JP3633850B2 - 現像方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電複写機やプリンタ等の画像形成装置において、非磁性一成分のトナーを用いて潜像担持体上の静電潜像を現像する現像方法の技術分野に属し、特に、金属ローラの少なくとも現像剤担持領域の表面にサンドブラスト処理により凹凸が形成されているとともに、更に少なくとも凹凸形成部分がアルマイト処理を施されて形成された現像ローラを用いて現像を行う現像方法の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、静電複写機やプリンタ等の画像形成装置においては、感光体等の潜像担持体に担持された静電潜像を現像装置の現像剤により現像した後、この現像された潜像担持体上の像を紙等の記録媒体に転写し、更に記録媒体に転写した転写像を定着することにより、画像を得るようになっている。
【0003】
このような画像形成装置における従来の現像装置には、現像剤を担持して潜像担持体へ搬送する現像ローラが潜像担持体に接触する接触現像式の現像装置がある。この接触現像式の現像装置においては、帯電された一成分現像剤を現像ローラにより、この現像ローラが接触する潜像担持体の方へ搬送し、この一成分現像剤で潜像担持体上の静電潜像を現像するようになっている。その場合、現像ローラとしてアルミや鉄系の金属ローラが用いられるが、特に、加工が容易でかつ安価なことからアルミの金属ローラが多く用いられている。
【0004】
ところで、現像装置における現像ローラはその機能として、▲1▼ 現像剤の搬送、▲2▼ 現像剤の帯電、および▲3▼ 現像バイアスの放電防止が求められる。
そこで、現像剤の搬送性および現像剤の帯電性を向上するために、従来、金属ローラの表面にサンドブラスト処理を施して凹凸を形成するとともに、その凹凸面にニッケルめっき等の金属めっき処理を施した担持体ロール(すなわち、現像ローラ)が特公平6ー46331号公報により提案されている。この公告公報に開示されている担持体ロールによれば、担持体ロールの表面に形成された凹凸面が現像剤の搬送能力を力学的に高めることができ、現像剤の搬送性が向上する。しかも、この凹凸面により現像剤との接触面積が増大するため、現像剤の帯電性が向上する。そして、金属ローラの凹凸面に金属めっき処理を施すことで、金属ローラの凹凸面の耐摩耗性が向上されている。
【0005】
また、現像バイアスの放電を防止するために、従来、比抵抗が所定の値に設定された現像ローラが提案されている。例えば、導電性粉末を分散した樹脂で成形され、比抵抗が104〜1012Ωcmの範囲の円筒状の剛性体の内面に導電膜を形成するか、あるいはこの内面に107Ωcm以下の導電性塗料を塗布した非磁性一成分トナーの担持体(つまり現像ローラ)が特公平2ー26226号公報により提案されている。また、比抵抗104〜1012Ωcmのアルミナ等のセラミックで形成された層厚が100〜1000μmの半導電層を、表面に形成された非磁性一成分トナーのトナー担持体(つまり現像ローラ)が特許第2705090号公報により提案されている。これらの公報に開示されている非磁性一成分トナーの担持体によれば、少なくともその表面が所定の抵抗を有しているため、現像バイアスの放電が効果的に防止されて画像欠陥を防止できる。
【0006】
一方、前述の特公平2ー26226号公報および特許第2705090号公報にも開示されているように、従来、現像装置においては、直流電圧に交流電圧を重畳させた現像バイアスを用いることで、潜像担持体の非画像部へのトナー付着(いわゆる、かぶり)を防止し、かつ適度なエッジ効果を持たせることともに、階調性を向上させるようにすることが行われている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特公平6ー46331号公報に開示されている担持体ロールでは、サンドブラスト処理で凹凸が形成された表面に金属めっき処理が実施される。このめっき処理はため、凹凸面にめっき材が盛られるようになる。このため、サンドブラスト処理による鮮明な凹凸形状がめっき材により変形し、凸部つまり互いに隣接する凹の境のエッジ(稜線)がくずれて凹凸が不鮮明になってしまう。したがって、せっかくサンドブラスト処理で鮮明な凹凸を形成し、この凹凸面の耐摩耗性を向上しても、金属めっきにより凹凸が不鮮明になることから、現像ローラ表面の凹凸による搬送性向上の効果および帯電性の向上の効果を十分にかつ確実に得ることはできないという問題がある。
