JP4480812B2 - 感光又は感熱性ポジ型平版印刷版原版、および製版方法 - Google Patents
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Description
本発明は、平版印刷用版材、カラープルーフ、フォトレジスト及びカラーフィルターとして使用できる感光又は感熱性ポジ型平版印刷版原版、および製版方法に関する。特に、コンピュータ等のデジタル信号に基づいて赤外線レーザを走査することにより直接製版できる、いわゆるダイレクト製版可能な平版印刷用版材として使用可能なポジ型の感光又は感熱性平版印刷版原版、および製版方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年におけるレーザの発展は目ざましく、特に波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザおよび半導体レーザ(以下、「赤外線レーザ」という場合がある。)は、高出力かつ小型のものが容易に入手できるようになった。これらの赤外線レーザは、コンピュータ等のデジタルデータにより直接印刷版を製版する際の記録光源として非常に有用である。従って、このような赤外線記録光源に対し、感応性の高い感光性樹脂組成物、即ち、赤外線照射により光化学反応等が起こり、現像液に対する溶解性が大きく変化する感光性樹脂組成物への要望が近年高まっている。
【0003】
これら各種レーザ光に感応する記録材料については種々研究されており、代表的なものとして、感光波長760nm以上の赤外線レーザで記録可能な材料としては、米国特許第4708925号記載のポジ型記録材料、特開平8−276558号に記載されている酸触媒架橋型のネガ型記録材料等がある。
また、300nm〜700nmの紫外光または可視光レーザ対応型の記録材料としては、米国特許2850445号及び特公昭44−20189号公報に記載されている如き、ラジカル重合型のネガ型記録材料等が多数ある。このような、ラジカル重合を利用した記録材料は高感度化を達成することができるが、酸素の重合阻害により大きく低感度化する問題もあった。
【0004】
これらの画像形成材料はいずれも、アルミニウム等の支持体上に単一の組成を有する1層の記録層を形成してなるものである。均一な組成物からなる単層の記録層では、感光物質の影響で光源からのエネルギー線の作用が感光層の表面から支持体に向かって深部に進むほど低下し、支持体界面近傍では最小となる傾向がある。また、露光に赤外線を用いる場合には、支持体裏面への熱拡散の問題も関与して、この傾向はより一層強くなる。
この傾向を緩和するためには、記録層自体の感度を向上させる手段をとることができるが、極端な高感度化は高湿環境下での保存安定性の低下をまねき、実用上問題となるため、高画質であり保存安定性の良好な画像形成材料が望まれていた。
【0005】
一方、300nm以下の短波長光及び電子線により記録可能な材料は、特にフォトレジスト材料として重要である。近年では集積回路がその集積度をますます高め、超LSIなどの半導体基板の製造でもハーフミクロン以下の線幅からなる超微細パターンの加工が必要とされており、その必要性を満たすためにフォトリソグラフィーに用いられる露光装置の使用波長は益々短波化し、遠紫外光やエキシマレーザ光(XeCl、KrF、ArFなど)が検討され、さらに電子線による超微細パターンの形成が検討されるに至っている。特に電子線は次世代のパターン形成技術の光源として有望しされている。
これらの画像形成材料全てに共通の課題としては、上述の各種エネルギー照射部及び未照射部、即ち、画像部、非画像部における、画像のON−OFFをいかに拡大できるかであり、この点に関しては、先に述べた単一の組成を有する記録層に関しては、例えば、ネガ型の画像形成材料においては、支持体と画像部との密着性不足の問題となり、ポジ型の画像形成材料においては画像部現像性不足に起因する支持体への残膜の問題となる。これらの点に関しては十分に満足なものは得られておらず、従来にはない新たな技術が求められていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、赤外線を照射する固体レーザ及び半導体レーザーを用いて、直接コンピュータ等のデジタルデータから製版することができ、非画像部の支持体への残膜のない、高画質の画像を形成することができ、かつ、保存安定性の良好な感光又は感熱性ポジ型平版印刷版原版を提供することにある。
【0007】
本発明者等は、ポジ型平版印刷版原版の記録層の層構成に着目して鋭意検討した結果、露光面近傍には、通常の感度を有する記録層を設け、該記録層と支持体との間に、露光光源に対してより高感度な記録層を配置することにより、赤外線レーザによる記録で高画質の画像を形成することができ、また、保存安定性の問題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の感光又は感熱性ポジ型平版印刷版原版は、支持体上に、フェノール基を有するアルカリ水可溶性高分子及び可視光域に大きな吸収を持つ染料を含有し、光又は熱の作用により、水又はアルカリ水に対する可溶性が変化する組成物からなる記録層を設けてなり、該支持体と記録層との間に、フェノール基、およびスルホンアミド基の少なくとも一つを有するアルカリ水可溶性高分子を含有し、光又は熱の作用により、水又はアルカリ水に対する可溶性が変化する組成物からなり、該記録層より光又は熱の作用に対する感度が高い中間層を設けてなり、かつ前記記録層および前記中間層の双方に波長760nmから1200nmに極大吸収を有する赤外線吸収染料を含有し、赤外線レーザにより高感度な記録がされることを特徴とする。
【0008】
本発明の作用は明確ではないが、本発明のポジ型平版印刷版原版では、支持体と記録層の間の中間層として、記録層と同様の機能を有するより高感度な層を設けることにより、支持体界面近傍における物性変化を大きくすることができ、いわゆる高画質(高い残膜解消性)が発現された。
