JP4143173B2 - インクジェット記録素子及びこれを用いたインクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録素子及びこれを用いたインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録装置等に用いられるインクジェット記録素子としては、例えば、図8に示すものが先行技術として知られている。
【0003】
この素子は、保持体100とその上に形成した発熱素子(発熱抵抗体層)101と共通配線電極111と個別配線電極110と耐酸化層及び絶縁層と耐インク層及び絶縁層とから構成されている。個別配線電極110は、各発熱素子101に配線電極102を設けて形成され、共通配線電極111は、各発熱素子101に共通の配線電極102を設けることによって形成されている。
【0004】
このインクジェット記録素子においては、発熱抵抗体層101に電流を流すことにより、熱エネルギーを発生させることができる。すなわち、駆動電流を、外部接続電極より個別配線電極110を介して発熱抵抗体層101に流入させ、さらに共通配線電極111を介して外部へ流出させることにより、熱エネルギーを発生させることができる。なお、インクジェット記録装置においては、この熱エネルギーを利用して液体を吐出させることにより記録が行われる。
【0005】
通常、発熱抵抗体層101と配線電極102は、図8に示すように、インクジェット記録素子に複数形成されている。このように、複数の発熱素子を設けると、複数ドットの記録を同時に行うインクジェット記録装置を得ることが可能となり、記録の高速化を図ることができる。
【0006】
今日においては、高密度,高速記録に対する強い要請から、主走査ラインの記録を同時に行うことが一般化しており、したがって、多数の発熱素子を高密度に配置した記録ユニットが登場している。また、従来のような文字データだけでなく、画像データを出力することに対するニーズの拡大や、カラー出力の増大に伴い、高密度記録かつ階調表現を実現するため、ヒーター配列の高密度化が急速に進んでいる。
【0007】
ところが、上記の発熱抵抗体層101は、その特性から、その幅を可能な限り広くした方が記録特性上有利である。しかし、広くすれば、ヒーターはかろうじて形成できるものの、共通配線電極111は、図8に示すように、これを配置するスペースが殆ど無く、特に配線電極となる低抵抗導体層102は、その形成が非常に困難になる。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、超高密度のヒーター及びそれに接続する配線電極の形成を可能にするインクジェット記録素子及びこれを用いたインクジェット記録装置を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明が提供するインクジェット記録素子は、次の(1)〜(5)に記載のものである。
(1)保持体と、該保持体上に設けられ、液体を吐出するエネルギーを発生する複数の記録素子を有する高抵抗導体層と該高抵抗導体層に電気信号を供給するための配線電極と、を有し、前記高抵抗導体層と前記配線電極とが接して積層されているインクジェット記録素子であって、前記配線電極は、複数の前記記録素子ごとに個別に設けられた個別配線電極と、複数の前記記録素子に共通して設けられた共通配線電極と、を有し、前記記録素子は、前記高抵抗導体層の、前記個別配線電極と前記共通配線電極との間の部位であって、前記エネルギーとして熱エネルギーを発生し、前記個別配線電極の幅は、該個別配線電極に接する前記高抵抗導体層の幅よりも小さく、前記共通配線電極の、複数の前記記録素子の間の部位の幅は、該部位と接する前記高抵抗導体層の幅よりも大きいことを特徴とするインクジェット記録素子。
(2)前記共通配線電極の、前記個別配線電極の間の部位の幅は、該部位と接する前記高抵抗導体層の幅よりも大きいことを特徴とする前記(1)に記載のインクジェット記録素子。
(3)前記保持体側から順に、前記配線電極、前記高抵抗導体層、が形成されていることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のインクジェット記録素子。
(4)前記保持体側から順に、前記高抵抗導体層、前記配線電極、が形成されていることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のインクジェット記録素子。
