JP3638308B2 - セメント組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、セメント組成物、特に、早期強度発現性や寸法安定性が要求されるセメント組成物に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
一般に、左官モルタルや、コンクリート打設後、気泡や充填不良などにより発生した隙間など、いわゆるコンクリートジャンカを補修する補修用材料や、床補修などの補修材等では、セメントや骨材に必要量の水を添加し、モルタルを作製し施工を行っていた(鈴木忠五郎著 左官工学 昭和43年 株ヤブ原出版発行、日本建築学会発行 建築工事標準仕様書・同解説 JASS 15 左官工事)。
【0003】
しかしながら、セメントと骨材だけのモルタルでは、▲1▼早期強度発現性が発揮されないため、硬化まで時間がかかる。▲2▼セメントの硬化収縮が大きく、硬化体にひび割れが発生する。▲3▼モルタルの余剰水発生(ブリーディング)があり、モルタル硬化後の硬化体表面に凹凸が発生する。等の課題があった。
【0004】
本発明者は、上記課題を解決すべく種々検討した結果、特定の組成物を使用することが有効であるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、セメント、アルミノケイ酸カルシウムガラス、セッコウ類、並びに、各ふるい寸法の通過量、5 mm が0〜 10 重量%、 2.5mm が5〜 30 重量%、 1.2mm 15 40 重量%、 0.6mm が5〜 30 重量%、 0.3mm 10 30 重量%、及び 0.15mm 以下が0〜 25 重量%の重量骨材を主成分とするセメント組成物である。
【0006】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0007】
本発明で使用するセメントとしては、普通、早強、超早強、及び中庸熱等の各種ポルトラルドセメントや、これらポルトランドセメントに、シリカ、高炉スラグ、又はフライアッシュが混合された各種混合セメント等が挙げられる。
【0008】
また、本発明で使用するアルミノケイ酸カルシウムガラス(以下CASガラスという)は、CaO質原料、Al2O3質原料、及びSiO2質原料の混合物を溶融し、急冷してなるもので、CaO30〜60重量%、Al2O320〜60重量%、及びSiO25〜25重量%の組成を持つものが好ましく、CaO35〜55重量%、Al2O330〜55重量%、及びSiO210〜20重量%の組成を持つものがより好ましい。CaOが30重量%未満、あるいは、Al2O3が60重量%を越えると急硬性に劣り、逆に、CaOが60重量%を超えるか、あるいは、Al2O3が20重量%未満であると、凝結遅延剤を多量添加しても瞬結する傾向がある。また、SiO2が5重量%未満であると、長期的な強度の伸びが期待できず、逆に25重量%を越えると初期強度が小さくなる傾向がある。
なお、一般の工業原料には、MgO、Fe2O3、TiO2、K2O、及びNa2O等の不純物が当然含まれており、これらの不純物は、CaO-Al2O3-SiO2系のガラス化領域を拡張することから、その含有量は、急硬性、作業性、及び長期強度発現性の面から10重量%未満が好ましい。
一般的なガラスの融剤である、KNO3やNaNO3などのアルカリ硝酸塩、フッ化カルシウム、及びホウ砂等を併用することは、CASガラスの融点を下げる面から好ましい。
【0009】
ここでいうガラスとは、熱分析等から求められるガラス転移点を示すガラス質を有するものである。
なお、全てガラス質である必要はなく、ガラス質/(鉱物質+ガラス質)で示されるガラス化率が50重量%以上であれば本発明のCASガラスとして好ましく、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上が最も好ましい。50重量%未満であると、早強性が得られないおそれがある。
ガラス化率は、例えば、CASガラスを1,000℃で2時間加熱後、5℃/分の冷却速度で徐冷し、粉末X線回析法により結晶鉱物のメインピークの面積S0を求め、CASガラス中の結晶のメインピーク面積Sから、ガラス化率X(重量%)=(1−S/S0)×100として算出できる。
CASガラスは、冶金又は金属精錬時などにおいて副生する高炉スラグの組成とは全く異なるものである。
ちなみに、高炉水砕スラグの平均的な化学組成は、CaO40〜43重量%、MgO5〜8重量%、Al2O313〜15重量%、及びSiO231〜35重量%である。
さらに、CASガラスは、アルミナセメントから派生したものでもない。即ち、通常のアルミナセメントのSiO2量は5重量%未満であり、ガラス化率は25重量%を越えることはない〔笠井順一、コンクリート工学、第22巻、第8号、第67頁 (1964)、1964年、ロンドン市アカデミックプレス インコーポレーデッド リミテッド発行、H. F. w. Taylor著、ザ ケミストリー オブ セメント(The Chemistry of Cement)、第二巻、第16頁〕。
【0010】