また、通常、高感度な記録層を設けると高湿保存時の安定性が低下する問題が生じるが、この保存安定性の低下は、実際には記録層表面からの湿度即ち、記録層への水分浸透の影響に由来するところが大きいため、環境と直接接する記録層として通常の感度を有する安定性の良好な記録層を配置することで、高感度層が結果的に保護され、高湿度下においても、良好な保存安定性を維持することができた。
従って、本層構成により高画質と高湿保存安定性の両立を達成した。
なお、本発明において感光又は感熱性ポジ型平版印刷版原版(以下、適宜、単に画像形成材料と称する)は、光と熱の双方に感応するポジ型平版印刷版原版をも包含するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の画像形成材料は、支持体上に、記録に用いる光又は熱に対する感度の異なる2層の記録層を積層してあればよい。本発明の画像形成材料において、好適に用い得るポジ型の記録層としては、公知の酸触媒分解系、相互作用解除系(感熱ポジ)が挙げられる。これらは、光照射や加熱により発生する酸や熱エネルギーそのものにより、層を形成していた高分子化合物の結合が解除されるなどの働きにより水やアルカリ水に可溶性となり、現像により除去されて非画像部を形成するものである。
本発明は記録層相互間の感度(反応性)の差異を利用した原理的なものであり記録層を構成する感光或いは感熱材料の種類による影響を受けない。
【0010】
以下、本発明の画像形成材料の各構成について具体的に説明する。
本発明の画像形成材料は、支持体上に、フェノール基を有するアルカリ水可溶性高分子、および可視光域に大きな吸収を持つ染料(以下、適宜「着色剤」と称する。)を含有し、光又は熱の作用により、水又はアルカリ水に対する可溶性が変化する組成物からなる記録層を設けてなるが、この記録層は、通常、水不溶性、且つ、アルカリ水可溶性の高分子を含有してなり、光又は熱の作用によりこの層を構成する高分子の結合が切れ、アルカリ現像液に対する溶解性が増大する層である。
なお、本発明においては、水不溶性、且つ、アルカリ水可溶性の高分子を、適宜、単に「アルカリ水可溶性高分子」と称する。
本発明の画像形成材料およびこれを用いた画像形成方法により、ポジ型の記録を行なう場合には、光又は熱の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する構成となり、前記アルカリ水可溶性高分子の可溶化を促進するという観点から、波長760nmから1200nmに極大吸収を有する赤外線吸収染料(以下、適宜「赤外線吸収剤」と称する。)であり、オニウム塩型の赤外線吸収剤が好適に用いられる。
【0011】
本発明に用い得るバインダー高分子としては、ポジ型に適した公知の高分子化合物を使用することができる。
ネガ型の画像形成材料の記録層に使用できる好ましい高分子としては、ヒドロキシ基またはアルコキシ基が直接結合した芳香族炭化水素環を側鎖又は主鎖に有するポリマーが挙げられる。アルコキシ基としては、感度の観点から、炭素数20個以下のものが好ましい。また、芳香族炭化水素環としては、原料の入手性から、ベンゼン環、ナフタレン環またはアントラセン環が好ましい。これらの芳香族炭化水素環は、ヒドロキシ基またはアルコキシ基以外の置換基、例えば、ハロゲン基、シアノ基等の置換基を有していても良いが、感度の観点から、ヒドロキシ基またはアルコキシ基以外の置換基を有さない方が好ましい。
【0012】
本発明において、好適に用いることができるバインダーポリマーは、下記一般式(III )で表される構成単位を有するポリマー、又はノボラック樹脂等のフェノール樹脂である。
【0013】
【化1】
【0014】
式中、Ar2 は、ベンゼン環、ナフタレン環またはアントラセン環を示す。R4 は、水素原子またはメチル基を示す。R5 は、水素原子または炭素数20個以下のアルコキシ基を示す。X1 は、単結合または、C、H、N、O、Sより選ばれた1種以上の原子を含み、かつ炭素数0〜20個の2価の連結基を示す。kは、1〜4の整数を示す。
【0015】
まず、本発明において、好適に用いられる一般式(III )で表される構成単位の例([BP−1]〜[BP−6])を以下に挙げるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0016】
【化2】
【0017】
【化3】
【0018】
これらの構成単位を有するポリマーは、対応するモノマーを用い、従来公知の方法によりラジカル重合することにより得られる。
【0019】
本発明では、バインダーポリマーとして、一般式(III )で表される構成単位のみから成る単独重合体を用いても良いが、この特定構成単位とともに、他の公知のモノマーより誘導される構成単位を有する共重合体を用いても良い。この際用いられる他の公知のモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸エステル類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;スチレン、アクリロニトリル、および、アクリル酸、メタクリル酸等の酸性基を有するモノマー;さらにp−スチレンスルホン酸のナトリウム塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のアルカリ金属塩、テトラアルキルアンモニウム塩、3−スルホプロピルアクリレートのカリウム塩等の強酸の塩を含有するモノマー等が挙げられる。
【0020】
これらを用いた共重合体中に含まれる一般式(III )で表される構成単位の割合は、50〜100重量%であることが好ましく、さらに好ましくは60〜100重量%である。
また、本発明で使用されるポリマーの重量平均分子量は好ましくは5000以上であり、さらに好ましくは1万〜30万の範囲であり、数平均分子量は好ましくは1000以上であり、さらに好ましくは2000〜25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、さらに好ましくは1.1〜10の範囲である。
【0021】
これらのポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであることが好ましい。
【0022】
本発明で使用されるポリマーを合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上混合して用いられる。
