JP3634372B2 - アンテナ - Google Patents
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Description
通常の海洋航法レーダのアンテナは、放射開口が垂直(鉛直)平面内にあるので、風に対して広い領域を呈する。そのようなレーダアンテナは第1図に断面を示すようなホーン装置よりなっている。このような装置において、リニアアレイアンテナはフィードホーン2に結合された側壁に設けられたスロット1aを有するスロット付き導波管を具備している。この構造は、総括的に参照数字3で示される開口面に主ビーム軸が垂直であるので、“横形放射(ブロードサイド・ファイア)”と称されている。
このような通常のレーダアンテナの有する問題は、このような“横形放射”装置に用いるビームに要求されるビーム幅を提供するため、垂直方向における開口寸法が大きくなり、そのため大きな風抵抗を受けることである。この構造は空気力学的性能がよくないので、レーダアンテナに正確な回転を与えるためには、大型で強力なモータによって駆動される台枠に、アンテナが強固に固定されて、アンテナの回転が風の速度と方向によって最小限の影響しか受けないようにしなければならない。
したがって、レーダアンテナの垂直方向の寸法を減らすことは極めて望ましい。この“横形放射”構造を用いる代案として、“端部放射(エンド・ファイア)またはたて型”構造が検討されている。このような“たて型”アンテナの単純な一形態は、第2図に示すようなポリエチレン・ロッド、すなわち“ポリロッド”アンテナである。
“ポリロッド”“たて型”構造においては、放射開口がロッドの軸方向の長さに沿っている。そのため、開口長すなわち、第2図に示したポリエチレン・ロッド6の長さを増大することにより、その指向性が増強される。ポリエチレン・ロッド6は遷移要素5によって導波管4から与えられる放射に電磁的に結合される。“ポリロッド”構造において、ポリエチレンは“漏洩”アンテナ構造を構成しており、ここでロッドの表面からの“漏洩”エネルギはロッドが向けられる方向に構造上重畳され、これによってビームが形成される。
このような装置をレーダアンテナに用いる際の問題は、ポリエチレン・ロッドの重量である。このような装置を用いるためには、重量の問題に対処するだけでなく、また必要なビーム幅を提供するためには“ポリロッド”を十分長くしなければならないであろうし、そのためにポリロッドが下方通風および上方通風に対し敏感となるであろうという事実にも対処するように、強固な固定と強力な駆動モータが必要となるであろう。
第2図の“ポリロッド”装置の重畳の問題を解決するため、日本国特許第56−31205号は、第3図に示すような空洞のある中空“ポリロッド”の利用を提案している。このポリロッドは、遷移要素8を介して空洞の誘電体ロッド9に結合された、スロット7aを有するスロット付き導波管7を具備している。この装置は“ポリロッド”装置の重量の欠点を解決してはいるが、十分なビーム幅を提供するために長い軸長を必要とするという欠点を依然として有している。
この問題は、第4図に示された装置を開示する日本国特許第62−171301号において、さらに検討されている。この装置においては、スロット付き導波管10は遷移要素12を介してフィードホーン11に結合されている。フィードホーン11の開口部には、二重殻(double skin)誘電体構造13が設けられている。二重殻誘電体構造13は、フィードホーン11の垂直開口寸法が増大する必然性を避けるため、フィードホーン11の開口部に設けられている。しかし、この装置は必要なビーム幅を提供するために要求される誘電体構造の長さを減らしはするが、依然として空気力学上の断面に関する欠点を有している。
したがって、この発明の目的は、長さを減らすと共に空気力学上の断面を減少しながら、一方では依然として、必要とするビーム幅を提供するようなアンテナを得ることにある。
