JP3634752B2 - 樹脂成形体 - Google Patents

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体、特に、樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料からなる成形体は、一般に優れた電気絶縁性を示すことから、電気・電子部品分野において広く用いられている。ところが、樹脂材料そのものを成形して得られた電気・電子部品材料は、一般に高い電気絶縁性を有するために帯電し易く、塵埃の付着或いは放電により集積回路などの電子部品へダメージを与える場合がある等の不具合がある。このため、半導体製造分野等において用いられる樹脂成形体は、通常、各種の手法により微弱な導電性が付与されている。
【0003】
樹脂成形体に対して導電性を付与するための最も簡易な手法として、樹脂成形体に対して界面活性剤溶液を塗布する手法が知られている。しかし、この手法は、既に製造された樹脂成形体に対して別工程で界面活性剤溶液を別途塗布することになるため、樹脂材料の成形工程に加えて界面活性剤溶液の塗布工程が追加的に必要になる。また、このような手法により得られる樹脂成形体の導電性は、湿度の影響を受けやすく、樹脂成形体の表面が湿り易い状態(即ち、高湿状態)下では所要の導電性を発揮し易いものの、表面が湿り難い状態(即ち、乾燥状態)下では必要な導電性を発揮しにくい。さらに、この手法により得られた樹脂成形体は、塗布された界面活性剤が成形体の内部に吸収されたり摩擦によって表面から除去されてしまうことが多く、経時的な導電性の低下が避けられない。このため、このような樹脂成形体は、導電性を長期間維持するのが困難であるばかりか、除去された界面活性剤により半導体製造工程においてコンタミネーションを引き起こす可能性もある。
【0004】
そこで、最近は、上述のような界面活性剤溶液の塗布による事後的な導電性付与手法に代えて、樹脂成形体そのものに当初から導電性を付与する試みがなされている。ここでは、樹脂材料に対して予め導電性付与材を添加して混合または練和し、そのような樹脂材料を所要の形状に成形することにより導電性を有する樹脂成形体を実現している。この際に用いられる導電性付与材は、通常、界面活性剤などの帯電防止剤、または金属材料や炭素材料などの導電性フィラーである。
【0005】
ここで、導電性付与材として界面活性剤などの帯電防止剤を選択した場合は、帯電防止剤が徐々に樹脂成形体の内部から表面に移行することになるため、樹脂成形体が導電性を発現するまでに長時間を要する。また、帯電防止剤による効果は樹脂材料の種類により異なるため、樹脂材料のガラス転移温度や結晶性および樹脂材料との相溶性などを考慮しつつ樹脂材料に適した帯電防止剤を選択する必要がある。さらに、樹脂成形体の表面に移行した帯電防止剤は、上述のような塗布手法の場合と同様に、摩擦により除去されてしまうことが多く、結果的に半導体製造工程などにおいてコンタミネーションを引き起こす可能性もある。
【0006】
これに対し、導電性フィラーは、適量を樹脂材料と混合するだけで樹脂成形体に対して速やかに導電性を付与することができ、また、帯電防止剤の場合とは異なり樹脂材料との組合せを考慮する必要が無いため(すなわち、各種の樹脂材料に対して汎用性を有するため)、帯電防止剤を用いる場合に比べて樹脂成形体に対して安定な導電性を容易に付与することができる。
【0007】
ところで、導電性フィラーを含む樹脂成形体として、特開昭63−53017号公報には、64〜80体積%の樹脂と36〜20体積%の導電性物質とを含む樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形体であって、1,000V以下の電圧を印加することにより所望の抵抗値を達成したものが記載されている。ここで用いられる導電性物質は、金属、金属酸化物および炭素等の電気良伝導体の粒子若しくは繊維あるいはこれらの混合物であり、その比重は通常1以上であるものと考えられることから、その樹脂成形体は少なくとも20重量%の導電性物質を含むものと考えられる。
【0008】
また、特開昭62−110917号には、導電性物質を含有する重合体(樹脂材料)から形成される線状体(芯体)に絶縁性重合体からなる被覆層を配置した複合線状体に対して10kV以下の高電圧による処理を施した導電性複合線状体、すなわち樹脂成形体が記載されている。ここで用いられている導電性物質は、例えばカーボンブラックであり、その使用量は、例えば重合体重量に対して20〜200重量%である。
【0009】
しかしながら、導電性フィラーは樹脂材料に比べて高価である。例えば、樹脂成形体を製造するために広く用いられているポリプロピレン樹脂および変性ポリフェニレンオキサイド樹脂の日本国内における価格は、本願出願時頃においてそれぞれ概ね100円/kgおよび1,000円/kgであるのに対し、導電性物質として用いられるピッチ系炭素繊維およびカーボンブラックの同時期における日本国内における価格は、それぞれ概ね3,000円/kgおよび500〜1,000円/kgである。したがって、上述の各公報に記載された樹脂成形体は、いずれも樹脂材料に対して多量の導電性フィラーを混合しているため、所要の導電性が付与され得るものの極めて高価になる。特に、樹脂成形体に対して金属に近い導電性を付与し、電磁波に対するシールド性を高める必要がある場合は、樹脂材料に対して添加すべき導電性フィラーの量が多量になるため、そのような樹脂成形体は他のものに比べて著しく高価になる。また、この場合は、樹脂成形体に含まれる多量の導電性フィラーが樹脂材料によって本来的に達成される各種の特性を阻害する可能性があり、また、樹脂成形体から導電性フィラーが脱落し易くなってコンタミネーションを引き起こすおそれもある。
【0010】
さらに、上述の特開昭63−53017号公報に記載の樹脂成形体は、多量の導電性フィラーを含んでいるため、その色調が導電性フィラーの色彩の影響を強く受ける。特に、当該公報の実施例に記載されている樹脂成形体は、導電性フィラーとして多量のカーボンファイバーやグラファイトパウダーを含んでいるため、色彩が自ずと黒色になり、それ自体に所望の色彩を自由に付与するのは極めて困難である。一方、特開昭62−110917号公報に記載の樹脂成形体は、他の非導電性繊維と調和する色彩を実現するために、芯体に対してそのような色彩を実現するための被覆層を配置している結果、芯体と被覆層との2層構造になり、構成が複雑である。
【0011】
本発明の目的は、導電性フィラーの添加量を抑制しつつ、樹脂成形体の導電性を高めること、特に、表面抵抗を低下させることにある。
【0012】
本発明の他の目的は、導電性フィラーの添加量が抑制されているにも拘わらず高い導電性、特に小さな表面抵抗を示し、しかも色彩を付与された樹脂成形体を実現することにある。
【発明の開示】
【0013】
本発明に係る樹脂成形体は、樹脂材料からなるマトリックスと、当該マトリックス内に分散された導電性フィラーとを含み、導電性フィラーの含有量が20重量%未満でありかつ20kV以上マトリックスの絶縁破壊電圧未満の電圧の印加処理が施されており、樹脂材料の軟化点に加熱処理して室温まで冷却した後の表面抵抗が加熱処理する前の表面抵抗の100倍以上である。なお、導電性フィラーの含有量は、例えば、1.0重量%以上16重量%以下である。また、ここで用いられる導電性フィラーは、例えば、そのフィラー群電気抵抗値が10Ωcm以下10−2Ωcm以上のものである。また、導電性フィラーは、例えば繊維状のものである。この場合、導電性フィラーの平均繊維径は、例えば0.002μm以上15μm以下である。また、樹脂成形体中におけるこの導電性フィラーの平均残存アスペクト比は、例えば10以上100,000以下である。また、本発明の樹脂成形体は、例えば、導電性フィラーと共にマトリックス内に分散された着色材をさらに含んでいる。この場合、導電性フィラーは、例えば炭素繊維および黒鉛繊維のうちの少なくとも一つである。また、着色材を含む本発明の樹脂成形体は、導電性フィラーおよび着色材と共にマトリックス内に分散された、導電性フィラーの色彩を隠蔽するための隠蔽材をさらに含んでいてもよい。