(5)前記記録素子に対応して設けられる吐出口と、該吐出口に連通する液路と、を有することを特徴とする前記(1)乃至(4)のいずれかに記載のインクジェット記録素子。
また、本発明が提供するインクジェット記録装置は、
前記(1)乃至(5)のいずれかに記載のインクジェット記録素子を有するインクジェット記録装置。
【0013】
本発明の装置によれば、画像の高精細化,高画質化を実現できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって説明する。
【0015】
(実施例1)
本発明の典型的な実施例であるインクジェット記録素子を、図1によって、その製造方法とともに説明する。
【0016】
100は、絶縁性基板(保持体)、例えば、ガラス,セラミック等の基板、またはシリコン,金属等の伝導性基板表面を絶縁被覆した基板である。101はこの基板100の上に形成した発熱抵抗体層(高抵抗導体層)である。
【0017】
発熱抵抗体層101の形成は、一般には、真空成膜により行われるが、その他の方法、例えば、厚膜印刷法等の方法でも可能である。本実施例では、スパッタリング法により、TaAlで3000Aの成膜を形成した。発熱抵抗体材料は、例えば、AlN,TiN,Ta等であるが、耐熱性に優れ、均一に形成可能なものであれば何でもよい。
【0018】
次に、成膜したTaAlをパターニングするため、フォトリソグラフィ法によりTaAlのパターンを形成した。具体的には、TaAl上にポジレジストをコーティングした。ポジレジストは、東京応化製のOFPR800等で、ロールコート法でコーティングした。スピンコート法でもよい。
【0019】
次に、ポジレジストを90度で30分程度プリベークし、その後、所望の形状に露光した。露光後、専用の現像液で現像しレジストパターンを形成し、これをマスクとして、ドライエッチングした。エッチングガスはBC13とC12を用いた。エッチング終了後、上記レジストを専用の剥離液により剥離した。
【0020】
次に、真空成膜により、Alを成膜した。Alは配線電極102として使用するので、膜厚としてはプロセス上問題のない範囲で厚くすることが望ましい。ここでは、1ミクロンスパッタした。なお、配線電極102には、Alに限らず、Cu,Au,Ag等の良伝導性金属であれば問題無く使用できる。
【0021】
Alの膜は、前述したフォトリソグラフィ法により、パターン形成した。このパターンは、先に形成されたTaAlのパターンに合わせて形成するが、発熱部となる部分には、Alの配線電極102は形成しない。
【0022】
次に、図示しないが、発熱抵抗体層101と配線電極102とを、耐酸化性,耐食性及び耐キャビテーション性の観点から、外部との電気的接続を得るための外部接続電極112部分を除いて、陽極酸化により保護した。陽極酸化は、一般のものでもかまわないが、ここでは、酒石酸アンモニウムとエチレングリコールと水の混合溶液中で、上記パターンを陽極として、電圧を印加することにより形成した。さらに、耐食性を完璧なものにするため、前記パターン上に有機保護膜104を、発熱部と外部電極との外部接続電極112を除く全面に形成した。
【0023】
上記有機保護膜104は、本実施例では、ポリエーテルアミドを使用したが、その他の耐水性に優れた材料、例えば、ポリイミド等も使用できる。
【0024】
本実施例においては、共通配線電極111の折り返し部分の少なくともヒーター配線の近傍では、前記したTaAlの発熱抵抗体層(高抵抗導体層)101の線幅が、Alの配線電極(低抵抗導体層)102の線幅より小さくなっている。
【0025】
具体的数値を挙げると、例えば、幅が20ミクロンの発熱部を有する600dpi、すなわち、発熱部のピッチが42.5ミクロンの発熱抵抗体層101では、上記発熱部間の間隔は22.5ミクロンとなる。この間で、従来例のように、共通配線電極111のAlをパターニング後、Alのエッチングを行うと、共通電極部分のAl、すなわち、低抵抗配線部分は数ミクロン以下の配線幅となるか、最悪の場合、エッチングにより、共通電極部分のAlは消失してしまう。したがって、従来例では、本実施例のような高密度配線は、形成不可能であった。
【0026】
