JP3634623B2 - 壁パネル及びその製造方法 - Google Patents

壁パネル及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、硬化性無機質組成物を主体とした壁パネルであって、建築物の壁面に使用される壁パネル及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、壁パネルとしては、実公昭59−22817号公報、特開昭60−23540号公報に示す高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリ−ト(ALC)壁パネルがある。これによれば、壁パネルのパネル面に対し配置埋設された長ナットなどがある。しかしこれらの場合は埋設している長ナットのネジ穴の延長線上の正確な位置に穴をあける必要がある。この様な高精度な穴位置の決定はきわめて難しく、作業性も悪い。予め埋設されている位置がけがき線等で示せればよいが、製法上の特徴としている高温高圧蒸気養生が逆に悪影響を及ぼし、高温高圧蒸気養生の前後にて成形品の寸法変化が起こり、結果として埋め込み固定具の位置精度がでないという欠点があった。この欠点を改善し、位置精度の良い取り付け固定具を持つALC壁パネルを得る方法として、固定具を後加工にて取り付けるという方法が特公平6−41703号公報に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のごとく後加工にて固定具を取り付ける方法においては、硬化したALC壁パネルに結局穴加工等を施す必要があり、その際の粉塵の発生の問題および工程そのものの削減にはならない点、さらに必要径以上の穴を開けるため、剪断強度を確保するためには固定具の装着後、不要部の穴埋めが必要となるなどの問題があった。
【0004】
また、補強繊維を混合するが、スラリーの成型性を考慮すると、添加量や繊維長に限界があり、補強部材に金属などが用いられていた。このため、開口部や異形部の切断の際、異素材の複合体の切断はダイアモンドソーのような刃物の破損を引き起こすという問題があった。
【0005】
そこで、この発明は、金属でない補強部材として補強繊維が用いられたもので、十分な強さを確保し、切断の際に刃物の破損を引き起こさない壁パネル及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1の発明は、二酸化珪素及び酸化アルミニウムを含有する反応性無機質粉体と、アルカリ金属珪酸塩と、水とからなる硬化性無機質組成物を主体としたパネル本体が発泡剤のSi粉末によって発泡させられ、その内部または表面に、パネル面に正対して面状に広がる切断の際に刃物に損傷を与えない補強繊維を一体化した網目状シートが設けられことを特徴とする壁パネルとしている。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1において、前記硬化性無機質組成物は、
(A) SiO 2 −Al 2 3 系反応性無機質粉体100重量部
(B) アルカリ金属珪酸塩 0.2〜450 重量部
(C) 水 35〜1500 重量部
からなるものであることを特徴とする壁パネルとしている。
【0008】
また、請求項3の発明は、パネル面が水平下面となる構造の下型に、(A)SiO 2 −Al 2 3 系反応性無機質粉体100重量部と、(B)アルカリ金属珪酸塩0.2〜450重量部と、(C)水35〜1500重量部とからなる硬化性無機質組成物を主体し、発泡剤のSi粉末を加えた配合物を注型し、その後あるいは途中で切断の際に刃物に損傷を与えない補強繊維を一体化した網目状シートを前記配合物の内部または表面に配設し、前記Si粉末によって発泡させた後、硬化させることを特徴とする壁パネルの製造方法としている。
0009
【発明の実施の形態】
以下、この発明を実施の形態を表す図面に基づいて説明する。
