JP3634963B2 - 耐熱耐食性保護管 - Google Patents

耐熱耐食性保護管 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴミ焼却灰溶融炉等の溶融炉において、ヒーターやセンサー等を保護するための保護管に関する。
【0002】
【従来の技術】
家庭、会社から捨てられたゴミは地方自治体の焼却炉で燃やされ、その未燃分の焼却灰及び排煙に含まれる飛灰(含有元素;Si、Al、Fe、Ca、Mg、K、Mn、Cl、Na、S)には、重金属成分やダイオキシン、フラン等の有毒汚染物質が含まれている。
【0003】
これまでは、地方自治体の焼却炉で燃やされた後の未燃分の焼却灰は、最終処分場にそのまま埋められていたが、立地条件も厳しくなり、場所の確保が難しくなっており、加えて、ダイオキシンやフラン等の有害汚染物質の無害化は法律や条例でかなり厳しく規制されつつあるため、焼却灰、飛灰を回収しこれを再溶融することにより有害汚染物質を無害化する溶融炉の必要性は年々高まっている。焼却炉で燃やされた後の未燃分の焼却灰は、高温加熱処理でスラグ化すれば、焼却灰の1/2〜1/10程度にその体積を小さくすることができる。ダイオキシン等の有害汚染物質を高熱により分解し無害化できる。等の理由により、この溶融炉での高温加熱処理法が有望視されているのである。
【0004】
溶融炉での加熱処理の代表例を図3に示す。まず、溶融炉12内に焼却灰11を入れ、電熱源である加熱用ヒーター2で1300〜1600℃に加熱すると、焼却灰11が溶融して含有している金属元素13は蒸発する。この金属元素13を取り出して冷却装置(不図示)で急冷し凝縮させて微粒子とし、これをフィルタ等15で分離して金属濃縮物16を回収する。一方ダイオキシンやフランなどの有毒汚染物質は熱破壊され、無害化されたガス17はガス処理装置を経て大気中に放出される。また、溶融炉12内の残存物はスラグ(ガラス)状顆粒18として取り出され、有効利用または最終処分されるようになっている。
【0005】
この溶融炉12には、加熱用ヒーター2と温度管理のための熱電対3が必要であるが、溶融した焼却灰11は溶融炉12内で溶融スラグ、溶融塩、あるいはその蒸気成分として存在するため、これらの物質から加熱用ヒーター2及び熱電対3を保護する必要がある。
【0006】
図4は加熱用ヒーター2と保護管1及びこれらを保持する炉材4、5の代表的配置を示した。ヒーターを保持する炉材5a、5b、5cは保護管1の開口端側上部に設置され、炉材4a、4b、4cに埋め込まれた配置になっている。また、耐熱性・耐食性に優れたセラミックス製保護管1は、炉材4aから吊り下げられる構造となって保持され、加熱用ヒーター2や場合によっては熱電対3を覆うことが行われている。
【0007】
上記保護管1の材質としては、例えば特開 昭51−71312号公報に示されるように、MgO−ZrSiO−Alの複合セラミックスが使用されている。また、形状としては本公報にも示しているように、保護管先端を片側封止した形状が一般的に広く用いられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ゴミ焼却により発生する灰を加熱処理する際、灰に含まれるCd、Pd、Zn等の金属元素類やダイオキシン、フラン等の有害汚染物質を分解するため、電熱により1300〜1600℃で加熱溶融処理を行い無害化するが、溶融炉12で使用する保護管1または炉材4は、焼却灰11が溶けてできる溶融塩、溶融スラグ、あるいは蒸気等にさらされることになる。そのためこれら成分中のSi、Al、Fe、Ca、Naは保護管1を成すセラミックス及び炉材中に徐々に侵入・浸食し、次第にセラミックス及び炉材が変質し、強度劣化を起こすことからクラックを生じたり、破損が生じやすくなったり、部分的に溶融するなどして、長期にわたり使用できるものではなかった。特にこの現象は、保護管底部の外面に顕著に現れていた。
【0009】
