JP3633961B2 - 車軸用軸受装置の予圧測定方法及び装置 - Google Patents

車軸用軸受装置の予圧測定方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、自動車等の車輪に用いられる車軸用軸受装置の予圧管理手段に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば図5に示す車軸用軸受装置は、外輪21の内周に設けた複列の軌道面21a、21bのうち、軌道面21bに対向する軌道面23aを内輪23の外周に、軌道面21aに対向する軌道面22aを車軸22の外周に形成したものである。外輪21の外周には車体(図示省略)に固定するためのフランジ21cが一体に周設され、車軸22の軸端外周にはハブボルト27を装着するためのフランジ22gが一体に周設されている。また、車軸22の略中央外周には軌道面22a、及び、内輪23を圧入するための圧入部22cが肩部22bを介して連設されている。内輪23は車軸22の圧入部22cに圧入され、車軸22の軸端に螺合したナット26で固定される。
【0003】
ところで、この種の軸受装置にあっては、軸受の転動寿命、剛性、ならびにフレッティング防止の面から所定の予圧をかけて使用するのが有利であるが、予圧量を直接管理することは困難であるため、通常、ナット26の締付けトルク管理による間接的な予圧管理を行なっている。すなわち、所定の予圧量に相当するナット26の締付けトルクを予め設定しておき、ナット26の締付けトルクがこの設定値に達するまで内輪23を車軸22の肩部22bに向けて締付けるのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の予圧管理方法では、軸受寿命や剛性の面から最適予圧量が設定されても、それを実測する手段がなく、また、ナットの締付けトルクにバラツキがあることから、信頼性の点で問題が残っていた。
【0005】
そこで、本発明は、上記のような車軸用軸受装置の予圧量を精度良く管理することのできる管理手段を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、車軸用軸受装置の予圧測定方法に関するもので、車軸と外輪のうち一方を保持した状態で、両者の間にスラスト荷重を負荷しつつ他方を回転させながら、前記スラスト荷重により予圧が減少する側のボール列の公転トルクを検出し、スラスト荷重と公転トルクの関係から予圧量を求めるものである。
【0007】
請求項2の発明は、上記予圧測定方法に使用する装置に関するもので、車軸と外輪のうち一方を保持する保持手段と、他方を回転駆動する回転駆動手段と、車軸と外輪との間にスラスト荷重を負荷するスラスト負荷手段と、前記スラスト荷重により予圧が減少する側のボール列の公転トルクを検出する検出手段とを備えたものである。
【0008】
請求項3の発明は、上記予圧測定方法を用いた予圧調整方法に関するもので、上記の予圧測定方法により求められる予圧量を監視しながら、所定の予圧量になるよう調整するものである。
【0009】
請求項4の発明は、上記予圧調整方法に使用する装置に関するもので、車軸と外輪のうち一方を保持する保持手段と、他方を回転駆動する回転駆動手段と、車軸と外輪との間にスラスト荷重を負荷するスラスト負荷手段と、前記スラスト荷重により予圧が減少する側のボール列の公転トルクを検出する検出手段と、予圧量を調整する予圧調整手段とを備えたものである。
請求項5の発明は、車軸用軸受装置に関するもので、外周にフランジを設け、内周に複列の軌道面を設けた外輪と、軸端外周にフランジを設け、外周に複列の軌道面を配列した車軸と、外輪の軌道面と車軸側の軌道面との間に介在する複列のボールと、ボールを保持する保持器とを備えた構成において、車軸と外輪のうち一方を保持した状態で、両者の間にスラスト荷重を負荷しつつ他方を回転させながら、前記スラスト荷重により予圧が減少する側のボール列の公転トルクを管理することにより、予圧量が所定の許容値内に管理されていることを特徴とするものである。