一つの観点においては、この発明は、軸に沿った電磁放射の送信と受信の少なくとも一方を行うアンテナであって、前記軸に垂直な方向で互に隔離して設けられた誘電体材料より構成された少なくとも4つの層であって、その最外層は上記電磁放射の少なくとも半波長分だけ互に隔離して設けられ、かつ上記層はその後端から前端にかけておおむね前記軸の方向に延在する少なくとも4層と、導波管と、上記層を上記導波管に直接電磁的に結合するために用いられる遷移部分であって、該遷移部分の前端が上記層の後端に結合され、また上記軸に垂直な方向では、上記層の後端における最外層の間の間隔に実質的に等しい寸法を有する上記遷移部分とから構成され、最接近層間の分離は上記電磁放射の半波長を下まわり、上記最外層間の干渉によって生じるビームパターンのショルダの大きさは、干渉に寄与することができる、増加された数の層によって低減されているアンテナを提供する。
他の観点においては、この発明は、軸に沿った電磁放射の送信と受信の少なくとも一方を行うアンテナであって、前記軸に垂直な方向で互に隔離して設けられた誘電体材料より構成された複数の層であって、その最外層は上記電磁放射の少なくとも半波長分だけ互いに隔離して設けられ、かつ上記層はその後端から前端にかけておおむね前記軸の方向に延在する複数の層と、導波管と、上記層を上記導波管に直接に電磁的に結合するように適合された遷移部分であって、該遷移部分の前端は上記層の後端に結合され、かつ上記層の前記後端における最外層の間の間隔に実質的に等しい、上記軸と垂直方向の寸法を有する遷移部分とから構成され、上記複数の層は3つだけの層であり、上記最外層間の干渉によって生じるビームパターンのショルダ大きさは、干渉に寄与することができる、増加された数の層によって低減されているアンテナを提供する。
他の観点においては、この発明は、軸に沿った電磁放射の送信と受信の少なくとも一方を行うためのアンテナであって、上記軸に垂直な方向に互に間隔をおいて配置された誘電体材料で形成された複数の層であって、その最外層が上記電磁放射の少なくとも半波長分だけ互に隔離して設けられ、かつ上記層はその後端から前端にかけておおむね上記軸の方向に延在している複数の層と、導波管と、上記層を上記導波管に直接電磁結合するために用いられる遷移部分であって、該遷移部分の前端は上記層の後端に結合され、かつ上記層の前記後端における最外層の間の間隔に実質的に等しい、上記軸と垂直方向の寸法を有する遷移部分とを具備し、上記複数の層は5つまたはそれ以上の層であり、上記最外層間の干渉によって生じるビームパターンのショルダの大きさは、干渉に寄与することができる、増加された数の層によって低減されているアンテナを提供する。
さらに他の観点においては、この発明は、軸に沿った電磁放射の送信と受信の少なくとも一方を行うアンテナであって、誘電体材料より構成された少なくとも4つの層であって、上記層はその後端から前端にかけておおむね前記軸の方向に延在する少なくとも4層と、上記層の後端に結合されて、上記層を導波管に電磁的に結合するように構成された遷移部分とから構成され、各層は前記軸に垂直な方向で実質的に上記電磁放射の1/4波長だけ隣接層と間隔をとる手段を有するアンテナを提供する。
この発明においては、隔離された層の構成がビーム形成構造内における多重反射を起こすことにより、アンテナの指向性を増す。多重反射の効果は、従来技術の“ポリロッド”または中空“ポリロッド”に比べて短かいアンテナ長に対して改善されたビーム幅を生じるようなアンテナのアレイファクタによっても、また通常のホーン装置に比べて減少した高さのアレイファクタによっても修正される。
好ましくは、層は、ビーム軸のまわりに対称なビームを発生するように、軸のまわりに対称に配置される。
一つの実施例において、複数の層は複数の平面上に延在し、またその軸は中心平面上に存在し、該層は中心平面に垂直な方向に互に隔離して設けられる。このような装置は、仰角において対称性を有するビームパターンを発生するように、中心平面に関して好ましくは対称に配置された誘電材料のパネルで形成されたリニアアレイアンテナを提供する。
好都合なことに、このようなリニアアレイアンテナにおいては、上記層をスロット付き導波管に直接結合するのに遷移部分が適合する。このようなスロット付き導波管は導波管の側壁または広い壁のいずれかに穿設されたスロットを有することができる。
他の実施例においては、上記層が軸のまわりに延在し、実質的に同心状の空洞部材を形成する。このような空洞部材は正方形、長方形、円形、卵形または長円形のような、いかなる断面形状であってもよい。空洞部材の断面形状は二次元ビームパターンに影響を与えるであろう。
