JP3637890B2 - 熱延鋼帯の冷却装置および冷却方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱延鋼帯の冷却装置および冷却方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に熱延鋼帯は、加熱炉においてスラブを所定温度に加熱し、この加熱されたスラブを粗圧延機において所定厚さに圧延して粗バーとし、次いで粗バーを複数基の圧延スタンドからなる仕上圧延機において仕上圧延して所定厚さの熱延鋼帯とし、この熱延鋼帯をホットランテーブル上で冷却装置により冷却した後、コイラーで巻取ることにより製造される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来技術には次のような問題がある。
【0004】
熱延鋼帯は、トップ部がコイラーに巻取られてからテール部が仕上圧延機を抜け出るまでは、コイラーと圧延機間で張力が付与された状態にあるためホットランテーブル上を安定して走行できるが、トップ部がコイラーに巻取られる前やテール部が仕上圧延機の最終段を抜け出た後は張力フリーの状態になるため、鋼帯の走行が不安定になる。
【0005】
特に、トップ部がコイラーに巻取られる前には、熱延鋼帯の先端は、ホットランテーブルを構成する搬送ロールまたは搬送ロール間のエプロンに当接しながらコイラーに向かって走行する。この熱延鋼帯の先端が搬送ロールに当接する位置は、搬送ロールの最上部の位置とは限らず、最上部よりも下方にずれて当接する場合がある。この場合、熱延鋼帯には遠心力が作用することになるため、熱延鋼帯にループが生じやすくなり、熱延鋼帯と搬送ロールとの間で熱延鋼帯をコイラー側へと搬送する力が弱くなってループがより大きくなり、さらに走行性が悪くなる。
【0006】
特に4mm以下の薄物熱延鋼帯については、鋼帯に搬送力がうまく伝わらず、走行性が安定しない問題がある。
【0007】
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決し、仕上圧延機出側のホットランテーブル上で熱延鋼帯に適切な搬送力を付与し、熱延鋼帯の安定した走行性を確保することができる熱延鋼帯の冷却装置および冷却方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱延鋼帯の冷却装置および冷却方法は以下のような特徴を有する。
【0009】
(1)仕上圧延機の出側に配置されたホットランテーブル上を搬送される熱延鋼帯を冷却するための装置において、ホットランテーブルを構成する搬送ロール間に配置され、ホットランテ−ブル上を走行する熱延鋼帯の下面に冷却水を供給する下部冷却手段と、ホットランテーブルの上方位置であって、上下方向で前記下部冷却手段と対向しない位置に配置され、ホットランテーブル上を走行する熱延鋼帯の上面に冷却水を供給する上部冷却手段と、該上部冷却手段から供給された冷却水の熱延鋼帯長手方向への流出を抑制すべく、熱延鋼帯上面に近接し、且つ鋼帯幅方向に沿って前記下部冷却手段の真上に配置される冷却水堰止め手段とを備えたことを特徴とする熱延鋼帯の冷却装置。
【0010】
(2)仕上圧延機の出側に配置されたホットランテーブル上を搬送される熱延鋼帯を冷却するための装置において、ホットランテーブルを構成する搬送ロール間に配置され、ホットランテ−ブル上を走行する熱延鋼帯の下面に冷却水を供給する下部冷却手段と、ホットランテーブルの上方位置に、ホットランテーブル長手方向移動可能に配置された保持手段と、該保持手段に保持され、ホットランテーブル上を走行する鋼帯の上面に冷却水を供給する上部冷却手段と、前記保持手段に保持され、前記上部冷却手段から供給された冷却水の熱延鋼帯長手方向への流出を抑制すべく、熱延鋼帯上面に近接し、且つ鋼帯幅方向に沿って配置される冷却水堰止め手段とを備えたことを特徴とする熱延鋼帯の冷却装置。
