JP3636827B2 - ネガ型画像記録材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は平版印刷用版材として使用できる画像記録材料に関するものであり、特にコンピュータ等のデジタル信号から赤外線レーザを用い直接製版できる、いわゆるダイレクト製版可能なネガ型画像記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、コンピュータのデジタルデータから直接製版するシステムとしては、(1) 電子写真法によるもの、(2) 青色または緑色を発光するレーザを用い露光する光重合系によるもの、(3) 銀塩を感光性樹脂上に積層したもの、(4) 塩拡散転写法によるもの等が提案されている。
しかしながら(1) 電子写真法を用いるものは、帯電、露光、現像等画像形成のプロセスが煩雑であり、装置が複雑で大がかりなものになる。(2) の光重合系によるものでは、青色や緑色の光に対して高感度な版材であるため、明室での取扱いが難しくなる。(3) 、(4) の方法では銀塩を使用するため現像等の処理が煩雑になる、さらに当然ながら処理廃液中に銀が含まれる欠点がある。
【0003】
一方、近年におけるレーザの発展は目ざましく、特に波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザは、高出力かつ小型のものが容易に入手できる様になっている。コンピュータ等のデジタルデータから直接製版する際の記録光源として、これらのレーザは非常に有用である。しかし、実用上有用な多くの感光性記録材料は、感光波長が760nm以下の可視光域であるため、これらの赤外線レーザでは画像記録できない。このため、赤外線レーザで記録可能な材料が望まれている。
【0004】
このような赤外線レーザにて記録可能な画像記録材料としては、特開平7−20629号に記載されている、オニウム塩、レゾール樹脂、ノボラック樹脂、及び赤外線吸収剤より成る記録材料がある。また、特開平7−271029号には、ハロアルキル置換されたs−トリアジン、レゾール樹脂、ノボラック樹脂、及び赤外線吸収剤より成る記録材料が記載されている。しかしながら、これらの画像記録材料を用いた版材では、画像部の膜強度が不足しており、結果として印刷時の耐刷性が不十分であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザを用いて記録することにより、コンピューター等のデジタルデータから直接製版可能であり、さらに、記録された画像の膜強度に優れ、印刷時の耐刷性が良好な平版印刷用版材として好適なネガ型画像記録材料を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ネガ型画像記録材料の構成成分に着目し、鋭意検討の結果、下記(A)〜(D)よりなることを特徴とするネガ型画像記録材料を用いることにより、上記目的が達成できことを見出し、本発明を完成するに至った。
(A)側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーの少なくとも1種、
(B)分子内に2個以上のベンゼン環に連結するヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基またはエポキシ基を有する熱架橋剤、
(C)酸発生剤、
(D)赤外線吸収剤。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各構成要素などについて詳細に説明する。
[(A)側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマー]
本発明において、ヒドロキシアリール基とは−OH基が1個以上結合したアリール基を示す。アリール基としては例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基等を挙げることができるが、入手の容易さ及び物性の観点から、フェニル基あるいはナフチル基が好ましい。従って、ヒドロキシアリール基としては、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、トリヒドロキシフェニル基、テトラヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基、ジヒドロキシナフチル基等が好ましい。これらのヒドロキシアリール基は、さらに、ハロゲン原子、炭素数20個以下の炭化水素基、炭素数20個以下のアルコキシ基及び炭素数20個以下のアリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。これらのヒドロキシアリール基は、ポリマーの側鎖としてペンダント状にポリマー主鎖へ結合しているが、主鎖との間に連結基を有していても良い。
【0008】
本発明において好適に用いられる、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーは、下記一般式(I)〜(IV)で表される構成単位の内いずれか1種を含有するポリマーである。
【化1】
(式中、R1 は水素原子またはメチル基を示す。R2 およびR3 は、同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数10個以下の炭化水素基、炭素数10個以下のアルコキシ基又は、炭素数10個以下のアリールオキシ基を示す。また、R2 とR3 が結合して、縮環したベンゼン環やシクロヘキサン環を形成していても良い。R4 は、単結合または、炭素数20個以下の2価の炭化水素基を示す。R5 は、単結合または、炭素数20個以下の2価の炭化水素基を示す。R6 は、単結合または、炭素数10個以下の2価の炭化水素基を示す。X1は、単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合またはアミド結合を示す。pは1〜4の整数を示す。q及びrはそれぞれ0〜3の整数を示す。)
【0009】
一般式(I)〜(IV)で表される構成単位の内、本発明において好適に用いられる具体的な構成単位の例を以下に挙げる。
【0010】
【化2】
【0011】
【化3】
【0012】
【化4】
【0013】
【化5】
【0014】
【化6】
【0015】
これらのポリマーは、従来公知の方法により合成することができる。