0010
図1〜図7まではこの発明の実施の形態の一例である。
0011
図において、10は、パネル本体で、パネル本体10内には、パネル面11に正対して面状に広がる補強部材20が設けられている。この補強部材20は、図1,図2に示すような金属棒が格子状に組まれたものや、もう少し細かい網状のもの、さらには図3,図4に示すような平板状(パンチングメタル等)のものである。
0012
この補強部材20には、建物などの軸組やスタッドの様な被装着体30の固定手段40の取り付け間隔に対応した位置に被固定手段21が設けられている。固定手段40は、デージーリベット、ボルト、タッピングスクリュウなどであり、被固定手段21は、透孔22を有した図1のような格子枠の目の一つを塞ぐ様に固着されたプレート片であり、また図3に示すようなパンチングやバーリングによって透孔22が形成され、パネル本体10の内部に向かって立てられたフランジである。フランジは、図3に示すように先細りになっても良く、図7に示すように平行であっても良く、さらには図示しないが拡径するように広がっても良い。拡径されたフランジの場合は、補強部材20とパネル本体10との食いつきが大変に良くなる。
0013
尚、補強部材20が配筋や網の場合パネル本体10(成型体)内に埋設されるが、被固定手段21はパネル本体10の裏側表面に露出するようにする(図1、図2、図5、図6)。補強部材20が平板状の場合、パネル本体10の裏側表面に露出するようにされる(図3、図4、図7)。
0014
本発明の壁パネルの補強部材20としては、平板状の場合にはバーリング加工の鉄板が用いられる。金属板はこれに限定されることなく、ステンレス板、塩ビ鋼板、カラー鉄板、亜鉛鋼板等必要に応じて適当な物を選択できる。バーリング加工の形状、位置、大きさは特に限定される物ではない。特に、取付用として特定する場合は、取付位置に対し必要な位置に精度よく配置すればよく、その折り曲げ内面にネジ加工を施せば、そのままボルト等による取付工事が簡易に行えるようになる。又、硬化性無機質組成物と金属板との付着性をさらに強固としたい場合、折り曲げ部分の硬化性無機質組成物中への埋没部分の大きさを大きくしても良いし、折り曲げ部分の数そのものを増加させても良い。さらに望ましくは、折り曲げ部が、硬化性無機質組成物に対し、アンダーカットとなるよう逆テーパーを持つ形状(一例として先述の拡径形状)にすると良い。形状についても、丸いものでも四角でも、特にかまわない、折り曲げ部分が、一体ではなく、切れ目を設けた不連続体とすると、壁パネルの取付時にタッピングネジ等を用いれば、その進入時に硬化性無機質組成物内に折り曲げ部が押し広げられる形となり、かしめ効果が得られ、硬化性無機質組成物と金属板との付着性を向上させる事も可能となる。
0015
また、パネル本体10には、図1の下側に示すように被固定手段21に対応した位置に固定手段40の先端部が進入容易となる受入部位12が形成されている。この受入部位12は、空隙であっても良いし、発泡スチロール、ウレタン発泡材、スポンジ等の低強度のものが使用出来る。
0016
受入部位12に発泡スチロールを用いたものは、特公昭63−56380号公報の第10図の壁パネルのフレームをデージーリベットで固定する記載と同じ形式で固定できるとともに、パネル本体10内に受入部位12を形成するときには、外に形成するのに比べパネル本体10の壁を厚くできる。
0017
パネル本体10の主体である硬化性無機質組成物は、二酸化珪素及び酸化アルミニウムを含有する反応性無機質粉体とアルカリ金属珪酸塩と水とからなり、反応性無機質粉体としては、二酸化珪素5〜85重量%と酸化アルミニウム90〜10重量%のものが好適に使用される。このような組成体としては、フライアッシュ、メタカオリン、カオリン、ムライト、コランダム、アルミナ系研磨材を製造する際のダスト、粉砕焼成ポーキサイト等が使用できる。けれども組成と粒度が適当であればこれらに限定されるものではない。また、これらの粉体をそのまま用いてもよいが、活性化させるために、溶射処理、粉砕分級、機械的エネルギーを作用させてもよい。