【0011】
(3)冷却水堰止め手段がロール体により構成されることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の熱延鋼帯の冷却装置。
【0012】
(4)上記(2)に記載の冷却装置を用いた熱延鋼帯の冷却方法であって、薄物熱延鋼帯の冷却時には、上部冷却手段を上下方向で下部冷却手段と非対向状態とし、厚物熱延鋼帯の冷却時には、上部冷却手段を上下方向で下部冷却手段と対向状態とすることを特徴とする熱延鋼帯の冷却方法。
【0013】
(5)薄物熱延鋼帯は板厚が4mm以下であり、厚物熱延鋼帯は板厚が4mm超えであることを特徴とする上記(4)に記載の熱延鋼帯の冷却方法。
【0015】
(6)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の冷却装置を用いた熱延鋼帯の冷却方法であって、熱延鋼帯と上部冷却手段の冷却水吐出口との間隔および熱延鋼帯と下部冷却手段の冷却水吐出口との間隔を30〜100mmとして冷却水を供給することを特徴とする熱延鋼帯の冷却方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の熱延鋼帯の冷却装置の一実施形態を示す側面図である。
【0017】
この冷却装置は、ホットランテーブル上を走行する熱延鋼帯1の下面に冷却水を供給する複数の下部冷却手段3と、同じく熱延鋼帯1の上面に冷却水を供給する複数の上部冷却手段2と、熱延鋼帯上面に供給された冷却水の熱延鋼帯長手方向への流出を抑制するための冷却水堰止め手段5とを備えている。
【0018】
前記下部冷却手段3は、ホットランテーブルを構成する搬送ロール6の間に配置され、熱延鋼帯幅方向に沿って配置されたヘッダーと、このヘッダーの長手方向に沿って適当な間隔で設けられる複数の冷却ノズルとからなっている。
【0019】
前記上部冷却手段2は、熱延鋼帯幅方向に沿って配置されたヘッダーと、このヘッダーの長手方向に沿って適当な間隔で設けられる複数の冷却ノズルとからなるもので、ホットランテーブル長手方向に適切な間隔をおいて、且つ上下方向で前記下部冷却手段3と対向しないように配置されている。また、熱延鋼帯上面に近接し且つ鋼帯幅方向に沿って配置される冷却水堰止め手段5の間に配置される。
【0020】
前記冷却水堰止め手段5は、通常ロール体により構成されている。
【0021】
図1に示す実施形態の冷却装置によれば、図3に示すように上部冷却手段2より噴射される冷却水の圧力により鋼帯1を搬送ロール6に押付け、下部冷却手段3より噴射される冷却水の圧力により鋼帯1を冷却水堰止め手段5に押付けて、鋼帯1に軽度の曲げ変形を与えることができる。この鋼帯に曲げ変形を生じさせることにより、鋼帯1に搬送力Fを付与することが可能となる。このように鋼帯1が冷却水の圧力により軽度の曲げ変形を与えられるのは、一般的には冷却水の水圧を基準にすれば、鋼帯1の板厚が約4mm以下の薄物熱延鋼帯において可能になる。
【0022】
よって、構造としては、好ましくは上部冷却手段2は搬送ロール6の真上に配置し、冷却水堰止め手段5は下部冷却手段3の真上に配置する。
【0023】
つまり、上部冷却手段2と搬送ロール6とが近接して鋼帯を介して対向している箇所(図3のb部)においては、鋼帯1は搬送ロール6より反力を受けて下式(1)の搬送力F1を得る。
【0024】
F1=μ×{上面冷却水による押下げ力+鋼帯自重(長さL)}…(1)
ここで、鋼帯自重とは鋼帯の搬送ロール間長さの1/2(長さL)に相当する部分の重量であり、μは摩擦係数である。