例えば、一般式(I)で表される構成単位を有するポリマーは、ヒドロキシ基を酢酸エステルあるいはt−ブチルエーテルとして保護された、対応するスチレン誘導体をラジカル重合もしくはアニオン重合しポリマーとした後、脱保護することにより得られる。
また、一般式(II)で表される構成単位を有するポリマーは、特開昭64−32256号および同64−35436号等に記載されている方法により合成することができる。
さらに、一般式(III)で表される構成単位を有するポリマーは、ヒドロキシ基を有するアミン化合物と無水マレイン酸を反応させ、対応するモノマーを得た後、ラジカル重合によりポリマーとすることにより得られる。
また、一般式(IV)で表される構成単位を有するポリマーは、クロロメチルスチレンやカルボキシスチレン等、合成上有用な官能基を持つスチレン類を原料として一般式(IV)に対応するモノマーへ誘導し、さらにラジカル重合によりポリマーとすることにより得られる。
【0016】
本発明で使用されるポリマーは、一般式(I)〜(IV)で表される構成単位のみから成るホモポリマーであっても良いが、他の構成単位をも含む共重合体であっても良い。
好適に用いられる他の構成単位としては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーより導入される構成単位が挙げられる。
【0017】
用いることのできるアクリル酸エステル類の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−またはi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、グリシジルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、が挙げられる。
【0018】
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−またはi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート等が挙げられる。
【0019】
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−(p−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0020】
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−トリルメタクリルアミド、N−(p−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0021】
ビニルエステル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。
スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
【0022】
これらのモノマーのうち特に好適に使用されるのは、炭素数20以下のアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類及び、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリルである。
【0023】
これらを用いた共重合体中に含まれる一般式(I)〜(IV)で表される構成単位の割合は、5〜100重量%であることが好ましく、さらに好ましくは10〜100重量%である。
また、本発明で使用されるポリマーの分子量は好ましくは重量平均分子量で4000以上であり、更に好ましくは1万〜30万の範囲であり、数平均分子量で好ましくは1000以上であり、更に好ましくは2000〜25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、更に好ましくは1.1〜10の範囲である。
これらのポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等いずれでも良いが、ランダムポリマーであることが好ましい。
【0024】
本発明で使用されるポリマーは単独で用いても混合して用いてもよい。これらポリマーは、画像記録材料全固形分に対し20〜95重量%、好ましくは40〜90重量%の割合で画像記録材料中に添加される。添加量が20重量%未満の場合は、画像形成した際、画像部の強度が不足する。また添加量が95重量%を超える場合は、画像形成されない。
【0025】
[(B)熱架橋剤]
本発明において用いられる熱架橋剤は、分子内に2個以上のベンゼン環に連結するヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、またはエポキシ基を有する化合物である。具体的には、メチロールメラミン、レゾール樹脂、エポキシ化されたノボラック樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。さらに、「架橋剤ハンドブック」(山下晋三、金子東助著、大成社(株))に記載されている化合物も好ましい。特に、分子内に2個以上のヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基を有するフェノール誘導体は、画像形成した際の画像部の強度が良好であり好ましい。具体的には、レゾール樹脂を挙げることができる。
【0026】
しかしながら、これらの熱架橋剤は当然ながら熱に対して不安定であり、画像記録材料を作成したあとの保存時の安定性があまり良くない。これに対し、分子内に2個以上のベンゼン環に連結したヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基を有し、かつベンゼン核を3〜5個含み、さらに分子量が1,200以下であるフェノール誘導体は、保存時の安定性も良好であり、本発明において最も好適に用いられる。アルコキシメチル基としては、炭素数6個以下のものが好ましい。具体的にはメトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、i−プロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、i−ブトキシメチル基、sec−ブトキシメチル基、t−ブトキシメチル基が好ましい。さらに、2−メトキシエトキシ基及び、2−メトキシ−1−プロピル基の様に、アルコキシ置換されたアルコキシ基も好ましい。
【0027】