0018
溶射処理する方法としては、セラミックコーティングに適用される溶射技術が応用される。その溶射技術は、好ましくは材料粉末が2000〜16000℃の温度で溶融され、30〜800m/秒の速度で噴霧されるものであり、プラズマ溶射法、高エネルギーガス溶射法、アーク溶射法等が可能である。得られた粉体の比表面積は、0.1〜100m2 /gが好ましい。
0019
分級、粉砕する方法としては従来公知の任意の方法が採用され、篩、比重、風力、湿式沈降等による分級、ジェットミル、ロールミル、ボールミルによる粉砕などがあげられる。これらの手段は併用されてもよい。
0020
機械的エネルギーを作用させる方法としては、ボール媒体ミル、媒体撹拌型ミル、ローラミル等が使用され、作用させる機械的エネルギーとしては0.5kwh/kg〜30kwh/kgが好ましい。作用させる機械的エネルギーが小さいと粉体を活性化しにくく、大きいと装置への負荷が大きい。
0021
フライアッシュは、必要に応じて、焼成されたものでもよい。焼成温度は、低いとフライアッシュの黒色が残り、着色困難となり、高いと、アルカリ金属珪酸塩との反応性が低くなるので、400℃〜1000℃であることが好ましい。
0022
本発明に使用されるアルカリ金属珪酸塩とは、M2 O・nSiO2 (M=K、Na、Liから選ばれる1種以上の金属)で表される塩であって、nの値は小さくなると緻密な発泡体が得られず、大きくなると水溶液の粘度が上昇し混合が困難になるので0.05〜8が好ましく、さらに好ましくは0.5〜2.5である。
0023
アルカリ金属珪酸塩は水溶液で添加されるのが好ましく、水溶液濃度は特に限定されないが、薄くなるとフライアッシュ粉末との反応性が低下し、濃くなると固形分が生じやすくなるので10〜60重量%が好ましい。
0024
上記アルカリ金属珪酸塩水溶液はアルカリ金属珪酸塩をそのまま加圧、加熱下で水に溶解してもよいが、アルカリ金属水酸化物水溶液に珪砂、珪石粉などのSiO2 成分をnが所定の量となるように加圧、加熱下で溶解してもよい。上記アルカリ金属珪酸塩の量は、少なくなると硬化が十分になされず、多くなると得られる発泡体の耐水性が低下するので硬化性無機質組成物100重量部に対して0.2〜450重量部に限定され、好ましくは10〜350重量部、さらに好ましくは20〜250重量部である。
0025
本発明で使用される水は上記アルカリ金属珪酸塩水溶液として添加されてもよいし、独立して添加されてもよい。水の量は少なくなると、十分に硬化せず、また混合が困難となり、多くなると硬化体の強度が低下しやすくなるので上記硬化性無機質組成物100重量部に対して35〜1500重量部に限定され、好ましくは45〜1000重量部、さらに好ましくは50〜500重量部である。
0026
本発明において、必要に応じて、発泡剤及び/又は発泡助剤が添加されてもよい。発泡剤としては、過酸化水素、過酸化ソーダ、過酸化カリ、過ほう酸ソーダ等の過酸化物の少なくとも一つであり、金属粉末(Mg、Ca、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Ga、Sn、Si、フェロシリコン)等が用いられ、多すぎると発泡ガスが過剰となり破泡し、少なすぎると発泡倍率が小さすぎて発泡体の意味を失うので0.01〜10重量部であることが好ましい。過酸化水素を発泡剤として用いるときは、安全性、安定した発泡を考慮すると水溶液として用いるのが好ましい。金属粉末を用いる場合は、安定した発泡を得るために、粒径が200μm以下であることが好ましい。
0027