他に採りうる実施例においては、誘電体材料より形成される“さらなる”少なくとも3層が軸および層に垂直な方向で、かつ該層と交差する方向で、互に隔離し配置される。前記のさらなる層は、層の後端から前端にかけておおむね軸の方向に延在する。好ましくは、層の間の間隔とさらなる層の間の間隔とは等しくしてあり、その結果、アンテナは二方向において類似した二次元ビーム形状を与える。
都合のよいことに、層は実質的に互に均等に隔離されており、また空気または、その誘電率が層を形成する物質の誘電率と比べて低い第2の物質を該層の間に介在させることができる。このような物質は発泡ポリスチレンまたは発泡ポリウレタンであってよい。
要求されるビーム幅とビームパターンにしたがって、前記層は軸に沿って多くの異なる形状に配置されることができる。層は軸に沿って基本的には平行に配置されることができ、層の間の間隔にはその後端から前端にかけてテーパをつけることも、また最外層の間の間隔のみに後端から前端にかけてテーパをつけることもできる。
他の実施例においては、層の厚みは後端から前端に向けてテーパをつけられる。内部または外部の層のみ、またはすべての層には、誘電体構造内の電界分布、または誘電体構造から放射される電界分布の必要な変更にしたがった態様でテーパをつけることができる。
好ましくは、層の平均厚みは電磁放射波長の1/100から5/100であり、より好ましくは2/100から4/100である。誘電体層のこのような厚みが最適な指向性を与える。
都合のよいことに、誘電体層はポリエチレンまたはポリカーボンのような誘電体材料で構成することができる。
理想的には、層の間の平均間隔は実質的に電磁放射波長の1/4である。なぜならば、これが最適な干渉効果を与えるからである。
好ましくは、後端から前端までの最外層の長さの、最外層の間の平均間隔に対する比は実質的に4:1である。このような構造は最適なダイナミック形状の範囲にあり、仮にその長さがより長いときはこの構造はより強度が弱くなり、またこの構造がより幅広いときは空気力学的性能が低下する。
この発明の実施例を、図面を参照して説明する。
第1図は通常の“横形放射”ホーンを用いる従来技術のリニアアレイアンテナの断面図である。
第2図は従来の“たて型放射”“ポリロッド”アンテナの一部破断図である。
第3図はスロット付き導波管と中空“ポリロッド”を用いる従来技術のリニアアレイアンテナの断面図である。
第4図は通常のホーンと二重殻誘電体構造との結合を用いる従来技術のリニアアレイアンテナの断面図である。
第5a図と第5b図は誘電体材料シートに沿った電磁放射伝播を示す図である。
第6図は2層の誘電体材料で構成されたアンテナから得られる仰角ビームパターンを示す図である。
第7図はこの発明の一実施例による、5枚の平面層(プレーナ層)を用いるリニアアレイアンテナの断面図である。
第8図は2層間の干渉のためにビームパターンに現れるショルダに対する電波の幾何学的関係を示す図である。
第9a図、第9b図及び第9c図はおのおの4層、5層及び6層アンテナにおける層間放射の自由空間波長の分数で与えられる間隔の範囲を示す図である。
第10a図、第10b図及び第10c図は、各層の分離A,B,C,D及びEの寄与のため放射の自由空間波長の分数として与えられる最外層の分離と、ビームパターンにおいてショルダが現われる理論計算上の角度との関係を示す図である。
第11図はこの発明の一実施例にしたがって、5枚の平行な誘電体材料平面層で形成された実用的なリニアアレイアンテナを示す図である。
第12図は第11図のアンテナによって生じる仰角ビームパターンを示す図である。
第13a図、第13b図、第13c図及び第13d図はこの発明の他の実施例によるリニアアレイアンテナを示す図である。
第14a図、第14b図、第14c図及び第14d図はこの発明のさらに他の実施例によるアレイアンテナを示す図である。
第15図は、二次元ビームパターンを生じるための、この発明の一実施例による6層“たて型放射”アンテナの縦断面図である。
第16a図は異なる仰角と方位角パターンを有するビームパターンを発生するための、第15図におけるX−X断面図である。