請求項5の構成において、車軸の複列の軌道面のうち、フランジ側の軌道面を車軸の外周に直接形成し、フランジと反対側の軌道面を、車軸の外周に圧入した内輪により形成することができる(請求項6)。あるいは、車軸の複列の軌道面を、車軸の外周に圧入した2つの内輪により形成することもできる(請求項7)。
【0010】
【作用】
例えば、スラスト荷重F=0でスラスト方向にかかっている初期予圧量をF0、スラスト荷重Fが負荷された時、スラスト荷重Fにより予圧が減少する側のボール列に加わるスラスト方向の予圧量をF’とすると、F’=F0−Fとなる。ボール列の公転トルクTBは予圧量F’に比例すると考えられるから、TB=kF’=k(F0−F)となる(図3参照)。したがって、スラスト荷重Fを変化させて、TB=0になる時の荷重Fで初期予圧量F0を求めることができる。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。
【0012】
図1に示すように、この実施例に係わる車軸用軸受装置は、内周に複列の軌道面1a、1bを設けた外輪1と、外輪1のインナー側の軌道面1bに対向する軌道面3aを外周に設けた内輪3と、外輪1のアウター側の軌道面1aに対向する軌道面2a、及び、内輪3を圧入するための圧入部2cを肩部2bを介して外周に連設した車軸2と、外輪1と車軸2及び内輪3との間に介在する複列のボール4a、4bと、ボール4a、4bを保持する保持器5a、5bと、車軸2のインナー側の軸端外周に螺合したナット6とで構成される。外輪1のインナー側の外周には車体(図示省略)に固定するためのフランジ1cとボス1dとが設けられている。また、車軸2のインナー側の軸端外周にはナット6を螺合させるためのねじ部2dが設けられ、アウター側の軸端外周には車輪(図示省略)に固定するためのフランジ2gとボス2eとが設けられている。フランジ2gにはハブボルト7が装着される。車軸用軸受装置は前の組立工程にて図1に示す状態に組立られ、ナット6の締付け調整により所定の予圧量を付与された後、予圧測定装置にセッティングされる。尚、車軸用軸受装置には、2つの内輪を車軸の外周に圧入するタイプのものもあるが、本発明はこのタイプの車軸用軸受装置にも適用することができる。
【0013】
この実施例の予圧測定装置は、車軸2を保持する保持装置10、外輪1にスラスト荷重を負荷しつつ回転させる負荷装置11、インナー側のボール列4bの公転トルクを検出する検出装置12を主要な構成要素とする。
【0014】
保持装置10は、車軸2のボス2eに適合する内周10aを備えた筒体又はブロック体である。車軸2のボス2eを内周10aに嵌合した後、ハブボルト7で固定する。あるいは、保持装置10を、軸線に沿って複数箇所で分割され、半径方向に可動なチャック形式とし、車軸2のボス2eを手動で又は自動的に握持・開放する構成としても良い。
【0015】
負荷装置11は、外輪1のボス1dに適合する内周11a1を備えた筒状の押圧部材11a、押圧部材11aをスラスト方向に押圧駆動するスラスト負荷手段(図示省略)、押圧部材11aを回転駆動する回転駆動手段(図示省略)を主要な構成要素とする。外輪1のボス1dに押圧部材11aの内周11a1を嵌合した後、図示されていないボルトで固定する。あるいは、押圧部材11aを上記のようなチャック形式とし、外輪1のボス1dを手動で又は自動的に握持・開放する構成としても良い。
【0016】
検出装置12は、インナー側のボール4b間に挿入される櫛12a1を備えた櫛状部材12a、櫛状部材12aの回転トルクを検出する検出手段、例えば、ストレインゲージ12bおよびスリップリング12cを主要な構成要素とする。
【0017】
上記のような予圧装置を用いて、車軸2を保持した状態で、外輪1にスラスト荷重Fを負荷しつつ回転させながら、スラスト荷重Fにより予圧が減少する側のボール列(この実施例ではインナー側のボール列4b)の公転トルクTBを検出することにより、初期予圧量を求めることができる。
【0018】