本発明において必要に応じて発泡助剤が添加されてもよい。発泡助剤は発泡を均一に生じさせるものなら特に限定されず、たとえばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩、シリカゲル、ゼオライト、活性炭、アルミナ粉末等の多孔質粉体などの少なくとも一つである。これらは単独で使用されてもよいし、2種類以上併用されてもよい。
0028
発泡助剤の量は多くなると組成物の粘度が上昇し、破泡が発生しやすくなるので硬化性無機質組成物100重量部に対して10重量部以下が好ましい。
0029
本発明において必要に応じて無機質充填材が添加されてもよい。無機質充填材は、水に溶解せず、無機質組成物の硬化反応を阻害せず、アルカリ金属珪酸塩と反応しないものであれば特に限定されず、たとえば珪砂、川砂、ジルコンサンド、結晶質アルミナ、岩石粉末、火山灰、シリカフラワー、シリカヒューム、ベントナイト、高炉スラグ等の混合セメント用混和材、セピオライト、ワラストナイト、マイカ等の天然鉱物、炭酸カルシウム、珪藻土などがあげられる。
0030
これらは単独で添加されてもよいし、2種類以上併用されてもよい。
0031
ここに、実施例における重量比較配合表とその組成における成形体圧縮強度とデージーリベット1本当たりの取付強度の実験値を次表に表す。
0032
【表1】
Figure 0003634623
組成物を発泡させる場合、上記無機質充填材は、平均粒径が小さくなると組成物の粘度が上昇し、高倍率の発泡体が得られず、大きくなると発泡が不安定になるので0.01〜1000μmが好ましい。無機質充填材の量は多くなると得られる発泡体の強度が低下するので上記反応性無機質粉体100重量部に対して700重量部以下が好ましい。
0033
本発明において必要に応じて補強繊維が添加されてもよい。補強繊維は、成形体に付与したい性能に応じ任意のものが使用でき、たとえば、ビニロン繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、鋼繊維などが使用できる。
0034
上記補強繊維の繊維径は、細くなると混合時に再凝集し、交絡によりファイバーボールが形成されやすくなり、最終的に得られる発泡体の強度はそれ以上改善されず、太くなるか又は短くなると引張強度向上などの補強効果が小さく、又、長くなると繊維の分散性及び配向性が低下するので、繊維径1〜500μm、繊維長1〜15mmが好ましい。上記補強繊維の添加量は多くなると繊維の分散性が低下するので、硬化性無機質組成物100重量部に対して、10重量部以下が好ましい。
0035
さらに硬化体の軽量化を図る目的でシリカバルーン、パーライト、フライアッシュバルーン、シラスバルーン、ガラスバルーン、発泡焼成粘土等の無機質発泡体、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン等の合成樹脂の発泡体、塩化ビニリデンバルーンなどが添加されてもよい。これらは単独で添加されてもよいし、2種類以上併用されてもよい。【0036
さらに必要に応じて、アルミナセメント、γ−アルミナ、溶射されたアルミナ、アルミン酸アルカリ金属塩又は水酸化アルミニウムを加えても良い。
0037
次に、図5〜図7を参照して壁パネルの製造方法について述べる。
0038
まず上記アルカリ金属珪酸塩を加圧、加熱下で少なくとも一部の水に溶解し、上記硬化性無機質組成物及び必要に応じて残部の水、発泡助剤、補強繊維、無機質充填材等を混合し、ペースト状とする。
0039
図5に示す下型51に硬化性無機質組成物を含んだペースト状のものを注型する。発泡剤及び/又は発泡助剤を含んだものは発泡して増加する体積を見込んで少な目に注型する。
0040
一方、予め被装着体30の固定手段40の取り付け間隔に対応した位置に透孔22を備えたプレート片が設けられた補強部材20が上型52に係止手段53で取り付けられている。
0041