第16b図は仰角と方位角において等しい二次元ビームパターンを有するアンテナのための、第15図におけるX−X断面図である。
第17a図は、X軸のまわりを回転するのにつれて、仰角と方位角の間で連続的に変化する二次元ビームパターンを発生することができるアンテナのための、第15図におけるX−X断面図である。
第17b図は仰角から方位角にかけてY軸のまわりで回転する際に一定のビームパターンを発生するアンテナのため、第15図におけるX−X断面図である。
第18a図は異なる仰角および方位角パターンを有するビームパターンを供給するためのアンテナの断面図である。
第18b図は仰角と方位角の両方で等しい二次元ビームパターンを供給するためのアンテナの断面図である。
第19a図は仰角と方位角の間で軸のまわりを回転するにつれて、連続的に変化する二次元ビームパターンを供給するためのアンテナの断面を示す図である。
第19b図は仰角から方位角にかけて軸のまわりを回転しても一定のビームパターンを発生するためのアンテナの断面を示す図である。
ここで図面を参照すると、第5a図と第5b図は、電磁ビームが誘電体材料からの反射によって該材料にそって伝搬する、この発明の背景にある原理を示している。誘電体材料のシート内における伝搬モードの理論は、レオナード・ハトキン(Leonard Hatkin)著、“Proceedings of the IRE",1954年10月号、第1565〜1568頁の記事中で示されている。この記事によれば、エネルギは、空気と誘電体の界面における不連続性から生じる反射によって、パネル内に含まれる。第5a図と第5b図は電磁界放射の伝搬が誘電性パネルに沿う方向になされる場合を示しているが、上記理論は同じく電磁界放射の伝搬が2枚の誘電性パネル間のスペース(間隔)に沿ってなされる場合にも適用できる。反射は空気と誘電体の界面における不連続性によって生じる。
第6図は、2枚の平行な誘電体材料の層で形成されたアンテナで得られる仰角ビームパターンを示している。2つの顕著なサイドローブ即ちショルダ50がパターン中に見られる。これらのショルダ50は各層から放出された反射ビームの間の干渉によって生ずる。これらのショルダの発生は著しく増大したビーム幅を与えるので、極めて好ましくないものである。この発明は、2枚以上の誘電体層を用いてこれらのショルダを減らし、それによってビーム幅を減少する。
第7図はこの発明の1実施例にしたがって、5枚の平面層20aないし20eで構成されたリニアアレイアンテナの断面図を示している。スロット付き導波管21はスロット21aを具備し、該導波管は遷移部分22を介して誘電体層20aないし20eに結合される。上記遷移部分は誘電体材料よりなる最外層20aと20eとの間隔長に実質的に等しい高さhを有している。遷移部分22は、スロット付き導波管21と誘電体層20aないし20eとの間を効率良く電磁結合している。第7図においては、遷移部分は断面が長方形であるように示されているが、スロット付き導波管21と平面状誘電体層20aないし20eとの間を効率良く電磁結合しさえすれば、いかなる形状のものも用いることができる。誘電体層20aないし20eは後端から前端までの長さがLであり、各誘電体層は空気により、または好ましくは、誘電体材料の誘電率に比較して低い誘電率を有し、かつ前記諸層を支持することが可能な材料によって分離されている。空気の代りになり得る分離物質として、例えば発泡ポリスチレンまたは発泡ポリウレタンを用いることができる。上記層として用いられる誘電体材料は、ポリエチレンまたはポリカーボンのような適当な材料のいずれでもよい。このような材料の使用は、設計がコンパクトで、軽く、単純な構成であり、そのため製造者にとっては相対的に安価になるという利点を与える。さらに、その断面は海洋(船舶用)レーダに応用するのに理想的な空気力学的形状に近くなっている。
第7図のものは全部で5枚のパネルを用いることを図示しているが、3以上のいかなる枚数でも適用することができる。しかし、最外層(板)の特定の分離(separation)に用いるパネルの数には最適数がある。