【0014】
このような本発明の樹脂成形体の表面抵抗は、通常、10Ω/□以上1012Ω/□以下である。また、この樹脂成形体は、加熱処理の後に、20kV以上マトリックスの絶縁破壊電圧未満の電圧の印加処理をさらに施した場合の表面抵抗が、通常、当該電圧の印加処理をさらに施す前の表面抵抗の1/100以下である。
【0015】
本発明の樹脂成形体は、所定の電圧の印加処理が施されているため、同量の導電性フィラーを含む他の樹脂成形体に比べて高い導電性、特に、小さな表面抵抗を示し得る。換言すると、この樹脂成形体は、そこに含まれる導電性フィラーの含有量から通常期待できるよりも高い導電性、特に、小さな表面抵抗を示し得る。また、この樹脂成形体は、導電性フィラーの含有量が上述の範囲に規制されているため、マトリックス内に着色材が分散されている場合は当該着色材の色彩に応じた色彩を呈し得る。
【0016】
本発明に係る樹脂成形体の製造方法は、樹脂材料と導電性フィラーとを含みかつ導電性フィラーの含有量が20重量%未満に設定された成形材料を調製する工程と、成形材料を所定の形状に成形する工程と、成形された成形材料に対して20kV以上樹脂材料の絶縁破壊電圧未満の電圧を印加する工程とを含んでいる。ここで、成形材料における導電性フィラーの含有量は、例えば1.0重量%以上16重量%以下に設定されている。また、成形材料は、例えば着色材をさらに含んでいる。また、この場合、成形材料は、導電性フィラーの色彩を隠蔽するための隠蔽材をさらに含んでいてもよい。
【0017】
このような本発明の製造方法は、導電性フィラーを含みかつ成形された成形材料に対して所定の電圧を印加しているため、従来の製造方法により同量の導電性フィラーを用いて製造されたものに比べて高い導電性、特に、小さな表面抵抗を示す樹脂成形体を実現し得る。また、この方法では、成形材料中の導電性フィラーの含有量を一定量以下に規制しているので、成形材料が着色材を含む場合は、当該着色材に応じた色彩を樹脂成形体に付与することができる。
【0018】
本発明の製造装置は、20重量%未満の割合で導電性フィラーを含みかつ表面抵抗が10Ω/□以上1012Ω/□以下の樹脂成形体を製造するためのものであり、導電性フィラーを20重量%未満の割合で含む樹脂成形体に対して20kV以上その絶縁破壊電圧未満の電圧を印加するための電圧印加部と、電圧印加部に向けて樹脂成形体を搬送するための搬送手段とを備えている。
【0019】
本発明の他の見地に係る製造装置は、同様に20重量%未満の割合で導電性フィラーを含みかつ表面抵抗が10Ω/□以上1012Ω/□以下の樹脂成形体を製造するためのものであって、導電性フィラーを20重量%未満の割合で含む樹脂成形体に対して20kV以上その絶縁破壊電圧未満の電圧を印加するための電極と、電極と樹脂成形体とが間隔を設けて対向するよう樹脂成形体を電極に向けて搬送するための搬送手段とを備えており、搬送手段が接地されている。
【0020】
ここで、電極は、例えば複数の針状電極からなる電極群である。この場合、製造装置は、例えば、電極と樹脂成形体との間隔を調整するための間隔調整装置をさらに備えている。一方、搬送手段は、例えば、多数の樹脂成形体を順次連続的に電極に向けて搬送可能である。
【0021】
本発明に係るこのような樹脂成形体の製造装置は、搬送手段により電圧印加部に向けて樹脂成形体を搬送し、そこで樹脂成形体に対して所定の電圧を印加することができるため、上述のような一定量以下の少量の導電性フィラーしか含まない樹脂成形体の導電性を高め、表面抵抗が10Ω/□以上1012Ω/□以下の樹脂成形体を製造することができる。
【0022】
本発明の他の目的および効果は、以下の詳細な説明において説明する。
【0023】
本発明の樹脂成形体は、主に、マトリックスと、当該マトリックス内に分散された導電性フィラーとを含んでいる。
【0024】
マトリックスは、樹脂材料からなるものであって所望の形状に成形されたものである。ここで用いられる樹脂材料は、特に限定されるものではなく、公知の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂である。
【0025】
ここで、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,ポリスチレン樹脂およびポリアクリルスチレン樹脂などの汎用プラスチック、アクリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS),ポリフェニルエーテル樹脂,ポリアセタール樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリブチレンテレフタレート樹脂,ポリエチレンテレフタレート樹脂,ナイロン6およびナイロン6,6などのエンジニアリングプラスチック、並びにポリエーテルエーテルケトン樹脂,ポリアミド樹脂,ポリイミド樹脂,ポリスルホン樹脂,4−フッ化エチレン−エチレン共重合体樹脂,ポリフッ化ビニリデン樹脂,4−フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂,ポリエーテルイミド樹脂,ポリエーテルサルフォン樹脂,ポリフェニレンサルファイド樹脂,変性ポリフェニレンオキサイド樹脂,ポリフェニレンエーテル樹脂および液晶ポリマーなどの超エンジニアリングプラスチックなどを挙げることができる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂および不飽和ポリエステル樹脂などを挙げることができる。
【0026】
一方、マトリックス中に分散されている導電性フィラーは、樹脂成形体に対して導電性を付与するために通常用いられるものであり、金属材料、炭素材料、金属材料がコートされた有機材料、金属材料がコートされた無機材料、炭素がコートされた無機材料または黒鉛がコートされた無機材料、若しくはこれらの群から任意に選択された2種以上のものの混合物である。
【0027】
ここで、金属材料としては、銀、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム、ステンレスおよび酸化錫などを例示することができる。炭素材料としては、ポリアクリロニトリル樹脂,ピッチ,カイノール樹脂,レーヨンおよびリグニンなどの炭素前駆体を焼成して得られる炭素、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック並びに黒鉛を例示することができる。金属材料がコートされた有機材料としては、ニッケルコートされた樹脂を例示することができる。金属材料がコートされた無機材料としては、ニッケルコートマイカ、銀コートガラス、アルミコートガラス、ニッケルメッキガラスおよびニッケルメッキ炭素などを例示することができる。炭素がコートされた無機材料としては、炭素がコートされたチタン酸カリウムを例示することができる。黒鉛がコートされた無機材料としては、黒鉛がコートされたチタン酸カリウムを例示することができる。
【0028】
また、上述の導電性フィラーは、粒状、フレーク状、ウイスカー状および繊維状などの各種のもの、またはこれらの任意の混合物であり、形状が特に限定されるものではない。例えば、粒状のものとしては、金属材料からなるものとして銀粉、銅粉、ニッケル粉、鉄粉、酸化錫粉を、また、金属材料がコートされた無機材料として銀コートガラスビーズを、さらに、炭素材料からなるものとしてカーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックを挙げることができる。また、フレーク状のものとして、アルミフレークやニッケルコートマイカを挙げることができる。さらに、ウイスカー状のものとしては、炭素がコートされた無機材料として炭素がコートされたチタン酸カリウムウイスカーを、また、炭素材料からなるものとして黒鉛ウイスカーを挙げることができる。さらに、繊維状のものとしては、金属材料からなるものとしてアルミニウム,銅およびステンレスなどの長繊維や短繊維を、また、金属材料がコートされた無機材料からなるものとしてアルミコートガラス繊維やニッケルメッキガラス繊維を、さらに、金属材料がコートされた有機材料からなるものとしてニッケルコートされた樹脂繊維を、さらに、炭素材料からなるものとしてポリアクリロニトリル系炭素繊維,等方性ピッチ系炭素繊維,異方性ピッチ系炭素繊維,カイノール樹脂系炭素繊維,レーヨン系炭素繊維およびリグニン系炭素繊維等の炭素繊維並びに黒鉛繊維をそれぞれ例示することができる。