【0008】
また、特公平2ー26226号公報に開示されている、導電性粉末を分散した樹脂で成形された担持体では、導電性粉末が分散していることからその分散状態の影響を受け易いため、担持体の表面に均一に抵抗を有するようにすることは難しく、画像に濃度むらが生じる問題がある。
更に、特許第2705090号公報にも開示されている、セラミックからなる100〜1000μmの半導電層が形成されたトナー担持体では、半導電層がセラミック粒子をアーク放電によって溶融させ、これをトナー担持体の基材に吹き付けることで形成されるため、製造が面倒であり、コストが高いという問題がある。
【0009】
そのうえ、現像ローラには前述の▲1▼〜▲3▼からなる3つの機能をより一層確実に持たせるようにすることが望まれるが、そこで、前述の各公報に記載されている技術的事項を組み合わせることにより、これらの3つの機能を現像ローラに持たせるようにすることが考えられる。しかし、このように各公報記載のものを組み合わせることにより、現像ローラに前述の3つの機能を持たせるようにした場合、次のような問題がある。
【0010】
すなわち、特公平6ー46331号公報記載のものと特公平2ー26226号公報記載のものとを組み合わせようとした場合は、特公平2ー26226号公報記載の導電性粉末を分散した樹脂で成形された担持体は金属担持体ではなく、特公平6ー46331号公報記載のサンドブラスト処理による凹凸の形成およびその凹凸面の耐摩耗性を向上させる処理を行うことは難しいという問題がある。したがって、特公平6ー46331号公報記載のものと特公平2ー26226号公報記載のものとを組み合わせることができなく、前述の3つの機能を現像ローラにより一層確実に持たせることはきわめて困難である。
【0011】
また、特公平6ー46331号公報記載のものと特許第2705090号公報記載のものとを組み合わせようとした場合は、特公平6ー46331号公報記載のものの凹凸面に、特許第2705090号公報記載のものアーク放電によって溶融されたセラミックからなる半導電層が形成されることになる。このため、前述の特公平6ー46331号公報記載の凹凸面に金属めっきが施される場合と同様に、互いに隣接する凹部の境のエッジ(稜線)がくずれて凹凸が不鮮明になってしまうという問題がある。したがって、特公平6ー46331号公報記載のものと特許第2705090号公報記載のものとを組み合わせることはできなく、この場合にも前述の3つの機能を現像ローラにより一層確実に持たせることはきわめて困難である。
しかも、前述の各公報に記載されている現像装置は、いずれも非接触現像式の現像装置であるため、これらを現像ローラが潜像担持体に接触する接触現像式の現像装置にそのまま適用することはできない。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、表面にサンドブラスト処理を施された後アルマイト処理を施された現像ローラを用いて現像を行うことで、非磁性一成分トナーの搬送、非磁性一成分トナーの帯電、および現像バイアスの放電防止をより一層確実に発揮できるようにしながら、現像ローラに施したアルマイト処理による微細孔の特別の封孔処理を不要または簡単にできる現像方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために、請求項1の発明は、金属ローラから形成され、この金属ローラの少なくとも現像剤担持領域の表面にサンドブラスト処理により凹凸が形成されているとともに、更に少なくとも凹凸形成部分がアルマイト処理を施されて形成された現像ローラにより、トナー粒子に外添剤が付着された非磁性一成分のトナーを担持して潜像担持体へ搬送しかつこの潜像担持体上の静電潜像を前記トナーで現像する現像方法において、前記外添剤に、粒子の粒径が前記アルマイト処理によって生じた陽極酸化皮膜に存在する微細孔の径より小径に設定された外添剤を用いるとともに、前記現像ローラに、封孔処理をされていない多数の前記微細孔を有する現像ローラを用い、前記静電潜像を現像する際、前記トナーが前記現像ローラに担持されて前記潜像担持体へ搬送されるときに、前記外添剤のうち前記トナー粒子から遊離した遊離外添剤により、前記微細孔を封じ込めることを特徴としている。
また、請求項2の発明は、前記外添剤の遊離率が2%以上に設定された非磁性一成分のトナーを用いて前記静電潜像を現像することを特徴としている。
