができる。これらの連結手段3は、図3に示したように、放射状不織布成形体2の接合部25に形成された開口部26に通して固定する。また、安全ピン、クリップ、洗濯ばさみなどの連結補助具を用いたり、接着剤による接着、熱シール、縫合などにより、放射状不織布成形体2に取り付けることができる。なお、連結手段3は、放射状不織布成形体2の取り替えが可能なように、支持具5と着脱自在なものが好ましい。
連結手段3を取り付ける支持具5は、河床等に直接に固定して配置しても、あるいは図8に示すように、コンクリートブロックや棒状、平板状又は網状の金属製フレーム5bなどに金属製リング5aを固定して、それらのコンクリートブロックや棒状、平板状又は網状の金属製フレーム5bなどを河床4に配置してもよい。
【0046】
放射状不織布成形体2は、連結手段3及び場合により直列接続手段7によって河川6中に漂わせた状態で保持することができる。さらに、図1に示すような回転自在連結具8を設けることによって、連絡手段3及び場合により直列接続手段7の軸線を中心にして自在に回転することができるように取り付けてもよい。回転自在連結具8は、前記の軸線を中心にして、いずれの方向にも自在に放射状不織布成形体2を回転させることができるものであれば、特に制限されずに使用でき、図6に示す回転自在連結具8などを好適に使用することができる。
【0047】
図6に示すように、接続端部としての接続リング81と球状回転自在コア82とは、軸部86により直接連結され、一対の内部連結部片83が形成されている。外部連結部片としての断面楕円状の中空隔離連結カバー84は、2個の回転自在コア82をその内部に含んで覆っている。内部連結部片83の軸部86の回転方向径は、それに直接連結する回転自在コア82の回転方向最大径よりも小さい。隔離連結カバー84には、各回転自在コア82の回転方向最大径よりも小さく、しかも各軸部86の回転方向最大径よりも大きい開口径を有する2個の開口部85が、互いに向かい合うように配設されている。
【0048】
各内部連結部片83は、回転自在コア82が隔離連結カバ一84の内部に位置し、軸部86の少なくとも一部分及び接続リング81が外部に露出するように、隔離連結カバ一84に設けた開口部85を貫通している。各内部連結部片83は軸部86の軸を中心に、回転自在コア82と軸部86と接続リング81とが一体的に、いずれの回転方向にも自在に回転することができる。また、隔離連結カバ一84も、内部連結部片83のそれぞれの回転運動とは独立して回転することができる。
【0049】
回転自在コア62の大きさは、回転自在コア62と隔離連結カバー64とが分離しないように、隔離連結カバ一84に設けた開口部85の開口径より大きく、しかも、隔離連結カバー84内での回転自在コア82の滑らかな回転を妨げない大きさであればよい。また、回転自在コア82の形状は、隔離連結カバ一84内で滑らかな回転を妨げない形状であればよく、例えば、球状、断面楕円球状、角柱、円柱、角錐、若しくは円錐、又はそれらの組合せ等を挙げることができる。回転自在連結具8は、接続リング81を介して、支持具5(又は5a)と連結手段3との間(図1及び図7参照)、連結手段3と放射状不織布成形体2との間、放射状不織布成形体2と直列接続手段7との間、連結手段3の途中の領域、及び/又は直列接続手段7の途中の領域間に1個又は複数個設けることができる。
【0050】
図6に示す回転自在連結具8は、接続端部として接続リング81を有するものであるが、接続端部の他の形状としては、例えば、紐、棒、球、円柱、又はフック等を挙げることができる。河川中に漂う放射状不織布成形体2は、回転自在連結具8を設けることによって、河川の流水の抵抗を受けて、軸線を中心にして河川中で回転する。一般に、水質浄化に有用な生物の付着は、放射状不織布成形体の上流側の領域に偏る傾向があるが、放射状不織布成形体が河川中で回転することによって、放射状不織布成形体の全体に一様に有用生物の付着が可能となり、河川水質の浄化能カが向上する。
また、上流から流れてきたごみ又は埃塵などが放射状不織布成形体に接触した場合にも、放射状不織布成形体が回転することによって下流へ流せるため、ごみなどが溜まって河川の流れを阻害することもない。
【0051】
本発明において使用することのできる底流水案内手段は、底流水を水質浄化装置の放射状不織布成形体へ案内することのできる手段であれば特に限定されないが、代表的態様としてしては、
(a)連結手段を介して不織布成形体と結合している「結合型案内手段」、及び
(b)水底若しくは水底に設けた支持具に、連結手段を介して結合された不織布成形体の上流側の水底若しくは水底に設けた支持具に配置する「前置型案内手段」を挙げることができる。
【0052】
ここで、前記結合型案内手段の例を、図7に示す。結合型案内手段11は、河床接合部12において適当な結合具13(例えば、ネジ等)により河床に固定させて取付けられる。結合型案内手段11の遮蔽板14に衝突した底水流(図7の矢印B)は、遮蔽板14の傾斜に沿って、その上部に配置された水草型の放射状不織布成形体2の方向へ案内される。放射状不織布成形体2は、結合型案内手段11の上部に設けられた載置板15上の支持具16により、連結手段3(及び場合により回転自在連結具8)を介して結合型案内手段11に取付けられている。
【0053】
図7の場合、遮蔽板14に沿って方向転換された底水流(図7の矢印B)による上昇流が存在するので、連結手段3(及び場合により回転自在連結具8)それ自体の長さに相当する部分(図7中のC)を流れることになる流水も、放射状不織布成形体2の方向へ流される。
図7では結合型案内手段11の上部に設置した載置板15上に支持具16を設けたが、相当する支持具を遮蔽板の任意の位置(例えば、上辺、中段又は下段)に設け、連結手段3を介して放射状不織布成形体2を担持することができる。また、図7には、1つの結合型案内手段11に、3個の放射状不織布成形体2を取付けた例を示したが、1つの結合型案内手段11に取付けることのできる放射状不織布成形体2の数は特に限定されず、1つ又は複数個を取付けることができる。
【0054】