これらのフェノール誘導体の内、特に好ましいものを以下に挙げる。
【0028】
【化7】
【0029】
【化8】
【0030】
【化9】
【0031】
【化10】
【0032】
【化11】
【0033】
(式中、L1 〜L8 は、同じであっても異なっていてもよく、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基又は、エトキシメチル基を示す。)
【0034】
ヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体は、対応するヒドロキシメチル基を有さないフェノール化合物(上記式においてL1 〜L8 が水素原子である化合物)とホルムアルデヒドを塩基触媒下で反応させることによって得ることができる。この際、樹脂化やゲル化を防ぐために、反応温度を60℃以下で行うことが好ましい。具体的には、特開平6−282067号、同7−64285号等に記載されている方法にて合成することができる。
アルコキシメチル基を有するフェノール誘導体は、対応するヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体とアルコールを酸触媒下で反応させることによって得ることができる。この際、樹脂化やゲル化を防ぐために、反応温度を100℃以下で行うことが好ましい。具体的には、欧州特許EP632003A1号等に記載されている方法にて合成することができる。
【0035】
本発明において、熱架橋剤は全画像記録材料固形分中、5〜70重量%、好ましくは10〜65重量%の添加量で用いられる。熱架橋剤の添加量が5重量%未満であると画像記録した際の画像部の膜強度が悪化し、また、70重量%を越えると保存時の安定性の点で好ましくない。
これらのフェノール誘導体は単独で使用しても良く、また2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0036】
[(C)酸発生剤]
本発明において酸発生剤とは、100℃以上の加熱により分解し酸を発生する化合物である。発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等のpKaが2以下の強酸であることが好ましい。本発明において好適に用いられる酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。具体的には、特開平7−20629号に記載されている化合物を挙げることができる。特に、スルホン酸イオンを対イオンとするヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩が好ましい。また、特開平7−271029号に記載されている、ハロアルキル置換されたs−トリアジン類も好ましい。
【0037】
本発明において特に好適に使用される酸発生剤は、下記一般式(V)〜(IX)で示される化合物である。
【0038】
【化12】
【0039】
(式中、R11、R12、R14及びR15は、同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素数20個以下の炭化水素基を示す。R13はハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数10個以下の炭化水素基叉は炭素数10個以下のアルコキシ基を示す。Ar1 、Ar2 は、同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素数20個以下のアリール基を示す。R16は置換基を有していてもよい炭素数25個以下の2価の炭化水素基を示す。nは0〜4の整数を示す。)
【0040】
一般式(V)〜(IX)で表される化合物の内、特に好ましいものを以下に挙げる。
尚、これらの化合物は、例えば特開平2−100054号及び特開平2−100055号に記載の方法にて合成することができる。
【0041】
【化13】
【0042】
【化14】
【0043】
【化15】
【0044】
【化16】
【0045】
【化17】
【0046】
【化18】
【0047】
【化19】
【0048】
【化20】
【0049】
【化21】
【0050】
【化22】
【0051】
【化23】
【0052】
また、本出願人が先に出願した特願平8−9444号に記載されているポリマー型の酸発生剤も好ましい。
【0053】
これらの化合物は、画像記録材料全固形分に対し0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜25重量%、より好ましくは0.5〜15重量%の割合で画像記録材料中に添加される。添加量が0.01重量%未満の場合は、画像が得られない。また添加量が50重量%を越える場合は、印刷時非画像部に汚れを発生する。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
[(D)赤外線吸収剤]
本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760nmから1200nmの赤外線を有効に吸収する染料または顔料である。好ましくは、波長760nmから1200nmに吸収極大を有する染料または顔料である。
染料としては、市販の染料および文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体などの染料が挙げられる。
好ましい染料としては例えば特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0055】
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。
【0056】
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0057】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤やエポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が挙げられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0058】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。顔料の粒径が0.01μm未満のときは分散物の感光層塗布液中での安定性の点で好ましくなく、また、10μmを越えると画像記録層の均一性の点で好ましくない。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載がある。