CASガラスの原料としては、CaO質原料として、生石灰(CaO)、消石灰(Ca(OH)2)、及び石灰石(CaCO3)等を用いることができ、Al2O3質原料として、アルミナ、ボーキサイト、ダイアスボア、長石、及び粘土等を用いることができ、SiO2質原料として、ケイ砂、白土、及びケイ藻土等を用いることができる。
あるいは、比較的安価な高炉スラグにCaO質原料とAl2O3質原料を補うことによっても達せられる。
これらCaO質原料、Al2O3質原料、及びSiO2質原料を所定の割合で配合した後、直接通電式溶融炉、あるいは、高周波炉を用いて溶融し、得られた溶融体を圧縮空気や高圧水により吹き飛ばす方法、あるいは、水中に流し込む方法により製造される。また、ロータリーキルンで溶融し、急冷することによってもCASガラスを製造することが可能である。
CASガラスの粉末度は、細かければ細かいほど反応性が向上するので好ましく、特に、ブレーン比表面積で3,000cm2/g以上が好ましい。3,000cm2/g未満では圧縮強度が低下するおそれがある。
CASガラスの使用量は、セメント100重量部に対して、5〜50重量部が好ましく、10〜30重量部がより好ましい。5重量部未満では高い強度発現性や急硬性が得られない場合があり、50重量部を越えるとクラックが発生する場合がある。
【0011】
本発明で使用するセッコウ類としては、無水、半水、及び二水の各セッコウの一種又は二種以上の使用が可能であり、このうち、II型の無水セッコウの使用が強度発現性の面から好ましい。
セッコウ類の粉末度は、3,000cm2/g以上が好ましく、4,000cm2/g以上がより好ましい。粉末度が3,000cm2/g未満では、強度発現性が低下する傾向がある。
セッコウ類の使用量は、セメント100重量部に対して、5〜50重量部が好ましく、10〜30重量部がより好ましい。5重量部未満では強度発現性の面で好ましくなく、50重量部を超えると膨張性を示し、クラックが発生したり、強度が低下する傾向がある。
【0012】
本発明では、セメント、CASガラス、及びセッコウ類に、さらに重量骨材を配合して、水と混練し、モルタルを作製する。
【0013】
本発明で使用する重量骨材は、特に、比重2.9以上のものが好ましく、比重3.1以上の重量骨材がより好ましい。
具体的には、磁鉄鉱、砂鉄、褐鉄鉱、赤鉄鉱、重結晶、玄武岩、及び粉砕スラグ等が挙げられる。
重量骨材の粒度は、各ふるい寸法の通過量、5mmが0〜10重量%、2.5mmが5〜30重量%、1.2mmが15〜40重量%、0.6mmが5〜30重量%、0.3mmが10〜30重量%、及び0.15mm以下が0〜25重量%が好ましく、また、各ふるい寸法の通過量、5mmが0〜5重量%、2.5mmが10〜20重量%、1.2mmが20〜30重量%、0.6mmが10〜20重量%、0.3mmが20〜30重量%、及び0.15mm以下が10〜20重量%であることがより好ましい。重量骨材の粒度がこの範囲外であると、形成時の硬化体の締まり具合が悪く、硬化体形成時の変位量が多くなる傾向がある。
重量骨材の使用量は、セメント100重量部に対して、100〜400重量部が好ましく、150〜300重量部がより好ましい。100重量部未満ではクラックが発生する傾向があり、400重量部を越えると強度発現性が低下する傾向がある。
【0014】
水の使用量は、セメント、CASガラス、セッコウ類、及び重量骨材からなるセメント組成物100重量部に対して、8.5〜10.5重量部が好ましく、9〜10重量部がより好ましい。8.5重量部未満では硬化時間が短くなる傾向があり、10.5重量部を越えると早期強度発現性に欠ける傾向がある。
【0015】
本発明では、セメント、CASガラス、セッコウ類、及び重量骨材に、さらに、各種の添加材を併用することが可能である。
【0016】
ここで、各種の添加材として、凝結遅延剤、ガラス繊維やカーボン繊維などの繊維、高分子ポリマーエマルジョン・ラテックス、着色材・顔料、AE剤、減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、防錆剤、メチルセルロース等の水中不分離混和材、増粘剤、保水剤、塩化カルシウム、ケイ酸ソーダ等の防水剤、発泡剤、水酸化カルシウム等のカルシウム含有化合物、及び防凍剤等からなる群より選ばれた一種又は二種以上を本発明の目的を阻害しない程度で使用することが可能である。
【0017】
凝結遅延剤としては、塩化カルシウム、塩化第二鉄、及び塩化アルミニウム等の塩化物、アルミン酸ナトリウムやアルミン酸カリウムなどのアルミン酸塩、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどの炭酸塩、水酸化ナトリウムや水酸化カルシウムなどの水酸化物、並びに、ケイフッ化亜鉛、ケイフッ化マグネシウム、及びケイフッ化ナトリウム等のケイフッ化物等の無機塩類、さらには、クエン酸、グルコン酸、及び酒石酸又はこれらのカルシウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩等の有機酸系化合物があり、これらを単独添加することも可能であり、二種以上を併用することも可能である。
凝結遅延剤の使用量は、CASガラス100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜8重量部がより好ましい。0.1重量部未満では瞬結する傾向があり、10重量部を越えると硬化時間が長引く傾向がある。