【0023】
本発明で使用されるポリマーを合成する際に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤等公知の化合物が使用できる。
【0024】
次に、ノボラック類について述べる。本発明で好適に用いられるノボラック樹脂は、フェノールノボラック、o−、m−、p−の各種クレゾールノボラック、及びその共重合体、ハロゲン原子、アルキル基等で置換されたフェノールを利用したノボラックが挙げられる。
これらのノボラック樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1000以上であり、さらに好ましくは2000〜2万の範囲であり、数平均分子量は好ましくは1000以上であり、さらに好ましくは2000〜15000の範囲である。多分散度は1以上が好ましくは、さらに好ましくは1.1〜10の範囲である。
【0025】
また、添加ポリマーとして、好適に使用できるノボラック樹脂としては、フェノールノボラック、o−、m−、p−の各種クレゾールノボラック、及びその共重合体、ハロゲン原子、アルキル基等で置換されたフェノールを利用したノボラックが挙げられる。
これらのノボラック樹脂の重量平均分子量は、1000以上であることが好ましく、2000〜200000万の範囲にあることがより好ましい。数平均分子量は1000以上であることが好ましく、2000〜150000の範囲であることがより好ましい。多分散度は1以上が好ましく、1.1〜10の範囲であることがより好ましい。
【0026】
次に、ポジ型の画像形成材料に使用できる高分子化合物としては、下記(1)〜(2)に挙げる酸性基を高分子の主鎖および/または側鎖中に有するものであり、アルカリ性現像液に対する溶解性の点、溶解抑制能発現の点で好ましい。
本発明のポジ型画像形成材料の記録層には、下記(1)フェノール基を有するアルカリ可溶性高分子が用いられ、また、中間層には、下記(1)フェノール基および(2)スルホンアミド基の少なくとも一つを有するアルカリ可溶性高分子が用いられる。
【0027】
(1)フェノール基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2 NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(以下、「活性イミド基」という。)
〔−SO2 NHCOR、−SO2 NHSO2 R、−CONHSO2 R〕
(4)カルボン酸基(−CO2 H)
(5)スルホン酸基(−SO3 H)
(6)リン酸基(−OPO3 H2 )
【0028】
上記(1)〜(6)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
【0029】
上記(1)フェノール基または(2)スルホンアミド基を有するアルカリ水可溶性高分子が、アルカリ性現像液に対する溶解性、現像ラチチュード、膜強度を十分に確保する点が良好である。
【0030】
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ水可溶性高分子としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)フェノール基を有するアルカリ水可溶性高分子としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、p−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、フェノールとクレゾール(m−、p−、またはm−/p−混合のいずれでもよい)とホルムアルデヒドとの縮重合体等のノボラック樹脂、およびピロガロールとアセトンとの縮重合体を挙げることができる。さらに、フェノール基を側鎖に有する化合物を共重合させた共重合体を挙げることもできる。或いは、フェノール基を側鎖に有する化合物を共重合させた共重合体を用いることもできる。
【0031】
フェノール基を有する化合物としては、フェノール基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、またはヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0032】
アルカリ水可溶性高分子の重量平均分子量は、5.0×102〜2.0×104 で、数平均分子量が2.0×102 〜1.0×104 のものが、画像形成性の点で好ましい。また、これらの高分子を単独で用いるのみならず、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。組み合わせる場合には、米国特許第4123279号明細書に記載されているような、t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体や、オクチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体を併用してもよい。
【0033】
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ水可溶性高分子としては、例えば、スルホンアミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、窒素原子に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物が挙げられる。中でも、アクリロイル基、アリル基、またはビニロキシ基と、置換あるいはモノ置換アミノスルホニル基または置換スルホニルイミノ基と、を分子内に有する低分子化合物が好ましく、例えば、下記一般式1〜5で表される化合物が挙げられる。
【0034】
【化4】
【0035】