すなわち、スラスト荷重F=0でスラスト方向にかかっている初期予圧量をF0、スラスト荷重Fが負荷された時、ボール列4bに加わるスラスト方向の予圧量をF’とすると、F’=F0−Fとなる。ボール列4bの公転トルクTBは予圧量F’に比例すると考えられるから、TB=kF’=k(F0−F)となる(図3参照)。したがって、スラスト荷重Fを変化させて、TB=0になる時の荷重Fで初期予圧量F0を求めることができる。
【0019】
ボール列4bの公転トルクTBは検出装置12の櫛状部材12aで取り出して、ストレインゲージ12bおよびスリップリング12cにより検出するが、予圧が大きい段階で、ボール列4bの公転を櫛状部材12aによって強制的に止めると、軌道面1b、3aとボール4bとの間で大きな滑り摩擦が生じ、軸受にダメージを与える可能性がある。そこで、この実施例では、櫛状部材12aの軸部を摩擦部材13(制動トルクTL)によって回転可能に支持し、TB〉TLの場合は櫛状部材12aがボール列4bの公転に従動して回転し、TB〈TLになると櫛状部材12aが回転を停止し、ボール列4bの公転トルクTBが櫛状部材12aに作用する構成としてある。
【0020】
したがって、図2に示すように、ストレインゲージ12bによって検出される検出トルクTは、TB〉TLの領域ではT=TL、TB〈TLの領域ではT=TBになる。理論上は、このTBがゼロになる時のスラスト荷重Fで初期予圧量F0を求めることができるのであるが、実際には、予圧量F’(=F0−F)=0としても櫛状部材12aにはボール4bの自重による転がり摩擦等の微小トルクが作用し、また、F〉F0としてもTBはゼロよりも小さくなることはないので、TB=0を精度良く検出することは困難である。そこで、TB=0に近いT=T0’となる時のスラスト荷重F0’で初期予圧量F0を近似するか、あるいは、TL〉T〉T0’における検出トルク線図から初期予圧量F0を直線近似により推定する。
【0021】
以上のようにして求めた初期予圧量F0が所定の許容値内に入っていれば検査合格、許容値外であれば不合格とする。検査合格の場合は、車軸用軸受装置を検査装置にセッティングした状態でグリース等の潤滑剤の充填作業を行なっても良い。
【0022】
尚、ストレインゲージ12bでトルクTを検出する代わりに、摩擦部材13の制動トルクTLを十分小さくして、櫛状部材12aの回転を回転センサ14(図1参照)で検出し、スラスト荷重Fを増加させて櫛状部材12aの回転が停止した時のスラスト荷重Fにより、あるいは、スラスト荷重Fを減少させて櫛状部材12aの回転が開始した時のスラスト荷重Fにより初期予圧量F0を近似しても良い。
【0023】
また、この実施例では、外輪1に回転動力とスラスト荷重Fとを付与する構成にしてあるが、外輪1には回転動力のみを付与し、スラスト荷重Fは保持装置10により車軸2に負荷する構成としても良い。さらには、外輪1を保持した状態で、車軸2を回転させながらボール列4bの公転トルクを検出する構成としても良い。この場合、車軸2に回転動力とスラスト荷重Fとを付与する構成、車軸2に回転動力を付与し、外輪1にスラスト荷重Fを負荷する構成のいずれでも良い。
【0024】
図4は、予圧調整装置を示している。基本的な構成は図1に示す予圧測定装置と同じであるが、櫛状部材12aの軸部が筒状になっている点、櫛状部材12aの内周に、予圧調整手段としての締付け部材15が進退自在に挿通されている点が異なる。また、車軸用軸受装置は前の組立工程にて図4に示す状態に組立られ、予圧調整装置にセッティングされるが、前の組立工程の段階では予圧量の調整は行なわれておらず、ナット6の締付けは仮止め程度である。
【0025】
予圧調整は、負荷装置11により、所定の予圧量F0(スラスト方向)に対応したスラスト荷重F0を外輪1に負荷しつつ回転させながら、ボール列4bの公転トルクTBがゼロに近いT0’になるまで、締付け部材15によりナット6を締付けることにより行なう。ナット6の締付け後、スラスト荷重F0を除去すると、車軸用軸受装置に所定の予圧量F0が付与される。組立工程において、ナット6の締付けトルクの管理による予圧調整が不要であり、また、予圧量を直接監視しながら予圧調整ができるので、精度の高い予圧調整が可能である。予圧調整後、車軸用軸受装置を予圧調整装置にセッティングした状態でグリース等の潤滑剤の充填作業を行なっても良い。