【0018】
本発明の各材料を混合する際に使用する混合装置としては、既存のいかなる装置でも使用可能であり、例えば、傾動ミキサー、千代田技研工業社製オムニミキサー、V型ミキサー、ヘンシェルミキサー、及びナウターミキサー等が利用可能である。
また、混合は各々の材料を施工時に混合してもよいし、あらかじめ一部、もしくは全部を混合しておいても差し支えない。
本発明のセメント組成物の実際の施工方法については、従来のモルタルあるいは、コンクリートの施工に準じればよく、特別な装置や工法などは、特に必要とはしない。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに詳しく説明する。
【0020】
実施例1
セメント100重量部、セッコウ類15重量部、及び重量骨材A270重量部と、セメント、CASガラス、セッコウ類、及び重量骨材からなるセメント組成物100重量部に対して水9.5重量部と、並びに、表1に示すように使用量を変化させたCASガラスを配合し、容量50リットルの強制式左官用ミキサーで混合し、3分間練り混ぜ、モルタルを作製し、そのフロー値と硬化時間を測定し、作製したモルタルを使用した4×4×16cmの供試体の圧縮強度と、10×10×10cmの供試体の変位量を測定した。結果を表1に示す。
【0021】
<使用材料>
セメント :電気化学工業社製普通ポルトランドセメント
CASガラス:CaO40.5重量%、Al2O336.1重量%、SiO211.3重量%、ブレーン値5,690cm2/g
セッコウ類:市販無水セッコウ、ブレーン値6,200cm2/g
重量骨材A:市販スラグ系重量骨材、比重3.10、粒度分布は、ふるい寸法の通過量2.5mm20重量%、1.2mm30重量%、0.6mm15重量%、0.3mm20重量%、及び0.15mm15重量%
【0022】
<試験方法>
フロー値 :JIS R 5201に準じて測定、フローテーブルにフローコーンを設置し、フローコーンにモルタルを2層詰めした後、静かに上方向に取り去ってから、15秒間に15回落下運動を与え、モルタルが広がった後の径を、最大と認める方向とこれに直角な方向を測定し、その平均(mm)。
圧縮強度 :4×4×16cmの供試体を使用してモルタルを2層詰とし、所定の材令まで恒温恒湿室で養生し、JIS R 5201に準じて、毎秒80kgfの割合で載荷し、その最大荷重を測定。
硬化時間 :練り上がったモルタルに熱電対を差し込み、セメントの水和反応による発熱量を熱電対自動温度記録計を用いて測定し、練り上がりより1℃上昇した時間。
変位量 :10×10×10cmの供試体を使用し、硬化後、硬化体の表面に、1/1,000mm精度のダイヤルゲージを据え付け、24時間後の変位量を測定。
【0023】
【表1】
Figure 0003638308
【0024】
実施例2
セメント100重量部、CASガラス15重量部、及び重量骨材A270重量部と、セメント組成物100重量部に対して水9.5重量部と、表2に示すように使用量を変化させたセッコウ類を配合したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
【0025】
【表2】
Figure 0003638308
【0026】
実施例3
セメント100重量部、CASガラス15重量部、及びセッコウ類15重量部と、セメント組成物100重量部に対して水9.5重量部と、表3に示すように使用量を変化させた重量骨材Aを配合したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
【0027】
【表3】
Figure 0003638308
【0028】
実施例4
セメント100重量部に対して、CASガラス15重量部と、表4に示すように粒度を変化させた重量骨材を270重量部使用したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表5に示す。
【0029】
【表4】
Figure 0003638308
【0030】
【表5】
Figure 0003638308
【0031】
実施例5
セメント100重量部に対して、CASガラスとセッコウ類を各々15重量部使用し、水の使用量をセメント組成物100重量部に対して表6に示すように変化させたこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表6に併記する。
【0032】
【表6】
Figure 0003638308
【0033】
【発明の効果】
本発明のセメント組成物を使用することにより、作業時間の短縮化や硬化体成形時締め固めにおける作業労力の軽減がはかられ、なおかつ熟練した技術を持たない作業者でも十分作業できるようになった。

Claims (1)

  1. セメント、アルミノケイ酸カルシウムガラス、セッコウ類、並びに、各ふるい寸法の通過量、5 mm が0〜 10 重量%、 2.5mm が5〜 30 重量%、 1.2mm 15 40 重量%、 0.6mm が5〜 30 重量%、 0.3mm 10 30 重量%、及び 0.15mm 以下が0〜 25 重量%の重量骨材を主成分とするセメント組成物。
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