【0059】
これらの染料もしくは顔料は、画像記録材料全固形分に対し0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜10重量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10重量%、顔料の場合特に好ましくは1.0〜10重量%の割合で画像記録材料中に添加することができる。顔料もしくは染料の添加量が0.01重量%未満であると感度が低くなり、また50重量%を越えると印刷時非画像部に汚れが発生する。
これらの染料もしくは顔料は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
【0060】
[その他の成分]
本発明では、前記(A)〜(D)の4つの成分が必須であるが、必要に応じてこれら以外に種々の化合物を添加しても良い。
例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。
具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)など、あるいは特開昭62−293247号公報に記載されている染料を挙げることができる。
これらの染料は、画像形成後、画像部と非画像部の区別が明確になるため、添加することが好ましい。尚、添加量は、画像記録材料全固形分に対し、0.01〜10重量%の割合が好適である。
【0061】
また、本発明における画像記録材料中には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型界面活性剤(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。
上記非イオン界面活性剤および両性界面活性剤の画像記録材料中に占める割合は、0.05〜15重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0062】
更に本発明の画像記録材料中には必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が用いられる。
【0063】
本発明の画像記録材料は、通常上記各成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより製造することができる。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独あるいは混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50重量%である。また塗布、乾燥後に得られる支持体上の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、平版印刷用版材についていえば一般的に0.5〜5.0g/m2 が好ましい。塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、画像記録膜の皮膜特性は低下する。
【0064】
本発明における画像記録層中には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、全画像記録材料固形分中0.01〜1重量%、さらに好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0065】
本発明に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記金属板を構成するごとき金属がラミネート、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフィルム等が含まれる。本発明の支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板およびアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10重量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。このアルミニウム板を支持体として用いる場合、上に形成される記録層との密着性の観点から、アルミニウム板表面を粗面化することができる。
【0066】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸または硝酸電解液中で交流または直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理および中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0067】
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2 、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。
陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2 より少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号および第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるかまたは電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウムおよび米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0068】
本発明の画像記録材料は、必要に応じて支持体上に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸およびエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸およびグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸およびグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、およびトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、2種以上混合して用いてもよい。
