JP3638356B2 - インクジェットヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクを加熱して発泡させ、インク液滴としてオリフィスより吐出させることで記録をおこなうインクジェットヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットヘッドには普通紙に記録できる簡便性と高画質性とがあって、さらにカラー用としてのシリアルタイプが主流となっている。しかし、1枚のカラー画像を印画するための所要時間が長いという問題点があるので、この問題点を解消するためにラインタイプのインクジェットヘッドが望まれている。
【0003】
すでに提案されたラインタイプのインクジェットヘッドを図5と図6により説明する。図5はインクジェットヘッド1の要部構成を示す破断面斜視図であり、図6は図5中の切断面線X−Xによる断面図である。
【0004】
2はSiからなる厚み0.5〜1.0mmの長尺状の基板、3は基板2上に設けた厚み1μm程度のSiO2 からなる蓄熱層、4は蓄熱層3上に設けたTa−Alやポリシリコンなどからなる厚み1000〜2000Å程度の抵抗体層であり、この抵抗体層4上にはAlなどからなる厚み1μm程度の個別電極5と共通電極6とを対向するように配設し、これによって個別電極5と共通電極6との間に発熱領域7を形成し、かかる発熱領域7を多数配列することによって発熱素子アレイとなす。
【0005】
また、SiNなどからなる保護層8を厚み1〜2μm程度で被覆し、この保護層8の上にはTaなどからなる耐キャビテーション層9を厚み0.5〜2μm程度で形成し、そして、発熱領域7の周辺にシリコーンやエポキシなどの樹脂からなる流路用の壁10を設けて、さらにインクドロップレットを排出するための排出口であるオリフィス11が個々の発熱領域7毎に配列されたNiやポリイミド樹脂などからなるオリフィスプレート12(以下、プレート12とする)を配設し、これら壁10とプレート12などで囲まれた空間領域に水溶性インクを各々の発熱領域7へ導入する、いわゆるインク流路を構成する流路部13となす。
【0006】
かくして上記ラインタイプのインクジェットヘッド1によれば、オリフィス11が50μmの径で、300DPIの間隔で2000〜3000素子になるように配列され、この配列でもって副走査方向に各オリフィス11が適宜インク液滴を放出し、このような1次元的な印画とともに、インクジェットヘッド1が主走査方向に移動することで、2次元的に印画がおこなわれる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記構成のインクジェットヘッド1においては、従来の感熱記録タイプのサーマルヘッドと比べて、保護層8の上に耐キャビテーション層9を配しているので、その層9の耐キャビテーション性を高めるために、一定以上の圧縮応力が内在されるように成膜形成している(特開平6−297713号参照)。
【0008】
そのため、基板2の長さが200mmを越えるような長尺状のインクジェットヘッド1を作製した場合には、図7に示すように耐キャビテーション層9に起因して、過大な応力Fでもって基板2が湾曲し、さらに基板2の端において最も応力が集中するために、この端付近の耐キャビテーション層9が剥離したり、あるいは保護層8が破断していた。
【0009】
したがって本発明の目的は耐キャビテーション層の剥離や保護層の破断が生じない高品質かつ高信頼性のインクジェットヘッドを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のインクジェットヘッドは、基板上に蓄熱層と抵抗体層とを順次形成し、この抵抗体層上に個別電極と共通電極とを対向配置して発熱素子となすとともに、その発熱素子を複数個配列して発熱素子アレイを構成し、この発熱素子アレイ上に電気的絶縁材料からなる保護層と帯状の耐キャビテーション層とを順次配し、かつ上記耐キャビテーション層の隣接する発熱素子間に切り込みを入れたサーマルヘッドと、このサーマルヘッド上に配してオリフィスが設けられたオリフィスプレートと、これらサーマルヘッドとオリフィスプレートとでインク流路をなす流路部とを具備し、さらに流路部に導入されたインクのうち発熱素子付近のインクが加熱されて発泡することにより、オリフィスよりインク液滴を吐出するようにしたことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のインクジェットヘッドを図1〜図3により説明する。図1は実施形態のインクジェットヘッド14の要部構成を示す破断面斜視図、図2はインクジェットヘッド14のうちサーマルヘッド15の要部上面図、図3は他の実施形態のインクジェットヘッド16の要部構成を示す破断面斜視図である。なお、図5と図6に示すインクジェットヘッド1と同一箇所には同一符号を付す。