さらに、図4において、蒸気成分の一部は保護管1とこれを保持している炉材4の僅かな間隙より侵入し、加熱用ヒーター2を固定保持する炉材5を変質させ腐食し、溶損を発生させた。溶け出した炉材のガラス成分はヒータを伝わって保護管1の封止部(底部)に溜まり、保護管内部を著しく腐食する。この腐食度合は、保護管外面側からの腐食を数倍上回る腐食速度で保護管を腐食し、酷い場合保護管封止(底部)に貫通孔を発生させ、ヒータ寿命を著しく低下させ、溶融炉寿命に致命的なダメージを与えるため、大きな問題であった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記に鑑みて本発明は、セラミックス製の耐熱耐食性保護管の封止部の内側に、内面形状に合致するとともに底部の肉厚を厚くしたAl またはMgAl の少なくとも一種以上の結晶相を有するセラミックスからなるインナーカップを配置したことを特徴とする。
【0011】
即ち、封止部を二重構造とすることによって、溶け出した炉材成分をまずインナーカップで受け、炉材成分が直接保護管封止部と接触することを防止することができるため、保護管封止部の腐食を防ぐことができる。
【0012】
一方著しく腐食を受けたインナーカップは、脱着可能としておけば、休炉中あるいは炉体点検・改修中に容易に取り外して交換可能なため、インナーカップのみを新規品に取り替えるだけで、保護管本体は継続して使用可能である。
【0013】
また、本発明は、上記インナーカップの表面を焼き肌面としたことを特徴としている。これは、インナーカップとして用いる材料の表面状態を色々変化させて、耐食性との関係を検討した結果、研削加工面やラッピング加工面より無加工で焼き肌面をインナーカップの表面として用いた方が耐食性に優れることを発見したためである。なお、焼き肌面とは、焼成後の加工を施さず、焼成したままの面のことであり、焼き肌面が加工面に比べ耐食性良好となる理由は、以下の通りである。
【0014】
a.セラミックス焼き肌面のボイドは、内部より少ない。つまり、ボイドが存在すると、腐食成分がボイドよりセラミックス磁器中に侵入するが、スラグまたはスラグ蒸発ガス接触面にセラミックスの焼き肌を残した方が、ボイドは少なく、腐食成分侵入を最小限に抑えることができる。加工をして、焼き肌面を除去すると、セラミツク磁器中のボイドが表面に露出し、耐食性は悪化し易くなる。
【0015】
b.セラミックス結晶粒径は、大きい程耐食性は向上する。酸化物系セラミックスでは、セラミックス磁器表面ほど粒径が大きく、内部は表面に比べ相対的に粒径は小さくなる。つまり、セラミックス焼き肌面を保護管外側表面とすれば、結晶粒径最大の面がスラグまたはスラグ蒸発ガス接触面となり、耐食性に有利となる。
【0016】
c.研削加工やラッピング加工をセラミツクスに施すと、セラミックス磁器表面はダメージを受け、極微細なマイクロクラックが発生する。加工面をスラグまたはスラグ蒸発ガス接触面に用いると、腐食成分はマイクロクラックより容易にセラミック磁器中に侵入し易くなる。
【0017】
焼き肌面をインナーカップの外表面に採用すると、従来行われている研削加工、ラッピング加工等の機械加工が省略でき、加工工程を簡略化できるため、より安価に供給することが可能となるメリットが生まれる。なお、焼き肌面となる面には、より大きな結晶をより大きく発達させ、これをインナーカップ表面に露出させるため、セラミック材料完全緻密化温度より高めの温度で焼成した方が良く、好適には、セラミツク材料完全緻密化温度より50℃〜100℃以上の温度で2時間以上保持して焼成することが望ましい。この様にして得られた本発明のインナーカップの外表面は、10〜20μm以上の大きな結晶で構成され、ノーボイドの表面状態となつている。
【0018】
さらに、本発明のインナーカップは、アルミナ(Al)、スピネル(MgAl)の少なくとも一種以上の結晶相を有するセラミックスにより、インナーカップを形成したことを特徴とする。
【0019】
即ち、本発明は、インナーカップを成すセラミックスとして、種々検討を行った結果、MgOスピネル(MgAl)またはAlを主成分とすれば良いことを見出した。例えば、SiC、Si等を主成分とする非酸化物セラミックスでは、酸化雰囲気中(大気中)1500℃以上の温度に曝すと、Si・Ca・希土類元素などの焼結助剤成分がガラス化して分解をはじめ、変質するため耐熱性が悪く、インナーカップ材料としては不適当である。一方酸化物セラミックスでもZrOを主成分とするセラミックスでは、高純度原料を使用しても、1500℃以上の高温に曝されると相変態を起こして強度劣化を生じることから、保護管として不適当である。またMgOは、特定の条件下では、耐熱性・耐食性ともに優れているが、雰囲気中や灰分中に微量な水分が存在すると、これと激しく反応を起こし、水酸化マグネシウムを形成し、耐食性が著しく悪化するため、実質的に水分が存在する溶融炉ではインナーカップ材料として不適当である。