有機下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2 が適当である。
【0069】
以上のようにして、本発明の画像記録材料を用いた平版印刷用版材を作成することができる。この平版印刷用版材は、波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザにより画像露光される。本発明においては、レーザ照射後すぐに現像処理を行っても良いが、レーザ照射工程と現像工程の間に加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理の条件は、80℃〜150℃の範囲内で10秒〜5分間行うことが好ましい。この加熱処理により、レーザ照射時、記録に必要なレーザエネルギーを減少させることができる。
【0070】
必要に応じて加熱処理を行った後、本発明の画像記録材料はアルカリ性水溶液にて現像される。
本発明の画像記録材料の現像液および補充液としては従来より知られているアルカリ剤の水溶液が使用できる。これらに含まれるアルカリ剤としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、第3リン酸ナトリウム、第3リン酸カリウム、第3リン酸アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、第2リン酸カリウム、第2リン酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ほう酸ナトリウム、ほう酸カリウム、ほう酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。
これらのアルカリ剤は単独もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。
これらのアルカリ剤の中で特に好ましい現像液は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩水溶液である。その理由はケイ酸塩の成分である酸化珪素SiO2 とアルカリ金属酸化物M2 Oの比率と濃度によって現像性の調節が可能となるためであり、例えば、特開昭54−62004号公報、特公昭57−7427号に記載されているようなアルカリ金属ケイ酸塩が有効に用いられる。
【0071】
更に自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換する事なく、多量の平版印刷用版材を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。
現像液および補充液には現像性の促進や抑制、現像カスの分散および印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性界面活性剤があげられる。
更に現像液および補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
上記現像液および補充液を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の画像記録材料を印刷用版材として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0072】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化および標準化のため、印刷用版材用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷用版材を搬送する装置と各処理液槽およびスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷用版材を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。
また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0073】
以上のようにして得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、よりいっそうの高耐刷力を有する平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。
平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスクィージ、あるいは、スクィージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
整面液の塗布量は一般に0.03〜0.8g/m2 (乾燥重量)が適当である。
【0074】
整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(たとえば富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:BP−1300)などで高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来より行なわれている処理を施すことができるが、水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。
この様な処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0075】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[(A)側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマー(以下、本発明のポリマーと称する)〔BP−1〕、〔BP−2〕の合成]
p−アセトキシスチレン16.2g(0.10モル)、m−アセトキシスチレン16.2g(0.10モル)を酢酸ブチル120mlに溶解し、窒素気流及び攪拌下、80℃にてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.033gを2時間おきに3回添加し、最後に更に2時間攪拌を続けることにより、重合反応を行った。反応液をヘキサン600mlに投入し、白色のポリマーを析出させた。