【0029】
なお、本発明で用いられる導電性フィラーとして好ましいものは、より少ない使用量で所要の導電性、特に小さい表面抵抗を樹脂成形体に実現することができることから、フィラー群電気抵抗値が10Ωcm以下10−2Ωcm以上のもの、より好ましくは10Ωcm以下10−2Ωcm以上のものである。ここで、フィラー群電気抵抗値とは、樹脂成形体に含まれる導電性フィラーの個々の片の電気抵抗値ではなく、導電性フィラーの群(集合体)としての電気抵抗値であり、次のようにして求められるものをいう。先ず、中心部に直径0.8cmの貫通孔を有する電気絶縁体を用意し、その貫通孔の一端を銅製の電極で封止する。そして、貫通孔内に0.5gの導電性フィラー群を充填し、貫通孔の他端から銅製の押し棒を挿入して20kgf/cmの圧力を加えて導電性フィラー群を高さxcmの円柱状に成形する。この状態で電極と押し棒との間に測定器を接続し、貫通孔内で圧縮された導電性フィラー群の電気抵抗値を測定する。フィラー群電気抵抗値は、測定された電気抵抗値に導電性フィラー群の成形体の端面の面積(すなわち、0.4πcm)を掛け、その値を高さxcmで割ると体積抵抗値(Ωcm)として求めることができる。なお、導電性フィラー群の電気抵抗値を測定する際に用いられる測定器は、ブランク時の電気抵抗値、すなわち、電極と押し棒とを直接に接触させた場合の電気抵抗値をキャンセルできるものが好ましく、例えば、アドバンテスト株式会社のデジタルマルチメーター“R6552”を挙げることができる。以下、フィラー群電気抵抗値と言う場合は、このようにして求めた導電性フィラーの集合体の体積抵抗値を言うものとする。
【0030】
また、導電性フィラーとして好ましいものは、繊維状のもの、特に、平均繊維径が0.002μm以上15μm以下の極細繊維状のものである。このような繊維状の導電性フィラーを用いた場合は、より少ない使用量で所要の導電性、特に小さい表面抵抗を樹脂成形体に実現することができ、しかも、後述する着色材による所望の色彩、特に鮮明な色彩を樹脂成形体に対して自由に付与し易くなる。なお、平均繊維径が0.002μm以上2μm以下の超極細繊維状の導電性フィラーを用いた場合は、仮にそれが黒色の炭素材料からなる炭素繊維や黒鉛繊維などであったとしても、後述する着色材のみにより、すなわち、後述する隠蔽材を用いなくても、鮮明な色彩を樹脂成形体に対して付与し易くなる。
【0031】
なお、平均繊維径が0.002μm程度の超極細繊維状の導電性フィラーとしては、例えば炭素繊維の一種であるハイペリオン(ハイペリオン社の商品名)を挙げることができる。
【0032】
導電性フィラーとして、上述のような繊維状のものが用いられている場合、本発明の樹脂成形体は、当該導電性フィラーの平均残存アスペクト比が10以上100,000以下になるよう製造されているのが好ましく、15以上10,000以下になるよう製造されているのがより好ましい。この平均残存アスペクト比が製造過程において10未満になった場合は、導電性フィラーの添加量を増やさないと所望の導電性、特に、小さな表面抵抗を達成できないおそれがある。逆に、導電性フィラーの平均残存アスペクト比が100,000を超える樹脂成形体は、一般に製造が困難である。なお、ここでいう残存アスペクト比は、上述の樹脂材料に対して混合する前の導電性フィラーのアスペクト比ではなく、樹脂材料に対して混合されかつ樹脂材料が成形された後の導電性フィラーのアスペクト比(繊維長/繊維径)を意味している。因みに、この残存アスペクト比は、例えば、樹脂成形体を構成する樹脂材料を熱分解させるか又は溶媒に溶解させることにより、樹脂成形体から導電性フィラーを分離し、通常はそのうちの数百本の平均長さおよび平均径を光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡で測定すると、それらの値に基づいて求めることができる。
【0033】
また、本発明の樹脂成形体は、上述の導電性フィラーと共にマトリックス中に分散された着色材をさらに含んでいてもよい。この着色材は、本発明の樹脂成形体に所望の色彩を付与するためのものであって非導電性のものであれば種類が特に限定されるものではなく、各種の有機顔料や無機顔料である。好ましく用いられる有機顔料の具体例としては、ナフトールレッド、縮合アゾエローおよび縮合アゾレッドなどのアゾ系顔料、銅フタロシアニンブルーや銅フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料、ジアンスラキノリルレッド、チオインジゴ、ベリノンオレンジ、ベリレンスカーレット、キナクリドンマゼンタ、イソインドリノンエロー、キノフタロンエロー、ピロールレッドなどの縮合多環顔料等を例示することができる。また、好ましく用いられる無機顔料の具体例としては、亜鉛華、酸化チタン、弁柄、酸化クロム、コバルトグリーン、コバルトブルーなどの酸化物顔料、カドミウムエローやカドミウムレッドなどの硫化物顔料、群青などの珪酸塩顔料、炭酸カルシウムなどの炭酸塩顔料、マンガンバイオレットなどのりん酸塩顔料等を例示することができる。これらの着色材は、利用する樹脂材料との適合性を考慮しつつ適宜選択して用いられるのが好ましく、また、所望の色彩を達成するために適宜混合して用いられてもよい。
【0034】
さらに、本発明の樹脂成形体は、上述の着色材を含む場合、導電性フィラーおよび着色材と共にマトリックス中に分散された、導電性フィラーの色彩を隠蔽するための隠蔽材をさらに含んでいてもよい。ここで用いられる隠蔽材は、着色材により付与される樹脂成形体の色彩が導電性フィラーの色彩により影響を受けるのを抑制し、樹脂成形体が着色材による鮮やかな色彩を呈するようにするためのものであり、通常、非導電性で白色の粒状のものが好ましい。具体的には、例えば、酸化チタン、マイカ、タルク、炭酸カルシウムが用いられる。
【0035】
本発明の樹脂成形体において、上述の導電性フィラーの含有量は、20重量%未満、好ましくは0.01重量%以上20重量%未満、より好ましくは0.1重量%以上18重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以上16重量%以下になるよう設定されている。この含有量が20重量%以上の場合は、樹脂成形体がコスト高となるばかりか、樹脂成形体から導電性フィラーが脱落してコンタミネーションを引き起こすおそれがある。また、樹脂成形体の色彩が導電性フィラーの色彩に強く影響され、隠蔽材を用いた場合であっても樹脂成形体を着色材の色彩に対応した所望の色彩に設定するのが困難になる。さらに、導電性フィラーが粒状の場合は、樹脂成形体の機械的強度が低下するおそれがある。一方、導電性フィラーが繊維状の場合は、樹脂成形体に反りが生じ易くなり、また、樹脂成形体の表面粗度が高まり、表面平滑性が損なわれるおそれがある。
【0036】
また、マトリックス中における着色材および隠蔽材の含有量は、特に限定されるものではなく、樹脂成形体に付与する色彩の彩度や明度等に応じて任意に設定することができるが、通常は、マトリックスを構成する樹脂材料により付与される樹脂成形体の各種特性が阻害されない程度に設定するのが好ましい。具体的には、着色材については樹脂成形体重量の0.1重量%以上5.0重量%以下になるよう設定するのが好ましく、0.2重量%以上2.0重量%以下になるよう設定するのがより好ましい。また、隠蔽材は、樹脂成形体重量の0.1重量%以上10重量%以下になるよう設定するのが好ましく、0.2重量%以上5.0重量%以下になるよう設定するのがより好ましい。