【0014】
【作用】
このように構成された本発明の現像方法においては、現像ローラを構成する金属ローラの少なくとも現像剤担持領域の表面に、サンドブラスト処理により隣接する凹部と凹部との境のエッジ(稜線)が明瞭に形成される。そして、この金属ローラの凹凸形成部分がアルマイト処理(陽極酸化処理)を施され、金属ローラの凹凸形成部分の表面に陽極酸化皮膜(以下、酸化皮膜ともいう)が形成される。このとき、アルマイト処理による電気分解反応がほとんど金属ローラの表面から内部に浸透するので、表面に形成される陽極酸化皮膜の厚みは薄い。このため、陽極酸化皮膜が金属ローラの表面に形成されても、サンドブラスト処理による凹凸形状がこの陽極酸化皮膜で阻害されることはなく、アルマイト処理後の凹凸形状は、ほぼサンドブラスト処理による凹凸形状に保持されるようになる。すなわち、隣接する凹部と凹部との境のエッジ(稜線)が明瞭に形成される。したがって、現像ローラ表面の凹凸形状におけるエッジ(稜線)効果により現像剤の搬送がより一層確実となり、現像剤の搬送性が向上する。
【0015】
また、サンドブラスト処理による凹凸形状におけるエッジ(稜線)が保持されることにより、現像ローラにおける現像剤の粒子との接触面積が増大する。これにより、現像ローラと現像剤の粒子との摩擦が十分に行われ、現像剤の粒子が効果的に摩擦帯電するようになる。したがって、現像剤の帯電性が向上する。
【0016】
更に、アルマイト処理で形成された酸化被膜により現像ローラの表面が硬くなるため、現像ローラの耐摩耗性および機械強度がともに向上する。その場合、アルマイト処理における電気分解の水溶液を比較的低い温度にするとともに、ゆっくり処理を行うことで、現像ローラの表面がより一層硬くなる。
【0017】
しかも、この酸化被膜は、多数の微細孔を有する厚い多孔層と、緻密で非常に薄い活性層とからなるセル構造となっている。その場合、活性層は電気抵抗を有しているため、電気抵抗の比較的小さい金属ローラ表面にアルマイト処理により電気抵抗層が形成され、金属ローラは所定の電気抵抗を有するようになる。このとき、金属ローラの表面は均一にアルマイト処理されるので、電気抵抗が金属ローラのアルマイト処理部分の全面にわたってより均一に得られるようになる。これにより、現像ローラの材料として予め所定の電気抵抗を有する特別な材料を用いる必要がないので、現像ローラが、所定の大きさの均一な電気抵抗を有する金属ローラから安価にかつ簡単に形成されるようになる。
【0018】
ところで、酸化被膜は多数の微細孔を有しているが、アルマイト処理部分にこのような多数の微細孔が存在すると、これらの多数の微細孔のため、現像ローラのアルマイト処理部分には異物が付着し易くなるばかりでなく、腐食し易くなる。その結果、良好な現像が行われ難くなる。そこで、多数の微細孔を封じる封孔処理を行うことで多孔層を不活性化し、環境安定性を向上させる必要がある。一方、本発明の現像装置に用いられる非磁性一成分トナーはトナー母粒子に外添剤が付着されて形成されているが、外添剤はそのすべてがトナー母粒子に付着していることはなく、その一部がトナー母粒子から遊離している。そして、本発明においては外添剤の粒径が微細孔の径より小さく設定されているので、トナーが現像ローラに担持され搬送される途中で、この遊離外添剤が微細孔内に埋め込まれるようになる。したがって、この遊離外添剤により、多数の微細孔が封じられる。
【0019】
このようにして、トナー搬送中にトナーの遊離外添剤により封孔処理が自動的に行われるようになる。したがって、多数の微細孔を封じるための特別の封孔処理が不要となるか、少なくとも特別の封孔処理を行う必要があるとしても、この封孔処理が遊離外添剤3bによる封孔処理で補助されるので簡単になる。
【0020】
特に、請求項2の発明においては、外添剤遊離率を2%以上に設定しているので、遊離外添剤により多数の微細孔がより効果的に封じられるとともに、この遊離外添剤がトナー粒子と現像ローラあるいは潜像担持体との間に入り込み易くなり、現像ローラおよび潜像担持体のフィルミングが抑制されるようになる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の現像方法の実施の形態の一例に用いれる現像装置の一例を模式的に示す図である。