この上型52を図6のように下型51に載せて型締めする。そして、硬化温度は常温でもよいが、50〜110℃で30分間〜8時間硬化させることにより、硬化反応を促進させ、硬化体を得る。硬化後、型開きし、パネル本体10を下型51から離型させることにより、被固定手段21を精度よい位置に配設した補強部材20が装着された図1、図2に示すような壁パネルをオートクレーブ等の高圧高温蒸気養生を行うことなく得ることができる。
0042
なお、図5及び図6における受入部位12は、発泡スチロール、ウレタン等で作られており、型締め時にパネル本体10の中に埋設される。固定手段40の先端を受け入れやすく、かつデージーリベットの頭を作りやすくする受入部位12は、必要ならば全被固定手段21の部位に形成させる。
0043
図7は、パンチングやバーリング加工などにより形成された複数のフランジが形成された平板状の補強部材20の場合を示している。透孔22及びフランジである被固定手段21を備えた補強部材20は、平板であり、被固定手段21の位置関係は予め精度良くできている。従って、下型51の注型充填された硬化性無機質組成物上に平板状の補強部材20を載せて一体に硬化させる。その後、離型させることによって、図3、図4に示すような壁パネルを作る。
0044
このようにして作られた壁パネルは、高圧高温に晒されない上に被固定手段21の位置関係の精度が良好に作られるので、被装着体30にボルト、タッピングスクリュウ、デージーリベットなどの固定手段40で精度良く、迅速に取り付けることが出来る。
0045
実施例1(緻密体)
所定量のnSiO2 /M2 O(n=1.5、M=Na,K;モル比1:1)をオートクレーブ中において130℃、7kgf/cm2 (≒0.7MPa)で所定量の水に溶解し、ワラストナイト、ビニロン繊維(クラレ社製、商品名;RM182×3)、珪石粉、8号珪砂、SiO2 −Al2 3 系無機質粉体(A)、水酸化アルミニウム(粒径100μm以下)をオムニミキサー(千代田技研工業株式会社製)で混合し、硬化性無機質組成物を含む均一なペーストとした。このペーストを型に流し込み、85℃で6時間硬化させ、288.0×92.0×6.5(cm)の壁パネルを得た。
0046
実施例2(発泡体)
所定量のnSiO2 /M2 O(n=1.5、M=Na,K;モル比1:1)をオートクレーブ中において130℃、7kgf/cm2 (≒0.7MPa)で所定量の水に溶解し、ワラストナイト、ビニロン繊維(クラレ社製、商品名;RM182×3)、珪石粉、8号珪砂、SiO2 −Al2 3 系無機質粉体(A)、水酸化アルミニウム(粒径100μm以下)、ステアリン酸亜鉛をオムニミキサー(千代田技研工業株式会社製)で混合し、硬化性無機質組成物を含む均一なペーストとした。このペーストに、粒径が70μm以下のアルミニウム粉末(ミナルコ社製、商品名;350F)を添加して40秒間攪拌し、型枠内に注入して3分間発泡させた後、型枠ごと85℃のオーブン中で6時間加熱して、288.0×92.0×6.5(cm)の壁パネルを得た。
0047
なお、粒径はレーザー回折式分布計(セイシン社製、型式;PRO700S)で測定した。
0048
ここで反応性無機質粉体としては、以下の場合について実施した。
0049
無機質粉体1
フライアッシュ(関電化工社製、平均粒径20μm;JIS A 6201に準ずる)を分級機(日清エンジニアリング社製、形式;TC−15)により分級し、粒径が10μm以下の粉末を100重量%含有するものを無機質粉体とした。
0050
無機質粉体2
カオリン(組成:SiO2 45.7%、Al2 3 38.3% 平均粒径:8μm BET比表面積5.8m2 /g)の原料粉を燃焼温度2500℃、噴射粒子速度50m/秒で溶射し、活性無機質粉体(組成:SiO2 49.7%、Al2 3 47.0% 平均粒径:49μm BET比表面積64.3m2 /g)を得た。
0051
無機質粉体3
フライアッシュを3000℃で溶融後、80m/sの速度で大気中に噴霧して無機質粉体を回収した。得られた無機質粉体は、平均粒径5μm、比表面積9.5m2 /g)であった。
0052
無機質粉体4