第8図はビームパターンに“ショルダ”を形成するための放射の幾何学的パターン(ray geometry)を示している。エネルギが1つの層からB点において反射され、またA点において他の層を貫いて伝送されるとき、干渉が生じる。“ショルダ”を形成するような、強め合う干渉は経路差が半波長の奇数(倍)であるような角度θにおいて生じる。何故ならば、B点における反射によって半波長の位相反転が存在するからである。2枚のパネルの間隔がdで与えられるとすれば、ショルダが発生すると予想される角度シθは
θ=sin-1(λ/2d)
で与えられる。
各パネルは軸に沿って延在しているので、干渉効果におのおの寄与する長さδLの無限に小さい素子が無数に存在すると考えることができる。第9a図、第9b図及び第9c図はおのおの4層、5層及び6層のアンテナのための各層分離(layer separation)の配列を示している。第9a図、第9b図及び第9c図から、中空“ポリロッド”アンテナ、または唯一の反射成分(component)Aを有するだけの2層アンテナとは異なり、多層アンテナにおいては層の数に依存した複数の反射成分A,B,C,D及びEにエネルギが配分されることが分かる。
第10a図、第10b図及び第10c図は、第9a図、第9b図及び第9c図に示されるように各層が等間隔に配置されるとき、おのおの4層、5層及び6層アンテナの最外層の分離に対する、ビームパターン中に現われるショルダの計算上の角度の関係を示している。
第10a図は干渉成分A及びBの計算上の角度を示している。1.42λを示す最外層の最大分離のときですら、最近接層間の分離は僅かに0.48λであり、これは干渉のために必要とされる電磁放射の波長を下まわっており、かつ放射波長の1/2をも下まわるので、Cに対するカーブは図示されていない。
同様に第10b図において、グラフ中に示されている最外層の分離のための最近接層の間には干渉は発生しないであろうから、干渉成分A,B及びCのみしか図示されていない。
同様に第10c図においても、近接層の間では干渉は生じないので、曲線A,B,C及びDのみしか描かれていない。
例えばAのような最外層の間の干渉で生じるショルダの大きさを減らすためには、干渉に寄与することができる層の数を増すことが好ましい。例えば、空気力学上の理由から最外層の分離が約1λ以上にはできないとき、理想的な構造は第9b図に示す5層構造になる。第10a図から、4層配置の場合の1.02λの最外層分離に対しては、29゜及び47゜でショルダが生じることが分かる。最外層の同様の分離を有するが、5層からなる配置では、ショルダは29゜、41゜及び79゜で生じる。最外層の同様の分離を有するが6層を有する配置では、ショルダが29゜、38゜及び55゜で生じる。5層及び6層の配置では明らかに、余分のショルダが29゜におけるショルダの大きさを低減するのに役立つであろう。
しかし、6層配置において、干渉成分B及びCによって生じるショルダは軸により接近している。望まれることは、干渉成分B及びCによって、ショルダ成分Aを軸から引離すことである。その結果、最外層の1.02λの分離に対して、最適形状は、各層間の分離を0.254λにした5層構造になる。
第10a図、第10b図及び第10c図から理解できることは、理想的に最適な分離を得るため、各層は実効的に電磁放射波長の1/4だけ分離すべきであるということである。よって第9a図に示す4層構造では、第10a図からわかるように、最外層の分離は僅か0.76λにすべきである。また、第9c図に示す6層構造では、第10c図からわかるように、最外層の理想的な分離は1.27λにすべきである。
今までのところ、第9a図、第9b図及び第9c図、並びに第10a図、第10b図及び第10c図の検討において、理論的な結果は単一の無限に小さい素子δLを考慮したにすぎない。しかしながら、アンテナは長さLを有し、無限の数の素子δLより成るリニアアレイで構成される。したがってアンテナによって生じるビームパターンはアレイファクタによって修正されたようなエレメントパターンの組合せとなるであろう。アレイファクタは干渉成分の大きさ、または大きな軸離れ(off−axis)角度で生じるショルダの大きさを減らす効果を有するであろう。従って、基本的な干渉パターンとアレイファクタとの結合効果はショルダを顕著に減らす一方、良好なアンテナ指向性を提供する。