【0037】
因みに、着色材または隠蔽材として用いられる酸化チタンは、光酸化触媒として機能し得るので、それを多量に含む樹脂成形体は、光の照射下で酸化劣化し易くなる。したがって、酸化チタンを着色材または隠蔽材として用いる場合、その含有量は可能な限り少量に、具体的には樹脂成形体重量の0.1〜2.0重量%程度に留めるのが好ましい。
【0038】
本発明の樹脂成形体は、電圧の印加処理が施されている。この印加処理は、導電性フィラー並びに必要に応じて着色材および隠蔽材を含みかつ成形された、上述の樹脂材料からなるマトリックスに対する処理である。
【0039】
この処理で印加される電圧は、通常、20kV以上、樹脂成形体のマトリックス、すなわち当該マトリックスを構成する樹脂材料の絶縁破壊電圧未満、好ましくは20kV以上50kV以下に設定する。印加電圧が20kV未満の場合は、本発明の樹脂成形体の導電性が導電性フィラーの含有割合に応じた程度の導電性以上に高まらない場合がある。また、導電性を高めることができる場合があるとしても、その再現性の点において問題がある。逆に、印加電圧がマトリックス(樹脂材料)の絶縁破壊電圧以上の場合は、樹脂成形体が損壊してしまうおそれがある。なお、上述の絶縁破壊電圧は、各樹脂材料に固有の値であって各種の便覧などの文献に記載されており、そのような記載内容を参考にすることができる。因みに、各種文献に示されている絶縁破壊電圧は、単位が通常MV/mで示されており、樹脂材料を用いて形成した厚さ1mの成形体についての値であるため、本発明では、樹脂成形体の厚さに応じた絶縁破壊電圧値を適宜計算するのが好ましい。
【0040】
また、この処理に要する時間は特に限定されるものではないが、通常は、1〜600秒程度、好ましくは5〜60秒程度である。600秒を超えて電圧を印加しても、樹脂成形体の導電性は一定以上に高まらず、却って不経済である。
【0041】
次に、本発明の樹脂成形体の製造方法について説明する。
先ず、上述の樹脂材料、導電性フィラー並びに必要に応じて着色材および隠蔽材を混合し、成形材料を調製する。ここで、導電性フィラーの混合量は、成形材料中における割合が20重量%未満、好ましくは0.01重量%以上20重量%未満、より好ましくは0.1重量%以上18重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以上16重量%以下になるよう設定する。また、着色材を用いる場合、その混合量は、成形材料中における割合が0.1重量%以上5.0重量%以下、好ましくは0.2重量%以上2.0重量%以下になるよう設定する。さらに、隠蔽材を用いる場合、その混合量は、成形材料中における割合が0.1重量%以上10重量%以下、好ましくは0.2重量%以上5.0重量%以下になるよう設定する。
【0042】
樹脂材料と導電性フィラーとの混合方法は、特に限定されるものではなく、例えば、樹脂材料に対し、公知の各種のフィーダー等を用いて導電性フィラーを供給して混練する方法を採用することができる。この際、樹脂材料は、導電性フィラーの分散性を高めるため、必要に応じて予め粘度調整されていてもよい。
【0043】
なお、成形材料が着色材および隠蔽材を含む場合、これらは導電性フィラーと同時に、上述の方法により樹脂材料に対して混合することができる。この場合、着色材および隠蔽材は、導電性フィラーと共に樹脂材料中に分散し、成形材料を、利用した着色材の種類に応じた色彩に着色することになる。
【0044】
次に、得られた成形材料を所望の形状、例えば板状や繊維状等に成形し、樹脂成形体を得る。ここでは、加圧成形法、射出成形法、押出し成形法等の公知の各種の成形法を採用することができる。なお、成形材料が着色材を含む場合、ここで得られる樹脂成形体は、利用した着色材に応じた色彩を呈することになる。特に、成形材料が隠蔽材を含む場合は、それが導電性フィラーの色彩を効果的に隠蔽することになるので、樹脂成形体は、利用した着色材に応じた鮮やかな色彩を呈することになる。
【0045】
次に、得られた樹脂成形体に対し、電圧の印加処理を施す。ここでは、通常、樹脂成形体を接地し、その樹脂成形体の上方に電極を配置して、当該電極に交流電圧または直流電圧を印加する。因みに、交流電圧を印加する場合、この周波数は1MHz以下である場合に導電性の改善効果、特に、表面抵抗の低下効果が高まり易い。一方、直流電圧を印加する場合、電極に印加する電圧の極性は、正または負のいずれでもよいが、一般には正に設定する方が導電性の改善効果、特に、表面抵抗の低下効果が高まり易い。
【0046】
図1に、この際に用いられる電圧印加装置、すなわち、本発明に係る樹脂成形体の処理装置の一例の概略構成を示す。図において、電圧印加装置1は、電圧印加部2と、樹脂成形体Mの搬送装置3、すなわち搬送手段とを主に備えている。
【0047】
電圧印加部2は、電極部4と、電極部4に接続された高電圧発生装置6とを主に備えている。電極部4は、搬送装置3側が開口するハウジング5と、ハウジング5内において下方に向けて設けられた複数の針状電極からなる電極群5aとを有している。ハウジング5は、昇降装置5bにより上下方向に移動可能であり、これにより樹脂成形体Mと電極群5aの先端部との間隔を調整可能に設定されている。また、ハウジング5内には、図示しないオゾン除去装置に繋がるエア吸引装置が配置されている。
【0048】
高電圧発生装置6は、過電流防止機能を備えた交流または直流の高電圧発生装置であってスライダックまたはサイリスタレギュレーターを内蔵しており、発生可能な電圧値を調整可能に構成されている。
【0049】
一方、搬送装置3は、電極部4の下方に多数の樹脂成形体Mを連続的に順次移送して供給するためのものであり、無端ベルト7を備えたベルトコンベア式に構成されている。無端ベルト7は、例えば金属ベルトや導電性を有する樹脂ベルトであり、接地(アース)されている。また、無端ベルト7は、例えば、一定時間毎に一定量作動するステッピングモーター8によって図の矢印方向に駆動可能に設定されており、移送中の樹脂成形体Mを一定時間(通常は1〜600秒程度、好ましくは5〜60秒程度の間)電極部4の下方に止めることができる。なお、ステッピングモーター8は、樹脂成形体Mに対して電圧の印加処理を施すべき時間に応じて作動タイミングが変更可能に設定されている。
【0050】
また、ステッピングモーター8は、制御装置9を介して電圧印加部2の高電圧発生装置6に接続されている。この制御装置9は、ステッピングモーター8が樹脂成形体Mを電極部4の下方に移送したときに電気信号(制御信号)を電圧印加部2に送り、高電圧発生装置6を一定時間作動させるように設定されている。
【0051】
このような電圧印加装置1を用いて樹脂成形体Mに対して電圧の印加処理を施す場合は、先ず、電圧印加部2の高電圧発生装置6を作動させ、そこのスライダックまたはサイリスタレギュレーターを操作して発生電圧、すなわち樹脂成形体Mに対する印加電圧を設定する。ここで設定する電圧値は、上述の通り20kV以上樹脂成形体Mを構成する樹脂材料の絶縁破壊電圧未満、好ましくは20kV以上50kV以下である。
【0052】
また、搬送装置3のステッピングモーター8を作動させ、無端ベルト7上に載置された多数の樹脂成形体Mを連続的にかつ順に電極部4の下方に移送する。ステッピングモーター8の作動により、樹脂成形体Mが電極部4の下方に移送されると、制御装置9が高電圧発生装置6に対して作動指令を送る。これにより、電極部4の下方に配置された樹脂成形体Mには、予め設定しておいた高電圧発生装置6からの高電圧が一定時間、すなわち、ステッピングモーター8の上述の停止時間の間、電極群5aにより印加される。この電圧印加時に発生するオゾンは、ハウジング5からエア吸引装置により吸引され、オゾン除去装置により処理される。
【0053】