〔式中、X1 、X2 は、それぞれ独立に−O−または−NR27−を表す。R21、R24は、それぞれ独立に水素原子または−CH3 を表す。R22、R25、R29、R32及びR36は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基を表す。R23、R27及びR33は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。また、R26、R37は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R28、R30及びR34は、それぞれ独立に水素原子または−CH3 を表す。R31、R35は、それぞれ独立に単結合、または置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基を表す。Y3 、Y4 は、それぞれ独立に単結合、または−CO−を表す。〕
【0036】
一般式1〜5で表される化合物のうち、本発明のポジ型平版印刷用材料では、特に、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0037】
(3)活性イミド基を有するアルカリ水可溶性高分子としては、例えば、活性イミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、下記構造式で表される活性イミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物を挙げることができる。
【0038】
【化5】
【0039】
具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0040】
(4)カルボン酸基を有するアルカリ水可溶性高分子としては、例えば、カルボン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
(5)スルホン酸基を有するアルカリ可溶性高分子としては、例えば、スルホン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成単位とする重合体を挙げることができる。
(6)リン酸基を有するアルカリ水可溶性高分子としては、例えば、リン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
【0041】
ポジ型画像形成材料に用いるアルカリ水可溶性高分子を構成する、前記(1)フェノール基および(2)スルホンアミド基から選ばれる基を有する最小構成単位は、特に1種類のみである必要はなく、同一の酸性基を有する最小構成単位を2種以上、または異なる酸性基を有する最小構成単位を2種以上共重合させたものを用いることもできる。
【0042】
共重合の方法としては、従来知られている、グラフト共重合法、ブロック共重合法、ランダム共重合法等を用いることができる。
【0043】
前記共重合体は、共重合させる(1)および(2)を有する化合物が共重合体中に10モル%以上含まれているものが好ましく、20モル%以上含まれているものがより好ましい。10モル%未満であると、現像ラチチュードを十分に向上させることができない傾向がある。
本発明の画像形成材料を、赤外線レーザを用いて書き込みを行なう場合には、記録層に赤外線吸収剤を含有することが感度の観点から好ましい。
赤外線吸収剤は吸収した赤外線を熱に変換する機能を有しており、この際、ネガ型の記録材料では、発生した熱により後述の酸発生剤が分解して酸を発生し、記録層内において架橋反応を生起させ、また、ポジ型の記録材料では、レーザ走査により光化学反応等が起こり、現像液に対する溶解性が大きく増加する。
本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760nmから1200nmに吸収極大を有する染料である。
【0044】
以下に、本発明の画像形成材料がネガ型記録層を有する場合に好適に使用できる赤外線吸収剤について詳述する。
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
【0045】
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0046】
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
【0047】
また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0048】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。
【0054】
次に、本発明の画像形成材料がポジ型の記録層を有する場合に使用できる赤外線吸収剤について説明する。
ポジ型記録層に赤外線吸収剤を用いる場合には、特定の官能基を有するバインダーポリマーとの相互作用によりポジ作用(未露光部は現像抑制され、露光部では解除され、現像促進する。)を生じさせる必要があるため、その点でオニウム塩型構造のものが特に好ましく、具体的には、前記のネガ型の場合に使用できる赤外線吸収剤のうち、特にシアニン色素、ピリリウム塩が好ましい。シアニン色素、ピリリウム塩の詳細については前述の通りである。
【0055】
さらに、特願平10−237634号に記載のアニオン性赤外線吸収剤も好適に使用することができる。このアニオン性赤外線吸収剤は、実質的に赤外線を吸収する色素の母核にカチオン構造が無く、アニオン構造を有するものを指す。
例えば、(a−1)アニオン性金属錯体、(a−2)アニオン性カーボンブラック、(a−3)アニオン性フタロシアニンが挙げられる。
ここで、(a−1)アニオン性金属錯体とは、実質的に光を吸収する錯体部の中心金属および配位子全体でアニオンとなるものを指す。
(a−2)アニオン性カーボンブラックは、置換基としてスルホン酸、カルボン酸、ホスホン酸基等のアニオン基が結合しているカーボンブラックが挙げられる。これらの基をカーボンブラックに導入するには、カーボンブラック便覧第三版(カーボンブラック協会編、1995年4月5日、カーボンブラック協会発行)第12頁に記載されるように、所定の酸でカーボンブラックを酸化する等の手段をとればよい。
(a−3)アニオン性フタロシアニンは、フタロシアニン骨格に、置換基として先に(a−2)の説明において挙げたアニオン基が結合し、全体としてアニオンとなっているものを指す。