図1に示すように、この例の現像装置1は、静電潜像が形成される潜像担持体である感光体2と、現像剤であるトナー3を担持して感光体2に搬送する現像ローラ4と、この現像ローラ4にトナー3を供給する供給ローラ5と、この供給ローラ5から供給され現像ローラ4によって搬送されてくるトナー3を規制する規制部材6とを備えている。この現像装置1は、現像ローラ4が感光体2に接触された接触現像式の現像装置とされているとともに、現像ローラ4の周速が感光体2の周速より大きく設定されている(周速比=現像ローラ4の周速/感光体2の周速>1)。また、供給ローラ5が現像ローラ4に接触されているとともに、規制部材6が現像ローラ4に常時圧接されている。
【0022】
現像ローラ4はアルミニウムからなる金属ローラからなり、この金属ローラの表面の少なくともトナー3の担持領域(トナー搬送領域)にサンドブラスト処理が施されている。このサンドブラスト処理により、金属ローラの表面には凹凸面が形成されている。図2に示すように、この凹凸面は凸部、つまり互いに隣接する凹部4aの境のエッジ(稜線)4bが明瞭に形成されている。
【0023】
更に、金属ローラのサンドブラスト処理部分には、アルマイト処理が施されている。このようにアルマイト処理が金属ローラの表面に施されると、電気分解の反応が金属ローラの内部に浸透するようになるので、金属ローラの表面には比較的薄い酸化被膜が形成される。
【0024】
図5に示すように、この酸化被膜9の構造は Keller モデルとして知られており、多数の微細孔9a1を有する厚い多孔層9aと、緻密で非常に薄い活性層9bとからなるセル構造となっている。微細孔9a1は真円ではないがほぼ円形状であり、その径は約30nmである。また、活性層9bは電気抵抗を有しているため、電気抵抗の比較的小さい金属ローラ表面にアルマイト処理により電気抵抗層が形成されている。
また、この酸化被膜9は所定の硬度を有しているので、金属ローラの表面部分は所定の硬度を有している。このとき、アルマイト処理における電気分解の水溶液を比較的低い温度にするとともに、ゆっくり処理を行うことで、現像ローラ4の表面をより一層硬くすることができる。
【0025】
また、前述のように、金属ローラの表面にアルマイト処理が施されて酸化被膜9が形成されても、酸化被膜9がきわめて薄いので、サンドブラスト処理によって形成された凹凸面はこの酸化被膜9で阻害されず、ほとんど変化しない。したがって、図3に示すようにアルマイト処理後の金属ローラの表面の凹凸形状はほぼサンドブラスト処理による凹凸形状がほぼ保持された形状となっている。
【0026】
更に、図1に示すようにこの例の現像装置1の現像ローラ4には、従来の現像装置と同様に現像バイアスが印加されている。その場合、この例の現像装置1では、直流電源7の直流と交流電源8の交流とが重畳された現像バイアスが現像ローラ4に印加されている。図4に示すように、感光体2の画像部の電位をVonに(図示例では、接地つまり0V)に設定し、感光体2の非画像部の電位をVo(図示例では、負電圧)に設定したとき、この現像ローラ4の現像バイアス電位Vdは、その最大値Vdmaxが画像部の電位Vonと等しく設定されているとともに、その最小値Vdminが非画像部の電位Voより大きく設定されている。すなわち、現像バイアス電位Vdは、非画像部の電位Voより画像部の電位Von側の所定値に設定されて、非画像部の電位Voを超えて画像部の電位Vonと反対側には設定されない。これにより、現像ローラ4上のトナー3粒子が感光体2の非画像部に付着するのをより効果的に抑制している。
【0027】
更に、この例の現像装置1で用いられるトナー3は、図6に示すように比較的柔らかいポリエステル樹脂からなるトナー母粒子3aに比較的硬いシリカからなる外添剤3bが付着された粒子3cからなる非磁性一成分トナーとして形成されている。図7に示すように、外添剤3bは大小2種類の大きさの粒子からなり、大きい粒子3b1の径は約30〜50nmであるとともに、小さい粒子3b2の径は数nmである。すなわち、小さい粒子3b2の外添剤3bの径は、前述の酸化被膜9の微細孔9a1の径よりはるかに小さいものとなっている。したがって、小さい粒子3b2の外添剤3bは酸化被膜9の微細孔9a1内に容易に進入可能となっている。
【0028】
また、このような非磁性一成分トナー3は一般にトナー母粒子3aから遊離した遊離外添剤3bを含んでいる。そこで、本発明においては、外添剤遊離率が2%以上に設定されている。このとき、外添剤遊離率は