【0020】
これに対して、MgOスピネルまたはAlを主成分とするセラミックスは、融点が2000℃以上と極めて高く、1500〜1600℃の高温中でも安定した耐熱性・耐食性を有しており、インナーカップとして最適な材料である。
【0021】
なおMgOスピネルとは、MgAlで表され、理論定比はMgOとAlがモル比1:1で結合した化合物のことで、重量比では、MgO28.6重量%、Al71.4重量%で結合した化合物のことである。
【0022】
本発明では、28.6重量%以下のMgOと71.4重量%以上のAlを含有し、MgAl、Alの結晶相を有し、このうち少なくとも一種以上の結晶相を有することを特徴とする。
【0023】
即ち、溶融炉において、灰成分中のSi、Al、Fe、Ca、Na等の浸食元素はインナーカップを成すセラミックス中の結晶粒界中に浸食してセラミックスを腐食し変質させる。そのため28.6重量%以下のMgOと71.4重量%以上のAlを含有し、SiO、CaO、NaO、Feなどの不純物成分を少なくすれば、結晶粒界を構成するガラス成分を少なくでき、浸食元素が侵入しにくくなるので、好適には、SiO、CaO、NaO、Feなどの不純物成分を5重量%以下に留めることが好ましい。
【0024】
なお、不純物成分を5重量%以下とするためには、予め高純度のMgO、Alの一次原料を使用するとともに、製造工程において不純物の混入を防止すれば良い。
【0025】
また、MgOとAlの組成比率を種々変更した場合、理論定比では言うまでもなくMgAl結晶のみが存在するが、理論定比よりMgOを多く含有させた組成側ではMgO+MgAlの二相結晶構造、その反対でAlを多く含有した組成側ではAl+MgAlの二相結晶構造となる。結晶構造中にMgOが存在したものでは、たとえMgAlとの複合結晶構造となっていても、先に述べた理由により、耐食性が悪くなることを知見し、セラミックスの結晶構造がMgAlとAlの結晶の内、少なくても一種以上を含む結晶構造であることを限定した。
【0026】
なお、これらの結晶相は、X線回折により容易に分析することができる。そして本発明において、MgAlとAlの結晶の内、少なくとも一種以上を含む結晶構造とは、MgAlのみの結晶構造 MgAl+Alの二相結晶構造、Alのみの結晶構造の内いずれかの結晶構造をとるということを意味する。そして、これら以外の結晶相のピークは実質的に存在しないことが好ましい。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施形態を説明する。
【0028】
図1に示すように、本発明の保護管は、先端の閉じた管状体であり、封止部に図2に示すようなインナーカップ5を設置し二重構造としている。この保護管1は図3に示すように、ゴミ焼却灰溶融炉12中に加熱用ヒーター2や熱電対3を覆うように設置し、これらを保護することができる。
【0029】
特に本発明の保護管1は、加熱用ヒーターを固定する炉材が腐食され、ガラス成分が溶け出し、そのガラスがヒーターを伝わってしたたり落ち、保護管封止部に溜まった場合、まずインナーカップ5でそのガラスを受け、保護管本体の封止部と直接接触を防ぐため、保護管本体封止部が直接的に著しく腐食されるのを防止することができる。また、外面からの著しい腐食により、保護管本体の肉厚が減少し、仮に貫通孔が発生したとしても、ヒーターや熱電対に即時にダメージを与えない。
【0030】
保護管1やインナーカップ5の肉厚tは、耐熱衝撃性や熱効率等の点からは薄い方が好ましいが、保護性や製造上の点からは一般的に3mm以上20mm以下とした方が良く、6mm〜12mm程度が最も良い。
【0031】
インナーカップ5の形状としては、保護管1の内面形状に合致するとともに底部の肉厚を厚くしたものに特定され、図2(a)に示すものは、腐食を受けやすい底部の肉厚を局部的に厚くしたものである。ヒーター保持炉材からの溶融物は、通常ヒーターを伝わって保護管封止部に溜まるが、保護管内側面を伝わって落下する場合は、図2(b)に示すものを用いれば保護管とインナーカップとの間へ溶融物が侵入しにくくなる為効果的である。図2(c)は取り替えを容易にする場合の一例であり、保護管本体とインナーカップの接触面積を少なく設計したものである。
【0032】