【0025】
次に、下部冷却手段3と冷却水堰止め手段5とが近接して鋼帯を介して対向している箇所(図3のa部)においては、鋼帯1は冷却水堰止め手段5より反力を受けて下式(2)の搬送力F2を得る。
【0026】
F2=μ×{下面冷却水による押上げ力−鋼帯自重(長さL)}…(2)
ここで、(1)式と同様に鋼帯自重とは鋼帯の搬送ロール間長さの1/2(長さL)に相当する部分の重量であり、μは摩擦係数である。
【0027】
したがって、熱延鋼帯に曲げ変形を生じさせることにより得られる搬送ロール間(長さ2×L)での搬送力Fは、F=F1+F2で与えられる。
【0028】
図2は、本発明の熱延鋼帯の冷却装置の他の実施形態を示す側面図である。
【0029】
この冷却装置は、ホットランテーブル上を走行する熱延鋼帯1の下面に冷却水を供給する複数の下部冷却手段3と、ホットランテーブル長手方向移動可能に配置された保持手段7と、この保持手段7に保持され、ホットランテーブル上を走行する鋼帯1の上面に冷却水を供給する複数の上部冷却手段2と、この保持手段7に保持され、熱延鋼帯上面に供給された冷却水の熱延鋼帯長手方向への流出を抑制するための冷却水堰止め手段5とを備えている。
【0030】
前記下部冷却手段3は、ホットランテーブルを構成する搬送ロール6の間に配置され、熱延鋼帯幅方向に沿って配置されたヘッダーと、このヘッダーの長手方向に沿って適当な間隔で設けられる複数の冷却ノズルとからなっている。
【0031】
前記保持手段7は、ホットランテーブルの上方位置にあり、上部冷却手段2と冷却水堰止め手段5を保持する架構を有し、この架構を油圧シリンダー8により鋼帯進行方向に対して移動可能とする。油圧シリンダー8は固定壁9に固定される。
【0032】
前記上部冷却手段2は、熱延鋼帯幅方向に沿って配置されたヘッダーと、このヘッダーの長手方向に沿って適当な間隔で設けられる複数の冷却ノズルとからなるもので、前記保持手段7により鋼帯進行方向に移動する。つまり、前記保持手段7の有する架構に、ホットランテーブル長手方向に適切な間隔をおいて、同様に保持手段7に保持される冷却水堰止め手段5の間に配置される。
【0033】
前記冷却水堰止め手段5は、前記保持手段7の有する架構に、熱延鋼帯上面に近接し且つ鋼帯幅方向に沿って配置され、前記保持手段7により鋼帯進行方向に移動する。通常ロール体により構成されている。
【0034】
図2に示す実施形態の冷却装置は、上部冷却手段を鋼帯進行方向に移動できるようにした装置で、上部冷却手段を鋼帯進行方向に移動することにより、上部冷却手段を上下方向で下部冷却手段と非対向状態とすることもできるし、上部冷却手段を上下方向で下部冷却手段と対向状態とすることも可能となる。
【0035】
図5は上述した、ホットランテーブルの上方位置にあって、ホットランテーブル長手方向移動可能に配置された保持手段7により、この保持手段7に保持される上部冷却手段2と冷却水堰止め手段5とを移動して、上部冷却手段2を上下方向で下部冷却手段3と対向状態として熱延鋼帯を冷却する冷却装置である。
【0036】
図5に示す冷却装置を用いれば、鋼帯に反りを矯正する鋼帯の冷却を行うことが可能となる。図5において、熱延鋼帯に付与できる搬送力について検討した結果を図4に示す。
【0037】
図4では、上下方向で前記下部冷却手段3と前記上部冷却手段2とを対向させる配置に配置している。(図4のd部)
図4において、搬送ロール6と冷却水堰止め手段5とが近接して鋼帯を介して対向している箇所(図4のc部)においては、鋼帯1は搬送ロール6より反力を受けて下式(3)の搬送ロール間(長さ2×L)での搬送力F3を得る。
【0038】
F3=μ×{鋼帯自重(長さ2×L)−(下面冷却水による押上げ力−上面冷却水による押下げ力}…(3)