得られたポリマーを乾燥後、メタノール150mlに溶解した。これに水酸化ナトリウム9.6g(0.24モル)/水50mlの水溶液を添加し、3時間加熱還流することにより、加水分解させた。その後、水200mlを加えて希釈し、塩酸にて中和することにより、白色のポリマーを析出させた。
析出したポリマーをろ別し、水洗・乾燥させることにより22gのポリマーを得た。NMR測定により、このポリマーの組成がp/mモル比=約50/50のポリ(ヒドロキシスチレン)であり、GPC測定により重量平均分子量は28、000であることを確認した(本発明のポリマー〔BP−1〕)。
さらに同様にして、下記表1に示す本発明のポリマー〔BP−2〕を合成した。
【0076】
[本発明のポリマー〔BP−3〕の合成]
クロロメチルスチレン(m−体とp−体の混合物)と2,4−ジヒドロキシ安息香酸を塩基性条件下で反応させることにより、(2,4−ジヒドロキシフェニル)カルボニルオキシメチルスチレンを得、さらに、ブチルアクリレートと共にラジカル重合することにより、下記表1に示す本発明のポリマー〔BP−3〕を合成した。
【0077】
[本発明のポリマー〔BP−4〕、〔BP−5〕の合成]
ポリビニルアルコール、p−ヒドロキシベンズアルデヒドおよび、ベンズアルデヒドを出発原料とし、特開昭64−35436号合成例3と同様にして、酸性条件下でアセタール化反応を行い、表1に示す本発明のポリマー〔BP−4〕を合成した。
さらに同様にして、下記表2に示す本発明のポリマー〔BP−5〕を合成した。
【0078】
[本発明のポリマー〔BP−6〕〜〔BP−7〕の合成]
p−アミノフェノールおよび無水マレイン酸を出発原料とし、N−(p−ヒドロキシフェニル)マレイミドを合成し、次にUS5、079、129を参考に重合反応を行い、表2に示す本発明のポリマー〔BP−6〕を合成した。
さらに同様にして、下記表2に示す本発明のポリマー〔BP−7〕を合成した。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
[本発明の(B)熱架橋剤〔HM−1〕の合成]
1−〔α−メチル−α−(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン20g(本州化学工業(株)製Trisp−PA)を10%水酸化カリウム水溶液に加え、攪拌、溶解した。次にこの溶液を攪拌しながら、37%ホルマリン水溶液60mlを室温下で1時間かけて徐々に加えた。さらに室温下で6時間攪拌した後、希硫酸水溶液に投入した。析出物をろ過し、十分水洗した後、メタノール30mlより再結晶することにより、下記構造のヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体〔HM−1〕の白色粉末20gを得た。純度は92%であった(液体クロマトグラフィー法)。
【0082】
【化24】
【0083】
[本発明の(B)熱架橋剤〔MM−1〕の合成]
上記合成例で得られたヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体〔HM−1〕20gを1リットルのメタノールに加え、加熱攪拌し、溶解した。次に、この溶液に濃硫酸1mlを加え、12時間加熱還流した。反応終了後、反応液を冷却し、炭酸カリウム2gを加えた。この混合物を十分濃縮した後、酢酸エチル300mlを加えた。この溶液を水洗した後、濃縮乾固させることにより、下記構造のメトキシメチル基を有するフェノール誘導体〔MM−1〕の白色固体22gを得た。純度は90%であった(液体クロマトグラフィー法)。
【0084】
【化25】
【0085】
さらに、同様にして以下に示すフェノール誘導体を合成した。
【0086】
【化26】
【0087】
【化27】
【0088】
【化28】
【0089】
[実施例1〜12]
厚さ0.30mmのアルミニウム板(材質1050)をトリクロロエチレン洗浄して脱脂した後、ナイロンブラシと400メッシュのパミストン−水懸濁液を用いその表面を砂目立てし、よく水で洗浄した。この板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い水洗後、更に2%HNO3 に20秒間浸漬して水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2 であった。次にこの板を7%H2 SO4 を電解液として電流密度15A/dm2 で3g/m2 の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗乾燥した。次にこのアルミニウム板に下記下塗り液を塗布し、80℃で30秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は10mg/m2 であった。
(下塗り液)
β−アラニン 0.1g
フェニルホスホン酸 0.05g
メタノール 40g
純水 60g
【0090】
次に、下記溶液〔P〕において、本発明の組成物の種類を変えて、10種類の溶液〔P−1〕〜〔P−12〕を調整した。この溶液をそれぞれ、上記の下塗り済みのアルミニウム板に塗布し、100℃で1分間乾燥してネガ型平版印刷用版材〔P−1〕〜〔P−12〕を得た。乾燥後の重量は1.7g/m2 であった。
【0091】
溶液〔P−1〕〜〔P−12〕に用いた化合物を下記表3に示す。
【0092】
【表3】
【0093】
(表中、レゾール樹脂は、ビスフェノールAとホルムアルデヒドをアルカリ条件下で反応させ得られたもの(重量平均分子量1600)である。)
【0094】
得られたネガ型平版印刷用版材〔P−1〕〜〔P−12〕を、波長1064nmの赤外線を発する固体レーザのYAGレーザで露光した。露光後、130℃で30秒間加熱処理した後、富士写真フイルム(株)製現像液、DP−4(1:8)、リンス液FR−3(1:7)を仕込んだ自動現像機を通して処理した。次いで富士写真フイルム(株)製ガムGU−7(1:1)で版面を処理し、ハイデルKOR−D機で印刷した。この際得られた良好な印刷物の枚数を観察した。結果を下記表4に示す。いずれも、3万枚以上の印刷物が得られた。特に、分子内に2個以上のヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基を有し、かつベンゼン核を3〜5個含み、さらに分子量が1,200以下であるフェノール誘導体を用いた〔P−3〕〜〔P−12〕は、4万枚以上の良好な印刷物が得られた。