さらに特願平10−237634号の[0014]ないし[0105]に記載の[Ga-−M−Gb]mXm+で示されるアニオン性赤外線吸収剤〔Ga - はアニオン性置換基を表し、Gb は中性の置換基を表す。Xm+は、プロトンを含む1〜m価のカチオンを表し、mは1ないし6の整数を表す。〕を挙げることができる。
【0056】
また、本発明に用いられる赤外線吸収剤の好適な例として、以下に、示す如きオニウム塩構造を有する赤外線吸収剤が挙げられる。このような赤外線吸収剤の具体例(A−1〜A−56)を示すが、本発明は、これらに限られるものではない。
【0057】
【化6】
【0058】
【化7】
【0059】
【化8】
【0060】
【化9】
【0061】
【化10】
【0062】
【化11】
【0063】
【化12】
【0064】
【化13】
【0065】
【化14】
【0066】
【化15】
【0067】
【化16】
【0068】
【化17】
【0069】
【化18】
【0070】
【化19】
【0071】
【化20】
【0072】
A−1〜A−56の構造式中、T-とは、1価の対アニオンを表し、好ましくは、ハロゲンアニオン(F-、Cl-、Br-、I-)、ルイス酸アニオン(BF4 -、PF6 -、SbCl6 -、ClO4 -)、アルキルスルホン酸アニオン、アリールスルホン酸アニオンである。
ここでいうアルキルとは、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基を意味し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2一ノルボルニル基を挙げることができる。これらの中では、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
また、ここでいうアリールとは、1個のベンゼン環からなるもの、2又は3個のベンゼン撮が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものを表し、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナブテニル基、フルオレニル基、を挙げることができ、これらの中でも、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
【0073】
本発明の画像形成材料をポジ型として用いる場合にも、上記の赤外線吸収剤の添加量はネガ型の画像形成材料において述べたのと同様の方法で決定することができる。
【0074】
本発明に係るポジ型の記録層には、さらに感度および現像ラチチュードを向上させる目的で、上記のシアニン色素、ピリリウム塩、アニオン系色素以外の他の染料または顔料等(前述したネガ型の感光性樹脂組成物に使用できる赤外線吸収剤)を含有させることもできる。
【0085】
本発明の画像形成材料の記録層は、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することを要する。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)、アイゼンスピロンブルーC−RH(保土ヶ谷化学(株)製)等、及び特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。
【0086】
これらの染料を添加することにより、画像形成後、画像部と非画像部の区別が明瞭となる。なお、添加量は、記録層全固形分に対し0.01〜10重量%の範囲が好ましい。
【0087】
また、本発明の記録層中には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号や特開平3−208514号に記載されているような非イオン界面活性剤や特開昭59−121044号、特開平4−13149号に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
【0088】
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0089】
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。
【0090】
非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の記録層中に占める割合は、0.05〜15重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0091】
さらに、本発明の画像形成材料の記録層中には、必要に応じ塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が用いられる。
【0092】
本発明の画像形成材料においては、通常上記各成分を溶媒に溶かして、後述するより高感度な記録層(中間層)を形成した適当な支持体上に塗布することにより記録層を形成する。
ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独又は混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、1〜50重量%であることが好ましい。
本発明に係る記録層の塗布量(固形分)は用途によって異なるが、0.01〜3.0g/m2の範囲に調整される。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、画像記録膜の被膜特性は低下する。
【0093】
本発明における記録層には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、全記録層固形分中0.01〜1重量%、さらに好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0094】
次に、支持体と前記記録層との間に設けられる、記録層と同じ機能を有し、且つ、該記録層より光又は熱の作用に対する感度が高い中間層(以下、適宜、中間層と称する)について説明する。この中間層は所望により下塗を行なった支持体上に直接形成されることが好ましい。