上記無機質粉体1を600℃の温度にて焼成し、粒径10μm以下の粉体100重量%を含有する焼成フライアッシュを得た。
0053
無機質粉体5
フライアッシュ(関電化工社製、平均20μm、比表面積1.8m2 /g、JIS A 6201相当品)100重量部及びトリエタノールアミン25重量%とエタノール75重量%の混合溶液0.5重量部をウルトラファインミルAT−20(三菱重工業社製、ジルコニアボール直径10mm使用、ボール充填率85体積%)に供給し25kwh/kgの機械的エネルギーを作用させ、フライアッシュ粉末5を得た。尚、作用させた機械的エネルギーはボールミルに供給した電力を処理粉体単位重量あたりで表した。
0054
無機質粉体6
カオリン(組成:SiO2 45.7%、Al2 3 38.3% 平均粒径:8μmBET比表面積5.8m2 /g)95重量部とクオーツ(住友セメント社製 商品名:ソフトシリカ)5重量部及びトリエタノールアミン25重量%とエタノール75重量%の混合溶液0.5重量部をウルトラファインミルAT−20(三菱重工業社製、ジルコニアボール直径10mm使用、ボール充填率85体積%)に供給し25kwh/kgの機械的エネルギーを作用させ、無機質粉体6を得た。尚、作用させた機械的エネルギーはボールミルに供給した電力を処理粉体単位重量あたりで表した。
0055
無機質粉体7
無機質粉体6を300℃3時間加熱することにより、無機質粉体7を得た。
0056
無機質粉体8
メタカオリン(エンゲルハード社製のSATINTONE SP 33、平均粒度3.3μm、比表面積13.9m2 /g)100重量部及びトリエタノールアミン25重量%とエタノール75重量%の混合溶液0.5重量部をウルトラファインミルAT−20(三菱重工業社製、ジルコニアボール直径10mm使用、ボール充填率85体積%)に供給し25kwh/kgの機械的エネルギーを作用させ、無機質粉体8を得た。尚、作用させた機械的エネルギーはボールミルに供給した電力を処理粉体単位重量あたりで表した。
0057
この発明は、面状の補強部材を利用した壁面固定を考慮した発明と異なり、切断の際に刃物に損傷を与えない補強繊維を網目状シートにして補強したものである。この発明について上述の説明を参照しながら説明する。
0058
図1を参照すると、パネル本体10は前述の通り硬化性無機質組成物を主体とするものであり、装着時その表側となる面もまたパネル面11である。このパネル本体10の内部あるいは表面に、補強部材20である補強繊維を一体化した網目状シートが、パネル面11に正対して面状に広がって配設されている。
0059
補強繊維を一体化した網目状シート20は、従来用いられていた非腐食性の補強部材(代表例として、ステンレス鋼製金網)と同等以上の補強効果が得られるものであり、コストが同等以下であることが必要である。
0060
補強繊維は、成形する壁パネルの備えるべき性能に応じ適当なものが選択される。例えば、前述のビニロン繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維などが使用される。
0061
このような選択された補強繊維は、加工性、埋設施工性、無機質硬化体との付着性及びコストを考慮することにより、網状に加工されている。ここに収束繊維を使用する場合は、網目を構成する収束線一本当たり使用する補強繊維の数が500〜10,000本程度が好ましい。多いとコスト高となり、少ないと網目状にするときにコスト高になる。
0062
網の目開きは5〜100mmが適当であり、無機質壁パネル全体の要求性能に応じて単位面積当たりの使用量5〜100g/m2 になるように紐一本当たりの収束繊維数を決定する。単位面積当たりの使用重量が100g/m2 以上になるとコスト高になり、5g/m2 以下になると無機質壁パネルに有効な耐衝撃性や耐火性能を付与できない。
0063