次に、前置型案内手段11は、図1、図4、図5、及び図8に示すように、水底若しくは水底に設けた支持具5(又は5a)に連結手段3を介して結合された放射状不織布成形体2の上流側の水底若しくは水底に設けた支持具に配置される。この態様でも、前置型案内手段11の遮蔽板14に衝突した底水流(図1などの矢印B)は、遮蔽板14の傾斜に沿って方向を転換され、その上部の河川流(図1などの矢印A)と共に、下流側に配置された放射状不織布成形体2の方向へ案内される。
なお、1つの前置型案内手段11に対して、1つ又は複数個の放射状不織布成形体2を適用することができる。前置型案内手段11と放射状不織布成形体2との間隔は、適用する個々の河川などの水流速度や水量などを考慮して適宜決定することがてきる。
【0055】
また、遮蔽板14の形状としては、底流水を放射状不織布成形体2へ案内することのできる形状であれば特に限定されず、例えば、底面流が衝突する面が、平面状、少なくとも一部に凹面若しくは凸面を有する曲面状、2段若しくはそれ以上の(水底面に平行な)階段若しくは(水底面に垂直な)溝状凹部及び稜線状突起を有する面状、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。遮蔽板14の傾斜も、底流水を放射状不織布成形体ヘ案肉することのできる角度てあれば特に限定されず、適用する個々の河川などの水流速度や水量などを考慮して適宜決定することができる。
【0056】
遮蔽板14は、それに衝突する全ての流水を遮蔽する板であってもよいが、衝突する流水の一部を通過させる構造、例えば、1又は複数の貫通孔を有する板、多孔質性の板、あるいはネットなどであっても良い。
【0057】
また、底流水案内手段の大きさ、並びにその底流水案内手段を含む放射状不織布成形体の配置数及び配置方法は、本発明による放射状不織布成形体を河川等の中に配置した場合に水流を実質的に妨害することのないものであって、底流水を放射状不織布成形体へ案内することのできるものであれば、特に制限されず、本発明による不織布成形体を設置する環境条件又は目的に応じて、適宜選択することができる。例えば、河川の横断方向の一端から他端までの直線上に間隔を開けて複数個の不織布成形体を一列に配置し、こうした不織布成形体の列を流れ方向に沿って複数列配置することも、あるいは河川の横断方向に対して比較的大型の不織布成形体を1個だけ配置することもできる。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、接合部に形成された開口部によって、不織布成形体を回転自在にかつ簡単に保持することができる。また、開口部を不織布成形体の両端部に形成することにより、複数個の不織布成形体を直列に接続することが可能となる。さらに、補強部材によって開口部が破断するのを防止でき、不織布成形体を長期間に渡って強固に保持することができる。また、不織布に担持された微小発泡体粒子によって、不織布成形体に浮力が付加され、不織布成形体をその長手方向に直立させることができ、水中浮遊させることができるので、水質浄化の効率を増大させることができる。さらに、不織布を放射状とすることによって、その表面積が増大するので、水中の微生物、溶存酸素や栄養源との接触の機会が増大し、水質浄化の効率が向上するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による不織布成形体を河川の流水中に配設した状態を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態による不織布成形体を示す部分斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態による不織布成形体をその中心部付近を長手方向に切断した断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による複数個の不織布成形体を河川に配設した状態を模式的に示す説明図である。
【図5】図4に示す不織布成形体における渇水時の状態を模式的に示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態で用いることのできる回転自在連結具をその回転軸を含む面で切断した断面図である。
【図7】本発明の一実施形態による不織布成形体を結合型案内手段に固定した状態を概略的に示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態による不織布成形体を前置型案内手段に固定した状態を概略的に示す斜視図である。
【符号の説明】
1…水質浄化装置、2…放射状不織布成形体、3…連結手段、4…河床、5…支持具、6…河川水、7…直列接続手段、8…回転自在連結具、11…底流水案内手段;12…河床接合部、13…結合具、14…遮蔽板三15…載置板、16…支持具、21…接合部、22…不織布繊維層、23…周辺部、24…層間間隙、25…接合部、26…開口部、27…補強部材、28…微小発泡体粒子、29…発泡体層、81…接続リング、82…回転自在コア、83…内部連結部片、84…隔離連結カバー、85…開口部、86…軸部。
Claims (5)
- 線状の接合部と、前記接合部を中心として前記接合部に接合された複数枚の不織布と、前記接合部の両端部に形成された開口部と、を具備し水中で浮かぶことのできる浮力を有する複数の不織布成形体と、
前記開口部を介して前記複数の不織布成形体を直列に連結する直列接続手段と、
を備えたことを特徴とする不織布連結体。 - 点状の接合部と、前記接合部を中心として前記接合部に接合された複数枚の不織布と、前記接合部に形成された開口部と、を具備し水中で浮かぶことのできる浮力を有する複数の不織布成形体と、
前記開口部を介して前記複数の不織布成形体を直列に連結する直列接続手段と、
を備えたことを特徴とする不織布連結体。 - 前記開口部に補強部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の不織布連結体。
- 前記不織布には、微小発泡体粒子が担持されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか記載の不織布連結体。
- 前記複数枚の不織布は、放射状に接着されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか記載の不織布連結体。
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