インナーカップは、保護管封止部に収まる大きさでヒーターを伝わって落ちてくるガラス成分を貯留でき、外部腐食により保護管本体の封止部に貫通孔が発生したとき、炉内腐食性ガスを遮断できる形状であり、内面形状に合致するとともに底部の肉厚を厚くした形状に特定される。
【0033】
さらに、インナーカップ5は保護管1本体に接着してもしなくてもどちらでもかまわないが、接着をせずに脱着可能としておけば、取り替えが容易である。
【0034】
この二重構造を有した保護管は、従来保護管に比べ優れた耐食性を有している為、長期間安定して使用することができる。また、本発明の保護管は、上述したゴミ焼却灰の溶融炉12に限らず、金属溶融炉、高炉等のさまざまな溶融炉において、ヒーターや各種センサーを保護するための保護管として用いることができる。また、保護管以外にもセラミックス磁器の平均結晶粒径や気孔率などを適切に調整して、各種炉壁材や保持具材等耐熱性・耐食性を要求されるさまざまな部位に用いることができる。
【0035】
【実施例】
実施例1
ゴミ焼却灰溶融炉内でヒーター保持用の炉材が溶融し、ガラス成分と接触することを想定し、さまざまなセラミックス材料を製作し、ガラス成分との反応試験を行った。
【0036】
まずガラス成分として、成分がSi、Ca、Na、Al等からなるガラス系原料を乾式加圧成形機により直径12mm×1mmで重さ0.3gのタブレットを作製した。
【0037】
次に、表1に示す各種セラミックスで直径30mm×10mmのタブレット試験片を乾式加圧成形の後、1600℃以上の温度で適正雰囲気中にて焼成し作製した。各試験片にはガラスタブレットを入れるための座繰り穴(直径13mm×深さ1mm)を予め形成してから焼成した為、ガラスタブレットとの接触面は焼き肌面となっている。 各種セラミックスの特性値は以下の方法により測定した。
【0038】
結晶相は、X線回折装置を用い、条件は、Cuの管球を用いて電圧50kV、電流200mAとし、測定範囲は2θ=10゜〜90゜でフルスケール3×10〜10×10cpsとして分析した。その結果、MgAl(Spinel)の結晶相をS、MgO(Periclace)の結晶相をP、Al(Corundom)の結晶相をCとした。
【0039】
不純物は、ICP分析により、SiO、CaO、NaO、Fe成分について、定量分析を行い、その合計量を求めた。
【0040】
結晶粒径は、破断面のSEM写真を500倍〜1000倍程度で撮影し、この写真 からコード法を用いて測定した。
【0041】
嵩比重、気孔率、(3点)曲げ強度はJIS法に基づいて試験・測定した。
【0042】
反応試験は、それぞれのセラミックス試験片の座繰り穴にガラスタブレットを置き、大気中1450℃で50時間の熱処理を加えた。
【0043】
その後、各試験片について外観を目視で観察し、溶融あるいはクラックの有無を調べた。また、各試験片を切断し研磨した断面について、SEM(50倍〜200倍程度)でクラックの有無を調べ、波長分散型EPMA分析装置で、加速電圧15kV、プローブ電流2.0×10−7Aで、Si、Ca、Na、の各元素の検出を行いマッピング形式で出力した後、これら元素の拡散深さ(反応層)を調べた。
【0044】
これらの結果は、表1、2に示す通りである。なお表中において、クラック、溶融、反応層があるものは×、無いものは○で示した。反応層の判定方法としては、セラミックス表面より0.3mm以上のCa元素の拡散が認められたものは×、0.3mm以下の拡散は○として表示した。
【0045】
表1、2の結果から、SiC、Si、ZrOでは溶融またはクラックが発生していることから、インナーカップ用材料としては不適当であることが確認された。
【0046】
これに対し、No.4、5、6、7、8、10、11、12、14、15、16に示す本発明のMgOスピネルまたはAlを主成分とするセラミックスでは、溶融・クラックの発生は無く、ガラス成分との反応層も認められないことから、インナーカップ用材料として問題なく使用できることがわかる。
【0047】
【表1】
Figure 0003634963
【0048】
【表2】
Figure 0003634963
【0049】
実施例2
本発明実施例として表1中のNo.3、12のセラミックスについて、ガラスタブレットと接触するセラミックス試験片の表面状態を、焼き肌、研削加工面、ラッピング加工面と各々3種類ずつ準備し、セラミックス表面状態と耐熱耐食性の関係を調べるため、それぞれの試験片を実施例1と同様な方法で熱処理して、クラック、溶融、Ca元素の拡散深さ(反応層)を調べた。結果を表3に示す。