本発明の中間層には、前記記録層と同じ基本画像形成原理を用いている記録材料系をより高感度化したものを利用してもよく、例えば、記録層として、より高感度なラジカル重合系からなる中間層を支持体上に形成し、ラジカル重合系に比べれば感度の低い酸触媒架橋系の記録層をその上層に設ける構成などの、異種記録材料系を組み合わせたものを使用してもよい。
界面での融合性や製造適性の点では、中間層には、記録層と同じ記録材料系ののものを用いることが好ましい。
また、記録層と中間層との光又は熱に対する感度の差は少なくとも1.3倍程度あることが好ましい。感度の差異が1.3倍未満であると、積層構造を構成した効果が不充分となる。記録層及び中間層の感度は、単独の層を形成し、それぞれ同じ条件で感度を測定して求めることができる。
【0095】
次に同種の記録材料系を用いた場合の、中間層における一般的な高感度化法を述べる。方法としては、例えば、中間層を構成するバインダーの現像性を、導入する親水性基、疎水性基の変更や分子量の変更などの手段によって調整し、より高感度化する方法、中間層中に含まれる感光又は感熱性の化合物の濃度を調整し(増加させ)、より高感度化する方法、中間層内で、光又は熱の作用により生じる反応あるいは物性変化を促進するような、赤外線吸収剤等の如きいわゆる増感助剤を添加し、より高感度化する方法などが挙げられる。
本発明に係る中間層の塗布量(固形分)は用途によって異なるが、0.01〜3.0g/m2の範囲に調整される。
【0096】
本発明に係る中間層、記録層を塗布可能な支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のような金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。
【0097】
好ましい支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が挙げられ、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板、及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、さらにアルミニウムがラミネート又は蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は総量で10重量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で支持体として用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
【0098】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための、例えば、界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸若しくは硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
【0099】
このように粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化被膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸又はそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0100】
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には、電解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2 、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化被膜の量は1.0g/m2 より少ないと耐膜性が不十分であったり、非画像部に傷が付き易くなって、特に平版印刷用原版の場合、印刷時に傷の部分にインキが付着する、いわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
【0101】
陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明で使用可能な親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか、又は電解処理される。他に、特公昭36−22063号に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が用いられる。
【0102】
前記記録層を塗布する前に、必要に応じて支持体上に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸等のアミノ基を有するホスホン酸類;置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸等の有機ホスホン酸;置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸等の有機リン酸;置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸等の有機ホスフィン酸;グリシンやβ−アラニン等のアミノ酸類;及びトリエタノールアミンの塩酸塩等のヒドロキシル基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、2種以上混合して用いてもよい。また、前述したジアゾニウム化合物を下塗りすることも好ましい。
有機下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2 が適当であり、好ましくは5〜100mg/m2 である。上記の被覆量が2mg/m2 よりも少ないと十分な膜性が得られず、200mg/m2 より大きくても同様である。
【0103】