【0026】
【発明の効果】
本発明は、以下に示す効果を有する。
【0027】
(1)予圧量を直接的に管理することができるので、最適予圧量を精度良く保証することができ、車軸用軸受装置の信頼性が向上する。
【0028】
(2)予圧量を監視しながら所定値に調整することにより、従来のナットの締付けトルク管理による予圧調整に比べ、予圧調整の精度が高くなるので、車軸用軸受装置の信頼性が格段に向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係わる予圧測定装置を示す断面図である。
【図2】スラスト荷重Fと公転トルクTBの関係を示す図である。
【図3】スラスト荷重Fと公転トルクTBの関係を示す図である。
【図4】本発明の実施例に係わる予圧調整装置を示す断面図である。
【図5】車軸用軸受装置の断面図である。
【符号の説明】
1 外輪
1a 軌道面
1b 軌道面
1c フランジ
2 車軸
2a 軌道面
2g フランジ
3 内輪
3a 軌道面
4a ボール
4b ボール
10 保持装置
11 負荷装置
12 検出装置
15 締付け部材

Claims (7)

  1. 外周にフランジを設け、内周に複列の軌道面を設けた外輪と、軸端外周にフランジを設け、外周に複列の軌道面を配列した車軸と、外輪の軌道面と車軸側の軌道面との間に介在する複列のボールとを備えた車軸用軸受装置の予圧量を測定するための方法であって、
    車軸と外輪のうち一方を保持した状態で、両者の間にスラスト荷重を負荷しつつ他方を回転させながら、前記スラスト荷重により予圧が減少する側のボール列の公転トルクを検出し、スラスト荷重と公転トルクの関係から予圧量を求めることを特徴とする車軸用軸受装置の予圧測定方法。
  2. 請求項1の予圧測定方法に使用する装置であって、車軸と外輪のうち一方を保持する保持手段と、他方を回転駆動する回転駆動手段と、車軸と外輪との間にスラスト荷重を負荷するスラスト負荷手段と、前記スラスト荷重により予圧が減少する側のボール列の公転トルクを検出する検出手段とを備えたことを特徴とする車軸用軸受装置の予圧測定装置。
  3. 請求項1の予圧測定方法により求められる予圧量を監視しながら、所定の予圧量になるよう調整することを特徴とする車軸用軸受装置の予圧調整方法。
  4. 請求項3の予圧調整方法に使用する装置であって、車軸と外輪のうち一方を保持する保持手段と、他方を回転駆動する回転駆動手段と、車軸と外輪との間にスラスト荷重を負荷するスラスト負荷手段と、前記スラスト荷重により予圧が減少する側のボール列の公転トルクを検出する検出手段と、予圧量を調整する予圧調整手段とを備えたことを特徴とする車軸用軸受装置の予圧調整装置。
  5. 外周にフランジを設け、内周に複列の軌道面を設けた外輪と、軸端外周にフランジを設け、外周に複列の軌道面を配列した車軸と、外輪の軌道面と車軸側の軌道面との間に介在する複列のボールと、ボールを保持する保持器とを備えた車軸用軸受装置において、
    車軸と外輪のうち一方を保持した状態で、両者の間にスラスト荷重を負荷しつつ他方を回転させながら、前記スラスト荷重により予圧が減少する側のボール列の公転トルクを管理することにより、予圧量が所定の許容値内に管理されていることを特徴とする車軸用軸受装置。
  6. 車軸の複列の軌道面のうち、フランジ側の軌道面が車軸の外周に直接形成され、フランジと反対側の軌道面が、車軸の外周に圧入した内輪により形成されていることを特徴とする請求項5記載の車軸用軸受装置。
  7. 車軸の複列の軌道面が、車軸の外周に圧入した2つの内輪により形成されていることを特徴とする請求項5記載の車軸用軸受装置。
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