ここで、鋼帯自重とは鋼帯の搬送ロール間長さ(長さ2×L)に相当する部分の重量であり、μは摩擦係数である。
【0039】
図3での搬送ロール間(長さ2×L)での搬送力Fと図4での搬送ロール間(長さ2×L)での搬送力F3とを比較すると、全てのロールが駆動している中で、図3の搬送力Fは搬送ロール間で3カ所ロールに接し、図4の搬送力F3は搬送ロール間で1カ所ロールに接していることより、明らかにF>F3となる。
【0040】
よって、図2に示した冷却装置の使い方としては、薄物熱延鋼帯の冷却時には、上部冷却手段を上下方向で下部冷却手段と非対向状態とし、厚物熱延鋼帯の冷却時には、上部冷却手段を上下方向で下部冷却手段と対向状態として熱延鋼帯を冷却する。
【0041】
ここで、薄物熱延鋼帯とは板厚が4mm以下であり、厚物熱延鋼帯とは板厚が4mm超えであることが好ましい。
【0042】
熱延鋼帯の板厚が4mm以下の際は、上部冷却手段を上下方向で下部冷却手段と非対向状態とし、上述したように鋼帯に曲げ変形を生じさせることにより、鋼帯に大きな搬送力Fを付与して鋼帯の冷却装置内での走行性を安定させることができる。
【0043】
熱延鋼帯の板厚が4mm超えの際は、板厚が厚すぎて鋼帯に曲げ変形を生じさせることができず、図1に記載の熱延鋼帯の冷却装置を用いて鋼帯に搬送力を付与して鋼帯の冷却装置内での走行性を安定させることは難しい。このときは、鋼帯には走行性の問題は発生せず、新たに反りの問題が発生し、上部冷却手段を上下方向で下部冷却手段と対向状態として熱延鋼帯を冷却して、鋼帯の反りを矯正する。つまり、図5に示す冷却装置により、熱延鋼帯の板厚が4mm超えの際の熱延鋼帯の冷却方法の特徴は以下のようである。
【0044】
(1)冷却装置と仕上圧延機との間に鋼帯の反りを検出するための反り検出計を配置し、この反り検出計による鋼帯の反り検出に基づき、対向した上部冷却手段と下部冷却手段のうちの少なくとも第1番目のヘッダーに設けられた複数の冷却ノズルにおいて、上下の複数の冷却ノズルから異なる流量で鋼帯の上下面に冷却水を噴射することにより鋼帯の反りを矯正する。
【0045】
(2)冷却装置と仕上圧延機との間に鋼帯の反りを検出するための反り検出計を配置し、この反り検出計による鋼帯の反り検出に基づき、対向した上部冷却手段と下部冷却手段のうちの少なくとも第1番目のヘッダーに設けられた複数の冷却ノズルにおいて、上下の複数の冷却ノズルから異なる流量で鋼帯の上下面に冷却水を噴射することにより鋼帯の反りを矯正し、引き続き、前記第1番目以降の任意のヘッダーにおいて、鋼帯の反り矯正を行った前記ヘッダーに設けられた複数の冷却ノズルにおける上下の冷却ノズルからの冷却水噴射において、噴射流量が多かった鋼帯面に対する冷却水噴射流量aと噴射流量が少なかった鋼帯面に対する冷却水噴射流量bとがb>aとなるよう、鋼帯の上下面に冷却水を噴射する。
【0046】
(3)反り検出計により鋼帯の上反りが検出され、もしくは検出された上反り量が許容値を超えた際には、少なくとも第1番目のヘッダーに設けられた複数の冷却ノズルにおける上下の冷却ノズルの冷却水噴射流量を[上部冷却ノズル]<[下部冷却ノズル]とし、反り検出計により鋼帯の下反りが検出され、もしくは検出された下反り量が許容値を超えた際には、少なくとも第1番目のヘッダーに設けられた複数の冷却ノズルにおける上下の冷却ノズルの冷却水噴射流量を[下部冷却ノズル]<[上部冷却ノズル]とする。
【0047】
図1および図5に示す冷却装置を用いて、熱延鋼帯をホットランテーブル上で冷却するに際し、その鋼帯の走行性の安定化を限られた冷却区間の中で効果的に行うには、冷却能力の高い強冷却装置を適用することが好ましい。
【0048】