網目の形状は、無機質壁パネルの応力負荷状況に応じて方形格子状、長方形格子状、三方向格子状(三角形状)を適宜選択できる。また補強繊維の収束の接着および収束繊維同士の接着は、エポキシ樹脂、メチルメタアクリレート樹脂、フェノール樹脂等を適宜選択して使用することが出来る。
0064
以上の方法により網目状シートに成形した補強繊維20である補強繊維網を用いた壁パネルの製造方法を、第1図を参照して説明する。
0065
補強繊維網の一例としての炭素繊維網を予めパネル面11が水平下面となる下型51に固定し、そこへ反応性無機質粉体、アルカリ金属珪酸塩、無機質粉体、水からなる硬化性無機質組成物を主体とした硬化性無機質組成物(パネル本体10を構成する)を投入し、固化させることによって壁パネル10が得られる。
0066
または、図5に示すように硬化性無機質配合物を下型51に投入した後に補強繊維(20)を敷設し、一体成形しても良い。さらには、硬化性無機質配合物を下型51に投入した後に補強繊維網(20)を敷設し、さらに硬化性無機質配合物を下型51に投入し、一体成型し、固化させることによって壁パネルが得られる。これらいずれの方法でも、耐衝撃性、耐火性、コストなど従来の課題をすべて解決した無機質壁パネルが得られる。
0067
そしてこれら壁パネル10は、これに開口を作る際に切断するとき、あるいは不要な部分を切り取るときであっても補強繊維が鋼材等に比較し硬度が低く刃物に損傷を与えたりしない。
0068
また、硬化性無機質配合物は、アルカリ金属珪酸塩と反応性無機質粉体中の成分が一旦溶融してから結合するため微細な溝や空隙に入り込み固化することになり、大きな付着強度を得ることが出来る。このことにより、従来のセメント系硬化体では成し得なかった補強繊維との付着力が得られた。
0069
実施例3(発泡体)
予め鋼製の枠の内端部にエポキシ樹脂を用いて接着した補強繊維網(20)を取り付け、これを例えば図5の上型52に係止手段53の代わりに磁石などで固定する。このとき、補強繊維1000本(品番 RM−S182 株式会社クラレ社製)のビニロン繊維を収束しエポキシ樹脂で固化させた収束線を用い縦横40mmピッチで方形に配置し、交差点をエポキシ樹脂で固定して得たものを使用した。このときのビニロン繊維量は25g/m2 であった。
0070
ゴム製の加飾型を敷設した下型51に表2に記載した(1) の硬化性無機質配合物を投入し、振動を加えてレベリング、脱泡を行った後、上型52をセットし加熱硬化させた。脱型後に無機質発泡体壁パネル10を得た。
0071
【表2】
Figure 0003634623
珪酸カルシウム水溶液は、モル比SiO2 /K2 O=14% 濃度46wt%のものを使用した。無機質壁パネルを得た。この壁パネル10を壁に取り付け、JIS A 14146.15の衝撃試験で200cmの高さから3回砂袋を落下させたが損傷は全く見られなかった。
0072
実施例4(緻密体)
実施例3における硬化性無機質配合物を表2の(2) とした。無機質壁パネルを得た。上述のJISの試験結果は実施例3と同じであった。
0073
実施例5(緻密体)
ゴム製の加飾型を敷設した下型51に表2の(2) の硬化性無機質配合物を投入し、振動を加えてレベリング、脱泡を行った後、ビニロン繊維ネット(品番 VKO7O7 株式会社クラレ製)を敷設し上型52をセットし加熱固化させた。無機質壁パネルを得た。上述のJISの試験結果は実施例3と同じであった。
0074
実施例6(緻密体)
実施例5においてビニロン繊維ネット(品番 トリネオTSH−1820 ユニチカ株式会社製)を使用した。無機質壁パネルを得た。上述のJISの試験結果は実施例3と同じであった。
0075
実施例7(緻密体)
実施例4において、ポリプロピレン繊維(ダイワボウポリプロ タイプ PZ 大和紡績株式会社製)を使用した。無機質壁パネルを得た。上述のJISの試験結果は実施例3と同じであった。
0076
実施例8(緻密体)