第11図を参照すると、この図は5枚のプレーナ層より成るプロトタイプ(原型)アンテナの断面を示している。第11図は第7図に示したものと類似の構造を示し、したがって同一の参照数字が同図中に用いられている。外方のプレーナパネル20aと20eはほぼ10λ×2.5λの寸法になっている。
第12図は、第11図に示したアンテナを用いて得られた仰角ビームパターンを示している。このパターンにおいては、干渉A,B,及びCに対応する3つのショルダが明瞭にわかる。
第11図に示す配置(装置)では、層の厚みは0.02λであり、この厚みは28゜のビーム幅を与える。0.03λの層厚みもまた試みられ、これは24゜のビーム幅を与えた。
よって、誘電層の厚みの増加はビーム幅を改善することが分かる。しかし最適の誘電層の厚みが存在するので、この厚みは電磁放射線波長の少なくとも1/100から5/100の間にすべきである。
今までに説明してきた層の配置は、アンテナ軸に対して実質的に平行に配置した3,4及び5層のみである。しかし、要求されるビームパターンに基づいて、第13図の(a)から(d)に示すように、多くの異った構成を採用することができる。
第13a図は7層配置を示し、すべての層が平行に配置される。
第13b図は5層配置を示し、最外層はアンテナの後端から前端に向けて一定角度でテーパをつけられている。
第13c図は5層配置を示し、最外層はアンテナの後端から前端に向けて増加する角度でテーパをつけられている。
第14図(a)〜(d)は、この発明のさらに他の実施例を示している。第14図(a)は5層配置を示し、これらすべての層の間の間隔にはアンテナの後端から前端に向けてテーパがつけられている。
第14図(b)は5層配置を示し、すべての層が軸に平行に配置されているが、最外層の厚みにはアンテナの後端から前端に向けてテーパがつけられている。これは内部の電界分布と誘電体構造からの放射を修正する。
第14図(c)は第14図(b)のものと逆の配置を示している。同図の構造は5枚の平行層からなっており、3枚の内部層はアンテナの後端から前端に向けてテーパをつけられた厚みを有している。
第14図(d)は各層が平行に配置された5層のアンテナを示している。この配置において、スロット付導波管30は広い壁の放射導波管よりなっている。これは、導波管の狭い壁の内部のスロットによって生じる成極または分極純度(polarisation purity)と比べて、前記純度を改善するので、有利である。
上述した各実施例においては、層はすべてプレーナ(平板状)として記載した。そのためその垂直面内においてだけ、ビームパターンが誘電体層の形状によって整形された。水平面におけるビームは、導波管のスロットの直線状のアレイから生じる振幅分布によって形成される。しかし、この発明はプレーナ層の利用に制限されるものではなく、垂直面および水平面の両方で同時にビームパターンを形成する層(配置)にも応用することができる。
第15図は遷移(中間)部分41によって導波管40に結合される6層アンテナの長手方向の断面を示している。第16a図、第16b図、第17a図及び第17b図は、垂直および水平の両面内において要求されるビームパターンにしたがって相異なる第15図の可能な断面X−Xの形状を示している。これらの図からわかるように、断面に現われる6層が実際には3個の同心的な空洞部材を形成する。
第16a図において、垂直軸方向のビームパターンは水平軸方向のものとは異なっている。すなわち、仰角と水平角のビームパターンは異なっている。
第16b図において、層の分離は水平と垂直の両方向において同じであるので、仰角と水平角の方向のビームパターンは同じになるであろう。
第17a図は垂直軸から水平軸にかけて連続的に変化するビームパターンを与える配置を示しており、一方、第17b図はY軸に対し対称であるビームパターンを与える配置を示している。
第15図から第17図に示す配置は、Y軸のまわりに同心的な空洞部材を形成する層の断面形状に依存する二次元ビームパターンを提供する。