【0012】
図1と図2に示すインクジェットヘッド14によれば、主としてサーマルヘッド15と、サーマルヘッド15上に配したインク流路を構成する流路部13と、前記オリフィスプレートとしてのインク液滴を吐出するオリフィス11が設けられたプレート12とから構成されている。
【0013】
上記サーマルヘッド15においては、Siからなる厚み0.5〜1.0mmの長尺状の基板2上に厚み1μm程度のSiO2 からなる蓄熱層3、Ta−Alやポリシリコンなどからなる厚み1000〜2000Å程度の抵抗体層4とを順次積層し、抵抗体層4上にはAlなどからなる厚み1μm程度の個別電極5と共通電極6とを対向するように配設し、これによって個別電極5と共通電極6との間に発熱領域7を形成して発熱素子17となし、このような発熱素子17を多数配列することによって300DPIの間隔で2000〜3000素子になる発熱素子アレイを構成する。さらにかかる発熱素子アレイ上に厚み1〜2μm程度のSiNなどの電気的絶縁材料からなる保護層8と、厚み0.5〜2μm程度のTaなどからなる帯状の耐キャビテーション層18を形成している。
【0014】
この耐キャビテーション層18については、従来のインクジェットヘッド1を示す図6において、耐キャビテーション層9に代えて耐キャビテーション層18を設けた構造となっている。したがって、図6に示す如く、サーマルヘッド15上に設けたプレート12と流路部13は次のような構造になっている。すなわち、発熱領域7の周辺にシリコーンやエポキシなどの樹脂からなる流路用の壁10を設けて、さらに50μm径のオリフィス11が個々の発熱領域7毎に配列されたNiやポリイミド樹脂などからなるプレート12を配設し、これら壁10とプレート12とでもって流路部13を構成する。
【0015】
さらにまた、本発明の特徴である耐キャビテーション層18については、図2に示すように隣接する発熱素子17間の部位でもって切り込み19を入れている。たとえば、発熱領域7の幅W1が60μmである場合には、耐キャビテーション層18の切り込み19部分の幅W2が15μmとなるようにする。
【0016】
そして、流路部13に導入されたインクにおいて、ある発熱素子17に電力印加されると、その発熱素子17付近のインクは熱エネルギーを受けて発泡し、その発熱素子17に対応するオリフィス11を通してインク液滴が吐出する。
【0017】
かくして上記構成のインクジェットヘッド14によれば、一定以上の圧縮応力のある耐キャビテーション層18を設けても、その圧縮応力が切り込み19でもって分散されるので、基板2には湾曲が生じなくなり、これによって基板2の端付近の耐キャビテーション層18が剥離しなくなり、また、保護層8が破断しなくなる。
【0018】
本発明の他の実施形態であるインクジェットヘッド16を図3の破断面斜視図でもって説明する。なお、図1および図2に示すインクジェットヘッド14と同一箇所には同一符号を付す。
【0019】
前述したインクジェットヘッド14においては、帯状の耐キャビテーション層18に両側より切り込み19を入れているが、本例のインクジェットヘッド16によれば、帯状の耐キャビテーション層20の長手一方側および長手他方側に切り込み21を順次交互に入れている。
【0020】
上記構成のインクジェットヘッド16においても、同様に圧縮応力が切り込み21でもって分散されるので、基板2の端付近の耐キャビテーション層20が剥離しなくなり、また、保護層8が破断しなくなる。
【0021】
【実施例】
W2が15μmである切り込み19を設けた以外は同じ構成とした本発明のインクジェットヘッド14および従来技術のインクジェットヘッド1について(双方の耐キャビテーション層は厚みが1.5μmである)、基板の端付近における耐キャビテーション層の剥離発生不良率を、基板長さに対して測定したところ、図4に示すような結果が得られた。なお、この不良発生率は、100個のインクジェットヘッドを同じ条件で作製した場合に、1か所でも剥離などが発生したものを不良と認定して、その割合をあらわす。
【0022】
図4の結果から明らかなとおり、本発明のインクジェットヘッド14によれば、基板長さが280mmになって、ようやく不良が発生するのであるが、これに対する従来技術のインクジェットヘッド1においては、基板長さが100mmになって不良が発生した。したがって、本発明は従来と比べて約2.8倍の耐性があることがわかる。そして、本発明のインクジェットヘッド14を印画幅がB4サイズに使用することができる。
【0023】