この有機下塗層は、次のような方法で設けることができる。水またはメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水またはメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記化合物を吸着させ、その後水などによって洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記の有機化合物の0.005〜10重量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。また、後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜5重量%で、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃、さらに、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpH1〜12の範囲に調整することもできる。また、本発明の記録層を平版印刷用原版として用いる場合には、調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。
【0104】
以上のようにして、本発明の画像形成材料は、平版印刷用原版として用いることができる。この画像形成材料は赤外線レーザで記録することが好ましく、前述のように、ビーム1本当たりのエネルギー密度が15000mJ/s cm2以上、さらには20000mJ/s cm2以上の高出力赤外線レーザーにより記録されることが好ましい。具体的には、波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザにより画像露光されることが好ましい。エネルギー密度はビーム1本当たりの画像形成材料表面での出力と、そのビームの記録層表面での面積により決定される値であり、例えば、38mWのエネルギー強度で、1.5μm四方の版面面積のレーザーのエネルギー密度は、17000mJ/s cm2である。
【0105】
本発明の画像形成材料が前記ポジ型の記録層を有し、露光後に水又はアルカリ現像液による現像処理が行なわれる。現像処理は露光後すぐに行ってもよいが、露光工程と現像工程の間に加熱処理を行ってもよい。加熱処理をする場合その条件は、60℃〜150℃の範囲内で5秒〜5分間行うことが好ましい。加熱方法としては、従来公知の種々の方法を用いることができる。例えば、パネルヒーターやセラミックヒーターにより記録材料と接触しつつ加熱する方法、及びランプや温風による非接触の加熱方法等が挙げられる。この加熱処理により、レーザ照射時、記録に必要なレーザエネルギーを減少させることができる。
【0106】
アルカリ性水溶液を用いる場合、現像液及び補充液としては従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウム等の無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も用いられる。
【0107】
これらのアルカリ剤は単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
これらのアルカリ剤の中で特に好ましい現像液の一例は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩水溶液である。その理由はケイ酸塩の成分である酸化珪素SiO2 とアルカリ金属酸化物M2 O(Mは、アルカリ金属を表す)の比率と濃度によって現像性の調節が可能となるためであり、例えば、特開昭54−62004号、特公昭57−7427号に記載されているようなアルカリ金属ケイ酸塩が有効に用いられる。
【0108】
さらに、自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換することなく、多量の記録層を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。
【0109】
以上記述した現像液及び補充液を用いて現像処理された記録層は、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の記録層を印刷用版材として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0110】
近年、特に製版・印刷業界においては、製版作業の合理化及び標準化のため、印刷用版材用の自動現像機が広く用いられている。
この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷用版材を搬送する装置と各処理液槽とスプレー装置とからなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロール等によって印刷用版材を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。
【0111】
また、実質的に未使用の処理液で処理する、いわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0112】
上記のようにして得られた画像形成材料を平版印刷版として用いる場合には、所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができる。より一層耐刷力を向上させる目的でバーニング処理が施してもよい。
平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
【0113】
整面液が塗布された平版印刷版原版は、必要に応じて乾燥された後バーニングプロセッサー(例えば、富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:BP−1300)等で高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
【0114】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引き等の従来より行われている処理を施こすことができるが、水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。
【0115】
このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0116】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