本発明では、冷却ノズルを鋼帯上下面に近接して配置することにより、例えば熱延鋼帯を冷却速度200℃/秒以上という高い冷却速度で強冷却することができ、走行性の安定化に好適となる。また、このような強冷却を可能とするため、熱延鋼帯と冷却ノズル出口との間隔は30〜100mmとすることが好ましい。これは100mmを超えると冷却水量の勢いが弱まり強冷却が不可能になり、逆に30mm未満では、ノズル出口が鋼帯に近づき過ぎて冷却水の行き場がなくなり良好な水流が得られなくなるからである。
【0049】
【実施例】
本発明例では、図2に示すような冷却装置を用いて、仕上圧延機の出側に配置されたホットランテーブル上を搬送される途中の熱延鋼帯を、板厚が4mm以下の薄物熱延鋼帯の冷却時には、上部冷却手段を上下方向で下部冷却手段と非対向状態とし、板厚が4mm超えの厚物熱延鋼帯の冷却時には、ホットランテーブルの上方位置にある、ホットランテーブル長手方向移動可能に配置された保持手段を用いて、上部冷却手段を上下方向で下部冷却手段と対向状態として冷却した。ここで、冷却には板厚が2mm未満、2〜3mm、3〜4mm、4〜5mm、5〜6mm、6〜7mm、7〜8mmの7種類の板厚の熱延鋼帯をそれぞれ20個づつ用いて、冷却後の熱延鋼帯の反り発生率および走行不良発生率を測定し、その結果を表1に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
また比較例として、実施例と同じサイズの素材に対して、上述した7種類の板厚を有する熱延鋼帯を、図1に示すように仕上圧延機の出側に配置されたホットランテーブル上を搬送される途中の熱延鋼帯をそれぞれ20個づつ用いて、上部冷却手段を上下方向で下部冷却手段と非対向状態で冷却した。本発明例と同様に冷却後の熱延鋼帯の反り発生率および走行不良発生率を測定し、その結果を表2に示した。
【0052】
【表2】
【0053】
さらに別の比較例として、実施例と同じサイズの素材に対して、上述した7種類の板厚を有する熱延鋼帯を、図5に示すように、ホットランテーブルの上方位置にあってホットランテーブル長手方向移動可能に配置された保持手段により、この保持手段に保持される上部冷却手段と冷却水堰止め手段とを移動して、仕上圧延機の出側に配置されたホットランテーブル上を搬送される途中の熱延鋼帯をそれぞれ20個づつ用いて、上部冷却手段を上下方向で下部冷却手段と対向状態で冷却した。本発明例と同様に冷却後の熱延鋼帯の反り発生率および走行不良発生率を測定し、その結果を表3に示した。
【0054】
【表3】
【0055】
表1によれば、仕上圧延機の出側に配置されたホットランテーブル上を搬送される途中の熱延鋼帯を、板厚が4mm以下の薄物熱延鋼帯の冷却時には、上部冷却手段を上下方向で下部冷却手段と非対向状態とし、板厚が4mm超えの厚物熱延鋼帯の冷却時には、ホットランテーブルの上方位置にある、ホットランテーブル長手方向移動可能に配置された保持手段を用いて、上部冷却手段を上下方向で下部冷却手段と対向状態として冷却した場合は、8mmまでの全ての板厚の範囲において、反り発生率および走行不良発生率ともに大変良好な状態となり、冷却装置の設定条件が好適であることがわかる。
【0056】
これに対して、表2の比較例に示した、8mmまでの全ての板厚の範囲において、上部冷却手段を上下方向で下部冷却手段と非対向状態で冷却した場合は、板厚が5mm以上の範囲で反りが発生した。
【0057】