また、本発明のインクジェットヘッド14においては、切り込み19を入れた耐キャビテーション層18に局所的に静電気が発生しても、その静電気は直ちに分散され、静電破壊が生じなくなっていた。
【0024】
なお、本発明は上記実施例および実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更や改良などを何ら差し支えない。たとえば、上記実施例によれば、基板長さが280mm未満で使用できるものであったが、耐キャビテーション層17や保護層8の幅や厚み、さらに切り込み19、21の形状や寸法を適当に変えることで各種サイズの基板に適用できる。
【0025】
【発明の効果】
かくして本発明のインクジェットヘッドによれば、耐キャビテーション層に切り込みを設けているので、その層に圧縮応力があっても、それが切り込みにより分散されて、基板には湾曲が生じなくなり、これによって基板の端付近の耐キャビテーション層が剥離しなくなり、また、その下の保護層が破断しなくなり、その結果、高品質かつ高信頼性のインクジェットヘッドが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェットヘッドの要部構成を示す破断面斜視図である。
【図2】本発明のインクジェットヘッドのうちサーマルヘッドの要部上面図である。
【図3】本発明の他のインクジェットヘッドの要部構成を示す破断面斜視図である。
【図4】実施例における剥離などの不良が発生する比率をあらわす線図である。
【図5】従来のインクジェットヘッドの要部構成を示す破断面斜視図である。
【図6】図5中の切断面線X−Xによる断面図である。
【図7】従来のインクジェットヘッドにおける耐キャビテーション層や基板などの湾曲状態を示す断面図である。
【符合の説明】
1、14、16 インクジェットヘッド
2 基板
3 蓄熱層
4 抵抗体層
5 個別電極
6 共通電極
7 発熱領域
8 保護層
9、18、20 耐キャビテーション層
10 壁
11 オリフィス
12 プレート
13 流路部
15 サーマルヘッド
17 発熱素子
19、21 切り込み
Claims (1)
- 基板上に蓄熱層と抵抗体層とを順次形成し、この抵抗体層上に個別電極と共通電極とを対向配置して発熱素子となすとともに、該発熱素子を複数個配列して発熱素子アレイを構成し、この発熱素子アレイ上に電気的絶縁材料からなる保護層と帯状の耐キャビテーション層とを順次配し、かつ上記耐キャビテーション層の隣接する発熱素子間に切り込みを入れたサーマルヘッドと、該サーマルヘッド上に配してオリフィスが設けられたオリフィスプレートと、これらサーマルヘッドとオリフィスプレートとでインク流路をなす流路部とを具備するとともに、該流路部に導入されたインクのうち上記発熱素子付近のインクが加熱されて発泡することにより、オリフィスよりインク液滴を吐出するようにしたインクジェットヘッド。
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JP30469095A JP3638356B2 (ja) | 1995-11-22 | 1995-11-22 | インクジェットヘッド |
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JP30469095A JP3638356B2 (ja) | 1995-11-22 | 1995-11-22 | インクジェットヘッド |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH09141870A JPH09141870A (ja) | 1997-06-03 |
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ID=17936056
Family Applications (1)
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JP30469095A Expired - Fee Related JP3638356B2 (ja) | 1995-11-22 | 1995-11-22 | インクジェットヘッド |
Country Status (1)
Country | Link |
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-
1995
- 1995-11-22 JP JP30469095A patent/JP3638356B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH09141870A (ja) | 1997-06-03 |
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