ステッピングモーター8が次に作動すると、電圧の印加処理が施された樹脂成形体Mは無端ベルト7により電極部4外(図の右方)に移送され、電極部4の下方には処理された樹脂成形体Mの次に位置する樹脂成形体Mが続けて配置される。これにより、電圧印加装置1は、多数の樹脂成形体Mに対し、連続的にかつ順に電圧の印加処理を施すことができることになる。
【0054】
上述のような電圧の印加処理時において、電極群5aの先端部と樹脂成形体Mとの間隔は、昇降装置5bによってハウジング5の上下方向の位置を調整することにより、電圧の印加環境、印加電圧値、樹脂成形体の種類や形状および樹脂成形体中に含まれる導電性フィラーの種類や量などに応じて適宜設定するのが好ましい。例えば、空気中において30,000Vの電圧を印加する場合、当該間隔は、通常、20〜100mm、好ましくは30〜50mmの範囲に設定される。この間隔が20mm未満の場合は、過電流が流れ易くなるおそれがある。逆に、100mmを超えると、電圧の印加処理による効果が殆ど発現しなくなる可能性がある。
【0055】
なお、上述の電圧印加装置1は、樹脂成形体Mに対して電圧を印加するための電極群5aとして多数の針状電極からなるものを用いているが、当該電極群5aは、複数の半球状の電極や複数の平板状電極が配列されたものであってもよい。また、電極群5aに代えて、樹脂成形体Mの形状(大きさ)に合わせた1枚の平板状電極を用いた場合も同様に電圧の印加処理を実施することができる。
【0056】
また、上述の電圧印加装置1では、無端ベルト7側を接地し、それによって電極群5aから樹脂成形体Mに対して電圧を印加しているが、高電圧発生装置6に接続された、一対の平板状の電極間または複数の針状電極等かならる一対の電極群間に無端ベルト7によって搬送される樹脂成形体Mを非接触状態で挟み込むように構成した場合も本発明を同様に実施することができる。
【0057】
さらに、電圧印加装置1の高圧発生装置6は、例えば、高圧パルス発生器や衝撃電圧発生装置などを転用して構成することもできる。
【0058】
以上の工程を経て得られる本発明の樹脂成形体は、樹脂材料からなるマトリックス内に導電性フィラーが分散された他の樹脂成形体と比較した場合、そこに含まれる導電性フィラー量からは通常達成しにくい高い導電性、特に、小さな表面抵抗値を示す。すなわち、本発明の樹脂成形体は、導電性フィラーの含有量が20重量%未満に抑制されているにも拘わらず、半導体製造分野において一般に求められている10Ω/□以上1012Ω/□以下の範囲の表面抵抗、若しくは10−2Ω/□以上1013Ω/□以下の表面抵抗を示し得る。具体的には、例えばポリアクリロニトリル系炭素短繊維を導電性フィラーとして用いる場合は、その導電性フィラーの含有量がそれよりも数重量%(通常は3〜5重量%程度)多い樹脂成形体と同等の導電性または表面抵抗を示し得る。
【0059】
樹脂成形体は、通常、導電性フィラー同士が接触し得る確率が高い程導電性が高まり、導電性フィラーの含有量が少ないとその確率が小さくなるため導電性を発現しにくくなるのであるが、それにも拘わらず本発明の樹脂成形体が通常のものに比べて上述のような高い導電性を発揮する理由は、例えば、次のように考えることができる。樹脂材料からなるマトリックス内に導電性フィラーが分散された樹脂成形体においては、導電性フィラーと、その間に存在するマトリックス(すなわち樹脂材料)とから構成される多数の、若しくは無数のコンデンサの集合体が内部に形成されているものと考えられる。本発明の樹脂成形体は、電圧の印加処理が施されているため、このようなコンデンサを構成する導電性フィラー間においてマトリックスの絶縁破壊が生じ、その結果、電流の通路が形成されて導電性が高まっているものと推察される。
【0060】
このため、本発明の樹脂成形体は、高価な導電性フィラーの添加量を抑制しつつ、そのような導電性フィラーの添加量では通常達成できない高い導電性を発揮することができる。換言すると、この樹脂成形体は、導電性フィラーの含有量から通常期待できる導電性よりも高い導電性を発揮することができる。したがって、この樹脂成形体は、同等の導電性を発揮する他の樹脂成形体に比べて安価に提供することができる。
【0061】
本発明の樹脂成形体は、このような特有の効果を発揮する結果、導電性フィラーを含むこれまでの樹脂成形体では達成しにくかった電気抵抗値を実現することもできる。例えば、導電性フィラーとして炭素繊維を用いる場合、樹脂材料に対するその添加量を徐々に増加させて行くと、樹脂成形体は、添加量がある程度の量までは表面抵抗が1014〜1015Ω/□程度であって電気絶縁性を維持しているが、ある一定の添加量を超えると、添加量がごく僅かに変化しただけで樹脂成形体の導電性が極端に高まってしまい(すなわち、表面抵抗が極端に小さくなってしまい)、樹脂成形体の表面抵抗を半導体製造分野において一般に求められている10〜1012Ω/□程度の範囲に設定するのが極めて困難なことが知られている。本発明の樹脂成形体は、このような現象を発現する炭素繊維のような導電性フィラーを用いる場合であっても、その添加量と導電性との関係が緩やかに変化する範囲内でその添加量を設定するだけで、その添加量により通常達成できる導電性よりも高い導電性を実現することができるので、表面抵抗を10〜1012Ω/□程度の範囲、若しくは10−2〜1013Ω/□の範囲に設定するのが比較的容易になる。
【0062】
なお、本発明の樹脂成形体は、上述のような導電性フィラーによる導電性が付与されているため、帯電防止や埃の付着防止が求められる分野、例えば半導体製造用治具、ICトレー、キャリヤーなどの各種の用途に利用することができる。この場合、樹脂成形体は、上述のように着色材による各種の色彩が付与され得るので、色彩により用途や種類を区別することができる。例えば、ICトレーは、利用目的に応じて表面抵抗の異なる多種類のものを用意する場合があるが、本発明の樹脂成形体からなるICトレーは、表面抵抗の種類毎に色彩を変化させることができるので、電気・電子部品の製造工程等において多種類のものの中から必要なものを色彩に基づいて容易に識別することができる。
【0063】
また、本発明の樹脂成形体は、リサイクルして再度同様の樹脂成形体に再生することもできる。すなわち、本発明の樹脂成形体は、粉砕後に再度所望の形状に成形し、さらに既述の条件による電圧の印加処理を施すと、表面抵抗が小さな同様の樹脂成形体に再生され得る。因みに、樹脂成形体が着色材による色彩を付与されている場合、再生後の樹脂成形体には同様の色彩が反映され得る。なお、電圧の印加処理が施されている従来の樹脂成形体、特に、特開昭62−110917号に係る樹脂成形体は、上述のように芯体と被覆層との2層構造を有しているため、リサイクルして再度同様の樹脂成形体に再生するのは実質的に困難である。
【0064】
本発明の樹脂成形体を製造するために用いられる上述の電圧印加装置1は、20重量%未満の割合で導電性フィラーを含む樹脂材料からなる既存の樹脂成形体を処理するために用いることもできる。すなわち、電圧印加装置1を用いた、既存の樹脂成形体に対する上述のような電圧の印加処理は、当該既存の樹脂成形体の導電性を高めるための処理方法となり得る。この場合は、既存の樹脂成形体を搬送装置3により搬送し、電圧印加部2の電極部4において上述と同様の印加電圧、すなわち、20kV以上当該樹脂成形体を構成する樹脂材料の絶縁破壊電圧未満の印加電圧、好ましくは20kV以上50kV以下の印加電圧で当該樹脂成形体に対して電圧の印加処理を施す。この結果、当該既存の樹脂成形体は、処理前に示していた導電性よりも高い導電性、特に、小さな表面抵抗を示すようになる。
【0065】
本発明の樹脂成形体は、外観形態等において他の樹脂成形体と特に異なることが無いため、外観形態に基づいて他の樹脂成形体から識別するのは困難であるが、例えば次のような方法で他の樹脂成形体から判別することができる。
【0066】
(方法1)