また、表3の比較例に示した、8mmまでの全ての板厚の範囲において、ホットランテーブルの上方位置にあってホットランテーブル長手方向移動可能に配置された保持手段により、この保持手段に保持される上部冷却手段と冷却水堰止め手段とを移動して、上部冷却手段を上下方向で下部冷却手段と対向状態で冷却した場合には、板厚が4mm以下の範囲で走行不良が発生した。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、薄物の熱延鋼帯に搬送力を付与することによって、鋼帯の冷却装置内での走行性を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱延鋼帯の冷却装置の一実施形態を示す側面図
【図2】本発明の熱延鋼帯の冷却装置の他の実施形態を示す側面図
【図3】本発明の熱延鋼帯の冷却装置による熱延鋼帯に作用する搬送力の説明図
【図4】本発明の熱延鋼帯の冷却装置による熱延鋼帯に作用する搬送力の説明図
【図5】本発明のホットランテーブル長手方向移動可能に配置された保持手段により、この保持手段に保持される上部冷却手段と冷却水堰止め手段とを移動して、上部冷却上部冷却手段を上下方向で下部冷却手段と対向状態として熱延鋼帯を冷却する冷却装置を示す側面図
【符号の説明】
1 熱延鋼帯
2 上部冷却手段
3 下部冷却手段
5 冷却水堰止め手段
6 搬送ロール
7 保持手段
8 油圧シリンダー
9 固定壁
10 仕上圧延機
Claims (6)
- 仕上圧延機の出側に配置されたホットランテーブル上を搬送される熱延鋼帯を冷却するための装置において、ホットランテーブルを構成する搬送ロール間に配置され、ホットランテ−ブル上を走行する熱延鋼帯の下面に冷却水を供給する下部冷却手段と、ホットランテーブルの上方位置であって、上下方向で前記下部冷却手段と対向しない位置に配置され、ホットランテーブル上を走行する熱延鋼帯の上面に冷却水を供給する上部冷却手段と、該上部冷却手段から供給された冷却水の熱延鋼帯長手方向への流出を抑制すべく、熱延鋼帯上面に近接し、且つ鋼帯幅方向に沿って前記下部冷却手段の真上に配置される冷却水堰止め手段とを備えたことを特徴とする熱延鋼帯の冷却装置。
- 仕上圧延機の出側に配置されたホットランテーブル上を搬送される熱延鋼帯を冷却するための装置において、ホットランテーブルを構成する搬送ロール間に配置され、ホットランテ−ブル上を走行する熱延鋼帯の下面に冷却水を供給する下部冷却手段と、ホットランテーブルの上方位置に、ホットランテーブル長手方向移動可能に配置された保持手段と、該保持手段に保持され、ホットランテーブル上を走行する鋼帯の上面に冷却水を供給する上部冷却手段と、前記保持手段に保持され、前記上部冷却手段から供給された冷却水の熱延鋼帯長手方向への流出を抑制すべく、熱延鋼帯上面に近接し、且つ鋼帯幅方向に沿って配置される冷却水堰止め手段とを備えたことを特徴とする熱延鋼帯の冷却装置。
- 冷却水堰止め手段がロール体により構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の熱延鋼帯の冷却装置。
- 請求項2に記載の冷却装置を用いた熱延鋼帯の冷却方法であって、薄物熱延鋼帯の冷却時には、上部冷却手段を上下方向で下部冷却手段と非対向状態とし、厚物熱延鋼帯の冷却時には、上部冷却手段を上下方向で下部冷却手段と対向状態とすることを特徴とする熱延鋼帯の冷却方法。
- 薄物熱延鋼帯は板厚が4mm以下であり、厚物熱延鋼帯は板厚が4mm超えであることを特徴とする請求項4に記載の熱延鋼帯の冷却方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の冷却装置を用いた熱延鋼帯の冷却方法であって、熱延鋼帯と上部冷却手段の冷却水吐出口との間隔および熱延鋼帯と下部冷却手段の冷却水吐出口との間隔を30〜100mmとして冷却水を供給することを特徴とする熱延鋼帯の冷却方法。
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