外添剤遊離率=(遊離外添剤量/全外添剤量)×100
で与えられる。
【0029】
ところで、外添剤遊離率を求めるために、トナー母粒子3aに付着していない遊離外添剤の量を知るために、トナー母粒子3aと外添剤3bとの付着状態を分析する必要があるが、そのトナー分析方法は従来いくつかの方法が行われている。この例の画像形成装置1では、例えば次のパーティクルアナライザ方法を採用している。
【0030】
すなわち、トナー3のトナー母粒子3aと外添剤3bとの付着状態を分析する方法として、電子写真学会年次大会(通算95回)、“ Japan Hardcopy’97 ”論文集、「新しい外添評価方法−パーティクルアナライザによるトナー分析−」、鈴木俊之、高原寿雄、電子写真学会主催、1997年7月9〜11日、に開示されているトナー分析方法を採用している。
【0031】
このトナー分析方法は、樹脂(C)からなるトナー母粒子の表面にシリカ(SiO2)からなる外添剤を付着させて形成されたトナーの粒子をプラズマ中に導入することにより、トナー粒子を励起させ、この励起に伴う、図8(a)および(b)に示すような発光スペクトルを得ることにより、元素分析を行う方法である。
【0032】
図8において、発光スペクトルの横軸は時間軸を示す。まず、図8(a)に示すようにトナーの樹脂製母粒子(C)に外添剤(SiO2)が付着したトナー粒子がプラズマに導入されると、母粒子(C)および外添剤(SiO2)がともに発光する。このとき、母粒子(C)と外添剤(SiO2)とが同時にプラズマに導入されることから、母粒子(C)と外添剤(SiO2)とは同時に発光するようになる。このように、母粒子(C)と外添剤(SiO2)とが同時に発光する状態の場合は、母粒子(C)と外添剤(SiO2)とが同期しているという。換言すれば、母粒子(C)と外添剤(SiO2)とが同期した状態は、外添剤(SiO2)が母粒子(C)に付着している状態を表すことになる。
【0033】
また、同図(b)に示すように外添剤(SiO2)が付着していない母粒子(C)や母粒子(C)から遊離した外添剤(SiO2)がプラズマに導入される場合は、前述と同様に母粒子(C)および外添剤(SiO2)はいずれも発光するが、このとき、母粒子(C)と外添剤(SiO2)とが異なる時間にプラズマに導入されることから、母粒子(C)と外添剤(SiO2)とは異なる時間に発光するようになる(例えば、母粒子が外添剤より先にプラズマに導入されると、先に母粒子が発光し、その後遅れて外添剤が発光する)。
【0034】
このように、母粒子(C)と外添剤(SiO2)とが互いに異なる時間に発光する状態の場合は、母粒子(C)と外添剤(SiO2)とが同期していない(つまり、非同期である)という。換言すれば、母粒子(C)と外添剤(SiO2)とが非同期である状態は、外添剤(SiO2)が母粒子(C)に付着していない状態を表すことになる。
【0035】
更に、図8(a)および(b)において発光信号の高さは、その発光の強さを表しているが、この発光の強さは粒子の大きさや形ではなく、粒子内に含まれているその元素(C,SiO2)の原子数に比例している。そこで、元素の発光強度を粒子の大きさとして表すために、図9に示すように母粒子(C)および外添剤(SiO2)の発光が得られたとき、これらの母粒子(C)および外添剤(SiO2)だけでできた真球の粒子を仮定し、それらの母粒子(C)および外添剤(SiO2)の粒径として表している。このときの真球の粒子を等価粒子と呼び、その粒径を等価粒径と呼ぶ。そして、外添剤は非常に小さいことから、その粒子を1個ずつ検出することができないので、検出された外添剤の発光信号を足し合わせて1つの等価粒子に換算して分析している。
このように母粒子および外添剤の各発光スペクトルによって得られた等価粒子の等価粒径を、トナーの各粒子毎にプロットすると、図10に示すようなトナー粒子の等価粒径分布図が得られる。
【0036】
図10において、横軸は母粒子(C)の等価粒径を表し、縦軸は外添剤(SiO2)の等価粒径を表している。そして、横軸上の等価粒子は、外添剤(SiO2)が付着されていない非同期の母粒子(C)を表している。その場合、所定の外添剤濃度に満たない外添剤が付着している母粒子(C)もこの横軸上に表され、非同期の母粒子(C)とされている。また、縦軸上の等価粒子は、母粒子(C)から遊離した非同期の外添剤(SiO2)を表している。更に、横軸および縦軸上にない等価粒子は、母粒子(C)に外添剤(SiO2)が付着されている同期のトナーを表している。