それに対して、本実施例では、共通配線電極111の形成において、TaAlの発熱抵抗体層(高抵抗導体層)101とAlの配線電極(低抵抗導体層)102をそれぞれレジストパターニングし、かつエッチングして形成するので、それぞれに最適なマスク寸法を考慮してパターン形成できる。
【0027】
さらに、共通配線電極111では、その配線抵抗が問題となるので、低抵抗導体である配線電極102の線幅を最大となるようにし、個別配線電極110では、記録特性を良好に保つため、一般に、その発熱抵抗体層101の幅が最大となるように構成した。すなわち、共通配線電極111では、発熱抵抗体層101よりも配線電極102の線幅を広くし、個別配線電極110では、発熱抵抗体層101を配線電極102よりも線幅を広くした。
【0028】
このため、TaAlの発熱抵抗体層101とAlの配線電極102のギャップはショートしない程度、例えば、2ミクロンといった極めて小さい間隔で形成可能となる。Alの配線電極102の線幅は、上記の従来例では、数ミクロン以下であったものが、18ミクロン程度の線幅を確保できる。もちろん、この差は発熱抵抗体層101の配線密度を高密度化するほど大きくなることは言うまでもない。
【0029】
このように、実施例の構成によれば、従来は困難であった高密度配線が可能となり、400dpi以上という高密度のインクジェット記録素子の製造が、従来の製造方法と設計ルールの変更を伴わないで実現することが可能となる。
【0030】
本実施例のインクジェット記録素子における記録素子としては、例えば、熱エネルギーを発生する電気熱変換体、その他の記録素子を用いることができる。
前記記録素子が電気熱変換体であった場合、個別電極と共通電極との間に位置する高抵抗導体層が電気熱変換体部分となり、電極から電気信号を受けることで電気熱変換体が発熱して液体を吐出する。
【0031】
図2は、本実施例のインクジェット記録素子を用いたインクジェット駆動ユニットを示す。このユニットは、支持体201とインクジェット記録素子200と駆動素子基体202と駆動IC203よりなる。
【0032】
(実施例2)
実施例1では、インクジェット記録素子について説明した。ここでは、インクジェットユニット,インクジェット駆動ユニット及びインクジェット記録装置について説明する。
【0033】
本実施例によるインクジェットユニットは、前述のようにして作成したインクジェット記録素子300にインクを吐出させるための吐出口と、これに連通する液路とを形成したものである。また、インクジェット駆動ユニットは、図3に示すように、インクジェットユニットに駆動素子基体202と駆動IC203を接続したものである。
【0034】
次に、本実施例によるインクジェット記録装置について説明する。
【0035】
図4は本実施例によるインクジェット記録装置を示す図である。図4において、記録シート503は、給紙ローラ502によって、上下に所定間隔を置いて設置されたシート送りローラ501まで搬送され、矢印A方向にシート送りされる。上記記録シート503の前面には、ガイド軸513に沿って移動するキャリッジ510が設けられている。キャリッジ510上には、前述したインクジェット駆動ユニット512が載置されている。前記キャリッジ510は、キャリッジ駆動モータによりベルト伝達機構509を介して往復駆動される。
【0036】
記録に際しては、前記キャリッジ510の記録シート幅方向の移動に同期して、前記インクジェット駆動ユニット512の吐出口から記録シート503へ向かってインクが液滴として吐出される。
【0037】
インクジェット駆動ユニット512には、吐出口が記録シート側に向けて形成されており、駆動素子からの信号に対応して、吐出口からインク液滴が吐出される。
【0038】
(実施例3)
図5は、インクジェット記録装置の別の例である。実施例2との違いは、本例のインクジェット駆動ユニット512は記録紙の記録幅分の記録素子を具備していることにある。
【0039】
したがって、キャリッジを往復駆動させる必要がなく、そのため機構が簡単で、かつ高速記録が可能である。本例では非常に長いユニットを使用するので効果は絶大である。
【0040】
(実施例4)
図6は、インクジェット記録素子の別の例である。本実施例では、低抵抗導体層102を下層に、高抵抗導体層101を上層にしてインクジェット記録素子を形成した例である。このように構成しても、実施例1とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0041】