第18a図、第18b図、第19a図及び第19b図は二次元ビームパターンを形成するための、さらに他の配置の断面を示している。これらの配置において、多数の平行な誘電体シート51,61は、第7図から第14図に関して上述したように垂直方向でビームを形成するために用意される。さらに、多数の垂直な誘電シート50,60が用意される。これらのシートはシート51,61と交差し、また同様な態様で水平方向でのビームを形成する。これらの図において、シート50,51,60及び61は2方向において等しいビーム形状を形成するように等間隔で図示されているが、2方向において異なるビームパターンが望まれるときは、シート50,60はシート51,61に対して異なる間隔をとることができる。
第18a図、第18b図、第19a図及び第19b図においては、最適の内部パネル分離が維持される一方、実際上どのようなアンテナ開口方位比(aperture aspect ratio)をも与えることができる。
この発明は多くの利点を提供する。複数の面として配置することができるか、または実質的に同心状の空洞部材を形成するように1つの軸のまわりに延在することができる、互いに間隔をおいた層を用いることにより、単純でより安価な構造の軽いアンテナが提供され、このアンテナは望ましいビーム幅を与えながら、断面寸法を減らし、その結果利点のある空気力学的形状を呈している。らっぱ形に広がったフィードホーンの省略は有利である。何故なら、この省略はよりすっきりした空気力学的形状と魅力的な外観を与えるからである。さらに、多層を用いることにより誘電体の積層構造の突出部の長さが過大にならず、そのため平面状構造においては、強風状態での上方通風に対峙する面積が減少される。その構造は理想的には、空気力学的および機構的に好ましい4:1の長さ対高さの比を有するように作ることができる。また(アンテナの)支持がアンテナ本体の剛性によってなされるので、誘電体の強力な取付けは必要とされない。
Claims (28)
- 軸に沿った電磁放射の送信と受信の少なくとも一方を行うためのアンテナであって、
上記軸に垂直な方向に互に間隔をおいて配置された誘電体材料で形成された少なくとも4つの層であって、その最外層が上記電磁放射の少なくとも半波長分だけ互に間隔をとって設けられ、かつ上記層はその後端から前端にかけておおむね上記軸の方向に延在している少なくとも4つの層と、
導波管と、
上記層を上記導波管に直接電磁結合するために用いられる遷移部分であって、該遷移部分の前端は上記層の後端に結合され、かつ上記層の前記後端における最外層の間の間隔に実質的に等しい、上記軸と垂直方向の寸法を有する遷移部分とを具備し、
上記少なくとも4つの層において、外層とそれに隣接す る層間の分離である、最接近層間の分離は全て、上記電磁放射の半波長を下まわり、上記最外層間の干渉によって生じるビームパターンのショルダの大きさは、干渉に寄与することができる、増加された数の層によって低減されていることを特徴とするアンテナ。 - 上記少なくとも4つの層は、5層またはそれ以上の層より構成された請求項1に記載されたアンテナ。
- 軸に沿った電磁放射の送信と受信の少なくとも一方を行うためのアンテナであって、
上記軸に垂直な方向に互に間隔をおいて配置された誘電体材料で形成された複数の層であって、その最外層が上記電磁放射の少なくとも半波長分だけ互に隔離して設けられ、かつ上記層はその後端から前端にかけておおむね上記軸の方向に延在している複数の層と、
導波管と、
上記層を上記導波管に直接電磁結合するために用いられる遷移部分であって、該遷移部分の前端は上記層の後端に結合され、かつ上記層の前記後端における最外層の間の間隔に実質的に等しい、上記軸と垂直方向の寸法を有する遷移部分とを具備し、
上記複数の層は3つだけの層であり、上記最外層間の干渉によって生じるビームパターンのショルダの大きさは、干渉に寄与することができる、増加された数の層によって低減されていることを特徴とするアンテナ。 - 軸に沿った電磁放射の送信と受信の少なくとも一方を行うためのアンテナであって、
上記軸に垂直な方向に互に間隔をおいて配置された誘電体材料で形成された複数の層であって、その最外層が上記電磁放射の少なくとも半波長分だけ互に隔離して設けられ、かつ上記層はその後端から前端にかけておおむね上記軸の方向に延在している複数の層と、
導波管と、
上記層を上記導波管に直接電磁結合するために用いられる遷移部分であって、該遷移部分の前端は上記層の後端に結合され、かつ上記層の前記後端における最外層の間の間隔に実質的に等しい、上記軸と垂直方向の寸法を有する遷移部分とを具備し、