このようにして、トナーの母粒子(C)に対する外添剤(SiO2)の付着状態が分析される。なお、トナー分析方法はこのパーティクルアナライザ方法以外の他の任意の分析方法を採用できることは言うまでもない。
【0037】
更に、現像ローラ4の表面の硬さ(硬度)がトナー3の外添剤の硬さ(硬度)より低く設定されている。より具体的には、現像ローラ4の表面の硬度はトナー3の外添剤の硬度に対して、現像ローラ4の表面の凹凸がある程度削られるが極端に削られ過ぎない程度に設定されている。
【0038】
そのうえ、トナー3はその粒子の球形化度がワーデルの実用球形化度で0.9〜1に設定されて、感光体2上の高精細な潜像を忠実に可視像化するのに好適にされている。このトナー3のワーデルの実用球形化度は、トナー粒子の投影像において粒子の投影面積に等しい面積を有する円の直径と、粒子の投影像に外接する最小円の直径との比で表される数値である。
【0039】
また、トナー3の球形化度が高精細な潜像の忠実な可視像化に好適であるという理由は、本発明者が提案し、本特許出願人が既に特許出願した特開平9−311544号公報に開示されているので、この公開公報を参照すれば容易に理解できる。一応、簡単に述べると、その理由は、トナー3の形状をワーデルの実用球形化度で0.9〜1として真球に近似させることによって、現像ローラ4上のトナー3が現像動作で感光体2上にその電位に応じて付着する際、このトナー3の粒子が感光体2上で容易に稠密充填した付着層を形成して、潜像細部の画像輪郭部を忠実にかつ明瞭に再現するようになるからである。
ワーデルの実用球形化度は、光学顕微鏡を備えた画像処理装置(アピオニクス社製)を用いて測定することができるが、その測定要領は前述の特開平9−311544号公報に記載されていて、この公開公報を参照すれば容易に理解できるので、その説明は省略する。
【0040】
このように構成されているこの例の現像装置1においては、供給ローラ5から現像ローラ4上に供給されたトナー3は、図1で反時計方向に回転する現像ローラ4によって規制部材6の方へ搬送される。規制部材6に到達したトナー3は、この規制部材6によって感光体2の方へ搬送される量が規制され、余剰トナーが供給ローラ5の方へ戻される。また、規制部材6を通過したトナー3は、現像ローラ4上に所定厚みのトナー薄層3dが形成される。この薄層化されたトナー3が現像ローラ4によって感光体2の方へ搬送され、このトナー3によって感光体2上の静電潜像が現像され、この感光体2上にトナー像が形成される。
【0041】
この例の現像装置1を用いた現像方法によれば、現像ローラ4の表面のアルマイト処理後の凹凸形状をサンドブラスト処理による凹凸形状とほぼ同じ形状にする保持できる。すなわち、アルマイト処理後の凹凸形状をエッジ(稜線)が明瞭に形成されたものにすることができる。したがって、現像ローラ4の表面の凹凸形状におけるエッジ(稜線)効果によりトナー3の搬送をより一層確実にでき、トナー3の搬送性を向上できる。
【0042】
また、サンドブラスト処理による凹凸形状におけるエッジ(稜線)が保持されるので、現像ローラ4におけるトナー3の粒子との接触面積を増大できる。これにより、現像ローラ4とトナー3の粒子との摩擦が十分に行われ、トナー3の粒子を効果的に摩擦帯電できるようになる。したがって、トナー3の帯電性を向上できる。
更に、アルマイト処理で形成された酸化被膜により現像ローラ4の表面が硬くなるため、現像ローラ4の耐摩耗性および機械強度をともに向上できる。
【0043】
更に、アルマイト処理による酸化被膜で、電気抵抗の比較的小さいアルミニウムの金属ローラ表面に電気抵抗層が形成されるので、金属ローラに所定の電気抵抗を持たせることができる。このとき、金属ローラの表面が均一にアルマイト処理されるので、電気抵抗を金属ローラのアルマイト処理部分の全面にわたってより均一に得ることができる。これにより、現像ローラ4の材料として予め所定の電気抵抗を有する特別な材料を用いる必要がないので、現像ローラを、所定の大きさの均一な電気抵抗を有する金属から安価にかつ簡単に形成できるようになる。
【0044】
更に、現像ローラ4が所定の大きさの均一な電気抵抗を有することから、現像バイアスによるトナー3への過剰電荷注入を防止できるようになる。特に、この例のような現像ローラ4が感光体2に接触する接触現像式の現像装置1においては感光体2と現像ローラ4との間に挟圧されるトナー3の粒子の圧力が大きくなるが、この圧力が大きいとトナー3への過剰電荷注入が増進されるようになるため、このような均一な電気抵抗により、より効果的にトナー3への過剰電荷注入が防止される。