〔支持体の作製〕
厚さ0.30mmのアルミニウム板(材質1050)をトリクロロエチレン洗浄して脱脂した後、ナイロンブラシと400メッシュのパミストン−水懸濁液を用いその表面を砂目立てし、よく水で洗浄した。このアルミニウム板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い水洗後、さらに2%HNO3 に20秒間浸漬して水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2 であった。次に、この板を7%H2 SO4 を電解液として電流密度15A/dm2 で3g/m2 の直流陽極酸化被膜を設けた後、水洗乾燥した。次にこのアルミニウム板に下記下塗り液を塗布し、80℃で30秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は10mg/m2 であった。
<下塗り液>
・β−アラニン ・・・・0.10g
・メタノール ・・・40.0 g
・純水 ・・・60.0 g
【0129】
(実施例6〜10:ポジ型画像形成材料)
上記実施例1で用いたのと同様の下塗済み支持体上に、下記のポジ型中間層形成溶液2を塗布し、100℃で3分間乾燥した。乾燥後の重量は0.5g/m2であった。続いて、下記の感熱ポジ型記録層形成溶液2を塗布し、130℃で30秒間乾燥した。乾燥後の重量はトータルで2.0g/m2であった。
(ポジ型中間層形成溶液2)
・表4の高分子[Q] 2.0g
・表4の赤外線吸収剤[R] (表4記載の量(g))
・表4の添加剤[S] (表4記載の量(g))
・フッ素系界面活性剤 0.06g
(メカ゛ファックF-177:大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 10.0g
・γ−ブチロラクトン 10.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 7.0g
【0130】
(感熱ポジ型記録層形成溶液2)
・表4の高分子[P] 2.0 g
・表4の赤外線吸収剤[A] 0.15g
・着色剤 0.015g
(AIZEN SPLON BLUE C-RH:保土ヶ谷化学(株)製)
・フッ素系界面活性剤 0.06 g
(メガファックF-177:大日本インキ化学工業(株)製)
・酢酸エチル 15.0 g
・メタノール 15.0 g
【0131】
【化25】
【0132】
【化26】
【0133】
【化27】
【0134】
【表4】
【0135】
(比較例11〜15)
実施例6で用いたのと同様の上記下塗済み支持体の上に、前記感熱ポジ型記録層形成溶液2において架橋剤、高分子、赤外線吸収剤などを下記表5に記載の処方としたものを塗布し、100℃で3分間乾燥して、支持体上に単一組成の記録層のみを形成した画像形成材料を得て比較例11〜15とした。乾燥後の重量は1.5g/m2であった。
【0136】
【表5】
【0137】
(比較例16〜20)
実施例6で用いたのと同様の上記下塗済み支持体の上に、前記ポジ型中間層形成溶液2において架橋剤、高分子、赤外線吸収剤などを下記表6に記載の処方としたものを塗布し、100℃で3分間乾燥して、支持体上に比較例11〜15における記録層よりも、より高感度な単一組成の記録層のみを形成した画像形成材料を得て比較例16〜20とした。乾燥後の重量は0.5g/m2であった。
【0138】
【表6】
【0140】
<ポジ型感材の残膜解消性評価:印刷時の汚れ>
得られたポジ型画像形成材料実施例6〜10及び比較例11〜20を波長830nm〜850nm程度の赤外線を発生する半導体レーザで走査露光した。99%網点(シャドー)を形成し、続いて富士写真フィルム(株)製現像液、DP−4(1:8の水希釈液)にて現像した。この際得られた感光材料を印刷版として用いハイデルKOR−D機で印刷時の非画像部の汚れを調査した。
【0141】
<保存安定性の評価>
前記の各画像形成材料について、レーザ露光前に高湿条件下(85%RH、35℃)に3日間放置し、その後、この保存後の画像形成材料を前記と同様にレーザ露光して記録に必要なエネルギー量を算出し、高湿保存前後のエネルギー比(高湿保存後のエネルギー/高湿保存前のエネルギー)を求めた。
このエネルギー比が1.1以下であることが製造上好ましく保存安定性においても良好といえる。
これらの評価結果を表7、8に示す。
【0143】
【表8】
【0144】
表8に明らかなように、本発明の画像形成材料は、非画像部に汚れがなく、高画質の画像が得られた。また、高湿度下の環境においても感度の低下が見られず、保存安定性に優れていることがわかった。
【0145】
【発明の効果】
本発明のポジ型平版印刷版原版は、赤外線を照射する固体レーザまたは半導体レーザーを用いてコンピュータ等のデジタルデータから直接記録することができ、高画質の画像が得られるとともに、保存安定性に優れる。
Claims (3)
- 支持体上に、フェノール基を有するアルカリ水可溶性高分子及び可視光域に大きな吸収を持つ染料を含有し、光又は熱の作用により、水又はアルカリ水に対する可溶性が変化する組成物からなる記録層を設けてなり、該支持体と記録層との間に、フェノール基、およびスルホンアミド基の少なくとも一つを有するアルカリ水可溶性高分子を含有し、光又は熱の作用により、水又はアルカリ水に対する可溶性が変化する組成物からなり、該記録層より光又は熱の作用に対する感度が高い中間層を設けてなり、かつ前記記録層および前記中間層に波長760nmから1200nmに極大吸収を有する赤外線吸収染料を含有し、赤外線レーザにより記録されることを特徴とする感光又は感熱性ポジ型平版印刷版原版。
- 前記中間層に含有される赤外線吸収剤の濃度が、前記記録層に含有される赤外線吸収剤の濃度よりも高いことを特徴とする請求項1に記載のポジ型平版印刷版原版。
- 請求項1または請求項2に記載のポジ型平版印刷版原版を、赤外線レーザで画像露光し、露光部分をアルカリ水溶液により溶解させることを特徴とする平版印刷版原版の製版方法。
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