実施例4において、収束したビニロン繊維の代わりにガラス繊維(FER−2310−0954 富士ファイバーグラス株式会社製、ガラス繊維を束にしたもの)を使用した。40mmピッチで方形に配置し、交差点をエポキシ樹脂で固定して得たものを使用した。このときの単位面積当たりのガラス繊維量は、25g/m2 であった。無機質壁パネルを得た。上述のJISの試験結果は実施例3と同じであった。
0077
実施例9(緻密体)
実施例5において、アラミド繊維ネット(テクノーラ MM3036 帝人株式会社製)を使用した。無機質壁パネルを得た。上述のJISの試験結果は実施例3と同じであった。
0078
実施例10(緻密体)
実施例5において、アラミド繊維ネット(テクノーラ MM1532 帝人株式会社製)を使用した。無機質壁パネルを得た。上述のJISの試験結果は実施例3と同じであった。
0079
比較例1
ゴム製の加飾型を敷設した下型51(1m×1m厚み20mm)に表の(2) の硬化性無機質配合物を投入し、振動を加えてレベリング、脱泡を行った後、加熱固化させた。
0080
この壁パネル10を壁に取り付け、JIS A 14146.15の衝撃試験で200cmの高さから3回砂袋を落下させたところ、この壁パネル10はクラックし貫通した。これに対し、実施例3〜10は損傷なしであった。
0081
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明は、十分な強さを確保し、切断の際に刃物の破損を引き起こさず、軽量及び断熱効果のある壁パネルを提供することが出来る。
0082
請求項2の発明は、請求項1の効果に加えて、無駄なく最適配合で強度のある壁パネルを得ることが出来る
0083
請求項3の発明は、十分な強さを確保し、切断の際に刃物の破損を引き起こさず、軽量及び断熱効果のある壁パネルの製造方法を提供することが出来る
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る壁パネルの断面図である。
【図2】図1に示した壁パネルの平面図である。
【図3】他の例を示す図1と同様な壁パネルの断面図である。
【図4】図3に示した壁パネルの斜視図である。
【図5】壁パネルの製造方法を示す型締め前の状態図である。
【図6】型締め状態を示す図5と同様な図である。
【図7】他の例を示す図6と同様な図である。
【符号の説明】
10…パネル本体
11…パネル面
12…受入部位
20…補強部材
21…被固定手段
22…透孔
30…被装着体
40…固定手段
51…下型
52…上型
53…係止手段

Claims (3)

  1. 二酸化珪素及び酸化アルミニウムを含有する反応性無機質粉体と、アルカリ金属珪酸塩と、水とからなる硬化性無機質組成物を主体としたパネル本体が発泡剤のSi粉末によって発泡させられ、その内部または表面に、パネル面に正対して面状に広がる切断の際に刃物に損傷を与えない補強繊維を一体化した網目状シートが設けられことを特徴とする壁パネル。
  2. 請求項1において、前記硬化性無機質組成物は、
    (A) SiO 2 −Al 2 3 系反応性無機質粉体 100重量部
    (B) アルカリ金属珪酸塩 0.2〜450 重量部
    (C) 水 35〜1500 重量部
    からなるものであることを特徴とする壁パネル。
  3. パネル面が水平下面となる構造の下型に、(A)SiO 2 −Al 2 3 系反応性無機質粉体100重量部と、(B)アルカリ金属珪酸塩0.2〜450重量部と、(C)水35〜1500重量部とからなる硬化性無機質組成物を主体とし、発泡剤のSi粉末を加えた配合物を注型し、その後あるいは途中で切断の際に刃物に損傷を与えない補強繊維を一体化した網目状シートを前記配合物の内部または表面に配設し、前記Si粉末によって発泡させた後、硬化させることを特徴とする壁パネルの製造方法
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