こうして、この例の現像装置1の現像ローラ4に前述の3つの機能をより確実に持たせることができるようになる。したがって、この例の現像装置1によれば、濃度むら等の画像欠陥のない高品質の画像を長期にわたって得ることができる。
【0045】
更に、外添剤3bの小さい粒子3b2の粒径が酸化被膜の微細孔9a1の径より小さく設定されているので、トナー3が現像ローラ4に担持され搬送される途中で、この小さい粒子3b2の遊離外添剤3bが微細孔9a1内に進入してて埋め込まれるようになる。したがって、この遊離外添剤3bにより、多数の微細孔9a1が封じられるようになる。このようにして、トナー搬送中にトナー3の遊離外添剤3bにより、微細孔9a1の封孔処理が自動的に行われるようになる。したがって、多数の微細孔9a1を封じるための特別の封孔処理が不要となるか、少なくとも特別の封孔処理を行う必要があるとしても、この封孔処理が遊離外添剤3bによる封孔処理で補助されるので簡単になる。
【0046】
その場合、外添剤遊離率を2%以上に設定しているので、遊離外添剤3bにより多数の微細孔9a1をより効果的に封じ込めることができるとともに、この遊離外添剤3bがトナー3の粒子と現像ローラ4あるいは感光体2との間に入り込み易くなるので、現像ローラ4および感光体2のフィルミングを抑制することができる。
【0047】
更に、現像ローラ4に、交流を直流に重畳した現像バイアスを印加しているので、この現像バイアスを適宜制御することにより、現像ローラからの現像バイアスの放電を防止することができる。特に、現像バイアスの最大電位を感光体の非画像領域に設定される電位より低く設定しているので、現像バイアスの放電をより効果的に防止できるとともに、感光体の非画像領域にトナーが付着するのを抑制でき、トナーのかぶりを防止できる。
【0048】
しかも、直流に交流を重畳することにより、画像に適度なエッジ効果を付与できるとともに、画像の均一な中間色を再現でき、階調性を向上できる。
更に、現像ローラ4の表面の硬さをトナー3の外添剤の硬さより低く設定してので、現像ローラ4の表面の凹凸がトナー3の外添剤との摩擦でわずかに削られるか、あるいはわずかに欠けるようにしているので、現像ローラ4に付着したトナー3を確実に削り取ることができる。これにより、現像ローラ4へのトナー3の付着を抑制して現像ローラ4のフィルミングを防止できるとともに、凹凸が欠けることで、新たな凹凸ののエッジ(稜線)を形成することができるようになる。
【0049】
更に、現像ローラ4の周速を感光体2の周速より大きく設定しているので、現像ローラ4が感光体2に接触する現像部において速度差によりトナー3の粒子が転動、摺擦することで、トナー3を効果的に再帯電することができる。これにより、帯電量の少ないトナーの帯電量を増加できるので、感光体2の非画像領域に付着したトナーを現像ローラ4の方へ確実に回収できるとともに、感光体2の画像領域においてトナー3を本来付着すべき位置に確実に付着できるようになり、トナー3の付着位置がずれるという、いわゆる画像のちりを防止できるようになる。
【0050】
更に、トナー3の球形化度をワーデルの実用球形化度で0.9〜1に設定し、真球により近いものとなっているので、トナー3の粒子をより確実に転動、摺擦させることができ、トナー3を更に一層効果的に再帯電することができるようになる。これにより、前述と同様にして感光体2の非画像部の現像剤を現像ローラ4の方へ確実に回収できるとともに感光体2の画像領域における画像のちりを防止でき、更に、感光体2上の高精細な潜像を忠実に可視像化することができる。しかも、トナー3の球形化度が真球に近いことから、遊離外添剤3bの球形化度も真球に近くなるので、遊離外添剤3bを酸化被膜9の微細孔9a1内に滑らかに埋め込むことができるようになる。これにより、微細孔9a1の封孔処理をより一層確実に行うことができる。
【0051】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の現像方法によれば、現像ローラの表面のアルマイト処理後の凹凸形状をサンドブラスト処理による凹凸形状とほぼ同じ明瞭なエッジ(稜線)を有する凹凸形状に保持することができる。したがって、現像ローラの表面の凹凸形状におけるエッジ(稜線)効果により現像剤の搬送をより一層確実にでき、現像剤の搬送性を向上できる。