予め表面抵抗が測定された樹脂成形体に対して熱重量分析を実施し、当該樹脂成形体に含まれる導電性フィラーの量と種類を分析する。そして、熱重量分析結果から判明した導電性フィラーの量が20重量%未満であり、しかも予め測定された樹脂成形体の表面抵抗がそのような導電性フィラー量では通常達成できないレベルである場合(すなわち、通常達成できる表面抵抗よりも小さい場合)、当該樹脂成形体は、本発明の樹脂成形体であると判定することができる。
【0067】
樹脂成形体に対して熱重量分析を実施する際は、通常、空気中において10℃/分程度の昇温速度で室温から1,000℃まで樹脂成形体を加熱し、その間の重量変化を調べる。加熱後の樹脂マトリックスが炭素を残さない場合、熱重量分析時における樹脂成形体の加熱は、窒素等の不活性ガス中で実施することもできる。
【0068】
図2に、15重量%の炭素繊維と15重量%の非導電性無機物とを含む、表面抵抗が1.4×10Ω/□のポリスルホン樹脂(加熱処理後に炭素を残す樹脂)からなる樹脂成形体についての熱重量分析結果を示す。なお、非導電性無機物は、隠蔽材として用いられる酸化チタンを含む、数種類の無機物の混合物である。図2に%で表示された数値は、変曲点間の重量減少を示している。図において、637.6〜763.5℃の範囲で14.4%の重量減少が認められ、これは樹脂成形体に含まれる炭素繊維の量と略一致していることがわかる。また、800℃での残留分は略15%であり、これは樹脂成形体に含まれる非導電性無機物の量と略一致していることがわかる。このような熱重量分析結果により、分析対象である樹脂成形体は、約15重量%の炭素材料系導電性フィラーと、約15重量%の非導電性無機物とを含むことがわかる。
【0069】
因みに、549.5〜637.6℃の範囲における29.5%の重量減少は、樹脂成形体のマトリックスを構成するポリスルホン樹脂の炭化によるものであり、燃焼速度が炭素繊維や他の炭素材料系の導電性フィラーに比べて著しく速いため、導電性フィラーである炭素繊維に起因するものでないことが容易に判別できる。
【0070】
なお、樹脂成形体に含まれる導電性フィラーが金属材料系のものである場合は、その導電性フィラーの酸化による重量増加が観測されることになる。したがって、熱重量分析結果において重量増加が認められた場合は、樹脂成形体が金属材料系の導電性フィラーを含んでいるものと推測することができる。
【0071】
この方法は、熱重量分析に代えてESCA(エレクトロンスペクトロスコピーフォーケミカルアナリシス)やEPMA(エレクトロンプローブマイクロアナライザー)を用いた分析を実施して樹脂成形体中に含まれる導電性フィラーの種類や量を推測した場合も同様に実施することができる。
【0072】
(方法2)
樹脂成形体を、それを構成する樹脂材料の軟化点またはそれ以上に加熱処理した後に室温まで冷却し、当該樹脂成形体について表面抵抗を測定する。本発明の樹脂成形体または本発明の方法により処理された樹脂成形体は、このような加熱処理により絶縁破壊部分が治癒され、加熱処理後の表面抵抗が加熱処理する前の表面抵抗に比べて大きくなる。より具体的には、本発明の樹脂成形体は、通常、加熱処理後の表面抵抗が加熱処理する前の表面抵抗の100倍以上になる。これに対し、本発明のものとは異なる樹脂成形体、すなわち、電圧の印加処理の履歴が無い樹脂成形体は、絶縁破壊部分を有していないため、上述のような加熱処理を施しても、表面抵抗が増加し難い。
【0073】
なお、上述のようにして加熱処理された本発明の樹脂成形体は、その後、既述の条件でさらに電圧の印加処理を施すと、表面抵抗が当該電圧の印加処理前の1/100以下になり得る。
【0074】
(方法3)
樹脂成形体が黒色系以外の色彩を有している場合において、その色彩が樹脂成形体の断面全体に渡って実質的に均一に現れており、しかもその表面抵抗が10〜1012Ω/□程度の範囲、若しくは10−2〜1013Ω/□である場合、その樹脂成形体は本発明の樹脂成形体の可能性がある。因みに、本発明で用いられるような炭素材料系の導電性フィラーを20重量%以上含む樹脂成形体は、全体が黒色を呈することになるため、着色材を含んでいても、当該着色材に応じた色彩を呈し得ない。また、樹脂成形体の表面部分にのみ色彩が付与されている場合(例えば、先に挙げた特開昭62−110917号公報に記載の樹脂成形体のような場合)は、当該樹脂成形体の断面全体に渡って均一な色彩は現れ得ない。
【0075】
(方法4)
樹脂成形体をアセトンや水で十分洗浄し、洗浄の前後の表面抵抗を比較する。本発明の樹脂成形体は、表面抵抗が洗浄の前後で変化しにくいが、他の樹脂成形体、特に、界面活性剤を用いて導電性が付与された樹脂成形体は、洗浄後の表面抵抗が著しく高くなる。したがって、樹脂成形体の洗浄前後の表面抵抗を測定することにより、樹脂成形体が本発明の樹脂成形体であるか否かを判別することができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。
実施例1
平均繊維径が7μmでありかつ平均アスペクト比が857のポリアクリロニトリル系炭素短繊維(三菱レーヨン株式会社の商品名“パイロフィル”)からなる、フィラー群電気抵抗値が0.06Ωcmの繊維群(導電性フィラー)を用意した。
【0077】
次に、樹脂材料であるポリフェニレンオキサイド樹脂(日本ゼネラルエレクトリック株式会社の商品名“ノリルPPO534”)に対して上述の繊維群、黄色の着色材(東洋化成株式会社の商品名“CB116”)、隠蔽材である酸化チタン(石原産業株式会社の商品名“CR60”)およびタルク(富士タルク株式会社の商品名“#1000”)をフィーダーを用いて供給して混合し、繊維群、着色材および隠蔽材を含む樹脂材料からなるペレット(成形材料)を調製した。なお、繊維群の混合割合は、ペレット中において6.0重量%になるよう設定した。また、着色材、酸化チタンおよびタルクの混合割合は、それぞれ1.0重量%、0.2重量%および3.0重量%になるよう設定した。このペレットは、着色材による黄色を呈していた。
【0078】
このペレットを、樹脂温度240℃、射出圧力1,200kg/cmおよび金型温度60℃の条件で住友重機械工業株式会社製のPROMAT射出成形機を用いて成形し、直径50mm、厚さ3mmの黄色の円板、すなわち樹脂成形体を得た。得られた円板の表面に銀ペーストを用いて一対の電極を形成し、当該電極間の電気抵抗を測定して円板の表面抵抗(Ω/□)を求めたところ、4×1015Ω/□であった。なお、以下、「表面抵抗」と言う場合は、このようにして測定した抵抗を言うものとする。
【0079】
また、円板中におけるポリアクリロニトリル系炭素繊維の平均残存アスペクト比は28.6であった。因みに、この平均残存アスペクト比は、円板を塩化メチレンに溶解してポリアクリロニトリル系炭素短繊維を分離し、そのうちの400本の平均長さと平均径とを光学顕微鏡で測定して算出したものである。
【0080】
次に、接地されたプレート上に得られた円板を載置し、当該円板の上方に多数の針状電極からなる電極群を配置した。なお、プレートと電極群との間隔は40mmに設定し、電極群が円板に直接触れないようにした。そして、電極群に対し、その極性がプラスになるよう30,000Vの直流電圧を10秒間印加した。このようにして電圧の印加処理が施された円板(本発明に係る樹脂成形体)の表面抵抗は1×1012Ω/□であり、電圧の印加処理前に比べて大幅に低下していることが確認された。また、円板の色彩は、電圧の印加処理後であっても変化しなかった。
【0081】
また、この円板について熱重量分析を実施した結果を図3に示す。この熱重量分析結果は、熱重量分析器としてセイコーインスツルメント株式会社の商品名“TG/DTA32”を用い、分析条件を測定温度範囲=20〜1,000℃、昇温速度=10℃/分および空気流量=200.0ml/分にそれぞれ設定して得られたものであり、そこに%で表示された数値は重量の残存率である。この熱重量分析結果は、円板中の繊維群重量が5.8重量%であることを示しており、この値は、円板を製造する際に用いた繊維群の混合割合と概ね一致している。また、この結果は、不燃残査が5.3重量%残留していることを示しているが、これは、隠蔽材等に由来するものと考えられる。