【0095】
[比較例1]
実施例1にて使用した溶液〔P−1〕において、ポリマー〔BP−1〕の代わりに、m−クレゾールとホルムアルデヒドを酸性条件下で反応させて得られるノボラック樹脂(重量平均分子量2500)を用い、これ以外は実施例1と同様にしてネガ型平版印刷用版材〔Q〕を作成した。得られた平版印刷用版材〔Q〕を、実施例1と同様に画像形成し印刷した。この際得られた良好な印刷物の枚数を観察した。結果を下記表4に示すが、3万枚未満の印刷物しか得られなかった。
【0096】
[比較例2]
実施例2にて使用した溶液〔P−2〕において、ポリマー〔BP−1〕の代わりに、m−クレゾールとホルムアルデヒドを酸性条件下で反応させて得られるノボラック樹脂(重量平均分子量2500)を用い、これ以外は実施例2と同様にしてネガ型平版印刷用版材〔R〕を作成した。得られた平版印刷用版材〔R〕を、実施例2と同様に画像形成し印刷した。この際得られた良好な印刷物の枚数を観察した。結果を下記表4に示すが、3万枚未満の印刷物しか得られなかった。
【0097】
【表4】
【0098】
実施例1〜12及び比較例1、2の結果より、本発明のネガ型画像記録材料を用いた平版印刷用版材は、従来品に比べて印刷時の耐刷性に優れていることがわかる。
【0099】
[実施例13〜24、比較例3、4]
実施例1〜12で作成したネガ型平版印刷用版材〔P−1〕〜〔P−12〕および、比較例1〜2で作成したネガ型平版印刷用版材〔Q〕、〔R〕を画像露光する前に、温度60℃の高温下で3日間保存した。この後、実施例1〜12と同様に画像形成し、ハイデルKOR−D機で印刷した。この際、印刷物の非画像部に汚れが発生しているかどうかを観察した。結果を下記表5に示す。分子内に2個以上のヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基を有し、かつベンゼン核を3〜5個含み、さらに分子量が1,200以下であるフェノール誘導体を用いた〔P−3〕〜〔P−12〕は、非画像部に汚れを発生していないが、これら以外はわずか、あるいは、少し汚れを発生した。従って、本発明のネガ型平版印刷用版材の中でも、分子内に2個以上のヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基を有し、かつベンゼン核を3〜5個含み、さらに分子量が1,200以下であるフェノール誘導体を用いた場合は、高温時の保存性に優れていることがわかる。
【0100】
【表5】
【0101】
[実施例25〜30]
下記溶液〔S〕において、本発明の一般式で表される化合物の種類を変えて、11種類の溶液〔S−1〕〜〔S−6〕を調整した。この溶液をそれぞれ、[実施例1〜12]で用いた下塗り済みのアルミニウム板に塗布し、100℃で1分間乾燥してネガ型平版印刷用版材〔S−1〕〜〔S−6〕を得た。乾燥後の重量は1.8g/m2 であった。
【0102】
溶液〔S−1〕〜〔S−6〕に用いた化合物を下記表6に示す。
【0103】
【表6】
【0104】
(表中、レゾール樹脂は、ビスフェノールAとホルムアルデヒドをアルカリ条件下で反応させ得られたもの(重量平均分子量1600)である。)
【0105】
得られたネガ型平版印刷用版材〔S−1〕〜〔S−6〕を、波長830nmの赤外線を発する半導体レーザで露光した。露光後、120℃で1分間加熱処理した後、富士写真フイルム(株)製現像液、DP−4(1:8)、リンス液FR−3(1:7)を仕込んだ自動現像機を通して処理した。次いで富士写真フイルム(株)製ガムGU−7(1:1)で版面を処理し、ハイデルKOR−D機で印刷した。この際得られた良好な印刷物の枚数を観察した。結果を下記表7に示す。いずれも、3万枚以上の印刷物が得られた。特に、分子内に2個以上のヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基を有し、かつベンゼン核を3〜5個含み、さらに分子量が1,200以下であるフェノール誘導体を用いた〔S−3〕〜〔S−6〕は、4万枚以上の良好な印刷物が得られた。
【0106】
[比較例5]
実施例25にて使用した溶液〔S−1〕において、ポリマー〔BP−1〕の代わりに、m−クレゾールとホルムアルデヒドを酸性条件下で反応させて得られるノボラック樹脂(重量平均分子量2500)を用い、これ以外は実施例25と同様にしてネガ型平版印刷用版材〔T〕を作成した。得られた平版印刷用版材〔T〕を、実施例25と同様に画像形成し印刷した。この際得られた良好な印刷物の枚数を観察した。結果を下記表7に示すが、3万枚未満の印刷物しか得られなかった。
【0107】
[比較例6]
実施例26にて使用した溶液〔S−2〕において、ポリマー〔BP−1〕の代わりに、m−クレゾールとホルムアルデヒドを酸性条件下で反応させて得られるノボラック樹脂(重量平均分子量2500)を用い、これ以外は実施例26と同様にしてネガ型平版印刷用版材〔U〕を作成した。得られた平版印刷用版材〔U〕を、実施例26と同様に画像形成し印刷した。この際得られた良好な印刷物の枚数を観察した。結果を下記表7に示すが、3万枚未満の印刷物しか得られなかった。
【0108】
【表7】
【0109】
実施例25〜30及び比較例5、6より、本発明のネガ型画像記録材料を用いた平版印刷用版材は、印刷時の耐刷性に優れていることがわかる。
【0110】
【発明の効果】
本発明は、赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザを用いて記録することにより、コンピューター等のデジタルデータから直接製版可能であり、さらに記録された画像の膜強度に優れ、印刷時の耐刷性が良好なネガ型平版印刷用版材として有用なネガ型画像記録材料を提供できる。
Claims (1)
- 下記(A)〜(D)よりなることを特徴とするネガ型画像記録材料。
(A)側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーの少なくとも1種、
(B)分子内に2個以上のベンゼン環に連結するヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基またはエポキシ基を有する熱架橋剤、
(C)酸発生剤、
(D)赤外線吸収剤。
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-
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