【0052】
また、サンドブラスト処理による凹凸形状におけるエッジ(稜線)を保持できるので、現像ローラにおける現像剤の粒子との接触面積を増大できる。これにより、現像ローラと現像剤の粒子との摩擦を十分に行うことができ、現像剤の粒子を効果的に摩擦帯電できるようになる。したがって、現像剤の帯電性を向上できる。
【0053】
更に、アルマイト処理で形成された酸化被膜により現像ローラの表面が硬くなるため、現像ローラの耐摩耗性および機械強度をともに向上できる。
更に、アルマイト処理による酸化被膜で、電気抵抗の比較的小さいアルミニウムの金属ローラ表面に電気抵抗層を形成しているので、金属ローラに所定の電気抵抗を持たせることができる。このとき、金属ローラの表面を均一にアルマイト処理できるので、電気抵抗を金属ローラのアルマイト処理部分の全面にわたってより均一に得ることができる。これにより、現像ローラの材料として予め所定の電気抵抗を有する特別な材料を用いる必要がないので、現像ローラを、所定の大きさの均一な電気抵抗を有する金属から安価にかつ簡単に形成できるようになる。
【0054】
更に、外添剤の粒径を微細孔の径より小さく設定しているので、遊離外添剤を微細孔内に埋め込ませることができる。したがって、この遊離外添剤により、多数の微細孔を封じることができ、酸化被膜の微細孔の封孔処理を自動的に行うことができる。これにより、多数の微細孔を封じるための特別の封孔処理が不要となるか、少なくとも特別の封孔処理を行う必要があるとしても、この封孔処理が遊離外添剤による封孔処理で補助されるので簡単になる。
【0055】
特に、外添剤遊離率を2%以上に設定することで、遊離外添剤により多数の微細孔をより効果的に封じることができるとともに、現像ローラおよび潜像担持体のフィルミングを抑制できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の現像方法の実施の形態の一例に用いられる現像装置の一例を模式的に示す図である。
【図2】サンドブラスト処理により形成された現像ローラ上の凹凸面を顕微鏡で拡大して示す図である。
【図3】アルマイト処理後の現像ローラ上の凹凸面を顕微鏡で拡大して示す図である。
【図4】現像ローラに印加する、交流が重畳された現像バイアスを示す図である。
【図5】アルマイト処理による酸化被膜の構造を示す図である。
【図6】本発明の現像装置に用いられる非磁性一成分トナーの粒子を示す図である。
【図7】図6に示す非磁性一成分トナーのトナー母粒子および外添剤を示す図である。
【図8】トナーの母粒子と外添剤との付着状態の分析に用いるための、従来のトナー分析方法の一例を説明する図である。
【図9】図8に示すトナー分析方法において用いられる等価粒子および等価粒径について説明する図である。
【図10】図8に示すトナー分析方法による分析結果を示す図である。
【符号の説明】
1…現像装置、2…感光体(潜像担持体)、3…トナー(現像剤)、3a…トナー母粒子、3b…外添剤、3c…トナー粒子、4…現像ローラ、5…供給ローラ、6…規制部材、9…酸化被膜、9a…多孔層、9a1…微細孔、9b…活性層
Claims (2)
- 金属ローラから形成され、この金属ローラの少なくとも現像剤担持領域の表面にサンドブラスト処理により凹凸が形成されているとともに、更に少なくとも凹凸形成部分がアルマイト処理を施されて形成された現像ローラにより、トナー粒子に外添剤が付着された非磁性一成分のトナーを担持して潜像担持体へ搬送しかつこの潜像担持体上の静電潜像を前記トナーで現像する現像方法において、
前記外添剤に、粒子の粒径が前記アルマイト処理によって生じた陽極酸化皮膜に存在する微細孔の径より小径に設定された外添剤を用いるとともに、前記現像ローラに、封孔処理をされていない多数の前記微細孔を有する現像ローラを用い、
前記静電潜像を現像する際、前記トナーが前記現像ローラに担持されて前記潜像担持体へ搬送されるときに、前記外添剤のうち前記トナー粒子から遊離した遊離外添剤により、前記微細孔を封じ込めることを特徴とする現像方法。 - 前記外添剤の遊離率が2%以上に設定された非磁性一成分のトナーを用いて前記静電潜像を現像することを特徴とする請求項1記載の現像方法。
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