【0050】
表中加工欄の無しとは、焼成後機械加工なしで焼き肌状態のもの、研削とは、番手#140のダイヤモンド砥石で焼き肌面より約0.3mm研削加工したもの、ラップとは、上記研削加工の後、アルミナ製定盤上で平均粒径10μmのGC砥粒を使い、粗加工を施した後、錫製定盤上で平均粒径1μmのダイヤモンド砥粒を使い仕上げ加工をし、合計約50μmのラッピング加工を施したことをそれぞれ示している。形状は実施例1と同様にした。また、反応層の判定方法としては、セラミック表面より0.3mm以上のCa元素拡散が認められたものは×、0.3mm以下の拡散は○で表示した。
【0051】
結果は表3の如く、No.3、12のセラミツクス表面状態は、加工無しの焼き肌面としたものが最も耐食性が高いことが分かった。
【0052】
【表3】
Figure 0003634963
【0053】
実施例3
本発明実施例として、インナーカップ表面を焼き肌面とした表2中No.3−1の仕様で製作し保護管封止部にセットしたものと、インナーカップをセットしないものとで比較試験を実施した。保護管本体材質はMgAlとして、外径180mm、内径160mm、肉厚tが10mm、長さ800mmの図1に示す保護管及びインナーカップを製作し、図2に示すゴミ焼却灰溶融炉12で実機試験を行い、温度1500℃における寿命を確認した。
【0054】
なお寿命は、実環境中に曝したとき、腐食により保護管にクラックまたは貫通孔等が発生しヒーター切れが起こり、ヒーター電流がゼロになるまでの時間を示している。
【0055】
結果を表4に示すように、本発明の二重構造を有する保護管を用いれば、ゴミ焼却灰溶融炉において4000時間に渡って使用可能である事が実証された。
【0056】
【表4】
Figure 0003634963
【0057】
【発明の効果】
以上のように本発明の二重構造の保護管によれば、ヒーター保持炉材の溶融物がヒーターを伝わって保護管封止部に落下した際、保護管封止部の著しい腐食のために発生する貫通孔の発生を最小限にくい止めることができる。また、保護管封止部内面の腐食が軽度の場合は、腐食を受けたインナーカップのみを新規品に交換し、保護管本体は継続使用できるので経済的である。さらに保護管外面から異常な腐食を受け貫通孔が発生した場合でも、保護管内側に設置したインナーカップで腐食性ガスの侵入を遮断し、瞬時にヒーターやセンサーがダメージを受けることを防止することができる。
【0058】
この様に、本発明の二重構造保護管を、各種溶融炉のセンサーまたはヒーター等をプロテクトする保護管として用いれば、センサーまたはヒーターなどの寿命を長くすることができ、ひいては溶融炉を長期に渡って稼動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の耐熱耐食性保護管を示す断面図である。
【図2】本発明の耐熱耐食性保護管に用いるインナーカップのさまざまな実施形態を示す図である。
【図3】本発明の耐熱耐食性保護管を用いるゴミ焼却灰溶融炉を示す概略図である。
【図4】保護管とヒーターの設置状況を示す断面図である。
【符号の説明】
1;保護管
2;加熱用ヒーター
3;熱電対
5;インナーカップ
11;焼却灰
12;溶融炉

Claims (4)

  1. ヒーターやセンサー等を保護するための片側を封止したセラミックス製保護管であって、上記封止部の内側に、内面形状に合致するとともに底部の肉厚を厚くしたAl またはMgAl の少なくとも一種以上の結晶相を有するセラミックスからなるインナーカップを配置したことを特徴とする耐熱耐食性保護管。
  2. 上記インナーカップが脱着可能であることを特徴とする請求項1記載の耐熱耐食性保護管。
  3. 上記インナーカップの表面を焼き肌面で形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の耐熱耐食性保護管。
  4. 上記インナーカップが28.6重量%以下のMgOと71.4重量%以上のAl を含有してなり、MgAl 、Al のうち少なくとも一種以上の結晶相を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐熱耐食性保護管。
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