【0082】
実施例2
樹脂材料であるポリプロピレン樹脂(日本ポリケム株式会社の商品名“ノバテックBC3B”)に対し、平均繊維径が7μmでありかつ平均アスペクト比が857のポリアクリロニトリル系炭素短繊維(三菱レーヨン株式会社の商品名”パイロフィル”)からなる、フィラー群電気抵抗値が0.06Ωcmの繊維群、黄色の着色材(東洋化成株式会社の商品名“CB116”)、隠蔽材である酸化チタン(石原産業株式会社の商品名“CR60”)およびマイカ(クラレ株式会社の商品名“クラレマイカ200HK”)を実施例1の場合と同様にして混合し、ペレットを得た。なお、繊維群の混合割合は、ペレット中において5.0重量%になるよう設定した。また、着色材、酸化チタンおよびマイカの混合割合は、それぞれ0.6重量%、0.2重量%および1.0重量%になるよう設定した。このペレットは、着色材による鮮やかな黄色を呈していた。
【0083】
得られたペレットから実施例1の場合と同様の成形過程を経て円板を製造した。この円板は、鮮やかな黄色を呈していた。また、円板中におけるポリアクリロニトリル系炭素短繊維の平均残存アスペクト比は51.1であった。この平均残存アスペクト比は、円板を溶解するための溶媒として熱デカリンを用いた点を除き、実施例1の場合と同様にして求めたものである。
【0084】
得られた円板の表面抵抗を電圧の印加処理を施す前後について測定した。電圧の印加処理条件は、30kVの交流電圧を用いた点を除き、実施例1の場合と同様に設定した。円板の表面抵抗は、電圧の印加処理前が2.6×1014Ω/□であったのに対し、電圧の印加処理後は3.3×10Ω/□に低下していた。なお、円板の色彩は、電圧の印加処理後であっても変化しなかった。
【0085】
また、電圧の印加処理前の円板について熱重量分析を実施した結果を図4に示す。この熱重量分析結果は、熱重量分析器としてセイコーインスツルメント株式会社の商品名“TG/DTA32”を用い、分析条件を測定温度範囲=20〜1,000℃、昇温速度=10℃/分および空気流量=200.0ml/分にそれぞれ設定して得られたものであり、そこに%で表示された数値は重量の残存率である。図4に示された熱重量分析結果は、円板中の繊維群重量が4.9重量%であることを示しており、この値は、円板を製造する際に用いた繊維群の混合割合と概ね一致していることが分かる。また、この結果は、不燃残査が2.1重量%残留していることを示しているが、これは隠蔽材等に由来するものと考えられる。
【0086】
実施例3
繊維群および着色材の混合割合をそれぞれ6.0重量%および1.0重量%に変更し、また、酸化チタンとマイカとを用いなかった点を除いて実施例2の場合と同様にして黄色の円板を製造した。円板中におけるポリアクリロニトリル系炭素短繊維の平均残存アスペクト比は52.3であった。この円板の表面抵抗を測定した後、この円板に対して実施例2と同様の条件による電圧の印加処理を施した。円板の表面抵抗は、電圧の印加処理前が8×1013Ω/□であったのに対し、電圧の印加処理後は4×10Ω/□に低下していた。なお、円板の色彩は、電圧の印加処理後であっても変化しなかった。
【0087】
また、電圧の印加処理前の円板について、実施例2の場合と同様に熱重量分析を実施した結果を図5に示す。図5に示された熱重量分析結果は、円板中の繊維群重量が6.1重量%であることを示しており、この値は、円板を製造する際に用いた繊維群の混合割合と概ね一致していることが分かる。また、この結果は、不燃残査が0.5重量%残留していることを示しているが、これは円板中に含まれる不純物によるものと考えられる。
【0088】
実施例4
樹脂材料であるポリフェニレンオキサイド樹脂(日本ゼネラルエレクトリック株式会社の商品名“ノリルPPO534”)に対し、平均繊維径が12μmでありかつ平均アスペクト比が250のピッチ系炭素短繊維(大阪瓦斯株式会社の商品名“Xylus GCA03J431”)からなる、フィラー群電気抵抗値が6080Ωcmの繊維群、緑色の着色材(大日精化株式会社の商品名“NO41”)、隠蔽材である酸化チタン(石原産業株式会社の商品名“CR60”)およびマイカ(クラレ株式会社の商品名“クラレマイカ200HK”)を実施例1の場合と同様にして混合し、ペレットを得た。なお、繊維群の混合割合はペレット中において16重量%になるよう設定し、また、着色材、酸化チタンおよびマイカの混合割合は、それぞれ1.0重量%、1.0重量%および5.0重量%になるよう設定した。得られたペレットは、着色材による緑色を呈していた。
【0089】
得られたペレットから実施例1の場合と同様の成形過程を経て円板を製造した。この円板は、着色材による緑色を呈していた。また、円板中におけるピッチ系炭素短繊維の平均残存アスペクト比は18.8であった。この平均残存アスペクト比は、実施例1の場合と同様にして求めたものである。さらに、この円板は、電圧の印加処理前および実施例1の場合と同様の電圧印加処理後の表面抵抗を測定したところ、それぞれ3×1010Ω/□および5×10Ω/□であった。円板の色彩は、電圧の印加処理後であっても変化しなかった。
【0090】
実施例5〜12
樹脂材料であるポリプロピレン樹脂(日本ポリケム株式会社の商品名“ノバテックBC3B”)に対し、平均繊維径が7μmでありかつ平均アスペクト比が857のポリアクリロニトリル系炭素短繊維(三菱レーヨン株式会社の商品名”パイロフィル”)からなる、フィラー群電気抵抗値が0.06Ωcmの繊維群、赤色の着色材(東洋化成株式会社の商品名“CB328”)、隠蔽材である酸化チタン(石原産業株式会社の商品名“CR60”)およびタルク(富士タルク株式会社の商品名“#1000”)を実施例1の場合と同様にして混合し、ペレットを得た。なお、繊維群の混合割合は、ペレット中において表1に示すようになるよう設定した。また、着色材、酸化チタンおよびタルクの混合割合は、いずれの実施例についても、それぞれ1.0重量%、0.2重量%および3.0重量%になるよう設定した。
【0091】
得られたペレットから実施例1の場合と同様の成形過程を経て円板を製造し、その表面抵抗を測定した。そして、得られた円板に対して表1に示す条件で電圧の印加処理を施した後、その表面抵抗を測定した。表1に示す電圧の印加処理条件は下記の通りである。結果を表1に示す。なお、各実施例で得られた円板は、着色材による鮮やかな赤色を呈し、その色彩は、電圧の印加処理後であっても変化しなかった。
【0092】
(電圧印加処理条件)
条件A:
上下方向に延びる多数の針状電極かならる一対の電極群を35mmの間隔を設けて上下に配置し、下側の電極群を接地した。そして、下側の電極群上に円板を載置し、電極群間に+30kVの直流電圧を30秒間印加した。
【0093】
条件B:
上下方向に延びる多数の針状電極かならる一対の電極群を35mmの間隔を設けて上下に配置し、下側の電極群を接地した。そして、下側の電極群上に円板を載置し、電極群間に−30kVの直流電圧を30秒間印加した。
【0094】
条件C:
上下方向に延びる多数の針状電極からなる一対の電極群を30mmの間隔を設けて上下に配置し、下側の電極群を接地した。そして、下側の電極群側に円筒状の支持具を上下方向に数本配置し、当該支持具上に円板を水平に載置した。このようにして一対の電極群間に円板を水平に配置し、電極群間に+50kVの直流電圧を30秒間印加した。
【0095】
条件D:
上下方向に延びる多数の針状電極からなる一対の電極群を30mmの間隔を設けて上下に配置し、下側の電極群を接地した。そして、下側の電極群側に円筒状の支持具を上下方向に数本配置し、当該支持具上に円板を水平に載置した。このようにして一対の電極群間に円板を水平に配置し、電極群間に−50kVの直流電圧を30秒間印加した。
【0096】
【表1】
Figure 0003634752
【0097】
実施例13