上記複数の層は5つまたはそれ以上の層であり、上記最外層間の干渉によって生じるビームパターンのショルダの大きさは、干渉に寄与することができる、増加された数の層によって低減されていることを特徴とするアンテナ。 - 軸に沿った電磁放射の送信と受信の少なくとも一方を行うためのアンテナであって、
誘電体材料で形成された少なくとも4つの層であって、上記層はその後端から前端にかけておおむね上記軸の方向に延在している少なくとも4つの層と、
上記層の後端に結合され、上記層を導波管に直接電磁結合するために用いられる遷移部分とを具備し、
各層は前記軸に垂直な方向で実質的に上記電磁放射の1/4波長だけ隣接層と間隔をとる手段を有することを特徴とするアンテナ。 - 上記遷移部分の前端は上記層の後端に結合され、かつ上記層の前記後端にける最外層の間の間隔に実質的に等しい、上記軸と垂直方向の寸法を有する請求項5に記載されたアンテナ。
- 上記層は上記軸に関して実質的に対称に配置された請求項1ないし6のいずれかに記載されたアンテナ。
- 上記複数の層は複数の平面上に延在し、上記軸は中心平面上にあり、上記層は上記中心平面に垂直な方向に互に間隔をとって配置された請求項1ないし7のいずれかに記載されたアンテナ。
- 上記層は上記中心平面に関して鏡面対称に配置された請求項8に記載されたアンテナ。
- 上記導波管はスロット付き導波管であり、上記遷移部分は上記層を上記スロット付き導波管に直接結合するように適合された請求項7または8に記載されたアンテナ。
- 上記層は実質的に同心状の空洞部材を形成するように上記軸のまわりに延在する請求項1ないし6のいずれかに記載されたアンテナ。
- 誘電体材料より構成された少なくとも3つのさらなる層であって、上記軸および上記層に垂直な方向に互に隔離されていて上記層と交差すると共に、上記層の後端から上記層の前端までおおむね上記軸の方向に延在している、少なくとも3つのさらなる層を含む請求項1ないし10のいずれかに記載されたアンテナ。
- 上記層は互に実質的に均等な間隔をとっている請求項1ないし12のいずれかに記載されたアンテナ。
- 上記層の間には空気が介在している請求項1ないし13のいずれかに記載されたアンテナ。
- 上記層の間には第2の物質が介在しており、前記第2の物質は上記層を形成する物質の誘電率に比べて低い誘電率を有する請求項1ないし13のいずれかに記載されたアンテナ。
- 上記第2の物質は発泡ポリスチレンよりなる請求項15に記載されたアンテナ。
- 上記第2の物質は発泡ポリウレタンよりなる請求項15に記載されたアンテナ。
- 上記層が上記軸に実質的に平行に配置された請求項1ないし17のいずれかに記載されたアンテナ。
- 上記層の間の間隔には、上記後端から上記前端にかけてテーパがつけられた請求項1ないし17のいずれかに記載されたアンテナ。
- 上記最外層の間の間隔に、上記後端から上記前端にかけてテーパがつけられた請求項1ないし17のいずれかに記載されたアンテナ。
- 上記最外層の厚みに、上記後端から上記前端にかけてテーパがつけられた請求項1ないし20のいずれかに記載されたアンテナ。
- 上記最外層の間の層の厚みには、上記後端から上記前端にかけてテーパがつけられた請求項1ないし21のいずれかに記載されたアンテナ。
- 上記層は上記電磁放射の波長の1/100ないし5/100の平均厚みを有する請求項1ないし22のいずれかに記載されたアンテナ。
- 上記層は上記電磁放射の波長の2/100ないし4/100の平均厚みを有する請求項23に記載のアンテナ。
- 上記層はポリエチレンで構成された請求項1ないし24のいずれかに記載のアンテナ。
- 上記層はポリカーボンで構成された請求項1ないし24のいずれかに記載のアンテナ。
- 軸方向におけるアンテナの長さと最外層の間の平均間隔との比は実質的に4:1である請求項1ないし26のいずれかに記載のアンテナ。
- 層の間の平均間隔は実質的に上記電磁放射の波長の1/4である請求項1ないし3いずれかに記載のアンテナ。
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