(実施例5)
図7は、インクジェット記録素子のさらに別の例である。
【0042】
本実施例では、共通配線電極111のさらなる低抵抗化を計るため、配線電極(低抵抗導体層)102を2層とし、その配線電極102間に高抵抗導体層101を形成した例である。本実施例では、配線電極102の膜厚をより厚く形成できるので、本発明による配線の高密度化によっても、なお、配線電極のより一層の低抵抗化が可能となる。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、上述のように構成したので、ヒーターの配置密度を高くしても、配線電極を形成できることから、市場において求められている記録密度の高密度化を極めて容易に行うことが可能となり、記録画像の高精細化,高画質化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1のインクジェット記録素子を示し、同図(a),(b)及び(c)は平面図、同図(d)は同図(b)のA−A断面図
【図2】 実施例1のインクジェット記録素子を用いたインクジェット駆動ユニットの側面図
【図3】 実施例1のインクジェット記録素子を用いたインクジェット駆動ユニットの側面図
【図4】 実施例2のインクジェット記録装置の斜視図
【図5】 実施例3のインクジェット記録装置の斜視図
【図6】 実施例4のインクジェット記録素子を示し、同図(a)は平面図、同図(b)は同図(a)のA−A断面図
【図7】 実施例5のインクジェット記録素子を示し、同図(a)は平面図、同図(b)は同図(a)のA−A断面図
【図8】 従来のインクジェット記録素子を示し、同図(a)及び(b)は平面図、同図(c)は同図(b)のA−A断面図
【符号の説明】
100 絶縁性基板
101 発熱抵抗体層(高抵抗導体層)
102 配線電極(低抵抗導体層)
104 有機保護膜
110 個別配線電極
111 共通配線電極
112 外部接続電極
200 インクジェット記録素子
201 支持体
202 駆動素子基体
203 駆動IC
300 インクジェット記録素子
501 シート送りローラ
502 給紙ローラ
503 記録シート
509 ベルト伝達機構
510 キャリッジ
512 インクジェット駆動ユニット
513 ガイド軸
Claims (6)
- 保持体と、
該保持体上に設けられ、液体を吐出するエネルギーを発生する複数の記録素子を有する高抵抗導体層と該高抵抗導体層に電気信号を供給するための配線電極と、
を有し、前記高抵抗導体層と前記配線電極とが接して積層されているインクジェット記録素子であって、
前記配線電極は、複数の前記記録素子ごとに個別に設けられた個別配線電極と、複数の前記記録素子に共通して設けられた共通配線電極と、を有し、
前記記録素子は、前記高抵抗導体層の、前記個別配線電極と前記共通配線電極との間の部位であって、前記エネルギーとして熱エネルギーを発生し、
前記個別配線電極の幅は、該個別配線電極に接する前記高抵抗導体層の幅よりも小さく、
前記共通配線電極の、複数の前記記録素子の間の部位の幅は、該部位と接する前記高抵抗導体層の幅よりも大きいことを特徴とするインクジェット記録素子。 - 前記共通配線電極の、前記個別配線電極の間の部位の幅は、該部位と接する前記高抵抗導体層の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録素子。
- 前記保持体側から順に、前記配線電極、前記高抵抗導体層、が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録素子。
- 前記保持体側から順に、前記高抵抗導体層、前記配線電極、が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録素子。
- 前記記録素子に対応して設けられる吐出口と、該吐出口に連通する液路と、を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録素子。
- 請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録素子を有するインクジェット記録装置。
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