実施例2で得られた電圧の印加処理後の円板について、加熱処理後の表面抵抗を調べた。ここでは、円板を表2に示す温度で30分間加熱し、その後10分かけて室温まで冷却する加熱−冷却サイクルを各温度について4サイクル実施し、その後に表面抵抗を測定した。結果を表2に示す。加熱処理温度のレンジが95〜165℃の場合は、加熱処理後の表面抵抗は加熱処理前と略同じであって大幅な変化は見られなかったが、実施例2で用いた樹脂の軟化点である175℃での加熱処理後は、表面抵抗が電圧の印加処理前のレベルまで大幅に上昇していることがわかる。
【0098】
【表2】
Figure 0003634752
【0099】
実施例14
実施例2で用いたものと同じポリプロピレン樹脂および繊維群のみを用い、実施例2の場合と同様にして円板を製造した。ここでは、繊維群の含有量が5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%および10重量%にそれぞれ設定された6種類の円板を製造した。各円板の表面抵抗を測定した結果を図6に示す。
【0100】
次に、繊維群の含有量が5重量%、6重量%、7重量%および8重量%にそれぞれ設定された円板について、実施例2の場合と同様の電圧の印加処理を施し、その後の表面抵抗を測定した。結果を図6に示す。
【0101】
比較例1
実施例1において、繊維群、着色材および酸化チタンの混合割合をそれぞれ20重量%、3.0重量%および1.0重量%に変更し、また、タルクに代えて5.0重量%のマイカ(クラレ株式会社の商品名“クラレマイカ200HK”)を利用した点を除いて実施例1の場合と同様のペレットを調製した。このペレットを用いて実施例1の場合と同様の方法で円板を製造したところ、当該円板は、濃灰色を呈し、ペレットに添加した着色材による色彩は反映されなかった。また、この円板は、電圧の印加処理を施す前から、既に2.0×10Ω/□の表面抵抗を示した。
【0102】
比較例2
実施例2で用いたものと同じポリプロピレン樹脂67重量%、カーボンブラック(アクゾ社の商品名“ケッチェンブラックEC”)20重量%、赤色の着色材(東洋化成株式会社の商品名“CB328”)3.0重量%、酸化チタン(石原産業株式会社の商品名“CR60”)5.0重量%およびタルク(富士タルク株式会社の商品名“#1000”)5.0重量%を実施例1の場合と同様に混合してペレットを得、さらに、このペレットから実施例1の場合と同様にして円板を得た。得られた円板は、黒色であり、着色材による色彩は反映されなかった。また、この円板の表面抵抗は、電圧の印加処理を施す前から、既に4Ω/□であった。
【0103】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、請求の範囲によって示すものであって、明細書本文にはなんら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の樹脂成形体を製造するために用いられる電圧印加装置の概略構成図。
【図2】樹脂成形体の一例について実施した熱重量分析の結果を示す図。
【図3】実施例1で得られた円板の熱重量分析結果を示す図。
【図4】実施例2で得られた円板の熱重量分析結果を示す図。
【図5】実施例3で得られた円板の熱重量分析結果を示す図。
【図6】実施例14で得られた円板について、繊維群の含有量と表面抵抗との関係を電圧印加処理前後のそれぞれについて示したグラフ。
【符号の説明】
【0105】
2 電圧印加部
3 搬送装置
4 電極部
5a 電極群
5b 昇降装置
M 樹脂成形体

Claims (20)

  1. 樹脂材料からなるマトリックスと、
    前記マトリックス内に分散された導電性フィラーとを含み、
    前記導電性フィラーの含有量が20重量%未満でありかつ20kV以上前記マトリックスの絶縁破壊電圧未満の電圧の印加処理が施されており、前記樹脂材料の軟化点に加熱処理して室温まで冷却した後の表面抵抗が加熱処理する前の表面抵抗の100倍以上である、
    樹脂成形体。
  2. 前記導電性フィラーの含有量が1.0重量%以上16重量%以下である、請求項1に記載の樹脂成形体。
  3. 前記導電性フィラーは、そのフィラー群電気抵抗値が10Ωcm以下10−2Ωcm以上のものである、請求項1または2に記載の樹脂成形体。
  4. 前記導電性フィラーが繊維状のものである、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂成形体。
  5. 前記導電性フィラーの平均繊維径が0.002μm以上15μm以下である、請求項4に記載の樹脂成形体。
  6. 前記導電性フィラーの平均残存アスペクト比が10以上100,000以下である、請求項5に記載の樹脂成形体。
  7. 前記導電性フィラーと共に前記マトリックス内に分散された着色材をさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂成形体。
  8. 前記導電性フィラーが炭素繊維および黒鉛繊維のうちの少なくとも一つである、請求項7に記載の樹脂成形体。
  9. 前記導電性フィラーおよび前記着色材と共に前記マトリックス内に分散された、前記導電性フィラーの色彩を隠蔽するための隠蔽材をさらに含む、請求項7または8に記載の樹脂成形体。
  10. 表面抵抗が10Ω/□以上1012Ω/□以下である、請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂成形体。
  11. 前記加熱処理の後に、20kV以上前記マトリックスの絶縁破壊電圧未満の電圧の印加処理をさらに施した場合の表面抵抗が、当該電圧の印加処理をさらに施す前の表面抵抗の1/100以下である、請求項1〜10のいずれかに記載の樹脂成形体。
  12. 樹脂材料と導電性フィラーとを含みかつ前記導電性フィラーの含有量が20重量%未満に設定された成形材料を調製する工程と、
    前記成形材料を所定の形状に成形する工程と、
    成形された前記成形材料に対して20kV以上前記樹脂材料の絶縁破壊電圧未満の電圧を印加する工程と、
    を含む樹脂成形体の製造方法。
  13. 前記成形材料における前記導電性フィラーの含有量が1.0重量%以上16重量%以下に設定されている、請求項12に記載の樹脂成形体の製造方法。
  14. 前記成形材料が着色材をさらに含んでいる、請求項12または13に記載の樹脂成形体の製造方法。
  15. 前記成形材料が前記導電性フィラーの色彩を隠蔽するための隠蔽材をさらに含んでいる、請求項14に記載の樹脂成形体の製造方法。
  16. 20重量%未満の割合で導電性フィラーを含みかつ表面抵抗が10Ω/□以上1012Ω/□以下の樹脂成形体を製造するための製造装置であって、
    前記導電性フィラーを20重量%未満の割合で含む樹脂成形体に対して20kV以上その絶縁破壊電圧未満の電圧を印加するための電圧印加部と、
    前記電圧印加部に向けて前記樹脂成形体を搬送するための搬送手段と、
    を備えた樹脂成形体の処理装置。
  17. 20重量%未満の割合で導電性フィラーを含みかつ表面抵抗が10Ω/□以上1012Ω/□以下の樹脂成形体を製造するための製造装置であって、
    前記導電性フィラーを20重量%未満の割合で含む樹脂成形体に対して20kV以上その絶縁破壊電圧未満の電圧を印加するための電極と、
    前記電極と前記樹脂成形体とが間隔を設けて対向するよう前記樹脂成形体を前記電極に向けて搬送するための搬送手段とを備え、
    前記搬送手段は接地されている、
    樹脂成形体の処理装置。
  18. 前記電極は、複数の針状電極からなる電極群である、請求項17に記載の樹脂成形体の製造装置。
  19. 前記電極と前記樹脂成形体との間隔を調整するための間隔調整装置をさらに備えている、請求項18に記載の樹脂成形体の製造装置。
  20. 前記搬送手段は、多数の前記樹脂成形体を順次連続的に前記電極に向けて搬送可能である、請求項19に記載の樹脂成形体の製造装置。
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